説明

ダンパー装置

【課題】小型で開閉状態における信頼性が高く、かつ風量制御性に優れた特に冷蔵庫などに好ましく用いることができるダンパー装置を提供する。
【解決手段】断面円弧状の表面を有する台座部材11及びこの台座部材を貫通する通風のための開口部12を有する枠体10と、この枠体に対して回動可能に設けられ回動角に応じて通風面積を変えて上記開口部の通風を制御し得る回動体20と、この回動体を回動させる駆動装置30と、上記回動体の回動角を所定範囲に制限する回動制限手段40とを備えるように構成したものである。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば冷蔵庫における冷気の通風量の制御などに好ましく用いることができるダンパー装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来のダンパー装置としては、内側円筒と外側円筒の2重円筒状ダクトを有し、モータで内側円筒を回転させ外側円筒と内側円筒の開口部の位置を合わせるかずらすかによって冷気量を制御するものが開示されている(例えば特許文献1参照。)。
【0003】
【特許文献1】特開昭64−84069号公報(第1頁、第1図)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来のダンパー装置においては、内側円筒が外側円筒に対し自由に回転できるため、内側円筒に設けた開口部と外側円筒に設けた開口部の位置合わせが困難であり、冷気量の制御精度が不十分であった。特に密閉性が求められる閉状態においては、位置ずれによる冷気漏れに対応するために開口部に対して各円筒の径を大きくし、内側円筒と外側円筒に十分なオーバーラップ領域を設ける必要が生じ、結果として装置の大型化を招くという課題があった。
【0005】
この発明は上記のような従来技術の課題を解消するためになされたもので、小型で閉状態における密閉性を高くすることができ、しかも通風量の制御性に優れたダンパー装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明によるダンパー装置は、断面円弧状の表面を有する台座部材及びこの台座部材を貫通する通風のための開口部を有する枠体と、上記台座部材の上記表面に対向して回動可能に設けられ回動角に応じて上記開口部の通風を制御し得る回動体と、この回動体を回動させる駆動装置と、上記回動体の回動角を所定範囲に制限する回動制限手段とを備えたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明においては、回動体の回動角を所定範囲に制限する回動制限手段を設けているため、枠体と回動体の位置合わせが容易となり、小型で密閉性など開閉信頼性の高いダンパー装置が得られる。また、通風量の制御性を高めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
図1〜図8はこの発明の実施の形態1による冷蔵庫の冷気制御用のダンパー装置の要部を説明するもので、図1はダンパー装置の外観を概念的に示す斜視図、図2は図1に示された枠体を示す斜視図である。図3は図2の枠体の構造を説明する図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は図3(b)のIIIc−IIIc線における矢視断面図、(d)は図3(b)のIIId−IIId線における矢視断面図である。図4は図1に示された回動体を示す斜視図、図5は図4の回動体の構造を説明する図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は図5(b)のVc−Vc線における矢視断面図、(d)は右側面図である。図6は冷気漏れ量と回動体の回転に必要なトルクの関係を示す特性図、図7は図1に示された駆動源を示す正面図である。図8は動作説明図であり、(a)は全閉状態、(b)は半開状態、(c)は全開状態をそれぞれ示し、断面図は図1のA−A線における矢視断面図、右側面図は図1の右側面図に相当する。なお、同一符号は同一部分を示している。
【0009】
