説明

チップ搬送コンベヤ装置

【課題】 オイルミストの機外への拡散をなくし、切削液全体の使用量を抑えるチップ搬送コンベヤ装置を提供する。
【解決手段】 排出用コンベヤKから前記落下位置を含んだ搬送体の折り返しエリアまでは、筐体Zにより密閉されており、オイルミストは、機内に閉じ込められるため、機外に漏れることはなく、重力により、多数のスリットwを設けた板金をU字型に曲げたフィルタ部Fから液貯水槽Tに回収される。さらに、前記筐体Zは多角形であり、点検窓Gが設置されているので、切削屑xの除去作業中に異常が発生していないかどうか、必要に応じて前記点検窓Gから随時確認することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出される切削屑を回収するチップ搬送コンベヤ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
旋盤、フライス盤や研削盤などの工作機械にて、ワーク(被加工物)を加工する場合は、刃物とワークとの摩擦熱による熱ストレスや刃物とワークの変性(変質)を防止するため、クーラントと呼ばれる切削液を加工場所に供給し、熱冷却を図るとともに、チップと呼ばれる切削屑を切削液とともに排出して、濾過装置により切削屑を除去する方法が一般に行われている。
【0003】
切削屑には、ワークの加工代に相当する部分を加工する際に発生する比較的大きな切り屑と、ワークの表面仕上げを加工する際に発生する比較的小さな切粉の2種類の切削屑がある。
【0004】
旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出される切削屑は使用済み切削液とともに無端状をなす搬送体を所定の方向に周回可能に装設したチップ搬送コンベヤの回収位置において回収され、比較的大きな切り屑は切削屑を搬送する複数のプレート板にて所定距離離れた所定高さの落下位置まで搬送して排出され、比較的小さな切粉は切削屑を搬送する複数のプレート板に備わった網目(メッシュ)にて捕捉され、前記複数のプレート板が前記落下位置から折り返して回収位置へ至るまでの経路に設置された切削液貯水槽に配備されたドラム式フィルタ、ペーパー式フィルタ等の濾過装置にて濾過される。切削屑が除去された切削液は冷却機にて冷却され、再び工作機械の切削加工場所に供給される。使用済み切削液は、搬送の過程で重力により前記プレート板に備わったメッシュを通過することで切削屑から分離され、チップ搬送コンベヤの下部に設置された切削液貯水槽に回収される。使用済み切削液が切削液貯水槽に回収され易いように、前記落下位置は、前記回収位置に対して、所定距離離れた所定高さの位置となっている。前記落下位置のエリアは、比較的大きな切り屑を排出するため、外装部材(筐体)の一部が開放されている。
【0005】
このように、従来のチップ搬送コンベヤ装置は、無端状をなす搬送体が回収位置から所定距離離れた所定高さの落下位置まで、滑り台状のスロープを逆向きに上がることで、重力を利用して使用済み切削液を切削屑から分離して、チップ搬送コンベヤの下方に配置された貯水槽に回収し、筐体の一部が開放された排出エリアの前記落下位置にて比較的大きな切削屑を排出し、前記無端状をなす搬送体が前記落下位置から前記回収位置まで折り返して戻るまでの経路に設置された前記貯水槽に配備された濾過装置にて比較的小さな切粉を濾過する構成となっている。
【0006】
従来のチップ搬送コンベヤ装置としては、特許文献1のように、チップ搬送コンベヤの上方にて噴射ノズルにより切削液をコンベヤに噴射して、切削屑を前記搬送プレート板から分離し、一時貯水槽に回収し、一時貯水槽に配設されたスクリューコンベアにてチップ搬送コンベアの機外に排出する構成のものがある。また、特許文献2のように、前記搬送プレート板を一時貯水槽に進入させて、搬送プレートに付着している切削屑を一時貯水槽の液体中に分離するように構成されたチップ搬送コンベヤ装置が開示されている。
【特許文献1】特許第3487802号公報
