説明

チェーファー用ゴム組成物及び空気入りタイヤ

【課題】低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)をバランスよく向上できるチェーファー用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供する。
【解決手段】特定の式で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、特定の式で表されるシランカップリング剤及び/又は特定の式で示される結合単位Aと特定の式で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含むチェーファー用ゴム組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チェーファー用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、環境問題、経済性を考慮して、タイヤの転がり抵抗を低減することにより(転がり抵抗性能の向上)、車の低燃費化が行われてきた。近年、車の低燃費化への要求はますます強くなってきており、タイヤ部材の中でもタイヤにおける占有比率の高いトレッドを製造するためのゴム組成物だけではなく、例えば、チェーファーゴムに対しても、優れた低発熱性が要求されている。
【0003】
チェーファーゴムにおいて低発熱性を満足させる方法として、シリカやカーボンブラックなどの補強用充填剤の含有量を減量する方法が知られている。しかし、この場合、補強性が低下し、ゴム強度(引き裂き強度)が低下してしまう。そのため、タイヤをリムへ装着する際やリムから外す際に、リムとの接触部(チェーファー部)で損傷が起きる可能性がある。チェーファー部が損傷するとエア漏れ等が起こり、タイヤの安全性に問題が生じるおそれがある。このように、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)のバランスに優れたチェーファーゴムの提供が望まれている。
【0004】
特許文献1には、メルカプト基を有するシランカップリング剤を配合することにより、加工性、作業性、低燃費性を向上できるゴム組成物が開示されている。しかし、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)のバランスについては改善の余地がある。また、該ゴム組成物をチェーファーゴムに適用することについても検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−126907号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前記課題を解決し、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)をバランスよく向上できるチェーファー用ゴム組成物、及びこれを用いた空気入りタイヤを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、下記式(2)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(3)で示される結合単位Aと下記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含むチェーファー用ゴム組成物に関する。
【化1】

(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は分岐若しくは非分岐のアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、Rと同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R12(R12は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【化3】

【化4】

(式(3)、(4)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R13は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R14は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R13とR14とで環構造を形成してもよい。)
【0008】
上記チェーファー用ゴム組成物は、下記式(5)で表される加硫促進剤を含むことが好ましい。
【化5】

(式(5)中、zは1〜8の整数を表す。)
【0009】
上記チェーファー用ゴム組成物は、ゴム成分100質量%中の上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムの含有量が20質量%以上であることが好ましい。
【0010】
本発明はまた、上記ゴム組成物を用いて作製したチェーファーを有する空気入りタイヤに関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、上記式(2)で表されるシランカップリング剤及び/又は上記式(3)で示される結合単位Aと上記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含むチェーファー用ゴム組成物であるので、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)をバランスよく向上でき、該ゴム組成物をタイヤのチェーファーに使用することにより、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)のバランスに優れた空気入りタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のチェーファー用ゴム組成物は、上記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、シリカと、上記式(2)で表されるシランカップリング剤及び/又は上記式(3)で示される結合単位Aと上記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含む。
【0013】
本発明では、ゴム成分として、下記式(1)で表される化合物により末端が変性されたブタジエンゴム(変性ブタジエンゴム)を含む。変性ブタジエンゴムを含むことにより、変性基がシリカと結合し、ゴムの運動によるエネルギーロスを低減することができ、低発熱性(低燃費性)を向上できる。
【0014】
【化6】

