説明

チオール化合物、含硫O−(メタ)アクリレート化合物およびその用途

【課題】短時間重合が可能であり、良好な光学物性を示し、特に、高い屈折率、優れた耐衝撃性をもち、加工時に臭気が少ない光学用樹脂を与える。
【解決手段】下記式(1)で表される新規な含硫O−(メタ)アクリレート化合物を用いる。


(式中、RはH又はメチル基、lは1〜3,Bは−C(=O)−又は−NHC(=O)−、Aは−(CHr−S−(CHr−など、nは1、mは2又は3)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な含硫O−(メタ)アクリレート化合物、および新規なチオール化合物を、ジチオアセタール化、チオエステル化またはチオウレタン化した後、脱ハロゲン化水素化する含硫O−(メタ)アクリレート化合物の製造方法、該化合物を含有する光学樹脂用組成物、該組成物を重合させて得られる光学用樹脂に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックレンズは、無機レンズに比べ軽量で割れ難く、染色が可能なため近年、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子に急速に普及してきている。現在、これらの目的に広く用いられる樹脂としては、ジエチレングリコールビス(アリルカーボネート)(以下、D.A.Cと称す)をラジカル重合させたものがある。この樹脂は、耐衝撃性に優れていること、軽量であること、染色性に優れていること、切削性および研磨性等の加工性が良好であること等、種々の特徴を有している。しかしながら、この樹脂は、屈折率ndが1.50前後と低く、レンズの中心厚やコバ厚が厚くなってしまい、より屈折率の高いレンズ用樹脂が望まれていた。
【0003】
D.A.C樹脂よりも屈折率を高くしたものとして、樹脂中に硫黄原子を導入した、ポリチオウレタン樹脂(特開昭63−46213等)や含硫O−(メタ)アクリレート樹脂(特開平1−128966、特開平3−217412、特開平4−161410等)やチオ(メタ)アクリレート樹脂(特開昭63−188660、特公平3−59060等)が知られている。ポリチオウレタン樹脂は、高屈折率で耐衝撃性が良好である等、バランスの優れた樹脂であるものの、短時間で重合させようとすると、重合が不均一になりやすく、光学的に均質なレンズを得るには重合時間を長くする必要があった。さらに、樹脂を切削研磨して加工する際には、作業時に硫黄臭がすることもあった。
【0004】
含硫O−(メタ)アクリレート樹脂やチオ(メタ)アクリレート樹脂は、紫外線等で短時間で重合させることも可能であるが、一般に、得られる樹脂の強度、耐衝撃性が充分なものとはいえず、脆くて割れやすい樹脂になることがあった。特に近年では、眼鏡レンズに広く利用されているツーポイント加工に適した加工強度を有することがもとめられ、また眼鏡レンズの中心厚は小さくなる傾向にあり、より大きな強度、耐衝撃性を有する樹脂が望まれていた。さらに、チオ(メタ)アクリレート化合物の安定性が低く、ゲル化が起こったり、また重合が暴走しやすく、制御しにくい等、作業性が煩雑になることがあった。このため、これらの問題点を解決すべくさらなる改良が望まれていた。
【特許文献1】特開昭63−46213
【特許文献2】特開平1−128966
【特許文献3】特開平3−217412
【特許文献4】特開平4−161410
【特許文献5】特開昭63−188660
【特許文献6】特公平3−59060
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、短時間重合が可能で、良好な光学物性、特に高い屈折率をもち、耐衝撃性に非常に優れ、かつ、加工時に臭気の少ない光学用樹脂を与え、ハンドリング性に優れた光学樹脂用組成物を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、上述の課題を解決するために、鋭意検討した結果、ある種の含硫O−(メタ)アクリレート化合物が有効であることを見出し、本発明を完成するに至ったものである。即ち、本発明は、下記式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物に関するものである。
【0007】
【化1】

【0008】
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、lは1〜3の整数を示し、Bはメチン基、−C(=O)−基または−NHC(=O)−基を表し、Bがメチン基の場合は、nは2であり、mは1又は2であり、Aは下記式で表されるいずれかの基を表し、
【0009】
【化2】

【0010】
(上式中、mは1又は2を示し、各環は1個以上の炭素数1又は2のアルキル基、アルキルチオ基またはアルコキシ基で置換されていてもよく、p、qは0又は1を表す。但し、pが1の時、mは1である。)
Bが−C(=O)−基の場合、nは1であり、mは2または3であり、Aは下記式で表されるいずれかの基を表し、
【0011】
【化3】

【0012】
(式中、r、sは1〜3の整数を表す)
Bが−NHC(=O)−基の場合、nは1であり、mは2であり、Aは下記式で表されるいずれかの基
【0013】
【化4】

