説明

チオモルホリノステロイド化合物、減数分裂調節薬剤を製造するためのそれらの使用、およびそれらの製造方法

本発明は、一般式 (I) のチオモルホリノステロイド化合物に関し、前記ステロイド化合物はヒト卵母細胞における減数分裂を刺激するために好都合に使用することができ、前記ステロイドはアルキレンスペーサーを介してステロイド骨格のC17に結合したチオモルホリノ部分により特別に特徴づけられる。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬学的に活性なチオモルホリノステロイド化合物、これらの化合物を含んでなる医薬組成物、生殖、特に減数分裂の調節に適当な医薬組成物、避妊薬または受精前薬剤を製造するためのこれらの化合物の使用、これらの化合物を使用して哺乳動物において発生する卵母細胞の能力の可能性を改良する方法、ならびに(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オールを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
減数分裂は、有性生殖がそれに基づく、生殖細胞の独特のかつ究極的事象である。減数分裂は2回の減数分裂を含んでなる。最初の分裂間に、母系遺伝子と父性遺伝子との間の交換が起こった後、染色体対は娘細胞に分離される。これらは半分の数 (1n) の染色体および2c DNAのみを含有する。第2の減数分裂はDNA合成なしに進行する。したがって、この分裂は1c DNAのみをもつ一倍体生殖細胞を形成する。
【0003】
減数分裂事象は雄および雌の生殖細胞において類似するが、卵および精子に導く時間スケジュールおよび分化プロセスは深遠に異なる。すべての雌生殖細胞は寿命の初期に、しばしば出産前に、最初の減数分裂の前期に入るが、すべては前期の終わり (網糸期) において春機発動期後排卵までに卵母細胞として停止される。こうして、寿命の初期から雌は卵母細胞のストックを有し、これはストックが消耗されるまで抜き出される。雌における減数分裂は受精までに完結せず、生殖細胞当たりただ1つの卵および2つの不棯性極体を生ずる。対照的に、雄性生殖細胞のあるもののみが春機発動期から減数分裂に入り、寿命を通じて生殖細胞の集団を残す。雄細胞における減数分裂は、いったん開始すると、有意な遅延なしに進行し、4つの精子を生成する。
【0004】
雄および雌における減数分裂の開始を調節する機構について、ほとんど知られていない。新しい研究において、濾胞プリン、ハイポキサンチンおよびアデノシンは卵母細胞における減数分裂の停止に関係付けることができるが示されている [S. M. Downs 他、Dev. Biol. 82、454-458 (1985); J. J. Epplg. 他、Dev. Biol. 119、313-321 (1986); S. M. Downs、Mol. Repro. Dev. 35、82-94 (1993)] 。拡散性減数分裂を調節する物質の存在は、胎児マウス生殖腺の培養系においてByskov 他により最初に記載された [A. G. Byskov 他、Dev. Biol. 52、193-200 (1976)] 。減数分裂活性化物質 (MAS) は胎児マウス卵巣により分泌され、ここで減数分裂は進行しており、そして減数分裂防止物質 (MPS) は形態学的に分化した精巣から休止非減数分裂生殖細胞とともに放出される。
【0005】
MASおよびMPSの相対濃度は雄および雌の生殖細胞における減数分裂の開始、停止および再開を調節することが示唆された [A. G. Byskov 他、The Physiology of Reproduction (E. KnobilおよびJ. D. Neill編) 、Raven Press、ニューヨーク州 (1994)] 。明らかなように、減数分裂を調節できる場合、生殖を調節することができる。最近の論文 [A. G. Byskov 他、Nature 374、559-562、(1995)] において、ある種のステロイドの単離が記載されている。このようなステロイドは雄ウシ精巣および濾胞液から単離され、そして卵母細胞減数分裂を活性化する [T-MAS (精巣減数分裂活性化ステロール) およびFF-MAS (濾胞液減数分裂活性化ステロール); 4,4-ジメチル-5α-コレスタ-8,14,24-トリエン-3β-オール] 。
【0006】
また、マイクロモル濃度の合成FF-MASはラット卵母細胞において投与量依存的方法で減数分裂の再開を誘導することができ、この減数分裂はホスホジエステラーゼインヒビターIBMX (3-イソブチル-1-メチルキサンチン) [C. Hegele-Hartung 他、Biol. Reprod. 64、418-424 (2001)] により停止される。CEO (卵丘包囲卵母細胞) およびDO (裸出卵母細胞) をFF-MASの存在下にin vitro 培養するとき、この作用を観察できることが示された。
減数分裂を調節するそれ以上の物質は、下記の文献に開示されている。
【0007】
WO 98/52965 A1において、減数分裂活性化20-アラルキル-5α-プレグナン誘導体が記載されている。
WO 00/68245 A1において、ステロイド化合物が開示されており、これらは減数分裂を阻害することができ、こうしてこれらの化合物は雌および雄において避妊薬として有効である。これらの化合物は、コレスタン骨格のC14原子に結合した3β-水素原子により特徴づけられる、主として不飽和コレスタン誘導体である。
【0008】
WO 96/00235 A1において、コレステロールの生合成における中間体として知られている、減数分裂誘導性ステロール、ならびにある種の構造的に関係する合成ステロールが開示されている。これらの物質は減数分裂を調節することが発見された。コレステロールに類似して、これらのステロールはステロール骨格中のC17上に側鎖を有し、さらに少なくとも1つのΔ7、Δ8またはΔ8(14) 二重結合を有する。
【0009】
WO 96/27658において、生殖細胞の減数分裂を刺激する方法が開示されている。この方法は、細胞にin vivo 、ex vivo またはin vitro で有効量の化合物を投与することを含んでなり、前記化合物は内因的減数分裂活性化物質を減数分裂が誘導されるレベルに蓄積させる。減数分裂活性化物質を蓄積させる、このような化合物はアンホテリシンB、アミノグアニジン、3β,5α,6β-トリヒドロキシコレスタン、メラトニン、6-クロロメラトニンおよび5-メトキシトリプタミンならびにそれらの他の誘導体およびアゴニストであることが開示されている。また、減数分裂活性化物質は、なかでも、5α-コレスタン-3β-オール、D-ホモ-コレスタ-8,14-ジエン-3β-オールおよび22,25-ジアザコレストロール、25-アザ-24,25-ジヒドロラノステロール、24,25-イミノラノステロール、23-および24-ジアザコレストロールならびに25-アザコレスタノール誘導体であることが報告されている。
【0010】
WO 97/00884 A1およびWO 98/28323 A1において、in vitro 、in vivo またはex vivo で減数分裂を刺激するために使用できる物質が記載されている。それゆえ、開示されている化合物は天然に存在する減数分裂活性化物質のアゴニストであり、したがって雌および雄における減数分裂の不十分な刺激を原因とする不妊症の治療において使用できる。この文献において、また、天然に存在する減数分裂活性化物質のアンタゴニストであることができ、こうして避妊薬として適当である、いくつかの化合物が開示されている。開示されている化合物は、なかでも、5α-コレスト-8-エン-3β-オールおよび5α-コレスト-8,14-ジエン-3β-オールを含んでなり、これらはなかでもコレステロール骨格のC17に結合した側鎖中にアミノ基を有し、このアミノ基はC4スペーサーを介してステロール骨格に結合されている。C1-C4アルキルまたはC3-C6シクロアルキルがアミノ基に結合されている。
【0011】
さらに、WO 99/58549 A1において、減数分裂の調節において有効である、ステロール誘導体が開示されている。これらの化合物は、雌および雄、特にヒトにおける不妊症を軽減する能力を有することが記載されている。調節物質として有効であるステロール誘導体は、なかでも次の通りである: (20R)-20-メチル-23-ジメチルアミノ-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール、(20R)-20-メチル-23-ジメチルアミノ-5α-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オール、4,4-ジメチル-24-フェニルアミノ-5α-コラ-8,14-ジエン-3β-オール、4,4-ジメチル-24-(N,N-ジメチルアミノ)-24-シアノ-5α-コレスタ-8,14-ジエン-3β-オールおよびさらにステロール骨格中に1または2以上の二重結合を有するステロールの種々の24-オン酸アミド。
【0012】
WO 02/079220 A2において、減数分裂調節能力を有するステロイド化合物が記載されており、これらの化合物は主としてC20に結合したアミノメチルまたはアミノエチル部分を有するステロールである。アミノ基は、例えば、窒素含有複素環式環、さらに詳しくはピペリジン環であることができる。このような化合物の1例は、(20S)-20-[(ピペリジン-1-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オールである。一般に、これらの化合物は卵母細胞、特にCEO (=卵丘包囲卵母細胞) において減数分裂刺激作用を示す。1つの特別の例において、チオモルホリノ化合物が開示されている。
【0013】
また、C17における側鎖中にアミノ基を有する不飽和ステロール誘導体、ならびにウシ腺皮質コレステロール側鎖切断シトクロムP-450 (P-450 scc) に対する、これらのステロールの効果は下記の文献に記載されている: J. J. SheetsおよびL. E. Vickery、”Active Site-directed Inhibitors of Cytochrome P-450 scc”、 J. Biol. Chem. Vol. 258 (19) 、1983、pp. 11446-11452。この文献において、なかでも22-アミノ-23,24-ビス-ノル-コル-5-エン-3β-オールおよび23-アミノ-24-ノルコル-5-エン-3β-オールが開示されている。
【0014】
C17における側鎖中にアミノ基を有する他の不飽和ステロール誘導体は、下記の文献において報告されている: A. T. ManglaおよびW. D. Nes、”Sterol C-methyl Transferase from Prototheca wickerhamii, Mechanism, Sterol Specificity and Inhibition”、Bioorg. and Med. Chem. (2000) 、8 (5) 、925-936。この文献において、なかでも23-アザ-ザイモステロールが開示されている。
【0015】
以前に記載された減数分裂調節成分を使用するとき、減数分裂の再開が裸の卵母細胞中においてin vitro で起こることが発見された。しかしながら、顆粒膜細胞で囲まれた卵母細胞 (CEO) を刺激するとき、これらの化合物の多くは限界的にのみ有効であった。さらに、in vitro 受精および再転移着床の率およびまた妊娠末期に生きている胎児数は十分には高くない。
【0016】
上記文献の開示は引用することによって本明細書の一部分とされる。
本発明の1つの目的は、雌および雄、特に哺乳動物、さらに詳しくはヒトにおける生殖、特に減数分裂の調節に有効な物質を発見することである。
本発明の他の目的は、新規な物質を含んでなる新規な医薬組成物を提供することである。
本発明の他の好ましい目的は、生殖、特に減数分裂の調節に適当な医薬組成物を製造するための新規な物質の使用を提供することである。
【0017】
本発明の他の好ましい目的は、生殖、特に減数分裂を調節する新規な方法を提供することである。
本発明のそれ以上の目的は、ヒトの不妊症を治療する方法を提供することである。
本発明のそれ以上の目的は、ヒトの卵母細胞の成熟を改良することである。
本発明のなお他の目的は、核、細胞質および/または膜卵母細胞の成熟を改良することである。
本発明のなお他の目的は、卵母細胞の受精能を改良することである。
【0018】
本発明のなお他の目的は、ヒトin vitro 成熟および受精による卵母細胞の着床率を改良することである。
本発明のなお他の目的は、染色体異常性 (異数性) をもつヒト前胚の発生率を減少させることである。
本発明のなお他の目的は、ヒト前胚の卵割率を改良することである。
本発明のなお他の目的は、ヒト前胚の特質を改良することである。
本発明の他の目的は、新規な物質を製造する方法を提供することである。
【0019】
本発明によれば、一般式I:
【化1】

