説明

チタン酸アルミニウム系焼成体の製造方法

【課題】原料混合物の成形体を焼成することによりチタン酸アルミニウム系焼成体を得る方法において、焼成時、バインダが焼失した後においても良好な機械的強度を保つことができ、もって、焼成中におけるひび割れ等の欠陥の発生が抑制され、所望の形状を有するチタン酸アルミニウム系焼成体を歩留まりよく製造することができる方法を提供する。
【解決手段】アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末を含む原料混合物の成形体を焼成する工程を備え、該マグネシウム源粉末のBET比表面積が2.0m2/g以上30.0m2/g以下であるチタン酸アルミニウム系焼成体の製造方法である。原料混合物は、ケイ素源粉末をさらに含んでいてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸アルミニウム系セラミックスからなる焼成体の製造方法に関し、より詳しくは、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシクム源粉末を含む原料混合物の成形体を焼成してチタン酸アルミニウム系セラミックスからなる焼成体を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
チタン酸アルミニウム系セラミックスは、構成元素としてチタンおよびアルミニウムを含み、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウムの結晶パターンを有するセラミックスであって、耐熱性に優れたセラミックスとして知られている。チタン酸アルミニウム系セラミックスは、従来からルツボのような焼結用の冶具などとして用いられてきたが、近年では、ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスに含まれる微細なカーボン粒子を捕集するためのセラミックスフィルターを構成する材料として、産業上の利用価値が高まっている。
【0003】
チタン酸アルミニウム系セラミックスとしては、たとえばチタン酸アルミニウムマグネシウム結晶からなるセラミックスが知られている。特許文献1には、チタニアセラミックス等のTi含有化合物、アルミナセラミックス等のAl含有化合物、マグネシアセラミックス等のMg含有化合物を含む原料混合物またはその成形体を焼成することによりチタン酸アルミニウムマグネシウム焼成体を調製することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開第05/105704号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、焼成前に、あらかじめ各種金属成分を含有するセラミックス粉末混合物からなる成形体を作製する場合、セラミックス粉末同士を強固に結着させるために、上記混合物に多量のバインダ(結合剤)を添加する必要がある。
【0006】
成形体中に含まれるバインダは焼成時に焼失するが、焼成中におけるバインダが焼失した後の成形体は機械的強度が低く、焼成を終えるまでの間に、成形体にひび割れ等の欠陥が生じるという問題があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、原料混合物の成形体を焼成することによりチタン酸アルミニウム系焼成体を得る方法において、焼成時、バインダが焼失した後においても良好な機械的強度を保つことができ、もって、焼成中におけるひび割れ等の欠陥の発生が抑制され、所望の形状を有するチタン酸アルミニウム系焼成体を歩留まりよく製造することができる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末を含む原料混合物の成形体を焼成する工程を備え、該マグネシウム源粉末のBET比表面積が2.0m2/g以上30.0m2/g以下であるチタン酸アルミニウム系焼成体の製造方法を提供する。原料混合物の成形体を焼成する工程は、好ましくは、原料混合物を成形して成形体を得る工程と、該成形体を焼成する工程を含む。原料混合物は、ケイ素源粉末をさらに含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明の製造方法によれば、バインダが焼失した後においても成形体の良好な機械的強度を保つことができるため、焼成時における成形体のひび割れ等が生じにくい。したがって、所望の形状を有するチタン酸アルミニウム系焼成体を歩留まりよく製造することが可能となる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のチタン酸アルミニウム系焼成体は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末を含む原料混合物の成形体を焼成することにより製造される。かかる原料混合物を用いて得られるチタン酸アルミニウム系焼成体は、チタン酸アルミニウムマグネシウム結晶からなる焼成体である。
【0011】
本発明において用いられる原料混合物に含有されるアルミニウム源粉末は、チタン酸アルミニウム系焼成体を構成するアルミニウム成分となる化合物の粉末であり、金属成分としてアルミニウムのみを含有する化合物の粉末をいう。アルミニウム源粉末としては、たとえば、アルミナ(酸化アルミニウム)の粉末が挙げられる。アルミナの結晶型としては、γ型、δ型、θ型、α型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。なかでも、α型のアルミナが好ましく用いられる。
【0012】
本発明で用いられるアルミニウム源粉末は、空気中で焼成することによりアルミナに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、たとえばアルミニウム塩、アルミニウムアルコキシド、水酸化アルミニウム、金属アルミニウムなどが挙げられる。
