説明

チェーンコンベヤ装置

【課題】直線走行速度の脈動がなく円滑に走行可能となるとともに、高さをコンパクトにし、簡単な構造のチェーンコンベヤ装置を提供すること。
【解決手段】所定の搬送路に沿って無端状にそれぞれ独立して平行に設けられた少なくとも2条のコンベヤチェーン110を有するチェーンコンベヤ装置100において、各コンベヤチェーン110搬送面の反対側に設けられた係合手段が、搬送方向の少なくとも1個所において同期して回転駆動されるスクリュー軸121と係合して駆動されること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の搬送路に沿って無端状にそれぞれ独立して平行に設けられた少なくとも2条のコンベヤチェーンと、各コンベヤチェーンを同期して走行させる駆動機構を有するチェーンコンベヤ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、自動車ボディの搬送、組立ライン等の大型の被搬送物を搬送する装置として、上方に搬送面を有する2条のコンベヤチェーンを所定の搬送路に沿って独立して平行に設け、それらを同期して駆動することで、2条のコンベヤチェーンに跨って載置された被搬送物を搬送しながら組立等の作業を行うように構成されたチェーンコンベヤ装置が知られている。
【0003】
これらのチェーンコンベヤ装置500は、図8に示すように、コンベヤチェーン510が駆動スプロケット530および従動スプロケット540の間に無端状に掛け回されており、駆動スプロケット530がモーター等の駆動機構520によって回転され、所定の搬送路に沿ってコンベヤチェーン510が走行するように構成されている。
【0004】
このようなチェーンコンベヤ装置500では、駆動スプロケット530に掛け回されたコンベヤチェーン510が多角形状となるため、駆動スプロケット530を等速で回転させた場合、コンベヤチェーン510の直線走行速度に脈動が発生するという問題があった。
【0005】
このようなコンベヤチェーンの直線走行速度の脈動を低減させるために、計算で求められる回転角とコンベヤチェーンの直線走行速度の関係を用いて、コンベヤチェーンの直線走行速度を一定とするために指令すべき速度を計算し、駆動スプロケットの回転角度に応じて当該指令すべき速度で駆動スプロケットを制御するものが知られている(例えば、特許文献1等参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特表2005−510432号公報(第4−5頁、図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
直線走行速度に脈動が発生するチェーンコンベヤ装置500では、駆動スプロケット530の直径が小さく歯数が少ない場合はコンベヤチェーン510の直線走行速度の脈動が大きくなり円滑な搬送を阻害しライン上での作業に支障が生じるため、駆動スプロケット530を大きくせざるを得ず、チェーンコンベヤ装置500全体が高さ方向に大きくなってしまうという問題があった。
【0008】
また、駆動スプロケットの回転角度に応じて当該指令すべき速度で駆動スプロケットを制御するものは、正確に制御可能なモーターを採用し複雑な検出・制御回路を設ける必要があり、駆動機構が複雑で高価なものになるという問題があった。
【0009】
さらに、駆動スプロケットから離れた位置では、コンベヤチェーンの張力変動や振動によって走行方向への速度の変動が発生し、作業位置における円滑な走行が損なわれるという問題があった。
【0010】
本発明は、前述したような従来技術の問題を解決するものであって、すなわち、本発明の目的は、直線走行速度の脈動がなく円滑に走行可能となるとともに、高さをコンパクトにし、簡単な構造のチェーンコンベヤ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本請求項1に係る発明は、所定の搬送路に沿って無端状にそれぞれ独立して平行に設けられた少なくとも2条のコンベヤチェーンと、各コンベヤチェーンを同期して走行させる駆動機構を有するチェーンコンベヤ装置において、前記駆動機構が、各コンベヤチェーンの搬送方向の少なくとも1個所において同期して回転駆動されるスクリュー軸を有し、前記コンベヤチェーンが、搬送面の反対側に前記スクリュー軸と係合する係合手段を有することにより、前記課題を解決するものである。
【0012】
本請求項2に係る発明は、請求項1に記載されたチェーンコンベヤ装置の構成に加えて、前記搬送路には、前記コンベヤチェーンの走行経路を規定するガイドレールが設けられ、前記コンベヤチェーンが、その側方に設けられ前記ガイドレールに上方から当接転動する走行ローラと、その搬送面の反対側に設けられ前記ガイドレールに側方から当接転動して横荷重に対抗するガイドローラとを有することにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0013】