【0015】
上記式(1)のR、R及びRは、同一若しくは異なって、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基(−COOH)、メルカプト基(−SH)又はこれらの誘導体を表す。上記分岐若しくは非分岐のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、t−ブチル基等の炭素数1〜4のアルキル基等が挙げられる。上記分岐若しくは非分岐のアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、イソプロポキシ基、n−ブトキシ基、t−ブトキシ基等の炭素数1〜8のアルコキシ基(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜4)等が挙げられる。なお、アルコキシ基には、シクロアルコキシ基(シクロヘキシルオキシ基等の炭素数5〜8のシクロアルコキシ基等)、アリールオキシ基(フェノキシ基、ベンジルオキシ基等の炭素数6〜8のアリールオキシ基等)も含まれる。
【0016】
上記分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基としては、例えば、炭素数1〜20の脂肪族基、芳香族基が置換したシリルオキシ基(トリメチルシリルオキシ基、トリエチルシリルオキシ基、トリイソプロピルシリルオキシ基、ジエチルイソプロピルシリルオキシ基、t−ブチルジメチルシリルオキシ基、t−ブチルジフェニルシリルオキシ基、トリベンジルシリルオキシ基、トリフェニルシリルオキシ基、トリ−p−キシリルシリルオキシ基等)等が挙げられる。
【0017】
上記分岐若しくは非分岐のアセタール基としては、例えば、−C(RR′)−OR″、−O−C(RR′)−OR″で表される基を挙げることができる。前者としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、イソプロポキシメチル基、t−ブトキシメチル基、ネオペンチルオキシメチル基等が挙げられ、後者としては、メトキシメトキシ基、エトキシメトキシ基、プロポキシメトキシ基、i−プロポキシメトキシ基、n−ブトキシメトキシ基、t−ブトキシメトキシ基、n−ペンチルオキシメトキシ基、n−ヘキシルオキシメトキシ基、シクロペンチルオキシメトキシ基、シクロヘキシルオキシメトキシ基等を挙げることができる。R、R及びRとしては、アルコキシ基が望ましい。これにより、優れた低発熱性(低燃費性)を得ることができる。
【0018】
上記式(1)のR及びRの分岐若しくは非分岐のアルキル基としては、例えば、上記分岐若しくは非分岐のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0019】
上記式(1)のn(整数)としては、1〜5が好ましい。これにより、優れた低発熱性(低燃費性)を得ることができる。更には、nは2〜4がより好ましく、3が最も好ましい。nが0であるとケイ素原子と窒素原子との結合が困難であり、nが6以上であると変性剤としての効果が薄れる。
【0020】
上記式(1)で表される化合物の具体例としては、3−アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルエチルジメトキシシラン、3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン、3−アミノプロピルジメチルブトキシシラン、3−アミノプロピルメチルジブトキシシラン、ジメチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジメチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジメチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジメチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジメチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジメチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジメチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジメチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジメチルアミノブチルジエトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリメトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリメトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリメトキシシラン、ジエチルアミノメチルジメトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジメトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジメトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジメトキシメチルシラン、ジエチルアミノメチルトリエトキシシラン、2−ジエチルアミノエチルトリエトキシシラン、3−ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、4−ジエチルアミノブチルトリエトキシシラン、ジエチルアミノメチルジエトキシメチルシラン、2−ジエチルアミノエチルジエトキシメチルシラン、3−ジエチルアミノプロピルジエトキシメチルシラン、4−ジエチルアミノブチルジエトキシメチルシラン等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0021】
