説明

チップ部品のリワーク装置及びこれに用いるセットピン

【課題】チップ部品を基板から取り外す操作、基板にチップ部品を搭載する操作を確実にかつ効率的に行うことができるリワーク装置を提供する。
【解決手段】基板の支持機構80、82a〜82dと、ヘッド部10とを備え、ヘッド部10は、一対のセットピンと、セットピンを、基板の上面にピン先が当接する下位置と、基板の上面から上方にピン先が離間する上位置との間を昇降させるセットピンの昇降機構20と、昇降機構20に連動して設けられ、セットピンを、チップ部品の側面にピン先が当接してチップ部品を挟圧する閉じ位置と、ピン先をチップ部品の側面位置に位置合わせする中間位置と、ピン先をチップ部品の側面位置よりも外側に開いた開き位置との間で開閉させるセットピンの開閉機構30と、チップ部品と基板とを加熱する加熱機構12とを備えるリワーク装置。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板に搭載されたチップ部品を基板から取り外して交換搭載するチップ部品のリワーク装置及びこれに用いるセットピンに関する。
【背景技術】
【0002】
各種電子機器には、抵抗、コンデンサ、ダイオード、IC等のチップ部品(回路部品)を基板にはんだ付けして搭載した製品が使用されている。これらの基板の製造に際しては、所定の配線パターンが形成された基板に、印刷法によってはんだを印刷し、チップ実装装置を用いてチップ部品を配置し、はんだリフロー工程によりチップ部品をはんだ付けして組み立てている。
【0003】
こうして組み立てられた基板では、組み立て後に、チップ部品の不良が判明して交換する場合や、設計上、別の抵抗値等のチップ部品に交換する必要が生じる場合があり、このためにチップ部品の交換(リワーク、リペア)を行う装置が提案されている。
従来のリワーク装置は、交換しようとする回路部品に熱風をあてて取り外ししたり、はんだごてにより加熱して回路部品を取り外すという方法であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−164404号公報
【特許文献2】特開2009−94334号公報
【特許文献3】特開2008−210916号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、基板に搭載されるチップ抵抗あるいはチップコンデンサといったチップ部品は、近年、ますます小型化し、縦横の寸法が1mm以下といった微小なチップ部品となっているため、取り外ししようとするチップ部品(回路部品)を加熱する際に、交換対象ではないチップ部品までも加熱してしまい、場合によっては交換対象でない部品を損傷してしまうという問題や、対象とするチップ部品を的確に取り外しする操作が難しく、作業の効率化が図れないという問題があった。
【0006】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされてものであり、チップ部品のような微小な部品を基板から取り外して交換するといった操作を確実にかつ容易に行うことを可能とし、これによってチップ部品の取り外し、交換作業を効率化することを可能にするチップ部品のリワーク装置及びこれに好適に用いることができるセットピンを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明は次の構成を備える。
すなわち、チップ部品のリワーク装置として、基板を水平に支持して基板を一方向に移動可能に支持する基板の支持機構と、前記基板の上方において、基板の移動方向に直交する方向に移動可能に支持されるヘッド部とを備え、前記ヘッド部は、チップ部品を側方から挟圧して支持する一対のセットピンと、前記セットピンを、前記基板の上面にピン先が当接する下位置と、基板の上面から上方にピン先が離間する上位置との間を昇降させるセットピンの昇降機構と、前記昇降機構に連動して設けられ、前記セットピンを、チップ部品の側面にピン先が当接してチップ部品を挟圧する閉じ位置と、ピン先をチップ部品の側面位置に位置合わせする中間位置と、ピン先をチップ部品の側面位置よりも外側に開いた開き位置との間で開閉させるセットピンの開閉機構と、前記チップ部品と基板とを加熱する加熱機構と、を備えることを特徴とする。
なお、本発明のリワーク装置において取り扱い対象とするチップ部品は、抵抗、コンデンサに限らず、ダイオード、IC等の回路部品を含むものである。
【0008】
また、前記セットピンは、ピン本体の端縁を直線状とし、該端縁の中央位置からピン先を延出させ、該ピン先を前記ピン本体の面方向に対して先端側が低位となるように折曲させた形状に設けられたことにより、微小なチップ部品を基板から取り外したり、基板の所定位置にチップ部品を搭載する操作を確実に行うことができる。
また、前記セットピンは、ピン先の両側に前記加熱機構による熱輻射を遮蔽する遮蔽部を設けたことにより、対象とするチップ部品以外の基板上に搭載されている部品を不要に加熱することを防止することができる。
【0009】
また、前記加熱機構は、熱源となる光源と、前記光源から放射される光を前記基板上に集光する集光部とを備えることにより、基板に搭載された、あるいは基板に搭載しようとするチップ部品の近傍を効果的に加熱することができ、チップ部品のリワーク作業を確実に行うことが可能となる。
また、前記セットピンの上方に配され、前記セットピンと前記基板上におけるチップ部品の搭載位置を視認するための視認装置を備えることにより、基板上のチップ部品の搭載位置にセットピンを正確に位置合わせすることができ、チップ部品の取り外し、チップ部品を搭載する操作を確実に行うことができる。
【0010】
また、前記昇降機構は、面方向を鉛直方向として前記ヘッド部に取り付けられた側板に、上下動可能に取り付けられた昇降板と、前記昇降板にカムを介して連繋され、回動操作により前記カムを介して、前記昇降板を昇降させる昇降用のハンドルと、を備えることにより昇降用のハンドルを回動させる操作のみによってセットピンを昇降させることができる。
また、前記開閉機構は、前記昇降板に上下動自在に装着され、下側が幅狭となる台形状の正面形状に形成されたカム板と、前記セットピンを装着する取付ブロックと、前記カム板の側面に形成されたカム面に当接するローラが設けられた一対のピン支持部とを備え、前記一対のピン支持部は、対向する水平方向に移動可能に、前記昇降板に支持されるとともに、前記ピン支持部の端部間に、前記ローラを前記カム面に常時押接する向きに付勢するバネが係止され、回動操作により前記カム板を前記昇降板に対して昇降操作し、前記セットピンを開閉させる開閉用のハンドルが、前記カム板に連繋して設けられていることにより、開閉用のハンドルの回動操作によってセットピンを開閉操作することを可能にするとともに、チップ部品をセットピンによって挟圧して支持する操作を確実に行うことができる。
また、前記取付ブロックの前記セットピンを取り付ける先端部は、先端側が低位となる傾斜形状に形成され、前記先端部に前記セットピンが脱着可能に設けられていることによって、セットピンを交換して取り付ける操作が容易となり、先端側が低位となるようにセットピンが装着されることによって、セットピンによってチップ部品をピックアップする操作が確実になされる。
【0011】
