説明

チオフェンヒドロキサム酸誘導体及びHDAC阻害剤としてのこれらの使用

本発明の対象は、式Iの化合物、医薬的に許容される塩、光学異性体、ジアステレオ異性体及びラセミ体、上述の化合物の調製、これらを含む医薬、及びこれらの製造、並びにこれらの使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規なチオフェンジカルボン酸誘導体、及びこれらの(R)−及び(S)−鏡像異性体、及びラセミ体、これらの製造方法、これらを含む医薬、及びこれらの製造、並びに医薬的活性剤としてのこれらの化合物の使用に関する。
【0002】
転写調節は細胞分化、増殖、及びアポトーシスにおける主要な事象である。遺伝子対の転写活性化は、細胞目的地を決定し、そしてこの理由により、転写は多様な因子により密接に調節される。当該プロセスに関するその調節機構の1つは、DNAの三次構造の変化であり、これは転写因子のこれらの標的DNA断片への到達性を調節することにより転写に影響する。ヌクレオソームの完全性はコアヒストンのアセチル化状態により調節される。低アセチル化状態において、ヌクレオソームは密接にコンパクト化され、従って転写に非許容的である。言い換えると、ヌクレオソームはコアヒストンのアセチル化によりほどけ、その結果、転写に許容的となる。ヒストンのアセチル化状態はヒストンアセチルトランスフェラーゼ(HAT)及びヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の活性のバランスにより支配される。最近、HDAC阻害因子が、いくつかの種類の癌細胞、例えば、大腸癌、T細胞リンパ腫、並びに赤白血病細胞における成長及びアポトーシスを抑止することが発見された。アポトーシスが癌の進行に重大な因子であるならば、HDAC阻害因子はアポトーシスの有効な誘導因子として癌治療に有望な試薬である(Koyama, Y., et al., Blood 96, (2000) 1490-1495)。
【0003】
HDAC阻害因子のいくつかの構造クラスはMarks, P.A., et al., J. Nat. Cancer Inst. 92 (2000) 1210-1216において確認され、そして概説されている。より具体的にはWO98/55449,US5,369,108,WO01/38322,WO01/70675,WO02/22577,WO03/011851,WO03/066579,WO03/075929,WO03/076395,WO03/076400,WO03/076401,WO03/076421,WO03/076422,WO03/076430,WO03/076438,WO03/087066、及びWO2004/013130は、HDAC阻害活性を伴う、アルカノイル、アルキレニル、アルケニレニル、アリール、ヘテロアリール、ベンジル、ビアリール、及びシンナミルヒドロキサメートを報告する。
【0004】
しかしながら、改善された治療特性、例えば、2、3例を挙げると、増強された活性、低下した毒性、優れた溶解性、及び改善した薬物動態特性、を伴う新規な化合物の必要性が残る。
【0005】
本発明は、式Iに従う、チオフェンジカルボン酸誘導体、及びこれらの(R)−及び(S)−鏡像異性体、及びラセミ体
【化1】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Vは、フェニレン、又はヘテロアリーレンであり;
Yは、−O−;
−O−CHR2−;
−アルキレン−O−;
−アルキレン−O−CHR2−;
−NH−;
−NH−CHR2−;
−アルキレン−NH−;
−アルキレン−NH−CHR2−;又は
−アルケニレン−であり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、に関する。
【0006】
本発明に従う化合物はヒストンデアセチラーゼ(HDAC)の阻害因子であり、そしてこのため抗増殖活性を有する。本発明の対象は、式Iの化合物、及びこれらの医薬的に許容される塩、ジアステレオ異性体、ラセミ体、及び特にこれらの鏡像異性体、化合物の調製、これらの化合物を含む医薬、これらの医薬の製造、並びに疾病、特に以下に述べる疾病及び障害の制御又は予防における、あるいは対応する医薬の製造におけるこれらの化合物の使用である。
【0007】
このような化合物又は医薬により治療できる腫瘍の例は、大腸癌、乳癌、(進行乳癌を含む)、肺癌(例えば、腺癌、及び非小細胞肺癌を含む)、進行疾患を含む前立腺癌、膵癌、リンパ系の造血腫瘍(例えば、急性リンパ性白血病、B細胞リンパ腫、バーキットリンパ腫)、骨髄性白血病(例えば、急性骨髄性白血病a(AML))、濾胞性甲状腺癌、骨髄異形成症候群(MSD)、間葉に由来する腫瘍、黒色腫、奇形癌腫、神経芽細胞腫、グリオーマ、皮膚の良性腫瘍 (例えば、ケラトアカントーマ)、腎臓癌、卵巣癌、膀胱癌、及び表皮癌である。
【0008】
本明細書に使用される「アルキル」の語は、飽和した、1〜6、好ましくは1〜3の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、t−ブチルを意味する。
【0009】
上記アルキル基が1又は数個のハロゲン原子で任意的に置換されている場合、好ましくは塩素及びフッ素、特にはフッ素で置換されている。例は、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、2,2,2−トリフルオロエチル、パーフルオロエチル等である。
【0010】
本明細書で使用される「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、及び臭素、好ましくはフッ素及び塩素を示す。
【0011】
「ヘテロアリーレン」の語は、N、O、又はSから独立に選択される3つ以下、好ましくは1又は2つのヘテロ原子を含み、そして残りの原子が炭素原子である、5〜10個の環原子を伴う単環式又は二環式芳香環を意味する。このようなヘテロアリーレンは、上に定義したアルキルにより、好ましくはメチルにより1又は2回任意的に置換されていてよい。このようなヘテロアリーレンの例は、チオフェンジイル、イソキサゾールジイル、ピロリンジイル、メチルチオフェンジイル、フランジイル、イミダゾールジイル、ピリジンジイル、ピリミジンジイル、ピラジンジイル、ピリダジンジイル、トリアジンジイル、ピラゾールジイル、オキサゾールジイル、メチルイソキサゾールジイル、チアゾールジイル、イソチアゾールジイル、キノリンジイル、イソキノリンジイル、ベンゾフランジイル等であり、好ましくはチオフェンジイル、イソキサゾールジイル、ピロールジイル、特にチオフェンジイル、又は特にはイソキサゾールジイルである。
【0012】
本明細書で使用される「アルキレン」の語は、飽和した、1〜5、好ましくは1〜3の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素、例えば、メチレン、エチレン、トリメチレン、テトラメチレン、ペンタメチレン、メチルメチレン、メチルエチレン、(プロピレン)、エチルエチレン、プロピルエチレン、1−メチルトリメチレン、2−メチルトリメチレン、1−エチルトリメチレン、2−エチルトリメチレンを意味する。
【0013】
本明細書で使用される「アルケニレン」の語は、不飽和の、2〜6、好ましくは2〜4の炭素原子を含む直鎖状又は分岐状炭化水素を意味する。このような「アルケニレン」の例は、ビニレン(エテニレン)、アリレン、イソプロペニレン、1−プロペニレン、2−メチル−1−プロペニレン、1−ブテニレン、2−ブテニレン、3−ブテニレン、2−エチル−1−ブテニレン、3−メチル−2−ブテニレン、1−ペンテニレン、2−ペンテニレン、3−ペンテニレン、4−ペンテニレン、4−メチル−3−ペンテニレン、1−ヘキセニレン、2−ヘキセニレン、3−ヘキセニレン、4−ヘキセニレン、及び5−ヘキセニレンである。
【0014】
「飽和した炭素環式基」の語は、3〜7つの環原子を伴う単環式飽和炭化水素を意味する。このような飽和炭素環式基は、上に定義したアルキルにより、好ましくはメチルにより任意的に1又は2回置換されてもよい。このような飽和炭素環式基はシクロプロピル、シクロブチル、及びシクロヘプチル、好ましくはシクロペンチル又はシクロヘキシルである。
【0015】
「飽和した複素環式基」の語は、飽和した、N、O、又はSから独立に選択された3つ以下、好ましくは1又は2つのヘテロ原子を含み、そして残りの環原子が炭素原子である、5〜6つの環炭素を伴う単環式炭化水素を意味する。このような飽和複素環式基は、上に定義したアルキルにより、好ましくはメチルにより任意的に1〜3回、好ましくは1又は2回置換されてもよい。このような飽和した複素環式基の例は、ピロリジニル、モルホリノ、ピペラジニル、N−メチル−ピペラジニル、又はピペリジルである。
【0016】
「ヘテロアリール基」の語は、N、O、又はSから独立に選択された3つ以下、好ましくは1又は2つのヘテロ原子を含み、そして残りの環原子が炭素原子である5〜10個の環炭素を伴う単環式又は二環式芳香環を意味する。このようなヘテロアリール基は、ハロゲン、−CN、−C(O)OH、−C(O)CH3、−SCH3、−NH2、−CH2NH2、−CH2OH、又はアルキル、好ましくはアルキル(ここで、アルキル及びハロゲンは上に定義されている)により任意的に1又は2回置換されてよい。このようなヘテロアリール基の例は、チオフェニル、メチルチオフェニル、ピラゾリル、ジメチルイソキサゾリル、ピリジル、ベンゾチオフェニル、インドリル、フリル、ピロリル、イミダゾリル、ピリミジル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアジニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、チアゾリル、イソチアゾリル、チアジアゾリル、オキサジアゾリル、トリアゾリル、キノリル、イソキノリル、ベンゾフラニル等であり、好ましくはチオフェニル、メチルチオフェニル、ピラゾリル、ジメチルイソキサゾリル、ピリジル、ベンゾチオフェニル、又はインドリルである。
【0017】
「置換されたフェニル基」の語は、アルキル、ハロゲン、−O−アルキル、−S(O)2−アルキル、−NH(アルキル)、又は−N(アルキル)2;により1〜3回置換されているフェニルを意味し、ここでアルキル及びハロゲンは上に定義されており、そして当該アルキル基は1又は数個のハロゲン原子、好ましくは塩素及びフッ素、特にはフッ素で任意的に置換されてよい。
【0018】
本発明に従う化合物は、これらの医薬的に許容される塩の形態において存在することができる。「医薬的に許容される塩」の語は、式Iの化合物の生物有効性及び特性を維持し、そして適当な無毒性の有機若しくは無機酸、又は有機若しくは無機塩基から形成される、慣習的な酸付加塩又は塩基付加塩を意味する。酸付加塩の例は、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸に由来するもの、及び有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸等に由来するものを含む。塩基付加塩は、水酸化アンモニウム、カリウム、ナトリウム、及び第四級アンモニウム、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウムに由来するものを含む。医薬化合物(即ち、薬物)の塩への化学修飾は、化合物の改善した物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動性、及び溶解性を得るために医薬学者に周知な技術である。例えば、Stahl, P. H. , and Wermuth, G. , (editors), Handbook of Pharmaceutical Salts, Verlag Helvetica Chimica Acta (VHCA), Zurich, (2002) or Bastin, R.J., et al., Organic Proc. Res. Dev. 4 (2000) 427-435を参照のこと。
【0019】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式Iの化合物である。
【0020】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式Iの化合物である。
【0021】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式Iの化合物である。
【0022】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式Iの化合物である。
【0023】
本発明の態様は、式中
1が、(C1−C3)アルキルであり;
Vが、フェニレンであり;
Yが、−アルキレン−O−、又は−アルキレン−NH−であり;
Wが、アルキル、ハロゲン、−O−アルキル、−S(O)2−アルキル、−NH(アルキル)、又は−N(アルキル)2により、好ましくはアルキルにより、1〜3回、好ましくは1又は2回置換されている、フェニル基であり、
そしてここで当該アルキルは1又は数個のハロゲン原子、好ましくは塩素及びフッ素、特にはフッ素で任意的に置換されてよい、
式Iの化合物である。
【0024】
本発明の態様は、
1が、(C1−C3)アルキルであり;
Vが、フェニレンであり;
Yが、−アルキレン−O−であり;
Wが、アルキル、ハロゲン、−O−アルキル、−S(O)2−アルキル、−NH(アルキル)、又は−N(アルキル)2により、好ましくはアルキルにより1〜3回、好ましくは1又は2回置換されている、フェニル基であり、
そしてここで当該アルキルは1又は数個のハロゲン原子、好ましくは塩素及びフッ素、特にはフッ素で任意的に置換されてよい、
式Iの化合物である。
【0025】
本発明の態様は、
1が、(C1−C3)アルキルであり;
Vが、フェニレンであり;
Yが、−アルキレン−NH−であり;
Wが、アルキル、ハロゲン、−O−アルキル、−S(O)2−アルキル、−NH(アルキル)、又は−N(アルキル)2により、好ましくはアルキルにより1〜3回、好ましくは1又は2回置換されている、フェニル基であり、
そしてここで当該アルキルは1又は数個のハロゲン原子、好ましくは塩素及びフッ素、特にはフッ素で任意的に置換されてよい、
式Iの化合物である。
【0026】
本発明の態様は、式I−aに従う化合物
【化2】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Yは、−O−;
−O−CHR2−;
−アルキレン−O−;
−アルキレン−O−CHR2−;
−NH−;
−NH−CHR2−;
−アルキレン−NH−;
−アルキレン−NH−CHR2−;又は
−アルケニレン−であり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0027】
本発明の態様は、式I−a−aの化合物
【化3】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0028】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−aの化合物である。
【0029】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−aの化合物である。
【0030】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−aの化合物である。
【0031】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−aの化合物である。
【0032】
本発明の態様は、式I−a−bの化合物
【化4】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0033】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−bの化合物である。
【0034】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−bの化合物である。
【0035】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−bの化合物である。
【0036】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−bの化合物である。
【0037】
本発明の態様は、式I−a−cの化合物
【化5】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0038】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−cの化合物である。
【0039】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−cの化合物である。
【0040】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−cの化合物である。
【0041】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−cの化合物である。
【0042】
本発明の態様は、式I−a−dの化合物
【化6】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0043】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−dの化合物である。
【0044】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−dの化合物である。
【0045】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−dの化合物である。
【0046】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−dの化合物である。
【0047】
本発明の態様は、式I−a−eの化合物
【化7】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0048】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−eの化合物である。
【0049】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−eの化合物である。
【0050】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−eの化合物である。
【0051】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−eの化合物である。
【0052】
本発明の態様は、式I−a−fの化合物
【化8】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0053】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−fの化合物である。
【0054】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−fの化合物である。
【0055】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−fの化合物である。
【0056】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−fの化合物である。
【0057】
本発明の態様は、式I−a−gの化合物
【化9】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0058】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−gの化合物である。
【0059】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−gの化合物である。
【0060】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−gの化合物である。
【0061】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−gの化合物である。
【0062】
本発明の態様は、式I−a−hの化合物
【化10】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0063】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−hの化合物である。
【0064】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−hの化合物である。
【0065】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−hの化合物である。
【0066】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−hの化合物である。
【0067】
本発明の態様は、式I−a−iの化合物
【化11】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0068】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−a−iの化合物である。
【0069】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−a−iの化合物である。
【0070】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−a−iの化合物である。
【0071】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−a−iの化合物である。
【0072】
本発明の態様は、式I−bの化合物
【化12】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Yは、−O−;
−O−CHR2−;
−アルキレン−O−;
−アルキレン−O−CHR2−;
−NH−;
−NH−CHR2−;
−アルキレン−NH−;
−アルキレン−NH−CHR2−;又は
−アルケニレン−であり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0073】
本発明の態様は、式I−b−aに従う化合物
【化13】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0074】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−aの化合物である。
【0075】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−aの化合物である。
【0076】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−aの化合物である。
【0077】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−aの化合物である。
【0078】
本発明の態様は、式I−b−bの化合物
【化14】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0079】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−bの化合物である。
【0080】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−bの化合物である。
【0081】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−bの化合物である。
【0082】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−bの化合物である。
【0083】
本発明の態様は、式I−b−cの化合物
【化15】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0084】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−cの化合物である。
【0085】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−cの化合物である。
【0086】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−cの化合物である。
【0087】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−cの化合物である。
【0088】
本発明の態様は、式I−b−dの化合物
【化16】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0089】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−dの化合物である。
【0090】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−dの化合物である。
【0091】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−dの化合物である。
【0092】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−dの化合物である。
【0093】
本発明の態様は、式I−b−eの化合物
【化17】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0094】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−eの化合物である。
【0095】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−eの化合物である。
【0096】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−eの化合物である。
【0097】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−eの化合物である。
【0098】
本発明の態様は、式I−b−fの化合物
【化18】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0099】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−fの化合物である。
【0100】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−fの化合物である。
【0101】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−fの化合物である。
【0102】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−fの化合物である。
【0103】
本発明の態様は、式I−b−gの化合物
【化19】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0104】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−gの化合物である。
【0105】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−gの化合物である。
【0106】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−gの化合物である。
【0107】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−gの化合物である。
【0108】
本発明の態様は、式I−b−hの化合物
【化20】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0109】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−hの化合物である。
【0110】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−hの化合物である。
【0111】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−hの化合物である。
【0112】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−hの化合物である。
【0113】
本発明の態様は、式I−b−iの化合物
【化21】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基である)
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩、である。
【0114】
本発明の態様は、式中Wが飽和した炭素環式基である、式I−b−iの化合物である。
【0115】
本発明の態様は、式中Wが飽和した複素環式基である、式I−b−iの化合物である。
【0116】
本発明の態様は、式中Wがヘテロアリール基である、式I−b−iの化合物である。
【0117】
本発明の態様は、式中Wが置換されたフェニル基である、式I−b−iの化合物である。
【0118】
本発明の更なる他の態様は、式Iの化合物、特にこれらの(R)−及び(S)鏡像異性体の製造方法であって、適当な活性剤の存在下において、
式IVの化合物
【化22】