変性ブタジエンゴムのビニル含量は、好ましくは35質量%以下、より好ましくは25質量%以下、更に好ましくは20質量%以下である。ビニル含量が35質量%を超えると、低発熱性が損なわれる傾向がある。ビニル含量の下限は特に限定されない。
なお、ビニル含量(1,2−結合ブタジエン単位量)は、赤外吸収スペクトル分析法によって測定できる。
【0022】
上記式(1)で表される化合物(変性剤)によるブタジエンゴムの変性方法としては、特公平6−53768号公報、特公平6−57767号公報等に記載されている方法等、従来公知の手法を用いることができる。例えば、ブタジエンゴムと変性剤とを接触させればよく、ブタジエンゴムを重合し、該重合体ゴム溶液中に変性剤を所定量添加する方法、ブタジエンゴム溶液中に変性剤を添加して反応させる方法等が挙げられる。
【0023】
ゴム成分100質量%中の変性ブタジエンゴムの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上、更に好ましくは30質量%以上である。20質量%未満であると、低発熱性(低燃費性)が損なわれるおそれがある。該変性ブタジエンゴムの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下、更に好ましくは70質量%以下である。80質量%を超えると、加工性が悪化するおそれがある。
【0024】
上記変性ブタジエンゴム以外に本発明で使用できるゴム成分としては、特に限定されず、天然ゴム(NR)、エポキシ化天然ゴム(ENR)や、イソプレンゴム(IR)、ブタジエンゴム(BR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、スチレンイソプレンブタジエンゴム(SIBR)、クロロプレンゴム(CR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)等のジエン系合成ゴム等のジエン系ゴムが挙げられる。ジエン系ゴムは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。なかでも、低発熱性(低燃費性)、耐久性(ゴム強度(引き裂き強度))がバランスよく得られるという理由から、NR、BRが好ましい。
【0025】
NRとしては、特に限定されず、例えば、SIR20、RSS♯3、TSR20、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(HPNR)等、タイヤ工業において一般的なものを使用できる。
【0026】
ゴム成分100質量%中のNRの含有量は、好ましくは20質量%以上、より好ましくは30質量%以上である。20質量%未満であると、相対的に、例えば、BRの含有量が多くなり、加工性が悪化する傾向がある。該NRの含有量は、好ましくは80質量%以下、より好ましくは75質量%以下である。80質量%を超えると、相対的に、例えばBR含有量が少なくなり、低発熱性が損なわれる傾向がある。
【0027】
本発明では、シリカが使用される。変性ブタジエンゴムとともに、シリカを配合することにより、良好な低発熱性(低燃費性)及び高いゴム強度(引き裂き強度)が得られる。シリカとしては特に限定されず、例えば、乾式法シリカ(無水ケイ酸)、湿式法シリカ(含水ケイ酸)等が挙げられるが、シラノール基が多いという理由から、湿式法シリカが好ましい。
【0028】
シリカのチッ素吸着比表面積(NSA)は、40m/g以上が好ましく、50m/g以上がより好ましく、80m/g以上が更に好ましく、100m/g以上が特に好ましい。40m/g未満では、加硫後の破壊強度が低下する傾向がある。また、シリカのNSAは、250m/g以下が好ましく、200m/g以下がより好ましく、150m/g以下が更に好ましい。250m/gを超えると、低発熱性、ゴムの加工性が低下する傾向がある。
なお、シリカの窒素吸着比表面積は、ASTM D3037−81に準じてBET法で測定される値である。
【0029】
シリカの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは20質量部以上、より好ましくは25質量部以上、更に好ましくは30質量部以上である。20質量部未満であると、シリカ配合による充分な効果が得られない傾向がある。上記シリカの含有量は、好ましくは150質量部以下、より好ましくは120質量部以下、更に好ましくは100質量部以下、特に好ましくは80質量部以下である。150質量部を超えると、シリカのゴムへの分散が困難になり、ゴムの加工性が悪化する傾向がある。
【0030】
本発明では、下記式(2)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(3)で示される結合単位Aと下記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤(結合単位Bは必須単位で、結合単位Aは任意単位)が使用される。
【0031】
下記式(2)で表されるシランカップリング剤を配合することにより、低発熱性(低燃費性)とゴム強度(引き裂き強度)のバランスが向上する。
【0032】
【化7】