(式中、r、sは1〜3の整数を表す)を表す。〕
【0014】
また、本発明は、下記式(2)で表されるチオール化合物を、分子内に少なくとも1つのアルデヒド基を有する化合物を用いてジチオアセタール化した後、分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物を用いてチオエステル化した後、または、分子内に2つのイソシアナート基を有する化合物を用いてチオウレタン化した後、脱ハロゲン化水素化することを特徴とする前記式(1)の含硫O−(メタ)アクリレート化合物の製造方法に関するものである。
【0015】
【化5】

【0016】
(式中、Xは塩素原子または臭素原子を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、lは1〜3の整数を表す)
【0017】
さらにまた、本発明は、前記の含硫O−(メタ)アクリレート化合物を含有する光学樹脂用組成物、該組成物を重合させて得られる含硫樹脂、および、該樹脂からなるレンズに関するものである。また、前記式(2)の化合物も新規なものであり、前記式(1)の含硫O−(メタ)アクリレート化合物の中間体として本発明に包含される。
【発明の効果】
【0018】
本発明の含硫O−(メタ)アクリレート化合物は新規な化合物であり、モノマーの安定性が向上し、作業性に優れている。また、本発明の光学樹脂用組成物は短時間重合が可能であり、良好な光学物性、特に高い屈折率をもち、耐衝撃性に非常に優れ、かつ、加工時に臭気の少ない光学用樹脂を与える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明の式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物は、前記式(2)で表されるチオール化合物を用いて製造することができる。すなわち、メルカプト基と反応しうる官能基を有する化合物、例えば、アルデヒド類、カルボン酸類、イソシアネート類と、ジチオアセタール化、チオエステル化またはチオウレタン化した後、さらに脱ハロゲン化水素化して得ることができる。
【0020】
本発明の式(2)で表されるチオール化合物は、以下の方法によって得ることができる。すなわち、2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール等と、3−クロロプロピオン酸、3−ブロモプロピオン酸、または3−クロロ−2−メチルプロピオン酸、3−ブロモ−2−メチルプロピオン酸等から、溶媒中で、p−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸等の触媒の存在下で、10〜200℃に加熱し、生成する水を除去しながら脱水エステル化させて得ることができる。また、原料となる2−メルカプトエタノール、3−メルカプトプロパノール等の安定性を考慮し、反応系内をあまり加熱しないで、2.7〜53.3kPa(20〜400mmHg)の減圧下で脱水エステル化を行うことによっても得ることができる。
【0021】
本発明のチオール化合物を利用することにより、容易に分子内に硫黄原子を導入することができ、得られる化合物の屈折率をさらに向上させることが可能となる。また、本発明のチオール化合物は、有するメルカプト基を反応させた後には、脱ハロゲン化水素化する事により、O−(メタ)アクリレート化合物へ誘導でき、メルカプト基と反応しうる官能基を有する化合物、例えば、アルデヒド類、カルボン酸類、イソシアネート類から、容易に、しかも高純度で、所望の含硫O−(メタ)アクリレート化合物へと導くことが可能である。
【0022】
本発明の式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物の内、Bがメチン基の場合は、分子内に少なくとも1つのアルデヒド基を有する化合物と、上記式(2)のチオール化合物とから次の2段階の方法で製造できる。まず、少なくとも1つのアルデヒド基を有する化合物と上記のチオール化合物とを、溶媒中で、p−トルエンスルホン酸、硫酸、塩酸等の触媒の存在下で、10〜200℃に加熱し、生成する水を除去しながら、脱水ジチオアセタール化させる。ついで、塩基を、−20℃〜60℃で反応させ、脱ハロゲン化水素により(メタ)アクリル化する方法によって製造される。この後段の(メタ)アクリル化反応で用いるハロゲン水素補足剤としての塩基は特に限定されないが、一般に使用される塩基として、トリメチルアミン、トリエチルアミン等のトリアルキルアミンや、ピリジン、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられる。
【0023】
分子内に少なくとも1つのアルデヒド基を有する化合物は、容易に入手可能なアルデヒド化合物、以下の構造を有する化合物が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
(上式中、mは1又は2を示し、各環は1個以上の炭素数1又は2のアルキル基またはアルコキシ基で置換されていてもよく、p、qは0又は1を表す。但し、pが1の時、mは1である。)
【0026】
具体的には、ベンズアルデヒド、2−メチルベンズアルデヒド、3−メチルベンズアルデヒド、4−エチルベンズアルデヒド、2,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,5−ジメチルベンズアルデヒド、3,4−ジメチルベンズアルデヒド、2,4,5−トリメチルベンズアルデヒド、2,4,6−トリメチルベンズアルデヒド、2−メトキシベンズアルデヒド、3−メトキシベンズアルデヒド、4−メトキシベンズアルデヒド、2,3−ジメトキシベンズアルデヒド、2,4−ジメトキシベンズアルデヒド、2,5−ジメトキシベンズアルデヒド、3,4−ジメトキシベンズアルデヒド、3,5−ジメトキシベンズアルデヒド、2−エトキシベンズアルデヒド、3−エトキシベンズアルデヒド、4−エトキシベンズアルデヒド、フタルアルデヒド、イソフタルアルデヒド、テレフタルアルデヒド、2−メチルチオベンズアルデヒド、4−メチルチオベンズアルデヒド、4−メチルチオメチルベンズアルデヒド、フェニルアセトアルデヒド、2−チオフェンアルデヒド、3−チオフェンアルデヒド、3−メチル−2−チオフェンアルデヒド、4−メチル−2−チオフェンアルデヒド、5−メチル−2−チオフェンアルデヒド、5−エチル−2−チオフェンアルデヒド、5−メチルチオチオフェン−2−アルデヒド、2,3−チオフェンジアルデヒド、2,5−チオフェンジアルデヒド、1−ナフトアルデヒド、2−ナフトアルデヒド、1,2−ナフタレンジアルデヒド、2,3−ナフタレンジアルデヒド等を使用することができる。本発明の式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物は、主鎖の構造が同一になるため、分子内の架橋点間距離がほぼ同じであり、得られる樹脂の熱物性、機械物性などを余り変化させずに、母骨格となるアルデヒド化合物を変えることにより、光学物性の異なる樹脂を選択することが可能となる。
【0027】
同様にして、本発明の式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物の内、Bが−C(=O)−基である場合は、分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を有する含硫カルボン酸化合物と、上記式(2)のチオール化合物とから、チオエステル化、脱ハロゲン化水素化の2段階の方法で製造できる。さらに、本発明の式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物の内、Bが−NHC(=O)−基である場合は、分子内に2つのイソシアネート基を有する化合物と、上記式(2)のチオール化合物とから、チオウレタン化、脱ハロゲン化水素化の2段階の方法で製造できる。
【0028】
Bが−C(=O)−基であるとき、含硫O−(メタ)アクリレート化合物を得るための、母骨格となる含硫カルボン酸は、容易に入手可能な含硫カルボン酸であり、下記構造式で表される化合物である。
【0029】
【化7】