(式中、
3は、アルキル基である)
と、式Xのラセミ体、又は(R)−若しくは(S)−アミン
【化23】

(式中、
V、W、Y、及びR1は式Iのために上記に与えられた意味を有する)
を反応させることにより、
式XIの化合物
【化24】

を与え、これをヒドロキシアミンで処理して、式Iの各化合物を与え;そして
所望する場合には、上記化合物をその医薬的に許容される塩に変換することによる、方法である。
【0119】
本発明の対象である、式Iの化合物、又はこれらの医薬的に許容される塩は、化学的に関連する化合物の調製に適用できるようないずれかの既知の方法により調製することができる。式Iのチオフェンヒドロキサム酸誘導体又はその医薬的に許容される塩を調製するために使用される場合、これらの方法は、以下の代表的なスキーム及び例により示され、他に言及しない限り、式中、W、Y、V、及びR1は本明細書に以上に定義したいずれかの意味を有する。必要な出発物質は有機化学の標準的な手順により得ることができる。このような出発物質の調製は、付随の実施例において記載される。あるいは、必要な出発物質は有機化学業界において示される類似の手順により得ることができる。
【0120】
リンカーYの性質に依存して、式Iの化合物又は式XIの化合物は異なる合成経路により調製することができる。以下のスキームA〜E及び対応する説明において、いくつかの反応順序を示す。
【0121】
A)
式I及び式XIの化合物(式中、Yは−アルキレン−NH−、−アルキレン−O−、−O−アルキレン−、−NH−、又は−O−であり、そしてW、V、R1、及びR3は式Iのために定義したとおりである)はスキームAに従い調製することができ、そしてXI−A及びI−Aと命名される。以下のスキームAにおいて、式I又はI−Aの化合物のいくつかの製造方法が示される:
【化25】

