説明

チャイルドプロテクタ機構

【課題】チャイルドプロテクタ機構にて、第1レバーと第2レバー間に配設されるブッシュの組付性を良好とする。
【解決手段】チャイルドプロテクタ機構10は、ベース部材(11a)、第1レバー(12)、第2レバー(13)、第1レバーと第2レバー間に配設されるブッシュ(14)を備えると共に、ブッシュ(14)をアンセット位置またはセット位置に移動させるためのチャイルドプロテクタレバー(15)を備えている。ブッシュ(14)は、第1レバー(12)との間に設けた位置保持手段(A)により、アンセット位置とセット位置のそれぞれにて保持される。このため、ブッシュ(14)と第1レバー(12)のベース部材(11a)への組付に際して、ブッシュ(14)が第1レバー(13)に対して所定の位置(例えば、アンセット位置)に保持されて動かない。したがって、ブッシュ及び第1レバーの組付性およびチャイルドプロテクタレバーの組付性が良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用ドアロック装置のチャイルドプロテクタ機構、すなわち、車室内の乗員(子供)がインサイドドアハンドルを開操作してドアを開放させようとしても開放を防止することが可能なプロテクタ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
車両用ドアロック装置のチャイルドプロテクタ機構は、例えば、下記特許文献1に示されていて、車両のドアに組付けられるベース部材と、このベース部材に対して回転可能に組付けられてラッチ機構に連係される第1レバー(特許文献1ではオープンレバーと記載されている)と、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられてインサイドドアハンドルに連動する第2レバー(特許文献1ではインサイドレバーと記載されている)と、前記第1レバーと前記第2レバー間に配設されてアンセット位置またはセット位置に保持可能なブッシュと、前記ベース部材に組付けられて前記ブッシュをアンセット位置またはセット位置に移動させることが可能なチャイルドプロテクタレバーを備えていて、前記ブッシュが前記チャイルドプロテクタレバーによりアンセット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュを介して前記第1レバーに伝達可能に構成され、前記ブッシュが前記チャイルドプロテクタレバーによりセット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュに対して空振りして前記第1レバーに伝達不能に構成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第4342502号公報
【0004】
上記した特許文献1に記載されているチャイルドプロテクタ機構においては、ブッシュがチャイルドプロテクタレバーに対して所定量自由に移動可能に組付けられていて、同ブッシュを含む各構成部材がベース部材に組付けられた状態にて、ベース部材に設けた節度部材(中間部位に節度すなわち山部を有するプレート)とチャイルドプロテクタレバーに設けた保持爪部が弾性的に係合して、チャイルドプロテクタレバーがベース部材に対してアンセット位置またはセット位置に保持されるように構成されている。なお、ブッシュとチャイルドプロテクタレバーはベース部材に組付けられる前にサブアッシィ化されている。
【発明の概要】
【0005】
(発明が解決しようとする課題)
上記した特許文献1に記載されているチャイルドプロテクタ機構においては、チャイルドプロテクタレバーのベース部材への組付に際して、ブッシュがチャイルドプロテクタレバーに対して自由に移動して、所定の位置に保持されない。このため、ブッシュおよびチャイルドプロテクタレバーのベース部材への組付けに際して、作業者はチャイルドプロテクタレバーに対してブッシュを所定の位置に保持した状態で、ブッシュおよびチャイルドプロテクタレバーをベース部材に組付ける必要があって、組付性が悪い。
【0006】
また、第2レバーの動きを第1レバーに伝達するためのブッシュがチャイルドプロテクタレバーに組付けられていて、第2レバーから第1レバーに伝達される作動ストロークを決めるブッシュの位置がチャイルドプロテクタレバーを介して決まる。このため、ブッシュの位置のバラツキ(作動ストロークのバラツキでもある)が大きくなりやすく、第1レバーおよび第2レバーやブッシュおよびチャイルドプロテクタレバーの寸法精度を厳しく管理する必要がある。
