説明

チオウレア化合物、ベンゾチアゾール化合物、及びベンゾチアゾリン化合物の製造方法

【課題】 アゾ色素の合成中間体、医薬品原末等として有用なチオウレア化合物、ベンゾチアゾール化合物並びにベンゾチアゾリン化合物を高収率に製造する製造方法を提供する。
【解決手段】 下記一般式(2)で示される化合物と、下記一般式(3)で示される化合物とをカルボン酸の存在下に反応させることを特徴とする下記一般式(1)で示される化合物の製造方法。
【化1】


(一般式(1)、(2)、及び(3)中、R1はH、アルキル、又はアリール基を表わし、R2〜R6は、それぞれ独立に、H、ハロゲン、アルキル、アリール、アルコキシ、アリールオキシ、アルキルチオ、アリールチオ、アミノ、アシルアミノ、スルホニルアミノ、アルコキシカルボニル、アルキルスルホニル、アリールスルホニル、カルバモイル、ニトロ又はシアノ基を表す。R7はアルキル又はアリール基を表す。)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はアゾ色素の合成中間体、ジアゾニウム塩中間体、医薬品原末、及び農、医薬中間体として有用な、チオウレア化合物、ベンゾチアゾール化合物、並びにベンゾチアゾリン化合物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般にチオウレア化合物の合成は種々の文献記等に記載されている(例えば、非特許文献1〜3参照。)。この中でも比較的簡便な方法として、一級又は二級アミン化合物とイソチオシアネート化合物の付加反応が挙げられる。この方法はアミン化合物の求核性が充分に高い場合などは収率良く反応が進行するが、アニリン化合物、特に二級アニリン化合物や立体的に嵩高い置換基を有するアニリン化合物などの場合、反応が遅く、また完全に進行しないという問題点があった。求核性の低いアニリン化合物や二級アニリン化合物、立体的に嵩高い置換基を有するアニリン化合物などを用いても反応が速やかに完結する製造方法が求められていた。
【0003】
また、ベンゾチアゾリン化合物やベンゾチアゾール化合物の製造方法としては、例えばN−アリールチオウレア類の酸化反応により得られることが知られており、酸化剤としては塩素、臭素、ヨウ素、塩化スルホニル、塩化スルフリルが用いられる(例えば、非特許文献4〜6参照)。
しかしながら、反応系中にアニリン化合物が含まれている場合、これらが酸化されて反応が複雑になるという問題点があった。
【非特許文献1】スタンレー R.サンドラー、ウォルフ カロ(Stanley R.Sandler,Wolf Karo)、「オーガニック ファンクショナルグループ プリパレーションズ 第2卷(Organic Functional Group Preparations Volume II)」、Academic Press,Inc.、1971、p.134〜165(Chapter6)
【非特許文献2】「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応III」、丸善株式会社、1976
【非特許文献3】「ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティ C(J.Chem.Soc.(C)) 」、1967、p.2212−2220
【非特許文献4】「オーガニック シンセシス III(Org.Synth.III)」、1955、p.595−596
【非特許文献5】「ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティ(J.Chem.Soc.)」、1930,p.1125
【非特許文献6】「ジャーナル オブ ケミカル ソサイエティ(J.Chem.Soc.)」、1926、p.1385
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、アゾ色素の合成中間体、ジアゾニウム塩中間体、医薬品原末、及び農、医薬中間体として有用なチオウレア化合物を高収率で製造する製造方法を提供することにある。更に、同様に有用なベンゾチアゾール化合物及びベンゾチアゾリン化合物を高収率に製造する製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは課題を解決すべく鋭意検討を重ねた結果、カルボン酸を系中に存在させることによりチオウレア化反応が速やかに進行し、目的とするチオウレア化合物を高収率で得ることを見出した。カルボン酸を溶媒として用いることも可能である。また、チオウレア化反応が完結することで出発原料(例えば、アニリン化合物)が系中から消失するため、酸化剤を用いてチオウレア化合物の酸化反応を連続して行なうことができ、高収率でベンゾチアゾリン化合物またはベンゾチアゾール化合物を得る事も可能とし、本発明を完成するに至った。
【0006】
すなわち、本発明の手段は以下の通りである。
<1> 下記一般式(2)で示されるアニリン化合物と、下記一般式(3)で示されるイソチオシアネート化合物とをカルボン酸の存在下に反応させることを特徴とする下記一般式(1)で示されるチオウレア化合物の製造方法。
【0007】
【化1】

【0008】
(一般式(1)、(2)、及び(3)中、R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表わし、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。R7はアルキル基、又はアリール基を表す。)
【0009】
<2> 前記一般式(1)及び(2)において、R3がアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、R4がアシルアミノ基である上記<1>に記載のチオウレア化合物の製造方法。
【0010】
<3> 前記カルボン酸を溶媒として用いることを特徴とする上記<1>又は<2>に記載のチオウレア化合物の製造方法。
【0011】
<4> 前記使用するカルボン酸が酢酸であることを特徴とする上記<1>〜<3>のいずれか1項に記載のチオウレア化合物の製造方法。
【0012】
<5> 下記一般式(2a)で示されるアニリン化合物と、下記一般式(3)で示されるイソチオシアネート化合物とをカルボン酸の存在下又はカルボン酸溶媒中にて反応させ、続けて環化反応を行うことを特徴とする下記一般式(4)で示されるベンゾチアゾリン化合物の製造方法。
【0013】
【化2】