【0122】
スキームA
スキームAにおいて、V、W、及びR1は式Iに定義されたとおりであり、そしてR3はアルキル又は任意的に置換されたベンジルである。Fgは金属触媒(クロス−)カップリング反応に適当な官能基、例えば、フッ化物、ヨウ化物、臭化物、塩化物、トリフラート、ボロン酸ピナコールエステル、又はトリアルキルスタンナン(例えば、Me3Sn、Bu3Sn)、又は他の適当な官能基を意味する。Pgは、保護基、例えば、ベンジル−、p−メトキシベンジル、tert−ブチルオキシカルボニル、トリチル−、又はシリル基、例えば、トリメチルシリル−、若しくはジメチル−tert−ブチルシリル基、又は他の適当な保護基を意味する。
【0123】
(A−1−1)
一般式III 、VII 、又はXのいくつかのアミン(式中、W、Y、V、Fg、及びPgは以上に定義したとおりである)は、商業的に入手可能である。これらはまた、例えば、一般式II、VI、又はIXの対応するケトンから還元的アミノ化により調製することができる。
【0124】
当該反応は、典型的には、同じ反応容器において生じるイミンの形成及び引き続くアミンへの還元を伴うワンポット反応として行われる。当該反応混合物は、通常、アンモニア源、例えば、NH4OAc、及び還元剤、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウムを含み、そして適当な溶媒、例えば、メタノール中で加熱される。
【0125】
(A−1−2)
一般式III 、VII 、又はXのアミンの他の調製方法は、以上に定義したR1を有する、グリニャール試薬、R1−MgBrの添加、又は有機リチウム化合物、Li−R1を一般式XII、XIII 、又はXIVの芳香族ニトリル(式中W、Y、V、Fg、及びPgは以上に定義したとおりである)を添加し、続いてイミンを還元することである(Synth. Commun. 1998, 28(21), 4067)。
【0126】
式III 、VII 、又はXのアミンの純粋な(R)及び(S)鏡像異性体(式中、W、Y、V、R1、Fg、及びPgは以上に定義した意味を有する)は商業的に入手可能であり、あるいは有機化学の標準的な手順により商業的に入手可能な、任意的に鏡像異性的に純粋な前駆物質から調製することができる。
【0127】
(A−1−3)
式III 、VII 、又はXのキラル中心を導入するための方法は、例えば、式II、VI、又はIXの対応するアリールアルキルケトンの鏡像異性選択的還元である。これは、例えば、キラルCBS(Corey, Bakshi, Shibata)試薬、及び還元剤としてボラン−THF錯体、ボラン−ジエチルアニリン錯体、又はボラン−ジメチルスルフィドの組み合わせにより達成できる(Corey, E. J., et al., Angew. Chemie 110 (1998) 2092-2118)。式II、VI、又はIXのアリールアルキルケトンの鏡像異性選択的還元の更に他の方法は、適当な溶媒、例えば、THF中でジイソカンフェイルクロロボランを利用し、そして続いてH22/NaHCO3又はジエタノールアミンで行う(Brown, H. C., et al., J. Am. Chem. Soc. 110 (1988) 1539-1546; Wiegers, A., and Scharf, H.-D., Tetr. Asym. 7 (1996) 2303-2312)。他の方法は、Noyori型のキラルリガンドを伴う遷移金属触媒の存在下における式II、VI、又はIXのアリールケトンの触媒的不斉水素化である。式II、VI、又はIXのアリールアルキルケトンのこれらの鏡像異性選択的還元において得られるキラルアルコールは、それから、例えば、Chen, C. -P., et al., Tetrahedron Lett. 32 (1991) 7175-7178に記載されるとおり: Mitsunobu 条件(Mitsunobu, 0., Synthesis 1 (1981) 1-28)下においてヒドロキシ基を窒素官能基で置換し(例えば、アジド又はフタルイミドで) そして続いてアミンに変換(例えば、アジドのトリフェニルホスフィンによる還元又は触媒水素化(Pd/C,H2,CF3COOH)又はフタルイミドのヒドラジン分解)による、合成化学の標準的な手順により式III 、VII 、又はXのアミンに変換することができる。
【0128】
(A−1−4)
1−(アリール)エチルアミンの他の不斉調製法は、メチルリチウムのキラルオキシムエーテルへの求核付加(Yamazaki, et al., Tetrahedron Lett. 42 (2001) 5029-5032)、及び続くアミンへの変換である。
【0129】
(A−1−5)
式III 、VII 、又はXのラセミのアミン(式中、W、Y、V、R1、Pg、及びFgは以上に定義した意味を有する)は、既知の手順、例えば、適当なキラル鏡像異性的に純粋な酸と形成するジアステレオ異性塩の分別再結晶により、これらの鏡像異性体に分離することができる(Smith, H. E., et al., J. Am. Chem. Soc. 105 (1983) 1578-1584; US 4,983,771)。これらの酸は、商業的に入手可能であり、例えば、マンデリン酸、酒石酸、乳酸、ショウノウ酸、N−アセチルロイシン、ジベンゾイル酒石酸であり、あるいは、これらは1−アリールエチルアミン、例えば、2−ナフチルグリコール酸(Kinbara, K. , et al., J. Chem. Soc., Perkin Trans. 2 (2000) 1339- 1348)、又はイソプロピリデングリコール3−カルボキシ−2ナフトエート(Pallavicini, M. , Tetr. Asym. 12 (2001) 2489-2495)の分割のためにデザインされている。
【0130】
(A−1−6)
式III 、VII 、又はXのラセミのアミンの2つの鏡像異性体の他の分離方法は、酵素触媒分割、例えば、カンジダ・アンタルクチカB(candida Antarctica B)由来のリパーゼによるものである(Rasor, J. P., and Voss, E., Applied Catalysis A: General 221 (2001) 145-158; Iglesias, L. E., et al., Tetr. Asym. 8 (1997) 2675- 2677)。
【0131】
(A−2−1)
式Vの化合物(式中、Pg、Fg、V、及びR1は以上に定義した意味を有する)は、式IV(式中、R3は、(C1−C4)アルキル基、好ましくはメチル、エチル、又はtert−ブチル基、あるいは任意的に置換されたベンジルである)と式III のアミンから調製される。
【0132】
当該反応は、典型的には、ツーステップ・ワンポット法を含む。
【0133】
第一工程において、式IVのカルボン酸が活性化される。当該反応は、活性剤の存在下において、不活性溶媒又は希釈剤、例えば、ジクロロメタン、ジオキサン、又はテトラヒドロフラン中で行われる。酸の適当な反応性誘導体、例えば、ハロゲン化アシル、例えば、酸及び無機酸クロライドの反応により形成される塩化アシル;混合無水物、例えば、酸及びクロロギ酸エステル、例えば、クロロギ酸イソブチルの反応により形成される無水物;酸及びフェノール、例えば、ペンタフルオロフェノールの反応により形成される活性エステル;酸及びN−ヒドロキシベンゾトリアゾールの反応により形成される活性エステル;酸及びN,N’−カルボニルジイミダゾールの反応により形成される式IVの化合物の対応するカルボニルイミダゾール;酸及びアジド、例えば、ジフェニルホスホリルアジドの反応により形成されるアシルアジド;酸及びシアニド、例えば、ジエチルホスホリルシアニドの反応により形成されるアシルシアニド;又は酸及びカルボジイミド、例えば、ジシクロへキシルカルボジイミドの反応の生成物;又は酸及びビス−(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)−ホスホリルクロライドの反応の生成物である。当該反応は−30℃〜60℃において簡便には0℃以下で行われる。
【0134】
第二工程において、活性化に利用される温度において、式III のアミン(式中、V、Fg、Pg、及びR1は以上に定義した意味を有する)を溶液に添加し、そして当該温度を周囲温度にゆっくりと調整する。適当なスカベンジャー塩基、例えば、トリエチルアミン、又はジイソプロピルエチルアミンを当該反応混合物に添加することができる。これらの方法は当業者に周知である。原理において、例えば、Houben-Weyl, "Methoden der organischen Chemie", Vols. XV/1 and XV/2, Georg Thieme Verlag, Stuttgartに記載される、ペプチド化学において使用される、アミドの合成のための全ての方法もまた適用される。
【0135】
式IVの化合物は、文献、例えば、米国特許第2,680,731号、及び Gaddard, C.J. et al., J. Heterocycl. Chem. 28 (1991) 17に記載される。これらのモノエステルは、通常、ジエステルの選択的けん化、又は対応するアルデヒドの酸化により調製されるが、他の方法もまた有用であり、そして当業界に周知である。
【0136】
(A−2−2)
同様に、式VIIIの化合物(式中、V、R1、R3、及びFgは、前に定義されている)は、式IVの化合物と式VII のアミン(式中、Fg、V、及びR1は以上に定義した意味を有する)との反応により得ることができる。
【0137】
当該反応は、セクション(A−2−1)における式IIの化合物の調製のために記載した条件下において行うことができる。
【0138】
(A−2−3)
同様の方法において、式XIの化合物(式中、W、Y、V、R1、及びR3は、前に定義されている)は、式IVの化合物と式Xのアミン(式中、W、Y、V、及びR1は以上に定義した意味を有する)との反応により得ることができる。
【0139】
当該反応は、セクション(A−2−1)における式IIの化合物の調製のために記載した条件下において行うことができる。
【0140】
(A−3−1)
アミド形成反応(A−2−1)後、式V中の官能基Fgは、適当な保護基Pgが遊離して式VIIIの化合物を与える。適用される脱保護反応は、保護基の種類に依存する。
【0141】
(A−4−1)
式XIの化合物(式中、Yは、−アルキレン−NH−、又は−NH−であり、W、V、R1、及びR3は、式Iのために定義されている)は、式III の化合物と式XVの化合物
【化26】