【0030】
(上式中、r、sはそれぞれ1〜3の整数を表す。)
【0031】
具体的には、チオジグリコール酸、チオジプロピオン酸、4,4−チオジブタン酸、ジチオジグリコール酸、ジチオジプロピオン酸、4,4−ジチオジブタン酸、メチレンビス(チオグリコール酸)、メチレンビス(チオプロピオン酸)、メチレンビス(チオブタン酸)、エチレンビス(チオグリコール酸)、エチレンビス(チオプロピオン酸)、エチレンビス(チオブタン酸)、メチントリス(チオグリコール酸)、メチントリス(チオプロピオン酸)、メチントリス(チオブタン酸)等を使用することができる。これらの含硫O−(メタ)アクリレート化合物は、分子内にエステル結合を多く含んでいるため、親水性が増し、レンズにした場合には、染色性の向上が期待できる。
【0032】
また、Bが−NHC(=O)−基であるとき、含硫O−(メタ)アクリレート化合物を得るための、母骨格となるイソシアネート化合物は、下記式で表される化合物である。
【0033】
【化8】

【0034】
(上式中、r、sはそれぞれ1〜3の整数を表す。)
【0035】
具体的には、ジイソシアネートメチルスルフィド、ジイソシアネートエチルスルフィド、ジイソシアネートプロピルスルフィド、ジイソシアネートメチルジスルフィド、ジイソシアネートエチルジスルフィド、ジイソシアネートプロピルジスルフィド、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン、ビス(イソシアネートエチルチオ)メタン、ビス(イソシアネートプロピルルチオ)メタン等が挙げられる。これらの含硫O−(メタ)アクリレート化合物は、分子内にチオウレタン結合を有し、屈折率の向上、耐衝撃性などの樹脂強度のさらなる向上が期待できる。
【0036】
これらの反応においては、必要に応じて、有機溶媒を用いてもよい。使用される有機溶媒は、特に限定されないが、反応に必要な原料類との反応性を有していないものが使用できる。有機溶媒としては、例えば、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタン、石油エーテル、クロロホルム、塩化メチレン、塩化エチレン等の脂肪族または芳香族炭化水素類、あるいはハロゲン化炭化水素類、ジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン等のエーテル類、アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類、N,N−ジメチルホルムアミド等が挙げられる。使用する有機溶媒の種類は、使用する原料、反応の種類等により、適宜決められる。これらのチオール化合物、アルデヒド化合物、含硫カルボン酸化合物およびイソシアネート化合物は、必要に応じて蒸留などの精製処理を行うこともできる。
【0037】
これらの方法によって得られる本発明の含硫O−(メタ)アクリレート化合物は、チオ(メタ)アクリレート化合物と比べると、モノマーとしての安定性が向上しており、ゲル化などが比較的起こりにくく、その取り扱いが容易である。
【0038】
本発明の光学樹脂用組成物は、本発明の含硫O−(メタ)アクリレート化合物を含有するものであり、また、本発明の含硫O−(メタ)アクリレート化合物、および、これと共重合可能な単量体あるいはポリチオール化合物の少なくとも1種とを含有するものである。他の単量体あるいはポリチオール化合物を含有する組成物の場合、本発明の含硫O−(メタ)アクリレート化合物は、含硫O−(メタ)アクリレート化合物と、他の単量体あるいはポリチオール化合物の全量に対し、20重量%以上、好ましくは40重量%以上、より好ましくは60重量%以上である。
【0039】
本発明の含硫(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な単量体あるいはポリチオール化合物は、屈折率等の光学物性の調整や、耐衝撃性、比重等の諸物性を調整するためや、モノマーの粘度、その他の取扱いを調整するためなど、目的に応じて選択され、特に限定はされない。また、これらの共重合可能な単量体あるいはポリチオール化合物は、単独で使用することも、または、2種以上を混合して使用する事もできる。
【0040】
