説明

チオアラビノフラノシル化合物の製造方法

【課題】チオアラビノフラノシル化合物の新規調製方法を提供する。
【解決手段】A)2,3,5−トリ−O−アリール若しくはアルキル4−キシロースジアリール又はジアルキルジチオアセタールを、脱離基の存在下、4水酸基位で反応させ、対応する1,4−ジチオ−D−アラビノフラノシドを製造し;B)工程A)からの前記アラビノフラノシドを反応させ、酸分解して、対応するO−アセチル−4−チオ−D−アラビノフラノースを形成し;C)工程B)からの前記O−アセチル−4−チオ−アラビノフラノースを、シトシン、5−アザ化合物、6−アザ化合物及びそのブロック誘導体からなる群より選択される化合物と反応させ、対応する4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル化合物を形成し;D)工程C)からの前記アラビノフラノシル化合物を、加水分解で対応するチオ糖誘導体に変換して;そしてE)工程D)のアノマー混合物のα型を分離して、所望の化合物を得る:ことからなるチオアラビノフラノシル化合物の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、あるチオアラビノフラノシル化合物の患者への投与によるガン患者の治療に関する。本発明により用いられる化合物は、良い抗ガン活性を示した。本発明により用いられる化合物は、抗ガン活性を示すことができないα−配置とは対照的に、β−配置である。本発明は、チオアラビノフラノシル化合物との接触による哺乳類細胞中のDNA複製阻害にも関する。本発明は、本発明により用いられる化合物の新規調製方法にも関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍細胞を阻害し殺害することによるガン治療の発展に関し、甚大な数の研究が何年間にもわたり蓄積されている。このような研究で、臨床上定評のある治療の発見にある程度の成功を得る結果が得られたものもあった。にもかかわらず、確実な抗ガン治療を解明することが非常に困難であることから、より多くの努力が続けられている。例えば、ある化合物が細胞毒を有することが発見された場合でも、ガン細胞に対して選択的であるか否かは予測できない。
使用され、広まっている特定の化合物のひとつに、一般にAra−Cと称される、シトシンアラビノシドがある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
本発明は、チオアラビノフラノシル化合物の新規調製方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明により、チオアラビノフラノシルシトシン化合物が抗ガン剤として適していることが発見された。驚くべくことに、チオ糖基の存在により良好な抗腫瘍活性を得ることが可能となる。より具体的には、本発明は、以下の式1:
【0005】
【化1】

【0006】
式中、各Rは、独立して、H、又は、脂肪族若しくは芳香族アシル基を表す;
Aは、
【0007】
【化2】

【0008】
【化3】

【0009】
【化4】

【0010】
及び
【0011】
【化5】

【0012】
からなる群より選択される;
Xは、水素、フッ素、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される:
で表される少なくとも1つの化合物を、抗ガンに効果的な量で抗ガン治療を必要とする哺乳類ホストへ投与することによる哺乳類ホストの治療に関する。
本発明により、上記開示した式1の化合物は、これらの化合物の少なくとも1つと細胞との接触による哺乳類細胞中のDNA複製阻害に使用できることも発見された。
【0013】
本発明は、上記定義した化合物を調製する方法にも関する。本発明により用いられる化合物は、
A)2,3,5−トリ−O−ベンジル−L−キシロース−ジベンジルジチオアセタール等の2,3,5−トリ−O−アリール若しくはアルキル4−キシロースジアリール又はジアルキルジチオアセタールを、脱離基の存在下、4水酸基で反応させ、ベンジル2,3,5−トリ−O−ベンジル−1,4−ジチオ−D−アラビノフラノシド等の対応する1,4−ジチオ−D−アラビノフラノシドを製造し;
B)工程A)の生成物を酸分解して、2,3,5−トリ−O−ベンジル−1−O−アセチル−4−チオ−アラビノフラノース等の対応するO−アセチル−4−チオ−アラビノフラノースを形成し;
C)工程Bの生成物を、シトシン、5−若しくは6−アザ化合物、又は、それらの好適なブロック誘導体で反応させ、シトシンの場合は1−(2,3,5−トリ−O−ベンジル−4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシルシトシン等の対応する4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル化合物を形成し;
D)工程C)の化合物を、加水分解で1−(4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル)シトシン等の対応するチオ糖誘導体に変換して;
E)工程D)のアノマー混合物のα型を分離して、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン等の所望の式1の化合物を得る:
ことにより調製することができる。
【発明の効果】
【0014】
さらに他の本発明の目的及び利点は、以下の詳細な記載から当該技術者に容易に明らかになるが、その記載は単に本発明の実施を企図した最良の形態を例証することにより本発明の好ましい実施形態のみが示され記載されたものである。本発明を実現するにあたり、その他の異なる実施形態が可能であるが、そのいくつかの項目は、本発明から逸れることなく種々の明確な観点から改良することができる。従って、ここに含有される記載は、本来例示的なものであり、制限的なものでないと顧慮される。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】図1a及び1bは、2−ジオキシシチジン、2’−ジオキシチオシチジン、ara−c及びthio ara−cの、そのそれぞれのトリホスフェートへの代謝を示すグラフである。
【図2】図2は、CEM細胞中のara−cトリホスフェート及びthio ara−cトリホスフェートの保持量を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、少なくとも、式1:
【0017】
【化6】

【0018】
で表される化合物を、抗ガンに効果的な量で抗ガン治療の必要な哺乳類ホストへ投与することからなる哺乳類ホストの治療に関する。
式1中、各Rは、独立して、H、又は、脂肪族若しくは芳香族アシル基であることが好ましい。
典型的な脂肪族アシル基は1〜6の炭素原子を含有するものであり、ホルミル基、アセチル基、プロピオニル基が挙げられる。典型的な芳香族アシル基として、芳香族基中7〜10の炭素原子を含有する無置換若しくはアルキル置換芳香族基が挙げられる。置換されている場合、アルキル基は典型的に1〜6の炭素原子を含有する。典型的な芳香族アシル基として、ベンゾイル基及びパラ−トルイル基が挙げられる。
式1中のAは、
【0019】
【化7】