【特許文献2】特許第3283862号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1記載のチップ搬送コンベヤ装置は、チップ搬送コンベヤの上方にて噴射ノズルにより切削液をコンベヤに噴射することにより、比較的大きな切り屑を前記搬送プレート板から分離することができる。しかしながら、噴射ノズルから切削液(切削オイル)を噴射することにより、大量の霧(オイルミスト)が発生し、筐体の一部が開放された前記排出エリアからチップ搬送コンベヤの機外に前記オイルミストが拡散する。オイルミストは、火災や爆発に至る危険性が高く、臭いや汚れも発生することから、作業環境が悪化し、チップ搬送コンベヤの機外に防爆カバー等を配置するなどの作業環境対策をとらなければならないという問題が生じる。また、機外に漏れたオイルミストは、回収できないため切削液の回収率が低下する。
【0008】
特許文献2記載のチップ搬送コンベヤ装置は、前記搬送プレート板を一時貯水槽に進入させて、搬送プレートに付着している切削屑を一時貯水槽の液体中に分離するように構成されている。しかしながら、切削屑が平坦な形状である場合、搬送過程で前記搬送プレート板に貼り付いてしまい、前記搬送プレート板を一時貯水槽に進入させて液架橋力を低下させたとしても、切削屑の分離には時間がかかる。また、平坦な形状の切削屑は切削液中に分離したとしても、一時貯水槽の底面に沈降するまでに時間がかかる。このように、特許文献2記載のチップ搬送コンベヤは、平坦な切削屑を前記搬送プレート板から分離するために時間がかかるため、チップ搬送コンベヤの動作タクトが長くなってしまい切削屑の回収生産性が低いという問題点を有する。さらに、一時貯水槽を設けることにより、余分な量の切削液を準備しなければならない。
【0009】
上記問題点に加えて、特許文献1および特許文献2記載のチップ搬送コンベヤのプレート板は、切削液を通過させるために複数のすきまを設けた構成となっており、無端状をなす搬送体が回収位置から所定距離離れた所定高さの落下位置まで、滑り台状のスロープを逆向きに上がる広範囲の経路で、比較的小さな切粉は、切削液とともに、前記プレート板に設けられた複数のすきまから重力にて落下するため、チップ搬送コンベヤの下方に配置された大きな容量の貯水槽に回収された後、清浄な切削液とするために、配備されたドラム式フィルタ、ペーパー式フィルタ等の濾過装置にて濾過しなければならない。ドラム式フィルタ、ペーパー式フィルタ等の濾過装置は、濾過面積が小さいため、濾過処理能力が小さく、その結果、使用済み切削液の濾過には時間がかかり、チップ搬送コンベヤ装置の処理能力に制限がかかるという問題を有する。
【0010】
そこで本発明の目的は、オイルミストの機外への拡散をなくし、切削液全体の使用量を抑えることが可能なチップ搬送コンベヤ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上述した目的を達成する本発明にかかるチップ搬送コンベヤ装置は、旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出される切削屑を切削液とともに回収するとともに、所定距離離れた落下位置へ切削屑を搬送して排出する搬送体を備えたチップ搬送コンベヤ装置において、搬送体の搬送路の外周に配される外装部材と、搬送体に付着した切削屑を除去する吹き付け手段と、吹き付け手段により除去した切削屑を排出する排出構造とを備え、上記外装部材は、吹き付け手段により吹き付けられられる箇所から上記排出構造までも含めて密閉状態に取り囲んでいることを特徴とする。
【0012】
本発明によれば、吹き付け手段により吹き付けられられる箇所と上記排出構造とを搬送体の搬送路の外周に配される外装部材により取り囲み密閉状態にしたことから、吹き付け手段により切削液や水等を吹き付けることによって生じるオイルミストが機外へ拡散するようなことがなくなる。また、搬送体の搬送路の外周に配される外装部材により密閉状態にしたことから、切削液を所定箇所に集めることができるようになる。
【0013】
本発明としては、前記吹き付け手段の位置よりも下方側に配置された排出用コンベヤと、集められた切削屑を排出用コンベヤにより排出させる排出路を備え、排出路は所定角度傾斜した立ち上がり構造であり、この排出路に切削屑を送り出して、その立ち上がり先端側の廃棄口から排出させることが好ましい。