また、前記基板の支持機構は、ベース板上に一方向に移動可能に支持された基板ベース板と、該基板ベース板上に、平面形状が矩形の枠体状に取り付けられた基板枠と、該基板枠の上端面に取り付けられたスライドガイドと、該スライドガイドに移動自在に装着され、前記基板を厚さ方向にクランプして支持するクランパとを備え、前記基板ベース板を前記ベース板上において移動させる機構として、前記ベース板に取り付けられた回転ハンドルと、該回転ハンドルの回動操作にともなって前記基板ベース板を進退移動させるタイミングベルトとを備えることにより、基板のサイズが異なる場合であってもクランパによって確実に基板を支持することができ、回転ハンドルを回動することにより、セットピンの位置に合わせて基板を移動させる(Y方向)操作を容易に行うことができる。
また、前記ヘッド部は、ベース板上に起立して設けられた支持柱間に架設された支持板に移動自在に支持され、前記ヘッド部を前記支持板上において移動させる機構として、前記支持板に取り付けられた回転ハンドルと、該回転ハンドルの回動操作にともなって前記ヘッド部を進退移動させるタイミングベルトとを備えることにより、回転ハンドルを回動する操作によってヘッド部を移動(X方向)させることができる。
また、前記基板の支持機構には、基板の移動をロックするロック機構が設けられ、前記ヘッド部には、ヘッド部の移動をロックするロック機構が設けられ、前記セットピンの昇降機構には、セットピンの高さ位置を基板の上面に位置合わせする調節機構が設けられていることにより、セットピンを基板のチップ部品の搭載位置に確実に位置決めして所要の操作を行うことができる。
【0012】
また、前記基板の支持機構に基板を支持した状態において基板を下面側から加熱するためのボトムヒータを備え、前記ボトムヒータは、上面が開口する箱体状に形成された筐体の上部に、前記基板に対向する配置にヒータが配されたものであることにより、加熱機構による加熱操作に加えてボトムヒータにより基板を加熱することによってチップ部品の取り外し、搭載操作をさらに効率的に行うことができる。
【0013】
また、前記基板に搭載するチップ部品を供給するためのチップトレイを備え、該チップトレイは、前記ヘッドの移動経路上の、前記基板の支持機構とは干渉しない側方に配置され、前記チップトレイには、前記セットピンの移動位置に位置合わせしてチップ部品を支持するチップ部品のセット部が設けられていることにより、チップトレイからセットピンによりチップ部品をピックアップして基板に搭載する操作が容易に行える。
また、前記セット部は、前記チップ部品を収納する収納孔が形成されたネスト板と、該ネスト板の下に重ねて配置され、前記ネスト板に収納されたチップ部品にはんだを塗布する領域のみを開口させたマスク板とを備え、前記ネスト板には、前記収納孔に連通して、前記セットピンの移動位置においてピン先を挿入させる挿入孔が、前記収納孔に交差する配置に設けられていることにより、セットピンによりセット部からチップ部品をピックアップする操作を容易にかつ確実に行うことができる。
【0014】
また、基板に搭載されたチップ部品を基板から取り外し、あるいは基板上にチップ部品を搭載する際に、チップ部品を側方から挟圧して支持するためのセットピンであって、ピン本体の端縁を直線状とし、該端縁の中央位置からピン先を延出させ、該ピン先を前記ピン本体の面方向に対して先端側が低位となるように折曲させた形状としたものが好適に使用できる。
また、前記ピン先の両側の前記端縁部分に切欠を設け、該切欠の両側に遮蔽部を設けたことにより、加熱機構を使用してチップ部品と基板とを加熱する際に、処理対象とするチップ部品の近傍のみを加熱して、処理対象としないチップ部品や基板部分を加熱しないようにすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るチップ部品のリワーク装置によれば、チップ部品を基板から取り外し、また基板に搭載する操作を確実に、かつ効率的に行うことができる。また、本発明に係るセットピンは、チップ部品の取り外し、チップ部品の搭載に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】リワーク装置の全体構成を示す斜視図である。
【図2】リワーク装置の側面図である。
【図3】リワーク装置の平面図である。
【図4】リワーク装置の正面図である。
【図5】リワーク装置の背面図である。
【図6】ヘッド部の側面図である。
【図7】側板の背面方向から見た昇降機構、開閉機構の背面図である。
【図8】ピン支持部にセットピンを取り付けた状態の斜視図である。
【図9】チップトレイの斜視図(a)、ネスト板(b)、メタルマスク(c)、はんだを塗布する状態(c)を示す。
【図10】ボトムヒータの斜視図である。
【図11】カム板の作用を示す説明図である。
【図12】セットピンの平面図(a)、チップ部品をピックアップする状態の説明図(b)、(c)である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
(リワーク装置の全体構成)
図1は、リワーク装置の一実施形態について、その全体構成を示す斜視図である。本実施形態のリワーク装置は、チップ部品をつまんで取り外し操作や搭載操作を行う一対のセットピンを備えるヘッド部10と、セットピンのX方向(基板の幅方向)の位置を調節する機構と、セットピンのY方向(基板の長手方向)の位置を調節する機構と、セットピンの高さ方向(Z方向)の位置を調節する機構とを備える。
【0018】
ヘッド部10は、チップ部品を操作するセットピンの他に、基板からチップ部品を取り外す際、また基板にチップ部品を搭載する際に、はんだを溶融するための加熱機構12、セットピンを基板上のチップ部品の位置に位置合わせするため、基板上におけるセットピンの位置を確認するための視認装置としてのカメラ14等を備える。加熱機構12、カメラ14等はヘッド部10の側板11に支持されている。
【0019】
図1に示すように、ベース板50の幅方向の対向する縁部上に一対の支持柱52a、52bが立設され、支持柱52a、52bの上部間が支持板54によって水平に連結される。支持板54上には、ヘッド部10の移動方向をX方向に規制するスライドガイド56が設けられ、スライドガイド56に摺動自在に係合するスライド体にヘッド部10が取り付けられている。
【0020】
スライドガイド56の上方には、スライドガイド56と平行にガイドロッド58が支持され、ガイドロッド58にヘッド部10の側板11が連結部11aを介して摺動自在に係合する。ガイドロッド58には、ヘッド部10のX方向の移動位置を記憶するためのストッパ60a、60bが摺動可能に装着される。ストッパ60a、60bはヘッド部10を位置決めし、連結部11aの側面に当接させてその位置にロックすることによって、ヘッド部10の位置決め位置を記憶するように使用する。
【0021】
セットピンのY方向の位置調節は、基板をY方向に移動させることによってなされる。基板をY方向に移動させる機構として、基板ベース板80上に、基板枠82a、82b、82c、82dを平面形状が矩形の枠体状に立設し、基板ベース板80をベース板50上に設けた一対のスライドガイド84a、84bにY方向に移動可能に係合支持する。スライドガイド84a、84bはベース板50の長手方向の一方側から他方側に延びるように配置され、基板ベース板80はスライド体85を介してスライドガイド84a、84bに移動可能に支持される。
【0022】