【0020】
〔式中化合物Iの部分I’:
【化2】

【0021】
において、C5-C6、C6-C7、C7-C8、C8-C9、C8-C14およびC14-C15間の各結合は独立して一重結合または二重結合であり、これらの結合の少なくとも1つは二重結合であり、炭素原子C5、C6、C7、C8、C9、C14およびC15は各隣接するC原子に多くて1つの二重結合で結合されており、ただしステロイド骨格、もっぱらC5-C6間において二重結合は存在せず (後者の条件はもっぱらΔ5二重結合を有する化合物が本発明に含まれないことを意味する);そして
R4およびR4’は独立して水素およびメチルから成る群から選択される〕
により表わされるチオモルホリノステロイド化合物を哺乳動物、例えば、雌および雄、特にヒトにおける生殖、例えば、減数分裂の調節において好都合に使用することができる。
【0022】
本発明によるステロイド化合物の一般式I’を有する部分は、C8-C14間の1つの二重結合、2つの共役二重結合、好ましくはC8-C9およびC14-C15間の2つの二重結合またはC5-C6およびC7-C8間の2つの二重結合を含んでなることが好ましい。
R4およびR4’は好ましくは同一基である、すなわち、それらは両方共水素または両方共メチルである。
【0023】
残りの水素原子は、それぞれのC原子が二重結合の一部分であるか否かに依存して、C1、C2、C5、C6、C7、必要に応じてC8、C9、C11、C12、C14、C15、C16およびC17に結合することができる。C10、C13およびC18において、メチル基はそれぞれステロイド骨格および側鎖に結合されている。
【0024】
本発明によれば、より好ましくは、ステロイド化合物は下記の化合物から成る群から選択される:
(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール:
【化3】

【0025】
(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8(14)-エン-3β-オール:
【化4】

【0026】
(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール:
【化5】

【0027】
(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オール:
【化6】

【0028】
(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-5α-プレグナ-8(14)-エン-3β-オール:
【化7】