共重合可能な単量体としては、例えば、ベンジルアクリレート、ベンジルメタクリレート、ブチキシエチルアクリレート、ブトキシメチルメタクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、フェノキシエチルアクリレート、フェノキシエチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、エチレングリコールビスグリシジルアクリレート、エチレングリコールビスグリシジルメタクリレート、ビスフェノールAジアクリレート、ビスフェノールAジメタクリレート、2,2−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)プロパン、ビスフェノールFジアクリレート、ビスフェノールFジメタクリレート、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)メタン、1,1−ビス(4−アクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−アクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、1,1−ビス(4−メタクリロキシジエトキシフェニル)スルホン、ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、グリセロールジアクリレート、グリセロールジメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、メチルチオアクリレート、メチルチオメタクリレート、フェニルチオアクリレート、ベンジルチオメタクリレート、キシリレンジチオールジアクリレート、キシリレンジチオールジメタクリレート、メルカプトエチルスルフィドジアクリレート、メルカプトエチルスルフィドジメタクリレート等の(メタ)アクリレート化合物、アリルグリシジルエーテル、ジアリルフタレート、ジアリルテレフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルカーボネート、ジエチレングリコールビスアリルカーボネート等のアリル化合物、スチレン、クロロスチレン、メチルスチレン、ブロモスチレン、ジブロモスチレン、ジビニルベンゼン、3,9−ジビニルスピロビ(m−ジオキサン)等のビニル化合物、ジイソプロペニルベンゼン等が挙げられる。
【0041】
ポリチオール化合物としては、1,2−エタンジチオール、1,3−プロパンジチオール、1,2,3−プロパントリチオール、2,3−ジメルカプト−1−プロパノール、ジエチレングリコールビス(2−メルカプトアセテート)、ジエチレングリコールビス(3−メルカプトプロピオネート)、トリメチロールプロパンビス(2−メルカプトアセテート)、トリメチロールプロパンビス(3−メルカプトプロピオネート)、ペンタエリスリトールテトラキス(2−メルカプトアセテート)、ペンタエリスリトールテトラキス(3−メルカプトプロピオネート)、1,2−ジメルカプトベンゼン、1,3−ジメルカプトベンゼン、1,4−ジメルカプトベンゼン、1,2−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,4−ビス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,3−トリメルカプトベンゼン、1,2,4−トリメルカプトベンゼン、1,3,5−トリメルカプトベンゼン、1,2,3−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,2,4−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、1,3,5−トリス(メルカプトメチル)ベンゼン、4,4’−チオビスベンゼンチオール、ビス(2−メルカプトエチル)スルフィド、ビス(2−メルカプトエチルチオ)メタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)エタン、1,3−ビス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、1,2,3−トリス(2−メルカプトエチルチオ)プロパン、テトラキス(2−メルカプトエチルチオメチル)メタン、1,2−ビス(2−メルカプトエチルチオ)−3−メルカプトプロパン、4,8−ビス(メルカプトメチル)−3,6,9−トリチア−1,11−ウンデカンジチオール、2,5−ジメルカプト−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−1,4−ジチアン、2,5−ジメルカプトメチル−2,5−ジメチル−1,4−ジチアン等が挙げられる。共重合可能な単量体として、式(3)で表される化合物が好ましく用いられる。
【0042】
【化9】