対向する一方の基板枠82b、82cはスライドガイド84a、84bの長手方向、すなわちY方向に平行に配置され、他方の基板枠82a、82dはX方向に配置されている。一方の基板枠82b、82cの上端面上には、基板枠82b、82cに沿ってスライドガイド86a、86bが固定され、他方の基板枠82aの上端面上にスライドガイド87aが固定されている。スライドガイド87aには、基板をクランプ支持するための一対のクランパ88a、88bがスライドガイド87a上を摺動自在に装着されている。
【0023】
図1においては、基板枠による枠体の残りの一辺に相当する基板枠82d上にスライドガイド87bが位置している。このスライドガイド87bは対向配置されているスライドガイド86a、86b間に掛け渡され、スライドガイド86a、86bに摺動自在に係合支持されている。スライドガイド87bにも、基板をクランプ支持するための一対のクランパ88c、88dが摺動自在に装着されている。
このようにスライドガイド87bをY方向を移動可能とし、クランパ88a〜88dをX方向に移動可能とすることにより、基板の大きさに合わせてクランパ88a〜88dをX方向とY方向に移動させて基板をクランプして支持することができる。
上述したベース板50、基板ベース板80、スライドガイド84a、84b、基板枠82a〜82d、クランパ88a〜88d等が基板の支持機構を構成する。
【0024】
本実施形態においては、200mm×300mmの基板が装着できるように基板枠82a〜82d等の寸法を設定した。ベース板50あるいは基板枠82a〜82d等は任意の寸法に設定することが可能であり、操作対象とする基板の大きさに合わせて設計すればよい。また、本実施形態においては、スライドガイド87bをスライドガイド86a、86bに対してスライド自在としたが、スライドガイド87aをスライドガイド86a、86bに対してスライド自在としてもよい。また、スライドガイド87a、87bを固定側とし、スライドガイド86a、86b側を移動側として基板をクランプ支持する構成とすることもできる。
【0025】
ベース板50には、基板ベース板80のY方向の移動位置、いいかえれば基板のY方向の移動位置をロックするロック機構としてストッパ90が設置されている。基板ベース板80の一方の側面に添わせて係止板92が固定され、この係止板92に設けられた係止溝にストッパ90が係合し、適宜位置でレバー90aを操作することによって、ベース板50上において基板ベース板80がロックされる。
【0026】
図2に、リワーク装置を側面方向から見た状態を示す。ベース板50上に支持柱52aが立設され、支持柱52aの上部に支持板54が固定され、支持板54にスライドガイド56が取り付けられている。ベース板50にスライドガイド84aが固定され、スライド体85を介して基板ベース板及び基板枠82bが支持され、基板枠82bの上端にスライドガイド86aが取り付けられている。また、ベース板50上にレバー90aを備えるストッパ90が取り付けられ、ストッパ90が係止板92に係合している。
ヘッド部10の加熱機構12及びカメラ14は、支持板54に支持された側板11に支持されている。
【0027】
(X方向、Y方向の移動機構)
図3に、リワーク装置を平面方向から見た状態を示す。支持板54の一端側に、ヘッド部10をX方向に移動させる操作を行うための回転ハンドル62が配置されている。62aは回転ハンドル62を回動操作するつまみである。回転ハンドル62の回転軸には第1のプーリ63a(不図示)が固定され、タイミングベルト64の移動方向がX方向となるように、支持板54の他端側に自由回転可能に第2のプーリ63bが配置され、第1のプーリ63aと第2のプーリ63bとにタイミングベルト64が掛け渡されている。
【0028】
タイミングベルト64にスライドガイド56に係合するスライド体56aが固定され、スライド体56aにヘッド部10の側板11が連結されている。こうして、回転ハンドル62を正逆回転することにともなってヘッド部10がX方向に進退動する。
ヘッド部10は連結部11aを介してガイドロッド58に連繋する。連結部11aのガイドロッド58との連繋部分には、連結部11aとガイドロッド58との連繋を制御する係止ハンドル65が装着されている。この係止ハンドル65を締めることによって、ガイドロッド58上においてヘッド部10がロックされる。連結部11a、係止ハンドル44、ガイドロッド58がロック機構を構成する。
【0029】
ベース板50の長手方向の一端側には、基板をY方向に移動させる操作を行うための回転ハンドル94が軸線方向を鉛直向きにして回転自在に軸支されている。回転ハンドル94の回転軸には第1のプーリ95a(不図示)が固定され、ベース板50の他端側に自由回転可能に配置された第2のプーリ95bとの間に、移動方向がY方向となるようにタイミングベルト96が掛け渡されている。タイミングベルト96は連結部97を介して基板ベース板80に連結する。回転ハンドル94を正逆回転することによって、基板ベース板80はスライドガイド84a、84bにガイドされてY方向に移動する。94aはつまみである。
【0030】
(ヘッド部の構成)
図4は、リワーク装置の正面図である。支持柱52a、52bの上端間を連結する支持板54に第2のプーリ63bが支持され、タイミングベルト64が掛け渡されている。
ヘッド部10の側板11の前面の下部には、カメラ14の下方位置と、下方位置から左方に退避した位置との間において移動可能に加熱機構12が装着される。加熱機構12は、ハロゲンランプを熱源とするものである。ハロゲンランプの周囲に、半球形の反射板(金めっき板)を備える集光部を設けることにより、ハロゲンランプの光を基板上に集光させ、基板上で小さなスポット領域(数mm〜10mm径程度)を加熱する(熱輻射を照射する)ことができるように構成されている。
【0031】
この加熱機構12による加熱温度は200〜300℃である。加熱機構12に用いるハロゲンランプの球種、集光部の構成を変えることにより、熱輻射領域を大小とすることができ、加熱温度を調節することができる。また、加熱用の光源としてハロゲンランプ以外の光源を用いることももちろん可能である。
【0032】
加熱機構12を左右方向に移動させる機構は、支持ブロック12aにより加熱機構12を支持し、側板11の前側面に水平方向に凹溝11bを設け、凹溝11bに支持ブロック12aを摺動可能に係合することによって構成される。加熱機構12を左右に移動させる操作は手動によって加熱機構12を押動させる操作による。図4においては、加熱機構12はカメラ14の下方から左方に退避した位置にある。
加熱機構12のハロゲンランプを覆って配置されている集光部の外面には、放熱用のフィン12bが装着されている。
加熱機構12は外部の光源用電源に電気的に接続され、ハロゲンランプのON-OFF制御がなされる。
【0033】
カメラ14は側板11の前面に光軸を鉛直向きに固設される。カメラ14は、セットピンのピン先の位置、基板上における処理対象とするチップ部品を視認するためのものであり、カメラ14の光軸とセットピンのピン先の位置が略一致するように配置する。
カメラ14による視認画像はモニターに表示され、操作者はモニター画面を見ながら、所要の操作を行うことができる。
なお、カメラ14を含む視認装置は、セットピンのピン先をチップ部品に正確に位置合わせするために設けたものであり、視認装置を用いずにセットピンを位置合わせできる場合には視認装置を設けない構成とすることもできる。
【0034】