【0013】
アルミニウム塩は、無機酸との無機塩であってもよいし、有機酸との有機塩であってもよい。アルミニウム無機塩として具体的には、たとえば、硝酸アルミニウム、硝酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム硝酸塩;炭酸アンモニウムアルミニウムなどのアルミニウム炭酸塩などが挙げられる。アルミニウム有機塩としては、たとえば、蓚酸アルミニウム、酢酸アルミニウム、ステアリン酸アルミニウム、乳酸アルミニウム、ラウリン酸アルミニウムなどが挙げられる。
【0014】
また、アルミニウムアルコキシドとして具体的には、たとえば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシド、アルミニウムsec−ブトキシド、アルミニウムtert−ブトキシドなどが挙げられる。
【0015】
水酸化アルミニウムの結晶型としては、たとえば、ギブサイト型、バイヤライト型、ノロソトランダイト型、ベーマイト型、擬ベーマイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。アモルファスの水酸化アルミニウムとしては、たとえば、アルミニウム塩、アルミニウムアルコキシドなどのような水溶性アルミニウム化合物の水溶液を加水分解して得られるアルミニウム加水分解物も挙げられる。
【0016】
上記のなかでも、アルミニウム源粉末としては、アルミナ粉末および水酸化アルミニウム粉末が好ましく用いられ、より好ましくは、α型のアルミナ粉末である。なお、アルミニウム源粉末は、その製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。また、本発明において、アルミニウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0017】
アルミニウム源粉末の粒径(二次粒子径)は、特に限定されないが、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜200μmの範囲内であるものを好ましく用いることができる。チタン酸アルミニウムマグネシウムを効率よく生成させる観点から、アルミニウム源粉末のD50は、より好ましくは0.3〜100μmの範囲内である。また、同じ理由から、アルミニウム源粉末のBET比表面積は、0.1〜50m2/gであることが好ましく、さらに0.2〜30m2/gであることがより好ましい。
【0018】
上記原料混合物に含有されるチタニウム源粉末は、チタン酸アルミニウム系焼成体を構成するチタン成分となる化合物の粉末であり、金属元素としてチタンを含有する化合物をいう。かかる化合物としては、たとえば酸化チタンの粉末が挙げられる。酸化チタンとしては、たとえば、酸化チタン(IV)、酸化チタン(III)、酸化チタン(II)などが挙げられ、酸化チタン(IV)が好ましく用いられる。酸化チタン(IV)の結晶型としては、アナターゼ型、ルチル型、ブルッカイト型などが挙げられ、不定形(アモルファス)であってもよい。より好ましくは、アナターゼ型、ルチル型の酸化チタン(IV)である。
【0019】
本発明で用いられるチタニウム源粉末は、空気中で焼成することによりチタニア(酸化チタン)に導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、チタニウム塩、チタニウムアルコキシド、水酸化チタニウム、窒化チタン、硫化チタン、チタン金属などが挙げられる。
【0020】
チタニウム塩として具体的には、三塩化チタン、四塩化チタン、硫化チタン(IV)、硫化チタン(VI)、硫酸チタン(IV)などが挙げられる。チタニウムアルコキシドとして具体的には、チタン(IV)エトキシド、チタン(IV)メトキシド、チタン(IV)t−ブトキシド、チタン(IV)イソブトキシド、チタン(IV)n−プロポキシド、チタン(IV)テトライソプロポキシド、および、これらのキレート化物などが挙げられる。
【0021】
上記のなかでも、チタニウム源粉末としては、酸化チタン粉末が好ましく用いられ、より好ましくは、酸化チタン(IV)粉末である。また、チタニウム源粉末として、その表面にアルミナ、シリカ、ジルコニア、水酸化アルミニウムなどからなる薄い表面層がコートされたものを用いることもできる。また、チタニウム源粉末として、チタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムのようなチタンを含む複合酸化物を用いることもできる。本発明において、チタニウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、チタニウム源粉末は、その製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0022】
チタニウム源粉末の粒径(二次粒子径)は、特に限定されないが、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.1〜200μmの範囲内であるものを好ましく用いることができる。チタン酸アルミニウムマグネシウムを効率よく生成させる観点から、チタニウム源粉末のD50は、より好ましくは0.1〜100μmの範囲内である。また、同じ理由から、チタニウム源粉末のBET比表面積は、1.0〜50m2/gであることが好ましく、さらに2.0〜30m2/gであることがより好ましい。
【0023】