【0020】
【化8】

【0021】
【化9】

【0022】
及び
【0023】
【化10】

【0024】
であることが好ましい。
Xとして、好適なモノアルキルアミノ基は1〜6の炭素原子を含有し、モノメチルアミノ基、モノエチルアミノ基、モノ−イソプロピルアミノ基、モノ−n−プロピルアミノ基、モノ−イソブチル−アミノ基、モノ−n−ブチルアミノ基及びモノ−n−ヘキシルアミノ基が挙げられる。
Y及びXとして好適なジアルキルアミノ基は、各アルキル基中に1〜6の炭素原子を含有する。アルキル基は、同一又は異なっていてもよく、直鎖又は分岐鎖であってよい。いくつかの好適な基の例として、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジペンチルアミノ基、ジヘキシルアミノ基、メチルペンチルアミノ基、エチルプロピルアミノ基及びエチルヘキシルアミノ基が挙げられる。
Xとして好適なハロゲン基には、Cl基、Br基及びF基がある。
Xとして好適なアルキル基は、典型的に1〜6の炭素原子を含有し、直鎖又は分岐鎖であってよい。いくつかの例として、メチル基、エチル基、i−プロピル基、n−プロピル基、i−ブチル基、n−ブチル基、ペンチル基及びヘキシル基が挙げられる。
【0025】
好適なハロアルキル基は、典型的に1〜6の炭素原子を含有するものであり、直鎖又は分岐鎖であってよく、特に上記したアルキル基を含有するCl、Br又はF置換アルキル基が挙げられる。
好適なアルコキシ基は、典型的に1〜6の炭素原子を含有するものであり、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基及びブトキシ基が挙げられる。
好適なアルケニル基は、典型的に2〜6の炭素原子を含有するものであり、エテニル基及びプロペニル基が挙げられる。
好適なハロアルケニル基は、典型的に1〜6の炭素原子を含有するものであり、特に上記したアルケニル基を含有するCl、Br又はF置換アルケニル基が挙げられる。
好適なアルキニル基は、典型的に1〜6の炭素原子を含有するものであり、エチニル基及びプロピニル基が挙げられる。
本発明の製法により用いられる好ましい化合物として、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンが挙げられる。
本発明は、メラノーマ、前立腺ガン、乳ガン、腎臓ガン、結腸ガン、肺ガン、白血病及びリンパ球ガン等のガンにかかったヒトを含む哺乳類ホストを治療するのに好適である。
【0026】
本発明により用いられる化合物は、2,3,5−トリ−O−ベンジル−L−キシロース−ジベンジル ジチオアセタール等、2,3,5−トリ−O−アリール若しくはアルキル−4−キシロースジアリール又はジアルキルジチオアセタールを、支持基の存在下4水酸基位で反応し、ベンジル2,3,5−トリ−O−ベンジル−1,4−ジチオ−D−アラビノフラノシド等、対応する1,4−ジチオ−D−アラビノフラノシドベンジルを製造することにより調製される。本工程は、フォスフィン、ヨード及びイミダゾールを用いて行うことができる。上記工程の生成物を酸分解させ、2,3,5−トリ−O−ベンジル−1−O−アセチル−4−チオ−アラビノフラノース等の対応するO−アセチル−4−チオ−D−アラビノフラノースを形成する。例えば、酢酸水銀の存在下で酢酸を使用することができる。
【0027】
上記工程の生成物は、シトシン、5−若しくは6−アザ化合物又はそれらの好適なブロック誘導体で反応させ、シトシンの場合は1−(2,3,5−トリ−O−ベンジル−4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル)シトシン等の対応する4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル化合物を形成する。好適なブロック誘導体として、アシル及びトリメチルシリル化誘導体が挙げられる。上記工程の化合物は、加水分解で1−(4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル)シトシン等の対応するチオ糖誘導体に変換される。
上記工程のアノマー混合物のα型を分離して、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン等の所望の式1の化合物を得る。
【0028】
本発明による化合物は、製造工程の理解を促す為に、好ましい化合物、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンが例示された、以下に記述されたスキーム1並びに実施例1及び2で示された製造工程により調製することができる。使用される前駆体、2,3,5−チオ−O−ベンジル−L−キシロースジベンジルジチオアセタールは、参照により本願に包括された開示である、Secrist,IIIらにより記されたNucleosides & Nucleotides,1995年、14(35)、675〜686頁、「ある4’−チオヌクレオシドの合成及び生物活性」で記述されている方法で製造される。本発明の方法により、所望の化合物を多量に製造する比較的効果的な方法が与えられる。従来技術の手法は非常に煩雑で、所望量の化合物を製造することがたやすく適してなかった。
【0029】
【化11】

