説明

チェーン式伝動部材

【課題】チェーンが循環経路においてよりスムーズに循環できる、チェーン式伝動部材を提供する。
【解決手段】本発明は、主にスクリュー1と、ナット2と、回流部材3と、チェーン4と、転動体5とを含み、回流部材3には、回流路32を設け、前記回流路32内にお互いに対応する第一導引部321と第二導引部322を設置し、第一導引部321と第二導引部322は、一端から他端へ向かって同一方向に160〜200度ねじられて形成され、且つ第一脚部31Aにおける第一導引部321と第二導引部322の両端と、第二脚部31Bにおける第一導引部321と第二導引部322の両端は、位置と方向が異なるようにしたことを特徴とする。これにより、チェーンが回流路においてよりスムーズに循環できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はリニア伝動部材に係り、特にチェーン式伝動部材に関する。
【背景技術】
【0002】
ボールスクリューの原理は、スクリューとナットとの間に鋼ボールを介在し、鋼ボールの回転運動によって、伝統のアクメスクリュー(ACME)の滑動伝動を取り換えることにある。これによって、摩擦消耗が大きく低減され、高効率と高精度が実現される。
【0003】
ボールの使用は、スクリューをよりスムーズに移動させることができるが、隣り合うボールが回転しているときに、お互いに衝突し易く、而も非常に大きな騒音を発生し、これにより、ボールの寿命が短縮され、故にスクリュー全体装置の寿命に影響を及ぼす。
【0004】
上記問題を解決するために、チェーン式固定ボール装置が提案され、例えば、アメリカ合衆国特許第5993064号公報(特許文献1)には、改良式ボールチェーンが開示されている。該ボールチェーンは、弾性材料により製造され、ボールの四つの外面を固定するための4個帯状シートを含み、任意方向に自由に曲げられても、ボールを同一の位置に固定することができるので、リニアスライドレール及びボールスクリュー等の直線案内装置に適用される。
【0005】
一方、ボールスクリューモジュールには、循環経路を設ける必要があり、これにより、ボールを螺旋状溝・槽へ導引して回流させるとともに、ボールをたえず循環する軌道を形成する。上記ボールチェーンは、前記循環経路を通過させる時に、運動方向を変える必要があり、これによって循環可能に回流できる。ところで、従来技術では、上記ボールチェーンは循環経路をスムーズに通過して進行方向を変えることが困難であったため、不適当なねじりや引っ張りによって断裂される場合があった。また、前記特許文献1では、ボールチェーンがスクリュー装置に応用でき、且つナット内にボールチェーンを回流するための循環装置を設けると記載されているが、如何にスムーズにボールチェーンに循環装置を通過させるかについて一切開示されていない。
【0006】
実際に使用する場合は、チェーンの両側を螺旋軌道から循環装置へ進入させる時、チェーンを3次元に回転しなければならない。この際、回転経路を仮に特殊な角度の設計により行われなれば、チェーンは内側が圧縮され、外側が引っ張られ、両側の変形量が異なるため、断裂が発生する恐れがある。故に現在、ボールチェーンを具えるリニアスライドルールは市販されているが、ボールチェーンを具えるボールスクリューは設計も製造もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】アメリカ合衆国特許第5993064号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、上記の従来技術の問題点に鑑み、本発明者らは、研究に研究を重ねて改良した後、漸く下記目的を達成できる発明を生み出すことができた。
【0009】
本発明の主な目的は、チェーンが循環経路においてよりスムーズに循環することができる、チェーン式伝動部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明の請求項1は、外面に螺旋状の転動溝が形成されるスクリューと、前記スクリューを穿設するための穿孔と、前記穿孔内面に前記転動溝に対応して形成される転動槽と、前記転動溝と前記転動槽とにより形成される負荷経路と、前記穿孔及び前記負荷経路と連通する複数の収容孔とを有するナットと、前記収容孔に設置され、両端に第一脚部と第二脚部とを具え、前記第一脚部と前記第二脚部とを貫通して形成される門型回流路と、前記門型回流路と接続して形成される循環経路と、前記門型回流路内に設けられるとともに、一端から他端へ向かって同一方向に160〜200度ねじられて形成され、且つ前記第一脚部と前記第二脚部の端部におかれる位置と方向が異なるそれぞれの第一導引部と第二導引部とを有する回流部材と、複数の間隔部と二つの連結部とを具え、前記連結部は前記間隔部両側に位置されて前記間隔部を連結することにより、各間隔部間に収容空間を形成させるととともに、回流路に入る時、前記連結部は前記第一導引部と前記第二導引部とへ載置され、且つ前記第一導引部と前記第二導引部の導引によってねじりが発生されるチェーンと、前記収容空間に載置され、前記スクリューと前記ナットとの間を転動媒体として転動する複数の転動体と、からなるチェーン式伝動部材である。