【0029】
本発明による最も好ましいチオモルホリノ化合物は、化学式IAを有する (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オールである。こうして、ステロイド骨格がΔ8,14二重結合系を含んでなりかつR4およびR4’がメチルである場合 (化合物IA) 、濾胞培養系における成熟の誘導に関して最適な性能が達成される。
新規なステロイド化合物は多数のキラル中心を有するので、これらの化合物はいくつかの異性体の形態で存在する。すべてのこれらの異性体の形態は、特記しない限り、本発明の範囲内に入る。
【0030】
本発明による化合物はステロールFF-MASと構造的に高度に異なるが、卵母細胞、特にCEOにおいて強い減数分裂刺激作用を有することが驚くべきことには発見された。これに関して、本発明の化合物はこの前述の減数分裂調節物質よりもすぐれる [例えば、A. G. Byskov 他、Nature 374、559-562、(1995)] 。一般式Iの好ましい化合物は、後述するように卵母細胞試験において試験したとき、少なくとも40%、好ましくは少なくとも60%、特に少なくとも80%だけ卵核胞崩壊を誘導する化合物である。
【0031】
本発明による化合物は第2の面において前述した化合物よりすぐれる: FF-MASは濾胞培養系において成熟を誘導することができないが、本発明の化合物はこの状況において減数分裂を活性化することができる。
【0032】
WO 02/079220 A2に開示されている化合物と比較して、本発明のチオモルホリノステロイド化合物は、特にin vitro 受精において、なお強い成熟刺激活性を示し、そしてin vitro 受精後、雌の管の中への高い有望な転移率を示す。さらに、刺激された卵母細胞の再転移が実施された場合、新規な化合物は妊娠終了において生きている胎児の数に関してよりすぐれた性質を示す。その上、本発明による化合物の水溶解度は先行技術の化合物の水溶解度よりもすぐれる。また、マウスにおいて示すことができるように、胚盤胞の成長がより良好に刺激されることが見出された。
【0033】
また、本発明によるチオモルホリノ化合物をWO 02/079220 A2に開示されている最も効率よい化合物、特に(20S)-20-[(ピペリジン-1-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (この文献中の化合物No. 2) と比較してとき、新規な化合物の前述の利点は本発明によるチオモルホリノ化合物について真実である。
この理由で、新規なステロイド化合物は、例えば、in vivo 用途のために、ならびに非in vivo用途、特にin vitro用途を含んでなる用途に使用することができる。ステロイド化合物は、哺乳動物、特にヒトのin vitro およびin vivo 受精に特に適する。
【0034】
新規な化合物の顕著な性質は、化合物における構造的特徴の組み合わせ、すなわち、主としてステロイド骨格中の二重結合の位置およびメチレンスペーサーおよびC20-R20基を介するステロイド骨格中のC17炭素原子に結合した側鎖中のチオモルホリノ基に帰することができる。
【0035】
好ましくは、本発明の薬学上許容される化合物は一般式Iのステロイド化合物の塩である。これらの塩の例は下記の文献に列挙されている: Journal of Pharmaceutical Sciences 66、2およびその次ページ参照 (1977) 、これらは引用することによって本明細書の一部とされる。このような塩の例は下記の有機酸の塩を包含する:例えば、ギ酸、フマル酸、酢酸、プロピオン酸、グリコール酸、乳酸、ピルビン酸、シュウ酸、コハク酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、安息香酸、サリチル酸、メタンスルホン酸およびその他。薬学上許容される塩を形成する適当な無機酸は下記を包含する: 塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸およびその他。
【0036】
本発明のそれ以上の目的は、少なくとも1種の一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物と、少なくとも1種の薬学上許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物である。賦形剤はこの分野においてよく知られているものから成る群から選択される。賦形剤は、例えば、次の通りである:少なくとも1種の担体、希釈剤、吸収増強剤、保存剤、緩衝剤、医薬組成物が液状である場合において浸透圧およびレオロジーを調節する物質、少なくとも1種の界面活性剤、溶媒、錠剤崩壊剤、マイクロカプセル、充填剤、スリップ添加剤、着色剤、香味剤および他の成分。これらの物質はこの分野において慣用されている。本発明によるチオモルホリノステロイド化合物は、医薬組成物中に有効量で添加することが好ましい。
【0037】
固体状担体の例は、炭酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、デキストリン、ラクトース、糖、ゼラチン、ペクチン、澱粉、シリカゲル、トラガカント、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、低融点蝋およびカカオバターである。
液状組成物は、無菌溶液、懸濁液および乳濁液を包含し、これらは、例えば、経口的に、経鼻投与により、または軟膏として投与することができる。また、このような液状組成物は注射、またはex vivo またはin vivo 適用に関する使用に適当であろう。経口的投与のために、液体は薬学上許容される油および/または親油性界面活性剤および/または水と混和性の溶媒を含有することができる。これに関して、WO 97/21440 A1を参照することができる。
【0038】
また、液状組成物はこの分野において慣用されている他の成分を含有することができ、これらの成分のいくつかは上に列挙されている。さらに、本発明の化合物の経皮的投与のための組成物はパッチの形態で提供することができる。経鼻的投与のための組成物は、液状または粉末状の経鼻的スプレーの形態で提供することができる。
チオモルホリノステロイド化合物の生物学的利用能を増強するために、これらの化合物はシクロデキストリンキレートとして処方することもできる。この目的のために、化合物をα-、β-またはγ-シクロデキストリンまたはそれらの誘導体と配合する。
【0039】
外部に投与すべき軟膏剤、軟膏、ローションおよび他の液体は、減数分裂の調節を必要とする被検体に本発明のチオモルホリノステロイド化合物が十分な量で送達されるような状態でなくてはならない。この目的のために、薬剤はそのレオロジーを調節する賦形剤および他の添加剤、さらに皮膚透過能力を増強する物質、および皮膚保護物質、例えば、コンディショナーおよび湿分調節剤を含有する。
また、薬剤はチオモルホリノステロイド化合物の有効性を増強または調節するか、あるいは薬剤の他の必要な作用を生成する、他の活性成分を含有することができる。
【0040】
非経口的投与のために、ステロイド化合物を薬学上許容される希釈剤中に溶解または懸濁させることができる。油は非常にしばしば溶媒、界面活性剤、懸濁剤または乳化剤と組み合わせて使用され、例えば、オリーブ油、落花生油、大豆油、ヒマシ油およびその他である。注射可能な薬剤を調製するために、任意の液状担体を使用できる。また、これらの液体は粘度調節剤ならびに液体の等張調節剤をしばしば含有する。
【0041】
さらに、チオモルホリノステロイド化合物は、注射可能なデポー剤としてまたは移植片として投与することができ、ここでこれらは、例えば、チオモルホリノステロイド化合物の遅延放出を可能とするように、皮下的に投与することができる。この目的で、種々の技術、例えば、活性化合物を含有する膜を包含する、デポー剤を介する投与、またはゆっくり溶解するデポー剤を介する投与を使用することができる。移植片は、例えば、生物分解性ポリマーまたは合成シリコーンを不活性物質として含有することができる。
【0042】
使用すべきチオモルホリノステロイド化合物の投与量は医師により決定され、そして、なかでも、使用する特定のステロイド化合物、投与経路および使用目的に依存するであろう。一般に、本発明の医薬組成物は、活性化合物を液状または固体状補助成分と均質に混合し、次いで、必要に応じて、生成物を必要な処方物に造形することによって調製される。
通常3000 mg/日以下、好ましくは350 mg/日以下、ある好ましい場合において30 mg/日以下のステロイド化合物を哺乳動物、例えば、ヒトに投与する。
【0043】
また、本発明は、生殖、例えば、減数分裂の調節に有効である組成物を製造するための一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物の使用に関する。この組成物は薬剤として適用されることが好ましい。
さらに、本発明は、避妊薬または受精前薬剤の製造に対する一般式Iの新規なチオモルホリノステロイド化合物の使用に関する。
さらに、本発明は、非in vivo 使用のための一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物の使用に関する。
【0044】
また、本発明は、調節を必要とする被検体に有効量の少なくとも1種の一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物を投与することを含んでなる、生殖、例えば、減数分裂を調節する方法に関する。