【0033】
上記式(2)のRは−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。
【0034】
上記R10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3)の2価の炭化水素基を表す。
該炭化水素基としては、例えば、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基、炭素数6〜30のアリーレン基等が挙げられる。なかでも、シリカと結合しやすく、低発熱性(低燃費性)に有利であるという理由から、上記アルキレン基が好ましい。
【0035】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜6、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキレン基としては、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ペンチレン基、ヘキシレン基、へプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基、ウンデシレン基、ドデシレン基、トリデシレン基、テトラデシレン基、ペンタデシレン基、ヘキサデシレン基、ヘプタデシレン基、オクタデシレン基等が挙げられる。
【0036】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6)のアルケニレン基としては、例えば、ビニレン基、1−プロペニレン基、2−プロペニレン基、1−ブテニレン基、2−ブテニレン基、1−ペンテニレン基、2−ペンテニレン基、1−ヘキセニレン基、2−ヘキセニレン基、1−オクテニレン基等が挙げられる。
【0037】
10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜10、より好ましくは炭素数2〜6)のアルキニレン基としては、例えば、エチニレン基、プロピニレン基、ブチニレン基、ペンチニレン基、ヘキシニレン基、へプチニレン基、オクチニレン基、ノニニレン基、デシニレン基、ウンデシニレン基、ドデシニレン基等が挙げられる。
【0038】
10の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜12)のアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、トリレン基、キシリレン基、ナフチレン基等が挙げられる。
【0039】
上記mは1〜30(好ましくは2〜15、より好ましくは3〜7、更に好ましくは5〜6)の整数を表す。mが0であるとシリカとの結合に不利であり、mが31以上であるとシリカとの反応性が低下する傾向にあり、充分な低発熱性(低燃費性)が得られないおそれがある。
【0040】
11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。なかでも、シリカとの反応性が高いという理由から、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基が好ましい。
【0041】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数3〜25、より好ましくは炭素数10〜15)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、オクタデシル基等が挙げられる。
【0042】
11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数3〜20、より好ましくは炭素数10〜15)のアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1−プロペニル基、2−プロペニル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基、2−ペンテニル基、1−ヘキセニル基、2−ヘキセニル基、1−オクテニル基、デセニル基、ウンデセニル基、ドデセニル基、トリデセニル基、テトラデセニル基、ペンタデセニル基、オクタデセニル基等が挙げられる。
【0043】
11の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリール基としては、例えば、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。
【0044】
11の炭素数7〜30(好ましくは炭素数7〜20)のアラルキル基としては、ベンジル基、フェネチル基等が挙げられる。
【0045】
上記式(2)のRの具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327等が挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327が好ましい。
【0046】
及びRは、同一若しくは異なって、Rと同一の基(すなわち、−O−(R10−O)−R11で表される基)、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R12(R12は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。なかでも、シリカとの反応性が高いという理由から、Rと同一の基、−O−R12(R12が分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基の場合)で表される基が好ましい。
【0047】
及びRの分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12(好ましくは炭素数1〜8、より好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、へキシル基、へプチル基、2−エチルヘキシル基、オクチル基、ノニル基等が挙げられる。
【0048】
12の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜15、より好ましくは炭素数1〜3)のアルキル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0049】
12の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜20、より好ましくは炭素数2〜10)のアルケニル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0050】
12の炭素数6〜30(好ましくは炭素数6〜15)のアリール基としては、例えば、上記R11の炭素数6〜30のアリール基と同様の基を挙げることができる。
【0051】
12の炭素数7〜30(好ましくは炭素数7〜15)のアラルキル基としては、例えば、上記R11の炭素数7〜30のアラルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0052】
上記式(2)のR及びRの具体例としては、例えば、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1225、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1429、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1327、C−O−、CH−O−、C−O−等が挙げられる。なかでも、−O−(C−O)−C1123、−O−(C−O)−C1327、−O−(C−O)−C1531、−O−(C−O)−C1327、C−O−が好ましい。
【0053】
の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜10、より好ましくは炭素数1〜5)のアルキレン基としては、例えば、上記R10の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0054】
上記式(2)で表されるシランカップリング剤としては、例えば、エボニックデグッサ社製のSi363等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0055】
下記式(4)で示される結合単位Bと、必要に応じて下記式(3)で示される結合単位Aからなるシランカップリング剤を配合することにより、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィド等の従来のシランカップリング剤よりも低発熱性(低燃費性)とゴム強度(引き裂き強度)のバランスを向上させることができる。
【0056】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤は、結合単位Aと結合単位Bとの合計量に対して、結合単位Bを1〜70モル%の割合で共重合したものが好ましい。
【0057】
結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、ビス−(3−トリエトキシシリルプロピル)テトラスルフィドなどのポリスルフィドシランに比べ、加工中の粘度上昇が抑制される。これは結合単位Aのスルフィド部分がC−S−C結合であるため、テトラスルフィドやジスルフィドに比べ熱的に安定であることから、ムーニー粘度の上昇が少ないためと考えられる。
【0058】
また、結合単位Aと結合単位Bのモル比が上記条件を満たす場合、3−メルカプトプロピルトリメトキシシランなどのメルカプトシランに比べ、スコーチ時間の短縮が抑制される。これは結合単位Bはメルカプトシランの構造を持っているが、結合単位Aの−C15部分が結合単位Bの−SH基を覆うためポリマーと反応しにくく、スコーチが発生しにくいためと考えられる。
【0059】
【化8】