【0007】
(課題を解決するための手段)
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、当該チャイルドプロテクタ機構が、車両のドアに組付けられるベース部材と、このベース部材に対して回転可能に組付けられてラッチ機構に連係される第1レバーと、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられてインサイドドアハンドルに連動する第2レバーと、前記第1レバーに対して同レバーの長手方向に沿って移動可能に組付けられて前記第1レバーと前記第2レバー間に配設されアンセット位置またはセット位置に保持可能なブッシュと、前記ベース部材に組付けられて前記ブッシュを前記アンセット位置または前記セット位置に移動させることが可能なチャイルドプロテクタレバーを備えるとともに、前記第1レバーと前記ブッシュ間に設けられて前記第1レバーに対して前記ブッシュを前記アンセット位置と前記セット位置のそれぞれにて保持することが可能な位置保持手段を備えていて、
前記ブッシュが前記アンセット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュを介して前記第1レバーに伝達可能に構成され、前記ブッシュが前記セット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュに対して空振りして前記第1レバーに伝達不能に構成されている。
【0008】
この場合において、前記ブッシュは前記第1レバーに対して前記位置保持手段を介してサブアッシィ化されていて、前記第1レバーは、前記ベース部材に設けられて前記第1レバーを回転可能に支持する支持ピン部と、前記ベース部材に設けられて前記第1レバーと係合して前記第1レバーの初期位置を規定する係合壁と、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられて前記ラッチ機構と前記第1レバー間に介在し前記第1レバーと係合するオープンレバーによって、前記ベース部材に対する組付位置を規定されていることが望ましい。
【0009】
(発明の作用効果)
本発明によるチャイルドプロテクタ機構においては、ブッシュが、第1レバーに対して同レバーの長手方向に沿って移動可能に組付けられ、第1レバーとブッシュ間に設けられている位置保持手段によって、アンセット位置とセット位置のそれぞれにて保持される。このため、ブッシュと第1レバーのベース部材への組付に際して、ブッシュが第1レバーに対して位置保持手段により所定の位置(例えば、アンセット位置)に保持されて動き難い。したがって、ブッシュおよび第1レバーのベース部材への組付けや、その後に実施されるチャイルドプロテクタレバーのブッシュとベース部材への組付けに際して、作業者は第1レバーに対してブッシュを所定の位置に保持する必要がなくて、組付性が良い。
【0010】
また、第2レバーの動きを第1レバーに伝達するためのブッシュが第1レバーに組付けられていて、第2レバーから第1レバーに伝達される動き(作動ストローク)を決めるブッシュの位置が第1レバーおよび第2レバー以外の部材の寸法精度によって影響を受けることが無い。このため、チャイルドプロテクタレバーの寸法精度を厳しく管理することなく、ブッシュの位置のバラツキ(作動ストロークのバラツキでもある)を小さく抑えることが可能であり、生産性を向上させることが可能である。
【0011】
上記した本発明の実施に際して、前記ブッシュは、前記第1レバーの一側面に沿って移動可能な本体部と、この本体部の一端部から延出して前記第1レバーの先端部に形成されて同レバーの長手方向に延びる長溝に対して回転可能かつ長手方向に移動可能に係合するとともに同長溝を貫通する脚部と、前記本体部の中間部から延出して前記第1レバーの中間部に形成されて同レバーの長手方向に延びる長孔を貫通し前記本体部とにより前記第1レバーを挟持するとともに前記脚部の前記長溝に対する回転を規制し長手方向での移動を許容する腕部を備えていることも可能である。この場合において、前記第1レバーには他側面から隆起し同レバーの長手方向に沿って形成された山部が設けられ、前記ブッシュの前記腕部先端には前記第1レバーの他側面または前記山部と弾性的に係合する爪部が設けられていて、前記ブッシュが前記第1レバーに対して前記アンセット位置と前記セット位置間で移動するときに前記爪部が前記山部を乗り越えて移動するように設定されていることも可能である。この場合には、チャイルドプロテクタレバーのセット・アンセット操作時に、ブッシュが第1レバーに対してアンセット位置とセット位置間で移動することで、節度感(セット・アンセットの切換感)が得られる。