図において、ダンパー装置1は、断面円弧状の表面11aを有する台座部材11及びこの台座部材11を貫通するように設けられた通風のための開口部12を有する枠体10と、この枠体10に対して表面11aに対向して回動可能に設けられ回動角に応じて開口部12の面積を変えることにより通風を制御する回動体20と、この回動体20を回動させるステッピングモータを用いた駆動装置30と、回動体20の回動角を所定範囲に制限するための回動制限手段40を備えている。枠体10は詳細を図2、図3に示すように、上記台座部材11と、この台座部材11の両端部に対向するように設けられた板状の側壁部材13、14とから構成されている。台座部材11の図の上部側の表面11aは円弧状に窪んで形成され通風用の開口部12はその中央底部に設けられている。側壁部材14は、対向する側壁部材13の略半分程度の高さに形成され、中央部に山形の凸部141が設けられている。そして、これら側壁部材13、14には台座部材11の円弧の中心に対応する位置に貫通孔13a、14aがそれぞれ設けられている。
【0010】
回動体20は図4、図5に示すように、対向するように配設された円柱ないしは円板状の保持部材21、22と、保持部材21、22をつなぐ断面円弧状に湾曲された遮蔽部材23を有している。保持部材21の中心には十字形の貫通穴21aが設けられ、保持部材22の中心には上記枠体10の貫通孔14aに挿入される回転保持軸22aが突設されている。そして、保持部材22の回転保持軸22aの径方向外側所定部には、回動体20が所定角度回動したときに枠体10の側壁部材14の上縁部からなる係止部42に係合して回動角を所定範囲に制限するための扇形状の係合突部41が突設されている。この例では上記係合突部41と係止部42とで回動制限手段40を構成している。該扇形状の係合突部41は、図5(d)に示すように約90°の角度に形成され、全閉時には一端部41aが係止部42に干渉し、全開時には他端部41bが係止部42に干渉するように係合し、この例では回動角を約90°の範囲に制限している。
【0011】
また、遮蔽部材23の外周面及び両側部には撥水処理を施したフェルト材からなる緩衝材24が貼り付けられている。なお便宜上、図1、図4では該緩衝材24の図示を省略し、図5(a)、図5(b)では該緩衝材24の厚み相当分のみを図示している。該緩衝材24は、その厚さを増すことによって冷気の漏れ量を少なくできるが、厚さを増すに従って回動体20の回転に要するトルクが大きくなる。冷気漏れ量と回動体20の回転に必要なトルクは図6の曲線に示すような関係にあり、高トルクの駆動源を用いることにより、冷気漏れ量を減少させることが可能であるが、駆動源のコストは上昇してしまう。よって、要求される密閉能力とコストを勘案した上で、適宜、緩衝材24の厚さを決定すれば良い。この実施の形態1では製造公差や緩衝材24の磨耗等を考慮して、図6においてトルク変化に対し冷気漏れ量の変化が少ない領域内のB点近傍となる厚さの緩衝材を用いている。
【0012】
駆動装置30は、ステッピングモータと複数のギヤ(何れも図示省略)が格納されたギヤボックス31と、複数のギヤを介してステッピングモータの回転が伝わる外周部が十字形の回転軸32からなる。そして、駆動装置30は回転軸32を枠体10の側壁部材13の貫通孔13aを貫通させた後、回動体20を構成する保持部材21の十字形の貫通穴21aに挿通、係合させた状態で枠体10に図示省略している固定手段により固定される。ダンパー装置1は図1のように組立てられ、ファン等によりダクト内に生じる冷気の流れ(何れも図示省略)に対し、例えばダンパー装置1の開口部12の延在方向が略直交して流れの方向を曲げないように配置され、駆動装置30の回転軸32を回動させることで回動体20を枠体10の台座部材11に対して回動させるように構成されている。回動体20の回動中心軸は開口部12の中心軸を含み、冷気の流れの中心部にあって冷気の流れに平行な平面内に設けられる。
【0013】
次に上記のように構成された実施の形態1の動作を図8を用いて説明する。まず、図8(a)の状態においては遮蔽部材23が開口部12を完全に塞ぐ位置関係にあり、冷気はダンパー装置1を通過できない全閉状態である。また、この状態においては回動体20に設けられた係合突部41の一端部41aが枠体10の側壁部材14の係止部42に当接し、回転可能な方向は一方向(図8において時計方向)に規制される。このため回動体20が反時計方向に回転し過ぎることが防止でき、例えばステッピングモータに全閉状態が得られると予測されるパルス数より多目の左回転用のパルスを入力することにより確実な全閉状態が維持できる。また、この位置を原点として駆動装置30に入力するパルス数で制御することによって、回動体20の回動角度を精度よく制御でき、冷気取り入れ量が容易に制御される。