さらに、本発明は、哺乳動物から取出した卵母細胞を一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物と接触させることを含んでなる、哺乳動物に発育する卵母細胞の能力の可能性を改良する方法に関する。
【0045】
生殖、例えば、減数分裂の調節は、本発明による化合物が哺乳動物、特にヒトにおける卵母細胞の生殖、例えば、減数分裂を刺激するために特に適当であり、こうして天然に存在する減数分裂活性化物質 (FF-MAS) のアゴニストアナローグであるこれらの化合物を、雌および雄における減数分裂の不十分な刺激原因とする不妊症の治療において使用できることを意味する。
本発明の化合物を含有する組成物の投与経路は、活性ステロイド化合物をその活性部位に有効に輸送する、任意の経路であることができる。
【0046】
こうして、ステロイド化合物を哺乳動物に投与するとき、少なくとも1種の本発明によるチオモルホリノステロイド化合物を薬学上許容される担体と組み合わせて含んでなる医薬組成物の形態でステロイド化合物は好都合に提供される。経口的投与のために、このような組成物は錠剤またはカプセル剤の形態であることが好ましい。
【0047】
チオモルホリノステロイド化合物は、既知の化合物の製造と同様にして合成できる。それゆえ、式Iのステロイド化合物の合成は、包括的なステロールおよびステロイドの文献に記載されている、十分に確立された合成経路に従うことができる。下記の文献を合成の主要な源として使用することができる: L. F. FieserおよびM. Fieser: Steroids, Reinhold Publishing Corporation、ニューヨーク、1959; Food’s Chemistry of Carbon Compounds (編者: S. Coffrey): Elsevier Publishing Company、1971; および特にDictionary of Steroids (編者: R. A. Hill、D. N. Kirk、H. L. J. MakinおよびG. M. Murohy) 、Chapman & Hall、この文献は引用することによって本明細書の一部とされる。最後の1つは1990年までの期間を含む独創的論文に対する広範なリストの引用を含有する。
【0048】
また、本発明は、下記の工程を含んでなる(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール(化合物 IA)を製造する方法に関する:
a) (20S)-20-ヒドロキシメチル-プレグナ-4-エン-3-オンから出発し、
b) アルキル化により2つのアルキル基をC4中に導入し、
c) ケト基をヒドロキシ基に還元し、
d) 生ずるヒドロキシ基をアシル基、好ましくはベンゾイル基で保護し、
e) 臭素化/脱臭化水素化によりΔ7二重結合を導入し、
f) 酸の存在下に加熱することによってジエンΔ5,7をジエンΔ8,14に異性化し、
g) 20-ヒドロキシ基をアルデヒド基に酸化し、そして
h) アルデヒド基をチオモルホリンで還元的にアミン化し、そして還元反応によりアシル基を除去する。
【0049】
この第1合成法の対応する合成スキームを図1に示す (スキーム1) 。これに従い、まず(20S)-20-ヒドロキシメチル-プレグナ-4-エン-3-オン1の側鎖中のヒドロキシ基をシリルエーテルとして、例えば、トリイソプロピルシリル (TIPS) エーテルとして保護して、化合物2を生成する (方法の工程a) 。化合物3を製造するために、アルキル化によりヨウ化メチルで塩基、例えば、カリウムt-ブトキシドの存在下にステロイド骨格のC4中に2つのメチル基を導入する (方法の工程b) 。次の工程において、3-ケト基を普通の還元剤、例えば、水素化リチウムアルミニウムまたはホウ水素化ナトリウムで還元する (方法の工程c) 。次いで生ずるアルコール4を、例えば、ベンゾエートとして保護する (化合物5; 方法の工程d) 。
【0050】
次いで、臭素化-脱臭化水素化シーケンスを介して、第2二重結合を導入する (方法の工程e) 。次いで化合物6中の生ずるΔ5,7ジエン系を塩酸の存在下に加熱することによってΔ8,14ジエン系に異性化して、化合物7を生成する (方法の工程f) 。この酸触媒工程において、側鎖中のヒドロキシ基のみが脱保護され、化合物7が生成する。その結果、デス-マーチン-ペリオディナン (Dess-Martin-Periodinane) で側鎖中のヒドロキシ基は選択的に酸化されて、アルデヒド8 (方法の工程g) が生成し、これは中間体として働いて還元性アミン化によりチオモルホリン部分を側鎖中に導入する。この目的のために、種々の還元剤、例えば、ホウ水素化ナトリウムまたはホウ水素化トリス-(アセトキシ) を使用することができる。還元性アミン化後、3-ベンゾエートを還元性条件下にワンポット手順においてLiAlH4で脱保護する (方法の工程h) 。その結果、本発明によるステロイド化合物Iが得られる。
【0051】
方法の工程d) においてベンゾエートを形成する代わりに、他の保護的アシル基、例えば、アセチル基を導入することができる。ベンゾエートの代わりにアセテートが中間的に形成される場合、方法の工程f) におけるヒドロキシの脱保護は側鎖ばかりでなく、かつまたC3において起こる。この場合において、それぞれのアルデヒドへの選択的酸化を注意して実施して、C3におけるヒドロキシ基の酸化を防止しなくてはならない。ベンゾエートがその代わりに方法の工程d) において形成される場合、酸化は側鎖中のヒドロキシ基においてのみ進行することができる。方法の工程d) 後に得られる生成物が結晶化するという事実のために、ベンゾエート保護基を使用する場合、中間体8の精製はいっそう容易となる。これはさらにより少ない精製工程の実施を可能とする。したがって、ベンゾエートの形成は好ましい。
【0052】
C4にメチル基をもたずおよび/またはステロイド骨格中に他の二重結合のパターンをもつステロイド化合物の合成に関するかぎり、WO 02/079220 A2を参照することができ、それらのそれぞれの開示は引用することによって本明細書の一部とされる。
下記の実施例を参照して本発明をいっそう詳細に説明する。
【実施例】
【0053】
実施例1(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物IA)
a) (20S)-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-4-エン-3-オン (方法の工程a)
300 mlのジクロロメタン中の30 gの(20S)-20-ヒドロキシメチル-プレグナ-4-エン-3-オン及び13.5 gのイミダゾールの溶液に、26 mlのトリイソプロピルシリルクロライドを室温において滴下した。反応混合物を同一温度において20時間攪拌し、次いで水中に注いだ。水性層を酢酸エチルで抽出した。有機層を一緒にし、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮すると、45.4 gの (20S)-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-4-エン-3-オンが褐色油状物として得られ、これをそれ以上精製しないで使用した。
MS (Cl+): 487 (M+H)
【0054】
b) (20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3-オン (方法の工程b)
320 mlのテトラヒドロフラン中の45.4 gの(20S)-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-4-エン-3-オンの溶液を、950 mlのtert-ブタノール中の42.3 gのカリウムtert-ブチレートの溶液に50℃の温度において添加した。この混合物を同一温度において10分間攪拌した。次いで50 mlのヨウ化メチルを添加し、1時間攪拌した。この反応混合物を水中に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を一緒にし、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物をクロマトグラフィーにより精製すると、27.3 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3-オンが淡黄色固体として得られた。
MS (Cl+): 515 (M+H)
【0055】
c) (20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オール (方法の工程c)
500 mlのテトラヒドロフラン中の27.3 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3-オンの溶液に、1.24 gの水素化リチウムアルミニウムを室温において注意して少しずつ添加した。この反応混合物を1時間攪拌し、0℃に冷却した。2.5 mlの水、2.5 mlの1 N水酸化ナトリウム溶液および7.5 mlの水を連続的に添加した。この混合物をセライトで濾過した。濾液を減圧下に濃縮した。残留物をクロマトグラフィーにより精製すると、18.2 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オールが淡黄色固体として得られた。
MS (Cl+): 517 (M+H)