(式中、W、及びYは以上に定義した意味を有する)における、パラジウム触媒クロスカップリング反応により調製することができる。
【0142】
当該反応は、例えば、制限されることなく、Buchwald−Hartwig型のもの、及び関連反応であってよい(Fgは、ヨウ化物、臭化物、トリフラート、又は塩化物でよく、例えば、Kwong, F. Y., Org. Lett. 4 (2002) 581-548; Louie, J., et al., J. Org. Chem. 62 (1997) 1268- 1273; Wolfe, J. P., et al., J. Am. Chem. Soc. 119 (1997) 6054-6058; Yin, J. et al., Org. Lett. 4 (2002) 3481-3484; Mann, G., et al., J. Am. Chem. Soc. 120 (1998) 827-828を参照のこと)。
【0143】
他の方法は、式XVの化合物と式VIIIのアリールボロン酸(式中、FgはB(OH)2である)におけるパラジウム触媒クロスカップリング反応である(例えば、Chan, D. T.M., et al., Tetrahedron Lett. 39 (1998) 2933-2936; Lam, P. Y.S., et al. , Tetrahedron Lett. 39 (1998) 2941-2944を参照のこと)。
【0144】
(A−4−2)
式XIの化合物(式中、Yは、−O−、−アルキレン−O−、又は−O−アルキレンであり、そして、W、V、R1、及びR3は、式Iのために定義されている)は、式VIIIの化合物と式XVIの化合物
【化27】

(式中、Wは以上に定義した意味を有し、そしてGはこのセクションにおいて定義される官能基(これはFgと互換性である))とのカップリング反応により調製することができる。
【0145】
当該反応は、制限されることなく、Ullmann型であってよく、あるいは当該反応は、パラジウム触媒化又は銅触媒化であってよい(Fgは、F、Br、I、又はOTfであり、そしてGは、−OH、−アルキレン−OHであり;又はFgは、−OH、−アルキレン−OHであり、そしてGは、F、Br、I、又はOTfである;例えば、Yeager, G. W., et al., Synthesis 1 (1995) 28-30; Aranyos, A,. et al. J. Am. Chem. Soc. 121 (1999) 4369-4378; Palucki, M., et al. , J. Am. Chem. Soc. 119 (1997) 3395- 3396; MarcouX, J.-F., et al., J. Am. Chem. Soc. 119 (1997) 10539-10540を参照のこと)。
【0146】
他の方法は、式XVIの化合物と式VIIIの化合物(式中、Fgは、B(OH)2であり、そしてGは、−OH、−アルキレン−OHであり、又はFgは、−OH、−アルキレン−OHであり、そしてGは、B(OH)2である)の銅触媒クロスカップリング反応である(例えば、Evans, D.A., et al. , Tetrahedron Lett. 39 (1998) 2937-2940を参照のこと)。
【0147】
(A−5−1)
式Iの化合物の産生のための1つの方法は、適当な塩基の存在下における、式XIの化合物(式中、W、Y、V、及びR1は以上に定義した意味を有し、そしてR3は、(C1−C4)アルキル基、好ましくはメチル、エチル、又はtert−ブチル基であり、あるいは任意的に置換されたベンジル基である)とヒドロキシルアミンとの反応を含む。当該反応は、0℃〜100℃の温度で、簡便には、周囲温度又はその付近で、10〜12のpHにおいて、不活性な溶媒又は希釈剤、例えば、メタノール、又はエタノール中で行うことができる。適当な塩基は、例えば、アルコラート、例えば、ナトリウムメチラートである。インサイツ(in situ)においてヒドロキシルアミンを産生する代わりに、これは別々に遊離でき、そして有機溶媒、例えば、アルコール、例えば、メタノール又はエタノール中の溶液として適用することができる。
【0148】
(A−5−2)
式Iの化合物の調製のための他の方法は、式XVII のカルボン酸
【化28】

(式中、V、W、Y、及びR1は、以上に定義した意味を有する)を介する反応順序である。
【0149】
式XVII のこれらの中間体は、式VIの化合物から加水分解により調製される。加水分解が行われる条件は、R3基の性質に依存する。R3がメチル又はエチル基である場合、当該反応は、不活性な溶媒又は希釈剤、例えば、ジエチルエーテル若しくはジオキサン、又はジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸中、塩基、例えば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムの存在下において行われる。R3がベンジル基である場合、当該反応は貴金属触媒、例えば、適当な担体、例えば、活性炭におけるパラジウム又は白金の存在下における水素化分解により行われる。加水分解の全ての方法が全てのY又はR1基と適合する必要はない。これらの基の特性が加水分解の一定の方法の使用を許容しない場合、他の調製方法を適用する必要がある。
【0150】
式XVII の化合物は新規であり、また本発明の対象である。
【0151】
式XVII の酸とヒドロキシルアミンの後の反応は、式Iの化合物を産生する。当該反応は、典型的には、ツーステップ・ワンポット手順に関する。
【0152】
第一の工程において、式XVII のカルボン酸が活性化する。当該反応は、活性剤の存在下において、不活性な溶媒又は希釈剤、例えば、ジクロロメタン、ジオキサン、又はテトラヒドロフラン中で行われる。酸の適当な反応性誘導体は、例えば、ハロゲン化アクリル、例えば、酸と無機酸塩化物との反応により形成される塩化アクリル;混合無水物、例えば、酸と塩化ギ酸の反応により形成される無水物、例えば、塩化ギ酸イソブチル;活性エステル、例えば、酸とフェノール、例えば、ペンタフルオロフェノールとの反応により形成されるエステル;酸とN−ヒドロキシベンゾトリアゾールの反応により形成される活性エステル;アシルアジド、例えば、酸とアジド、例えば、ジフェニルホスホリルアジドの反応により形成されるアジド;アシルシアニド、例えば、酸とシアニド、例えば、ジエチルホスホリルシアニドにより形成されるシアニド;又は酸とカルボジイミド、例えば、ジシクロヘキシルカルボジイミドの反応生成物、又は酸とビス−(2−オキソ−3−オキサゾリジニル)−ホスホリルクロライドの反応生成物である。当該反応は、−30℃〜60℃、簡便には0℃以下で行われる。
【0153】
第二工程において、活性化のために使用される温度において、ヒドロキシルアミンが上記溶液に添加され、そして当該温度は周囲温度にゆっくりと調節される。これらの方法は当業者に周知である。原理的には、例えば、Houben-Weyl, "Methoden der organischen Chemie", Vols. XV/1 and XV/2に記載されるペプチド化学において使用される、アミド合成のための全ての方法が適用可能である。
【0154】
以下に、スキーム1に明確に示されていない式Iの化合物の調製のための更なる方法を記載する。
【0155】
式Iの化合物の調製のための1つの他の経路は、式Iの化合物のヒドロキサム酸部分のO−保護基Qの導入、及び式Iの化合物を遊離するための最終工程におけるヒドロキサメートの脱保護である。
【0156】
適当なO−保護基Qは、ベンジル−、p−メトキシベンジル−、tert−ブチルオキシカルボニル、トリチル−、又はシリル基、例えば、トリメチルシリル−、又はジメチルtert−ブチルシリル基であってよい。
【0157】
これらの保護基を中間体V又はVIIIに導入するために、セクション(A−5−2)に記載した類似の反応経路を選択することができる。第一工程は、これらの化合物を対応するカルボン酸への加水分解であり、これは活性化され、そして続いてQ−O−NH2と反応し、所望のO−保護ヒドロキサメートを生じる。
【0158】
最後に適用される脱保護反応は、保護基の種類に依存する。保護基が、ベンジル−、又はp−メトキシベンジル基である場合、行われる反応は、周囲温度及び圧力における、適当な担体、例えば、炭素、硫酸バリウム、又は炭酸バリウム上の貴金属触媒、例えば、パラジウムの存在下における不活性溶媒、例えば、アルコール、例えば、メタノール又はエタノール中の水素化分解である。保護基が、tert−ブチルオキシカルボニル−、トリチル、又はシリル基、例えば、トリメチルシリル−又はジメチル−tert−ブチルシリル基である場合、当該反応は、−20℃〜60℃の温度、好ましくは0℃〜周囲温度において酸の存在下で行われる。当該酸は、不活性溶媒、例えば、ジエチルエーテル又はジオキサン中の塩酸溶液、あるいはジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸溶液でよい。保護基がシリル基、例えば、トリメチルシリル、又はジメチル−tert−ブチルシリル基である場合、当該反応はまた、不活性溶媒、例えば、ジクロロメタン中でフッ化物源、例えば、フッ化ナトリウム、又はフッ化テトラブチルアンモニウムの存在下において行うことができる。全ての保護基Qが全てのY、X、及びR1基と適応する必要はない。これらの基の特性が一定の保護基の使用を許容しない場合、他の保護基Q、又は他の調製方法を適用する必要がある。
【0159】
また、式Iの化合物は固相合成法で調製することができる。2,5−チオフェンジカルボン酸は、樹脂、例えば、ヒドロキシルアミンWang樹脂又はヒドロキシルアミン2−クロロトリチル樹脂と結合しているヒドロキシルアミン部分(−O−NH2)と反応し、樹脂結合ヒドロキサム酸を形成する。二番目のカルボン酸部分は、例えば、Houben-Weyl, "Methoden der organischen Chemie", Vols. XV/1 and XV/2に記載される、アミド結合形成の標準的な方法により、式III 、VII 、又はXのアミン(式中、V、W、Y、及びR1は、以上に定義した意味を有し、そしてFgは前に記載した適当な官能基を示す)と反応する。任意的に、存在する保護基Pgを切断し、そして環W及びリンカーY(前に記載した意味を有する)を誘導しなければならない。これは、セクション(A−4−1)又は(A−4−2)に記載されるとおり行うことができる。この後、ヒドロキサム酸を固体支持体から遊離させる。これは、例えば、TFAにより行うことができる。典型的には、ヒドロキサム酸の切断は、周囲温度で、トリイソプロピルシランの存在下におけるジクロロメタン中の50%TFAによる樹脂の処理により達成される。当該粗生成物は、必要であれば、LS−MSにより精製することができる。
【0160】
式Iの純粋な(R)−及び(S)鏡像異性体の精製方法は、式III 、VII 、又はXの鏡像異性的に純粋なアミンの利用を含む(式V、VIII、及びVIの化合物の合成は、セクション(A−2−1)〜(A−2−3)に記載されている)。
【0161】
式Iの純粋な(R)−及び(S)鏡像異性体の更に他の調製方法は、方法(A−1−1)〜(A−5−2)、(B−1)〜(B−6)、(C−1)〜(C−4)、(D−1)〜(D−5)、又は(E−1)〜(E−5)に記載されるラセミ化合物の合成である。ラセミ化合物は、最終生成物又は式XIの前駆体のいずれかの段階において両方の鏡像異性体に実質的に分離することができる。当該分離は、適当な溶出剤を伴う適当な光学的に活性な固定相を使用して、分析用、半調製用、又は調製用スケールにおけるクロマトグラフィーにより行うことができる。適当な光学的に活性な固定相は、制限されることなく、シリカ(例えば、ChiraSper, Merck; Chiralpak OT/OP, Baker)、セルロース、又はアミロースエステル、又はカルバメート(例えば、Chiralpak AD, Daicel Chemical Industries Ltd. ; Chiracel OD- CSP, Daicel; Chiracel OB/OY, Baker)、あるいは他のもの(例えば、Crownpak, Daicel or Chiracel OJ-R, Baker)を含む。適当な溶出剤は、制限されることなく、ヘキサン、ヘプタン、エタノール、イソプロパノール、アセトニトリル、水、及びこれらの混合物を含む。光学異性体の他の分離方法、例えば、他の光学的に活性な化合物、例えば、カンファースルホン酸、又はブルシンと一緒に式Iの化合物からジアステレオ異性化合物の形成し、そしてこれらのジアステレオ異性体を分離し、続いて光学的に活性な薬剤から遊離することもまた適用することができる。
【0162】
リンカーYの性質に依存して、異なる合成経路により、式XIの化合物を調製することができる。セクションAは、一般式IX−Aの化合物(式中、Y=−アルキレン−NH−、アルキレン−O−、−O−アルキレン、−NH−、又は−O−)の合成について記載した。以下のスキームB〜Eにおいては、他のリンカー及び対応する記載により、式XIの化合物の調製のための更なる反応順序について説明する。
【0163】
B)
式XIの化合物(式中、Yは、−アルキレン−NH−CHR2−、又は−NH−CHR2−である)は、スキームBに従い調製することができ、そしてXI−Bと命名される。以下のスキームBにおいて、−アルキレン−NH−CHR2−、又は−NH−CHR2−である、リンカーYは、−T−NH−CHR2−により表される(式中、Tは、単結合、又は式Iのために定義したアルキレンを意味する)。
【化29】