【化9】

(式(3)、(4)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R13は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R14は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R13とR14とで環構造を形成してもよい。)
【0060】
13のハロゲンとしては、塩素、臭素、フッ素などが挙げられる。
【0061】
13、R14の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜12、さらに好ましくは炭素数1〜5)のアルキル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基と同様の基を挙げることができる。
【0062】
13、R14の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30(好ましくは炭素数1〜12)のアルキレン基としては、例えば、上記R10の分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基と同様の基を挙げることができる。
【0063】
13、R14の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルケニル基としては、例えば、上記R11の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基と同様の基を挙げることができる。
【0064】
13、R14の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルケニレン基としては、例えば、上記R10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基と同様の基を挙げることができる。
【0065】
13、R14の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルキニル基としては、例えば、エチニル基、プロピニル基、ブチニル基、ペンチニル基、ヘキシニル基、へプチニル基、オクチニル基、ノニニル基、デシニル基、ウンデシニル基、ドデシニル基等が挙げられる。
【0066】
13、R14の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30(好ましくは炭素数2〜12)のアルキニレン基としては、例えば、上記R10の分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基と同様の基を挙げることができる。
【0067】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤において、結合単位Aの繰り返し数(x)と結合単位Bの繰り返し数(y)の合計の繰り返し数(x+y)は、3〜300の範囲が好ましい。この範囲内、かつ、xが1以上であると、結合単位Bのメルカプトシランを、結合単位Aの−C15が覆うため、スコーチタイムが短くなることを抑制できるとともに、シリカやゴム成分との良好な反応性を確保することができる。
【0068】
上記結合単位Aと結合単位Bからなるシランカップリング剤としては、例えば、Momentive社製のNXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60、NXT−Z100等を使用することができる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0069】
上記式(2)で表されるシランカップリング剤及び/又は上記式(3)で示される結合単位Aと上記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤の含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは4質量部以上、より好ましくは6質量部以上、更に好ましくは8質量部以上である。4質量部未満であると、破壊強度が大きく低下する傾向がある。また、該含有量は、シリカ100質量部に対して、好ましくは15質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。15質量部を超えると、シランカップリング剤を配合することによる破壊強度(破壊特性)の向上や転がり抵抗低減などの効果が充分に得られない傾向がある。
上記含有量は、上記式(2)で表されるシランカップリング剤及び上記式(3)で示される結合単位Aと上記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤を併用する場合は、合計含有量を意味する。
【0070】
本発明では、下記式(5)で表される加硫促進剤を配合することが好ましい。これにより、メルカプト基を有するシランカップリング剤を使用した場合であっても、スコーチの発生を抑制でき、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)をバランスよく向上できる。
上記式(3)で示される結合単位Aと上記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤を使用した場合、xが0の場合であっても(すなわち結合単位Aが存在しなくても)、下記式(5)で表される加硫促進剤により、スコーチの発生を抑制できる。
一方、xが0でない(すなわち結合単位Aが存在する)場合には、下記式(5)で表される加硫促進剤と、結合単位Aとにより、相乗的にスコーチの発生を抑制できる。
【0071】
【化10】