【0030】
投与されるべき本発明の活性化合物の製薬上許容できる効果的な投与量は、温血動物(哺乳類)の種類、体重、年齢、個体の状態及び投与形態に依存する。
医薬組成物は、本発明で使用される化合物を治療すべき哺乳類の大動脈へ運搬する経口、非経口、座薬又はその他の形態でよい。
本発明の化合物は、個々の治療剤又は治療剤の組み合わせのいずれかとして、薬品に関する使用に有効な従来の手段のいずれによっても投与することができる。それらは、単独で投与することができるが、一般に選択した投与経路及び標準的な製薬慣行に基づき選択された薬品基剤と一緒に投与される。
投与される投薬量は、もちろん、その薬剤の薬物動力学特性、及び、その投与形態及び経路等;受容者の年齢、健康状態、体重;症状の性質及び程度;同時に行う治療の種類;治療の頻度;及び所望の効果等、既知の要素に依存して変化する。活性成分の1日の投与量は、体重1キログラム(kg)当たり、約0.001〜1000ミリグラム(mg)、好ましくは0.1〜約30mg/kgである。
投薬形態(投与に好適な組成物)は、典型的にユニット当たり約1mg〜約100mgの活性成分を含有する。その医薬組成物中、活性成分は、通常、組成物全体量に対して約0.5〜95%量存在する。
【0031】
活性成分は、カプセル、錠剤及び粉末等の固形投薬形態、又は、エリキシル、シロップ及び懸濁液等の液体投薬形態で経口投与できる。それは、滅菌液体投薬形態で非経口投与することもできる。活性成分は、鼻腔内投与(点鼻液)又は吸入による投与もできる。その他の投薬形態は、貼付剤の手法又は軟膏を介して、経皮投与等も可能であるかもしれない。
ゼラチンカプセルは、活性成分、及び、ラクトース、デンプン、セルロース誘導体、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸等の粉末基剤を含有する。類似した賦形剤は、圧縮錠剤の作成に使用できる。錠剤及びカプセルは持続性放出物として製造でき、何時間もの間連続して薬物放出することができる。圧縮錠剤は、糖被覆若しくは膜被覆して、何がしかの不快な味を隠し、空気から錠剤を保護するか、又は、胃腸管中で選択的に分解するよう腸溶性被覆することができる。
経口投与のための液体投薬形態は、患者の許容性を増加させるために着色料及び香料を含有してもよい。
【0032】
一般に、水、好適な油、塩水、水溶性デキストロース(グルコース)、関連する糖溶液及びプロピレングリコール、ポリエチレングリコール等のグリコールは、非経口溶液に好適な基剤である。非経口投与用の溶液は、活性成分の水溶性塩、好適な安定剤、及び、必要であれば緩衝液物質を含有することが好ましい。重亜硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム、アスコルビン酸等の抗酸化剤は、単独又は組み合わせで、安定化剤に適している。クエン酸及びその塩、並びに、EDTAナトリウムも使用できる。加えて、非経口溶液は、塩化ベンズアルコニウム、メチル−又はプロピルパラベン及びクロロブタノール等の保存料を含有することができる。
好適な医薬基剤は、本分野の標準参照テキストである、Mack Publishing CompanyのRemington’s Pharmaceutical Sciencesに記載されている。
【0033】
本発明による化合物の投与の為の実用的な薬品投与形態は、以下に例証できる:
カプセル
多数のユニットのカプセルを、それぞれ100mg粉末活性成分、150mgラクトース、50mgセルロース及び6mgステアリン酸マグネシウムを、標準2ピース硬ゼラチンカプセルに詰め込み調製した。
軟ゼラチンカプセル
大豆油、綿実油、オリーブ油等の消化可能な油中に活性成分混合物を調製して、容積移送式ポンプでゼラチンへ注入し、100mu活性成分を含有する軟ゼラチンカプセルを形成した。カプセルは、洗浄し、乾燥した。
錠剤
多数の錠剤を従来の製法で調製して、投薬ユニットを100mg活性成分、0.2mg膠質二酸化珪素、5mgステアリン酸マグネシウム、275mg微晶質セルロース、11mgデンプン及び98.8mgラクトースとした。好適な被覆をして、嗜好性を増加させ吸収を遅くした。
【0034】
ここに示し記載したものに加えて、本発明の様々な改良は、先の記載より当業者に明らかであろう。そのような改良も添付したクレームの範疇に入ることを意図している。
先の開示は、当業者が請求した発明を実行可能にするのに不可欠だと考えられる情報を全て包含する。なぜなら引用した出願はさらに実用的な情報を与えるので、これらの引用した資料は、全体的に参照することにより本願に包括される。
【実施例】
【0035】
以下の実施例は、制限することなく、さらに本発明を例証する。
実施例1
1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンの調製
2,3,5−トリ−O−ベンジル−L−キシロース−ジベンジルジチオアセタール(4)。X−キシロース(1,25g,167mmol)を、0.5%塩酸のメタノール(675mL)中で、室温で5時間攪拌して、それからAmberlite IRA−400 OH陰イオン交換樹脂で中和した。濾液及び洗浄液を合わせて、吸引乾燥して、粗成物をシリカゲルクロマトグラフィー(CHCl/MeOH,92:8)で精製して、26.2gL−キシロフラノシドメチル(2,収率95%)を、α及びβ(1:1)混合物として得られた。MS164(M),165(M+H),133(M−OCH
【0036】
氷冷した乾燥テトラヒドロフラン(350mL)中の2(10g,60.9mmol)の溶液へ、水素化ナトリウム(鉱物油中に60%分散、14.8g,370mmol)を添加して、反応混合液を15分間N下で攪拌した。この反応混合液へ、テトラブチルアンモニウムヨード化物(0.36g,0.96mmol)を加え、ベンジルブロマイド(36.6g,214mmol)を滴下し、添加した。反応混合液を、3日間室温で攪拌した。メタノール(25mL)添加後、溶液を減圧下吸引乾燥し、粗成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc,9:1)で精製して、純粋な2,3,5−トリ−O−ベンジル−L−キシロフラノシドメチル(3,23g,収率87%)を得た。MS435(M+H),433(M−H),403(M−OCHH NMR(CDCl)δ7.38−7.25(m,30H,芳香族H=s),4.94(d,1H,H−4α,J1,2=4.3Hz),4.87(d,1H,H−1β,J1,2=0.9Hz),4.64−4.45(m,12H,PhCH’s),4.37(m,1H,H−4α),4.27(dt,1H,H−4β,J4,5a=3.7Hz,J4,5b=6.5Hz,J3,4=6.2Hz),4.17(t,1H,H−3α,J3,4=6.9Hz,J2,3=5.6Hz),4.07(dd,1H,H−3β,J3,4=6.2Hz,J2,3=2.5Hz),4.00(dd,1H,H−2α,J2,3=5.6Hz),3.95(t,1H,H−2β,J2,3=2.5Hz),3.70(dd,1H,H−5aα,J4,5β=4.5Hz,J5a,5b=10.4Hz),3.66(dd,1H,H−5aβ,J4,5a=3.7Hz,J5a,5b=10.7Hz),3.54(dd,1H,H−5bα,J4,5b=7.5Hz),3.49(dd,1H,H−5bβ,J4,5b=6.5Hz),
【0037】