【0164】
スキームBにおいて、V、W、R1、及びR2は、式Iのために定義したとおりであり、そしてR3は、アルキル、又は任意的に置換されたベンジルである。Xは、O、又はSであり、そしてR4は、アルキルであり、あるいはXR4は共に任意的に置換されたジオキソラン、ジチオラン、又はジチアン環を形成する。Tは、単結合、又はアルキレンである。
【0165】
(B−1)
一般式XIXのニトリル(式中、V環及びR2は、以上に定義した意味を有する)は、商業的に入手可能であり、あるいはこれらは有機化学の標準的な手順により調製することができる。1つの例は、有機カドミウムR22Cd又はリチウム有機銅塩LiCuR22(式中、R2は以上に定義した意味を有する)の式XVIIIのハロゲン化アシル(式中、V環は以上に定義した意味を有する)に対する添加である。
【0166】
(B−2)
式XXのFg保護ニトリル(式中、Xは、O、Sであり、そしてR4は、アルキルであり、あるいはXR4は共に、任意的に置換されたジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、又はジチアン環を形成する)は、例えば、一般式XIXのニトリル(式中、Vは以上に定義した意味を有する)から、カルボニル基を、酸(トルエンスルホン酸、ボロントリフルオライドエチラート、HCl、ピリジニウムトシラート、酢酸等)の存在下において、例えば、アルコール又はジオール、例えば、エチレングリコール、又は1,3−プロパンジオール、又はチオール、又はジチオールで処理することにより、調製することができ(スキームB)、式XXのニトリルを与える。
【0167】
(B−3)
それから、例えば、グリニャール試薬(R1MgBr)又は有機リチウム(R1Li)化合物を添加し、続く加水分解により対応するカルボニル化合物を形成し、これを(A−1−1)に記載される還元アミノ化にかけることにより、ニトリル基をアミンに変換し、式XXIのアミンを形成する。
【0168】
(B−4)
一般式XXIIの化合物は、化合物IVと式XXIのFg保護アミンの反応により得ることができる。当該反応は、セクション(A−2−1)における式Vの化合物の調製のために記載した条件下において行うことができる。
【0169】
(B−5)
式XXIII の化合物は、式XXIIの官能基(Fg)保護化合物(式中、Pg−Fg−は、(R4X)2CR2−であり、Xは、O、Sであり、R4は、アルキルであり、あるいはXR4は共に、任意的に置換されたジオキソラン、ジオキサン、ジチオラン、又はジチアン環を形成する)から、ケタール(XはOである)の酸加水分解、又は水銀(II)塩での反応、又はチオケタール(XはSである)の酸化により得ることができる。
【0170】
(B−6)
式XI−Bの化合物は、一般式XXIVの第一級アミン(式中、T1は、結合、又は以上に定義したアルキレンを意味する)と一般式XXIII のカルボニル化合物の還元アミノ化により調製することができる。
【0171】
縮合は、典型的には、20℃〜150℃の温度において、適当な溶媒、例えば、エタノール、メタノール、アセトニトリル、又はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)中でアミン及びカルボニル化合物を加熱することにより達成される。イミンのアミンXI−Bへの後の還元のための典型的な還元剤は、適当な溶媒、他THF又はエタノール中の、例えば、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素ナトリウムである。
【0172】
C)
式XIの化合物(式中、Yは、−アルキレン−NH−である)は、スキームCに従い調製することができ、そしてXI−Cと命名される。以下のスキームCにおいて、−アルキレン−NH−である、リンカーYは、生じた基−T−CHR5−NH−が、式Iに定義される−アルキレン−NH−基を形成するように、−T−CHR5−NH−(式中、Tは単結合、又はアルキレンであり、そしてR5はアルキルである)により表される。
【化30】

【0173】
スキームCにおいて、V、W、及びR1は、式Iに定義したとおりであり、そしてR3は、アルキル、又は任意的に置換されたベンジルである。R5は、アルキルであり、そしてTは、単結合、又はアルキレンである。
【0174】
(C−1)
式XXVIのアミン(保護基又は更なるアミノ官能性のための前駆基としてニトロ基を含んで成る)は、例えば、式XXVのケトン(式中、V及びR1は、以上に定義した意味を有する)から(A−1−1)に記載した還元アミノ化により調製することができ、式XXVIの化合物を生じる。
【0175】
ニトロ基の代わりに、適当なアミノ保護基、又はXXVIとIVの反応後に、アミノ基に簡単に変換することができる基を利用することもできる。
【0176】
(C−2)
一般式XXVII の化合物は、式IVの化合物と式XXVIのFg保護アミン(アミノ保護基としての−NO2)の反応により得ることができる。当該反応は、セクション(A−2−1)における式Vの化合物の調製のために記載した条件下において行うことができる。
【0177】
(C−3)
式XXVIIIの化合物は、酸性溶液中、ニトロ基の還元、例えば、触媒水素化又は化学還元剤(例えば、SnCl2、Fe、Zn)により、式XXVII のFg保護化合物から得ることができ、化合物XXVIIIを形成する。
【0178】
(C−4)
式XI−Cの化合物は、一般式XXVIIIの第一級アミンと一般式XXIXのカルボニル化合物の還元アミノ化により調製することができる。
【0179】
当該反応は、セクション(B−6)における化合物XI−Bの調製のために記載した条件下において行うことができる。
【0180】
D)
式XIの化合物(式中、Yは、−アルキレン−O−CHR2−、−O−CHR2−、−アルキレン−O−、又は−O−である)は、スキームD−1及びD−2に従い調製することができ、そしてXI−Dと命名される。
【0181】
以下のスキームD−1において、−アルキレン−O−CHR2−、又は−O−CHR2−であるリンカーYは、−T−O−CHR2−(式中、Tは、単結合、又は以上に定義したアルキレンを意味する)により表される。
【化31】