【0072】
上記式(5)のzは1〜8(好ましくは1〜5、より好ましくは1〜3)の整数を表す。zが0であるとスコーチタイムが短くなり、加工性が悪化する傾向があり、zが9以上であると加硫速度が遅くなる傾向にあり、好ましくない。
【0073】
上記式(5)で表される加硫促進剤としては、フレキシス社製のTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド)などが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0074】
上記式(5)で表される加硫促進剤の配合量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは0.2質量部以上、より好ましくは0.4質量部以上である。0.2質量部未満では、加硫速度が遅くなりすぎて好ましくない。また、上記配合量は、好ましくは6.0質量部以下、より好ましくは5.0質量部以下、更に好ましくは4.0質量部以下、特に好ましくは3.0質量部以下、最も好ましくは2.0質量部以下、特に好ましくは1.0質量部以下である。6.0質量部を超えると、加硫速度が速くなりすぎて、加工性が悪化するおそれがある。
【0075】
本発明では、上記式(5)で表される加硫促進剤と共に、他の加硫促進剤を併用してもよい。併用できる他の加硫促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系、チアゾール系、チウラム系、チオウレア系、グアニジン系、ジチオカルバミン酸系、アルデヒド−アミン系若しくはアルデヒド−アンモニア系、イミダゾリン系、又は、キサンテート系加硫促進剤が挙げられる。なかでも、スコーチタイム、加硫速度が適切であり、ゴム強度に有利であるという理由から、スルフェンアミド系加硫促進剤が好ましい。
【0076】
スルフェンアミド系加硫促進剤としては、例えば、N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(TBBS)、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(CBS)、N,N’−ジシクロヘキシル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(DZ)等が挙げられる。なかでも、スコーチタイム、加硫速度が適切であるという理由から、TBBSが好ましい。
【0077】
本発明では、カーボンブラックを配合してもよい。これにより、ゴムの強度を向上することができる。使用できるカーボンブラックとしては、GPF、FEF、HAF、ISAF、SAFなどが挙げられるが、特に限定されない。なお、カーボンブラックは単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0078】
カーボンブラックのチッ素吸着比表面積(NSA)は30m/g以上が好ましく、70m/g以上がより好ましい。30m/g未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は250m/g以下が好ましく、150m/g以下がより好ましく、100m/g以下が更に好ましい。250m/gを超えると、未加硫時の粘度が非常に高くなり、加工性が悪化する傾向、または、低燃費性が悪化する傾向がある。
なお、カーボンブラックのチッ素吸着比表面積は、JIS K6217のA法によって求められる。
【0079】
本発明のゴム組成物がカーボンブラックを含有する場合、カーボンブラックの含有量は、ゴム成分100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは15質量部以上である。10質量部未満では、充分な補強性が得られない傾向がある。また、該カーボンブラックの含有量は、好ましくは60質量部以下、より好ましくは50質量部以下、更に好ましくは40質量部以下である。60質量部を超えると、発熱が大きくなり、低燃費性が悪化する傾向がある。
【0080】
本発明のゴム組成物には、前記成分以外にも、ゴム組成物の製造に一般に使用される配合剤、例えば、クレー等の補強用充填剤、ステアリン酸、酸化亜鉛、各種老化防止剤、オイル等の軟化剤、ワックス、硫黄などの加硫剤などを適宜配合することができる。
【0081】
本発明のゴム組成物の製造方法としては、公知の方法を用いることができ、例えば、前記各成分をオープンロール、バンバリーミキサーなどのゴム混練装置を用いて混練し、その後加硫する方法等により製造できる。
【0082】
本発明のゴム組成物は、タイヤ内腔面をなすように形成されるチェーファーに使用されるもので、この部材により、空気透過量を低減して、タイヤ内圧を保持することができる。具体的には、特開2008−291091号公報の図1、特開2007−160980号公報の図1〜2などに示される部材に使用される。
【0083】
本発明の空気入りタイヤは、上記ゴム組成物を用いて通常の方法によって製造される。すなわち、必要に応じて各種添加剤を配合したゴム組成物を、未加硫の段階でタイヤのチェーファーの形状に合わせて押し出し加工し、タイヤ成型機上にて通常の方法にて成形し、他のタイヤ部材とともに貼り合わせ、未加硫タイヤを形成する。この未加硫タイヤを加硫機中で加熱加圧してタイヤを製造できる。
【0084】
また、本発明のタイヤは、乗用車用タイヤ、バス用タイヤ、トラック用タイヤ等として好適に用いられる。
【実施例】
【0085】
実施例に基づいて、本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらのみに限定されるものではない。
【0086】
以下、実施例及び比較例で使用した各種薬品について、まとめて説明する。
NR:TSR20
BR(1):宇部興産(株)製のBR150B(シス含量97質量%、非変性)
BR(2):住友化学(株)製の変性ブタジエンゴム(ビニル含量15質量%、上記式(1)のR、R及びR=−OCH、R及びR=−CHCH、n=3)
シリカ:ローディアジャパン(株)製のZ115Gr(NSA:112m/g)
カーボンブラック:三菱化学(株)製のダイヤブラックN330(NSA:75m/g)
シランカップリング剤(1):エボニックデグッサ社製のSi75(ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)ジスルフィド)
シランカップリング剤(2):エボニックデグッサ社製のSi363(下記式で表されるシランカップリング剤(上記式(2)のR=−O−(C−O)−C1327、R=C−O−、R=−O−(C−O)−C1327、R=−C−))
【化11】