チタニウム源粉末およびアルミニウム源粉末の使用量は、チタニア〔TiO2〕換算のチタニウム源粉末の使用量とアルミナ〔Al23〕換算のアルミニウム源粉末の使用量との合計量100質量部中、通常、チタニア換算のチタニウム源粉末の使用量が30質量部〜70質量部、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量が70質量部〜30質量部であり、好ましくはチタニア換算のチタニウム源粉末の使用量が40質量部〜60質量部、アルミナ換算のアルミニウム源粉末の使用量が60質量部〜40質量部である。
【0024】
本発明で用いられるマグネシウム源粉末としては、マグネシア(酸化マグネシウム)の粉末のほか、空気中で焼成することによりマグネシアに導かれる化合物の粉末が挙げられる。後者の例としては、たとえば、マグネシウム塩、マグネシウムアルコキシド、水酸化マグネシウム、窒化マグネシウム、金属マグネシウムなどが挙げられる。
【0025】
マグネシウム塩として具体的には、塩化マグネシウム、過塩素酸マグネシウム、リン酸マグネシウム、ピロりん酸マグネシウム、蓚酸マグネシウム、硝酸マグネシウム、炭酸マグネシウム、酢酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、クエン酸マグネシウム、乳酸マグネシウム、ステアリン酸マグネシウム、サリチル酸マグネシウム、ミリスチン酸マグネシウム、グルコン酸マグネシウム、ジメタクリル酸マグネシウム、安息香酸マグネシウムなどが挙げられる。
【0026】
マグネシウムアルコキシドとして具体的には、マグネシウムメトキシド、マグネシウムエトキシドなどが挙げられる。
【0027】
マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いることもできる。このような化合物としては、たとえば、マグネシアスピネル〔MgAl24〕、ハイドロタルサイト〔Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O(Mg、Alは、それぞれ2価、3価である)〕およびハイドロタルサイト類〔たとえば、協和化学工業(株)製の「DHT−4A」(Mg4.5Al2(OH)13CO3・3.5H2O)、「DHT−6」(Mg6Al2(OH)16CO3・4H2O)など〕が挙げられる。なお、マグネシウム源粉末として、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物の粉末を用いる場合、アルミニウム源粉末のAl23(アルミナ)換算量、および、マグネシウム源とアルミニウム源とを兼ねた化合物粉末に含まれるAl成分のAl23(アルミナ)換算量の合計量と、チタニウム源粉末のTiO2(チタニア)換算量との質量比が、原料混合物中において上記範囲内となるように調整される。
【0028】
本発明において、マグネシウム源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上が併用されてもよい。なお、マグネシウム源粉末は、その製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0029】
ここで、本発明において用いられるマグネシウム源粉末のBET比表面積は、2.0m2/g以上30.0m2/g以下とされる。このような範囲のBET比表面積を有するマグネシウム源粉末を用いることにより、バインダが焼失した後においても成形体の良好な機械的強度を保つことができるため、焼成時における成形体のひび割れ等を抑制することが可能となる。マグネシウム源粉末のBET比表面積は、好ましくは5.0m2/g以上20.0m2/g以下である。
【0030】
マグネシウム源粉末の粒径(二次粒子径)は、BET比表面積が上記範囲内である限り特に制限されないが、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が0.5〜30μmの範囲内であるものが好ましく用いられ、原料混合物成形体の焼成収縮率低減の観点からは、D50が3〜20μmの範囲内であるマグネシウム源粉末を用いることがより好ましい。
【0031】
原料混合物中におけるMgO(マグネシア)換算でのマグネシウム源粉末の含有量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量に対して、モル比で、0.03〜0.15とすることが好ましく、より好ましくは0.03〜0.12である。マグネシウム源粉末の含有量をこの範囲内に調整することにより、耐熱性が向上された、大きい細孔径および開気孔率を有するチタン酸アルミニウム系焼成体を比較的容易に得ることができる。
【0032】
上記原料混合物は、ケイ素源粉末をさらに含有していてもよい。ケイ素源粉末は、シリコン成分となってチタン酸アルミニウム系焼成体に含まれる化合物の粉末であり、ケイ素源粉末の併用により、耐熱性が向上されたチタン酸アルミニウム系焼成体を得ることが可能となる。ケイ素源粉末としては、たとえば、二酸化ケイ素、一酸化ケイ素などの酸化ケイ素(シリカ)の粉末が挙げられる。
【0033】
また、ケイ素源粉末は、空気中で焼成することによりシリカに導かれる化合物の粉末であってもよい。かかる化合物としては、たとえば、ケイ酸、炭化ケイ素、窒化ケイ素、硫化ケイ素、四塩化ケイ素、酢酸ケイ素、ケイ酸ナトリウム、オルトケイ酸ナトリウム、長石、ケイ素およびアルミニウムを含む複合酸化物、ガラスフリットなどが挙げられる。なかでも、工業的に入手が容易であることから、長石、ガラスフリットなどが好ましく用いられ、工業的に入手が容易であり、組成が安定している点で、ガラスフリットなどがより好ましく用いられる。なお、ガラスフリットとは、ガラスを粉砕して得られるフレークまたは粉末状のガラスをいう。
【0034】
ケイ素源粉末としてガラスフリットを用いる場合、得られるチタン酸アルミニウム系焼成体の耐熱分解性をより向上させるという観点から、屈伏点が700℃以上のものを用いることが好ましい。本発明において、ガラスフリットの屈伏点は、熱機械分析装置(TMA:Thermo Mechanical Analyisis)を用いて、低温からガラスフリットの膨張を測定し、膨張が止まり、次に収縮が始まる温度(℃)と定義される。