【0014】
(一般式(2a)、(3)、及び(4)中、R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表わし、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。R7はアルキル基、又はアリール基を表す。)
【0015】
<6> 前記一般式(4)においてR3がアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、R4がアシルアミノ基である上記<5>に記載のベンゾチアゾリン化合物の製造方法。
【0016】
<7> 溶媒として用いるカルボン酸が酢酸であることを特徴とする上記<5>又は<6>に記載のベンゾチアゾリン化合物の製造方法。
【0017】
<8> イソチオシアネート化合物が下記一般式(5)で示されるとき、下記一般式(2)で示されるアニリン化合物とカルボン酸の存在下又はカルボン酸溶媒中にて反応させ、続けて環化反応を行うことを特徴とする下記一般式(6)で示されるベンゾチアゾール化合物の製造方法。
【0018】
【化3】

【0019】
(一般式(2)、(5)、及び(6)中、R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表わし、R2、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。)
【0020】
<9> 前記一般式(5)及び(6)において、R9がアルコキシ基、又はアリールオキシ基、であり、R10がアシルアミノ基である上記<8>に記載のベンゾチアゾール化合物の製造方法。
【0021】
<10> 前記溶媒として用いるカルボン酸が酢酸であることを特徴とする上記<8>又は<9>に記載のベンゾチアゾール化合物の製造方法。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、アゾ色素の合成中間体、ジアゾニウム塩中間体、医薬品原末、及び農、医薬中間体として有用なチオウレア化合物を二級アニリン化合物、立体的に嵩高い置換基を有するアニリン化合物など反応性の低いアニリンを用いても高収率で製造する製造方法を提供することができる。
更に、本発明によれば、チオウレア化反応に続けて酸化剤を用いた環化反応を連続して行なうことができ、前記同様に有用なベンゾチアゾール化合物及びベンゾチアゾリン化合物を高収率に製造する製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下本発明について詳細に説明する。
〈チオウレア化合物の製造方法〉
本発明におけるチオウレア化合物の製造方法は、前記一般式(2)で示されるアニリン化合物と、一般式(3)で示されるイソチオシアネート化合物とをカルボン酸の存在下に反応させることを特徴とする。
本発明におけるチオウレア化合物の製造方法を用いることより、本発明における一般式(1)チオウレア化合物を高収率で得る事ができる。
【化4】