【0182】
スキームD−1において、V、W、R1、及びR2は、式Iのために定義したとおりであり、そしてR3は、アルキル、又は任意的に置換されたベンジルである。G1は、−Br、−I、−Cl、−トシラート、−メシラート等である。Tは、単結合、又はアルキレンである。
【0183】
(D−1)
式XXXのアルコールは、例えば、水素化ホウ素ナトリウム、又はシアノ水素化ホウ素ナトリウムによる式XVIIIの化合物の還元により調製することができる。
【0184】
(D−2)
式XI−Dの化合物は、例えば、一般式XXXのアルコールから、スキームD−2に従い、一般式XXXIの化合物(式中、Tは、単結合、又は以上に定義したアルキレンを意味する)との反応により調製することができる。Tが単結合を意味する場合、Wは、飽和環式基又は飽和複素環から選択される。Tがアルキレンを意味する場合、Wは以上に式Iのために定義したとおりである。G1は、適当な脱離基、例えば、−Br、−I、−Cl、−トシラート、−メシラート等を意味する。反応は適当な塩基、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウム等の存在下において、適当な溶媒、例えば、THF、アセトン、DMF、又はN,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)中で行われる。
【0185】
以下のスキームD−2において、−アルキレン−O−、又は−O−である、リンカーYは、−T−O−(式中、Tは、単結合、又は以上に定義したアルキレンを意味する)により表される。
【化32】

【0186】
スキームD−2において、V、W、R1、及びR2は、式Iのために定義したとおりであり、そしてR3は、アルキル、又は任意的に置換されたベンジルである。G1は、−Br、−I、−Cl、−トシラート、−メシラート等である。Tは、単結合、又はアルキレンである。
【0187】
(D−3)
一般式XXXIII のケトン(式中、Yは、−アルキレン−O−、又は−O−である)は、例えば、一般式XXXIIのアルコール(式中、V及びR1は前に定義されるとおりである)から、一般式XXXIの化合物W−T−G1(式中、Tは、結合、又は以上に定義したアルキレンを意味する)との反応により調製することができる。Tが結合を意味する場合、Wは以上に式Iのために定義したとおりである。適当な塩基、例えば、炭酸カリウム、水酸化カリウム、又は水酸化ナトリウム等の存在下において、適当な溶媒、例えば、THF、アセトン、DMF、又はN,N−ジメチルスルホキシド(DMSO)中、G1は適当な脱離基、例えば、−Br、−I、−Cl、−トシラート、−メシラート等を意味する。
【0188】
(D−4)
一般式XXXIVのアミンは、例えば、一般式XXXIIのケトン(式中、W、V、T及びR1は前に定義されるとおりである)から、(A−1−1)に記載される還元アミノ化により調製することができ、式XXXIVの化合物を形成する。
【0189】
(D−5)
式XI−Dの化合物は、例えば、式IVの化合物と式XXXIVのアミンとの反応により調製することができる。当該反応は、セクション(A−2−3)において式XIの化合物を調製するために記載した条件下において行うことができる。
【0190】
E)
式XIの化合物(式中、Yは−アルケニレンである)は、スキームEに従い調製することができ、そしてXI−Eと命名される。以下のスキームEに従い、アルケニレンであるリンカーYは、生じた−T−CR6=CR2−基が式Iに定義されたアルケニレン基を形成するように、−T−CR6=CR2−(式中、Tは単結合又はアルキレンであり、そしてR2及びR6は、アルキル(又は水素)である)により表される。
【化33】

【0191】
スキームEにおいて、V、W、R1、及びR2は、式Iのために定義したとおりであり、そしてR3は、アルキル、又は任意的に置換されたベンジルであり、そしてR6は、アルキル、又は水素である。Tは、単結合、又はアルキレンである。G2は、ハロゲン化物、特に−Br、又は−Iである。G3は、−Br、又は−Iである。G4はハロゲンであり、特にBr、Cl、又はIである。G5は、例えば、Br、I、又はOTfである。Lは、ボロン酸、ボロン酸ピナコールエステル等、又はトリアルキルスタンナン(例えば、Me3Sn、Bu3Sn)である。
【0192】
(E−1)
式XI−Eの化合物は、例えば、一般式XXIII のカルボニル化合物と一般式XXXV(式中、Gはハロゲン化物、特に−Br、又は−Iである)のWittig型反応により調製することができる。当該反応は、文献中に良く説明されており(例えば、Maryanoff, B.E. et al. Chem. Rev. 89 (1989) 863- 927)、そしてトリフェニルホスフィンとハロゲン化物XXXVのホスホニウム塩の形成を含み、適当な塩基、例えば、水素化ナトリウム、又はn−ブチルリチウムその脱プロトン化はイリドを形成し、式XXIII のカルボニル化合物とのその反応はトリフェニルホスフィンオキシドの除去下においてアルケンを供する。
【0193】
式XI−Eの化合物の調製のための他の方法は、式XXIII のカルボニル化合物と式XXXVのハロゲン化物のHorner−Wadsworth−Emmons型反応であり、これは文献に極めてよく説明されている(例えば、Wadsworth, W. S., et al., J. Am. Chem. Soc. 83 (1961) 1733)。これは、Michael−Arbuzov型反応における、亜リン酸トリアルキルと式XXXVのハロゲン化物によるアルキルホスホン酸エステルの形成に関し、適当な塩基、例えば、水素化ナトリウム、又はn−ブチルリチウムでのその脱プロトン化は、ホスホン酸カルボアニオンを形成し、そして式XXIII のカルボニル化合物との反応は、リン酸アニオンの除去下においてアルケンを供する。
【0194】
(E−2)
式XXXVIのハロゲン化物(G3は、−Br、−Iである)は、当業者に周知な反応により、例えば、適当な溶媒、例えば、ジクロロメタン、又はアセトニトリル中のCBr4及びPPh3での処理によりアルコールXXXから調製することができる。
【0195】
(E−3)
これらのハロゲン化物XXXVI(G3は、−Br、−Iである)は、セクション(E−1)において記載したとおり、Wittig又はHorner−Wadsworth−Emmons型反応において、式XXXVII のカルボニル化合物により式XI−Eの化合物に変換することができる。
【0196】
(E−4)
XI−Eの調製のための他の方法は、化合物XXXVIII(G4はハロゲン、特にBr、Cl、又はIである)と一般式XXXIXの化合物(式中、Lはボロン酸、ボロン酸ピナコールエステル等であり、あるいはLはトリアルキルスタンナン(例えば、Me3Sn、Bu3Sn)である)における、例えば、Suzuki型又はStille型のクロスカップリング反応である。例えば、Wright, S. W., et al., J. Org.Chem. 59 (1994) 6095-6097; Mueller, H., and Tschierske, C., J. Chem.Soc., Chem. Commun. 6 (1995) 645-646, or Hanessian, S., et al., J. Org. Chem. 68 (2003) 7204-7218を参照のこと。
【0197】
(E−5)
XI−Eの調製のための他の方法は、例えば、式XLの化合物(G5は、例えば、Br、I、又はOTfである)及び一般式IXLの化合物のHeck型のパラジウム触媒カップリング反応である(例えば、Heck, R. F., et al., J. Org. Chem. 37 (1972) 2320-2322を参照のこと)。
【0198】
本発明の対象は、医薬的に許容される賦形剤及び/又は希釈剤との混合物において薬学的に有効量の1又は複数の式Iの化合物を含む医薬組成物である。
【0199】
本発明の更なる観点に従い、医薬的に許容されるアジュバントと一緒に活性成分として1又は複数の式Iの化合物を含む医薬を供する。このような医薬又は医薬組成物は、経口投与に適当な形態、例えば、錠剤、コーティング化錠剤、ドラジェー、カプセル、溶液、乳濁液、又は懸濁液;無菌溶液、懸濁液、乳濁液として、非経口注射用(静脈内、皮下、筋肉内、血管内、又は点滴を含む);軟膏、又はクリームとしての局所投与用、又は座薬としての直腸投与用とすることができる。これらの医薬調製物は、本発明の化合物を医薬的に不活性な、無機又は有機担体で処理することにより得ることができる。ラクトース、コーンスターチ、又はこれらの誘導体、タルク、ステアリン酸若しくはその塩等を、例えば、錠剤、コーティング化錠剤、ドラジェー、及びハードゼラチンカプセルの担体として使用することができる。ソフトゼラチンカプセルの適当な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半流動性及び液体ポリオール等である。活性物質の性質に依存して、担体はなくてもよいが、ソフトゼラチンカプセルの場合には通常必要とされる。溶液及びシロップの製造用の適当な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油等である。座薬のための適当な担体は、例えば、天然又は硬化油、ワックス、脂肪、半流動性又は液体ポリオール等である。
【0200】
医薬調製物は、更に、防腐剤、可溶化剤、安定剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、芳香剤、浸透圧を変えるための塩、バッファー、マスキング剤、又は抗酸化剤を含んでよい。これらはまた、更に他の治療的に価値のある物質を含むことができる。
【0201】
医薬組成物は以下を含むことができる。
【表1】