ジクロロメタン(1000mL)中の3(42g,97mmol)の溶液へ、ベンジルメルカプタン(49.6g,400mmol)及び塩化スズ(4.93g,18.9mmol)を添加して、反応混合液を室温で1晩攪拌した。5%NaHCO水溶液(750mL)で中和後、有機相を分離して、水相をジクロロメタン(500mL)で抽出した。合わせた有機相へ、吸引乾燥し、粗成物4をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc,99:1)で精製して、4(8.53g,収率57%)が、前に進めるのに充分な純度で得られた。
MS657(M+Li)H NMR(CDCl)δ7.35−7.29(m,19H,芳香族H=s),7.19−7.13(m,4H,芳香族H=s),7.01−6.96(m,2H,芳香族H=s),4.86(d,1H,PhCHH,J=11.1Hz),4.70(2つが2重に重なる,d=s,PhCHH,PhCHH,J=11.1Hz,J=11.2Hz),4.43(d,1H,PhCHH,11.2Hz),4.40(d,1H,PhCHH,J=11.9Hz),4.36(d,1H,PhCHH,J=11.9Hz),4.07(dd,1H,H−2,J1,2=3.0Hz,J2,3=7.5Hz),3.75−3.67(m,4H,two PhCH=s),3.68(d,1H,H−1,J1,2=3.0Hz),3.36−3.25(m,2H,H−4,H−5a),3.15−3.12(m,1H,H−5b),2.22(d,1H,4−OH,J=6.2Hz)
【0038】
2,3,5−トリ−O−ベンジル−1−O−アセチル−4−チオ−D−アラビノフラノース(6)。乾燥2:1トルエン/アセトニトリル(200mL)中の4(13.0g,20mmol)の溶液へ、トリフェニルフォスフィン(15.7g,60mmol)、ヨー素(12.7g,50mmol)及びイミダゾール(5.44g,80mmol)を添加した。反応混合液を90℃で24時間攪拌し、その後吸引乾燥した。粗成物をシリカゲルクロマトグラフィー(シクロヘキサン/EtOAc,4:1)で精製して、ベンジル2,3,5−トリ−O−ベンジル−1,4−ジチオ−D−アラビノフラノシドをシロップ(5,9.0g,83%)として得られた。MS534(M+H)H NMR(CDCl)δ7.40−7.20(m,20H,芳香族H=s),4.69−4.42(m,6H,3つのPhCHO=s),4.37(m,1H,H−1),4.20(m,2H,H−2,H−3),3.87(s,2H,PhCHS−),3.80(dd,1H,H−5a,J4,5a=7.4Hz,J5a,5b=9.3Hz),3.55(dd,1H,H−5b,J4,5b=7.1Hz),3.47(m,1H,H−4),Anal.(C3334@0.25HO)C.H.
【0039】
酢酸(96g)中の酢酸水銀(7.29g,22.9mmol)の懸濁液へ、5(5.42g,10mmol)を添加して、得られた混合液を室温で2時間攪拌した。反応混合液をジクロロメタン(200mL)で希釈して、水、飽和NaHCO水溶液、5%KCN水溶液で連続して洗浄した。有機相をNaSOで乾燥、濃縮した。シクロヘキサン:酢酸エチル(98:2)を溶出液として用いて、粗成物のクロマトグラフィーを行い、6(3.73g,78%)のα及びβ(1:1)アノマーが、無色のシロップとして得られた。MS479(M+H)H NMR(CDCl)δ7.35−7.23(m,15H,芳香族H=s),6.07(d,0.25H,H−1β,J1,2=4.0Hz),5.98(d,0.75H,H−1α,J1,2=2.8Hz),4.83−4.55(m,6H,PhCH’s),4.26(dd,0.75H,H−2α,J2,3=5.4Hz),4.17−4.14(m,5H,H−2β,H−3β),4.03(t,0.75H,H−3α,J3,4=6Hz),3.86−3.67(m,1.25H,H−4α,H−5aα,H−5aβ),3.53−3.39(m,1.75H,H−5bα,H−4β,H−5bβ),2.06(s,3H,CH3−α,CH3−β),Anal.(C2830S@0.75HO)C.H.
【0040】
1−(2,3,5−トリ−O−ベンジル−4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル)シトシン(7)。無水アセトニトリル(25mL)中の1−O−アセチル 2,3,5−トリ−O−ベンジル−4−チオ−D−アラビノフラノース(478mg,1mmol)及びシトシン(111.0mg,1mmol)へ、連続的にヘキサメチルジシラザン(HMDS,162mg,1mmol)、クロロトリメチルシラン(TMSCl,434mg,4mmol)を添加し、混合液を室温で0.5時間攪拌した。この溶液を−78℃で冷却した。トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホン酸(267mg,1.2mmol)を添加し、得られた溶液を−78℃で2.5時間攪拌し、反応を実質上終えた。混合液を室温に温め、少量(5mL)に濃縮し、塩化メチレン(50mL)で希釈して、水(20mL)、続いて二炭酸ナトリウム、水で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥して、吸引乾燥した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(50g,CHCl/MEOH,98:2で溶出)で精製して、7(412mg,77.5%)が無色シロップとして得られた。
TLC(95:5 CHCl/MEOH)Rβ 0.65;MS z/e536(M+Li)
H NMR(CDCl)δ8.22(d,1H,H−6β,J=7.6);(d,1,H−6α,J5,6=7.5Hz);7.38−7.09(m,30,芳香族H’s);6.65(d,1H,H−1’β,J1’,2’=5.7Hz);6.36(d,1H,H−1’α,J1’,2’=1.2Hz);5.44(d,1,H−5α);5.26(d,1H,H−5β);4.97−4.33(複数が2重に重なる,12,CCH),4.26(dd,H−2’β,J2’,3’=6.8Hz);4.22(m,1,H−3’α,J3’,4’=1Hz);4.16(dd,1,H−3’β,J3’,4’=6.4Hz);4.13(m,1,H−2’α,J2’,3’=1.7Hz);3.91(m,1,H−4’α);3.78(m,1,H−5’α,);3.73−3.63(m,2,H−5’β);3.55(m,1,H−5’α);3.46(m,1,H−4’β
【0041】
1−(4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル)シトシン(8)。−78℃に冷却した乾燥ジクロロメタン(7mL,7mmol)中の三塩化ホウ素溶液(1M溶液)へ、乾燥ジクロロメタン(10mL)中の化合物7(265mg,0.5mmol)の溶液を30分間滴下して添加した。一晩、−20℃で攪拌し続けた。溶液を真空除去し、残渣をジクロロメタン(4X20mL)と共蒸散させた。残渣を飽和NaHCO(25mL)で中和して、クロロホルム(15mL)で洗浄した。水相を陽イオン交換(H)カラムへ供して、水で溶出し塩を除去して、1N NHOHで溶出して、所望の化合物8(110mg,85%)を得た。MSz/e260(M+H)H NMR(MeSO−d)δ7.94(d,.67,H−6−β,J5.6=7.5Hz);7.90(d.0.33,H−6α,J5.6=7.5Hz);7.17−7.03(overlapping bs,2,NH’s);6.33(d,0.67,H−1’β,J1’2’=4.6Hz);5.86(d.0.33,H−1’α,J1’2’=7.3Hz);5.77(d,0.33,H−5α):5.70(d.0.67,H−5β);5.61 and 5.59(2重に重なる,1,2’−OHβ,J2’,2’−OH=5.1Hz,2’−OHα,J2’,2’−OH=5.9Hz);5.47(d,0.33,3’−OHα,J3’,3’−OH=5.1Hz);5.38(d,0.67.3’−OHβ,J3’,3’−OH=4.2Hz);5.08(t,0.67,5’−OHβ,J5’,5’−OH=5.4Hz);4.90(t,0.33,5’−OHα,J5’,5’−OH=5.2Hz);4.00−3.93(m,1.67,H−2’α,H−2’β,H−3’β);3.86−3.76−3.55(m,1.H−5’β+H−3’α);3.49−3.33(m,0.67,H−4’α,H−5’α):3.17(m,0.67,H−4’β).