【0043】
〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、t、uは0〜4の整数を表し、Eは、−CH2−、−C(CH32−、−S−、−SO2−を表す。〕
【0044】
本発明の光学用樹脂は、本願の光学樹脂用組成物を重合させて得られるものであり、本発明の含硫O−(メタ)アクリレート化合物を単独で重合させたもの、あるいは、含硫O−(メタ)アクリレート化合物を他の共重合可能な単量体、あるいはポリチオール化合物と共重合させたものである。本発明の光学用樹脂を得るための重合方法としては、特に限定されることはなく、公知のラジカル重合方法をとることができる。この場合の重合開始手段としては、種々の過酸化物やアゾ化合物等のラジカル開始剤の使用、あるいは、紫外線、可視光線、α線、β線、γ線、電子線等の照射、あるいはこれらの併用が挙げられる。
【0045】
ラジカル開始剤としては、公知のものが使用でき、代表的なものとしては、ベンゾイルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキシアゼレート、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシラウレート、t−ブチルパーオキシベンゾエート、t−ブチルパーオキシ−3,5,5−トリメチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシアセテート、ビス(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、t−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート等の過酸化物、アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等が挙げられ、これらは単独、または2種以上混合して使用することもできる。
【0046】
紫外線等を照射して重合を開始させる場合には、公知の光開始剤等を使用することもできる。光開始剤の代表的なものとしては、ベンゾフェノン、4,4−ジエチルアミノベンゾフェノン、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,2−ジメトキシ−2−フェニルアセトフェノン、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、4−ジメチルアミノ安息香酸メチル、ベンゾイン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、2,2−ジエトキシアセトフェノン、o−ベンゾイル安息香酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビスアシルフォスフィンオキサイド等が挙げられ、これらは単独、または2種以上混合して、さらに上述のラジカル開始剤と併用して使用することもできる。
【0047】
本発明の光学用樹脂(例えば、プラスチックレンズ)を得る際の代表的な重合方法としては、注型重合が挙げられる。即ち、ガスケットまたはテープ等で保持されたモールド間に、ラジカル開始剤または光開始剤、あるいはこの両方を含む本発明の光学樹脂用組成物(モノマー混合物ともいう)を注入する。この時、必要に応じて、脱泡等の処理を行っても何ら差し支えはない。次いで、紫外線等を照射するか、または、オーブン中で加熱するか、あるいは、これらを併用して硬化させ、重合物を取り出すことができる。
【0048】
本発明の光学用樹脂を得るための重合法、重合条件等は、用いる開始剤等の種類や量、単量体の種類や割合によって、一概に限定する事はできない。例えば、紫外線等を照射する場合、モノマー混合物の過熱を防ぐために冷却等の処理を行うこともあり、また、重合に必要な波長域のみを照射させるため、特定波長以下をカットできる波長カットフィルター等も使用することもできる。また、オーブン中で加熱する場合には、最適な温度条件を選択するため、温度制御することもある。オーブン中で加熱する場合、一般的には、低温から徐々に加熱し、高温で保持して重合を完結させる方法が採用される。また、重合の時間についても、使用する開始剤等の種類や量、単量体の種類や割合により影響を受けるため、一概には限定することはできない。一般的には、紫外線等の照射により重合時間の短縮を図ることは可能である。
【0049】
本発明の樹脂の成形の際には、目的に応じて公知の成形法におけると同様に、鎖延長剤、架橋剤、光安定剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、着色防止剤、染料、香料、充填剤などの種々の物質を添加してもよい。また、取り出した樹脂成形体については、必要に応じて、アニール等の処理を行ってもよい。
【0050】
本発明の含硫O−(メタ)アクリレートを用いて得られた光学用樹脂は、高屈折率で、低分散であり、耐熱性、耐候性に優れ、特に耐衝撃性に非常に優れた特徴を有し、また、加工時に発生する臭気が少ないという特徴を有している。さらに、本発明の樹脂は、注型重合時のモールドを変えることにより種々の形態の成形体として得ることができ、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子素材、透明樹脂としての各種の用途に使用することができる。特に、眼鏡レンズ、カメラレンズ等の光学素子素材として好適である。さらに、本発明の光学用樹脂を用いたレンズでは、必要に応じ、反射防止、高硬度付与、耐摩耗性向上、耐薬品性向上、防曇性付与、あるいは、ファッション性付与等の改良を行うため、表面研磨、帯電防止処理、ハードコート処理、無反射コート処理、染色処理等の物理的あるいは化学的処理を施すことができる。
【実施例】
【0051】
以下、本発を実施例により具体的に説明する。尚、得られた光学用樹脂の性能試験のうち、屈折率、アッベ数、比重、耐衝撃性、研磨時の臭気、外観は、以下の試験法により評価した。
【0052】
・屈折率、アッベ数:プルフリッヒ屈折計を用い20℃で測定した。
・外観:目視により観察した。
・耐衝撃性:作製したレンズの中心部分に、高さ127cmから種々の重量の鉄球を落下させて耐衝撃性を評価した。レンズが割れなかった最大の鉄球の重量を表した。
・研磨時の臭気:レンズのコバ部分をエッジャーによって切削、研磨したときに不快な硫黄臭があるか否かを次のようにして評価した。
○:不快な硫黄臭が全くしなかったもの
△:硫黄臭が少しするもの
×:不快な硫黄臭がするもの
【0053】
実施例1
攪拌棒、温度計、コンデンサーを付けたディーンスターク管を備えた反応フラスコに、3−クロロプロピオン酸65.1g(0.60モル)、2−メルカプトエタノール56.3g(0.72モル)、トルエン400ml、p−トルエンスルホン酸3.0gを仕込み、5.3〜9.3kPa(40〜70mmHg)の減圧下で、40℃で還流するように圧力を調整して、9時間、脱水エステル化反応を行った。次に、5%重炭酸ソーダ水溶液で有機層を洗浄したのち、更に水で数回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧下に留去して、無色の液体の下記式(化10)で表される3−クロロプロピオン酸(2−メルカプトエチルエステル)97.7g(0.58モル)を得た。
【0054】
【化10】