【0202】
手順:
1.適当なミキサー中で品目1、2、及び3を15分間混合する。
2.工程1由来の粉末混合物を20%ポビドンK30溶液(品目4)で顆粒化する。
3.工程2由来の顆粒を50℃で乾燥させる。
4.工程3由来の顆粒を適当な製粉器に通過させる。
5.品目5を工程4の製粉化顆粒に添加し、そして3分間混合する。
6.工程5由来の顆粒を適当な圧力において圧縮する。
【0203】
他の医薬調製物は、例えば、式Iの化合物のマイクロサスペンションである。上記マイクロサスペンションを得るために、以下の物質を使用した。
【0204】
注射あたり7.5%修飾ゼラチンXF20(Braun)(溶解し、0.45μmのポアサイズで濾過し、そしてオートクレーブした)、フィルター(カスタムメイド、メッシュサイズ100μm)、フィルターホルダー、カップリング、0.25mmの直径の洗浄したガラスビーズ、及び加熱滅菌Retschミル。
【0205】
典型的なバッチの調製のために、6244mgの式Iの化合物を30gのガラスビーズを伴う2つの50mlのフラスコ瓶中に秤量し、スパチュラで分散し、そしてボルテックスした。それから10mlのゼラチン媒体を各瓶に加えた。瓶をボルテックスし、キャップをし、そして光保護のためにアルミホイルでラップした。Retschミルにおいて内容物を14時間30/sd製粉した。それからレシピエントバイアルと連結したフィルター上で2層のフィルター(100μm)を伴うビーズから、6回の洗浄工程を含んで成る2分間の400gにおける遠心分離によりマイクロサスペンションを抽出し、130mlの最終容量を得た。
【0206】
均質化後、内容物をHPLCにより測定し、45.7mg/mlとし、これは95%の収量に相当する。当該マイクロサスペンションを18.6mlで希釈し、40mg/mlの最終濃度を得た。得られた球状の顆粒様粒子は顕微鏡で測定すると1〜5μmの直径を示す。保存のために、マイクロサスペンションを無菌バイアル中に充填し、キャップし、ラベルし、そして−20℃に保った。使用前に、ボルテックスにより当該マイクロサスペンションを活発に均一化しなければならない。
【0207】
チオフェンジカルボン酸誘導体は、動物の体面積m2あたり5〜5000mgの範囲の単位用量、すなわち約0.1〜100mg/kgにおいて通常恒温動物に適用され、そしてこれは通常治療的に有効な用量を供する。単位剤形、例えば、錠剤又はカプセルは、通常、例えば、1〜250mgの活性成分を含むであろう。好ましくは1〜100mg/kgの一日量が利用される。しかしながら処理される宿主、特に投与経路、及び治療される疾患の重篤度に依存して当該一日量を変える必要がある。従って最適投与量はいずれか特定の患者を治療している医師により決定できる。
【0208】
薬理活性
本発明の化合物の活性を示すために、標準的なMTTアッセイを使用してヒト大腸株化細胞におけるこれらの有効性を評価した。MTT(3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド)は腫瘍細胞の細胞毒性効果又はインビトロ化学受容性の定量測定に広く使用される。当該アッセイは、代謝活性細胞による、黄色のテトラゾリウム塩(MTT)から紫色のホルマザン結晶への開裂に基づく。詳しくはRubinstein, L. V., et al., J. Natl. Cancer Inst. 82 (1990) 1113-1118を参照のこと。
【0209】
我々は以下を行った:HT−29細胞(ヒト大腸癌株化細胞、ATCC−番号HTB−38)をGlutaMAXTMI(Invitrogen, 商品番号61870-010)、2.5%牛胎児血清(FCS, Sigma 商品番号 F4135 (FBS))、2mMグルタミン、100ユニット/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン(=Pen/Stre, Invitrogen 商品番号15140))を伴うRPMI1640培地中で培養した。アッセイのために、細胞を、ウェルあたり900の細胞で、同じ倍地において、384ウェルプレートに播種した。翌日、化合物(DMSO中10mM溶解させた)を30μM〜1.5nMの多様な濃度において添加した。5日後、主に製造業者の指示に従いMTTアッセイを行った(Roche Molecular Biochemicals由来の細胞増殖キットI、MTT)。端的には、MTTラベル試薬を0.5mg/mlの最終濃度に添加し、そして37℃、5%CO2で4時間インキュベートした。当該インキュベーション時間中、紫色のホルマザン結晶が形成される。可溶化溶液(0.02MのHCl中20%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の添加後、プレートを37℃、5%CO2で一晩インキュベートした。注意深く混合した後、プレートを550nmにおいてVictor2(走査型マルチウェル分光光度計、Wallac)で測定した。
【0210】
生存している細胞の数の減少は、試料中の全代謝活性の減少をもたらす。これらの減少は、紫色のホルマザン結晶の可溶化によりもたらされる紫色の量に直接相関する。IC90の測定は、XL−fit(XLfitソフトウェア、ID Business Solution Ltd. , Guilford, Surrey,UK))を使用して行った。
【0211】
関連物質は以下の構造を有する:
【化34】