【0035】
上記ガラスフリットを構成するガラスには、ケイ酸〔SiO2〕を主成分(全成分中50質量%以上)とする一般的なケイ酸ガラスを用いることができる。ガラスフリットを構成するガラスは、その他の含有成分として、一般的なケイ酸ガラスと同様、アルミナ〔Al23〕、酸化ナトリウム〔Na2O〕、酸化カリウム〔K2O〕、酸化カルシウム〔CaO〕、マグネシア〔MgO〕等を含んでいてもよい。また、ガラスフリットを構成するガラスは、ガラス自体の耐熱水性を向上させるために、ZrO2を含有していてもよい。
【0036】
ケイ素源粉末としては、1種のみが用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。ケイ素源粉末の粒径(二次粒子径)は、特に限定されないが、レーザ回折法により測定される、体積基準の累積百分率50%相当粒子径(D50)が1〜20μmの範囲内であるものを好ましく用いることができる。チタン酸アルミニウムマグネシウムを効率よく生成させる観点から、ケイ素源粉末のD50は、より好ましくは5〜20μmの範囲内である。また、同じ理由から、ケイ素源粉末のBET比表面積は、0.5〜20m2/gであることが好ましく、さらに1.0〜10m2/gであることがより好ましい。
【0037】
原料混合物がケイ素源粉末を含む場合、原料混合物中におけるケイ素源粉末の含有量は、Al23(アルミナ)換算でのアルミニウム源粉末とTiO2(チタニア)換算でのチタニウム源粉末との合計量100質量部に対して、SiO2(シリカ)換算で、通常0.1質量部〜10質量部であり、好ましくは5質量部以下である。なお、ケイ素源粉末は、その製造工程において不可避的に含まれる微量成分を含有し得る。
【0038】
なお、上記のように、本発明では、マグネシアスピネル(MgAl24)、チタン酸アルミニウム、チタン酸アルミニウムマグネシウム等の複合酸化物のように、チタニウム、アルミニウム、マグネシウムおよびケイ素のうち、2つ以上の金属元素を成分とする化合物を原料粉末として用いることができる。この場合、そのような化合物の使用は、それぞれの金属源化合物粉末を混合したことと同じであると考えることができ、このような考えに基づき、原料混合物中におけるアルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の含有量が上記範囲内に調整される。
【0039】
上記原料混合物は、たとえば、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末および任意で使用されるケイ素源粉末を混合することにより得ることができる。混合には、通常用いられる混合機を用いることができ、たとえば、ナウター混合機、レーディゲミキサー混合機などの攪拌混合機;フラッシュブレンダーなどのエアー混合機;ボールミル、振動ミルなどを用いることができる。混合方法は、乾式混合、湿式混合のいずれでもよい。
【0040】
乾式混合を行なう場合、たとえば、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末および任意で使用されるケイ素源粉末を混合し、液媒体中に分散させることなく、粉砕容器内で撹拌すればよく、通常、粉砕メディアの共存下に粉砕容器内で撹拌する。
【0041】
粉砕容器としては、通常、ステンレス鋼などの金属材料で構成されたものが用いられ、内表面がフッ素樹脂、シリコン樹脂、ウレタン樹脂などでコーティングされていてもよい。粉砕容器の内容積は、原料粉末(チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末および任意で使用されるケイ素源粉末)ならびに粉砕メディアの合計容積に対して、通常、1容量倍〜4容量倍、好ましくは1.2容量倍〜3容量倍である。
【0042】
粉砕メディアとしては、たとえば、粒子径1mm〜100mm、好ましくは5mm〜50mmのアルミナビーズ、ジルコニアビーズなどが挙げられる。粉砕メディアの使用量は、原料粉末の合計使用量に対して通常、1質量倍〜1000質量倍、好ましくは5質量倍〜100質量倍である。
【0043】
原料粉末の混合・粉砕は、たとえば、粉砕容器内に、上記原料粉末および粉砕メディアを投入した後、粉砕容器を振動させたり、回転させたり、あるいはその両方により行なうことができる。粉砕容器を振動または回転させることにより、原料粉末が粉砕メディアと共に撹拌されて混合されると共に、粉砕される。粉砕容器を振動または回転させるためには、たとえば、振動ミル、ボールミル、遊星ミルなどのような通常の粉砕機を用いることができ、工業的規模での実施が容易である点で、振動ミルが好ましく用いられる。粉砕容器を振動させる場合、その振幅は、通常、2mm〜20mm、好ましくは12mm以下である。混合・粉砕は、連続式で行なってもよいし、回分式で行なってもよいが、工業的規模での実施が容易である点で、連続式で行なうことが好ましい。混合・粉砕に要する時間は、通常、1分〜6時間、好ましくは1.5分〜2時間である。
【0044】
原料粉末を乾式にて混合および粉砕するにあたっては、粉砕助剤、解膠剤などの添加剤を加えてもよい。粉砕助剤としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;トリエタノールアミンなどのアミン類;パルチミン酸、ステアリン酸、オレイン酸などの高級脂肪酸類;カーボンブラック、グラファイトなどの炭素材料などが挙げられる。これらはそれぞれ単独または2種以上を組み合わせて用いられる。
【0045】