【0024】
本発明における一般式(1)、(2)及び(3)について、以下に詳細に説明する。
【0025】
一般式(1)、(2)中、R1は水素原子、アルキル基又はアリール基を表わす。
前記R1で表されるアルキル基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、総炭素数1〜20のアルキル基がさらに好ましい。
具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、(4−エトキシフェニル)メチル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、1−(N,N−ジブチルカルバモイル)エチル基、2−メトキシエチルオキシ基が好ましく、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、又はN,N−ジブチルカルバモイルメチル基が特に好ましい。
【0026】
前記R1で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜30のアリール基が好ましく、総炭素数6〜20のアリール基がさらに好ましい。
具体的には、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フェニルフェノキシ基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、2,4−ジエトキシフェニル基、2,5−ジブトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、ナフチル基、4−ジブチルカルバモイルフェニル基、4−ジブチルスルファモイルフェニル基が好ましく、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基が特に好ましい。
【0027】
一般式(1)及び(2)中、R2、R3、R4、R5、及びR6は同一でも異なっていてもよく、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。R7はアルキル基、又はアリール基を表す。
【0028】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるハロゲン原子としてはフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が好ましく、フッ素原子、塩素原子が特に好ましい。
【0029】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアルキル基としては無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、総炭素数1〜20のアルキル基がさらに好ましい。具体的にはメチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルペンチル基、イソペンチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、ターシャリーオクチル基、ノルマルデシル基、ノルマルドデシル基、ノルマルオクタデシル基、トリクロロメチル基、フェニルエチル基、エトキシエチル基、フェノキシエチル基、メトキシカルボニルプロピル基、アセチルオキシエチル基、N−ブチルカルバモイルエチル基、アセチルアミノエチル基、2−シアノブチル基、又はフルフリル基が好ましく、更に好ましくは、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプロピル基、ノルマルブチル基、イソブチル基、ターシャリーブチル基、ノルマルヘキシル基、ノルマルオクチル基、2−エチルヘキシル基、ターシャリーオクチル基、又はフェニルエチル基が挙げられ、特に好ましくは、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、ターシャリーブチル基、又はノルマルヘキシル基が挙げられる。
前記R1とR6が結合して環を形成してもよい。該環としては5員、6員環が挙げられる。
【0030】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜30のアリール基が好ましく、総炭素数6〜20のアリール基がさらに好ましい。具体的にはフェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フェニルフェノキシ基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、2,4−ジエトキシフェニル基、2,5−ジブトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、ナフチル基、4−ジブチルカルバモイルフェニル基、又は4−ジブチルスルファモイルフェニル基が好ましく、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基が特に好ましい。
【0031】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアルコキシ基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜30のアルコキシ基が好ましく、総炭素数1〜20のアルコキシ基がさらに好ましい。具体的にはメチルオキシ基、エチルオキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、デシルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、フェノキシエトキシ基、ドデシルチオキシエチルオキシ基、ナフトキシエトキシ基、4−メチルフェニルチオエトキシ基、シアノメトキシ基、又はトリクロロメトキシ基が挙げられ、更に好ましくは、メチルオキシ基、エチルオキシ基、ノルマルプロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ノルマルブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、ターシャリーブチルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、デシルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、又はフェノキシエトキシ基が挙げられ、特に好ましくは、メチルオキシ基、エチルオキシ基、イソプロピルオキシ基、3−ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、2−エチルヘキシルオキシ基、オクチルオキシ基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、デシルオキシ基、ベンジルオキシ基、フェネチルオキシ基、又はフェノキシエトキシ基が挙げられる。
【0032】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアリールオキシ基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜30のアリールオキシ基が好ましく、総炭素数6〜20のアリールオキシ基がさらに好ましい。具体的にはフェノキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、3−メチルフェニルオキシ基、2−メチルフェニルオキシ基、4−クロロフェニルオキシ基、2−クロロフェニルオキシ基、4−メトキシフェニルオキシ基、4−フェノキシフェニルオキシ基、4−ドデシルチオキシフェニルオキシ基、又は4−シアノフェニルオキシ基が挙げられ、更に好ましくは、フェノキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、3−メチルフェニルオキシ基、2−メチルフェニルオキシ基、4−クロロフェニルオキシ基、2−クロロフェニルオキシ基、4−メトキシフェニルオキシ基、又は4−フェノキシフェニルオキシ基が挙げられ、特に好ましくはフェノキシ基、4−メチルフェニルオキシ基、4−クロロフェニルオキシ基、又は4−メトキシフェニルオキシ基が挙げられる。
【0033】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアルキルチオ基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜30のアルキルチオ基が好ましく、総炭素数1〜20のアルキルチオ基がさらに好ましい。具体的にはメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,5,5−トリメチルヘキシルチオ基、オクチルチオ基、デシルチオ基、ドデシルチオ基、2−フェノキシエチルチオ基、2−(3,5−ジ−t−ブチルフェノキシ)エチルチオ基、ジブチルカルバモイルメチルチオ基、ヘキサデシルチオ基、又はオクタデシルチオ基が好ましく、さらにメチルチオ基、エチルチオ基、ブチルチオ基、ヘキシルチオ基、2−エチルヘキシルチオ基、3,5,5−トリメチルヘキシルチオ基、ドデシルチオ基、2−フェノキシエチルチオ基、又はジブチルカルバモイルメチルチオ基が好ましい。
【0034】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアリールチオ基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜30のアリールチオ基が好ましく、総炭素数6〜20のアリールチオ基がさらに好ましい。具体的にはフェニルチオ基、トリルチオ基、4−クロロフェニルチオ基、4−アセトアミドフェニルチオ基、2−ブトキシフェニルチオ基、2−ベンゾイルアミノフェニルチオ基、2,5−ジメトキシ−4−ニトロフェニルチオ基、又は3−オクチルオキシフェニルチオ基が好ましく、さらにフェニルチオ基、トリルチオ基、4−クロロフェニルチオ基、4−アセトアミドフェニルチオ基、2−ブトキシフェニルチオ基、又は2,5−ジメトキシ−4−ニトロフェニルチオ基が好ましい。
【0035】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアミノ基としては総炭素数2〜20のジ置換アミノ基が好ましく、その置換基としては、アルキル基もしくはアリール基が好ましい。具体的にはN,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジオクチルアミノ基、N,N−ジフェニルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N,N−ジメトキシエチルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、N、N−ジイソプロピルアミノ基、又はピペリジン基が挙げられ、更に好ましくはN,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジオクチルアミノ基、N−フェニル−N−メチルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、又はN、N−ジイソプロピルアミノ基、が挙げられ、特に好ましくは、N,N−ジメチルアミノ基、N,N−ジオクチルアミノ基、N,N−ジベンジルアミノ基、又はN、N−ジイソプロピルアミノ基が挙げられる。