【表2】

【0212】
本発明の態様は、腫瘍細胞中のヒストンアセチル化の誘導による腫瘍細胞増殖の阻害のための、以上に定義された医薬である。
【0213】
本発明の他の態様は、造血及びリンパ系の腫瘍の治療のための、以上に定義された医薬である。
【0214】
本発明更に他の態様は、癌の治療のための、以上に定義された医薬である。
【0215】
本発明の更に他の態様は、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、又は卵巣癌の治療のための、以上に定義された医薬である。
【0216】
本発明の更に他の態様は、腫瘍細胞中のヒストンアセチル化の誘導による腫瘍細胞増殖の阻害のための医薬の製造のための1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0217】
本発明の更に他の態様は、癌の治療のための医薬の製造のための1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0218】
本発明の更に他の態様は、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、又は卵巣癌の治療のための医薬の製造のための1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0219】
本発明の更に他の態様は、造血及びリンパ系の腫瘍の治療のための医薬の製造のための1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0220】
本発明の更に他の態様は、腫瘍に有効量の1又は複数の式Iの化合物を投与することによる、腫瘍細胞中のヒストンアセチル化の誘導による腫瘍細胞増殖を阻害するための方法である。本発明の当該観点の更なる特性に従い、動物に対して有効量の以上に定義されたチオフェンジカルボン酸誘導体を投与することを含んで成る、これらの治療が必要な、恒温動物、例えば、ヒトにおいて抗細胞増殖効果を生じるための方法を供する。
【0221】
このように、本発明の更に他の態様は、上述のとおり、腫瘍が、大腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、直腸癌、胃癌、膀胱癌、膵臓癌、又は卵巣癌である、方法である。
【0222】
本発明のより好ましい観点に従い、治療によるヒト又は動物の身体の治療方法における使用のための、以上に定義された、式Iの化合物を供する。我々は、このたび、本発明の上記化合物が、これらのヒストンデアセチラーゼ阻害活性に起因すると信じられる、抗細胞増殖特性を有することを見出した。従って、本発明の化合物は、悪性細胞の増殖を治療するための方法を供する。従って、本発明の化合物は、抗増殖効果を供することによる癌の治療、特に乳癌、肺癌、大腸癌、直腸癌、胃癌、前立腺癌、膀胱癌、膵臓癌、及び卵巣癌の治療に有用であることが予想される。更に、本発明の誘導体は、白血病、リンパ悪性腫瘍、及び組織、例えば、肝臓、腎臓、前立腺、及び膵臓中の固形腫瘍、例えば、癌腫、及び肉腫の範囲に対する活性を有するであろう。
【0223】
以上に定義された、抗細胞増殖は、唯一の治療として適用することができ、あるいは、更に本発明のチオフェンジカルボン酸誘導体、1又は複数の他の抗腫瘍物質、例えば、有糸分裂阻害剤、例えば、ビンブラスチン;アルキル化剤、例えば、シス−プラチン、カルボプラチン、及びシクロホスファミド;微小管構築阻害剤、例えば、パクリタキセル又は他のタキサン;抗代謝産物、例えば、5−フルオロウラシル、カエシタビン、シトシンアラビノシド、及びヒドロキシ尿素、又は例えば、挿入抗生物質、例えば、アドリアマイシン、及びブレオマイシン;免疫賦活薬、例えば、トラスツズマブ;DNA合成阻害剤、例えば、ゲムシタビン;酵素、例えば、アスパラギナーゼ;トポイソメラーゼ阻害剤、例えば、エトポシド;生物応答修飾因子、例えば、インターフェロン;及び抗ホルモン、例えば、抗エストロゲン、例えば、タモキシフェン、又は例えば、抗アンドロゲン、例えば、(4’−シアノ−3−(4−フルオロフェニルスルホニル)−2−ヒドロキシ−2−メチル−3’−(トリフルオロメチル)−プロピオンアニリド、あるいはCancer: Principles & Practice of Oncology, Vincent T. DeVita, Jr., Samuel Hellmann, Steven A. Rosenberg; 5th ed., Lippincott- Raven Publishers, 1997に記載される他の治療薬及び原理を含んでよい。このような共同治療は、同時に、順番に、又は別々に個々の治療成分を投与することにより達成することができる。本発明の当該観点に従い、本明細書に定義された、式Iのチオフェンジカルボン酸誘導体、及び更に癌の共同治療のために本明細書に定義された抗腫瘍物質、を含んで成る医薬品を供する。
【0224】
以下の実施例及び参考文献は、付随の特許請求の範囲に記載される真の範囲である、本発明の理解を助けるために供される。改変は本発明の精神から離れることなく記載された手順において行うことができることが理解される。
【実施例】
【0225】
実施例1
工程1:1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エタノン
15mlのアセトン中の300.0mg(2.203mmol)の4−ヒドロキシアセトフェノン及び305mg(2.207mmol)の炭酸カリウムの混合物に868.7mg(3.304mmol)の4−(トリフルオロメトキシ)ベンジルブロミドを滴下し、そして還流温度で1日(d)加熱した。溶媒を蒸発させ、そして残渣に酢酸エチルを添加した。有機相を1MのHCl水溶液及び水で洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥させた。当該溶媒を蒸発させ、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/n−ヘプタン 1:2)にかけ、552mg(1.779mmol)の1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エタノンを産生した。
【0226】
工程2:1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチルアミン
10mlのメタノール中の552.0mg(1.779mmol)の1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エタノン及び分子ふるいの混合物に1679.0mg(21.35mmol)の酢酸アンモニウム及び78.0mg(1.241mmol)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを添加し、そして当該反応混合物を50℃で26時間(HPLC制御)撹拌した。室温に冷却後、分子ふるいを濾過により除き、そしてメタノールで洗浄した。併せた濾液の溶媒を蒸発させ、そして当該残渣にジエチルエーテルと水を添加した。撹拌しながら当該混合物を6NのHCl水溶液でpH2に酸性化した。水相を分離し、そして有機相を1NのHCl水溶液で2回抽出した。酢酸エチルを併せた水相に添加し、そして当該混合物を6NのNaOHでpH10に塩基化した。有機相を分離し、そして水相を酢酸エチルで更に2回抽出した。併せた有機相をMgSO4で乾燥させ、そして溶媒を減圧下で蒸発させ、268.0mg(0.861mmol)の1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチルアミンを産生した。
【0227】
工程3:5−{1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチルカルバモイル}−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル
25mlのジクロロメタン中の160.0mg(0.859mmol)のチオフェン−2,5−ジカルボン酸モノメチルエステルの溶液に253.0mg(1.293mmol)のN’−(3−ジメチルアミノプロピル)−N−エチルカルボジイミド塩酸塩、175mg(1.295mmol)の1−ヒドロキシベンゾトリアゾール水和物、及び130.7g(1.291mmol)のトリエチルアミンを添加した。室温で30分後、268.0mg(0.861mmol)の1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチルアミンを添加した。当該反応混合物を6.5時間撹拌した。溶媒を蒸発させ、残渣に酢酸エチルを添加し、そして有機相を飽和NaHCO3水溶液及び水で抽出した。有機相をMgSO4で乾燥させ、そして溶媒を蒸発させた。当該残渣をジイソプロピルで倍散し、249mg(0.519mmol)の5−{1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチルカルバモイル}−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルを供した。
【0228】
工程4:チオフェン−2,5−ジカルボン酸2−ヒドロキシアミド5−({1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチル}−アミド)(化合物1−1)
249mg(0.519mmol)の5−{1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチルカルバモイル}−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルと2.597ml(5.194mmol)のヒドロキシルアミンの2M溶液の溶液に少量のメタノール中の34.5mg(0.523mmol)の水酸化カリウムを添加した。室温で4時間後、当該混合物を濾過し、そして固形物をメタノールで洗浄した。濾液を乾燥した氷で処理し、pH値をほぼ中性に下げた。撹拌を15分間続け、そして形成した沈殿を濾過した。固形物をメタノールで洗浄し、そして併せた有機濾液を蒸発させた。当該残渣をジイソプロピルエーテル及び水で倍散し、126mg(0.244mmol)のチオフェン−2,5−ジカルボン酸2−ヒドロキシアミド5−({1−[4−(4−トリフルオロメトキシ−ベンジルオキシ)−フェニル]−エチル}−アミド)(化合物1−1)を産生した:計算(culculated) MW480.74,実測(found) MW(M+H)481.0;1H−NMR(400MHz,d6−DMSO):δ=8.87(d,1H),7.81(m,1H),7.56(m,3H),7.38(m,2H),7.30(m,2H),6.97(m,2H),5.12(s,2H),5.07(t,1H),1.45(d,3H)。
【0229】
実施例2
工程1:1−(4−ニトロ−フェニル)−エチルアミン
表題の化合物は、実施例1の工程2に記載されるものと同様の方法において、4−ニトロアセトフェノンからを調製した(反応時間3日(d))。
【0230】
工程2:5−[1−(4−ニトロ−フェニル)−エチルカルバモイル]−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル
表題の化合物は、実施例1の工程3に記載されるものと同様の方法において、1−(4−ニトロ−フェニル)−エチルアミンとチオフェン−2,5−ジカルボン酸モノメチルエステルから調製した。
【0231】
工程3:5−[1−(4−アミノ−フェニル)−エチルカルバモイル]−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル
500mg(1.497mmol)の5−[1−(4−ニトロ−フェニル)−エチルカルバモイル]−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル、200mgの木炭上のパラジウム(10%)、10mlのメタノール、及び5mlのTHFの混合物を30mbarで3時間水素付加した。当該触媒を濾過により除き、溶媒を蒸発させ、5−[1−(4−アミノ−フェニル)−エチルカルバモイル]−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルを得た。
【0232】
工程4:5−{1−[4−(3−メチル−ベンジルアミノ)−フェニル]−エチルカルバモイル}−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル
304.0mg(l.0mmol)の5−[1−(4−アミノ−フェニル)−エチルカルバモイル]−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステル、120.0mg(1.0mmol)のm−トルアルデヒド、及び2mlのエタノールの混合物を還流温度で1時間加熱した。当該溶媒を蒸発させ、そして3mlのTHF及び315mg(5.0mmol)のシアノ水素化ホウ素ナトリウムを当該残渣に添加した。18時間後、5mlの塩化アンモニウム水溶液及び10mlの水を添加した。水相をジクロロメタンで抽出し、そして併せた有機相を硫酸マグネシウムで乾燥させ、溶媒を蒸発させ、そして残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(酢酸エチル/石油エーテル 1:1)にかけ、175mg(0.43mmol)の5−{1−[4−(3−メチル−ベンジルアミノ)−フェニル]−エチルカルバモイル}−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルを産生した。
【0233】
工程5:チオフェン−2,5−ジカルボン酸2−ヒドロキシアミド5−({1−[4−(3−メチルベンジルアミノ)−フェニル]−エチル}−アミド)(化合物2−1)
表題の化合物は、実施例1の工程4に記載されるものと同様の方法において、5−({1−[4−(3−メチルベンジルアミノ)−フェニル]−エチルカルバモイル}−チオフェン−2−カルボン酸メチルエステルから調製した。化合物2−1:計算MW409.51,実測MW(M+H)410.0;1H−NMR(400MHz,d6−DMSO):δ=8.56(d,1H),7.69(m,1H),7.31(m,1H),7.16(m,3H),7.03(m,3H),6.51(m,2H),6.13(m,1H),4.96(t,1H),4.19(d,2H),2.27(s,3H),1.39(d,3H)。
【0234】
【表3】

【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iに従う化合物
【化1】

(式中、
1は、ハロゲンにより1又は数回任意的に置換されたアルキルであり;
Vは、フェニレン、又はヘテロアリーレンであり;
Yは、−O−;
−O−CHR2−;
−アルキレン−O−;
−アルキレン−O−CHR2−;
−NH−;
−NH−CHR2−;
−アルキレン−NH−;
−アルキレン−NH−CHR2−;又は
−アルケニレン−であり;
2は、アルキル、又は水素であり;
Wは、飽和した炭素環式基;
飽和した複素環式基;
ヘテロアリール基;又は
置換されたフェニル基であり、これらはアルキル、ハロゲン、−O−アルキル、−S(O)2−アルキル、−NH(アルキル)、又は−N(アルキル)2であり;ここで当該アルキル基は1又は数個のハロゲン原子で任意的に置換されていてもよい)、
並びにこれらの全ての医薬的に許容される塩。
【請求項2】
前記式中、
Yが、−アルキレン−O−、又は−アルキレン−NH−であり;そして
Wが、アルキル、ハロゲン、−O−アルキル、−S(O)2−アルキル、−NH(アルキル)、又は−N(アルキル)2により1〜3回置換されているフェニル基であり;
ここで当該アルキルは1又は数個のハロゲン原子で任意的に置換されていてもよい、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
式Iの化合物の(R)−若しくは(S)鏡像異性体、又はラセミ体の製造方法であって、適当な活性剤の存在下において、式IVの化合物
【化2】

(式中、
3は、アルキル基である)
と、式Xのラセミ体、又は(R)−若しくは(S)−アミン
【化3】

(式中、
V、W、Y、及びR1は請求項1に与えられた意味を有する)
を反応させることにより、
式XIの化合物
【化4】

(式中、
V、W、Y、及びR1は請求項1に与えられた意味を有し、そしてR3はアルキル基である)を与え、これをヒドロキシルアミンで処理し、式Iの各化合物を与え;そして
所望する場合には、上記化合物をこれらの医薬的に許容される塩に変換することによる、方法。
【請求項4】
医薬的に許容されるアジュバントと一緒に活性成分として請求項1又は2のいずれかに記載の1又は複数の化合物を含む医薬。
【請求項5】
腫瘍細胞増殖の阻害のための請求項4に記載の医薬。
【請求項6】
腫瘍細胞におけるヒストンアセチル化の誘導による腫瘍細胞増殖の阻害のための医薬の製造のための請求項1又は2のいずれかに記載の1又は複数の化合物の使用。
【請求項7】
腫瘍細胞に対して有効量の請求項1〜6のいずれかに記載の1又は複数の化合物を投与することによる、腫瘍細胞におけるヒストンアセチル化の誘導による腫瘍細胞増殖を阻害するための方法。

【公表番号】特表2008−501665(P2008−501665A)
【公表日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−513882(P2007−513882)
【出願日】平成17年6月13日(2005.6.13)
【国際出願番号】PCT/EP2005/006294
【国際公開番号】WO2005/121120
【国際公開日】平成17年12月22日(2005.12.22)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】