【0011】
本発明の請求項2は、請求項1において、前記第一導引部と前記第二導引部の両端は、前記スクリューと前記ナットとの間に形成される隙間と係合してなる。
【0012】
本発明の請求項3は、請求項1または2において、前記連結部は前記チェーンが前記負荷経路へ載置されたとき、前記スクリューと前記ナットとの間に形成される隙間内に載置されてなる。
【0013】
本発明の請求項4は、請求項1乃至3の何れか1項において、前記第一脚部における第一導引部は前記第一脚部の内側にあり、前記第一脚部における第二導引部は前記第一脚部の外側にあり、前記第二脚部における第一導引部は第二脚部の外側にあり、前記第二脚部における第二導引部は第二脚部の内側にある。
【0014】
本発明の請求項5は、請求項1乃至4の何れか1項において、前記第一導引部と前記第二導引部をねじるための準最適なねじり角度が175〜185度である。
【0015】
本発明の請求項6は、請求項1乃至4の何れか1項において、前記第一導引部と前記第二導引部をねじるための最適なねじり角度が180度である。
【0016】
本発明の請求項7は、請求項1乃至6の何れか1項において、前記回流部材は、複数個からなってもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明は、上述した構成を有するものであるため、回流路の第一導引部と第二導引部を同一方向にねじって設置することにより、チェーンを循環経路をよりスムーズに通過させることができる。
【0018】
また、且つ第一脚部における第一導引部と第二導引部の端部と、第二脚部における第一導引部と第二導引部の端部は、位置と方向が異なるようにしたので、チェーンが回流路においてよりスムーズに回流できる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るチェーン式伝動部材の斜視図である。
【図2】本発明に係るチェーン式伝動部材のナットの一部見取図である。
【図3】本発明に係るチェーン式伝動部材のナットと回流部材を取り除いた後の斜視図である。
【図4】本発明に係るチェーン式伝動部材の回流部材の斜視図である。
【図5】図4の線A−Aの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の特徴及び技術内容をより一層理解するために、本発明に係る実施形態及び図面を参照されたい。但し、当該実施形態または図面など単に本発明を説明または参考するために用いられるもので、本発明に対して如何なる制限はない。
【0021】
図1乃至図5を参照されたい。本発明のチェーン式伝動部材は主にスクリュー1と、ナット2と、回流部材3と、チェーン4と、転動体5とを含む。
【0022】
スクリュー1は、長柱状を呈し、外面に転動溝11が形成される。ナット2は、スクリュー1を穿設するための穿孔21と、穿孔21内面に転動溝11に対応して形成される転動槽211と、転動溝11と転動槽211とにより形成される負荷経路と、穿孔21及び前記負荷経路と連通する複数の収容孔(図示せず)を有する。
【0023】
回流部材3は、図5に示すように、第一部材3Aと第二部材3Bとにより構成される。また、三つの部材により構成されてもよい。回流部材3は、外観が門型(又は左横倒したコ字)であり、両端に第一脚部31Aと第二脚部31Bとを具え、第一脚部31Aと第二脚部31Bは収容孔に設けられる。回流部材3は、第一脚部31Aと第二脚部31Bを貫通して門型回流路32を形成する。回流路32は、循環経路と連通して一つの循環経路を形成する。また、回流路32内には、お互いに対応する第一導引部321と第二導引部322とが設けられ、第一導引部321と第二導引部322の両端は、スクリュー1の外形とナット2の内径との間に形成される隙間と係合する。第一導引部321と第二導引部322は、一端から他端へ向かって同一方向に160〜200度ねじられて設置される。ここでは、前記第一導引部と前記第二導引部をねじるための準最適なねじり角度が175〜185度であり、最適なねじり角度が180度である。さらに、第一脚部31Aにおける第一導引部321と第二導引部322の端部と、第二脚部31Bにおける第一導引部321と第二導引部322の端部とは、位置と方向が異なっている。
【0024】
図4に示すように、第一脚部31Aにおける第一導引部321は第一脚部31Aの内側Pにあり、第一脚部31Aにおける第二導引部322は第一脚部31Aの外側Rにあり、第二脚部31Bにおける第一導引部321は第二脚部31Bの外側Rにあり、第二脚部31Bにおける第二導引部322は第二脚部31Bの内側Pにある。
【0025】