本請求項3に係る発明は、請求項2に記載されたチェーンコンベヤ装置の構成に加えて、前記係合手段が、スクリュー軸に設けられたスクリュー溝に当接転動する係合ローラを有し、該係合ローラが、前記ガイドローラと同一軸に設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0014】
本請求項4に係る発明は、請求項1乃至請求項3のいずれかに記載されたチェーンコンベヤ装置の構成に加えて、前記スクリュー軸が、前記搬送路の作業位置に設けられていることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【0015】
本請求項5に係る発明は、請求項1乃至請求項4のいずれかに記載されたチェーンコンベヤ装置の構成に加えて、前記スクリュー溝の螺旋ピッチが、前記コンベヤチェーンのチェーンピッチの整数倍あるいは整数分の1であることにより、前記課題をさらに解決するものである。
【発明の効果】
【0016】
本請求項1に係る発明のチェーンコンベヤ装置は、所定の搬送路に沿って無端状にそれぞれ独立して平行に設けられた少なくとも2条のコンベヤチェーンと、各コンベヤチェーンを同期して走行させる駆動機構を有するチェーンコンベヤ装置において、駆動機構が各コンベヤチェーンの搬送方向の少なくとも1個所において同期して回転駆動されるスクリュー軸を有し、コンベヤチェーンが搬送面の反対側に前記スクリュー軸と係合する係合手段を有することにより、スクリュー軸を一定速度で回転駆動することでコンベヤチェーンが一定速度で走行するため、簡単な構造でコストの安い駆動機構で直線走行速度の脈動をなくすことができるとともに、スクリュー軸が挿入できる程度までスプロケットの径を小さくすることができるため、チェーンコンベヤ装置全体の高さを低くすることができる。
【0017】
本請求項2に係る発明のチェーンコンベヤ装置は、請求項1に係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、搬送路にはコンベヤチェーンの走行経路を規定するガイドレールが設けられ、コンベヤチェーンがその側方に設けられガイドレールに上方から当接転動する走行ローラと、その搬送面の反対側に設けられガイドレールに側方から当接転動して横荷重に対抗するガイドローラとを有することにより、それぞれ独立した各コンベヤチェーンに跨って大きな被搬送物を載置しても走行ローラがガイドレールに上方から当接転動して荷重を受けることで、被搬送物の姿勢を安定させて円滑に走行させることができるとともに、スクリュー軸による各コンベヤチェーンに対する横方向の力をガイドローラがガイドレールに側方から当接転動することで受けることにより幅方向への蛇行やねじれ等を防止し円滑に走行させることができる。
【0018】
本請求項3に係る発明のチェーンコンベヤ装置は、請求項2に係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、係合手段がスクリュー軸に設けられたスクリュー溝に当接転動する係合ローラを有し、該係合ローラがガイドローラと同一軸に設けられていることにより、コンベヤチェーンの構造がより簡単となるとともに、スクリュー軸による各コンベヤチェーンに対する横方向の力を直近でガイドローラがガイドレールに側方から当接転動することで受けることにより、さらに幅方向への蛇行やねじれ等を防止し円滑に走行させることができる。
【0019】
本請求項4に係る発明のチェーンコンベヤ装置は、請求項1乃至請求項3のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、スクリュー軸が搬送路の作業位置に設けられていることにより、作業位置において、コンベヤチェーンの張力変動や振動によって走行方向への速度の変動が発生することがなく、円滑な走行を確保することができる。
【0020】
本請求項5に係る発明のチェーンコンベヤ装置は、請求項1乃至請求項4のいずれかに係るチェーンコンベヤ装置が奏する効果に加えて、スクリュー溝の螺旋ピッチが、コンベヤチェーンのチェーンピッチの整数倍あるいは整数分の1であることにより、係合手段の取付間隔やスクリュー軸の長さを自由に設定することができるため、チェーンコンベヤ装置の設置環境に応じて据え付け、組み換え等の自由度を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の一実施例であるチェーンコンベヤ装置の全体側面図。
【図2】図1のA−A断面図。
【図3】図1のB−B断面図。
【図4】図1の作業位置付近の側面図。