【0036】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアシルアミノ基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1から30のアシルアミノ基が好ましく、総炭素数1〜20のアシルアミノ基がさらに好ましい。具体的にはエタノイルアミノ基、ブタノイルアミノ基、2−エチルヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、デカノイルアミノ基、エトキシエタノイルアミノ基、4−ニトロベンゾイルアミノ基、2−メトキシベンゾイルアミノ基、フェノキシブタノイルアミノ基、メトキシカルボニルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、オクチルアミノカルボニルアミノ基、又はジブチルアミノカルボニルアミノ基が好ましく、更に好ましくは、エタノイルアミノ基、ブタノイルアミノ基、2−エチルヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、デカノイルアミノ基、エトキシエタノイルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、オクチルアミノカルボニルアミノ基、又はジブチルアミノカルボニルアミノ基が挙げられ、特に好ましくは、エタノイルアミノ基、ブタノイルアミノ基、2−エチルヘキサノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、デカノイルアミノ基、エトキシカルボニルアミノ基、オクチルアミノカルボニルアミノ基、又はジブチルアミノカルボニルアミノ基が挙げられる。
【0037】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるスルホニルアミノ基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜30のスルホニルアミノ基が好ましく、総炭素数1〜20のスルホニルアミノ基がさらに好ましい。具体的にはメチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、オクチルスルホニルアミノ基、デシルスルホニルアミノ基、ベンジルスルホニルアミノ基、クロロエチルスルホニルアミノ基、フェノキシエチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、4−メチルフェニルスルホニルアミノ基、ナフチルスルホニルアミノ基、4−メトキシフェニルスルホニルアミノ基、N−メチルフェニルスルホニルアミノ基、又は4−シアノフェニルスルホニルアミノ基が好ましく、更に好ましくは、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、オクチルスルホニルアミノ基、デシルスルホニルアミノ基、ベンジルスルホニルアミノ基、クロロエチルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、4−メチルフェニルスルホニルアミノ基、又はナフチルスルホニルアミノ基が挙げられ、特に好ましくは、メチルスルホニルアミノ基、エチルスルホニルアミノ基、ブチルスルホニルアミノ基、オクチルスルホニルアミノ基、デシルスルホニルアミノ基、ベンジルスルホニルアミノ基、フェニルスルホニルアミノ基、又は4−メチルフェニルスルホニルアミノ基が挙げられる。
【0038】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアルコキシカルボニル基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数2〜30のアルコキシカルボニル基が好ましく、総炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基がさらに好ましい。具体的にはメトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、エトキシブトキシカルボニル基、フェノキシエトキシカルボニル基、ベンジルオキシカルボニル基、4−メチルフェニルチオキシエトキシカルボニル基、トリクロロメチルオキシカルボニル基、又は2−シアノプロピルオキシカルボニル基が挙げられ、更に好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、エトキシブトキシカルボニル基、フェノキシエトキシカルボニル基、又はベンジルオキシカルボニル基が挙げられ、特に好ましくは、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、プロピルオキシカルボニル基、ブトキシカルボニル基、ヘキシルオキシカルボニル基、2−エチルヘキシルオキシカルボニル基、オクチルオキシカルボニル基、デシルオキシカルボニル基、又はベンジルオキシカルボニル基が挙げられる。
【0039】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアルキルスルホニル基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜30のアルキルスルホニル基が好ましく、総炭素数1〜20のアルキルスルホニル基がさらに好ましい。
具体的にはメチルスルホニル基、エチルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、ノルマルオクチルスルホニル基、ノルマルデシルスルホニル基、ドデシルスルホニル基、フェニルメチルスルホニル基、トリクロロメチルスルホニル基、エトキシエチルスルホニル基、又はフェノキシエチルスルホニル基が好ましく、更に好ましくは、メチルスルホニル基、ノルマルブチルスルホニル基、ノルマルオクチルスルホニル基、フェニルメチルスルホニル基、又はトリクロロメチルスルホニル基が好ましく、特に好ましくは、メチルスルホニル基、ノルマルオクチルスルホニル基、トリクロロメチルスルホニル基、又はドデシルスルホニル基が好ましい。
【0040】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるアリールスルホニル基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜30のアリールスルホニル基が好ましく、総炭素数6〜20のアリールスルホニル基がさらに好ましい。
具体的にはフェニルスルホニル基、トルエンスルホニル基、クロロベンゼンスルホニル基、4−ブトキシベンゼンスルホニル基、ジクロロベンゼンスルホニル基、ナフチルスルホニル基、ジメチルアミノベンゼンスルホニル基、又はエトキシカルボニルベンゼンスルホニル基が好ましく、さらに好ましくはフェニルスルホニル基、トルエンスルホニル基、クロロベンゼンスルホニル基、又は4−ブトキシベンゼンスルホニル基が挙げられ、特に好ましくは、フェニルスルホニル基、トルエンスルホニル基、又はクロロベンゼンスルホニル基が挙げられる。
【0041】
前記R2、R3、R4、R5、及びR6で表わされるカルバモイル基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1から30のカルバモイル基が好ましく、総炭素数1〜20のカルバモイル基がさらに好ましい。具体的にはジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、シクロヘキシルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−エチルヘキシルカルバモイル基、デシルカルバモイル基、メチルエチルカルバモイル基、ベンジルカルバモイル基、メトキシエチルカルバモイル基、ナフチルカルバモイル基、4−シアノフェニルカルバモイル基、又は4−ニトロフェニルカルバモイル基が挙げられ、更に好ましくはジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、シクロヘキシルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−エチルヘキシルカルバモイル基、デシルカルバモイル基、メチルエチルカルバモイル基、ベンジルカルバモイル基、メトキシエチルカルバモイル基、又はナフチルカルバモイル基が挙げられ、特に好ましくは、ジメチルカルバモイル基、エチルカルバモイル基、ジブチルカルバモイル基、シクロヘキシルカルバモイル基、フェニルカルバモイル基、2−エチルヘキシルカルバモイル基、又はデシルカルバモイル基が挙げられる。
【0042】
一般式(1)及び(3)中、R7はアルキル基又はアリール基を表わす。
【0043】
前記R7で表されるアルキル基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数1〜30のアルキル基が好ましく、総炭素数1〜20のアルキル基がさらに好ましい。具体的には、メチル基、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、2−エチルヘキシル基、3,5,5−トリメチルヘキシル基、ドデシル基、オクタデシル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、(4−エトキシフェニル)メチル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、N,N−ジブチルカルバモイルメチル基、1−(N,N−ジブチルカルバモイル)エチル基、又は2−メトキシエチルオキシ基が好ましく、エチル基、ブチル基、ヘキシル基、ベンジル基、4−クロロベンジル基、2,4−ジクロロベンジル基、N,N−ジエチルカルバモイルメチル基、又はN,N−ジブチルカルバモイルメチル基が特に好ましい。
【0044】
前記R7で表されるアリール基としては、無置換でも置換基を有していてもよく、総炭素数6〜30のアリール基が好ましく、総炭素数6〜20のアリール基がさらに好ましい。具体的には、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−フェニルフェノキシ基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、4−ブトキシフェニル基、2,4−ジエトキシフェニル基、2,5−ジブトキシフェニル基、4−フェノキシフェニル基、ナフチル基、4−ジブチルカルバモイルフェニル基、4−ジブチルスルファモイルフェニル基、4−アセチルアミノ−3−(3,5,5−トリメチルヘキシルオキシ)フェニル基、又は4−アセチルアミノ−3−オクチルフェニル基が好ましく、フェニル基、2−メチルフェニル基、3−メチルフェニル基、4−メチルフェニル基、4−クロロフェニル基、2−メトキシフェニル基、3−エトキシフェニル基、又は4−ブトキシフェニル基が特に好ましい。
【0045】
なお一般式(1)及び(2)においてR3がアルコキシ基、又はアリールオキシ基であり、R4がアシルアミノ基であることが好ましい。
【0046】
以下に本発明の製造方法により得られる一般式(1)で示される化合物の具体例を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0047】
【化5】

