説明

チミジンキナーゼ活性の測定のための方法およびキットならびにその使用

血液、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、胸膜液、腹水、組織、細胞およびその抽出液などの生体サンプル中のチミジンキナーゼ(TK)の活性を測定するための方法およびアッセイキットが記載される。方法は、緩衝液中で、固体表面接着プライマーおよび/またはテンプレート、キナーゼ酵素基質としてのブロモデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、フルオロデオキシウリジンまたはビニルデオキシチミジンなどの修飾デオキシヌクレオシド、リン酸供与体、ヌクレオチド重合酵素および酵母抽出物などのTK活性のないキナーゼ酵素源を含む基本反応混合物を生体サンプルと接触させることを含む。インキュベートした後、固体表面接着プライマーおよび/またはテンプレートに組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量を測定し、そして、生体サンプル中に存在するTK活性は、組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量に直接比例する。方法およびアッセイキットは、ガンなどの細胞増殖性障害または疾患の診断、疾患進行および治療効果の予後観察およびたとえば、新規薬物候補などの化合物のスクリーニング、リン酸チミジンの形成を妨害するか、または核酸合成を妨げることができる酵素経路への影響において有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体サンプル中のチミジンキナーゼ(TK)活性の測定のための非放射性方法およびキットに関する。本発明は、ガンおよび特定のウイルス感染症などの細胞増殖性障害または疾患の診断、観察および予後診断、およびたとえば、チミジン一リン酸の形成の妨害および/またはリン酸化後の核酸合成の妨げを行うことができる酵素経路に影響を及ぼす新規薬物候補などの化合物のスクリーニング、において有用である
【背景技術】
【0002】
細胞分裂前に、遺伝情報をもつDNAは、DNAポリメラーゼによって複製しなければならない。これは、他の必要な成分の中で特に、大量の基質、すなわち、たとえば、デオキシチミジン三リン酸(TTP、図2C)などのデオキシリボヌクレオチドの4つすべての存在を必要とする。TTPは、図1に示す経路にしたがって、デノボ合成される。さらに、哺乳動物と多くの他の種は、排他的に細胞周期G1−S期を発現し、チミジンをチミジン一リン酸(TMP、図2B)(図1)(1、再見のこと)にリン酸化することによってチミジン(T、図2A)を代謝へ救い出すTKをコードする。したがって、培養細胞のDNAへ組み込まれた放射性Tの測定は、伝統的に、細胞分裂速度の1つの指標として用いられている。健康な個人および種々の腫瘍疾患に罹っている患者からのヒト血漿または血清中のTK活性が、1980年代に明らかにされた(2、3)。健康な個人において髄液中のTK活性の不在が見出され、さらに、種々のレベルが脳腫瘍の患者において見出された(4)。次いで、TKの分析が臨床医学、特に、種々の血液悪性腫瘍との関連において、より一般的になっていった(5−10)。
【0003】
TKをコードする2つの細胞遺伝子が存在し、細胞分裂における主要形態であるTK1は、s−TKとして血清中に放出される。これは、腫瘍疾患において血清中に過剰発現される形態であり、本発明アッセイなどの現行のアッセイのほとんどを用いて測定される。TK2体は、ミトコンドリア中に純粋に存在する。ミトコンドリア中に局在することに加えて、TK2は、TK1とは異なる基質スペクトルおよび速度パラメーターを有する(1)。
【0004】
これまでに市販しかされていなかった困難な血清TK(s−TK)アッセイにおける手順に含まれる放射能が、臨床医学におけるその普及および使用をさまたげてきた。インビボにおける腫瘍細胞分裂の度合いと直接関連づけられるので、s−TKは、胎児性抗原または分化細胞によって特異的に産生された産物の過剰発現によって腫瘍の存在を示すにすぎない多くの腫瘍マーカーを補完するものである。たとえば、前立腺特異抗原(PSA)は、過剰量の前立腺細胞の早期マーカーであり、抗原レベルの上昇は、TK活性上昇よりかなり前に検出される。しかし、腫瘍が脱分化を開始し、より速く成長を開始する場合、PSA抗原(カリクレイン3)は消失し、s−TK活性の増加が見出される(11)。したがって、治療しながら、あるいは無治療で、患者における腫瘍細胞複製を観察するためのその使用に加えて、s−TKの活性およびその動態における変化も、治療上の処置における変更の必要性に関して患者を選び出す。患者の転帰に対する所定のs−TKレベルの重要性は、種々の腫瘍のタイプの間で変化し、設定された治療法のタイプ、患者の年齢、および臨床医学における使用のための多変数モデルに含めるためにs−TKを重要なマーカーにするその他の因子の両方に当然関係する(12)。
【0005】
上述したように、従来技術において、TKは、その活性によって検出されるか、TK1タンパク質(24kdの遺伝子発現サイズ)の現実的存在を検出する手順によって検出されるかのいずれかであった(13)。後者の手順は、活性酵素および不活性酵素の両方を捕捉する。したがって、これらのタンパク質検出アッセイは、s−TK活性を不十分に補完する。TK1タンパク質またはその分解産物は、異なる半減期を有するが、TK1は、細胞周期のG1〜S期、すなわち、細胞分裂においてのみ活性があるので、このことは予期されない現象ではない。したがって、TK活性を測定する技術の状態のみが、本明細書において取り上げられるだろう。
【0006】
一般に、すべてのTK活性アッセイは、リン酸供与体(たとえば、アデノシン三リン酸、ATP)およびMg2+(またはMn2+)の存在下でのTまたはその類縁体をもつ分析されるサンプルのインキュベーションからなる。その後、産物の量、すなわち、TMPまたはいずれかのT−類縁体一リン酸塩を測定する:
A)先に述べたTK活性アッセイにおいては、3H−標識チミジン(T)を基質として用いた。TMPを、ジエチルアミノエチル(DEAE)を浸した濾紙に結合し、次いで、未使用のT基質を除去するために洗浄した。濾紙を乾燥した後、ベータカウンターで3H放射能を測定した。しかし、さらに放射能試験が開発され、細胞増殖に対するマーカーとしてs−TKを用いることに興味が持続することが示される。