【0012】
また、上記した本発明の実施に際して、
前記ブッシュには前記チャイルドプロテクタレバーに設けた長孔に係合するピン部が設けられていて、前記チャイルドプロテクタレバーに設けた前記長孔が円弧状部と直線状部を有しており、
前記円弧状部は、前記チャイルドプロテクタレバーがアンセット位置に保持されている状態にて、前記第1レバーの回転中心を中心とする円弧形状に形成され、
前記直線状部は、前記円弧状部の一端から延びて前記第1レバーの回転中心から遠ざかる直線状に形成されていて、
前記チャイルドプロテクタレバーが前記アンセット位置に保持されていて、前記ブッシュが前記アンセット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュを介して前記第1レバーに伝達されて、前記ブッシュにおける前記ピン部が前記チャイルドプロテクタレバーにおける前記長孔の前記円弧状部を移動するように構成され、
前記チャイルドプロテクタレバーが前記アンセット位置から前記セット位置に移動されるときに、前記ブッシュにおける前記ピン部が前記チャイルドプロテクタレバーにおける前記長孔の前記円弧状部と前記直線状部に沿って移動して、前記ブッシュが前記アンセット位置から前記セット位置に移動するように構成されていることも可能である。
【0013】
この場合には、チャイルドプロテクタレバーをアンセット位置からセット位置に操作することにより、チャイルドプロテクタレバーに設けた長孔の直線状部にて、ブッシュをアンセット位置からセット位置に的確に(前記長孔の前記直線状部を設けないで、前記円弧状部を円弧状で延長させた場合に比して、作動効率よく)移動させることが可能であり、チャイルドプロテクタレバーの小型化が可能である。
【0014】
また、上記した本発明の実施に際して、前記ベース部材は前記ドアに組付けられるハウジングのハウジングボディであり、前記第1レバーは、前記ハウジングボディに一体的に設けた支持ピン部に回転可能に嵌合され、前記ハウジングボディに組付けられるハウジングカバーに一体的に設けた押え部によって前記支持ピン部の軸方向での移動を規制されていることも可能である。この場合には、第1レバーのベース部材に対する組付に際して、カシメピンが不要であり、組付性を改善してコスト低減を図ることが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明によるチャイルドプロテクタ機構を備えた車両用ドアロック装置の一実施形態(ハウジングボディからハウジングカバーを外した状態)を車両の内側からみた側面図である。
【図2】図1に示したチャイルドプロテクタ機構のアンセット状態における拡大側面図である。
【図3】図2の3−3線に沿った断面図である。
【図4】図1〜図3に示したブッシュ単品の三面図(正面図、左側面図、底面図)である。
【図5】図4に示したブッシュの上方斜視図である。
【図6】図5のブッシュを上下逆とした斜視図である。
【図7】図2に示したチャイルドプロテクタ機構のセット状態における側面図である。
【図8】図7の8−8線に沿った断面図である。
【図9】図1に示したチャイルドプロテクタ機構の第1インサイドオープンレバーとブッシュを一体でハウジングボディに組付けた状態の側面図である。
【図10】図2および図3に示したチャイルドプロテクタ機構の作動説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。図1は本発明によるチャイルドプロテクタ機構10を備えた車両用ドアロック装置100の一実施形態を示していて、この車両用ドアロック装置100は、車両の後方右側に装備されるドア(図示省略)に装着されるものであり、チャイルドプロテクタ機構10を備えるとともにラッチ機構20とロック機構30を備えている。なお、ラッチ機構20は、周知のように、ラッチ状態にてドアをボデー(図示省略の車体)に対して閉状態(ドアが閉じられた状態)で保持し、アンラッチ状態にてドアをボデーに対して開放可能とするもので、ボデーに固定されたストライカ(図示省略)に対して係脱可能なラッチ21(図1参照)を備えていて、ハウジング11に組付けられた状態でドアに組付けられるように構成されている。