【0042】
1−(5−O−ジメトキシトリチル−4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン(9)。乾燥ピリジン(10mL)中の化合物8(100mg,0.38mmol)へ、4,4’−ジメトキシトリチルクロライド(135mg,0.6mmol)添加し、溶液を2時間、室温で攪拌した。反応混合液を吸引除去し、粗成物を酢酸エチル(20mL)に溶解させ、水で洗浄し、シリカゲルカラム(CHCl/MeOH,98:2)で精製し、吸引乾燥して、固体とし、純粋化合物9(96mg,8のα,β−混合物の1:1混合物を基準に90%)を得た。
MS(z/e568.3(M+Li)H NMR(MeSO−d)δ7.77(d,1,H−6,J5.6=7.5Hz);7.42−7.23(m,9,芳香族 H’s);7.17(bs,1.NH);7.05(bs,1.NH);6.91−6.88(m,4,芳香族 H’s);6.36(d,1,H−1’,J1’.2’=4.8Hz);5.65(d,1,H−5);5.76(d,1,2’−OH,J2’,2’−OH=4.6Hz);5.43(d,1,3’−OH,J3’,3’−OH=3.3Hz);3.98−3.91(m,2,H−2’,H−3’);3.75(s,6.OCH);3.39−3.25(m,B,H−4’,H−5’).
【0043】
1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシン(10)。化合物9(90mg,0.16mmol)をクロロホルム(5mL)中のトリフルオロ酢酸(22mg)で、室温で10分間処理した。反応混合液をNaHCO水溶液で中和して、水相を陽イオン交換カラムへ供して、最初は水で溶出して塩を除去して、最終的に1N NHOHで溶出して、化合物10(35mg,85%)を得た。融点218〜220℃(lit221−222℃)。MSz/e260(M+H)
H NMR(MeSO−d)δ7.94(d,1,H−6,J5.6=7.5Hz);7.12(bs,1,NH);7.04(bs,1,NH);6.33(d,1,H−1’,J1’,2’=4.6Hz);5.70(d,1,H−5);5.61(bd,1,2’−OH,J2’,2’−OH=3.1Hz);5.38(bd,1,3’−OH,J3’,3’−OH=3.5Hz);5.08(bt,1,5’−OH,J5’5’−OH=4.9Hz);4.00−3.93(m,2,H−2’,H−3’);3.78(m,1,H−5’);3.61(m,1,H−5’);3.16(m,1,H−4’).
【0044】
実施例2
1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)5−フルオロシトシンの調製
1−(2,3,5−トリ−O−ベンジル−4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル)5−フルオロシトシン(7a)。無水アセトニトリル(25mmol)中の1−O−アセチル 2,3,5−トリ−O−ベンジル−4−チオ−D−アラビノフラノース(478mg,1mmol)及びシトシン(129.0mg,1mmol)へ、連続的にヘキサメチルジシラザン(HMDS,162mg,1mmol)及びクロロトリメチルシラン(TMSCl,434mg,4mmol)を添加し、混合液を室温で0.5時間攪拌した。この溶液を−78℃で冷却した。トリメチルシリルトリフルオロメタンスルホネート(267mg,1.2mmol)を添加し、得られた溶液を−78℃でさらに2.5時間攪拌し、反応を実質上終えた。混合液を室温に温め、少量(5mL)に濃縮し、塩化メチレン(50mL)で希釈して、水(20mL)、続いて二炭酸ナトリウム、水で洗浄した。有機相をMgSOで乾燥して、吸引乾燥した。残渣をシリカゲルのクロマトグラフィー(50g,CHCl/MEOH,98:2で溶出)で精製して、2:1α,β混合物として7(425.2mg,80.0%)が無色シロップTLC(95:5,CHCl/MEOH Rβ0.65);MS z/e 553(M+Li)として得られた。
【0045】
H NMR(CDCl)δ8.40(d,1,H−6β,J=7.6);8.10(d,1,H−6α,J5.6=7.5Hz);7.38−7.09(m,30,芳香族 H’s);6.55(d,1,H−1’β,J1’2’=1.2Hz);4.90(d,1,H−5α);4.78(d,1,H−5β);4.30−4.55(複数が重なる.12,CCH).4.15(dd,1H−2’β,J2’3’=6.8Hz);4.10(m,1,H−3’α,J3’,4’=1Hz);3.90(dd,1,H−3’β,J3’,4’=6.4Hz);3.75(m,1,H−2’α,J2’3’=1.7Hz);3.70(m,1,H−4’α);3.65(m,1.H−5’α):3.50−3.55(m,2,H−5’β);3.45(m,1,H−5’α);3.40(m,1,H−4’α).
【0046】
1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)5−フルオロシトシン(10a)。−78℃に冷却した乾燥ジクロロメタン(7mL,7mmol)中の三塩化ホウ素溶液(1M溶液)へ、乾燥ジクロロメタン(10mL)中の化合物7(2273mg,0.5mmol)の溶液を30分間滴下して添加した。一晩、−20℃で攪拌し続け、溶液を真空除去し、残渣をジクロロメタン(4X20mL)と共蒸散させた。残渣を飽和NaHCO(25mL)で中和して、クロロホルム(15mL)で洗浄した。水相を陽イオン交換(H)カラムへ供して、水で溶出し塩を除去し、それから1N NHOHで溶出して、所望の化合物8aを2:1α,β混合物として得て、水で結晶化して、純粋な10a(32.2mg,25%)を得た。MS z/e 278(M+H)
【0047】
H NMR(MeSO−d)δ8.15(d,1,H−6,J5,6=7.5Hz);7.75(bs,1,NH);7.50(bs,1,NH);6.25(d,1,H−1’,J1’,2’=4.6Hz);5.65(d,1,H−5);5.60(bd,1,2’−OH,J2’,2−OH=3.1Hz);5.40(bd,1.3’−OH,J3’3’−OH=3.5Hz);5.20(bt,1,5’−OH,J5’,5’−OH=4.9Hz);4.00−3.90(m,2,H−2’,H−3’);3.75(m,1,H−5’);3.65(m,1,H−5’);3.15(m,1,H−4’).
Ototani,H.;Whisler,R.L.,J.Med.Chem. 1974,17,535−537,2,2’−無水−1−β−D−アラビノフラノシルシトシンの4’−チオアナログの調製及び抗腫瘍活性
実施例3
以下のin vitro試験を実施した。
【0048】
【表1】