【0014】
前記排出用コンベヤが、排出路が所定角度に傾斜して立ち上がっていることにより、切削屑に付着している切削液が、重力にて、前記排出用コンベヤの立ち上がり開始位置に集まり、液が除去された切削屑が徐々に斜め上方に押し上げられるので、外装部材による密閉性を維持しつつ切削屑の排出が行われるようになる。
【0015】
ここで、排出用コンベヤとは、例えばスクリュー式コンベヤあるいはコイル式コンベヤである。スクリュー式コンベヤは、回転軸に多数のスクリューが備わっており、切削屑を確実に送り出すとともに、多数のスクリューが搬送路を塞いでいるため、搬送路の密閉性を高くすることができる。また、コイル式コンベヤとは、コイル状の回転軸が備わっており、切削屑を送り出す速度がはやく、細長い糸状のアルミ屑を搬出するのに適している。
【0016】
本発明としては、前記搬送体には切削屑を捕捉するための金網が設けられ、前記吹き付け手段は、前記搬送体の表面に付着した切削屑を除去する第1のノズルと、前記搬送体の裏面に付着した切削屑を除去する第2のノズルと、前記搬送路に切削屑を送り出すための第3のノズルを備えることが好ましい。
【0017】
ここで、切削屑を捕捉するための金網(メッシュ)とは、例えばステンレスワイヤ等を織り込んだ金網である。上記メッシュが切削屑を搬送する搬送体に設けられており、ワークの加工代に相当する部分を加工する際に発生する比較的大きな切り屑から、ワークの表面仕上げを加工する際に発生する比較的小さな切粉までのあらゆる切削屑を確実に捕捉するため、工作機械から排出される切削屑を切削液とともに回収位置において回収し、所定距離離れた落下位置へ切削屑を搬送して排出する経路にて、清浄な切削液のみが搬送体に設けられたメッシュから落下し、前記回収位置から落下位置までの経路の下方に配置する貯水槽に回収される。
【0018】
また、吹き付け手段の第1のノズルにて、前記落下位置から折り返して回収位置へ至るまでの搬送体の下側と対応している前記搬送体の切削屑搬送面に切削液を噴射して搬送体に付着した切削屑を除去し、吹き付け手段第2のノズルにて、搬送体の裏面に切削液を噴射して搬送体に付着した切削屑を除去することで、搬送体から確実に切削屑を除去する。
【0019】
除去された切削屑は噴射された切削液とともに、吹き付け手段の下方に配置した排出用コンベヤに集められ、排出用コンベヤにて形成される排出路を通じて機外まで送り出される。
【0020】
搬送体により搬送されてスプロケットの位置で下方に落下させる落下位置から集められた切削屑を排出する排出用コンベヤを含んだ折り返しエリアまでは、外装部材により密閉されており、噴射ノズルから切削液(切削オイル)を噴射することにより発生したオイルミストは、機内に閉じ込められる。排出用コンベヤの出口は、外装部材にて密閉されていないが、排出用コンベヤがスクリュー式コンベヤの場合は、スクリューの外周と外装部材とのすきまはほとんどなく、また、多数のスクリューがオイルミストの経路を阻んでいることから、オイルミストが機外に漏れることはない。排出用コンベヤがコイル式コンベヤの場合も、コイルの中心を除き、多数のコイルがオイルミストの経路を阻んでいることから、オイルミストが機外に漏れることは極めて少ない。
【0021】
本発明としては、前記排出路に切削屑を送り出すための第3のノズルを備えることが好ましい。
【0022】
前記第3のノズルにより切削液等を噴射することで、切削屑は排出用コンベヤにすみやかに送り出される。
【0023】
本発明としては、多数のスリットを設けた板金をスリットの短辺方向に略U字型に曲げたフィルタを前記排出用コンベヤの下方に設けることが好ましい。
【0024】
多数のスリットを設けた板金をスリットの短辺方向にU字型に曲げたフィルタを排出用コンベヤの下方に設けることで、前記スリットは、切削屑のサイズよりも小さく設定されており、切削屑はスリットを通ることができず、排出用コンベヤで確実に切削屑廃棄位置まで搬送され、切削屑に付着した切削液および前記噴射ノズルから噴射された切削液は、重力により、前記多数のスリットを通って回収される。また、前記スリットは、板金を略U字型に曲げているため、略U字型板金の外側のスリット幅は略U字型板金の内側のスリット幅よりも大きくなり、稀に、前記U字型板金の内側のスリット幅と同じサイズの切削屑が発生したとしても、切削屑が前記スリットに引っ掛かるので、目詰まりすることがない。なお、前記多数のスリットの代わりに、多数の細孔を設けた板金をU字型に曲げてフィルタを形成しても、同様の作用が得られるが、細孔よりもスリットのほうが切削液の濾過率が高い。