【0017】
チャイルドプロテクタ機構10は、図1〜図3に示したように、ドアに組付けられる合成樹脂製のハウジング11と、このハウジング11に対して回転可能に組付けられてラッチ機構20に連係される金属製の第1インサイドオープンレバー(第1レバー)12と、ハウジング11に対して回転可能に組付けられてインサイドドアハンドル(図示省略)に連動する金属製の第2インサイドオープンレバー(第2レバー)13と、第1インサイドオープンレバー12に対して同レバーの長手方向に沿って移動可能に組付けられて第1インサイドオープンレバー12と第2インサイドオープンレバー13間に配設されアンセット位置またはセット位置に保持可能な合成樹脂製のブッシュ14を備えている。
【0018】
また、チャイルドプロテクタ機構10は、ハウジング11に回転可能に組付けられてブッシュ14をアンセット位置またはセット位置に移動させることが可能な合成樹脂製のチャイルドプロテクタレバー15を備えるとともに、第1インサイドオープンレバー12とブッシュ14間に設けられて第1インサイドオープンレバー12に対してブッシュ14をアンセット位置とセット位置のそれぞれにて保持することが可能な位置保持手段A(図3参照)を備えている。
【0019】
ハウジング11は、図1に示したハウジングボディ(ベース部材)11aと、図1ではハウジングボディ11aから取り外されて省略されているハウジングカバー11b(図3の仮想線参照)によって構成されている。ハウジングカバー11bは、ハウジングボディ11aに組付けられるように構成されていて、ハウジングボディ11aとによって形成される収容部内にチャイルドプロテクタ機構10とロック機構30の構成部材を収容可能である。
【0020】
第1インサイドオープンレバー12は、図1〜図3に示したように、一端部(基端部)12aに設けた取付孔12a1にてハウジングボディ11aに形成した支持ピン部11a1に回転可能に組付けられている。また、第1インサイドオープンレバー12は、その長手方向の中間部に形成した係合部12bにて図1に示したアウトサイドオープンレバー41(アウトサイドドアハンドルに連動するレバー)、オープンリンク42等を介してラッチ機構20に連係されていて、ロック機構30がアンロック状態にあるとき、図1および図2の図示時計回転方向に所定量回転されることによって、ラッチ状態のラッチ機構20をアンラッチ状態とすることが可能である。なお、ロック機構30がロック状態にあるときには、第1インサイドオープンレバー12が図1および図2の図示時計回転方向に所定量回転されても、ラッチ状態のラッチ機構20がアンラッチ状態とされないように構成されている。
【0021】
第2インサイドオープンレバー13は、図1〜図3に示したように、一端部(基端部)13aに設けた取付孔13a1にてハウジングボディ11aに形成した支持ピン部11a2に回転可能に組付けられている。また、第2インサイドオープンレバー13は、他端部(先端部)13bにてインサイドドアハンドル(図示省略)と連動するように操作ケーブル(図示省略)を介して連結されている。また、第2インサイドオープンレバー13は、その長手方向の中間部に形成した係合部13cにて、アンセット位置(図2の位置)に保持されているブッシュ14の脚部14bと係合可能である。このため、第2インサイドオープンレバー13がインサイドドアハンドルの開操作により図1および図2の図示反時計回転方向に所定量回転されると、アンセット位置(図2の位置)に保持されているブッシュ14を介して第1インサイドオープンレバー12が図1および図2の図示時計回転方向に所定量回転される。なお、第2インサイドオープンレバー13がインサイドドアハンドルの開操作により回転されるときに、ブッシュ14がセット位置(図7の位置)に保持されていると、係合部13cがブッシュ14の脚部14bと係合せず空振りして、第1インサイドオープンレバー12が回転されないように構成されている(図10の(c)、(d)参照)。
【0022】
ブッシュ14は、第1インサイドオープンレバー12に対して同レバーの長手方向に沿って移動可能に組付けられていて、第1インサイドオープンレバー12と第2インサイドオープンレバー13間に配設されていて、アンセット位置またはセット位置に保持可能とされている。このブッシュ14は、図2〜図6にて示したように、本体部14aと脚部14bと腕部14cとピン部14dを有している。
【0023】