【0049】
上記試験は、SRB検定に処したSK−MEL28以外、全ての細胞種に対しNatural Red検定を用い、化合物へ72時間照射して行った。
実施例4
以下の生体内試験を実施し、本発明の化合物の効果の例証を行った。
【0050】
【表2】

【0051】
【表3】

【0052】
【表4】

【0053】
上記試験から評価できるように、大抵の細胞種中で、ARA−Cは、本発明のARA−Cと比較して、ガン治療として本発明の化合物の使用を思いとどめるような高い毒性を示す。しかしながら、驚くべきことに、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンは、ARA−Cより強力であり、より選択的に生体内でガン細胞を殺す。本発明により用いられる化合物は、低い毒性と共に、より良い抗ガン活性を示す。このことは、放射線標識物質を使用して表5で示された、1−(4−チオ−β−D−アラビノフラノシル)シトシンがAraCほど速くシチジンデアミナーゼにより脱アミノ化されないという事実によるものであろう。AraCに対するシチジンデアミナーゼの良好な基質活性は、薬品の半減期を減少させるだけでなく、活性物質でないAraUridineに変換することから、本薬品の主要な問題であった。
【0054】
【表5】

【0055】
以下の試験を実施し、哺乳類細胞中のDNA複製を阻害する本発明のチオアラビノフラノシル化合物の効能を例証した。以下の試験において、dCydは2’−デオキシシチジンを表し、TCydはチオデオキシシチジンを表し、T−araCは1−(4−チオ(3−D−アラビノフラノシル)シトシンを表し、Ara−Cは「シトシンアラビノシド」を表す。“dCTP”、“T−dCTP”、“araCTP”及び“TaraCTP”という用語は、対応するトリフォスフェートを表す。“dURD”という用語は、2−デオキシウリジンを表す。“F−dUrd”という用語は、フッ素化2−デオキシウリジンを表す。“F−dUMP”という用語は、フッ素化2−デオキシウリジンモノフォスフェートを表す。
dCyd、T−dCyd、araC及びT−araCのそれぞれのトリフォスフェートへの代謝を例証した図1a及び1bで参照できる。特に、CEM細胞は、2000nM[5−H]T−dCyd、5nM[5−H]araC又は25nM[5−H]T−araCと一緒に、表示した時間インキュベートした。5’−トリフォスフェートのピークにおける放射能は、SAX HPLCを用いて同定した。各化合物について、5’−トリフォスフェートのピークにおける放射能の量は、SAX HPLCカラムから溶出した放射能全量の90%以上であった。
【0056】
CEM細胞成長阻害に関する試験結果を、以下表6に示す。
CEM細胞は、様々な濃度の各化合物と一緒にインキュベートして、細胞数における影響をコールターカウンターを用いて同定した。IC50を、コントロールの成長パーセント対薬物濃度のプロットから同定した。存在するデータは、3つの別々の実験から得られた平均と標準分散である。CEM細胞がコントロールの速度で成長する時間である1カ月近く、150nM araCの存在下でCEM細胞をインキュベートして、araC耐性細胞を得た。
【0057】
【表6】