側板11の側部には、セットピンを上下動させるための昇降用のハンドル20と、セットピンを開閉させる開閉用のハンドル30が配置される。
セットピンを上下動させる操作は、ハンドル20を回動し、側板11の裏面側に配置されている昇降板24を側板11に対して上下動させることによってなされる。セットピンを上下動させる際には、セットピン(ピン先)を基板の上面に正確に位置合わせする必要がある。このセットピンの上下方向の位置を調節する機構としてストッパロッド18が設けられている。
【0035】
図4は、側板11の前面にストッパロッド18がハンドル20に連繋して設けられていることを示す。ストッパロッド18のロッドの中間位置に当接板18a、ロッドの上端に下限調節つまみ18b、下端部に固定ねじ18cが設けられ、ロッドの下端が昇降板24に連結された連結板19に螺合している。下限調節つまみ18bはストッパロッド18をガイドするガイド18dの上面に当接し、下限調節つまみ18bを回動させることによってナット結合している連結板19が上下動する。
ハンドル20とストッパロッド18との連繋は、ハンドル20の回動操作によって回動するカム22がストッパロッド18の当接板18aの下面に当接することによってなされ、ハンドル20を回動させることにより、カムの作用によってストッパロッド18が上下動し、連結板19を介して昇降板24が上下動する。
【0036】
セットピンのピン先を基板の上面に位置合わせする操作は、昇降用のハンドル20を下位置にした状態で、ピン先が基板の上面に接触するように下限調節つまみ18bを回すことによってなされる。ピン先の下限位置が位置合わせされたら、固定ねじ18cを回して、下限の調節位置が位置ずれしないようにストッパロッド18を回り止めする。
ハンドル20を上位置に上げた状態は上死点位置となるように設定されており、その状態でハンドル20、セットピンは上位置に保持される。
【0037】
図6に、ヘッド部10を側方から見た状態を示す。
側板11の裏面に、スライドガイド25を介して昇降板24が鉛直方向に移動可能に取り付けられ、昇降板24の上部に連結板19が連結され、連結板19がストッパロッド18の下部に連結(螺合)されている。
ハンドル20は軸21を支点として、水平位置と水平から上方向きに回動可能に支持される。軸21にはストッパロッド18の当接板18aの下面に当接するカム22がハンドル20と一体回転するように取り付けられている。
【0038】
カム22は、ハンドル20が水平位置にある状態において昇降板24、すなわちセットピンが最下位置にあり、ハンドル20を上向きに回動させることによって昇降板24が上昇する。
これらのカム22を備えるハンドル20、昇降板24、ストッパロッド18等が、セットピンの昇降機構を構成する。
【0039】
(セットピンを支持する構成)
図5に、リワーク装置を背面側から見た状態を示す。
ヘッド部10は向かい合わせに配置される一対のセットピン40を備える。セットピン40を用いてチップ部品を取り扱う操作は、セットピン40を昇降させる操作と、セットピン40を開閉する操作を組み合わせて行われる。セットピン40を昇降させる操作は、昇降板24にセットピン40を支持することによって達成される。
図5には、回転ハンドル62の回転軸に取り付けられた第1のプーリ63aと第2のプーリ63bとにタイミングベルト64が掛け渡された構成、ガイドロッド58に連結部11aが介装され、連結部11aに係止ハンドル65が取り付けられた構成が示されている。
【0040】
図7に、側板11の背面方向からセットピン40を昇降させる機構と、セットピン40を開閉させる機構を見た状態を示す。
前述したように、側板11の裏面には側板11に対して昇降可能に、スライドガイド25に係合して鉛直方向に可動に昇降板24が装着されている。この昇降板24のさらに裏面側にカム板32がスライドガイド33により鉛直方向に可動に装着される。カム板32は下端側が幅狭となる正面形状が台形状に形成され、両側面がカム面32a、32bとなる。
カム板32の上部には軸34が立設され、軸34がハンドル30のレバー30aの中途に設けられた長孔30bに係合する。レバー30aの先端は側板11に立設された支点ピン35に係止され、ハンドル30及びレバー30aは支点ピン35を支点として、鉛直面内において回動可能に支持され、開閉用のハンドル30を上下に動かすことによってカム板32が上下動する。
【0041】
ハンドル30を回動させる操作はセットピン40を開閉する操作に連動する。側板11の裏面上には、ハンドル30が最も上位置に回動した際のハンドル30の回動位置を規制するためのストッパ36が設けられている。ストッパ36のレバー30aが当接する面にはマグネットが装着され、ストッパ36に当接する位置までレバー30aが回動した際にレバー30aがストッパ36に吸着支持される。
セットピン40はピン支持部42に取り付けられ、ピン支持部42は、側板11の裏面に水平方向に取り付けられたスライドガイド41により水平方向に可動に支持される。
【0042】
図6に、ヘッド部10を側面方向から見た状態を示す。
セットピン40を支持するピン支持部の支持ブロック422は、側面形状がクランク状に折曲する形状に形成され、昇降板24の下部にガイド方向を水平方向として支持されたスライドガイド41に係合し、側板11と昇降板24との中間位置に入り込むようにして装着される。
ピン支持部の上端部は昇降板24に設けられた貫通孔から背面側に水平に突出し、水平に突出した部位にカム板32のカム面に当接するローラ43が装着され、突端部にバネ係止部44が形成されている。図7に示すように、一対のピン支持部のバネ係止部44間に、常時収縮する向きの弾性力を付与させてバネ45が装着される。これによって、ピン支持部は互いに接近する向きに付勢され、ローラ43がカム板32のカム面32a、32bに当接しカムフォロアとして作用する。
【0043】
図8にピン支持部42にセットピン40を取り付けた状態の斜視図を示す。ピン支持部42は対称形状に一対設けられる。図8は一つのピン支持部42にセットピン40を取り付けた状態を示す。
ピン支持部42はセットピン40を装着する取付ブロック421と、取付ブロック421を取り付ける支持ブロック422とを備える。
取付ブロック421のセットピン40を取り付ける先端部421aは、先端側が低位となる傾斜形状に形成され、先端側が低位となる向きにセットピン40が取り付けられるようになっている。セットピン40は先端部421aに、押さえ治具421bにより厚さ方向に挟圧してねじ止め固定される。
【0044】
支持ブロック422は、取付ブロック421の取り付け位置を長孔とし、取付ブロック421の取り付け位置が調節できるように形成される。取付ブロック421は、双方のセットピン40のピン先間でチップ部品を的確につかむことができるように取り付け位置を調節する。セットピン40は取り扱い対象とするチップ部品に合わせて適宜形態や適宜大きさのものを使用するから、取り付け位置を調節して使用する。
【0045】
図8(a)に示すセットピン40は、ピンの中央部に設けたピン先401の両側に遮蔽部402を設けたものである。この遮蔽部402を設けたセットピン40によれば、遮蔽部402によってピン先401の近傍部分にのみ加熱機構12による熱輻射が照射されるようにし、対象とするチップ部品以外の領域に熱輻射が照射されないようにすることができる。図8(b)に示すセットピン40は、ピン先401を図8(a)の例にくらべて細幅に形成した例である。1mm以下といった微小なチップ部品を対象とする場合は、ピン先401を、幅1mm以下、厚さ1mm以下といった微小寸法に形成する必要がある。