本体部14aは、第1インサイドオープンレバー12に沿った形状(長い形状)に形成されていて、第1インサイドオープンレバー12の一側面(図3の上面)に沿って移動可能(摺動可能)であり、第1インサイドオープンレバー12との係合面には摺動抵抗を低減するための一対(二条)の突起14a1、14a2が形成されている。脚部14bは、本体部14aの一端部から第1インサイドオープンレバー12に向けて延出していて、第1インサイドオープンレバー12の先端部12cに形成されて同レバーの長手方向に延び先端が開口する長溝12c1に対して回転可能かつ長手方向に移動可能に係合する一対の溝部14b1を有するとともに、上記長溝12c1より第2インサイドオープンレバー13側に配置される台形形状の係合部14b2を有している。
【0024】
腕部14cは、本体部14aの中間部から脚部14bと同方向に延出していて、第1インサイドオープンレバー12の中間部12dに形成されて同レバーの長手方向に延びる長孔12d1を貫通するL字状の屈曲部14c1を有するとともに、この屈曲部14c1の先端に形成されて本体部14aとにより第1インサイドオープンレバー12の中間部12dに形成された山部12d2を挟持する爪部14c2を有しており、脚部14bの長溝12c1に対する回転を規制し長手方向での移動を許容している。ピン部14dは、本体部14aの他端部からチャイルドプロテクタレバー15に向けて延出していて、チャイルドプロテクタレバー15に設けた長孔15b1に係合している。
【0025】
チャイルドプロテクタレバー15は、一端部(基端部)15aに設けた取付孔15a1にてハウジングボディ11aに形成した支持ピン部11a3に回転可能に組付けられている。このチャイルドプロテクタレバー15は、他端部(先端部)15bに上記した長孔15b1を有するとともに手動操作部(摘み部)15b2を有していて、アンセット位置(図2の位置)またはセット位置(図7の位置)に手動で回転移動させることが可能であって、ブッシュ14をアンセット位置またはセット位置に移動させることが可能である。手動操作部(摘み部)15b2は、ハウジングボディ11aに組付けられるハウジングカバー11bに設けられている円弧状挿通孔(図示省略)を通してハウジング11外に突出するように構成されていて、ドアを開いた状態でのみドアの車内側から手動操作可能である。なお、ハウジングカバー11bに設けられている円弧状挿通孔(図示省略)は、支持ピン部11a3の軸中心を中心とする円弧形状に形成されている。
【0026】
位置保持手段Aは、第1インサイドオープンレバー12の中間部12dに設けた長孔12d1および山部12d2と、ブッシュ14の腕部14cに設けた屈曲部14c1および爪部14c2を備えている。山部12d2は、第1インサイドオープンレバー12の他側面から隆起し同レバー12の長手方向に沿って形成されている。屈曲部14c1は、ブッシュ14がアンセット位置にあるとき、長孔12d1の一端と当接するように構成されている(図3参照)。爪部14c2は、第1インサイドオープンレバー12の他側面または山部12d2と弾性的に係合するものであり、ブッシュ14が第1インサイドオープンレバー12に対してアンセット位置とセット位置間で移動するときに山部12d2を乗り越えて移動するように設定されている。
【0027】
ところで、この実施形態では、第1インサイドオープンレバー12がハウジングボディ11aに組付けられる前に、ブッシュ14が第1インサイドオープンレバー12に対して位置保持手段Aを介して予めサブアッシィ化されている。また、サブアッシィ化されているブッシュ14と第1インサイドオープンレバー12は、図9に示したように、ハウジングボディ11aに設けられて第1インサイドオープンレバー12を回転可能に支持する支持ピン部11a1と、ハウジングボディ11に設けられて第1インサイドオープンレバー12の係合部12bと係合して第1インサイドオープンレバー12の初期位置(図9の位置)を規定する係合壁11a4と、ハウジングボディ11aに対して回転可能に組付けられてラッチ機構20と第1インサイドオープンレバー12間に介在し第1インサイドオープンレバー12と係合するアウトサイドオープンレバー41によって、ハウジングボディ11aに対する組付位置を規定されている。
【0028】