【0048】
【化6】

【0049】
【化7】

【0050】
本発明において用いる前記カルボン酸としては、特に制限は無く、反応条件で安定であれば良い。一価でも多価であっても良い。
このようなカルボン酸としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、モノクロロ酢酸、ジクロロ酢酸、ピバリン酸、カプロン酸、カプリル酸、オレイン酸、乳酸、酒石酸、リンゴ酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、クロトン酸、フェニルプロピオン酸、安息香酸、サリチル酸、オルトトルイル酸、パラトルイル酸、フタル酸、イソフタル酸、又はテレフタル酸が好ましく、取り扱い性、汎用性、コストの点からとして蟻酸、酢酸、プロピオン酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、又は2−エチルヘキサン酸が最も好ましい。
【0051】
前記カルボン酸を、溶媒、または添加剤として用いる場合のいずれにおいても、単独又は2種以上を混合して用いても良い。
【0052】
溶媒としてカルボン酸を使用する場合、取り扱い性の点から反応条件下で液体であることが好ましい。
このようなカルボン酸としては蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、ジクロロ酢酸、ピバリン酸、カプロン酸、カプリル酸、又はオレイン酸が好ましく、取り扱い性、汎用性、コストの点からとして酢酸が最も好ましい。
【0053】
添加剤としてカルボン酸を用いる場合、その添加量としては一般式(2)で表される化合物に対し、モル比で1%〜2000%が好ましく、10%〜500%が特に好ましい。量が少ないと効果が小さく原料が残留し、多いと容積効率が低下する傾向となる。
溶媒としてカルボン酸を用いる場合、溶媒の使用量は、原料が溶解する程度でよいが、高濃度であると高粘化し撹拌効率が下がり、低濃度では容積効率が低下するため、使用する一般式(2)で表される化合物の質量に対し、10%〜2000%の範囲が好ましく、100%〜2000%が更に好ましく、200%〜500%であれば特に好ましい。
【0054】
前記カルボン酸を添加剤として用いる場合の反応に使用する溶媒としては、一般式(2)で表わされる化合物及び添加するカルボン酸が反応条件下で溶解するものが好ましく、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒の他、スルホラン、ジメチルスルホキシド、水等が好ましい。また、これらの溶媒を2種以上併用して使用することもできる。特にアセトニトリル、トルエン、酢酸エチルが収率の点から好ましい。
【0055】
一般式(3)で表される化合物の使用量は、一般式(2)で表される化合物に対し、モル比で90%〜500%が好ましく、95%〜130%がさらに好ましく、95%〜120%が特に好ましい。量が少ないと一般式(2)で表される化合物が残留し、多いと逆に一般式(3)で表される化合物が残留する。
反応温度は、−10℃〜120℃の範囲で選べばよく、40℃〜100℃の範囲で行うことが好ましい。
反応終了後、生成物を単離する方法は、特に制限は無いが、反応系に水を添加して晶析させ濾過・水洗する方法、反応系に水を添加して酢酸エチル、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン等の有機溶媒により生成物を抽出し、水洗浄の後、有機溶媒を留去する方法などが可能である。
得られた生成物を精製する方法としては、特に制限は無いが、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の通常の精製手法を用いることができる。
また、合成中間体として用いる場合は、単離してもよいが、次の反応等に支障が無い場合は、単離せずに溶媒に溶解したまま用いることもできる。
【0056】
一般式(2)で表わされるアニリン化合物は市販のもの、あるいは、「Organic Functional Group Preparations Volume I」(Stanley R.Sandler, Wolf Karo著(second edition, 1983) Academic Press, Inc.) Chapter13、「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応III」(1976、丸善株式会社)等に記載されている公知の方法で合成できる。
【0057】
一般式(3)で表わされるイソチオシアネート化合物は市販のもの、あるいは、「Organic Functional Group Preparations Volume I」(Stanley R.Sandler, Wolf Karo著(second edition,1983) Academic Press,Inc.) Chapter12、「新実験化学講座14 有機化合物の合成と反応III」(1976、丸善株式会社)等に記載されている公知の方法で合成できる。
【0058】
〈ベンゾチアゾリン化合物の製造方法〉
本発明における下記一般式(4)で示されるベンゾチアゾリン化合物の製造方法は、下記一般式(2a)で示されるアニリン化合物と下記一般式(3)で示されるイソチオシアネート化合物とをカルボン酸の存在下又はカルボン酸溶媒中にて反応させ、続けて環化反応を行なうことを特徴とする。
当該製造方法を使用することにより、上述した本発明の一般式(4)のベンゾチアゾリン化合物を高収率で得る事ができる。
【0059】
【化8】