【0055】
このものの元素分析値を次に示した。
【0056】
【表1】

【0057】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図1)に示した。
【0058】
参考例2
攪拌棒、温度計、コンデンサーを付けたディーンスターク管を備えた反応フラスコに、ベンズアルデヒド21.2g(0.20モル)、3−クロロプロピオン酸(2−メルカプトエチルエステル)70.8g(0.42モル)、p−トルエンスルホン酸0.3g、トルエン300mlを仕込み、10.7〜14.7kPa(80〜110mmHg)の減圧下で、50℃で還流するように圧力を調整して、2時間、ジチオアセタール化反応を行った。冷却後、水で洗浄し、次いで5%重炭酸ソーダ水溶液で有機層を洗浄したのち、更に水で数回洗浄した。有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧下に留去して、無色の液体82.1g(0.19モル)を得た。これをアセトン200mlに溶解して、攪拌棒、温度計、滴下ロートを付けた反応フラスコに仕込み、10℃以下に冷却して攪拌しながら、トリエチルアミン43.0g(0.42モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、さらに25℃で、10時間攪拌した。その後、トルエン200mlと水200mlを加えて、反応生成物を有機層に抽出して分液した後、有機層を希塩酸、希重炭酸ソーダ水溶液、水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧留去して、目的の無色透明の下記式(化11)で表される含硫O−アクリレート化合物、ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ジチオアセタールベンゼン66.9g(0.190モル)を得た。
【0059】
【化11】

【0060】
このものの元素分析値を次に示した。
【0061】
【表2】

【0062】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図2)に示した。
【0063】
参考例3
参考例2のベンズアルデヒド21.2g(0.20モル)を4−メチルチオベンズアルデヒド30.4g(0.20モル)に変えた以外は、参考例2と同様にして、ジチオアセタール化反応、アクリル化反応を行い、下記構造式(化12)で表される無色透明の含硫O−アクリレート化合物、4−メチルチオベンズアルデヒドビス(2−アクリロイルオキシエチル)ジチオアセタール76.4g(0.192モル)を得た。
【0064】
【化12】

【0065】
このものの元素分析値を次に示した。
【0066】
【表3】

【0067】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図3)に示した。
【0068】
参考例4
参考例2のベンズアルデヒド21.2g(0.20モル)を1−ナフトアルデヒド31.2g(0.20モル)に変えた以外は、参考例2と同様にして、ジチオアセタール化反応、アクリル化反応を行い下記構造式(化13)で表される無色透明の含硫O−アクリレート化合物、1−ナフトアルデヒドビス(2−アクリロイルオキシエチル)ジチオアセタール78.3g(0.195モル)を得た。
【0069】
【化13】

【0070】
このものの元素分析値を次に示した。
【0071】
【表4】

【0072】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図4)に示した。
【0073】
参考例5
参考例2のベンズアルデヒド21.2g(0.20モル)を2−チオフェンアルデヒド22.4g(0.20モル)に変えた以外は、参考例2と同様にして、ジチオアセタール化反応、アクリル化反応を行い、下記構造式(化14)で表される無色透明の含硫O−アクリレート化合物、2−ビス(2−アクリロイルオキシエチル)ジチオアセタールチオフェン54.1g(0.151モル)を得た。
【0074】
【化14】

【0075】
このものの元素分析値を次に示した。
【0076】
【表5】

【0077】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図5)に示した。
【0078】
参考例6
参考例2のベンズアルデヒド21.2g(0.20モル)をフェニルアセトアルデヒド24.0g(0.20モル)に変えた以外は、参考例2と同様にして、ジチオアセタール化反応、アクリル化反応を行い下記構造式(化15)で表される無色透明の含硫O−アクリレート化合物、フェニルメチレンビス(2−アクリロイルオキシエチル)ジチオアセタール65.2g(0.178モル)を得た。
【0079】
【化15】