アウトサイドオープンレバー41は、スプリング(図示省略)によって初期位置(図9の図示位置)に向けて付勢されている。また、ハウジング11(ハウジングボディ11a)に設けられ且つアウトサイドオープンレバー41が当接可能なストッパ(図示省略)が設けられており、当該ストッパと上記スプリングにてアウトサイドオープンレバー41の初期位置が規定されている。そのため、アウトサイドオープンレバー41は、サブアッシィ化されているブッシュ14と第1インサイドオープンレバー12をハウジングボディ11aに組付ける際に初期位置にて保持される。よって、アウトサイドオープンレバー41は、サブアッシィ化されているブッシュ14と第1インサイドオープンレバー12の組付位置を規定することができる。
【0029】
また、この実施形態では、チャイルドプロテクタレバー15に設けた長孔15b1に係合するピン部14dがブッシュ14に設けられていて、チャイルドプロテクタレバー15に設けた長孔15b1が円弧状部15b1aと直線状部15b1bを有している。円弧状部15b1aは、チャイルドプロテクタレバー15がアンセット位置に保持されている状態にて、第1インサイドオープンレバー12の回転中心(支持ピン部11a1の軸中心)を中心とする円弧形状に形成されている。直線状部15b1bは、円弧状部15b1aの一端(図2の上方端)から延びていて、第1インサイドオープンレバー12の回転中心から遠ざかる直線状に形成されている。
【0030】
また、チャイルドプロテクタレバー15がアンセット位置に保持されていて、ブッシュ14がアンセット位置に保持されている状態では、第2インサイドオープンレバー13の動き(図2および図10の反時計回転方向の動き)がブッシュ14を介して第1インサイドオープンレバー12に伝達されて、第1インサイドオープンレバー12の動き(図2および図10の時計回転方向の動き)に伴って、ブッシュ14におけるピン部14dがチャイルドプロテクタレバー15における長孔15b1の円弧状部15b1aを移動するように構成されている(図10の(a)、(b)参照)。
【0031】
また、チャイルドプロテクタレバー15がアンセット位置からセット位置に移動されるときには、ブッシュ14におけるピン部14dがチャイルドプロテクタレバー15における長孔15b1の円弧状部15b1aと直線状部15b1bに沿って移動して、ブッシュ14が第1インサイドオープンレバー12に対してアンセット位置からセット位置に移動するように構成されている(図10の(a)、(c)参照)。
【0032】
また、この実施形態では、図3に示したように、第1インサイドオープンレバー12が、ハウジングボディ11aに一体的に設けた支持ピン部11a1に回転可能に嵌合され、ハウジングボディ11aに組付けられるハウジングカバー11bに一体的に設けた半円筒状(チャイルドプロテクタレバー15との干渉を防止するために一部が欠損されている)の押え部11b1(図2の仮想線参照)によって支持ピン部11a1の軸方向での移動を規制されている。なお、この実施形態では、第2インサイドオープンレバー13のハウジングボディ11aに対する回転支持部(支持ピン部11a2)と、チャイルドプロテクタレバー15のハウジングボディ11aに対する回転支持部(支持ピン部11a3)においても、上記した第1インサイドオープンレバー12のハウジングボディ11aに対する回転支持部(支持ピン部11a1)と同様に、ハウジングボディ11aに組付けられるハウジングカバー11bに一体的に設けた各円筒状の押え部(図示省略)によって各支持ピン部(11a2、11a3)の軸方向での移動を規制されている。
【0033】
ロック機構30は、図1に示したように、チャイルドプロテクタ機構10とラッチ機構20間に設けたオープンリンク42をアンロック位置またはロック位置に移動させることが可能なアクティブレバー31を備えるとともに、このアクティブレバー31を駆動するための電動アクチュエータ32を備えている。なお、アクティブレバー31と電動アクチュエータ32の詳細な構成は、本発明と関連性が少ないため、説明を省略する。
【0034】
この実施形態において、ロック機構30がアンロック状態(図1の状態)にあって、オープンリンク42がアンロック位置にあり、チャイルドプロテクタ機構10がアンセット状態(図1の状態)にある状態では、インサイドドアハンドルまたはアウトサイドドアハンドルの開操作により、ラッチ状態のラッチ機構20をアンラッチ状態とすることができるように構成されている。また、ロック機構30がロック状態にあって、オープンリンク42がロック位置にあり、チャイルドプロテクタ機構10がアンセット状態にある状態では、インサイドドアハンドルまたはアウトサイドドアハンドルの開操作により、ラッチ状態のラッチ機構20をアンラッチ状態とすることができないように構成されている。