【0007】
B)市販のプロリフィゲン(登録商標)TK−REA(DiaSorin S.p.A.Saluggia、イタリー)アッセイにおいては、放射性ヨードデオキシウリジン(125IdU)をTKに対する基質として用いる。自己沈澱する水酸化アルミニウム(Al(OH)3)に結合させ、次いで、未使用の125IdUMPを除去するために洗浄することによって、一リン酸化産物であるヨードデオキシウリジン一リン酸を(125IdUMP)を分離する。次いで、Al(OH)3粉末に結合した125I放射能をガンマカウンターで計数する(2、3)。
【0008】
C)最近刊行された非放射性TKアッセイ(15、16)は、TK1活性を定量するための同様の技術を開示する。これらのアッセイにおいては、アジドチミジン(AZT、図2D)またはブロモデオキシウリジン(BrdU、図2A)のいずれかを基質として用い、第2の96ウエルマイクロタイタープレートにおいてウエルの底に固定された抗−AZTMPまたは抗−BrdUMP抗体への酵素標識AZTMPまたはBrdUMPの結合と競合する反応溶液の能力を分析することによって、それぞれ形成した一リン酸塩(AZTMPまたはBrdUMP、図2B)を定量した。(すなわち、競合ELISAによる検出)
【0009】
放射能を回避しているにもかかわらず、これまでに知られている非放射性アッセイは、結合トレーサーの減少を測定し、分析されるサンプル中に存在するTK産物の量がかなり高いことを必要とするので、低レベルのTKを含む生体サンプルを分析するのに十分有効であるようには見えない(15、16)。このことは、特に、髄液、胸膜液、腹水および他の体液などの測定可能な基準レベルを欠いている生体サンプルにおいてTKアッセイが用いられる場合、若者と高齢者の間で3倍以上の差異が生じうる正常な範囲におけるTK活性の良好な分割を妨げる。
近年、TMPK、NdK単独またはTKとの組み合わせの補完する活性を利用して新たな組換え宿主細胞系が開示され、ここでは、TMPK、NdKまたはTK遺伝子は、欠失された。その発明は、組換え細胞系、およびをキナーゼ経路に影響を及ぼす化合物をスクリーニングするための該細胞系を含むキットを創成することに関する(17)。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の説明
本発明は、要すれば、容易に自動化することができる鋭敏な非放射測定性チミジンキナーゼアッセイを提供する。TK産物は、固相表面上に固定されるように直接処理され、TK活性レベルは、たとえば、二次計測のためにサンプルを移動させることなくELISA手順(18)を用いて直接定量される。
【課題を解決するための手段】
【0011】
新規な方法は、たとえば、体液サンプルなどの生体サンプル中のチミジンキナーゼ(TK)(ATP:チミジン−5'−ホスホトランスフェラーゼ:E.C.2.7.1.21)活性を定量する。この方法は、たとえば、体液または組織もしくは細胞サンプルなどの生体サンプルならびに純粋な組換えTKイソ酵素中のTK活性の単純で、安価で、正確かつ非常に鋭敏な測定を可能にする。
【0012】
したがって、本発明は、固相表面に結合したプライマーまたはテンプレートとしての一本鎖ポリヌクレオチドを含む容器中で、緩衝液中の以下の成分:固相プライマーおよび/またはテンプレートとしての未結合一本鎖ポリヌクレオチド、キナーゼ酵素基質としての修飾デオキシヌクレオシド、リン酸供与体、ヌクレオチド重合酵素およびTK活性のないキナーゼ酵素源を含む基本反応混合物を生体サンプルと接触させ、該混合物をインキュベートし、必要に応じて、インキュベートした混合物を洗浄して、未結合の反応成分を除去し、固相表面に結合したプライマーおよび/またはテンプレートに組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量を測定し、次いで、組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量から生体サンプル中に存在するTK活性を測定するステップを含む、生体サンプル中のチミジンキナーゼ(TK)活性の測定方法に関する。
【0013】
語句“TK活性のない”は、本明細書および請求の範囲において、非常に低量のTK活性なので、たとえあったとしても本発明方法の遂行を妨げないことを意味することを意図する。
さらに、測定されたTK活性が、組み込まれた修飾ヌクレオシドの量に比例することを理解すべきである。
【0014】
現在好ましい態様において、インキュベートした混合物を洗浄し、インキュベートした混合物に、修飾デオキシヌクレオシドに対する親和性をもつ標識親和性分子を加え、標識を用いて結合した標識親和性分子の量を測定することにより、組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量を測定することによって、組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量の測定を行う。
【0015】
本発明方法の1つの態様において、キナーゼ酵素源は、TK活性のない哺乳動物細胞系抽出物、TK活性のない真菌細胞系抽出物、TK活性のない細菌細胞系抽出物、精製哺乳動物細胞抽出物からのTMPKおよびヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NdK)の組み合わせ、精製真菌細胞抽出物からのTMPKおよびNdKの組み合わせ、精製細菌細胞抽出物からのTMPKおよびNdKの組み合わせ、組換え哺乳動物TMPKおよび組換え哺乳動物NdKの組み合わせ、組換え真菌TMPKおよび組換え真菌NdKの組み合わせ、ならびに組換え細菌TMPKおよび組換え細菌NdKの組み合わせから選ばれる。キナーゼが、上記組み合わせにおける異なる源から来るかもしれないことを理解すべきである。酵素源が、サッカロミセス・セレビシエの抽出物などの酵母細胞抽出物であるのが好ましい。
【0016】
もう1つの態様において、組み込まれた修飾ヌクレオシドは、対応して修飾されたデオキシヌクレオシドから誘導される。
さらに別の態様において、修飾デオキシヌクレオシドキナーゼ酵素基質は、ブロモデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、フルオロデオキシウリジンおよびビニルデオキシチミジンから選ばれ、ブロモデオキシウリジンが好ましい。