添加剤を用いる場合、その合計使用量は、原料粉末の合計使用量、すなわちチタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計使用量100質量部に対して、通常、0.1〜10質量部、好ましくは0.5〜5質量部、さらに好ましくは0.75〜2質量部である。
【0046】
一方、湿式で混合するには、たとえば、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末および任意で使用されるケイ素源粉末を溶媒中に分散させた状態で混合すればよい。混合方法としては、液体溶媒中の攪拌処理でもよいし、粉砕メディアの共存下に粉砕容器内で撹拌してもよい。粉砕メディアおよび粉砕容器、ならびに粉砕機としては、上記したものを用いることができる。粉砕メディアの共存下に、粉砕容器内で混合・粉砕する場合、乾式混合の場合と同様、粉砕助剤等の添加剤が併用されてもよい。
【0047】
上記溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、チタニウム源粉末、アルミニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、20質量部〜1000質量部、好ましくは30質量部〜300質量部である。
【0048】
湿式で混合するに際して、溶媒には分散剤を添加してもよい。分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウムなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤を使用する場合、その使用量は溶媒100質量部あたり、通常、0.1質量部〜20質量部、好ましくは0.2質量部〜10質量部である。
【0049】
湿式混合においては、混合後、溶媒を除去することにより、原料混合物を得ることができる。溶媒の除去は、通常、溶媒を留去することにより行なわれる。溶媒を留去する方法としては特に限定されず、室温にて風乾してもよいし、真空乾燥してもよいし、加熱乾燥をしてもよい。乾燥方法は静置乾燥でもよいし、流動乾燥でもよい。加熱乾燥をする際の温度は特に限定されないが、通常、50℃以上250℃以下である。加熱乾燥に用いられる機器としては、たとえば、棚段乾燥機、スラリードライヤー、スプレードライヤーなどが挙げられる。
【0050】
なお、湿式で混合するにあたり、用いるアルミニウム源粉末等の種類によっては溶媒に溶解することもあるが、溶媒に溶解したアルミニウム源粉末等は、溶媒留去により、再び固形分となって析出する。
【0051】
本発明においては、上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末および任意で使用されるケイ素源粉末を含む原料混合物を成形して成形体を得た後、当該成形体を焼成することにより、チタン酸アルミニウム系焼成体を得る。成形してから焼成を行なうことにより、原料混合物を直接焼成する場合と比較して、焼成中の収縮を抑えることができることから、得られるチタン酸アルミニウム系焼成体の割れをより効果的に抑制でき、また、焼成により生成した多孔質性のチタン酸アルミニウム系結晶の細孔形状が維持されたチタン酸アルミニウム系焼成体を得ることができる。成形体の形状は特に制限されないが、たとえば、ハニカム形状、棒状、チューブ状、板状、るつぼ形状等を挙げることができる。
【0052】
原料混合物の成形に用いる成形機としては、一軸プレス、押出成形機、打錠機、造粒機などが挙げられる。押出し成形を行なう際には、原料混合物に、たとえば、造孔剤、潤滑剤および可塑剤、分散剤、ならびに溶媒などの添加剤を添加して成形することができる。また、押出し成形を行なう際には、原料混合物に、バインダを添加してもよい。なお、物質によっては造孔剤とバインダの両方の役割を兼ねるものがある。このような物質は、成形時には粒子同士を接着して成形体を保形させることができ、その後の焼成時にそれ自身が燃焼して空孔を形成させることができるものであり、具体的にはポリエチレンなどが該当し得る。
【0053】
上記造孔剤としては、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物系材料;氷;およびドライアイス等などが挙げられる。造孔剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、0〜40質量部であり、好ましくは0〜25質量部である。
【0054】
上記潤滑剤および可塑剤としては、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩などが挙げられる。潤滑剤および可塑剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、0〜10質量部であり、好ましくは1〜5質量部である。
【0055】
上記分散剤としては、たとえば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤などが挙げられる。分散剤の添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、0〜20質量部であり、好ましくは2〜8質量部である。
【0056】
また、上記溶媒としては、たとえば、メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類;および水などを用いることができる。なかでも、水が好ましく、不純物が少ない点で、より好ましくはイオン交換水が用いられる。溶媒の使用量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、10質量部〜100質量部、好ましくは20質量部〜80質量部である。
【0057】