【0056】
d) (20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オールアセテート (方法の工程d)
175 mlのピリジン中の18.2 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オールの溶液に、6.24 mlの酢酸無水物を室温において添加した。この反応混合物を20時間攪拌し、次いで氷/塩酸混合物中に注いだ。これを酢酸エチルで抽出した。有機層を一緒にし、ブラインで洗浄し、硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮すると、16.2 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オールアセテートが白色固体として得られ、これをそれ以上精製しないで使用した。
MS (Cl+): 559 (M+H)
【0057】
e) (20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オールアセテート (方法の工程e)
100 mlのベンゼンと100 mlのヘキサン中の16.2 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オールアセテートの溶液に、4.93 gの1,3-ジブロモ-5,5-ジメチル-ヒダントインを70℃において少しずつ添加した。30分後、この混合物を0℃に冷却し、濾過した。濾液を真空蒸発させた。
【0058】
生ずる残留物に、160 mlのトルエンおよび7.8 mlの2,4,6-トリメチルピリジンを添加した。この混合物を2.5時間還流させた。冷却後、反応混合物を1 N塩酸、飽和重炭酸ナトリウム溶液およびブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空蒸発させた。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製すると、12.5 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オールアセテートが白色固体として得られた。
MS (Cl+): 557 (M+H)
【0059】
f) (20S)-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-3β,21-ジオール (方法の工程f)
16.1 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オールアセテート、210 mlのエタノール、28 mlのベンゼンおよび28 mlの濃塩酸の混合物を6時間還流させた。冷却後、この混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物をジクロロメタンおよびメタノールから再結晶化させると、4.48 gの(20S)-21-ヒドロキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-3β,21-オールが得られた。
MS (EI+): 358 (M)
【0060】
g) (20S)- 3β-ヒドロキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-アール (方法の工程g)
10 mlのジクロロメタン中の1 gの(20S)-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-3β,21-ジオールの溶液に、5.4 mlの0.5 Mのデス-マーチン-ペリオディナン (Dess-Martin-Periodinane) 溶液を室温において添加した。この混合物を1時間攪拌し、飽和重炭酸ナトリウム溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製すると、230 mgの(20S)- 3β-ヒドロキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-アールが白色固体として得られた。
MS (EI+): 356 (M)
【0061】
h) (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (方法の工程h)
38 mgのホウ水素化ナトリウムトリス(アセトキシ) を、3 mlのテトラヒドロフラン中の42 mgの(20S)- 3β-ヒドロキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-アールおよび20 μlのチオモルホリンの溶液に室温において添加した。この混合物を2時間攪拌し、飽和重炭酸ナトリウム溶液中に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製すると、15 mgの(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オールが白色固体として得られた。
MS (EI+): 443 (M)
NMRスペクトルはその構造に従った。
また、構造はX線構造分析により確証された。
【0062】
実施例2反応スキーム1、図1に従う反応
実施例1の反応を反復して、中間体化合物5、6、7および8のベンゾエートアナローグを製造した。この目的のために、いくつかの方法における反応条件を次のように変更した:
方法の工程a): TIPSCI、イミダゾール、CH2Cl2、室温、4時間の反応時間;
方法の工程b): カリウムt-ブチレート、ヨウ化メチル、tert-ブタノール、室温、30分の反応時間;
方法の工程c): LiAlH4、テトラヒドロフラン、室温、30分の反応時間;
【0063】
方法の工程d): 塩化ベンゾイル、ピリジン、0℃、1時間の反応時間、結晶化、4工程にわたって52%;
方法の工程e): 1,3-ブロモ-5,5-ジメチル-イミダゾリジン-2,4-ジオン、ベンゼン、ヘキサン、70℃、30分の反応時間; 次いで2,4,6-トリメチルピリジン、トルエン、還流、2時間の反応時間;
方法の工程f): HCl、エタノール、還流、4時間の反応時間、クロマトグラフィー; 2工程にわたって70%;
方法の工程g): デス-マーチン-ペリオディナン、CH2Cl2、室温;
【0064】
方法の工程h): チオモルホリン、NaBH(OAc)3、テトラヒドロフラン、室温、6時間の反応時間; 次いでLiAlH4との反応、室温; 18時間の反応時間、クロマトグラフィーおよびエタノールからの結晶化 (2×) 、収率: 2工程にわたって19%および精製 (純度>93%) 。
この反応順序における全体の収率は、8工程にわたって6.9%であると計算された。
詳細な反応順序および反応条件を下に概説する。
【0065】
a-d) (20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オールベンゾエート (化合物5、スキーム図1参照) (方法の工程a、b、cおよびd)
この化合物を実施例1、工程a、b、cおよびdに記載されているアセテート経路と同様にして合成した。また、この化合物はOrganic Letters 5、1837-1839 (2003) に記載されている。ベンゾイル化後、精製工程としてただ1回の結晶化を実施した。工程a、b、cおよびdについての全収率は52%であった。
【0066】
e) (20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オールベンゾエート (化合物6、スキーム図1参照) (方法の工程e)
160 mlのベンゼンと160 mlのヘキサンとの混合物中の30.0 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5-エン-3β-オールベンゾエートの溶液に、9.81 gの1,3-ジブロモ-5,5-ジメチル-ヒダントインを70℃において少しずつ添加した。30分後、この混合物を0℃に冷却し、濾過した。濾液を真空蒸発させた。
【0067】
生ずる残留物に、280 mlのトルエンおよび12.7 mlの2,4,6-トリメチルピリジンを添加した。この混合物を2.5時間還流させた。冷却後、反応混合物を0.5 N塩酸、飽和重炭酸ナトリウム溶液およびブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、真空蒸発させると、31.8 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オールベンゾエートが白色固体として得られ、これをそれ以上精製しないで使用した。
【0068】
f) (20S)-3β-ベンゾイルオキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-オール (化合物7、スキーム図1参照) (方法の工程f)
31.8 gの(20S)-4,4-ジメチル-20-[((トリイソプロピルシリル)オキシ)メチル]-プレグナ-5,7-ジエン-オールベンゾエート、467 mlのエタノール、67 mlのベンゼンおよび67 mlの濃塩酸の混合物を5時間還流させた。冷却後、この混合物を飽和重炭酸ナトリウム溶液中に注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製すると、15.7 gの(20S)-3β-ベンゾイルオキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-オールが得られた。