【0046】
セットピン40は薄い金属板をレーザ加工等により、ピン先401、遮蔽部402等の外形形状にあわせてくりぬき加工し、図8(a)に示すように、ピン先401部分を所定の角度に折り曲げて形成する。本実施形態において使用している金属板の厚さは0.2mmである。セットピン40は交換して使用するものであり、所定の耐久性があり、加工性も良好な金属材、たとえばステンレス材を用いて形成する。
【0047】
(チップトレイの構成)
基板にチップ部品を搭載する際には、基板の搭載位置の電極パッドにはんだを塗布しておき、搭載位置にチップ部品を位置合わせして搭載し、はんだ付けする。本実施形態のリワーク装置は、チップ部品(回路部品)が搭載された基板に別のチップ部品を交換して搭載することを想定している。この場合には、基板の所定位置にはんだを位置決めして塗布することが困難である。そのため、本実施形態においては、搭載しようとするチップ部品にはんだを塗布しておき、はんだを塗布したチップ部品を基板に位置決めして加熱することによってチップ部品を搭載する方法としている。
【0048】
実施形態のリワーク装置においては、支持柱52aの近傍の基板枠82bの側方位置に交換用のチップ部品を供給するチップトレイ100を配置し、チップトレイ100からチップ部品を基板上に移載して搭載する。
図9(a)にチップトレイ100の斜視図を示す。チップトレイ100はベース板50に固定されるL形ベース102と、L型ベース102に高さ調節して取り付けられる取付ブロック104と、取付ブロック104の上端に水平に固定される位置決め枠106と、位置決め枠106に取り付けられるチップ部品のセット部108とを備える。
取付ブロック104の高さ調節は、L型ベース102の起立部に長孔を設け、ねじ103により取付ブロック104を高さ調節して固定することによってなされる。
【0049】
チップトレイ100の構成において特徴とする構成はチップ部品のセット部108の構成である。セット部108は、チップ部品を収容するネスト板110と、チップ部品にクリームはんだを塗布するためのメタルマスク111と、押さえ板112とを備える。ネスト板110(図9(b))は、チップ部品Cを収納するためのものであり、チップ部品Cを収納する収納孔110aが所定間隔をあけて4つ設けられている。この収納孔110aは、ヘッド部10がチップトレイ100上に横移動した際に、セットピン40のピン先401が収納孔110a上に位置するように孔位置が設定されている。
【0050】
ネスト板110に設けられる収納孔110aは、図9(b)の拡大図に示すように、チップ部品Cを収納する収納孔Aと、チップ部品Cを両側方からつまむためにピン先401が挿入される挿入孔Bとからなる。収納孔Aと挿入孔Bとは連通して設けられ、収納孔110aを平面方向から見ると十字形となる。チップ部品Cはネスト板110の幅方向に電極を配置する向きに孔内にセットされる。
ネスト板110はその板厚内にチップ部品Cを収納するため、チップ部品Cよりもわずかに厚い板材が用いられる。
【0051】
メタルマスク111(図9(c))はネスト板110の収納孔110aに収納したチップ部品Cにクリームはんだを塗布するためのもので、ネスト板110に設けた収納孔110aの孔位置に位置合わせして開口孔111aが設けられている。図9(c)の拡大図に示すように、開口孔111aは、収納孔110aに収納されたチップ部品Cの電極位置に合わせて開口するように、すなわち、ネスト板110にメタルマスク111を重ね合わせた状態で、ネスト板110に収納されたチップ部品Cの電極部のみが露出するように形成される。
【0052】
チップ部品にクリームはんだを塗布する操作は、図9(d)に示すように、押さえ板112を用いて、押さえ板112上にネスト板110とメタルマスク111とを重ね合わせ、チップ部品Cにクリームはんだを塗布することによって行う(図9(d)は図9(b)のD-D線位置での断面)。
位置決め枠106には、メタルマスク111とネスト板110と押さえ板112の周縁部のみを支持し、ネスト板110の収納孔110aやメタルマスク111の開口孔111aを設けた部位を開口させた開口部が設けられており、位置決め枠106に、メタルマスク111とネスト板110と押さえ板112とをこの順に下側から重ねて取り付け、位置決め枠106の開口側からクリームはんだを塗布することによってチップ部品にクリームはんだを供給する。
【0053】
図9(b)、(c)は、ネスト板110とメタルマスク111の一方の対角位置にねじ止め孔110b、11bが設けられ、他方の対角位置に位置決め用のガイドピンが挿通される位置決め孔110c、111cが設けられていることを示す。
位置決め枠106に、メタルマスク111とネスト板110と押さえ板112とをガイドピン108によって位置決めしてねじ止めした状態でクリームはんだを塗布し、位置決め枠106を下向きにし(押さえ板112が上になる)、図9(a)に示すように、取付ブロック104に位置決め枠106を取り付け、セット部108のねじ止めを解除して、一番上の押さえ板112を外す。こうして、ネスト板110が上位置になった状態で、ガイドピン108aにより位置決めされてチップ部品が支持される。チップ部品はクリームはんだが塗布された面が下向きとなって支持される。
【0054】
なお、位置決め枠106を利用するかわりに、メタルマスク111とネスト板110の大きさに合わせた矩形枠状に形成したアタッチメントを利用し、このアタッチメントにメタルマスク111、ネスト板110、押さえ板112を取り付けてクリームはんだを塗布した後、メタルマスク111を取り付けた側が下向きになるように、位置決め枠106のかわりに平坦状に形成した支持板上にアタッチメントごと取り付け、押さえ板を外して、図9(a)に示したと同様のセット部108の形態とすることもできる。
【0055】
図9に示した例は、チップ部品Cを収納する収納孔110aを4つ設けた例であるが、収納孔110aの配置数が限定されるものではない。
基板に供給するチップ部品のサイズが異なる場合がある。この場合には、製品に合わせた収納孔110aを備えるネスト板110及びこれに組み合わせるメタルマスク111を使用する。また、1枚のネスト板110によってサイズが異なるチップ部品の供給を可能にするため、サイズの異なる複数の収納孔110aを形成したネスト板110と、これに組み合わせて用いるメタルマスク111を用意して操作することも可能である。
【0056】
(ボトムヒータ)
図10は、クランパ88a〜88dによって支持した基板を下面側から加熱するボトムヒータ120を示す。基板にはんだ付けされているチップ部品を基板から取り外す際には、加熱機構12を用いて集中的に基板を加熱しても十分にはんだを溶融することができない場合がある。その場合には、ボトムヒータ120を用いて基板を下面側からも加熱する方法が有効である。また、基板を下面側から加熱しながら加熱機構12により基板上の特定のチップ部品を加熱することによって、より短時間でチップ部品を取り外すことができ、またチップ部品を新たに基板に搭載することができる。
【0057】
図10に示すボトムヒータ120は、平面形状が長方形の上部が開口する箱体状に形成した筐体122の上部に、セラミックヒータ124を配したものである。セラミックヒータ124は、電極126により両端を支持し、配線128を介して外部電源に接続される。筐体122の側面に操作用のハンドル130が設けられる。