好ましい態様において、固相表面は、たとえば、プラスチックマイクロタイタープレートなどのプラスチック表面である。しかし、固相表面は、プラスチックビーズ、磁性ビーズおよびチップスもしくはビーズとしてのアガロースもしくはシリカ表面などの親和性分子がそれに結合することができる別の素材であってもよい。
【0017】
さらに別の態様において、固相表面結合一本鎖ポリヌクレオチドは、活性化プレートにおいて、その5'−末端を介して結合するか、またはイミダゾールを用いて固定される。
本発明方法によって分析される生体サンプルが、血液、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)(4)、胸膜液、腹水、組織、細胞およびその抽出物から選ばれるのが好ましい。組織および細胞サンプルは、細胞質ゾルまたは核抽出物サンプルを意味する。
【0018】
本発明はまた、数個の別々の容器中に、プライマーおよび/またはテンプレートとしての固相表面結合一本鎖ポリヌクレオチ、テンプレートおよび/またはプライマーとしての未結合一本鎖ポリヌクレオチド、キナーゼ酵素基質としての修飾デオキシヌクレオシド、リン酸供与体、ヌクレオチド重合酵素、およびチミジンキナーゼ(TK)のないキナーゼ酵素源および緩衝液を含む、生体サンプル中のチミジンキナーゼ(TK)活性の測定用アッセイキットに関する。
【0019】
本発明アッセイキットの好ましい態様において、キットは、アッセイの標定のための基準TKを含む。適当な基準の例は、腫瘍疾患を有する哺乳動物からの血清であり、動物血清に増殖細胞を懸濁する。
本発明アッセイキットのさらなる好ましい態様において、キットはさらに、1つまたは数個のウエルに表面結合一本鎖ポリヌクレオチドを含む、1つまたは数個のマイクロタイタープレートを含む(18)。
本発明キットの別の態様において、アッセイキットはさらに、修飾デオキシヌクレオシドに対する親和性をもつ標識親和性分子、好ましくは、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された抗体などの酵素標識親和性複合体を含む。
【0020】
本発明アッセイキットのさらなる態様において、キナーゼ酵素源は、TK活性のない哺乳動物細胞系抽出物、TK活性のない真菌細胞系抽出物、TK活性のない細菌細胞系抽出物、精製哺乳動物細胞抽出物からのチミジル酸キナーゼ(TMPK)およびヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NdK)の組み合わせ、精製真菌細胞抽出物からのTMPKおよびNdKの組み合わせ、精製細菌細胞抽出物からのTMPKおよびNdKの組み合わせ、組換え哺乳動物TMPKおよび組換え哺乳動物NdKの組み合わせ、組換え真菌TMPKおよび組換え真菌NdKの組み合わせ、ならびに組換え細菌TMPKおよび組換え細菌NdKの組み合わせから選ばれる。キナーゼが、上記組み合わせにおける異なる源から来るかもしれないことを理解すべきである。酵素源が、サッカロミセス・セレビシエの抽出物などの酵母細胞抽出物であるのが好ましい。
【0021】
本発明はさらに、哺乳動物、特にヒトにおけるガンまたは特定のウイルス感染症などの細胞増殖性障害または疾患の診断、観察および/または予後における本発明方法および/またはアッセイキットの使用に関する。
本発明はさらに、たとえば、リン酸チミジンの形成を妨害することができる、酵素経路に影響を及ぼす新規薬物候補などの化合物のスクリーニングにおける本発明方法および/またはアッセイキットの使用に関する。
本発明の2つのこの前に言及した態様は、代替的方法で、すなわち、本発明方法および/または本発明アッセイキットを含む、哺乳動物、特にヒトにおけるガンまたは特定のウイルス感染症などの細胞増殖性障害または疾患の診断、観察および/または予後における使用方法として、および本発明方法および/または本発明アッセイキットを含む、たとえば、リン酸チミジンの形成を妨害するか、または核酸合成を妨げることができる、酵素経路に影響を及ぼす新規薬物候補などの化合物のスクリーニングにおける使用方法として、明確に表すこともできる。
【0022】
本発明方法の重要な特徴は、体液サンプル中のTK活性の測定が、TK活性のない細胞抽出物を利用することによって達成されることである。これをBrdUMP組み込みの好ましい固相免疫検出と組み合わせることにより、現在の放射性方法(プロリフィゲン(登録商標) TK−REA、DiaSorin S.p.a.Saluggia、イタリー)(2、3)に関連する問題および(15、16)に記載の非放射性方法に関連する問題の両方が克服される。本発明は、血清のTK活性の検出のための非放射性方法およびキットを提供するのみならず、本発明方法は、行いやすく、強固であり、診断目的にとって分析的に有用な方法をも提供する。
【0023】
本発明方法において生じるリン酸化ステップにとって、緩衝液中の基本反応混合物に存在するリン酸供与体のための絶対的な条件がある。リン酸供与体として、いくつかのヌクレオチド三リン酸、特にATPを用いることができる。選択が、固相表面上のプライマー/テンプレート系の成長鎖に組み込まれるようにならないヌクレオチドであるのが好ましい。リン酸供与体として、リボ三リン酸ヌクレオチドを用いるのが特に好ましい。
【0024】
本発明の1つの態様において、生体サンプルがTKのための源のみを提供するように、緩衝液中で、テンプレートおよび/またはプライマーとしての固相表面に結合した一本鎖ポリヌクレオチド、テンプレートおよび/またはプライマーとしての未結合一本鎖ポリヌクレオチドおよびTK活性のない細胞抽出物を含む基本反応混合物と生体サンプルを接触させることを含む、該サンプル中のTK活性の測定方法を提供する。次いで、固相表面に結合した新たに合成された二本鎖核酸にポリメラーゼによって組み込まれた修飾ヌクレオシドの量を測定することによって、生体サンプル中のTK活性を測定する;たとえばBrdUMPのポリメラーゼ直接固相組み込みを行い、次いで、組み込まれたBrdUに対する酵素−抗体複合体を用いることによって検出する。
【0025】