【0069】
g) (20S)-3β-ベンゾイルオキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-アール (化合物8、スキーム図1参照) (方法の工程g)
470 mlのテトラヒドロフランおよび4.1 mlのピリジン中の17.6 gの(20S)-3β-ベンゾイルオキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-オールおよび4.1 mlのピリジンの溶液に、17.3 mlのデス-マーチン-ペリオディナンを0℃において添加した。この混合物を30分間攪拌し、温室に加温し、pH 7のクエン酸塩緩衝液中に注ぎ、ジクロロメタンで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮すると、17.6 gの粗製(20S)-3β-ベンゾイルオキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-アールが得られ、これをそれ以上精製しないで使用した。
【0070】
h) (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物I、スキーム図1参照) (方法の工程h)
3.9 gのホウ水素化ナトリウムトリス(アセトキシ) を、400 mlのテトラヒドロフラン中の8.8 gの(20S)-3β-ベンゾイルオキシ-4,4,20-トリメチル-プレグナ-8,14-ジエン-21-アールおよび2.7 mlのチオモルホリンの溶液に室温において添加した。この混合物を2時間攪拌し、次いで10.56 gの水素化リチウムアルミニウムを少しずつ添加し、NaOHおよび水でクエンチし、酢酸エチルで抽出し、ブラインで洗浄した。有機層を硫酸ナトリウムで乾燥し、濾過し、減圧下に濃縮した。残留物をカラムクロマトグラフィーにより精製し、エタノールから2回連続的に結晶化すると、1.67 gの(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オールが白色固体として得られた (1.43 g + 0.24 g、2つの結晶化収穫物が得られた) 。
【0071】
すべての化合物は1H-NMRおよびMSにより特徴づけられた。 (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物IA) の最終的証明はX線構造分析により達成された。
【0072】
化学的および物理化学的特性決定および処方 (溶解度):
窒素を含有する側鎖を導入すると、化合物の水溶解度が改良されることを示すことができた (濁り測定) 。
FF-MASの水溶解度はわずかに<0.1 mg/mlであることが見出された。 (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物IA) の溶解度は約4 mg/mlであると測定された。
【0073】
卵母細胞in vivo 成熟および受精 (生物学的試験系):
a) 卵丘包囲卵母細胞アッセイ
試験の詳細な説明:
卵核胞 (GV) 消失により、M1停止卵母細胞をアッセイすることができる。卵核胞崩壊 (GVB) と呼ばれる卵核胞消失に引き続いて、第1極体 (PB) が放出される (C. Grondahl、J. L. Ottesen、M. Lessl、P. Faarup、A. Murray、FC . Gronvald、C. Hegele-Hartung、I. Ahnfelt-Ronne、”Meiosis-activating sterol promotes resumption of meiosis in mouse oocytes cultured in vitro in contrast to related oxysterols”、Biol. Reprod. 58、1297-1302 (1998); Hegele-Hartung、J. Kuhnke、M. Lessl、C. Grondahl、J. L. Ottesen、H. M. Beier、S. Eisner、U. Eichenlaub-Ritter、”Nuclear and cytoplasmic maturation of mouse oocytes after treatment with synthetic meiosis-activating sterol in vitro”、Biol. Reprod. 61、1362-1372 (1999)) 。
【0074】
卵丘包囲卵母細胞 (CEO) は体重13〜16 gの未熟雌マウス (C57BL/6J×DBA/2JF1) から採取し、制御された温度 (20〜22℃) 、光 (点灯06:00〜18:00) および相対湿度 (50〜70%) 下に保持した。マウスに20 IUのFSHを含有する0.2 mlのゴナドトロピンを腹腔内注射した。卵巣を解剖して取出し、立体顕微鏡下に1対の27ゲージの針を使用する卵胞のマニュアル破壊により卵母細胞をHx培地 (下を参照) 中に単離した。無傷の卵核胞を表示する卵丘包囲卵母細胞を、α-最小必須培地 (リボヌクレオシドを含まず、8 mg/mlのヒト血清アルブミン (HSA) 、0.23 mMのピルビン酸塩、2 mMのグルタミン、100 IU/mlのペニシリンおよび100 μg/mlのストレプトマイシンを補充したα-MEM) 中に入れた。卵母細胞を卵核胞段階に維持するために、この培地に3 mMのハイポキサンチンを補充し、Hx培地と表示した。
【0075】
エタノール中に溶解した1 mg/mlを含有する貯蔵溶液から、 (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物IA) の希釈物を調製した。対照へのエタノール (3.8 μl/ml) の添加は、対照レベルに影響を与えなかった。CEO (0.4 mlのHx培地中の35〜45 CEO) を空気中の5% CO2の加湿雰囲気中で37℃において24時間培養した。1つの対照ウェル (被験化合物を添加しない同一培地) を常に被験ウェルと同時に培養した。
【0076】
培養期間の終わりまでに、それぞれ卵核胞 (GV) 、卵核胞崩壊 (GVB) および極体 (PB) を有するCEOの数を計測した。そのウェルにおいてGVBを行ったCEO/CEOの総数の百分率として定義したGVB%を次のようにして計算した:
GVB% = (GVBの数 + PBの数/CEOの総数) × 100
PB%はそのウェルにおける1つの放出された極体を表示するCEO/CEOの総数の百分率として定義した。
【0077】
結果:
図2は、GVBおよびPBでモニターしたCEOにおける (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物IA) の減数分裂活性化を示す (r = 5; *p<0.05) 。新規な化合物IAは、1 μM (p<0.01; n = 10) 、3 μM (p<0.05; n = 7) および10 μM (p<0.001; n = 6) において減数分裂活性化を有意に改良した。
【0078】
同一実験を他の新規な化合物を使用して反復した:
IB (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8(14)-エン-3β-オール;
IC (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]- 5α-プレグナ-8,14-エン-3β-オール;
ID (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オール; および
IE (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]- 5α-プレグナ-8(14)-エン-3β-オール。
【0079】
CEOにおけるハイポキサンチン (Hx) の存在下の減数分裂活性化の結果を表1に記載する。各化合物について、2回の実験を実施し、そして結果を対照としてHx培地および10 μMの濃度のFF-MASと比較した。
さらに、CEOにおいてHxの存在下の減数分裂活性化の濃度依存性を化合物IEを使用して決定した。化合物IEは、化合物IAに加えて、試験した最も効率よい化合物であった。Hx培地、FF-MASおよび (20S)-20-[(ピペリジン-1-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物No. 2としてWO 02/079220 A2に開示されている) のそれと比較した減数分裂活性化の濃度依存性を表2に記載する。
【0080】
b) in vitro 受精 (IVF)
IVF率に対する (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物IA) の作用を研究するために、CEOをこの新規な化合物の存在または非存在においてIVFに引き続いてin vitro 成熟させた。FF-MASおよび(20S)-20-[(ピペリジン-1-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物No. 2としてWO 02/079220 A2に開示されている) を対照として使用した。臨床的設定におけるin vitro 成熟のための培地はハイポキサンチンを含有しないので、この新規な化合物は自発的減数分裂成熟のために卵母細胞のほぼ100%の減数分裂活性化を生ずるいずれの培地においても使用しなかった。したがって、引き続くIVFにおける変化は多分細胞質成熟に対する被験化合物の作用のためである。