【0025】
本発明としては、前記フィルタの下方に前記フィルタのスリット幅よりも細かい網目のメッシュカゴを設けることが好ましい。
【0026】
前記フィルタの下方に前記フィルタのスリット幅よりも細かい網目のメッシュカゴを設けることで、稀に、前記U字型板金の内側のスリット幅と同じか小さな切粉が発生したとしても、前記メッシュカゴにて捕捉することができるので、微小な切粉であっても切削液貯水槽に混入することはない。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、吹き付け手段と吹き付け手段により吹き付けられられる箇所と排出構造とを外装部材により取り囲み密閉状態にしたことから、オイルミストは、機内に閉じ込められ、機外に漏れることはなくなる。したがって、オイルミストによる火災や爆発が生じる危険を防止できるととも、臭いや汚れの発生も抑制でき、作業環境が悪化することを防止することが可能になる。また、外装部材により取り囲み密閉状態にしたことから、切削液を所定箇所に集めることができ、切削液全体の使用量を抑えることが可能になる.
【発明を実施するための最良の形態】
【0028】
以下、本発明を適用した具体的な実施の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0029】
(第1の実施の形態)
本発明の一実施の形態のチップ搬送コンベヤ装置Cを図1から図4に示す。
図1は、このチップ搬送コンベヤ装置C全体を示す斜視図である。図2は、このチップ搬送コンベヤ装置C全体のA―A断面図である。図3は、このチップ搬送コンベヤ装置Cの切削屑排出機構のA−A断面図である。図4は、このチップ搬送コンベヤ装置C全体のB―B断面図である。
【0030】
このチップ搬送コンベヤ装置Cは、図1から図4に示すように、旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械Mから排出される切削屑xを使用済み切削液L2とともに回収するための回収位置11と、切削液L2を濾過しつつ切削屑xを所定距離離れた落下位置12へ搬送して排出するための無端状をなす搬送体Bと、切削屑xを搬送体Bから分離して排出する落下位置12と、切削屑xを搬送体Bから分離するための切削液L1を噴射するノズルn1,n2と、スロープs2に飛散付着した切削屑xをスクリューコンベヤKに集めるため切削液L1を噴射するノズルn3と、切削屑xを機外に排出するためのスクリューコンベヤKと、搬送体Bを所定の方向に周回するためのスプロケットr1,r2,r3と、切削屑xが取り除かれた清浄な切削液L1を貯水する貯水槽Tとからなる。また、切削屑xを搬送する複数のプレート板Pには切削屑xを捕捉するための多数の金網Aが設けられている(図8)。
【0031】
このチップ搬送コンベヤ装置Cは、搬送体Bの搬送路の外周、および、搬送体Bに付着した切削屑xを除去するノズルn1,n2と、スロープs2に飛散付着した切削屑xをスクリューコンベヤKに集めるためのノズルn3と、スクリューコンベヤKによる機外への切削屑xの排出路13までを含めて上記外装部材Zにより取り囲み密閉状態としている(図2)。すなわち、外装部材Zは、搬送体Bの外周を覆う部材であり、排出用コンベヤKを含んだ折り返しエリアEまでを密閉状態で覆うことにより、搬送体Bのみならず吹き付け手段n1,n2と排出用コンベヤKによる排出路13も外装部材Zにより密閉状態にするものであり、排出路13も外装部材Zで形成されている。搬送体Bの搬送路kとしては、傾斜した立ち上がりから更に水平状態になる等種々のものがあるが、本発明では、搬送体Bのみならず切削屑の排出路13までを広く密閉状態にする。
【0032】