【0014】
図8(b)は回動体20を図8(a)の状態から時計方向に約45°回動させた状態である。この状態においては、遮蔽部材23が開口部12を約55%塞いでいる。よって、全開状態に比べ冷気取り入れ量を約45%に制限することが出来る。図8(c)は回動体20を図8(b)の状態から更に時計方向に約45度右回転させた状態である。この状態においては遮蔽部材23が開口部12を塞がない位置関係にあり、冷気は開口部12の全幅でダンパー装置1を通過する全開状態である。また、この状態において、回動体20に設けられた係合突部41の他端部41bが枠体10の側壁部材14の係止部42に当接し回転可能な方向は一方向(反時計方向)に規制される。このため、全閉状態と同様に回動体20が回転し過ぎることが防止できる。また、この位置を原点として回動体20の回転角度を制御することでも冷気取り入れ量を容易に精度よく制御できる。なお、回動制限手段40を構成する係合突部41は回動体20に設けたが枠体10に設けることもできる。また、回動体20の中心軸O(図8(c))は開口部12の略中心部上に設けられているので、遮蔽部材23が矢印Cで示す冷気の流れによる力を受けても該遮蔽部材23の開閉度に関わらず略一定の駆動トルクで回動体20を回動できる。
【0015】
上記のように実施の形態1によるダンパー装置では、回動体20の回動角を所定範囲に制限する回動制限手段40として、回動体20に扇形状の係合突部41を設け、全開状態ならびに全閉状態において係合突部41が枠体10の係止部42に干渉することにより、回転方向ならびに回転範囲を制限しているため、回動体20と枠体10の位置決めが容易となり、構造が簡単で確実な全開状態ならびに全閉状態が確保でき、小型で開閉信頼性の高いダンパー装置を得ることができる。また、係合突部41が枠体10に接する状態すなわち回転が制限された状態を原点としてステッピングモータをパルス駆動することで、容易に精度よく開口部幅を制御でき、冷気取り入れ量の制御性に優れたダンパー装置を得ることができる。
【0016】
また、冷気の流れに対し開口部12の延在方向が略直交するように配置されているので図8(c)に矢印Cで示す冷気の流れ方向を変化させること無く、冷気取り入れ量を制御できるため、冷気の圧力損失が小さいダンパー装置を得ることができる。また、回動体20に外形が断面円弧形状の板からなる遮蔽部材23を用いているため、回転に要する動作空間を小さくでき、ダンパー装置の小型化が可能となる。また、回動体20の中心軸Oが開口部12の略中心、即ち冷気の流れの略中心部にあるので風圧による余分な抵抗を受けることがない。さらに、回動体20と枠体10の隙間に緩衝材24を設けているため、隙間から漏れる気流を低減でき、密閉性に優れたダンパー装置を得ることができる。さらに、緩衝材23を非吸水性としているため、水濡れ時や氷結時においても緩衝材の膨張や氷結による密着を軽減でき、小さなトルクで容易に回動体20を回動させることができる。
【0017】
実施の形態2.
図9はこの発明の実施の形態2によるダンパー装置の要部を示す断面図である。なお、この実施の形態2は上記実施の形態1に例示した回動制限手段40の他の例を説明するもので、図9は図8(a)に相当する全閉状態を示している。即ち、この実施の形態2では枠体10Aを構成する台座部材11Aの開口部12A端に、回動体20Aの回動を制限するための係合突部43が設けられ、回動体20Aの遮蔽部材23A側面部に係止部44が設けられ、これら係合突部43、及び係止部44で回動制限手段40を構成している。その他の構成は上記実施の形態1と同様であるので説明を省略する。
【0018】
上記のように構成された実施の形態2においては、回動体20Aの遮蔽部材23A側面の係止部44が台座部材11Aに設けられた係合突部43の図の左側の当接部43aに直接または緩衝材24Aを介して当接することによって全閉状態が得られる。具体的には、図示省略しているステッピングモータに全閉状態が得られると予測されるパルス数より多目の左回転用パルスを入力し、回動体20Aの遮蔽部材23Aを枠体10Aの当接部43aに押し付けることによって確実に全閉状態を得ることができる。なお、全開状態及び途中の任意の開度については実施の形態1と同様に制御することで実施の形態1と同様の効果を得ることができる。
【0019】
実施の形態3.