好ましい態様において、TK活性のない抽出物は、真菌細胞の抽出物に由来する。さらに別の好ましい態様において、該抽出物は、哺乳動物細胞に由来する。さらなる好ましい態様において、TK活性のない抽出物は、たとえば、これに限定されるものではないが、親和性精製を用いる精製哺乳動物細胞抽出物に由来する。もう1つの好ましい態様において、TK活性のない抽出物は、組換え細胞からの組換え酵素TMPK(チミジル酸キナーゼ;EC 2.7.4.9;ATP:dTMP ホスホトランスフェラーゼ)とNdK(EC 2.7.4.6;ヌクレオシド二リン酸(NDP)キナーゼ)とを組み合わせることによって構築される;例として、大腸菌などの適当な細菌宿主株に発現したクローン酵母TMPKおよびNdK遺伝子が挙げられるが、これらに限定されるものではない。さらに別の好ましい態様において、該抽出物は、真菌に由来する。特に好ましい態様において、TK活性のない細胞抽出物は、パン酵母であるサッカロミセス・セレビシエに由来する。
【0026】
本発明は、生体サンプルに存在するTK活性が、修飾ヌクレオシドのポリメラーゼ直接組み込みと組み合わせてキナーゼ酵素源としてTK活性のない細胞抽出物を用いることによって、検出および測定されうることを明らかにする。
組み込まれた修飾ヌクレオシドの量の測定は、たとえば、BrdUMPにおけるBrなどのヌクレオシドの修飾の検出によるなどの種々多様な方法で行うことができる。本発明は、免疫学的方法、すなわち、酵素免疫吸着測定法(ELISA)の使用によって明らかにされる。
したがって、生体サンプル中の細胞増殖レベルに関連する組み込まれた修飾ヌクレオシドの測定のために、酵素標識親和性複合体を用いる。親和性分子の例として、モノクローナル抗体またはその抗原結合フラグメントなどの抗体が挙げられる。
【0027】
本発明は、現在好ましい修飾ヌクレオシドであるBrdUおよびBrdUに対する抗体の使用によって例証されるが、いくつかの他の修飾ヌクレオシドが当業界で公知であり、TKによってリン酸化することができ、したがって、本発明方法において用いることができる。これらとして、ビニルデオキシチミジン、FdUおよびIdU(図2A)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。実際、2つのこの前に言及した修飾ヌクレオシドが、本発明方法において用いられており、これらの実験においても入手しうる抗−BrdU抗体複合体を用いたので、おそらく理想的なモノクローナル抗体が無いことにより、より長いインキュベーション時間を必要とするが、BrdUに匹敵する結果を得ている。
【0028】
好ましい態様において、固相表面プライマーテンプレートセットアップへのBrdUMPの組み込みのために用いたポリメラーゼは、RNA依存性DNAポリメラーゼ(RNAテンプレート依存性DNAポリメラーゼ=逆転写酵素)(RT)であり、固相表面結合核酸テンプレートは、ポリ−rA(ポリリボアデニル酸)である。もう1つの等しく好ましい態様において、ポリメラーゼは、DNA依存性DNAポリメラーゼであり、固相表面結合核酸テンプレートは、オリゴ−dAであり、プライマーは、プライマーに相補的なより短いオリゴ−dTである。さらなる態様において、ポリメラーゼは、当業界で公知のポリメラーゼのいずれかであり、固相結合テンプレートは、ホモポリマー領域のある(および無い)種々のDNAであり、より短いプライマーは、該テンプレートの可変領域またはホモポリマー部分のいずれかに相補的である。核酸がどのように表面に結合するかに応じて、テンプレートまたはプライマーのいずれかが表面に結合する。条件は、初期プライマー/テンプレート系を形成する2つのリボ核酸鎖があり得ないことである。
【0029】
多くの天然および修飾DNA依存性DNAポリメラーゼが、当業界で知られている;例として、種々の源からの真核DNAポリメラーゼアルファ、大腸菌DNAポリメラーゼI、大腸菌DNAポリメラーゼIからの修飾クレノーフラグメント、天然または修飾ファージT4ポリメラーゼ、天然または修飾サーモフィルス・アクアチカスからのTaqポリメラーゼ、サーモコッカス・リトラリスからのVentポリメラーゼおよびニューモコッカス・フリオウサスからのPfuポリメラーゼが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0030】
数種の天然および修飾RNA依存性DNAポリメラーゼ(逆転写酵素=RT)(EC:2.7.7.49)が、当業界で知られている;例として、アルファルファモザイクウイルスRT AMV−RT)、モロニーマウス白血病ウイルスRT(M−MuLV−RT)、サル免疫不全ウイルス(SIV RT)およびヒト免疫不全ウイルス(HIV)(このタイプのポリメラーゼ群の典型的な例である)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0031】
テンプレートの長さは、30〜300ヌクレオチド長であるのが好ましく、プライマーは、10〜30ヌクレオチド長であるのが好ましい。ポリスチレンプラスチック96ウエルマイクロウエルプレートの固相表面にタンパク質を共有結合させる方法は、当業界で周知である。ポリスチレン表面への結合は、イミダゾール(この技術の一例に過ぎないが)の使用によって促進することができる。5'−アミン修飾オリゴヌクレオチドプライマーをカップリングさせるための1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド(EDCC)活性化表面の使用は、光カップリングを用いる当業界において周知である。
【0032】
酵素免疫吸着測定法(ELISA)を使用する、サンプル中の生体分子の測定のための技術の種々多様な使用方法は、当業界で周知である。好ましい態様において、ハプテンBrdUに対するモノクローナル抗体が、酵素アルカリホスファターゼ(AP)(アルカリホスファターゼ:オルトリン酸−モノエステル・ホスホヒドロラーゼ(アルカリ最適)、EC 3.1.3.1.)に結合する。しかし、たとえば、西洋ワサビペルオキシダーゼ(過酸化水素酸化還元酵素 EC 1.11.1.7)(HRP)といったような抗−BrdU抗体に結合する酵素などの、ELISA手順に有用な従来技術において知られているその他の酵素を、本発明に用いることができる。もう1つのアプローチにおいて、当業界で知られているクロマトフォア、フルオロフォア、ルミノフォアのどれでも、たとえば、抗−BrdU抗体などのトレーサー抗体に結合させることができる。
【0033】
APまたはHRPのいずれかに対する数種の適当な基質が、当業界で周知である。APによる基質p−ニトロフェニルリン酸(pNPP)の切断により、基質の色は無色から黄色に変わる。吸光度は、分光高度計を用いて、波長405 nmにて読み取る。化学発光性AP基質として、アダマンチル 1,2−ジオキソエタンの誘導体(たとえば、AMPPD、CSPD、CDPおよびCDP−Star基質など;すべてTropix(Bedford、MA、US)により市販されている)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