【0058】
野生株及びaraC耐性CEM細胞中の代謝に関する試験結果を、以下の表7で示した。
CEM細胞(野生株又はaraC耐性細胞)は、100nM[5−H]dCyd、[5−H]T−dCyd、[5−H]araC又は[5−H]T−araCと一緒に、表示した時間インキュベートした。5’−トリフォスフェートのピークにおける放射能及び酸不溶性部分(DNA)中の放射能の混入を同定した。各化合物について、5’−トリフォスフェートのピークにおける放射能の量は、SAX HPLCカラムから溶出した放射能全量の90%以上であった。
【0059】
【表7】

【0060】
無細胞CEM抽出液中のリン酸化を例証した結果を、以下の表8で示した。
粗細胞抽出液を野生株及びaraC耐性CEM細胞から調製し、dCyd、araC及びT−araCをリン酸化する性能を同定した。括弧内の数は、実施した試験の数である。50mMTris(pH8.0),5mMATP,7.5mMMgCl,20mMNaF,抽出物、及び1μm[5−H]dCyd、[5−H]araC又は[5−H]T−araCを含有する溶液中で反応を行った。試験開始後、様々な時間で、各反応ボリュームの分画を取って、DE−81フィルター上に置いた。フィルターを1mM蟻酸アンモニウム及びエタノールで洗浄して、各フィルター上の放射能量を同定した。各化合物のリン酸化は、時間に対して線状に増加した。本検定は、HPLCにより検証した。
【0061】
【表8】

【0062】
以下の表9で、デオキシシチジンデアミナーゼ活性を例証した。特に、デオキシシチジンデアミナーゼ活性は、記載(Shewachら、Mol.Pharmacol.42:518−524,1992)のように、Molt−4細胞より精製した。各検定は、2回行われ、速度定数は、1/速度対1/基質濃度の二重逆数直線プロットより同定した。最も良い線は少なくとも5つの基準点からの回帰直線により同定され、Km及びVmaxは、x及びyの2点で切り取って同定した。
【0063】
【表9】

【0064】
以下の表10でも、デオキシシチジンデアミナーゼ活性を例証した。
デオキシシチジンデアミナーゼ活性分をヒト胎盤から精製し、dCyd、T−dCyd、araC及びT−araCのKm及びVmaxを同定した。20mMリン酸カリウム(pH7.4),100mM KCl,さまざまな濃度の放射能標識ヌクレオシド及び酵素を含有する溶液中で反応を行った。反応を酸で停止して、ペーパークロマトグラフィーで生成物から基質を分離して、各反応中の放射能を同定した。速度定数は、1/速度対1/基質濃度の二重逆数直線プロットより同定した。最も良い線は少なくとも5つの基準点からの回帰直線により同定され、Km及びVmaxは、x及びyの2点で切り取って同定した。存在するデータは、異なる3回の実験の平均及び標準分散である。
【0065】
【表10】

【0066】
以下の表11に、CEM細胞中の半減期試験の結果をまとめた。
100nM[5−H]dCyd、[5−H]T−dCyd、[5−H]araC又は[5−H]T−araCと一緒に1時間CEM細胞をインキュベートした後、細胞を回収して、新鮮な溶媒で洗浄し、放射能標識したヌクレオシドを含有しない新鮮な溶媒で再懸濁した。細胞を新鮮な溶媒で再懸濁した後、サンプルを様々な時間で回収し、5’−トリフォスフェートのピークにおける放射能の量を、SAX HPLCを用いて同定した。存在するデータは、異なる3回の実験の平均及び標準分散である。
【0067】
【表11】

【0068】
CEM細胞中のaraCTP、T−araCTPの残存量に関する試験の結果は、図2に示している。試験は以下のように行った;
5nM[5−H]araC又は200nM[5−H]T−araCと一緒に1時間CEM細胞をインキュベートした後、細胞を回収し、新鮮な溶媒で洗浄し、放射能標識したヌクレオシドを含有しない新鮮な溶媒で再懸濁した。細胞を新鮮な溶媒で再懸濁した後、サンプルを様々な時間で回収し、5’−トリフォスフェートのピークにおける放射能の量を、SAX HPLCを用いて同定した。
本実験において、放射能標識化合物と一緒に1時間インキュベートした後、0.639pmoles araCTP/10細胞、及び、0.246pmoles T−araCTPが存在した。
CEM細胞中の代謝に関する結果は、以下の表12で示している。特に、CEM細胞は、100nM[5−H]dCyd、[5−H]T−dCyd、[5−H]araC又は[5−H]T−araCと一緒に表示した時間インキュベートした。各化合物の完全な代謝を同定した:溶媒を、もとの化合物、その脱アミノ型及び水に関し、逆相HPLCを使用して分析した:酸溶解性抽出物を、リン酸化代謝産物に関し、SAX HPLCで分析した;酸−沈降性物質(DNA)中の放射能の取り込みを同定した。全体のもとの放射能は、各分画中で計算された。各化合物について、5’−トリフォスフェートのピークにおける放射能の量は、SAX HPLCカラムから溶出した放射能全量の90%以上であった。
【0069】
【表12】