ボトムヒータ120はクランパ88a〜88によって基板を支持した状態で、基板枠82a〜82dによって囲まれた領域内を、基板ベース板80上で適宜位置に動かして使用する。したがって、筐体122の高さは基板枠82a〜82dの高さよりも低く設定し、クランパ88a〜88dによって支持された基板の下側で自由にボトムヒータ120を動かせるようにする。
【0058】
(リワーク装置の作用:チップ部品の取り外し操作)
続いて、上述したリワーク装置を用いて、基板に搭載されたチップ部品を基板から取り外す操作について説明する。
まず、基板枠82a〜82dに取り付けられているクランパ88a〜88dを用いて基板をクランプする。クランパ88a〜88dはスライドガイド87a、87b上においてX方向(幅方向)に移動自在であり、スライドガイド87bはスライドガイド86a、86bにガイドされてY方向(長手方向)に移動自在であるから、基板の外縁にクランパ88a〜88bを移動させて基板をクランプする。基板はスライドガイド86a、86bとほぼ同じ高さに支持される。
【0059】
次に、ヘッド部10にセットピン40を調節して取り付けた状態で、基板上の取り外し対象であるチップ部品をカメラ14の視認域内に位置合わせする。加熱機構12はカメラ14の下方から左方に退避した位置に移動させておく。
この視認操作は、ハンドル20を上位置に回動させてセットピン40を上位置に移動させ、かつハンドル30を下位置に動かしてセットピン40を最大に開いた状態で行う。具体的には、回転ハンドル62を回転してヘッド部10をX方向に移動させ、回転ハンドル94を回転して基板ベース板80をY方向に移動させて、取り外し対象であるチップ部品の直上にセットピン40が位置するようにする。
【0060】
カメラ14はセットピン40の直上に位置しているから、ピン先401と基板上のチップ部品を視認しながら(実際はモニター画面で見る)回転ハンドル62、回転ハンドル94を動かしてピン先401の下方にチップ部品が位置するように操作する。セットピン40は最大に開いているから、ピン先401に挟まれた中間の位置にチップ部品が位置する配置となる。この視認操作の際にカメラ14のピントを合わせて、正確に位置調節できるようにする。
【0061】
次に、開閉用のハンドル30を若干上に動かし、セットピン40がを最大に開いた位置から中間の開き位置に設定し、その状態でチップ部品の側面(ピン先401が当たる面)に正確にピン先401を位置合わせする。この操作の際には、ピン先401は基板よりも上位置にある。
図11に、カム板32とローラ43の高さ位置との関係によって、セットピン40の開き度合いが変化する様子を説明的に示す。カム板32のカム面の角度は実際の装置のカム板32よりも強調して描いている。ローラ43がE点にある状態(カム板32を押し下げた状態)がセットピン40が最も広いた状態(開き位置)、F点が中間の開き位置にある状態(中間位置)、G点が最も狭くなった状態(閉じ位置)でチップ部品をつかむ状態である。
【0062】
カム板32のカム面は、E点からF点に至るまでの傾斜が急で、F点からG点までの傾斜は緩やかである。F点においてセットピン40がクリック的に動くことによって中間位置となったことがわかる。セットピン40を中間位置で保持するため、レバー30aの中間位置に合わせて側板11の側面にマグネットを配し、マグネットの作用によってレバー30aがいったん中間位置に保持されるようにしてもよい。
セットピン40が中間位置にある状態は、基板に搭載されている隣り合ったチップ部品のちょうど中間にピン先401が位置する状態に対応する。
【0063】
セットピン40の開き度を中間位置としてピン先401をチップ部品に位置合わせしたところで、係止ハンドル65にヘッド部10のX方向の位置をロックし、レバー90aを操作してストッパ90により基板ベース板80をロックして基板のY方向位置を位置決めする。
次いで、ハンドル20を上位置から下位置(最下位置)まで回動し、カメラ14でピン先401の位置を見ながら、ストッパロッド18の下限調節つまみ18bを回してピン先401が基板の上面に接触するように調節し、その位置で固定ねじ18cによりストッパロッド18を固定する(セットピンのZ方向位置が規定される)。
次いで、開閉用のハンドル30を上位置に移動させ、セットピンを閉じる。
【0064】
次に、加熱機構12をカメラ14の下方、すなわちセットピン40の上方に移動させ、ハロゲンランプを点灯させて基板を加熱する。基板を加熱すると、はんだフラックスが飛散したりするから、排気ファン140(図1、図3等)を作動させ、ダクトの連結部141(図1、図4等)にダクトを連結して排気しながら作業する。また、透視用のカバー142(図1)を下ろして作業する。
なお、クランパ88a〜88dによって基板をクランプした時点で、基板の下方にボトムヒータ130を配置し、基板を下面側から予備加熱しておく。
【0065】
図12(a)は、セットピン40を下位置とし、セットピン40を閉じて、加熱機構12によって基板を加熱している状態を平面方向から見た状態を示す。円形部分が加熱機構12によって加熱している範囲(光が照射される範囲)である。
セットピン40は端縁が直線的に形成され、端縁の中央位置からピン先401が延出し、ピン先401がピン本体に対して傾斜するように折曲して形成されている。
図12(b)に示すように、ピン先401はチップ部品の側面に添うように配置される。ピン先401とピン本体とのなす角度は30°程度であり、セットピン40の先端側が低位となることによって、基板に搭載されている比較的大きな回路部品6と干渉しないようにしてチップ部品を配置することができる。
【0066】
図12(a)に示すセットピン40はピン先401の側方を切り欠き、対象とするチップ部品と基板部分に光(輻射熱)が当たるようにして集中的に加熱されるようにし、切欠部分の外側に遮蔽部402を設けることによって、対象とするチップ部品以外の部位が熱せられないようにしている。
加熱機構12によって加熱される範囲が絞られていれば遮蔽部402はなくてもよいが、通常、加熱機構12による加熱範囲(スポット径)は数mm〜10mm程度あるから、セットピン40に遮蔽部402を設けることは有効である。
加熱機構12によってはんだが溶融する温度まで加熱した後、昇降用のハンドル20を下位置から上位置に移動させる。この操作により、チップ部品がクランプされて基板から持ち上げられる。
【0067】
図11において、G点の位置が、セットピン40によってチップ部品がクランプされた位置である。セットピン40によってチップ部品がクランプされると、カム板32のカム面に接触していたローラ43はカム面から離間する。すなわち、ローラ43がカム面に接触する状態から離間する状態に移行することによってチップ部品がクランプされる。したがって、セットピン40によってチップ部品がクランプされた後は、バネ45の弾性力(収縮力)によってチップ部品がクランプされることになる。
【0068】
このようにカム板32の作用とバネ45の弾性力を利用してチップ部品をクランプするように構成したことにより、セットピン40を取り付けたときのばらつき、あるいはセットピン40をチップ部品に位置合わせするときの位置合わせが不正確であったために、セットピン40がカム板32のカム面に片当たりしたような場合でも、これらの位置ずれを吸収して、確実にチップ部品をピックアップすることが可能である。