【0081】
日齢21〜24の未熟雌マウス (C57BL/6J×DBA/2JF1) を卵母細胞ドナーとして使用した。動物に10 IUの妊馬血清ゴナドトロピン (PMSG) を腹腔内注射して、卵胞成長を誘導した。48時間後、動物を頸部転位により殺し、卵母細胞を解剖して取出した。精子ドナーとして、8週齢の雄マウス (C57BL/6J×DBA/2JF1) を使用した。
【0082】
1対の27ゲージの針を使用する卵胞のマニュアル破壊により、卵母細胞を卵巣から単離した。無傷のGVを表示する球形裸卵母細胞 (NkO) およびCEOを選択し、そしてα-最小必須培地 (リボヌクレオシドを含まないα-MEM、Gibco BRL、ガイサーバーグ; カタログNo. 22561; 8 mg/mlのヒト血清アルブミン (HSA) 、0.23 mMのピルビン酸塩、2 mMのグルタミン、100 IU/mlのペニシリンおよび100 μg/mlのストレプトマイシンを補充した) 中に入れた。
【0083】
それぞれの卵母細胞培地の0.4 mlを含有する4ウェルのマルチディッシュ中の油オーバーレイを含まない培地中で、卵母細胞を3回リンスした。空気中の5% CO2の加湿雰囲気中で37℃において (20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物IA) 、FF-MASおよび(20S)-20-[(ピペリジン-1-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (これは比較化合物である) の存在下に、卵母細胞を培養した。
【0084】
卵母細胞培地に、6.4%の胎仔ウシ血清 (FBS) を補充した。無水エタノール中に溶解した1 g/mlの化合物を含有する貯蔵溶液から、新規な化合物IAおよび前述の比較用の2つの化合物の溶液を調製した。対照グループを対応する量のエタノールを使用して培養した。
【0085】
18〜19時間培養した後、卵母細胞をさらにin vitro 受精のためにプロセシングした。GVBまたはPBを示す卵母細胞のみを「in vitro 成熟卵母細胞」として定義した。被験化合物を使用しないで卵母細胞を短時間洗浄し、引き続いてほぼ600,000受精能獲得の精子細胞/500μlのIVF培地 (雄マウスの副睾丸から獲得した) を含有する前もって調製した媒精皿に移した。次いで、卵母細胞成熟のための前述した 8 mg/mlのHSA、0.23 mMのピルビン酸塩、100 IU/mlのペニシリンおよび100 μg/mlのストレプトマイシンを補充した変性α-MEM IVF培地中で定められた気体条件 (空気中の5% CO2) 下に37℃において、皿をインキュベートした。
【0086】
媒精後に卵母細胞の検査を22〜24時間実施して、受精をチェックし、前核 (PN) および2細胞段階の胚を記録した。媒精された総数に関して、PNまたは2細胞段階の胚に到達した卵母細胞の数として、受精率を決定した。
【0087】
結果:
図3は、ベヒクル対照と比較して、化合物IAおよび前述の2つの化合物、すなわち、(20S)-20-[(ピペリジン-1-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール (化合物No. 2) またはFF-MASを使用すると、マウス卵母細胞の受精率がより高くなることを示す (*p<0.05; ***p<0.001; n = 18) 。図3aは、実験において使用した全卵母細胞の値 (%) を示す (各実験について各グループにおいてほぼ100個の卵母細胞/グループ) 。図3bは、ベヒクルグループに対して正規化した刺激係数としてデータを示す。
【0088】
再転移研究:
IVF実験について前述したように、in vitro 受精を実施した。
再転移の1日前に、発情周期前の状態の雌レシピエントマウス (乳母) を精管切除した雄と交配して、擬妊娠を誘発した。1日後、膣チェックを実施した。陽性無精子膣栓 (交配の成功) をもつ動物を研究に含めた。この日を妊娠の第0日 (= 無菌交尾後の第0日、第0日p.c.) と表示した。18の2細胞胚を無菌交尾後の第0日に麻酔下に乳母の右管に移した。反対側の管は未使用のままにした (擬妊娠をチェックするために) 。
【0089】
反対側の管を未使用のままにした (擬妊娠をチェックするために) 。乳母を妊娠の第19日に殺した。胎児を取出し、検査した。卵巣および子宮を直ちに取出して、着床部位、生存可能な胎児および死亡した胎児および吸収の数を記録した。外観して非妊娠の子宮を硫酸アンモニウムの10%水溶液に約10分間入れて、子宮内膜中のありうる着床部位を染色した。生存可能な胎児を個々に秤量し、生殖腺の検査により雌雄鑑別した。
【0090】
生殖能の実験において、269匹のマウスを6グループにランダム化し、それらのマウスに7〜10個のin vitro 受精卵を着床させた。in vitro 受精をベヒクル (グループ1) または物質 (グループ2〜6) の存在下に実施した。グループを表3に記載するように分布させた。
ベヒクル対照に比較した物質の生殖能上昇作用は主要な重要性を有した。その上、物質FF-MASと比較して達成された改良を研究した。
主要な重要性を有する変数は、着床スポットの数および生活可能な胎児の数である。
【0091】
方法:
着床スポットの数ならびに生活可能な胎児についてのデータは二元的特徴を有すると考えなくてはならない、すなわち、それらは転移された卵の数に関する成功および失敗の率および数で表現することができる。したがって、下記の文献に概説されている方法はデータ解析に適当なアプローチを構成する: D. Collet、”Modelling Binary Data”、第2版、 Chapman & Hall/CRC、Boca Raton。
【0092】
1つのグループにおける成功のオッズを他のグループにおける成功のオッズと比較すると、これらのデータの解釈が可能となるので、解析はオッズ比の計算に集中される。1つのグループ/他のグループのオッズ比は次のように定義される:
オッズ比 (グループ1、グループ2) = or1,2
= オッズ(グループ1)/オッズ(グループ2)
ここであるグループのオッズは、そのグループにおける成功の数/失敗の数により推定することができる。
【0093】
発見の意味を説明するために、95%の信頼区間またはオッズ比を次のようにして計算する:
[exp(log(or1,2)/1.96×se(log(or1,2)));
exp(log(or1,2)+1.96×se(log(or1,2)))]
ここでse(log(or1,2)) はlogオッズ比の標準誤差である (対応する式についてはD. Collet (2003) を参照のこと) 。
より低い信頼限界が1より大きい場合、1つのグループのオッズは他のグループのオッズよりも有意に大きいと主張することができる。
【0094】
ベヒクル対照に対する比較:
オッズ比の計算の基準として、成功の数 (すなわち、着床スポット数または生存可能な胎児数) および失敗の数 (すなわち、転移された卵数-着床スポット数または生存可能な胎児数) をすべてのグループについて計算する。表4は、6グループについてのこれらの数および生ずるオッズを示す。
【0095】
5グループとベヒクル対照とのオッズ比の比較およびそれらの信頼区間を表5に示す。
着床スポット数について、化合物IAは両方の投与量においてオッズの有意な改良を示す。この新規な化合物は1 μMにおいて着床成功おオッズを51%だけ増加するが、10 μMは着床成功の機会を55%だけよくする。FF-MASおよび化合物No. 2、すなわち、(20S)-20-[(ピペリジン-1-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オールのいずれもオッズの有意な改良を示さない。
生存可能な胎児で表した成功オッズは、より少ない投与量の化合物IAにより70%だけ増加される。ベヒクル対照に関して、他のグループのいずれも有意差を表示しない。
【0096】
FF-MASに対する比較:
FF-MAS (グループ2) と比較したグループ3〜6のオッズ比およびそれらの信頼区間を表6に示す。
すべての信頼区間は値1を含むので、4つの物質グループとFF-MASとの間の有意差を結論することができない。
【0097】
図4は着床率/転移された2細胞胚を示し、これはFF-MAS (10 μM) および新規な化合物IA (1 μMおよび10 μM) を使用する処置についてより高い数に到達する。生きているパブ (pubs) 数を図5に記載する。再び、FF-MASおよび新規な化合物IA (1 μMおよび10 μM) で処置後における生きているパブ (pubs) 数を記録した。各グループについての妊娠率を図6に示す。
顕著に、新規な化合物IAは既に0.1 μMの濃度において2細胞胚および胚盤胞の両方に対して有益な作用を示し、これは1 μMの濃度においてなおいっそう高くなる傾向がある。
【0098】
理解されるように、本明細書に記載する実施例および態様は例示のみを目的とし、そしてそれらに照らして種々の変更および変化ならびにこの出願に記載されている特徴の組み合わせは当業者に示唆され、そして記載される本発明の趣旨および範囲および添付された特許請求の範囲に含まれる。本明細書において引用する刊行物、特許および特許出願のすべては引用することによって本明細書の一部とされる。
【0099】
【表1】