【0060】
一般式(2a)、(3)及び(4)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR7は前記一般式(1)、(2)、及び(3)におけるR1、R2、R3、R4、R5、及びR7と同義であり、好ましい具体例も同様である。
【0061】
なお一般式(4)においてR3がアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、R4がアシルアミノ基であることが好ましい。
【0062】
以下に本発明の製造方法により得られる一般式(4)で示される化合物の具体例(B−1〜B−16)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0063】
【化9】

【0064】
【化10】

【0065】
本発明のベンゾチアゾリン化合物の製造方法において、中間体の前記チオウレア化合物の製造条件についてはその製造条件とすることができ、好ましい条件も同様である。
【0066】
本発明のベンゾチアゾリン化合物の製造方法においては、以下の条件が使用できる。
前記チオウレア化合物の製造に続けて、環化反応を行なう。この環化反応は酸化反応であり、用いる酸化剤としては、塩素、臭素、ヨウ素、塩化スルホニル、塩化スルフリル、1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、ベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミド又はテトラブチルアンモニウムトリブロミドが好ましく、取り扱い、収率の点からは、臭素、1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン、又はベンジルトリメチルアンモニウムトリブロミドが最も好ましい。また、これらは単独であってもまた併用であっても良い。
酸化剤の使用量は1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、及び1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン以外の場合、一般式(2)で表される化合物に対し、モル比で90%〜130%が好ましく、100%〜110%が特に好ましい。1,3−ジクロロ−5,5−ジメチルヒダントイン、及び1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントインの場合、一般式(2)で表される化合物に対し、モル比で45%〜130%が好ましく、50%〜100%が特に好ましい。酸化剤量が少ないと原料が残留し、多いと副反応物が増えることがある。
【0067】
反応に使用する溶媒としては、蟻酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、吉草酸、イソ酪酸、イソ吉草酸、2−エチル酪酸、2−エチルヘキサン酸、ジクロロ酢酸、ピバリン酸、カプロン酸、カプリル酸、又はオレイン酸が好ましい。これらの溶媒の混合溶媒も使用できる。
また、酸化反応(環化反応)をチオウレア化反応に引き続き連続して行なうので、酸化反応の前に溶媒を追加することもできる。この場合、酸化剤と反応しないものであれば特に制限は無く、アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素系溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル等のエステル系溶媒、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、メチル−t−ブチルエーテル、ジオキサン等のエーテル系溶媒、ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド等のアミド系溶媒、クロロホルム、塩化メチレン、ジクロロエタン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒等が使用できる。これらの溶媒の混合溶媒でもよい。
溶媒の使用量は、原料が溶解する程度でよいが、高濃度であると高粘化し撹拌効率が下がり、低濃度では容積効率が低下するため、使用する一般式(2)で表される化合物の質量に対し、100%〜2000%の範囲が好ましい。200%〜500%であればさらに好ましい。
【0068】
反応温度は−10℃〜120℃の範囲で選べばよく、一般的に高温ほど早く反応は完結するが、本合成方法は室温以下でも速やかに反応するため、収率の点から−10℃〜70℃が好ましく、−5℃〜35℃範囲で行うことが更に好ましい。また、使用する溶媒の融点がこの範囲に入るものについては融点以上の温度で反応を行うことが好ましい。
反応終了後、生成物を単離する方法は特に制限は無く、反応系に水を添加して生成物を酸の塩として晶析させ、濾過・水洗した後、アルコール、アセトン、アセトニトリル等の水溶性有機溶媒に溶解し、無機塩基水溶液により中和する方法、反応系に水を添加した後、無機塩基水溶液により中和して生成物を晶析させ、濾過・水洗する方法、反応系に水を添加し、無機塩基水溶液により中和し、酢酸エチル、トルエン、ジエチルエーテル、クロロホルム、塩化メチレン等の有機溶媒により生成物を抽出し、水による洗浄を行ない有機溶媒を留去する方法などが可能である。
用いる無機塩基としては炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、酢酸ナトリウム、酢酸カリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウム等が好ましく、特に炭酸水素ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、水酸化ナトリウム、又は水酸化カリウムが好ましい。また、単独でも2種以上を併用してもよい。
得られた生成物を精製する方法としては、特に制限は無いが、再結晶、カラムクロマトグラフィー、蒸留等の通常の精製手法を用いることができる。
【0069】
〈ベンゾチアゾール化合物の製造方法〉
本発明における下記一般式(6)で示されるベンゾチアゾール化合物の製造方法は、下記一般式(2)で示されるアニリン化合物と、下記一般式(5)で示されるイソチオシアネート化合物とをカルボン酸溶媒中にて反応させ、続けて環化反応を行なうことを特徴とする。
当該製造方法を使用することにより、本発明における下記一般式(6)のベンゾチアゾール化合物を高収率で得る事ができる。
【0070】
【化11】