チェーン4は、複数の間隔部41と二つの連結部42とを具え、連結部42は間隔部41両側に位置されて間隔部41を連結することにより、各間隔部41間に収容空間を形成させる。チェーン4が負荷経路にある時、連結部42はスクリュー1の外径とナット2の内径との間に形成される隙間に載置され、チェーン4が回流路32にある時、連結部42は第一導引部321と第二導引部322に載置される。而も、チェーン4には、第一導引部321と第二導引部322の導引によって、ねじりが発生される。図3と図4に示すように、チェーン4と、第一導引部321と第二導引部322とは、ねじりの方向が同一である。
【0026】
転動体5は、前記収容空間に載置され、スクリュー1とナット2との間を転動媒体として転動する。
【0027】
以上を総合すると、チェーンが循環経路にある時、その循環が最もスムーズに行われない場所は回流路にある。この回流路の循環を改善するために、本発明は、回流路の第一導引部と第二導引部を同一方向にねじって設置することにより、チェーンの循環をよりスムーズに行わせ、チェーンにおける応力を低減させることができる。したがって、チェーンの断裂の問題を解決し、伝動部材の使用寿命を延長し、且つ伝動部材の精度を高めることができる。
【0028】
以上は本発明の好ましい実施の形態であって、本発明の実施の範囲を限定するものではない。よって、当業者のなしえる修正、もしくは変更であって、この発明の精神の下においてなされ、かつこの発明に対して均等の効果を有するものは、いずれもこの発明の特許請求の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0029】
1 スクリュー
11 転動溝
2 ナット
21 穿孔
211 転動槽
3 回流部材
3A 第一部材
3B 第二部材
31A 第一脚部
31B 第二脚部
32 回流路
321 第一導引部
322 第二導引部
4 チェーン
41 間隔部
42 連結部
5 転動体
R 外側
P 内側

【特許請求の範囲】
【請求項1】
外面に螺旋状の転動溝が形成されるスクリューと、
前記スクリューを穿設するための穿孔と、前記穿孔内面に前記転動溝に対応して形成される転動槽と、前記転動溝と前記転動槽とにより形成される負荷経路と、前記穿孔及び前記負荷経路と連通する複数の収容孔とを有するナットと、
前記収容孔に設置され、両端に第一脚部と第二脚部とを具え、前記第一脚部と前記第二脚部とを貫通して形成される門型回流路と、前記門型回流路と接続して形成される循環経路と、前記門型回流路内に設けられるとともに、一端から他端へ向かって同一方向に160〜200度ねじられて形成され、且つ前記第一脚部と前記第二脚部の端部におかれる位置と方向が異なるそれぞれの第一導引部と第二導引部と、を有する回流部材と、
複数の間隔部と二つの連結部とを具え、前記連結部は前記間隔部両側に位置されて前記間隔部を連結することにより、各間隔部間に収容空間を形成させるととともに、回流路に入る時、前記連結部は前記第一導引部と前記第二導引部とへ載置され、且つ前記第一導引部と前記第二導引部の導引によってねじりが発生されるチェーンと、
前記収容空間に載置され、前記スクリューと前記ナットとの間を転動媒体として転動する複数の転動体と、からなるチェーン式伝動部材。
【請求項2】
前記第一導引部と前記第二導引部の両端は、前記スクリューと前記ナットとの間に形成される隙間と係合してなることを特徴とする、請求項1に記載のチェーン式伝動部材。
【請求項3】
前記連結部は、前記チェーンが前記負荷経路へ載置されたとき、前記スクリューと前記ナットとの間に形成される隙間内に載置されてなることを特徴とする、請求項1または2に記載のチェーン式伝動部材。
【請求項4】
前記第一脚部における第一導引部は前記第一脚部の内側にあり、前記第一脚部における第二導引部は前記第一脚部の外側にあり、前記第二脚部における第一導引部は第二脚部の外側にあり、前記第二脚部における第二導引部は第二脚部の内側にあることを特徴とする、請求項1乃至3の何れか1項に記載のチェーン式伝動部材。
【請求項5】
前記第一導引部と前記第二導引部をねじるための準最適なねじり角度が175〜185度であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載のチェーン式伝動部材。
【請求項6】
前記第一導引部と前記第二導引部をねじるための最適なねじり角度が180度であることを特徴とする、請求項1乃至4の何れか1項に記載のチェーン式伝動部材。
【請求項7】
前記回流部材は、複数個からなることを特徴とする、請求項1乃至6の何れか1項に記載のチェーン式伝動部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−47441(P2011−47441A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−195084(P2009−195084)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(395011229)上銀科技股▲分▼有限公司 (110)
【Fターム(参考)】