図10はこの発明の実施の形態3によるダンパー装置の要部を示す断面図であり、図5(c)に相当する回動体の断面図である。なお、この実施の形態3は上記実施の形態1に例示した緩衝材24の他の例を説明するもので、図10に示すような多数の突起24aを有する表面が凹凸状の緩衝材24Bを用いた他は、実施の形態1と同様に構成したものである。
この実施の形態3においては、緩衝材24Bの表面が多数の突起24aを有する凹凸状に形成されていることにより、回転駆動時に要するトルクを小さくすることができるので、駆動装置30(図7)をより小形にできるという効果が得られる。
【0020】
なお、上記実施の形態1〜3では、緩衝材24(24A、24B)を回動体20を構成する遮蔽部材23の表面に貼り付けたが、これに限定されるものではなく、緩衝材24(24A、24B)を枠体10(10A)の台座部材11(11A)の表面11aに貼り付けても良い。さらに、緩衝材24(24A、24B)としてゴム等の非吸水性材料を用いることができる。また、駆動装置30に用いるモータはステッピングモータに限るものではなく、例えばDCモータ等を用いることもできる。この場合にはモータ駆動時間を制御することで容易に冷気取り入れ量を制御することができる。さらに、全閉時における許容される冷気の漏れ量が大きい場合には緩衝材24を省いても差し支えない。その他、この発明の範囲内で種々の改変ができることは当然である。
ところで上記説明ではこの発明を冷蔵庫の冷気制御に用いる場合について例示したが、これに限定されるものではなく、各種気体や液体などの配管等に設けて流量制御に用いることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】この発明の実施の形態1によるダンパー装置の外観を概念的に示す斜視図。
【図2】図1に示された枠体を示す斜視図。
【図3】図2の枠体の構造を説明する図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は図3(b)のIIIc−IIIc線における矢視断面図、(d)は図3(b)のIIId−IIId線における矢視断面図。
【図4】図1に示された回動体を示す斜視図。
【図5】図4の回動体の構造を説明する図で、(a)は上面図、(b)は正面図、(c)は図5(b)のVc−Vc線における矢視断面図、(d)は右側面図。
【図6】冷気漏れ量と回動体の回転に必要なトルクの関係を示す特性図。
【図7】図1に示された駆動源を示す正面図。
【図8】実施の形態1の動作説明図であり、(a)は全閉状態、(b)は半開状態、(c)は全開状態をそれぞれ示し、断面図は図1のA−A線における矢視断面図、右側面図は図1の右側面図に相当する。
【図9】この発明の実施の形態2によるダンパー装置の要部を示す断面図。
【図10】この発明の実施の形態3によるダンパー装置の要部を示す断面図。
【符号の説明】
【0022】
1 ダンパー装置、 10(10A) 枠体、 11(11A) 台座部材、 11a 表面、 12(12A) 開口部、 13、14 側壁部材、 13a、14a 貫通孔、 42 係止部、 141 凸部、 20(20A) 回動体、 21、22 保持部材、 21a 貫通穴、 22a 回転保持軸、 23 遮蔽部材、 24(24A、24B) 緩衝材、 24a 突起、 30 駆動装置、 31 ギヤボックス、 32 回転軸、 40 回動制限手段、 41、43 係合突部、 41a 一端部、 41b 他端部、 42、44 係止部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
断面円弧状の表面を有する台座部材及びこの台座部材を貫通する通風のための開口部を有する枠体と、上記台座部材の上記表面に対向して回動可能に設けられ回動角に応じて上記開口部の通風を制御し得る回動体と、この回動体を回動させる駆動装置と、上記回動体の回動角を所定範囲に制限する回動制限手段とを備えたことを特徴とするダンパー装置。
【請求項2】
上記回動制限手段は、上記枠体及び回動体の何れか一方に設けられた係合突部と、上記枠体及び回動体の何れか他方に設けられた所定の回動角で上記係合突部に干渉する係止部からなることを特徴とする請求項1に記載のダンパー装置。
【請求項3】
上記回動制限手段は、上記回動体を上記開口部に対して、全開状態と全閉状態の間に制限するものであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダンパー装置。
【請求項4】
上記回動体は、断面円弧形の遮蔽部材を用いたものであることを特徴とする請求項1ないし請求項3の何れかに記載のダンパー装置。
【請求項5】
上記回動体の回動軸は、上記開口部の略中心部上に設けられていることを特徴とする請求項1ないし請求項4の何れかに記載のダンパー装置。
【請求項6】
上記枠体と上記回動体との間に緩衝材を備えたことを特徴とする請求項1ないし請求項5の何れかに記載のダンパー装置。
【請求項7】
上記緩衝材は非吸水性であることを特徴とする請求項6に記載のダンパー装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2008−261521(P2008−261521A)
【公開日】平成20年10月30日(2008.10.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−102958(P2007−102958)
【出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】