これらは、APによる脱リン酸化において477 nmにて定常状態輝光を放出し、残りの分子は続いて分解する。APに対する蛍光基質の非限定的な例として、4−メチルウンベリフェリルリン酸塩(4−MUP)が挙げられる。MUPの脱リン酸化の後、残りのメチルウンベリフェリル(MU)を波長370 nmで励起させる。蛍光光度計を用いて、放出された蛍光を430 nmで検出する。
【0034】
略語
4−MUP:4−メチルウンベリフェリルリン酸塩
Al(OH)3:水酸化アルミニウム
AMPPD:アダマンチル 1,2−ジオキソエタンアリールリン酸
AP:アルカリホスファターゼ:EC 3.1.3.1;オルトリン酸−モノエステル・ホスホヒドロラーゼ(アルカリ最適)
ATP:アデノシン 5'−三リン酸
AZT:3'−アジド−3'−デオキシチミジン
BrdU:ブロモデオキシウリジン
BrdUMP:ブロモデオキシウリジン一リン酸
BrdUTP:ブロモデオキシウリジン三リン酸
CSF:脳脊髄液
DEAE:ジエチルアミノエチル
DTT:ジチオスレイトール
EDCC:1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド
EDTA:エチレンジアミン四酢酸
EGTA:エチレングリコール−ビス[ベータ−アミノエチルエーテル]−N,N,N'N'−四酢酸
ELISA:酵素免疫吸着測定法
FdU:フルオロデオキシウリジン
HIV:ヒト免疫不全ウイルス
HRP:過酸化水素酸化還元酵素 EC 1.11.1.7
IdU:ヨードデオキシウリジン
NdK:ヌクレオシド二リン酸キナーゼ:EC 2.7.4.6
pNPP:p−ニトロフェニルリン酸
PSA:前立腺特異抗原
RT:逆転写酵素;RNA依存性DNAポリメラーゼ:EC:2.7.7.49
SIV RT:サル免疫不全ウイルス逆転写酵素
TK:チミジンキナーゼ:E.C.2.7.1.21;ATP:チミジン−5'−ホスホトランスフェラーゼ
TMPK:チミジル酸キナーゼ:EC 2.7.4.9;ATP:dTMP ホスホトランスフェラーゼ
TMP:デオキシチミジン一リン酸
TTP:デオキシチミジン三リン酸
dUTP:2'−デオキシウリジン 5'−三リン酸
【0035】
実施例1:TK活性を補完する酵母サッカロミセス・セレビシエからのキナーゼ抽出物の調製
Uppsala Yeast Resource competence centre(www.yeastlab.vbiol.slu.se)と共同で、キナーゼ活性を補完/救出することを含む酵母抽出物を調製した。要約すると;
酵母細胞抽出物の調製
200 mLのGal培地(1%酵母抽出物;Bacto(登録商標)酵母抽出物.DIFCO;2% ペプトン、Bacto(登録商標)ペプトン、BD;2% ガラクトース(Sigma)および2% 寒天(Bacto(登録商標)寒天;DIFCO)に新鮮なサッカロミセス・セレビシエ菌株G116(遺伝子型:MATa ura3−52 his3 leu2::pLEU−lexAop6)を播種する。酵母細胞を30℃にて一夜増殖させ、OD600 nm=約1.2の密度に到達させる。次に、50 mLのFalcon(登録商標)ポリプロピレンスクリューキャップチューブを用い、4℃にて230XGで5分間遠心分離することにより、細胞を収集する。ペレットをそれぞれ再懸濁し、40 mLの滅菌氷冷MilliQ(登録商標)水で洗浄し、再度、4℃にて230XGで5分間遠心分離する。MilliQ(登録商標)水を傾冩し、捨てる。次いで、ピペット操作により細胞を残りのMilliQ(登録商標)水に再懸濁する。
50 mLのFalcon(登録商標)ポリプロピレンスクリューキャップチューブ中の各酵母懸濁液(約0.8g/2.2 mLのマイクロチューブ、Sarstedt(Cat#:72.694.006)を、酵母添加前に秤量した2.2 mLのスクリューキャップマイクロチューブに移し、冷所(8℃)において230XGで2分間遠心分離する。残りの水を傾冩し、捨てる。残りのペレットを秤量する(約0.4 g/2.2 mLのマイクロチューブ)。重量を2.2 mLのマイクロチューブの外側に記録する。次いで、補完抽出物の調製まで、細胞を−80℃にて貯蔵する。
【0036】
補完酵母抽出物の調製
完全に解凍するまで(15〜20分間)、酵母細胞ペレットを25−28℃にし、次いで、酵母抽出物調製手順まで氷浴に保持する。引き続き行う作業はすべて冷所設備中で行う。それぞれ0.4 gの酵母細胞ペレットを含む2.2 mLのマイクロチューブに、マイクロチューブペレット体積表面インジケーターを用いて調節した、約0.5ペレット体積の3X酵母破砕緩衝液を加える(1X破砕緩衝液、表1参照)。次いで、1 mLのジルコニウムビーズ(ビーズ平均直径1 mm;Biospec Products、Inc.、Bartlesville PO Box 788、OK 74005、USA)を加える。次いで、チューブを1X破砕緩衝液(3X破砕緩衝液=MilliQ(登録商標)水で3倍に希釈した破砕緩衝液) で完全に(ほとんど溢れるくらい)満たし、注意深くしっかりとフタを閉める。チューブをMini−BeadBeater−8(登録商標)機(Biospec Products、Inc.、Bartlesville PO Box 788、OK 74005、USA)に入れる。ビーティングの間の1〜2分間を氷浴(0℃)で冷却しながら、酵母細胞懸濁液のビーズビーティングをそれぞれ1分間ずつ5回行う。次いで、マイクロチューブ遠心分離機で10000XGにて2分間遠心分離を行うことにより、細胞破片およびビーズを除去する。上清を新たな2.2 mLのマイクロチューブに移し、10000XGにて5分間遠心分離する。酵素含有酵母抽出物上清を10 μLのアリコートにして2.2 mLのマイクロチューブに入れ、次いで、使用するまで−80℃にて貯蔵する。
【0037】
表1:1X破砕緩衝液の成分
Tris−酢酸 150 mM
酢酸カリウム 50 mM
グリセロール 20% v/v
EDTA 1 mM
DTT 1 mM
完全プロテアーゼインヒビター錠剤(Roche Inc.) 75 mL当たり1錠
MilliQ(登録商標)水 必要量まで
【0038】