ノズルn1,n2,n3により切削液L1を吹き付けられられる箇所と上記排出路13とを搬送体Bの搬送路の外周に配される外装部材Zにより取り囲み密閉状態にしたことから、ノズルn1,n2,n3により切削液L1を吹き付けることによって生じるオイルミストが機外へ拡散するようなことがなくなる。また、搬送体Bの搬送路の外周に配される外装部材Zにより密閉状態にしたことから、切削液L1,L2を所定箇所に集めることができる。
【0033】
ワークの加工により発生した切削屑xは使用済み切削液L2とともに、工作機械Mの廃棄口aからチップ搬送コンベヤ装置Cの回収位置11に排出される。排出された切削屑xは、無端状をなす搬送体Bを構成する複数のプレート板Pに設けられた多数の金網Aに捕捉され、回収位置11から所定距離離れた落下位置12まで所定角度傾斜した斜めの立ち上げ姿勢をとっている。一方、排出された使用済み切削液L2は、回収位置11から落下位置12までの経路で、重力により、金網Aを通過し、チップ搬送コンベヤ装置Cの下方に配置された貯水槽Tに回収される。また、複数のプレート板Pが前記傾斜を立ち上がることで切削屑の搬送路を確保し、金網Aによる切削屑xの捕捉面積を大きくするとともに、金網Aにより切削液L2を濾過するための時間を設けている。
【0034】
搬送体Bは、図8に示すように、搬送物を搬送する複数のプレート板Pと、プレート板Pに取り付けられる左右一対のサイドプレートSa,Saと、このサイドプレートSa,Saを介して上記プレート板に取り付ける左右一対のチェーンTa,Taとを備えている。
【0035】
ここで、金網Aはステンレスワイヤを平織りにして形成している。例えば、30μmのステンレスワイヤを200メッシュ、開口率60%に形成すると、金網Aの開口は76μmとなり、一辺が76μm以上のサイズの切削屑xは、金網Aに捕捉され、使用済み切削液L2のみが重力により金網Aを通過し、チップ搬送コンベヤ装置Cの下方に配置された貯水槽Tに回収されることとなる。この金網Aのメッシュサイズを適宜調整することにより、工作機械Mから排出されるあらゆる切削屑xをすべて金網Aにて捕捉することが可能である。
【0036】
チップ搬送コンベア装置Cの切削屑排出機構をA−A断面図にて図3に示す。第1のノズルn1は、落下位置12から折り返して回収位置11へ至るまでの搬送体Bの下側と対応しているプレート板Pの切削屑搬送面に、清浄な切削液L1を噴射してプレート板Pに付着した切削屑xを除去するように、その噴射口がプレート板Pの表面を向くように落下位置12から若干離れた搬送体Bの外側の位置に配置されている。第2のノズルn2は、プレート板Pの裏面に、清浄な切削液L1を噴射してプレート板Pに付着した切削屑を除去するように、その噴射口がプレート板Pの裏面を向くように落下位置12から若干離れた搬送体Bの内側の位置に配置されている。上記第1のノズルと第2のノズルによりプレート板Pから分離した切削屑xは、切削屑xの受口として設けられたスロープs1,s2により、落下位置12の下方に配置されたスクリューコンベヤKに集められる。第3のノズルn3は、清浄な切削液L1を噴射して、スロープs2に飛散付着した切削屑xを積極的にスクリューコンベヤKに集めるように、その噴射口がスロープs2を向くように落下位置12から若干離れた搬送体Bの外側の位置に配置されている。スクリューコンベヤKの下方には、多数のスリットwを設けた板金をU字型に曲げたフィルタFが設置されている。スロープs1は、切削屑xをスクリューコンベヤKに導くとともに、スクリューコンベヤKがその回転時にフィルタFに接触した反動で持ち上がらないように、スクリューコンベヤKを押さえている。コンベヤモータmは、落下位置12エリアの外側に配置され、ギヤボックスGBを介して、スプロケットr2を駆動することで、無端状をなす搬送体Bを図2では時計回りに周回させる。スプロケットr2とスクリューコンベヤKは、チェーンベルトVで駆動伝達可能に繋がっており、スプロケットr2の回転に同期してスクリューコンベヤKが回転する。
【0037】