シランカップリング剤(3):Momentive社製のNXT−Z100(結合単位Bのみからなる重合体(上記式(3)、(4)において、結合単位A:0モル%(x=0)、結合単位B:100モル%、x+y:100))
プロセスオイル:出光興産(株)製のダイアナプロセスPS32
ワックス:大内新興化学工業(株)製のサンノックワックス
老化防止剤:フレキシス社製のサントフレックス13(N−(1,3−ジメチルブチル)−N’−フェニル−p−フェニレンジアミン)
ステアリン酸:日油(株)製のステアリン酸「桐」
酸化亜鉛:三井金属鉱業(株)製の酸化亜鉛1号
硫黄:軽井沢精錬所(株)製の硫黄
加硫促進剤(1):大内新興化学工業(株)製のノクセラーNS(N−tert−ブチル−2−ベンゾチアゾリルスルフェンアミド)
加硫促進剤(2):フレキシス社製のTBzTD(テトラベンジルチウラムジスルフィド、上記式(5)のz=2)
【0087】
実施例1〜6及び比較例1〜7
表1に示す配合処方にしたがい、1.7Lバンバリーミキサーを用いて、硫黄及び加硫促進剤以外の材料を150℃の条件下で4分間混練りし、混練り物を得た。次に、得られた混練り物に硫黄及び加硫促進剤を添加し、2軸オープンロールを用いて、80℃の条件下で3分間練り込み、未加硫ゴム組成物を得た。
更に、得られた未加硫ゴム組成物をシート状に圧延後、金型で175℃、21kgf/cmの条件下で15分間プレス加硫し、加硫ゴムシートを得た。
また、得られた未加硫ゴム組成物をチェーファー形状に成形し、他のタイヤ部材と貼り合わせてタイヤに成形し、170℃で12分間加硫することで試験用タイヤ(タイヤサイズ:255/40R20)を製造した。
【0088】
得られた加硫ゴムシート、試験用タイヤについて下記の評価を行った。結果を表1に示す。
【0089】
(粘弾性試験)
粘弾性スペクトロメーターVES−F−3((株)岩本製作所製)を用いて、温度60℃、初期歪み10%、動歪み2%、周波数10Hzの条件下で、各加硫ゴムシートのtanδ(損失正接)を測定した。tanδが小さいほど低燃費性に優れる。
【0090】
(ゴム強度(引き裂き強度))
加硫ゴムシートについて、JIS K6252に準じて、切り込みなしアングル形試験片を用いて、引き裂き試験を室温(25℃)で実施し、引き裂き強度(kN/m)を測定した。引き裂き強度が大きいほどゴム強度が高く、損傷しにくいことを示す。
【0091】
(リム外し試験)
通常のタイヤチェンジャーを用いて、リムから試験用タイヤを外してチェーファー部の損傷を目視で確認した(○:損傷無し、×:ゴム切れなど損傷あり)。
【0092】
【表1】