上記バインダとしては、メチルセルロース、カルボキシルメチルセルロース、ナトリウムカルボキシルメチルセルロースなどのセルロース類;ポリビニルアルコールなどのアルコール類;リグニンスルホン酸塩などの塩;パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス等のワックス;EVA、ポリエチレン、ポリスチレン、液晶ポリマー、エンジニアリングプラスチックなどの熱可塑性樹脂などが挙げられる。バインダの添加量は、アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の合計量100質量部に対して、通常、20質量部以下であり、好ましくは15質量部以下である。
【0058】
成形体の焼成における焼成温度は、通常、1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。また、生成されるチタン酸アルミニウム系焼成体を加工しやすいものにするため、焼成温度は、通常、1650℃以下、好ましくは1600℃以下、より好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、2℃/時間〜500℃/時間である。ケイ素源粉末を用いる場合には、焼成工程の前に、1100〜1300℃の温度範囲で3時間以上保持する工程を設けることが好ましい。これにより、ケイ素源粉末の融解、拡散を促進させることができる。原料混合物がバインダ等を含む場合、焼成工程には、これを除去するための仮焼(脱脂)工程〔予備焼成とも呼ばれる〕が含まれる。脱脂は、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(たとえば、150〜400℃の温度範囲)になされる。脱脂工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。本発明においては、当該仮焼(脱脂)工程後の成形体の機械的強度を向上させることができ、これにより焼成時における成形体のひび割れ等を抑制することができる。
【0059】
焼成は通常、大気中で行なわれるが、用いる原料粉末、すなわちアルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末の種類や使用量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また、水蒸気分圧を低くした雰囲気中で焼成を行なってもよい。
【0060】
焼成は、通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行なわれる。焼成は回分式で行なってもよいし、連続式で行なってもよい。また、静置式で行なってもよいし、流動式で行なってもよい。
【0061】
焼成に要する時間は、原料混合物の成形体がチタン酸アルミニウムマグネシウム結晶に遷移するのに十分な時間であればよく、原料混合物の量、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分〜72時間である。
【0062】
以上のようにして、チタン酸アルミニウム系焼成体を得ることができる。このようなチタン酸アルミニウム系焼成体は、成形直後の成形体の形状をほぼ維持した形状を有する。得られたチタン酸アルミニウム系焼成体は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
【0063】
本発明により得られるチタン酸アルミニウム系焼成体は、たとえば、ルツボ、セッター、コウ鉢、炉材などの焼成炉用冶具;ディーゼルエンジン、ガソリンエンジンなどの内燃機関の排気ガス浄化に用いられる排ガスフィルターや、触媒担体、ビールなどの飲食物の濾過に用いる濾過フィルター、石油精製時に生じるガス成分、たとえば一酸化炭素、二酸化炭素、窒素、酸素などを選択的に透過させるための選択透過フィルターなどのセラミックスフィルター;基板、コンデンサーなどの電子部品などに好適に適用することができる。
【0064】
本発明により得られるチタン酸アルミニウム系焼成体は、X線回折スペクトルにおいて、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶パターンを含むものであるが、そのほかに、たとえばシリカ、アルミナ、チタニアなどの結晶パターンを含んでいてもよい。本発明のチタン酸アルミニウム系焼成体は、組成式:Al2(1−x)MgxTi(1+x)5で表すことができる。xの値は0.01以上であり、好ましくは0.01以上0.7以下、より好ましくは0.02以上0.5以下である。
【実施例】
【0065】
以下、本発明を実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、得られた焼成体のチタン酸アルミニウム化率(AT化率)および予備焼成体の圧壊強度、ならびに、用いた原料粉末のBET比表面積およびD50は、下記方法により測定した。
【0066】
(1)AT化率
チタン酸アルミニウム化率(AT化率)は、粉末X線回折スペクトルにおける2θ=27.4°の位置に現れるピーク〔チタニア・ルチル相(110)面〕の積分強度(IT)と、2θ=33.7°の位置に現れるピーク〔チタン酸アルミニウムマグネシウム相(230)面〕の積分強度(IAT)とから、下記式:
AT化率=IAT/(IT+IAT)×100(%)
により算出した。
【0067】
(2)圧壊強度
作製した予備焼成体の試料5個について、圧縮試験機(アイコウエンジニアリング社製「MODEL1307」)を用いて圧壊強度を測定し、5個の平均値を求め、予備焼成体の機械的強度を評価した。
【0068】
(3)原料粉末のBET比表面積およびD50
アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末のBET比表面積は、BET1点測定法により求めたものであり、Macsorb(マウンテック社製「Model H201」)を用いて測定した。また、これら原料粉末の粒径(二次粒子径)分布を、レーザ回折式粒度分布測定装置〔日機装社製「Microtrac HRA(X−100)」〕を用いて測定し、これより、体積基準での累積百分率50%相当粒子径(D50)を算出した。
【0069】
<実施例1>
原料粉末、造孔剤およびバインダとして以下のものを用いた。下記に示す「質量部」は、原料粉末(アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末)、造孔剤ならびにバインダの合計量を100質量部としたときの値である。下記の原料粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al23〕、チタニア〔TiO2〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO2〕換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=34.3%/50.2%/9.4%/6.1%である。
【0070】
(1)アルミニウム源粉末
酸化アルミニウム粉末(α型結晶、BET比表面積:0.53m2/g、D50:28.5μm)
33.70質量部、
(2)チタニウム源粉末
酸化チタン粉末(クロノス社製「Cronos3025」、ルチル型結晶、BET比表面積:2.95m2/g、D50:0.5μm)
38.92質量部、
(3)マグネシウム源粉末
酸化マグネシウム粉末((株)宇部マテリアルズ製「UC−95S」、BET比表面積:21.1m2/g、D50:3.4μm)
3.67質量部、
(4)ケイ素源粉末
ガラスフリット(タカラスタンダード社製「CK0832」、BET比表面積:2.0m2/g、D50:6.0μm)
3.18質量部、
(5)造孔剤
コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製「コーンスターチY−3P」)
13.26質量部、
(6)バインダ
メトローズ(信越化学工業(株)製「SM−4000」)
5.09質量部、
メトローズ(信越化学工業(株)製「60SH−4000」)
2.18質量部。
【0071】
上記アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末、ケイ素源粉末、造孔剤、バインダおよび水(合計量198g)を、アルミナビーズ〔直径15mm〕500gと共にプラスチック製容器〔内容積1L〕に投入した。その後、該容器をボールミルにより回転数80rpmにて4時間回転させることにより、容器内の原料を混合し、原料混合物を得た。得られた原料混合物の3gを一軸プレスにて0.3t/cm2の圧力下で成形することにより、直径10mm、厚さ5mm程度の成形体を5個作製した。次に、この成形体を箱型電気炉にて昇温速度60℃/hで500℃まで昇温した後、降温させることにより、予備焼成体を得た。得られた5個の予備焼成体の圧壊強度の平均値は7.8kgfであり、良好な機械的強度を示した。
【0072】
なお、本焼成工程後の成形体の同定評価を以下のようにして行なった。まず、予備焼成前の成形体を、箱型電気炉にて昇温速度300℃/hで1500℃まで昇温し、同温度で4時間保持した後、降温速度300℃/hで室温まで降温させることにより焼成体を得た。得られた焼成体を乳鉢にて解砕し、粉末X線回折法により、得られた粉末の回折スペクトルを測定したところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示した。この粉末のAT化率を求めたところ、100%であった。
【0073】
<実施例2>
原料粉末、造孔剤およびバインダとして以下のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして予備焼成体を作製した。下記に示す「質量部」は、原料粉末(アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末)、造孔剤ならびにバインダの合計量を100質量部としたときの値である。下記の原料粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al23〕、チタニア〔TiO2〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO2〕換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=34.3%/50.2%/9.4%/6.1%である。
【0074】
(1)アルミニウム源粉末
酸化アルミニウム粉末(α型結晶、BET比表面積:0.53m2/g、D50:28.5μm)
33.70質量部、
(2)チタニウム源粉末
酸化チタン粉末(クロノス社製「Cronos3025」、ルチル型結晶、BET比表面積:2.95m2/g、D50:0.5μm)
38.92質量部、
(3)マグネシウム源粉末
酸化マグネシウム粉末((株)宇部マテリアルズ製「UC−95M」、BET比表面積:11.5m2/g、D50:3.5μm)
3.67質量部、
(4)ケイ素源粉末
ガラスフリット(タカラスタンダード社製「CK0832」、BET比表面積:2.0m2/g、D50:6.0μm)
3.18質量部、
(5)造孔剤
コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製「コーンスターチY−3P」)
13.26質量部、
(6)バインダ
メトローズ(信越化学工業(株)製「SM−4000」)
5.09質量部、
メトローズ(信越化学工業(株)製「60SH−4000」)
2.18質量部。
【0075】