【0071】
一般式(2)は、前記チオウレア化合物の製造方法の項における化合物と同様であり、好ましい具体例も同様である。
一般式(5)中、R8、R9、R10、及びR11は前記一般式(1)、(2)におけるR2、R3、R4、及びR5と同義であり、好ましい具体例も同様である。
【0072】
一般式(6)中、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6は前記一般式(1)、(2)におけるR1、R2、R3、R4、R5、及びR6と同義であり、好ましい具体例も同様である。R8、R9、R10、及びR11は前記一般式(5)におけるR8、R9、R10、及びR11と同義であり、好ましい具体例も同様である。
【0073】
なお、一般式(6)においてR9がアルコキシ基、又はアリールオキシ基であり、R10がアシルアミノ基であることが好ましい。
【0074】
以下に、本発明の製造方法により得られる一般式(6)で示される化合物の具体例(C−1〜C−8)を示すが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0075】
【化12】

【0076】
本発明のベンゾチアゾール化合物の製造方法において、使用できる条件は一般式(5)で示される化合物と一般式(2)で示される化合物の反応においては、前記チオウレア化合物の製造方法と同様であり、環化反応においては前記ベンゾチアゾリン化合物の製造方法と同様である。
【実施例】
【0077】
以下に、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれによって限定されるものではない。
【0078】
(実施例1)
N−メチルアニリン10.7gと酢酸50mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート11.5gを添加し80℃で5時間攪拌した。反応溶液に水200mLと酢酸エチル200mLを加えて抽出し、有機層を濃縮し例示化合物A−1を22.0g得た。1H−NMRより生成物中にN−メチルアニリンは残存しておらず、例示化合物A−1の収率は99%であった。得られた例示化合物A−1の1H−NMRデータを下記に示す。
【0079】
【化13】

【0080】
1H−NMR(CDCl3)δ;7.50(m,2H),7.40(m,1H),7.22(m,2H),5.30(br,1H),3.65(s,3H),3.56(m,2H),1.43(m,2H),1.21(m,2H),0.86(t,3H)
【0081】
(比較例1)
N−メチルアニリン10.7gとアセトニトリル50mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート11.5gを添加し80℃で5時間攪拌した。反応溶液に水200mLと酢酸エチル200mLを加えて抽出し、有機層を濃縮し例示化合物A−1を19.0g得た。
1H−NMRよると、生成物中にはN−メチルアニリンが残存しており、その比率は「生成物:N−メチルアニリン=83:17」であった。生成物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、例示化合物A−1の収率は77%であった。N−メチルアニリンの1H−NMRデータを下記する。
【0082】
1H−NMR(CDCl3)δ;7.10(m,2H),6.75(t,1H),6.62(m,2H),3.66(br,1H)2.82(s,3H)
【0083】
(実施例2)
下記化合物aを6.6gと酢酸2.4g、アセトニトリル20mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート2.4gを添加し5時間加熱還流した。反応溶液に水100mLと酢酸エチル100mLを加えて抽出し、有機層を濃縮した。濃縮物の1H−NMRデータより濃縮物(生成物)中に化合物aは残存していなかった。酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒から再結晶することで例示化合物A−21を8.0g得た。収率は91%であった。得られた例示化合物A−1の1H−NMRデータを下記に示す。
【0084】
【化14】

【0085】
1H−NMR(CDCl3)δ;8.40(d,1H),7.76(s,1H),7.20−7.35(m,5H),6.65(d,1H),6.22(s,1H),5.45(br,1H),5.41(s,2H),3.80(m,1H),3.59(m,2H),2.20(s,3H),1.55(m,4H),1.44(m,2H),1.23(m,2H),0.85(m,9H)
【0086】
(実施例3)
上記化合物aを32.6gと酢酸50mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート11.5gを添加し80℃で5時間攪拌した。反応溶液に水300mLと酢酸エチル200mLを加えて抽出し、有機層を濃縮した。濃縮物の1H−NMRより生成物中に化合物aは残存していなかった。酢酸エチルとヘキサンの混合溶媒から再結晶することで例示化合物A−21を41.3g得た。収率は94%であった。
【0087】
(比較例2)
上記化合物aを6.6gとアセトニトリル20mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート2.4gを添加し5時間加熱還流した。反応溶液に水100mLと酢酸エチル100mLを加えて抽出し、有機層を濃縮した。濃縮物の1H−NMRより生成物中に約47%の化合物aが残存していた。濃縮物をカラムクロマトグラフィーにより精製することで例示化合物A−21を4.3g得た。収率は49%であった。
【0088】
(比較例3)
上記化合物aを6.6gとアセトニトリル20mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート2.4gを添加し24時間加熱還流した。反応溶液に水100mLと酢酸エチル100mLを加えて抽出し、有機層を濃縮した。濃縮物の1H−NMRより生成物中に約41%の化合物aが残存していた。濃縮物をカラムクロマトグラフィーにより精製することで例示化合物A−21を4.8g得た。収率は54%であった。
【0089】
(実施例4)
下記化合物aを32.6gと酢酸50mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート11.5gを添加し80℃で5時間攪拌した。反応溶液を放冷後、酢酸100mLを追加し、室温下で酢酸50mLにBr215.0gを加えた溶液を30分かけてゆっくり滴下し、室温下でさらに1時間撹拌した。反応液に水1Lを加えて晶析し、析出した固体を濾取した。これをメタノール200mLに溶解し水酸化ナトリウム水溶液で中和後、水1L加えて晶析した。固体を濾取し、水で洗浄した。乾燥後、例示化合物B−11を36.5g得た。収率は83%であった。
【0090】
【化15】