吹き付け手段である第1のノズルn1は、落下位置12から折り返して回収位置11へ至るまでの搬送体Bの下側と対応しているプレート板Pの切削屑搬送面に清浄な切削液L1を噴射することで、切削液L1の噴射圧力により、プレート板Pの金網A以外の枠z部分に付着した切削屑xをプレート板Pから除去する。第2のノズルn2は、プレート板Pの裏面に清浄な切削液L1を噴射することで、切削液L1の噴射圧力により、プレート板Pの金網Aに付着した切削屑xを除去する。第3のノズルn3は、清浄な切削液L1を、プレート板Pと対向した位置に配置された切削液L1が飛散し難いスロープs2に噴射することで、切削液L1をスロープs2に積極的に流してやることで、切削屑xが切削液L2とともにスロープs2から下に流す。
【0038】
ここで、ノズルn1,n2,n3から噴射する清浄な切削液L1は、使用済み切削液L2がプレート板Pの金網Aを通過することで、切削屑xが除去されて清浄となった切削液L1を貯水槽TからポンプPUMにて汲み上げて使用しても良いし、新品の切削液Lを使用しても良い。
【0039】
切削屑xの受口として設けられたスロープs1,s2は、スロープs1,s2の下部に配置されたスクリューコンベアKに向かう傾斜が形成されており、切削屑xは重力により、スクリューコンベヤKに集められる。
【0040】
フィルタFは、多数のスリットwを設けた板金を略U字型に曲げ、スクリューコンベアKを受ける形でスクリューコンベヤKの下方に配置されている。例えば、レーザー加工にて、幅75μm、長さ5mmのスリットが多数、板金に形成されている。このスリットwにより、切削液L2は、重力にて、スリットwを通過し、下に落下する。一方、切削屑xはスリットwを通過することができず、スクリューコンベヤKにて回収される。このスリットwは、スリットの短辺方向に板金を略U字型に曲げることにより、スリット幅の外側は延びて、スリット幅の内側は縮む。このため、略U字型板金の外側のスリット幅は略U字型板金の内側のスリット幅よりも大きくなり、稀に、前記U字型板金の内側のスリット幅と同じサイズの切削屑が発生したとしても、切削屑が前記スリットに引っ掛かって、目詰まりすることがない。
【0041】
スクリューコンベヤKから落下位置12を含んだ搬送体Bの折り返しエリアまでは、側面が六角形状の外装部材Zにより密閉されており、側面が六角形状の外装部材Zの一側面には、平板の点検窓Gがはめ込んである。
【0042】
外装部材の上記落下位置12は、六角型の筐体構造になっている。この多角形状の一角部に排出用コンベヤKを配置することにより、切削屑を集め易くでき、また、多角形の一側面に点検窓Gを設置することで、落下位置12から折り返して回収位置へ至るまでの搬送体Bの下側と対応している前記プレート板Pに付着した切削屑xの除去作業中に異常が発生していないかどうか、必要に応じ随時確認することができる。点検窓Gは、ガラスや透明プラスチックで出来ている。切削液Lに対して変質が起こり難く、切削屑xに対してすり傷が付き難い材質で点検窓Gを作製することが好ましい。なお、点検窓Gに切削液Lを拭き取るワイパーを取り付けることも可能である。
【0043】
スクリューコンベヤKは、図4に示すように、スロープs1,s2の付いているエリアまでは、水平位置で配置され、筐体外部側面から約45度立ち上がっている。また、スクリューコンベヤKの外周(排出路13)は、板金を筒状に形成したスクリューコンベヤガイドhで覆われている。
【0044】
スクリューコンベヤKを、搬送路から所定角度傾斜した立ち上がり構造とすることで、切削屑xは、スクリューにより上へ上へと押し上げられ、スクリューコンベヤKの廃棄口eから廃棄箱dへと切削液L2を切らした状態で廃棄される。また、切削屑xに付着している切削液L2は、重力により下へ下へと移動し、スクリューコンベヤKの立ち上がり開始位置からスクリューコンベアKの下方に設置されたフィルタFを通過して、貯水槽Tに回収される。なお、スクリューコンベアKの立ち上がり方向は、複数通りあるが、いずれの方向に立ち上がっていても同様の効果が得られる。
【0045】