実施例2:リン酸化および固相テンプレート/プライマー複合体への組み込みによる、調製された酵母抽出物(RTとともに)のBrdUMP濃度を検出する能力
この実験では、表2に挙げる試薬を含む緩衝液中の基本反応混合物を用いる。
表2:BrdUMPアッセイ用の基本反応混合物および緩衝液
成分 最終濃度
ビス−トリスプロパン緩衝液 pH 7.5 20.4 mM
オリゴヌクレオチドプライマー(odT) 0.08 μg/ml
スペルミジン 0.1 mM
スペルミン 0.1 mM
ATP 0.5 mM
MgCl 10.0 mM
EGTA 0.25 mM
トリトン X−100 0.85 % v/v
DTT 7.8 mM
SIV RT 10 ng mL−1
MilliQ(登録商標)水 必要な量まで
【0039】
各成分からの貯蔵液から緩衝液中の基本反応混合物を調製し、すぐに100 μLを固定ポリ−rAを含む96ウエルプレートの各ウエルに加える(3枚のプレートをセットする)。22−25℃にて酵母抽出物を解凍し、使用するまで氷浴上に置く。抽出物を連続的に5倍希釈し、25 μLの最高濃度をA列、次の濃度をB列とする方式で、順に加える。BrdUMPを1.3 x 10−5Mから開始して1.3 x 10−11Mまで連続的に10倍希釈する。最高濃度は、実施例1に記載した調製物の250分の1の濃度に対応する。最高濃度を96ウエルプレートのカラム1のウエル、次の濃度をカラム2とする方式で、順に加えるBrdUMPを含まないカラムを各プレートにおいて作成し、次いで、覆いをし、プラスチック粘着テープ(Fasson S695、カタログ番号SH 236269、Nunc Denmark)で密封する。次いで、すべてのプレートを33℃にてインキュベートする。第1のプレートをインキュベーションの3時間後に洗浄し、−20℃に置く。第2のプレートをインキュベーションの24時間後に洗浄し、−20℃に置き、第3のプレートをインキュベーションの48時間後に洗浄し、−20℃に置く。プレートを−20℃から取り出し、4x1Lの洗浄緩衝液(pH8.6)(3 mM Tris−HCl、0.01% Tween−20、0.5% トリトン X−100、0.25% EtOH、CavidiTech AB、Uppsala Sweden)に連続的に4回浸すことによって洗浄する。固相表面に組み込まれたBrdUMPを視覚化するために、100μLのトレーサー(抗−BrdUMPモノクローナル抗体に結合したAP、すなわち、アルカリホスファターゼ、RT産物トレーサーHS、CavidiTech AB、Uppsala、Sweden)を各ウエルに加え、33℃にて90分間インキュベートする。プレートを4x1Lの洗浄緩衝液(pH8.6)(3 mM Tris−HCl、0.01% Tween−20、0.5% トリトン X−100、0.25% EtOH、CavidiTech AB、Uppsala Sweden)に連続的に4回浸すことによって再度洗浄する。pNPP基質0.5 mgmL−1を含有する溶液125 μlを洗浄した後、200 mMのTris−HCL pH 9.8中の1 mMのMgCl2を各ウエルに加える。室温にてプレートをインキュベートする。OD405における吸光度を、w1=405およびw2=630 nmの二波長セットを有するフィルターを用いてSyva Micro Trak(登録商標) EIAリーダーで、5分後および異なる間隔で24時間まで記録する。
【0040】
5分後の吸光度読み取りを、各ウエルのいずれかの読み取り時点における各吸光度から差し引く。次いで、吸光度の存在を、使用した酵母抽出物の量およびBrdUMP濃度に対してプロットする。図3から、使用した酵母の量が多いとシグナルが増加することが見られる。1.3 x 10−11Mまで低下したBrdUMP濃度がが検出される。図3参照。
【0041】
実施例4:提示されたBrdUMP検出システムのs−TK活性を測定する能力および放射性TKアッセイとのその相関
この実験のために、プロリフィゲン(登録商標)TK−REA(Cat# 324250/50 tablets、Diasorin S.p.A、Saluggia、Italy)に照らして、正常なTK活性血清(たとえば、<5 U)から、非常に高いTK活性(>800 U)までの範囲の20個の異なる血清を選択する。表2にしたがって、緩衝液中の基本反応混合物を調製するが、さらに最終濃度.5 x 10−5Mを付与するBrdUおよび酵母抽出物を、実施例2で付与される最高濃度の12分の1の濃度になるように加える。125 μLの緩衝液中のこの基本反応混合物を、固定ポリ−rAを含む96ウエルプレートの各ウエルに加える。
【0042】
1:5から開始して1:625まで、緩衝液中の基本反応混合物で血清を連続的に5倍希釈する。25 μLの各血清希釈物を緩衝液中の基本反応混合物を含むウエルプレートに加える;すなわち、5、1、0.2、0.04 μLの各患者の血清に対応する体積を分析する。
【0043】
次いで、プラスチック粘着テープ(Fasson S695、カタログ番号SH 236269、Nunc Denmark)でプレートを密封し、33℃にて2日間インキュベートする。4x1Lの洗浄緩衝液(pH8.6)(3 mM Tris−HCl、0.01% Tween−20、0.5% トリトン X−100、0.25% EtOH、CavidiTech AB、Uppsala Sweden)に連続的に4回浸すことによってプレートを洗浄する。固相表面に組み込まれたBrdUMPを視覚化するために、100mLのトレーサー(抗−BrdUMPモノクローナル抗体に結合したAP、すなわち、アルカリホスファターゼ、RT産物トレーサーHS、CavidiTech AB、Uppsala、Sweden)を各ウエルに加え、次いで、プレートを33℃にて90分間インキュベートする。プレートを4x1Lの洗浄緩衝液(pH8.6)(3 mM Tris−HCl、0.01% Tween−20、0.5% トリトン X−100、0.25% EtOH、CavidiTech AB、Uppsala Sweden)に連続的に4回浸すことによってさらに洗浄する。1 mMのMgCl2中のpNPP基質0.5 mgmL−1を含有する溶液125 μlを洗浄した後、200 mMのTris−HCL pH 9.8を各ウエルに加える。室温にてプレートをインキュベートする。OD405における吸光度を、w1=405およびw2=630 nmの二波長セットを有するフィルターを用いてSyva Micro Trak(登録商標) EIAリーダーで、pNPP基質添加の5分後およびその後は異なる間隔で24時間まで記録する。
