説明

チップカートリッジ、及び分析装置

【課題】本発明は、必要最小限のチップでの生体試料の分析を可能し、かつ、複数のチップを容易に設置できるチップカートリッジを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明は、各々生体試料の反応流路を有する複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジ10であって、チップカートリッジ10は、平板状の基部11と、基部11上に設けられ、チップを保持する凹部12と、凹部12上に形成され、チップの着脱を容易にするための孔13と、凹部12で保持されたチップを基部11に固定するスライド部14と、基部11の中央部分に設けられ、スライド部14を支持する支持部15とを備える。スライド部14は、チップカートリッジの外周側へ外力が加えられると、支持部15からチップカートリッジ10の外周方向へスライドする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血液などの生体試料を分析するための医療用検査器具、及び装置に関し、特に、生体試料の反応流路が形成されたチップを固定するチップカートリッジと、前記チップカートリッジを回転させて試料を移送し、試料の成分を分析する分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体の微細加工技術や、光学手法や電気化学手法を用いた試料の検出技術の進歩によって、血液等の生体試料の分析を微少空間で行なうことが可能になった。
【0003】
例えば、キャピラリー電気泳動もその一つである。キャピラリー電気泳動とは、任意の試料を電荷量や分子量別に分離する技術であり、この技術では、従来、内径100ミクロン程度、長さ数十センチのガラス管が利用されてきた。
【0004】
キャピラリー電気泳動の動作についてDNAの分離を例に説明すると、まずpH緩衝液とポリマー等をキャピラリー管内全体に充填し、次に一端からDNAを数十ナノリットル充填する。その後両端に電圧を印加すると、DNAは負の電荷を有しているので正極側へ移動しようとする。ポリマー内での移動度は電荷量、分子量、及び形状によって異なるので、結果として塩基長別にDNAを分離することができる。
【0005】
しかし、近年、このようなキャピラリー電気泳動を、極細溝などの微小空間を形成したプレート、いわゆるマイクロ化学チップ上で実現できるようになった。最近では、いままでビーカーのような器具を利用していたバッチ実験もマイクロ化学チップ上の微小空間で行うことができるようになった。
【0006】
さらに、マイクロ化学チップを血液の成分分析に利用することもできる。例えば、マイクロ化学チップ上に微小空間である反応流路を形成し、この反応流路に血液と各種試薬とを注入して、反応させた後、反応状態を、光学センサーで測定、または電気化学的に測定することで、血液の成分分析を行なう。
【0007】
また、生体試料の分析に使用するマイクロ化学チップとして、チップ内に複数の反応流路を設けて、1チップで複数の生体試料の分析を可能にするものも提案されている。
【0008】
さらに、血液などの生体試料の分析に使用するマイクロ化学チップとして、複数種の生体試料の分析を可能にするディスクも提案されている(特許文献1)。この分析ディスクは、ディスク本体へ着脱可能な複数の試験片によって複数の試験領域が構成される。各試験片は樹脂で形成され、弾性変形させて、分析ディスクへ押し込むことで、分析ディスクへ取り付けることができる。各試験片には反応流路が設けられていて、この反応流路に生体試料と試薬とを注入後、分析ディスクを回転させて生体試料と試薬を反応させ、反応状態を光学センサーで読み取ることで、生体試料を分析することができる。
【0009】
以上のように、マイクロ化学チップを用いれば、反応流路にて迅速に試料と試薬を反応させることでき、また、分析に使用する試料を少量に抑えることができる。さらに、温度等の反応条件を容易に制御することもできる。
【特許文献1】特開2003−185671号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
近年、上述のように、血液などの生体試料の分析において、マイクロ化学チップが汎用的に利用されるようになってきた。しかし、測定に使用される試料の多様化に伴い、チップ内の反応流路の多様化も求められており、この反応流路の多様化に伴い、チップに応じて分析に使用できる分析装置が限定されるという問題が生じる。
【0011】
また、マイクロ化学チップを用いて感染症が危惧される生体試料を分析する場合、分析後の廃棄に関して、以下の課題が生じる。すなわち、感染症が危惧される生体試料を分析する場合、分析後のチップは廃棄されることが望ましい。たとえ、複数の検体を分析できるチップにおいて、1検体のみの分析しか実施されなかった場合でも、分析後のチップは廃棄されるのが望ましい。これは、放置しておくことで、感染症の広がりが危惧されるからである。例えば、4つの反応流路を有し、1個あたり4検体の分析が可能なチップを使用して1検体のみの分析しか実施されなかったとしても、分析後、そのチップは廃棄されることが望ましい。しかし、この場合、残りの3検体分の反応流路を無駄にしてしまうことになる。
【0012】
また、特許文献1に記載のディスクは、着脱可能な複数の試験片を備えることで、上記課題を解決できるが、着脱の際に、樹脂で形成される試験片を弾性変形させることから、試験片が変形または破損しやすくなる。さらに、電気化学反応を利用して試料を分析する場合には試験片に電極膜を形成するため、試験片を弾性変形させるときに、試験片内に設けられた電極用薄膜も破損する可能性がある。
【0013】