このチップ搬送コンベヤ装置Cは、スクリューコンベヤKから落下位置12を含んだ搬送体Bの折り返しエリアEまでは、外装部材Zにより密閉されており、噴射ノズルn1,n2,n3から切削液L1を噴射することにより発生したオイルミストは、機内に閉じ込められる。唯一、排出用コンベヤ(スクリューコンベヤ)Kによる排出路の廃棄口eは、外装部材Zにて密閉されていないが、切削液が除去された切削屑が圧縮状態で集められ、廃棄口eを塞ぎながら押し出すことと、排出用コンベヤ(スクリューコンベヤ)Kのスクリューの外周hと外装部材Zのすきまは極めて小さく、多数のスクリューがオイルミストの経路を阻んでいることから、オイルミストは機外に漏れることはない。
【0046】
上述のように、本発明のチップ搬送コンベヤ装置Cは、プレート板Pに多数の金網Aを設置することで、回収位置11から落下位置12への経路にて、あらゆるサイズの切削屑xを確実に捕捉し、落下位置12から回収位置11への折り返し経路にて、複数のノズルn1,n2,n3とスロープs1,s2にて、プレート板Pにて捕捉した切削屑xをスクリューコンベヤKに集め、スクリューコンベヤKが搬送路から所定角度傾斜した立ち上がり構造とすることで、切削屑xを上へ上へと押し上げ、切削液L2を下へ下へと移動させ、貯水槽Tに回収する。スクリューコンベヤKから落下位置12を含んだ搬送体Bの折り返しエリアまでは、外装部材ZとスクリューコンベヤKのスクリューにより密閉されており、噴射ノズルn1,n2,n3から切削液Lを噴射することにより発生したオイルミストは、機内に閉じ込められる。このように、本発明は、切削屑xと使用済み切削液L2を搬送体Bによる回収・搬送の過程で、完全に分離することで、より早い段階で清浄な切削液L1を濾過することができる。なお、このチップ搬送コンベア装置Cでは、排出用コンベヤとして、はスクリューコンベアKを使用しているが、コイルコンベヤでも同様の効果が得られる。
【0047】
(第2の実施の形態)
本発明の他の実施の形態のチップ搬送コンベヤを、図5から図7に示す。
図5は、このチップ搬送コンベヤ装置C2の切削屑排出機構のA−A断面図である。図6は、このチップ搬送コンベヤ装置C2の切削屑排出機構の透視図である。図7は、このチップ搬送コンベヤ装置C2全体のA―A断面図である。
【0048】
フィルタFは、図5,図6に示すように、多数のスリットwを設けた板金を略U字型に曲げ、スクリューコンベアKを受ける形でスクリューコンベヤKの下方に配置されている。例えば、レーザー加工にて、幅75μm、長さ5mmのスリットが多数、板金に形成されている。このフィルタFの下方には、フィルタFのスリット幅よりも網目の細かいメッシュカゴPXが設置されている。メッシュカゴPXは、例えば、30μmのステンレスワイヤを220メッシュ、開口率60%に形成すると、メッシュの開口は69μmとなり、一片の長さ75μm以下の切り屑が発生し、フィルタFのスリットwを通過したとしても、その切り屑のサイズが69μm以上であれば、メッシュカゴPXで捕捉され、切削液LのみがメッシュカゴPXを通過する。
【0049】
さらに、メッシュカゴPXの下方には、樋qtとオリフィスOが設置されている。樋qtを設置することで、メッシュカゴPXを通過する程度の極めて小さい粉状の切粉が発生しても桶qtの底に堆積するため、定期的に桶qtを清掃することで、前記粉状の切粉が貯水槽Tに混ざることを防止できる。また、オリフィスOを設置することで、ノズルn1,n2,n3から噴射する切削液L2の量が一時的に増加するような場合においても貯水槽Tに回収される切削液Lの量を一定に出来るため、濾過装置の濾過能力を一定に保つことができる。
【0050】
このチップ搬送コンベヤ装置C2全体のA―A断面図を図7に示す。貯水槽Tには、スプロケットr3に連結して回転するドラムフィルタDFが配置されている。ドラムフィルタDFは、念のため配置したものであり、稀にプレート板Pの金網Aを通過する程度の極めて小さい粉状の切粉が発生したとしても完全に除去することが出来る。また、チップ搬送コンベヤC2は、移動自在となるように、4つの自在キャスタca1,ca2,ca3,ca4が配備されている。
【0051】
ワークの切り替え等にともない、工作機械Mのレイアウト変更をする際、チップ搬送コンベヤC2には、4つの自在キャスタca1,ca2,ca3,ca4が配備されているため、チップ搬送コンベヤ装置C2の移動が容易となる。
【0052】