【0100】
【表2】

【0101】
【表3】

【0102】
【表4】

【0103】
【表5】

【0104】
【表6】

【図面の簡単な説明】
【0105】
【図1】図1は、本発明に関する反応スキームを示す。
【図2】図2は、GVB及びPBでモニターしたCEOにおける化合物IAの減数分裂活性化を示すグラフである。
【図3】図3は、ベヒクル対照と比較しながら、化合物IA、化合物No.2及びFF-MASを使用した場合の受精率を示す。3aは全卵母細胞の値(%)を示し、3bはベヒクル群に対して正規化した刺激係数としてのデータを示す。
【図4】図4は、対照と比較しながら、化合物IA、化合物No.2及びFF-MASを使用した場合の着床率を示すグラフである。
【図5】図5は、対照と比較しながら、化合物IA、化合物No.2及びFF-MASを使用した場合の生存パブ(pub)の比率を示すグラフである。
【図6】図6は、対照と比較しながら、化合物IA、化合物No.2及びFF-MASを使用した場合の妊娠率を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式I:
【化1】

〔式中、化合物Iの部分I’:
【化2】

において、C5-C6、C6-C7、C7-C8、C8-C9、C8-C14およびC14-C15間の各結合は独立して一重結合または二重結合であり、これらの結合の少なくとも1つは二重結合であり、ただしステロイド骨格、もっぱらC5-C6間において二重結合は存在せず;そして
R4およびR4’は独立して水素およびメチルから成る群から選択される〕
で表わされるチオモルホリノステロイド化合物。
【請求項2】
一般式I’の部分において、1つの二重結合がC8-C14間に存在し、2つの二重結合がC8-C9およびC14-C15間に存在するか、あるいは2つの二重結合がC5-C6およびC7-C8間に存在する、請求項1に記載のステロイド化合物。
【請求項3】
下記の化合物:
(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール:
【化3】

(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8(14)-エン-3β-オール:
【化4】

(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オール:
【化5】

(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-プレグナ-5,7-ジエン-3β-オール:
【化6】

(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-5α-プレグナ-8(14)-エン-3β-オール:
【化7】

から成る群から選択される請求項1又は2に記載のステロイド化合物。
【請求項4】
少なくとも1種の請求項1〜3のいずれかに記載の一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物と、少なくとも1種の薬学上許容される賦形剤とを含んでなる医薬組成物。
【請求項5】
一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物が有効量で存在する、請求項4に記載の医薬組成物。
【請求項6】
生殖、特に減数分裂の調節に有効な医薬組成物を製造するための請求項1〜3のいずれかに記載の一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物の使用。
【請求項7】
非生体内使用である、請求項6に記載の使用。
【請求項8】
避妊薬または受精前薬剤を製造するための請求項1〜3のいずれかに記載の一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物の使用。
【請求項9】
生殖、特に減数分裂の調節を必要とする被検体に、有効量の少なくとも1種の請求項1〜3のいずれかに記載の一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物を投与することを含んでなる、生殖、特に減数分裂を調節する方法。
【請求項10】
哺乳動物から取出した卵母細胞を請求項1〜3のいずれかに記載の一般式Iのチオモルホリノステロイド化合物と接触させることを含んでなる、哺乳動物において発生する卵母細胞の能力の可能性を改良する方法。
【請求項11】
下記の工程:
a) (20S)-20-ヒドロキシメチル-プレグナ-4-エン-3-オンから出発し、
b) アルキル化により2つのアルキル基をC4中に導入し、
c) ケト基をヒドロキシ基に還元し、
d) 生ずるヒドロキシ基をアシル基で保護し、
e) 臭素化/脱臭化水素化によりΔ7二重結合を導入し、
f) 酸の存在下に加熱することによってジエンΔ5,7をジエンΔ8,14に異性化し、
g) 17-ヒドロキシ基をアルデヒド基に酸化し、そして
h) アルデヒド基をチオモルホリンで還元的にアミン化し、そして還元反応によりアシル基を除去する、
を含んでなる(20S)-20-[(チオモルホリン-4-イル)メチル]-4,4-ジメチル-5α-プレグナ-8,14-ジエン-3β-オールを製造する方法。
【請求項12】
アシル基がベンゾエート基である、請求項11に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2007−500140(P2007−500140A)
【公表日】平成19年1月11日(2007.1.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521437(P2006−521437)
【出願日】平成16年7月13日(2004.7.13)
【国際出願番号】PCT/EP2004/007737
【国際公開番号】WO2005/014613
【国際公開日】平成17年2月17日(2005.2.17)
【出願人】(300049958)シエーリング アクチエンゲゼルシャフト (357)
【Fターム(参考)】