よって、本発明は、必要最小限のチップでの試料の分析を可能し、かつ、複数のチップを容易に固定できるチップカートリッジ、及びそのチップカートリッジに設置されたチップ上の試料を分析する分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、各々試料の流路を有する複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジであって、平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部とを備え、前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドすることを特徴とする。
【0015】
また、本発明は、前記チップカートリッジにおいて、前記チップには、電極膜がパターニングされていることを特徴とする。
【0016】
また、本発明は、各々試料の流路を有し、かつ、電極膜がパターニングされた複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジであって、平板状の基部上に設けられる、前記チップを保持する凹部と、前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部と、前記スライド部の表面に形成される、導電材料からなる導電部とを備え、前記スライド部が、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドすることを特徴とする。
【0017】
また、本発明は、各々試料の流路を有し、かつ、電極膜がパターニングされた複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジを設置するトレイと、前記トレイに設置されたチップカートリッジを回転させる回転部と、前記チップ上の試料を分析する分析部とを備える分析装置であって、前記チップカートリッジは、平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部とを備え、前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドし、前記分析部は、前記チップの電極膜に電気的に接続する接続端子と、前記チップ上で前記試料と前記電極膜が接触することで生じる電気信号を、前記接続端子を介して入力して検出する検出部とを備えることを特徴とする。
【0018】
また、本発明は、各々試料の流路を有し、かつ、電極膜がパターニングされた複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジを設置するトレイと、前記トレイに設置されたチップカートリッジを回転させる回転部と、前記チップ上の試料を分析する分析部とを備える分析装置であって、前記チップカートリッジは、平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部と、前記スライド部の表面に形成される、導電材料からなる導電部とを備え、前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドし、前記導電部が、前記スライド部が前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へのスライドさせられたときに、前記電極膜と接触し、前記分析部は、前記チップカートリッジの導電部に電気的に接続する接続端子と、前記チップ上で前記試料と前記電極膜が接触することで生じる電気信号を、前記導電部及び前記接続端子を介して入力して検出する検出部とを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、各々試料の流路を有する複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジであって、平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部とを備え、前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドして、前記チップを固定することから、必要な種類のチップを必要な数だけ容易に設置することができる。よって、試料を分析する際に使用するチップを必要最小限に抑えて、無駄な廃棄物を極力抑えることができる。
【0020】
また、本発明は、各々試料の流路を有する複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジであって、平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部と、前記スライド部の表面に形成される、導電材料からなる導電部とを備えることから、前記導電部が、前記チップ上の試料を分析する分析装置の接続端子と前記チップの電極膜との接続を中継して、分析装置の接続端子とチップの電極膜との接続をより確実することができる。その結果、分析装置による生体試料の分析の精度を向上させることができる。
【0021】
また、本発明のチップカートリッジによれば、前記スライド部は前記チップカートリッジの中心から外周側へスライドすることから、試料分析のためにチップカードリッジを回転させて、チップ内の試料を遠心分離または移送するとき、遠心力でチップが外れることが無い。さらに、スライド部にも遠心力がかかるため、スライド部によるチップの固定が不十分な状態であっても、スライド部が回転によって外周方向へスライドするので、分析中にチップを確実に固定することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