【0035】
上記のように構成したこの実施形態のチャイルドプロテクタ機構10においては、ブッシュ14が、第1インサイドオープンレバー12に対して同レバーの長手方向に沿って移動可能に組付けられ、第1インサイドオープンレバー12とブッシュ14間に設けられている位置保持手段Aによって、アンセット位置とセット位置のそれぞれにて保持される。このため、ブッシュ14と第1インサイドオープンレバー12のハウジングボディ11aへの組付に際して、ブッシュ14が第1インサイドオープンレバー12に対して位置保持手段Aにより所定の位置(例えば、アンセット位置)に保持されて動き難い。したがって、ブッシュ14および第1インサイドオープンレバー12のハウジングボディ11aへの組付けや、その後に実施されるチャイルドプロテクタレバー15のブッシュ14とハウジングボディ11aへの組付けに際して、作業者は第1インサイドオープンレバー12に対してブッシュ14を所定の位置に保持する必要がなくて、組付性が良い。
【0036】
また、第2インサイドオープンレバー13の動きを第1インサイドオープンレバー12に伝達するためのブッシュ14が第1インサイドオープンレバー12に組付けられていて、第2インサイドオープンレバー13から第1インサイドオープンレバー12に伝達される動き(作動ストローク)を決めるブッシュ14の位置が第1インサイドオープンレバー12および第2インサイドオープンレバー13以外の部材の寸法精度によって影響を受けることが無い。このため、チャイルドプロテクタレバー15の寸法精度を厳しく管理することなく、ブッシュ14の位置のバラツキ(作動ストロークのバラツキでもある)を小さく抑えることが可能であり、生産性を向上させることが可能である。
【0037】
また、この実施形態では、ブッシュ14が、本体部14aと、脚部14bと、腕部14cを備えている。また、第1インサイドオープンレバー12には、他側面から隆起し同レバーの長手方向に沿って形成された山部12d2が設けられ、ブッシュ14の腕部14c先端には第1インサイドオープンレバー12の他側面または山部12d2と弾性的に係合する爪部14c2が設けられていて、ブッシュ14が第1インサイドオープンレバー12に対してアンセット位置とセット位置間で移動するときに爪部14c2が山部12d2を乗り越えて移動するように設定されている。このため、チャイルドプロテクタレバー15のセット・アンセット操作時に、ブッシュ14が第1インサイドオープンレバー12に対してアンセット位置とセット位置間で移動することで、節度感(セット・アンセットの切換感)が得られる。
【0038】
また、この実施形態では、ブッシュ14のピン部14dと係合するチャイルドプロテクタレバー15の長孔15b1が、上述した円弧状部15b1aと直線状部15b1bを有しており、チャイルドプロテクタレバー15がアンセット位置に保持されていて、ブッシュ14がアンセット位置に保持されている状態では、第2インサイドオープンレバー13の動きがブッシュ14を介して第1インサイドオープンレバー12に伝達されて、ブッシュ14のピン部14dがチャイルドプロテクタレバー15における長孔15b1の円弧状部15b1aを移動するように構成され、チャイルドプロテクタレバー15がアンセット位置からセット位置に移動されるときに、ブッシュ14のピン部14dがチャイルドプロテクタレバー15における長孔15b1の円弧状部15b1aと直線状部15b1bに沿って移動して、ブッシュ14がアンセット位置から前記セット位置に移動するように構成されている。
【0039】
このため、チャイルドプロテクタレバー15をアンセット位置からセット位置に操作することにより、チャイルドプロテクタレバー15に設けた長孔15b1の直線状部15b1bにて、ブッシュ14をアンセット位置からセット位置に的確に(前記長孔の前記直線状部を設けないで、前記円弧状部を円弧状で延長させた場合に比して、作動効率よく)移動させることが可能であり、チャイルドプロテクタレバー15の小型化が可能である。
【0040】
また、この実施形態では、ドアに組付けられるハウジング11のハウジングボディ11aがベース部材であり、第1インサイドオープンレバー12は、ハウジングボディ11aに一体的に設けた支持ピン部11a1に回転可能に嵌合され、ハウジングボディ11aに組付けられるハウジングカバー11bに一体的に設けた押え部11b1によって支持ピン部11a1の軸方向での移動を規制されている。このため、第1インサイドオープンレバー12のハウジングボディ11a(ベース部材)に対する組付に際して、カシメピンが不要であり、組付性を改善してコスト低減を図ることが可能である。