【0069】
図12(c)に、セットピン40によってチップ部品5をクランプした状態を説明的に示す。セットピン40は互いに傾斜させて(図示例では傾斜角30°)設置しているから、チップ部品5をクランプした際の挟圧力により、セットピン40は図のように湾曲し、チップ部品5はセットピン40自体の弾性力を合わせて支持される。このセットピン40による作用も、チップ部品を確実に保持するように作用する。
【0070】
セットピン40によってチップ部品を上位置に持ち上げたところで、加熱機構12を左方の退避位置に移動させ、カメラ14によりセットピン40によってチップ部品がピックアップされたことを確認する。
次いで、係止ハンドル65によるヘッド部10のロックを解除し、回転ハンドル62を回転してヘッド部10を右方に移動し、開閉用のハンドル30を下向きに動かしてセットピン40の位置を開き位置とし、ピックアップしたチップ部品を落下させる。これによってチップ部品の取り外し操作が完了する。
【0071】
(リワーク装置の作用:チップ部品の搭載動作操作)
リワーク装置によって基板からチップ部品を取り外した後、もしくは基板にチップ部品を搭載する操作は次のようにして行う。
まず、基板上におけるチップ部品を搭載する位置を確認する。この確認操作はセットピン40を上位置かつ開き位置とした状態で、回転ハンドル62によりヘッド部10をX方向に移動させ、回転ハンドル94により基板をY方向に動かして、カメラ14で基板上におけるチップ部品の搭載位置を確認することによって行う。
【0072】
カメラ14のピントを合わせ、次に、セットピン40の開き度を中間位置として、基板上におけるチップ部品のセット位置にセットピン40を正確に位置合わせする。
次いで、昇降用のハンドル20を下位置まで下ろし、セットピン40のピン先401が基板の上面に接するように下限調節つまみ18bを回して調節する。調節ができたら、その位置で固定ねじ18cでストッパロッド18を固定する。これによって、ハンドル20を最下位置に下げた位置がピン先401が基板上面に接する位置となる。また、ストッパ90によって基板位置をロックする。ヘッド部10については連結部11aの側面にストッパ60aを当接し、その位置でストッパ60aをロックする。これによってヘッド部10のX方向の位置が規定される。
【0073】
ストッパ60aの位置が規定されたところで、セットピン40を上位置かつ開き位置としてヘッド部10を右方のチップトレイ100の上方までスライド移動させる。
チップトレイ100からセットピン40にチップ部品を受け渡す操作は、カメラ14でセットピン40を視認しながら、セットピン40の直下位置にチップ部品が位置するようにヘッド部10を移動させ、セットピン40を中間位置の状態で下位置まで下げ、セットピン40を閉じ位置としてピン先401でチップ部品をピックアップすればよい。チップ部品をピックアップした状態で開閉用のハンドル30を上位置に保持し、セットピン40によってチップ部品を保持する。
【0074】
ヘッド部10はX方向にのみ移可能であるから、セットピン40の移動経路上にチップ部品が位置するようにチップトレイ100を配置する。また、チップ部品を支持するセット部108の高さも、セットピン40が下降するストローク内にチップ部品が位置するように設定する。
図9(b)に示すように、ネスト板110にはセットピン40のピン先401が挿入される挿入孔Bが形成されているから、ピン先401がネスト板110と干渉することなくチップ部品をピックアップすることができる。
【0075】
セットピン40によってチップ部品を保持した状態で、ヘッド部10を連結部11aの側面がストッパ60aに当接する位置まで横移動させ、その位置で係止ハンドル65によりヘッド部10をロックする。
次いで、昇降用のハンドル20をストッパロッド18によって規定されている下位置まで下げ、チップ部品を基板上に当接させる。
その状態で加熱機構12をカメラ14の下側まで横移動させ、ハロゲンランプを点灯して基板を加熱開始する。なお、基板はボトムヒータ130によって予備加熱しておく。
加熱機構12によってはんだ溶融温度まで加熱した後、加熱をOFFにして基板にチップ部品を接合する。
【0076】
チップ部品を基板に接合した後、開閉用のハンドル30を操作しセットピン40の開き度を中間位置にしてから、昇降用のハンドル20を操作してセットピン40をピン先401が基板の上面から上方に離間する上位置に移動させる。
次いで、セットピン40を開き位置とし、加熱機構12を側方の退避位置に移動させ、カメラ14によって基板上に搭載されたチップ部品を確認する。こうして、チップ部品を基板に搭載する操作が完了する。
【0077】
上述したように、本実施形態のリワーク装置によれば、セットピン40を基板上のチップ部品の位置に位置合わせした状態、あるいは基板上のチップ部品を搭載する位置にチップ部品を位置合わせした状態で、加熱機構12によりチップ部品と基板とを加熱する操作を行って、チップ部品の取り外し、搭載を行うことができる。したがって、加熱時にチップ部品が位置ずれしたりすることがなく、正確にチップ部品の取り外し、搭載操作を行うことができる。
また、加熱操作と取り外し、搭載操作を連続的に行うことが可能であることから、チップ部品の取り外し、搭載操作を短時間のうちに行うことができる。
【0078】
また、本実施形態のリワーク装置では、セットピン40をチップ部品の取り外し位置、搭載位置に正確に位置決めして操作することができ、きわめて微小なチップ部品を扱う場合でも、他の回路部品に影響をあたえずに対象とするチップ部品のみを取り外し、搭載することができる。
また、集光部を備えた加熱機構を使用することによって、対象とするチップ部品及びチップ部品が搭載された近傍部分のみを限定的に加熱するのみでチップ部品の取り外し、搭載操作を行うことができ、基板に搭載されている他の部品を損傷したりすることがないという利点がある。
【0079】
なお、上記実施形態においては、基板をY方向に移動させる操作や、ヘッド部をX方向に移動させる操作等を回転ハンドル62、94等を用いて手動操作としているが、これらの移動操作を、サーボモータ等の駆動機構を用いる動作させるようにすることも可能である。基板に搭載されたチップ部品を取り外す操作や、チップ部品を搭載しなおす操作が頻繁に起こるような場合には、動作を自動化することによってさらに作業効率を向上させることができる。
【符号の説明】
【0080】
10 ヘッド部
11 側板
12 加熱機構
14 カメラ
18 ストッパロッド
18a 当接板
18b 下限調節つまみ
20 ハンドル
22 カム
24 昇降板
25 スライドガイド
30 ハンドル
30a レバー
32 カム板
32a、32b カム面
33 スライドガイド
40 セットピン
42 ピン支持部
43 ローラ
44 バネ係止部
45 バネ
50 ベース板
52a、52b 支持柱
54 支持板
58 ガイドロッド
60a、60b ストッパ
62 回転ハンドル
64 タイミングベルト
65 係止ハンドル
80 基板ベース板
82a、82b、82c、82d 基板枠
84a、84b スライドガイド
88a、88b、88c、88d クランパ
90 ストッパ
94 回転ハンドル
96 タイミングベルト
100 チップトレイ
108 セット部
110 ネスト板
110a 収納孔
111 メタルマスク
111a 開口孔
112 押さえ板