得られた予備焼成体の圧壊強度の平均値は5.6kgfであり、良好な機械的強度を示した。なお、本焼成工程後の成形体の同定評価を実施例1と同様して行なったところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示し、AT化率は100%であった。
【0076】
<実施例3>
原料粉末、造孔剤およびバインダとして以下のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして予備焼成体を作製した。下記に示す「質量部」は、原料粉末(アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末)、造孔剤ならびにバインダの合計量を100質量部としたときの値である。下記の原料粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al23〕、チタニア〔TiO2〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO2〕換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=34.3%/50.2%/9.4%/6.1%である。
【0077】
(1)アルミニウム源粉末
酸化アルミニウム粉末(α型結晶、BET比表面積:0.53m2/g、D50:28.5μm)
32.25質量部、
(2)チタニウム源粉末
酸化チタン粉末(クロノス社製「Cronos3025」、ルチル型結晶、BET比表面積:2.95m2/g、D50:0.5μm)
38.92質量部、
(3)マグネシウム源粉末
ハイドロタルサイト((株)協和化学工業製「DHT−6」、BET比表面積:17.5m2/g、D50:17.46μm)
5.12質量部、
(4)ケイ素源粉末
ガラスフリット(タカラスタンダード社製「CK0832」、BET比表面積:2.0m2/g、D50:6.0μm)
3.18質量部、
(5)造孔剤
コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製「コーンスターチY−3P」)
13.26質量部、
(6)バインダ
メトローズ(信越化学工業(株)製「SM−4000」)
5.09質量部、
メトローズ(信越化学工業(株)製「60SH−4000」)
2.18質量部。
【0078】
得られた予備焼成体の圧壊強度の平均値は6.4kgfであり、良好な機械的強度を示した。なお、本焼成工程後の成形体の同定評価を実施例1と同様して行なったところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示し、AT化率は100%であった。
【0079】
<比較例1>
原料粉末、造孔剤およびバインダとして以下のものを用いたこと以外は、実施例1と同様にして予備焼成体を作製した。下記に示す「質量部」は、原料粉末(アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末、マグネシウム源粉末およびケイ素源粉末)、造孔剤ならびにバインダの合計量を100質量部としたときの値である。下記の原料粉末の仕込み組成は、アルミナ〔Al23〕、チタニア〔TiO2〕、マグネシア〔MgO〕およびシリカ〔SiO2〕換算のモル比で、〔Al23〕/〔TiO2〕/〔MgO〕/〔SiO2〕=34.3%/50.2%/9.4%/6.1%である。
【0080】
(1)アルミニウム源粉末
酸化アルミニウム粉末(α型結晶、BET比表面積:0.53m2/g、D50:28.5μm)
22.83質量部、
(2)チタニウム源粉末
酸化チタン粉末(クロノス社製「Cronos3025」、ルチル型結晶、BET比表面積:2.95m2/g、D50:0.5μm)
38.92質量部、
(3)マグネシウム源粉末
マグネシアスピネル((株)サンゴバン製「VS4J」、BET比表面積:1.23m2/g、D50:5.5μm)
14.54質量部、
(4)ケイ素源粉末
ガラスフリット(タカラスタンダード社製「CK0832」、BET比表面積:2.0m2/g、D50:6.0μm)
3.18質量部、
(5)造孔剤
コーンスターチ(日本コーンスターチ(株)製「コーンスターチY−3P」)
13.26質量部、
(6)バインダ
メトローズ(信越化学工業(株)製「SM−4000」)
5.09質量部、
メトローズ(信越化学工業(株)製「60SH−4000」)
2.18質量部。
【0081】
得られた予備焼成体の圧壊強度の平均値は1.6kgfであり、極めて低い機械的強度を示した。なお、本焼成工程後の成形体の同定評価を実施例1と同様して行なったところ、この粉末は、チタン酸アルミニウムマグネシウムの結晶ピークを示し、AT化率は100%であった。
【0082】
今回開示された実施の形態および実施例はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミニウム源粉末、チタニウム源粉末およびマグネシウム源粉末を含む原料混合物の成形体を焼成する工程を備え、
前記マグネシウム源粉末のBET比表面積が2.0m2/g以上30.0m2/g以下であるチタン酸アルミニウム系焼成体の製造方法。
【請求項2】
前記原料混合物の成形体を焼成する工程は、前記原料混合物を成形して成形体を得る工程と、前記成形体を焼成する工程を含む請求項1に記載のチタン酸アルミニウム系焼成体の製造方法。
【請求項3】
前記原料混合物は、ケイ素源粉末をさらに含む請求項1または2に記載のチタン酸アルミニウム系焼成体の製造方法。

【公開番号】特開2011−20899(P2011−20899A)
【公開日】平成23年2月3日(2011.2.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−167984(P2009−167984)
【出願日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】