【0070】
代謝におけるF−dUrdの影響に関する試験の結果は、表13で示している。
代謝してF−dUMP(チミジル酸シンセターゼの強力な阻害剤)となるF−dUrdの10μM存在下又は無しで、100nM[5−H]dCyd、[5−H]T−dCyd、[5−H]araC又は[5−H]T−araCと一緒に、CEM細胞を表示した時間インキュベートした。各化合物の完全な代謝を、表12の説明で記載した通りに同定し、各化合物の脱アミノ代謝産物のパーセントを同定した。F−dUrd無しでは、dCydに対する脱アミノ物は、チミジル酸シンセターゼによりF−dUMPの5位で[H]が脱離した[H]HOである。F−dUrd存在下では、dCyd、T−dCyd及びaraCの脱アミノ物は、それぞれdUrd、T−dUrd又はaraUである。
【0071】
【表13】

【0072】
DNA、RNA及びタンパク質合成の影響に関する試験の結果は以下の表14で示している。
CEM細胞は、60μM T−dCyd、150nM araC又は750nMT−araCと一緒にインキュベートした。DNA[H]dThd、RNA([H]Urd)及びタンパク質([H]ロイシン)の放射能標識前駆体を、各化合物添加30分後に各処理物へ添加した。放射能標識前駆体の添加1、2、3及び4時間後に、サンプルをとった。RNA、DNA又はタンパク質の放射能の取り込みを記載されたように(Parkerら、Biochem.Pharmacol.55:1673−1681、1998)同定した。各数値は、2つの実験の平均を表す。
【0073】
【表14】

【0074】
上で明かなように、本発明によるチオアラビノフラノシル化合物は、哺乳類細胞中のDNA複製を阻害するのに使用することができる。これらの結果は、この免疫調製剤としての効能を示唆するものであり、自己免疫疾患の治療に適していることを示す。このことは、さらにグアノシンアナログが免疫系を刺激することが示された事実(Weigle,W.O.,CRD Crit.Rev.Immunol.,1987,7,285;Linら、J.Med.Chem.,1985,28,1194−1198;Reitzら、J.Med.Chem.,1994,37,3561−3578;Michaelら、J.Med.Chem.,1993,36,3431−3436)より支持される。ある3−β−リボフラノシルチアゾール[4,5−d]ピリミジンは、ハツカネズミ脾臓細胞増殖及びセムリキ森林ウイルスに対する生体内活性を含め、有意な免疫活性を示す(Nagaharaら、J.Med.Chem.,1990,33,407−415)。
【0075】
本発明の先の記載により、本発明が例証され、記述された。さらに、本開示は、本発明の好ましい実施形態のみを示し記述するが、上に示したように、本発明は、ここで示したような本発明の概念、上記教示、及び/又は、関連技術の技能若しくは知識と同一基準の範囲内で、他のさまざまな組み合わせ、改良、環境で使用することができ、また変更又は改良することができる。上記で記載された実施形態は、本発明を実施するのに知られている最良の形態を説明し、他の当業者が本発明をそのように、又は、本発明の特定の適用若しくは使用により要求された様々な改良をした実施を行うことができるようにされている。従って、本記載は、ここに開示された形態に制限されるものでない。また、添付のクレームは選択的な実施を包含するように構成されている。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
A)2,3,5−トリ−O−アリール若しくはアルキル4−キシロースジアリール又はジアルキルジチオアセタールを、脱離基の存在下、4水酸基位で反応させ、対応する1,4−ジチオ−D−アラビノフラノシドを製造し;
B)工程A)からの前記アラビノフラノシドを反応させ、酸分解して、対応するO−アセチル−4−チオ−D−アラビノフラノースを形成し;
C)工程B)からの前記O−アセチル−4−チオ−アラビノフラノースを、シトシン、5−アザ化合物、6−アザ化合物及びそのブロック誘導体からなる群より選択される化合物と反応させ、対応する4−チオ−α,β−D−アラビノフラノシル化合物を形成し;
D)工程C)からの前記アラビノフラノシル化合物を、加水分解で対応するチオ糖誘導体に変換して;そして
E)工程D)のアノマー混合物のα型を分離して、式1:
【化1】

式中、各Rは、独立してH、脂肪族アシル基、又は、芳香族アシル基を表す;Aは、
【化2】

【化3】

【化4】

及び
【化5】

からなる群より選択される;
式中Xは、水素、フッ素、アルコキシ基、アルキル基、ハロアルキル基、アルケニル基、ハロアルケニル基、アルキニル基、アミノ基、モノアルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基、シアノ基及びニトロ基からなる群より選択される:
で表される化合物を得る:
ことからなる
式1の化合物の製造方法。
【請求項2】
工程C)における前記化合物はシトシンであることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
工程D)における前記加水分解は、工程C)からの前記アラビノフラノシル化合物を三塩化ホウ素で反応することからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
工程E)は、工程D)からのラセミ混合物を4,4’−ジメトキシトリチルクロライドで反応させて、5’−O−ジメトキシトリチル−4’−チオ−α−β−D−アラビノフラノシルシトシンを製造し、5’−O−ジメトキシトリチル−4’−チオ−β−Dアラビノフラノシルシトシンを分離して;そして5’−O−ジメトキシトリチル−4’−チオ−β−D−アラビノフラノシルシトシンを、トリフルオロ酢酸で反応させて式1の化合物を得ることからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
工程A)における前記ジチオアセタール化合物は、2,3,5−トリ−O−ベンジル−キシロースジベンジルジチオアセタールからなることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記ジチオアセタールは、L−キシロースをメタノールで反応させて、メチルL−キシロフラノシドを製造し、前記メチルL−キシロフラノシドを臭化ベンゼンで反応させることにより得られることを特徴とする請求項1記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2010−202655(P2010−202655A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−102499(P2010−102499)
【出願日】平成22年4月27日(2010.4.27)
【分割の表示】特願2000−560859(P2000−560859)の分割
【原出願日】平成11年7月23日(1999.7.23)
【出願人】(501029489)サザン・リサーチ・インスティテュート (5)
【Fターム(参考)】