【0044】
5分の時点の吸光度読み取りを、各ウエルのいずれかの読み取り時点における各吸光度から差し引く。ELISAリーダーの読み取り範囲内の読み取りを用いて、A405値を時間当たりのA405に再計算する。1 μLおよび5 μLを用いる患者血清についての結果をそれぞれ図4に示すが、図4では、存在する放射性プロリフィゲン(登録商標)TK−REA(カタログ番号324250/50錠剤、Diasorin S.p.A、Saluggia、Italy)にしたがって、吸光度は血清に存在するTK活性に関連づけられる。結果は、本発明アッセイと存在する放射性プロリフィゲン(登録商標)TK−REAとの間の強い相関関係を示す。
【0045】
参考文献
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15. Ohrvik A, Lindh M, Einarsson R, Grassi J, Eriksson S. Sensitive nonradiometric method for determining thymidine kinase 1 activity. Clin Chem. 2004 Sep;50(9):1597-606. Epub 2004 Jul 09.

16. Armstrong B. The development of a TK tumor maker system for cancer diagnosis, staging and treatment monitoring. Theses submitted for the degree of doctor of philosophy, University of Ulster., 1991

17. Chaperon. D. New recombinant host cell line comprising a thymidylate kinase gene and/or thymidylate synthase gene that have been functionally complemented by at lest one functional homologue of an other organism, useful in activity testing. WO200411627 Pr. 25.07.2002 US2002398948. PCT filing date 24.07.2003.

18. Ekstrand D. H. L., Awad R., Kallander Clas F.R and J. Simon Gronowitz. A Sensitive Assay For Quantification of RT Activity, based on the use of Carrier Bound Template and Non Radioactive Product Detection, with Special Reference to HIV Isolation. Biotechn. Appl. Biochem. (1996) 23, 95-105.
【0046】
TK活性固相表面ELISAアッセイについての図面である。
図2の解説は以下のとおり。
A.ヌクレオシド

B.ヌクレオチド一リン酸

C.ヌクレオチド三リン酸

D.アジドチミジン

【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】哺乳動物細胞におけるTTP産生の異なる経路を示す。*経路:I.デノボ経路、II.サルベージ経路。*関連酵素:1.チミジンキナーゼ(TK)、2.チミジル酸シンターゼ(TS)、3.リボヌクレオチドレダクターゼ(RR)、4.チミジル酸キナーゼ(dTMPK)、5.デオキシリボヌクレオシド一リン酸キナーゼ(dNMPK)、6.ヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NDPK)、7.ターミナルトランスフェラーゼ(TT)、8.RNA依存性DNAポリメラーゼ(RT)、9.DNA依存性DNAポリメラーゼ(DNA Pol)。*重要な調節因子:A.フィードバック阻害、B.酵素デオキシウリジン−トリホスファターゼ(dUTPase)による脱リン酸化。
【図2】チミジンヌクレオシドおよびヌクレオチド類縁体に対する修飾を示す。
【図3】様々な濃度の酵母抽出物(RTとともに)の種々のBrdUMP濃度を検出する能力を示す。
【図4】2日間の抽出物インキュベーションおよび2つの異なる量(5および1マイクロリットル)の各血清を用いて行う本発明アッセイ(A405)のs−TK測定能力、およびプロリフィゲン(登録商標) TK−REA(TK U)との相関を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
固相表面に結合したプライマーまたはテンプレートとしての一本鎖ポリヌクレオチドを含む容器中で、緩衝液中の以下の成分:テンプレートおよび/またはオプライマーとしての未結合一本鎖ポリヌクレオチド、キナーゼ酵素基質としての修飾デオキシヌクレオシド、リン酸供与体、ヌクレオチド重合酵素およびTK活性のないキナーゼ酵素源を含む基本反応混合物を生体サンプルと接触させ、該混合物をインキュベートし、必要に応じて、インキュベートした混合物を洗浄して、未結合の反応成分を除去し、固相表面に結合したプライマーまたはテンプレートに組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量を測定し、次いで、組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量から生体サンプル中に存在するTK活性を測定するステップを含む、生体サンプル中のチミジンキナーゼ(TK)活性の測定方法。
【請求項2】
インキュベートした混合物を洗浄し、インキュベートした混合物に、修飾デオキシヌクレオシドに対する親和性をもつ標識親和性分子を加え、標識を用いて結合した標識親和性分子の量を測定することにより、組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量を測定することによって、組み込まれた修飾デオキシヌクレオシドの量の測定を行う、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