(実施の形態1)
以下、本実施の形態1に係るチップカートリッジ、及びそのチップカートリッジに設置されたチップ上の試料を分析する分析装置について説明する。
【0023】
図1は本実施の形態1に係るチップカートリッジ10の斜視図である。
チップカートリッジ10は、平板状の基部11と、基部11上に設けられ、チップを保持する凹部12と、凹部12上に形成され、チップの着脱を容易にするための孔13と、凹部12に保持されたチップを基部11に固定するスライド部14と、基部11の中央部分に設けられ、スライド部14を支持する支持部15とを備える。スライド部14は、チップカートリッジ10の外周側へ外力が加えられると、支持部15からチップカートリッジの外周方向へスライドする。
【0024】
また、チップカートリッジ10は、分析装置内の光センサーからの光を反射する反射板16を備える。分析装置は、反射板16からの反射光によってチップカートリッジの位置を特定する。
【0025】
図2、図3は本実施の形態1に係るチップカートリッジに設置されたチップ上の試料を分析する分析装置の斜視図である。
【0026】
分析装置20は、分析装置20の温度を調整する温度調整部21と、チップ上の試料を分析する分析部22と、チップを装置内部へ導くトレイ23と、分析装置20の基本的な動作設定及び動作タイミングを制御する外部装置との通信を行う通信部24と、電源スイッチ25と、チップカートリッジ10を回転させる回転部26とを備える。さらに、分析装置20は、分析装置20内の各機器を制御する制御部27と、分析装置20内の全ての機器に電源を供給する電源部28とを備える。
【0027】
以下、チップカートリッジ10に設置されたチップ上の試料を分析装置20にて分析する方法について図4〜図6を用いて説明する。
【0028】
図4はチップ挿入前のチップカートリッジ10の断面図で、図5はチップ挿入直後のチップカートリッジ10の断面図で、図6はチップ挿入後、チップをスライド部14により固定したときのチップカートリッジ10の断面図である。
【0029】
まず、チップカートリッジ10の凹部12にチップ51を保持させる。チップ51をチップカートリッジ10に保持させるときには、チップ51を挿入できるように、支持部15内にスライド部14を収納しておく。支持部15は、スライド部14と摩擦接触することで、スライド部14を支持する。
【0030】
チップ51は、血液などの生体試料の反応流路であるマイクロ流路を有する。また、チップ上で試料を電気化学反応させて、試料を分析する場合は、チップ51の中間層に予め電極膜をパターニングしておく。そして、この電極膜の一部を分析装置20の分析部22の接続端子と接続可能なように露出させておく。
【0031】
次に、スライド部14にチップカートリッジ10の外周方向へ外力を加えて、スライド部14をチップカートリッジ10の中心Pから外周方向Xへとスライドさせる。ここで外周方向Xとは、中心Pに対して完全な放射方向のみでなく外周側へスライドする方向であれば、放射方向に対して斜めであってもよい。以上の操作でチップ51をチップカートリッジ10に設置する。
【0032】
次に、チップ51が設置されたチップカートリッジ10を分析装置20のトレイ23上に置く。
【0033】
以下、分析装置20による生体試料の分析方法について説明する。
分析装置20は、トレイ23をスライドさせて、分析装置20内部へチップカートリッジ10を導入する。次に、チップカートリッジ10の中心Pを軸として、回転部26によってチップカートリッジ10を回転させ、チップ51の反応流路に注入された生体試料の遠心分離及び移送を行なう。これにより、生体試料がチップ51の電極膜へ移送され、生体試料とチップ51の電極膜とが接触して電気化学反応を起こす。次に、前記電気化学反応によって生じる電気信号を分析部22で検出して、生体試料の成分分析を行なう。ここでは、チップ51の電極膜の露出部に分析装置20の分析部22から伸びた針状の接続端子が接続することで、分析部22による電気信号の検出が可能になる。分析部22は、例えば、接続端子を介して電極膜に電圧を印加し、そのときの電流量を信号検出部で検出して、電流量から生体試料中の特定成分の量を求める。
【0034】
以上のように、本実施の形態1に係るチップカートリッジによれば、平板状の基部11と、基部11上に設けられ、チップを保持する凹部12と、凹部12上に形成され、チップの着脱を容易にするための孔13と、凹部12に保持されたチップを基部11に固定するスライド部14と、基部11の中央部分に設けられ、スライド部14を支持する支持部15とを備え、スライド部14にチップカートリッジの外周方向へ外力が加えられることで、スライド部14がスライドして、チップを固定することから、必要な種類のチップを必要な数だけ容易に設置することができる。よって、試料を分析する際に使用するチップを必要最小限に抑えて、無駄な廃棄物を極力抑えることができる。
【0035】
また、本実施の形態1に係るチップカートリッジによれば、チップカートリッジ10の中心Pから外周側へスライド部14をスライドさせることによってチップを固定する構造であることから、試料分析のためにチップカードリッジ10を回転させて、チップ内の試料を遠心分離または移送するとき、遠心力でチップが外れることが無い。さらに、スライド部14にも遠心力がかかるため、スライド部14によるチップの固定が不十分な状態であっても、スライド部14が回転によって外周方向Xへスライドするので、分析中にチップを確実に固定することができる。
【0036】