以上、本発明は、上述した実施の形態に限定されるものではない。例えば、定期的なメンテナンスを容易にするため、スクリューコンベヤKを水平部と立ち上げ部で着脱可能にしても良い。また、切削液Lに浮く切粉を分離する(除去する)ため、サイクロンフィルタを切削屑xと切削液L3の搬送路に設置することも可能である。また、切削液Lは、切削オイルとして説明したが、水溶性切削液であっても、同様の効果が得られる。このように、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更が可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の一実施の形態として示すチップ搬送コンベヤ装置全体を示す斜視図である。
【図2】本発明の一実施の形態として示すチップ搬送コンベヤ装置全体のA−A断面図を示す。
【図3】本発明の一実施の形態として示すチップ搬送コンベヤ装置の切削屑排出機構のA−A断面図を示す。
【図4】本発明の一実施の形態として示すチップ搬送コンベヤ装置全体のB―B断面図である。
【図5】本発明の他の実施の形態として示すチップ搬送コンベヤ装置全体のA−A断面図を示す。
【図6】本発明の他の実施の形態として示すチップ搬送コンベヤ装置の切削屑排出機構のA−A断面図を示す。
【図7】本発明の他の実施の形態として示すチップ搬送コンベヤ装置全体のB―B断面図である。
【図8】本発明の一実施の形態として示すコンベヤ搬送体の複数のプレート板を連結した状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0054】
M 工作機械
a 廃棄口
x 切削屑
L,L1,L2 切削液
C,C1,C2 チップ搬送コンベヤ装置
B 搬送体
T 貯水槽
P プレート板
A 金網
r1,r2,r3 スプロケット
11 回収位置
12 落下位置
13 排出路
n1,n2,n3 吹き付け手段(ノズル)
s1,s2 スロープ
m コンベヤモータ
K 排出用コンベヤ
h スクリューコンベアガイド
w スリット
F フィルタ
PX メッシュカゴ
Z 外装部材
G 点検窓
e 廃棄口
d 廃棄箱


【特許請求の範囲】
【請求項1】
旋盤、フライス盤や研削盤等の工作機械から排出される切削屑を切削液とともに回収するとともに、所定距離離れた落下位置へ切削屑を搬送して排出する搬送体を備えたチップ搬送コンベヤ装置において、
搬送体の搬送路の外周に配される外装部材と、搬送体に付着した切削屑を除去する吹き付け手段と、吹き付け手段により除去した切削屑を排出する排出構造とを備え、上記外装部材は、吹き付け手段により吹き付けられられる箇所から上記排出構造までも含めて密閉状態に取り囲んでいることを特徴とするチップ搬送コンベヤ装置。
【請求項2】
前記吹き付け手段の位置よりも下方側に配置された排出用コンベヤと、集められた切削屑を排出用コンベヤにより排出させる排出路を備え、排出路は所定角度傾斜した立ち上がり構造であり、この排出路に切削屑を送り出して、その立ち上がり先端側の廃棄口から排出させることを特徴とする請求項1記載のチップ搬送コンベヤ装置。
【請求項3】
前記搬送体に、切削屑を捕捉するための金網が設けられ、前記吹き付け手段は、前記搬送体の表面に付着した切削屑を除去する第1のノズルと、前記搬送体の裏面に付着した切削屑を除去する第2のノズルを備えることを特徴とする請求項1又は2記載のチップ搬送コンベヤ装置。
【請求項4】
前記排出路に切削屑を送り出すための第3のノズルを備えることを特徴とする請求項3記載のチップ搬送コンベヤ装置。
【請求項5】
前記排出用コンベヤの下方に、多数のスリットを設けた板金をスリットの短辺方向に略U字型に曲げたフィルタが設けられていることを特徴とする請求項2ないし請求項4のいずれか1項記載のチップ搬送コンベヤ装置。
【請求項6】
前記フィルタ部の下方に前記フィルタのスリット幅よりも細かい網目のメッシュカゴを設けることを特徴とする請求項5記載のチップ搬送コンベヤ装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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