【図5】図4の一部拡大図。
【図6】図2の一部拡大図。
【図7】本発明の一実施例であるチェーンコンベヤ装置のスプロケット近傍の側面図。
【図8】従来のチェーンコンベヤ装置の説明図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明のチェーンコンベヤ装置は、所定の搬送路に沿って無端状にそれぞれ独立して平行に設けられた少なくとも2条のコンベヤチェーンと、各コンベヤチェーンを同期して走行させる駆動機構を有するチェーンコンベヤ装置において、駆動機構が各コンベヤチェーンの搬送方向の少なくとも1個所において同期して回転駆動されるスクリュー軸を有し、コンベヤチェーンが搬送面の反対側にスクリュー軸と係合する係合手段を有しており、直線走行速度の脈動がなく円滑に走行可能となるとともに、高さがコンパクトとなり、簡単な構造となるという効果を発揮するものであれば、その具体的な実施態様は如何なるものであっても何ら構わない。
【0023】
すなわち、本発明のチェーンコンベヤ装置のスクリュー軸は、円柱状の軸の表面に螺旋状のスクリュー溝を設けたものであっても良く、円柱状の軸の外周に板を螺旋状に立設したものでも良く、螺旋状にスリットの入った円筒板を円柱状の軸に直接あるいは間隔をあけて固定したものでも良く、螺旋状の溝部に係合手段が係合するものであればいかなる構造のものであっても良い。
【実施例】
【0024】
以下に、本発明の実施例であるチェーンコンベヤ装置について、図面に基づいて説明する。
【0025】
本発明の一実施例であるチェーンコンベヤ装置100は、図1乃至図3に示すように、所定の搬送路に沿って2条のコンベヤチェーン110がスプロケット140に無端状に掛け回されてそれぞれ独立して平行に設けられ、各コンベヤチェーン110が走行経路を規定するガイドレール101に沿って駆動機構120によって同期して走行するように構成され、2条のコンベヤチェーン110の上方に被搬送物Wが跨るように載置されてコンベヤチェーン110の走行に搬送されるように構成されている。
【0026】
なお、本実施例では、搬送台車150が2条のコンベヤチェーン110の中間に設けられ、搬送路の一部の区間では被搬送物Wの荷重を搬送台車150が受け、コンベヤチェーン110は搬送方向への駆動力のみを伝達するように構成されている。
さらに、被搬送物Wがコンベヤチェーン110の駆動力からも解放され、搬送台車150が荷重と搬送を両方受け持つように構成しても良い。
【0027】
駆動機構120は、コンベヤチェーン110の搬送方向に向いた回転軸をスクリュー軸121と、該スクリュー軸121を回転駆動するモーター122とを有しており、スクリュー軸121のスクリュー溝123が各コンベヤチェーン110の搬送面の反対側に設けられた係合手段と係合するように設けられている。
【0028】
コンベヤチェーン110は、図4乃至図6に示すように、その側方にガイドレール101の走行面102に上方から当接転動する走行ローラ113が設けられるとともに、搬送面の反対側にガイドレール101のサイドガイド103に側方から当接転動して横荷重に対抗するガイドローラ112が設けられている。
【0029】
そして、スクリュー軸121のスクリュー溝123に係合する係合手段として、係合ローラ111がガイドローラ112の設けられたガイド軸114を共用して設けられ、スクリュー軸121が回転することにより係合ローラ111が搬送方向に駆動されてコンベヤチェーン110が走行し、載置された被搬送物Wが搬送される。
【0030】
この時、係合ローラ111はスクリュー軸121から横方向の力も受けることとなるが、係合ローラ111とガイドローラ112がガイド軸114に同軸に設けられているため、ガイドローラ112がサイドガイド103に側方から当接転動して直接ガイド軸114の横方向の動きを規制できるため、コンベヤチェーン110に走行方向以外の横方向の動きが発生することはない。
【0031】
以上のように構成された本発明の一実施例であるチェーンコンベヤ装置100は、スプロケット140に無端状に掛け回されてスクリュー軸121を一定速度で回転駆動することでコンベヤチェーン110が脈動することなく一定速度で走行するため、図7に示すように、係合ローラ111が回転軸に衝突しない範囲でスプロケット140の直径を小さくすることができチェーンコンベヤ装置の高さを低くすることができる。
【0032】
また、コンベヤチェーン110の駆動機構120は、スクリュー軸121の直径分のスペースがあれば設置可能なため、いかなる位置でもチェーンコンベヤ装置を高くすることなく配置することができるため、作業位置に配置することで、コンベヤチェーン110の張力変動や振動によって走行方向への速度の変動が発生することがなく、円滑な走行を確保することができる。