なお、本実施の形態1では、チップの電極膜と生体試料との電気化学反応によって得られる電気信号を検出することによって、生体試料を分析する場合について説明したが、本発明はこれに限るものではなく、生体試料を光学的に分析することでも良い。生体試料を光学的に分析する方法として、例えば、分析装置20の分析部22に光学センサーを搭載し、チップ上で生体試料と発色試薬を反応させて、反応状態を光学センサーによって測定する方法が挙げられる。
【0037】
(実施の形態2)
本実施の形態2に係るチップカートリッジについて図7〜図10を用いて説明する。
図7は本実施の形態2に係るチップカートリッジ70の斜視図である。図8はチップカートリッジ70に挿入されるチップの断面図である。図9はチップカートリッジ70の断面図で、図10は、チップをスライド部により固定したときのチップカートリッジ70の断面図である。
【0038】
図7において、チップカートリッジ70は、平板状の基部71と、基部71上に設けられ、チップを保持する凹部72と、凹部72上に形成され、チップの着脱を容易にするための孔73と、凹部72で保持されたチップを基部71に固定するスライド部74と、基部71の中央部分に設けられ、スライド部74を支持する支持部75とを備える。スライド部74は、チップカートリッジ70の外周側へ外力が加えられると、支持部75からチップカートリッジの外周方向へスライドする。
【0039】
また、チップカートリッジ70は、分析装置内の光センサーからの光を反射する反射板76を備える。分析装置は、反射板76からの反射光によってチップカートリッジの位置を特定する。
【0040】
チップカートリッジ70に挿入されるチップ81は、血液などの生体試料の反応流路であるマイクロ流路を有する。また、中間層に電極膜82がパターニングされて、電極膜82の一部は分析装置20の分析部22の接続端子101と接続可能なように露出している。
【0041】
スライド部74は、図9に示すように、その表面に導電材料にて形成された中継端子91を備える。また、図10に示すように、中継端子91は電極膜82の露出している部分と接触する。
【0042】
以下、チップカートリッジ70に設置されたチップ上の試料を分析装置20にて分析する方法について説明する。
【0043】
まず、チップカートリッジ70の凹部72にチップ81を保持させる。チップ81をチップカートリッジ70に保持させるときには、チップ81を挿入できるように、スライド部74を支持部75内に収納しておく。支持部75は、スライド部74と摩擦接触することで、スライド部74を支持する。
【0044】
次に、スライド部74に、チップカートリッジ70の外周方向へ外力を加えて、スライド部74をチップカートリッジ70の中心Pから外周方向Xへとスライドさせる。図10に示すように、スライド部74をスライドさせてチップ81を固定するのと同時に、チップ81の電極膜82の露出した部分が、スライド部74の表面に形成された中継端子91と接続する。
【0045】
次に、チップ81が設置されたチップカートリッジ70を分析装置20のトレイ23上に置く。
【0046】
以下、分析装置20による生体試料の分析方法について説明する。
分析装置20は、トレイ23をスライドさせて、分析装置20内部へチップカートリッジ70を導入する。次に、チップカートリッジ70の中心Pを軸として、回転部26によってチップカートリッジ70を回転させ、生体試料の移送を行なう。これにより、生体試料がチップ81の電極膜へ移送され、生体試料とチップ81の電極膜とが接触して電気化学反応を起こす。次に、前記電気化学反応によって生じた電気信号を分析部22で検出して、生体試料の成分分析を行なう。上記実施の形態1では、分析装置20の分析部22の接続端子がチップ51に設けられた電極膜と直接接続される構成であったが、本実施の形態2では、分析装置20の分析部22の接続端子101が、チップカートリッジ70のスライド部74の表面に設けられた中継端子91を介してチップ81の電極膜82に接続される構成となっている。分析部22は、例えば、接続端子101を介して電極膜82に電圧を印加し、そのときの電流量を信号検出部で検出して、電流量から生体試料中の特定成分の量を求める。
【0047】
以上のように、本実施の形態2に係るチップカートリッジによれば、平板状の基部71と、基部71上に設けられ、チップを保持する凹部72と、凹部72上に形成され、チップの着脱を容易にするための孔73と、凹部72に保持されたチップを基部71に固定するスライド部74と、基部71の中央部分に設けられ、スライド部74を支持する支持部75とを備え、スライド部74にチップカートリッジの外周方向へ外力が加えられることで、スライド部74がスライドして、必要な種類のチップを必要な数だけ容易に設置することができる。よって、試料を分析する際に使用するチップを必要最小限に抑えて、無駄な廃棄物を極力抑えることができる。
【0048】
さらに、本実施の形態2に係るチップカートリッジによれば、チップ81を固定するスライド部74の表面に導電材料からなる中継端子91を形成し、スライド部74によってチップ81を固定したときに、中継端子91を介して、分析装置20の分析部22の接続端子101がチップ81の電極膜82と接続する構成であることから、分析部22の接続端子101と電極膜82との接続をより確実することができる。その結果、分析装置による試料の成分分析の精度を向上させることができる。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本発明に係るチップカートリッジ及び該チップカートリッジに固定されたチップ上の試料を分析する分析装置は、血液等の生体試料の分析を、安価で、且つ簡便に行えるようにするものとして有用である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】本実施の形態1に係るチップカートリッジの斜視図である。