【0093】
変性ブタジエンゴムと、シリカと、上記式(2)で表されるシランカップリング剤及び/又は上記式(3)で示される結合単位Aと上記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含む実施例は、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)をバランスよく向上できた。また、タイヤをリムから外した際にも損傷は見られなかった。
【0094】
一方、上記シランカップリング剤及び上記変性ブタジエンゴムを配合しない比較例1〜3、上記シランカップリング剤を配合しない比較例4〜6、上記変性ブタジエンゴムを配合しない比較例7は、実施例と比較して、低発熱性(低燃費性)、ゴム強度(引き裂き強度)が劣っていた。また、タイヤをリムから外した際にも損傷が見られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムを含むゴム成分と、
シリカと、
下記式(2)で表されるシランカップリング剤及び/又は下記式(3)で示される結合単位Aと下記式(4)で示される結合単位Bからなるシランカップリング剤とを含むチェーファー用ゴム組成物。
【化1】

(式(1)中、R、R及びRは、同一若しくは異なって、分岐若しくは非分岐のアルキル基、分岐若しくは非分岐のアルコキシ基、分岐若しくは非分岐のシリルオキシ基、分岐若しくは非分岐のアセタール基、カルボキシル基、メルカプト基又はこれらの誘導体を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、水素原子又は分岐若しくは非分岐のアルキル基を表す。nは整数を表す。)
【化2】

(式(2)中、Rは−O−(R10−O)−R11(m個のR10は、同一又は異なって、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30の2価の炭化水素基を表す。R11は、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。mは1〜30の整数を表す。)で表される基を表す。R及びRは、同一若しくは異なって、Rと同一の基、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜12のアルキル基又は−O−R12(R12は水素原子、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数6〜30のアリール基又は炭素数7〜30のアラルキル基を表す。)で表される基を表す。Rは、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基を表す。)
【化3】

【化4】

(式(3)、(4)中、xは0以上の整数である。yは1以上の整数である。R13は水素、ハロゲン、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキル基若しくはアルキレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニル基若しくはアルケニレン基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニル基若しくはアルキニレン基、又は該アルキル基若しくは該アルケニル基の末端が水酸基若しくはカルボキシル基で置換されたものを示す。R14は水素、分岐若しくは非分岐の炭素数1〜30のアルキレン基若しくはアルキル基、分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルケニレン基若しくはアルケニル基、又は分岐若しくは非分岐の炭素数2〜30のアルキニレン基若しくはアルキニル基を示す。R13とR14とで環構造を形成してもよい。)
【請求項2】
下記式(5)で表される加硫促進剤を含む請求項1記載のチェーファー用ゴム組成物。
【化5】

(式(5)中、zは1〜8の整数を表す。)
【請求項3】
ゴム成分100質量%中の前記式(1)で表される化合物により変性されたブタジエンゴムの含有量が20質量%以上である請求項1又は2記載のチェーファー用ゴム組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のゴム組成物を用いて作製したチェーファーを有する空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2011−178958(P2011−178958A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46881(P2010−46881)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000183233)住友ゴム工業株式会社 (3,458)
【Fターム(参考)】