120 ボトムヒータ
124 セラミックヒータ
401 ピン先
402 遮蔽部
421 取付ブロック
421a 先端部
421b 押さえ治具

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板を水平に支持して基板を一方向に移動可能に支持する基板の支持機構と、
前記基板の上方において、基板の移動方向に直交する方向に移動可能に支持されるヘッド部とを備え、
前記ヘッド部は、
チップ部品を側方から挟圧して支持する一対のセットピンと、
前記セットピンを、前記基板の上面にピン先が当接する下位置と、基板の上面から上方にピン先が離間する上位置との間を昇降させるセットピンの昇降機構と、
前記昇降機構に連動して設けられ、前記セットピンを、チップ部品の側面にピン先が当接してチップ部品を挟圧する閉じ位置と、ピン先をチップ部品の側面位置に位置合わせする中間位置と、ピン先をチップ部品の側面位置よりも外側に開いた開き位置との間で開閉させるセットピンの開閉機構と、
前記チップ部品と基板とを加熱する加熱機構と、
を備えることを特徴とするリワーク装置。
【請求項2】
前記セットピンは、ピン本体の端縁を直線状とし、該端縁の中央位置からピン先を延出させ、該ピン先を前記ピン本体の面方向に対して先端側が低位となるように折曲させた形状に設けられたものであることを特徴とする請求項1記載のリワーク装置。
【請求項3】
前記セットピンは、ピン先の両側に前記加熱機構による熱輻射を遮蔽する遮蔽部を設けたことを特徴とする請求項2記載のリワーク装置。
【請求項4】
前記加熱機構は、
熱源となる光源と、
前記光源から放射される光を前記基板上に集光する集光部とを備えることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項5】
前記セットピンの上方に配され、前記セットピンと前記基板上におけるチップ部品の搭載位置を視認するための視認装置を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項6】
前記昇降機構は、
面方向を鉛直方向として前記ヘッド部に取り付けられた側板に、上下動可能に取り付けられた昇降板と、
前記昇降板にカムを介して連繋され、回動操作により前記カムを介して、前記昇降板を昇降させる昇降用のハンドルと、
を備えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項7】
前記開閉機構は、
前記昇降板に上下動自在に装着され、下側が幅狭となる台形状の正面形状に形成されたカム板と、
前記セットピンを装着する取付ブロックと、前記カム板の側面に形成されたカム面に当接するローラが設けられた一対のピン支持部とを備え、
前記一対のピン支持部は、対向する水平方向に移動可能に、前記昇降板に支持されるとともに、前記ピン支持部の端部間に、前記ローラを前記カム面に常時押接する向きに付勢するバネが係止され、
回動操作により前記カム板を前記昇降板に対して昇降操作し、前記セットピンを開閉させる開閉用のハンドルが、前記カム板に連繋して設けられていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項8】
前記取付ブロックの前記セットピンを取り付ける先端部は、先端側が低位となる傾斜形状に形成され、
前記先端部に前記セットピンが脱着可能に設けられていることを特徴とする請求項7記載のリワーク装置。
【請求項9】
前記基板の支持機構は、
ベース板上に一方向に移動可能に支持された基板ベース板と、
該基板ベース板上に、平面形状が矩形の枠体状に取り付けられた基板枠と、
該基板枠の上端面に取り付けられたスライドガイドと、
該スライドガイドに移動自在に装着され、前記基板を厚さ方向にクランプして支持するクランパとを備え、
前記基板ベース板を前記ベース板上において移動させる機構として、前記ベース板に取り付けられた回転ハンドルと、該回転ハンドルの回動操作にともなって前記基板ベース板を進退移動させるタイミングベルトとを備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項10】
前記ヘッド部は、ベース板上に起立して設けられた支持柱間に架設された支持板に移動自在に支持され、
前記ヘッド部を前記支持板上において移動させる機構として、前記支持板に取り付けられた回転ハンドルと、該回転ハンドルの回動操作にともなって前記ヘッド部を進退移動させるタイミングベルトとを備えることを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項11】
前記基板の支持機構には、基板の移動をロックするロック機構が設けられ、
前記ヘッド部には、ヘッド部の移動をロックするロック機構が設けられ、
前記セットピンの昇降機構には、セットピンの高さ位置を基板の上面に位置合わせする調節機構が設けられていることを特徴とする請求項1〜10のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項12】
前記基板の支持機構に基板を支持した状態において基板を下面側から加熱するためのボトムヒータを備え、
前記ボトムヒータは、上面が開口する箱体状に形成された筐体の上部に、前記基板に対向する配置にヒータが配されたものであること特徴とする請求項1〜11のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項13】
前記基板に搭載するチップ部品を供給するためのチップトレイを備え、
該チップトレイは、前記ヘッドの移動経路上の、前記基板の支持機構とは干渉しない側方に配置され、
前記チップトレイには、前記セットピンの移動位置に位置合わせしてチップ部品を支持するチップ部品のセット部が設けられていることを特徴とする請求項1〜12のいずれか一項記載のリワーク装置。
【請求項14】
前記セット部は、
前記チップ部品を収納する収納孔が形成されたネスト板と、
該ネスト板の下に重ねて配置され、前記ネスト板に収納されたチップ部品にはんだを塗布する領域のみを開口させたマスク板とを備え、
前記ネスト板には、前記収納孔に連通して、前記セットピンの移動位置においてピン先を挿入させる挿入孔が、前記収納孔に交差する配置に設けられていることを特徴とする請求項13記載のリワーク装置。
【請求項15】
基板に搭載されたチップ部品を基板から取り外し、あるいは基板上にチップ部品を搭載する際に、チップ部品を側方から挟圧して支持するためのセットピンであって、
ピン本体の端縁を直線状とし、該端縁の中央位置からピン先を延出させ、該ピン先を前記ピン本体の面方向に対して先端側が低位となるように折曲させた形状としたことを特徴とするセットピン。
【請求項16】
前記ピン先の両側の前記端縁部分に切欠を設け、該切欠の両側に遮蔽部を設けたことを特徴とする請求項15記載のセットピン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2011−129647(P2011−129647A)
【公開日】平成23年6月30日(2011.6.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−285555(P2009−285555)
【出願日】平成21年12月16日(2009.12.16)
【出願人】(502342716)株式会社シンアペックス (6)
【Fターム(参考)】