【0091】
1H−NMR(CDCl3)δ;8.38(s,1H),7.60(s,1H),7.20−7.36(m,5H),6.21(s,1H),5.16(s,2H),3.85(m,1H),3.21(t,2H),2.17(s,3H),1.50−1.71(m,6H),1.43(m,2H),0.94(t,3H), 0.85(t,6H)
【0092】
(実施例5)
上記化合物aを6.6gと酢酸10mLを混合し、ここへn−ブチルイソチオシアネート2.4gを添加し80℃で5時間攪拌した。反応溶液を放冷後、酢酸20mLを追加し0℃に冷却した。これに1,3−ジブロモ−5,5−ジメチルヒダントイン2.9gを添加し、室温下でさらに1時間撹拌した。反応液に水を加えて晶析し、析出した固体を濾取した。これをメタノール50mLに溶解し水酸化ナトリウム水溶液で中和後、水300mL加えて晶析した。固体を濾取し、水で洗浄した。乾燥後、例示化合物B−11を6.9g得た。収率は79%であった。
【0093】
(実施例6)
下記化合物bを33.4gと酢酸50mLを混合し、ここへ下記化合物cを10.7g添加し50℃で5時間攪拌した。反応溶液を放冷後、酢酸100mLを追加し、室温下で酢酸50mLにBr215.0gを加えた溶液を30分かけてゆっくり滴下し、室温下でさらに1時間撹拌した。反応液に水を加えて晶析し、析出した固体を濾取した。カラムクロマトグラフィーにより精製し、例示化合物C−2を39.1g得た。収率は89%であった。
【0094】
【化16】

【0095】
1H−NMR(CDCl3)δ;8.58(s,1H),7.79(s,1H),7.30−7.50(m,5H),7.20(s,1H),4.09(t,2H),3.60(s,3H),2.19(s,3H),1.64−1.95(m,3H),1.14−1.30(m,2H),1.02(d,3H),0.94(s,9H)
【0096】
実施例1と比較例1の比較、実施例2,3と比較例2,3の比較から、本発明の製造方法によれば、二級アニリン化合物、立体的に嵩高い置換基を有するアニリン化合物を用いても効率的にチオウレア化合物を高収率で得ることができることが分かる。
さらに実施例4〜6のようにチオウレア化反応に続けて環化反応を連続して行なうことができ、高収率でベンゾチアゾリン化合物又はベンゾチアゾール化合物を得ることができることが分かる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(2)で示されるアニリン化合物と、下記一般式(3)で示されるイソチオシアネート化合物とをカルボン酸の存在下に反応させることを特徴とする下記一般式(1)で示されるチオウレア化合物の製造方法。
【化1】

(一般式(1)、(2)、及び(3)中、R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表わし、R2、R3、R4、R5、及びR6は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。R7はアルキル基、又はアリール基を表す。)
【請求項2】
前記一般式(1)及び(2)において、R3がアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、R4がアシルアミノ基である請求項1に記載のチオウレア化合物の製造方法。
【請求項3】
前記カルボン酸を溶媒として用いることを特徴とする請求項1又は2に記載のチオウレア化合物の製造方法。
【請求項4】
前記使用するカルボン酸が酢酸であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のチオウレア化合物の製造方法。
【請求項5】
下記一般式(2a)で示されるアニリン化合物と、下記一般式(3)で示されるイソチオシアネート化合物とをカルボン酸の存在下又はカルボン酸溶媒中にて反応させ、続けて環化反応を行うことを特徴とする下記一般式(4)で示されるベンゾチアゾリン化合物の製造方法。
【化2】

(一般式(2a)、(3)、及び(4)中、R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表わし、R2、R3、R4、及びR5は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。R7はアルキル基、又はアリール基を表す。)
【請求項6】
前記一般式(4)においてR3がアルコキシ基又はアリールオキシ基であり、R4がアシルアミノ基である請求項5に記載のベンゾチアゾリン化合物の製造方法。
【請求項7】
溶媒として用いるカルボン酸が酢酸であることを特徴とする請求項5又は6に記載のベンゾチアゾリン化合物の製造方法。
【請求項8】
イソチオシアネート化合物が下記一般式(5)で示されるとき、下記一般式(2)で示されるアニリン化合物とカルボン酸の存在下又はカルボン酸溶媒中にて反応させ、続けて環化反応を行うことを特徴とする下記一般式(6)で示されるベンゾチアゾール化合物の製造方法。
【化3】

(一般式(2)、(5)、及び(6)中、R1は水素原子、アルキル基、又はアリール基を表わし、R2、R3、R4、R5、R6、R8、R9、R10、及びR11は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、アルキル基、アリール基、アルコキシ基、アリールオキシ基、アルキルチオ基、アリールチオ基、アミノ基、アシルアミノ基、スルホニルアミノ基、アルコキシカルボニル基、アルキルスルホニル基、アリールスルホニル基、カルバモイル基、ニトロ基、又はシアノ基を表す。)
【請求項9】
前記一般式(5)及び(6)において、R9がアルコキシ基、又はアリールオキシ基、であり、R10がアシルアミノ基である請求項8に記載のベンゾチアゾール化合物の製造方法。
【請求項10】
前記溶媒として用いるカルボン酸が酢酸であることを特徴とする請求項8又は9に記載のベンゾチアゾール化合物の製造方法。

【公開番号】特開2006−1900(P2006−1900A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−181588(P2004−181588)
【出願日】平成16年6月18日(2004.6.18)
【出願人】(000005201)富士写真フイルム株式会社 (7,609)
【Fターム(参考)】