【図2】本実施の形態1に係るチップカートリッジに固定されたチップ上の試料を分析する分析装置の斜視図である。
【図3】本実施の形態1に係るチップカートリッジに固定されたチップ上の試料を分析する分析装置の斜視図である。
【図4】本実施の形態1に係るチップカートリッジの断面図である。
【図5】本実施の形態1に係るチップカートリッジとチップの断面図である。
【図6】本実施の形態1に係るチップカートリッジとチップの断面図である。
【図7】本実施の形態2に係るチップカートリッジの斜視図である。
【図8】本実施の形態2に係るチップカートリッジに固定されるチップの断面図である。
【図9】本実施の形態2に係るチップカートリッジとチップの断面図である。
【図10】本実施の形態2に係るチップカートリッジとチップの断面図である。
【符号の説明】
【0051】
10、70 チップカートリッジ
11、71 基部
12、72 凹部
13、73 孔
14、74 スライド部
15、75 支持部
16、76 反射板
20 分析装置
21 温度調整部
22 分析部
23 トレイ
24 通信部
25 電源スイッチ
26 回転部
27 制御部
28 電源部
51、81 チップ
82 電極膜
91 中継端子
101 接続端子
P チップカートリッジの中心

【特許請求の範囲】
【請求項1】
各々試料の流路を有する複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジにおいて、
平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、
前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、
前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部とを備え、
前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドする、
ことを特徴とするチップカートリッジ。
【請求項2】
請求項1に記載のチップカートリッジにおいて、
前記チップには、電極膜がパターニングされている、
ことを特徴とするチップカートリッジ。
【請求項3】
各々試料の流路を有し、かつ、電極膜がパターニングされた複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジにおいて、
平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、
前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、
前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部と、
前記スライド部の表面に形成される、導電材料からなる導電部とを備え、
前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドする、
ことを特徴とするチップカートリッジ。
【請求項4】
各々試料の流路を有し、かつ、電極膜がパターニングされた複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジを設置するトレイと、
前記トレイに設置されたチップカートリッジを回転させる回転部と、
前記チップ上の試料を分析する分析部とを備える分析装置において、
前記チップカートリッジは、
平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、
前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、
前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部とを備え、
前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドし、
前記分析部は、
前記チップの電極膜に電気的に接続する接続端子と、
前記チップ上で前記試料と前記電極膜が接触することで生じる電気信号を、前記接続端子を介して入力して検出する検出部とを備える、
ことを特徴とする分析装置。
【請求項5】
各々試料の流路を有し、かつ、電極膜がパターニングされた複数のチップを着脱可能に設置するチップカートリッジを設置するトレイと、
前記トレイに設置されたチップカートリッジを回転させる回転部と、
前記チップ上の試料を分析する分析部とを備える分析装置において、
前記チップカートリッジは、
平板状の基部上に設けられ、前記チップを保持する凹部と、
前記凹部に保持されたチップを前記基部に固定するスライド部と、
前記基部の中央部分に設けられ、前記スライド部を支持する支持部と、
前記スライド部の表面に形成される、導電材料からなる導電部とを備え、
前記スライド部は、前記チップカートリッジの外周方向へ外力が加えられると、前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドし、
前記導電部は、前記スライド部が前記支持部から前記チップカートリッジの外周方向へスライドさせられたときに、前記電極膜と接触し、
前記分析部は、
前記チップカートリッジの導電部に電気的に接続する接続端子と、
前記チップ上で前記試料と前記電極膜が接触することで生じる電気信号を、前記導電部及び前記接続端子を介して入力して検出する検出部とを備える、
ことを特徴とする分析装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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