【0080】
このものの元素分析値を次に示した。
【0081】
【表6】

【0082】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図6)に示した。
【0083】
実施例7
攪拌棒、温度計、滴下ロートを備えた反応フラスコに、メチレンビス(チオグリコール酸)39.3g(0.20モル)、3−クロロプロピオン酸(2−メルカプトエチルエステル)81.0g(0.48モル)、ジメチルアミノピリジン0.1g、クロロホルム400mlを仕込み、水浴下で攪拌しながら、クロロホルム100mlに溶解したジシクロヘキシルカルボジイミド90.8g(0.44モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、さらに25℃で、15時間攪拌した。過剰のジシクロヘキシルカルボジイミドを酢酸で潰した後に、生成したウレアを吸引濾過で除いた。クロロホルムを減圧下に留去した後に、トルエン300mlに溶解した。5%重炭酸ソーダ水溶液で有機層を洗浄したのち、更に水で洗浄し、有機層を無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧下に留去して、無色の液体88.6g(0.18モル)を得た。これをアセトン300mlに溶解して、攪拌棒、温度計、滴下ロートを付けた反応フラスコに仕込み、10℃以下に冷却して攪拌しながら、トリエチルアミン37.8g(0.37モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、さらに25℃で、10時間攪拌した。その後、トルエン400mlと水300mlを加えて、反応生成物を有機層に抽出して分液した後、有機層を希塩酸、希重炭酸ソーダ水溶液、水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧留去して、目的の下記構造式で表される無色透明の含硫O−アクリレート化合物、メチレンビス(チオグリコール酸アクリロイルオキシエチルチオエステル)(化16)59.2g(0.14モル)を得た。
【0084】
【化16】

【0085】
このものの元素分析値を次に示した。
【0086】
【表7】

【0087】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図7)に示した。
【0088】
実施例8
実施例7のメチレンビス(チオグリコール酸)39.3g(0.20モル)をチオジグリコール酸30.0g(0.20モル)に変えた以外は、実施例7と同様にして、脱水エステル化反応、アクリル化反応を行い、無色透明の含硫O−アクリレート化合物、チオジグリコール酸ビス(アクリロイルオキシエチルチオエステル)(化17)52.7g(0.14モル)を得た。
【0089】
【化17】

【0090】
このものの元素分析値を次に示した。
【0091】
【表8】

【0092】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図8)に示した。
【0093】
実施例9
実施例7のメチレンビス(チオグリコール酸)39.3g(0.20モル)をメチントリス(チオグリコール酸)57.3g(0.20モル)に変え、さらに使用した他の原料は、3−クロロプロピオン酸(2−メルカプトエチルエステル)を0.72モル、ジシクロヘキシルカルボジイミドを0.66モル、トリエチルアミンを0.59モルに変えた以外は、実施例7と同様にして、脱水エステル化反応、アクリル化反応を行い、無色透明の含硫O−アクリレート化合物、メチントリス〔チオグリコール酸(アクリロイルオキシエチルチオエステル)〕(化18)100.6g(0.16モル)を得た。
【0094】
【化18】

【0095】
このものの元素分析値を次に示した。
【0096】
【表9】

【0097】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図9)に示した。
【0098】
実施例10
攪拌棒、温度計、滴下ロートを備えた反応フラスコに、ビス(イソシアネートメチルチオ)メタン19.0g(0.10モル)、、ジメチルチンジクロライド15mg、トルエン100mlを仕込み、水浴下で攪拌しながら、3−クロロプロピオン酸(2−メルカプトエチルエステル)33.7g(0.20モル)をゆっくりと滴下した。滴下終了後、そのまま2時間攪拌し、さらに50℃で、2時間攪拌した。冷却した後、生成してきた結晶物を濾過して洗浄した後に乾燥させた。白色の結晶42.5g(0.08モル)を得た。これをアセトン200mlに溶解して、攪拌棒、温度計、滴下ロートを付けた反応フラスコに仕込み、10℃以下に冷却して攪拌しながら、トリエチルアミン17.1g(0.17モル)を徐々に滴下した。滴下終了後、さらに25℃で、10時間攪拌した。その後、トルエン200mlと水200mlを加えて、反応生成物を有機層に抽出して分液した後、有機層を希塩酸、希重炭酸ソーダ水溶液、水で洗浄した。無水硫酸マグネシウムで乾燥したのち、トルエンを減圧留去して目的の白色結晶の含硫O−アクリレート化合物(化19)29.7g(0.065モル)を得た。
【0099】
【化19】

【0100】
このものの元素分析値を次に示した。
【0101】
【表10】

【0102】
また、1H−NMR(CDCl3溶媒中、テトラメチルシラン基準)チャートを(図10)に示した。
【0103】
参考例11〜15,実施例16〜19
参考例2〜6、実施例7〜10で得られた化合物50gに対して、光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン50〜100mgを添加してよく混合した。これらを十分に脱泡した後、ガラスモールドとガスケットよりなるモールド型に注入した。紫外線を10〜60秒照射した後120℃で一時間加熱して重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、成型体をモールドから取り出した。得られた成型体(レンズ)の物性を表−1に示した。
【0104】
【表11】