キナーゼ酵素源が、TK活性のない哺乳動物細胞系抽出物、TK活性のない真菌細胞系抽出物、TK活性のない細菌細胞系抽出物、精製哺乳動物細胞抽出物からのチミジル酸キナーゼ(TMPK)およびヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NdK)の組み合わせ、精製真菌細胞抽出物からのTMPKおよびNdKの組み合わせ、精製細菌細胞抽出物からのTMPKおよびNdKの組み合わせ、組換え哺乳動物TMPKおよび組換え哺乳動物NdKの組み合わせ、組換え真菌TMPKおよび組換え真菌NdKの組み合わせ、ならびに組換え細菌TMPKおよび組換え細菌NdKの組み合わせ、ならびに言及した源からのTMPKおよびNdKのいずれかの組み合わせから選ばれる、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
キナーゼ酵素源が、酵母細胞抽出物である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
酵母細胞抽出物の酵母が、サッカロミセス・セレビシエである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
修飾ヌクレオシドが、対応して修飾されたデオキシヌクレオシドから誘導される請求項1−5のいずれか1つに記載の方法。
【請求項7】
修飾デオキシヌクレオシドが、ブロモデオキシウリジン、ヨードデオキシウリジン、フルオロデオキシウリジンおよびビニルデオキシチミジンから選ばれる請求項1−6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
修飾デオキシヌクレオシドが、ブロモデオキシウリジンである請求項7に記載の方法。
【請求項9】
固相表面が、プラスチック表面である請求項1−8のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
プラスチック表面が、プラスチックマイクロタイタープレートである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
固相表面結合一本鎖ポリヌクレオチドが、活性化プレートにおいて、5'−末端を介して結合するか、またはイミダゾールを用いて固定される請求項1に記載の方法。
【請求項12】
生体サンプルが、血液、血清、血漿、脳脊髄液(CSF)、胸膜液、腹水、組織、細胞およびその抽出物から選ばれる請求項1に記載の方法。
【請求項13】
数個の別々の容器中に、プライマーおよび/またはテンプレートとしての固相表面結合一本鎖ポリヌクレオチ、テンプレートおよび/またはプライマーとしての未結合一本鎖ポリヌクレオチド、キナーゼ酵素基質としての修飾デオキシヌクレオシド、リン酸供与体、ヌクレオチド重合酵素、チミジンキナーゼ(TK)のないキナーゼ酵素源および緩衝液を含む、生体サンプル中のチミジンキナーゼ(TK)活性の測定用アッセイキット。
【請求項14】
アッセイの標定のための基準TKをさらに含む請求項13に記載のアッセイキット。
【請求項15】
1つまたは数個のウエルに表面結合一本鎖ポリヌクレオチドを含む、1つまたは数個のマイクロタイタープレートをさらに含む請求項13に記載のアッセイキット。
【請求項16】
修飾デオキシヌクレオシドに対する親和性をもつ標識親和性分子をさらに含む請求項13に記載のアッセイキット。
【請求項17】
標識親和性分子が、酵素標識親和性複合体である請求項16に記載のアッセイキット。
【請求項18】
酵素標識親和性複合体が、アルカリホスファターゼまたは西洋ワサビペルオキシダーゼで標識された抗体である請求項17に記載のアッセイキット。
【請求項19】
TK活性のないキナーゼ酵素源が、TK活性のない哺乳動物細胞系抽出物、TK活性のない真菌細胞系抽出物、TK活性のない細菌細胞系抽出物、精製哺乳動物細胞抽出物からのチミジル酸キナーゼ(TMPK)およびヌクレオシド二リン酸キナーゼ(NdK)の組み合わせ、精製真菌細胞抽出物からのチミジル酸キナーゼおよびNdKの組み合わせ、精製細菌細胞抽出物からのチミジル酸キナーゼおよびNdKの組み合わせ、組換え哺乳動物チミジル酸キナーゼおよび組換え哺乳動物NdKの組み合わせ、組換え真菌チミジル酸キナーゼおよび組換え真菌NdKの組み合わせ、ならびに組換え細菌チミジル酸キナーゼおよび組換え細菌NdKの組み合わせから選ばれる請求項13に記載のアッセイキット。
【請求項20】
キナーゼ酵素源が、酵母細胞抽出物である請求項19に記載のアッセイキット。
【請求項21】
哺乳動物、特にヒトにおけるガンなどの細胞増殖性障害または疾患の診断、観察および/または予後における請求項1−12のいずれか1つに記載の方法および/または請求項13−20のいずれか1つに記載のアッセイキットの使用。
【請求項22】
リン酸チミジンの形成を妨害するか、または核酸合成を妨げることができる、酵素経路に影響を及ぼす新規薬物候補などの化合物のスクリーニングにおける請求項1−12のいずれか1つに記載の方法および/または請求項13−20のいずれか1つに記載のアッセイキットの使用。
【請求項23】
請求項1−12のいずれか1つに記載の方法および/または請求項13−20のいずれか1つに記載のアッセイキットを含む、哺乳動物、特にヒトにおけるガンなどの細胞増殖性障害または疾患の診断、観察および/または予後における使用方法。
【請求項24】
請求項1−12のいずれか1つに記載の方法および/または請求項13−20のいずれか1つに記載のアッセイキットを含む、リン酸チミジンの形成を妨害するか、または核酸合成を妨げることができる、酵素経路に影響を及ぼす新規薬物候補などの化合物のスクリーニングにおける使用方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2008−531012(P2008−531012A)
【公表日】平成20年8月14日(2008.8.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−556999(P2007−556999)
【出願日】平成18年2月24日(2006.2.24)
【国際出願番号】PCT/SE2006/000246
【国際公開番号】WO2006/091158
【国際公開日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(507287423)レンネルボル・ホールディング・アクチボラゲット (1)
【Fターム(参考)】