【0033】
本実施例では、スクリュー軸121のスクリュー溝123の螺旋ピッチがコンベヤチェーン110のチェーンピッチの2倍に設定されており、係合ローラ111がコンベヤチェーン110の4ピッチに1つずつ設けられており、必要に応じてスクリュー軸121の長さを設定することでスクリュー軸121のスクリュー溝123に係合する係合ローラ111の数を変更して、駆動力を調節することができる。
【0034】
また、スクリュー溝123の螺旋ピッチとコンベヤチェーン110のチェーンピッチは、整数倍あるいは整数分の1であれば、係合ローラ111の取付間隔やスクリュー軸121の長さを自由に設定することができるため、チェーンコンベヤ装置100の設置環境に応じて据え付け、組み換え等の自由度を向上することができる。
【0035】
以上説明したように、本発明のチェーンコンベヤ装置によれば、簡単な構造でコストの安い駆動機構で直線走行速度の脈動をなくすことができるとともに、スクリュー軸が挿入できる程度までスプロケットの径を小さくすることができるため、チェーンコンベヤ装置全体の高さを低くすることができるなど、その効果は甚大である。
【0036】
なお、上記実施例では、2条のコンベヤチェーン110が平行に配置されているが、3列以上が配置されても良い。
また、駆動機構120は、コンベヤチェーン110の走行経路上の複数個所に設けられても良い。
【0037】
また、駆動機構120のモーター122は、各スクリュー軸121に対して1つずつ設けられ、側方から伝動機構を介して駆動しているが、モーターの軸に直接スクリュー軸を結合して回転するようにしても良く、各スクリュー軸121を連動するように伝動機構を設け、1つのモーターで複数のスクリュー軸121を回転駆動するように構成しても良い。
【符号の説明】
【0038】
100、500 ・・・チェーンコンベヤ装置
101 ・・・ガイドレール
102 ・・・走行面
103 ・・・サイドガイド
110、510 ・・・コンベヤチェーン
111 ・・・係合ローラ
112 ・・・ガイドローラ
113 ・・・走行ローラ
120、520 ・・・駆動機構
121 ・・・スクリュー軸
122 ・・・モーター
123 ・・・スクリュー溝
530 ・・・駆動スプロケット
140 ・・・スプロケット
540 ・・・従動スプロケット
150 ・・・搬送台車
W ・・・被搬送物

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の搬送路に沿って無端状にそれぞれ独立して平行に設けられた少なくとも2条のコンベヤチェーンと、各コンベヤチェーンを同期して走行させる駆動機構を有するチェーンコンベヤ装置において、
前記駆動機構が、各コンベヤチェーンの搬送方向の少なくとも1個所において同期して回転駆動されるスクリュー軸を有し、
前記コンベヤチェーンが、搬送面の反対側に前記スクリュー軸と係合する係合手段を有することを特徴とするチェーンコンベヤ装置。
【請求項2】
前記搬送路には、前記コンベヤチェーンの走行経路を規定するガイドレールが設けられ、
前記コンベヤチェーンが、その側方に設けられ前記ガイドレールに上方から当接転動する走行ローラと、その搬送面の反対側に設けられ前記ガイドレールに側方から当接転動して横荷重に対抗するガイドローラとを有することを特徴とする請求項1に記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項3】
前記係合手段が、スクリュー軸に設けられたスクリュー溝に当接転動する係合ローラを有し、
該係合ローラが、前記ガイドローラと同一軸に設けられていることを特徴とする請求項2に記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項4】
前記スクリュー軸が、前記搬送路の作業位置に設けられていることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載のチェーンコンベヤ装置。
【請求項5】
前記スクリュー溝の螺旋ピッチが、前記コンベヤチェーンのチェーンピッチの整数倍あるいは整数分の1であることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載のチェーンコンベヤ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−111244(P2011−111244A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−266328(P2009−266328)
【出願日】平成21年11月24日(2009.11.24)
【出願人】(000003355)株式会社椿本チエイン (861)
【Fターム(参考)】