【0105】
参考例20
参考例2で得られたベンズアルデヒドビス(2−アクリロイルオキシエチル)ジチオアセタール35gに対して、ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン15gと光開始剤として2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン50mgを添加してよく混合した。これを十分に脱泡した後、ガラスモールドとテープよりなるモールド型に注入した。紫外線を10秒間照射したのち、120℃で1時間加熱し、重合を行った。重合終了後、徐々に冷却し、成形体をモールドより取り出した。得られた成形体(レンズ)の評価結果を、表−2に示した。
【0106】
参考例21〜24,実施例25〜26
表−2に示したモノマー組成物を使用した以外は、参考例20と同様の操作を行い、プラスチックレンズを得た。これらのプラスチックレンズの評価結果を参考例20の評価結果とともに表−2に示した。表−2から、本参考例21〜24,実施例25〜26のプラスチックレンズは、無色透明であり、屈折率、アッベ数、比重のバランスがよく、耐衝撃性の非常に優れ、また、樹脂を研磨する際に不快な硫黄臭が全くないものであった。
【0107】
比較例1〜3
表−2に示したモノマー組成物を使用した以外は、参考例20と同様の操作を行い、プラスチックレンズを得た。これらのプラスチックレンズの評価結果を実施例の評価結果とともに表−2に示した。表−2から、比較例のプラスチックレンズは、参考例21〜24,実施例25〜26と比較すると、耐衝撃性は劣り、また、樹脂を研磨する際に硫黄臭があるものであった。
【0108】
【表12】

【0109】
BSFA;ビス(4−アクロキシジエトキシフェニル)メタン
TEGDMA;テトラエチレングリコールジメタクリレート
DTAET;2,5−ビス(アクリロキシエチルチオメチル)−1,4−ジチアン
AETE;ビス(アクリロキシエチルチオ)エタン
XDMET;p−ビス(β−メタクリロキシエチルチオ)キシリレン
BSAM;2,2−ビス(4−メタクロキシジエトキシフェニル)プロパン
DCPA;ジメチロールトリシクロデカンジアクリレート
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】実施例1で得られた3−クロロプロピオン酸(2−メルカプトエチルエステル)の1H−NMRチャート。
【図2】参考例2で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図3】参考例3で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図4】参考例4で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図5】参考例5で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図6】参考例6で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図7】実施例7で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図8】実施例8で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図9】実施例9で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。
【図10】実施例10で得られた含硫O−アクリレート化合物の1H−NMRチャート。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物。
【化1】

〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、lは1〜3の整数を示し、Bは−C(=O)−基を表し、nは1であり、mは2または3であり、Aは下記式で表されるいずれかの基を表す。
【化2】

(式中、r、sは1〜3の整数を表す)〕
【請求項2】
下記式(2)で表されるチオール化合物を、チオエステル化した後、脱ハロゲン化水素化することを特徴とする請求項1記載の含硫O−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化3】

(式中、Xは塩素原子または臭素原子を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、lは1〜3の整数を表す)
【請求項3】
下記式のいずれかで表される分子内に少なくとも2つのカルボキシル基を有する化合物を用いて、チオエステル化することを特徴とする請求項2記載の含硫O−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化4】

(上式中、r、sはそれぞれ1〜3の整数を表す。)
【請求項4】
下記式(1)で表される含硫O−(メタ)アクリレート化合物。
【化5】

〔式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、lは1〜3の整数を示し、Bは−NHC(=O)−基を表し、nは1であり、mは2であり、Aは下記式で表されるいずれかの基
【化6】

(式中、r、sは1〜3の整数を表す)を表す。〕
【請求項5】
下記式(2)で表されるチオール化合物を、チオウレタン化した後、脱ハロゲン化水素化することを特徴とする請求項4記載の含硫O−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化7】

(式中、Xは塩素原子または臭素原子を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、lは1〜3の整数を表す)
【請求項6】
下記式のいずれかで表される分子内に2つのイソシアナート基を有する化合物を用いて、チオウレタン化することを特徴とする請求項5記載の含硫O−(メタ)アクリレート化合物の製造方法。
【化8】

(上式中、r、sはそれぞれ1〜3の整数を表す。)
【請求項7】
請求項1又は4に記載の含硫O−(メタ)アクリレート化合物を含有する光学樹脂用組成物。
【請求項8】
含硫O−(メタ)アクリレート化合物と共重合可能な単量体あるいはポリチオール化合物の少なくとも1種を含有する請求項7記載の光学樹脂用組成物。
【請求項9】
共重合可能な単量体が下記式(3)で表される化合物を含有するものである請求項8記載の光学樹脂用組成物。
【化9】

(式中、Rは水素原子またはメチル基を表し、t、uは0〜4の整数を表し、Eは−CH2−、−C(CH32−、−S−または−SO2−を表す。)
【請求項10】
請求項7〜9のいずれかに記載の組成物を重合して得られる光学用樹脂。
【請求項11】
請求項10記載の光学用樹脂からなるレンズ。
【請求項12】
下記式(2)で表されるチオール化合物。
【化10】

(式中、Xは塩素原子または臭素原子を表し、Rは水素原子またはメチル基を表し、lは1〜3の整数を表す)

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2007−211021(P2007−211021A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−111876(P2007−111876)
【出願日】平成19年4月20日(2007.4.20)
【分割の表示】特願平9−125886の分割
【原出願日】平成9年5月15日(1997.5.15)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】