【符号の説明】
【0041】
100…車両用ドアロック装置、10…チャイルドプロテクタ機構、11…ハウジング、11a…ハウジングボディ(ベース部材)、11a1…支持ピン部、11a4…係合壁、11b…ハウジングカバー、11b1…押え部、12…第1インサイドオープンレバー(第1レバー)、12c1…長溝、12d1…長孔、12d2…山部、13…第2インサイドオープンレバー(第2レバー)、14…ブッシュ、14a…本体部、14b…脚部、14b1…溝部、14c…腕部、14c1…屈曲部、14c2…爪部、14d…ピン部、15…チャイルドプロテクタレバー、15b1…長孔、15b1a…円弧状部、15b1b…直線状部、15b2…手動操作部、A…位置保持手段、20…ラッチ機構、21…ラッチ、30…ロック機構、31…アクティブレバー、32…電動アクチュエータ、41…アウトサイドオープンレバー(オープンレバー)、42…オープンリンク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のドアに組付けられるベース部材と、このベース部材に対して回転可能に組付けられてラッチ機構に連係される第1レバーと、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられてインサイドドアハンドルに連動する第2レバーと、前記第1レバーに対して同レバーの長手方向に沿って移動可能に組付けられて前記第1レバーと前記第2レバー間に配設されアンセット位置またはセット位置に保持可能なブッシュと、前記ベース部材に組付けられて前記ブッシュを前記アンセット位置または前記セット位置に移動させることが可能なチャイルドプロテクタレバーを備えるとともに、前記第1レバーと前記ブッシュ間に設けられて前記第1レバーに対して前記ブッシュを前記アンセット位置と前記セット位置のそれぞれにて保持することが可能な位置保持手段を備えていて、
前記ブッシュが前記アンセット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュを介して前記第1レバーに伝達可能に構成され、前記ブッシュが前記セット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュに対して空振りして前記第1レバーに伝達不能に構成されているチャイルドプロテクタ機構。
【請求項2】
請求項1に記載のチャイルドプロテクタ機構において、
前記ブッシュは前記第1レバーに対して前記位置保持手段を介してサブアッシィ化されていて、
前記第1レバーは、前記ベース部材に設けられて前記第1レバーを回転可能に支持する支持ピン部と、前記ベース部材に設けられて前記第1レバーと係合して前記第1レバーの初期位置を規定する係合壁と、前記ベース部材に対して回転可能に組付けられて前記ラッチ機構と前記第1レバー間に介在し前記第1レバーと係合するオープンレバーによって、前記ベース部材に対する組付位置を規定されているチャイルドプロテクタ機構。
【請求項3】
請求項1に記載のチャイルドプロテクタ機構において、
前記ブッシュは、前記第1レバーの一側面に沿って移動可能な本体部と、この本体部の一端部から延出して前記第1レバーの先端部に形成されて同レバーの長手方向に延びる長溝に対して回転可能かつ長手方向に移動可能に係合するとともに同長溝を貫通する脚部と、前記本体部の中間部から延出して前記第1レバーの中間部に形成されて同レバーの長手方向に延びる長孔を貫通し前記本体部とにより前記第1レバーを挟持するとともに前記脚部の前記長溝に対する回転を規制し長手方向での移動を許容する腕部を備えているチャイルドプロテクタ機構。
【請求項4】
請求項3に記載のチャイルドプロテクタ機構において、
前記第1レバーには他側面から隆起し同レバーの長手方向に沿って形成された山部が設けられ、
前記ブッシュの前記腕部先端には前記第1レバーの他側面または前記山部と弾性的に係合する爪部が設けられていて、
前記ブッシュが前記第1レバーに対して前記アンセット位置と前記セット位置間で移動するときに前記爪部が前記山部を乗り越えて移動するように設定されているチャイルドプロテクタ機構。
【請求項5】
請求項1乃至4の何れか一項に記載のチャイルドプロテクタ機構において、
前記ブッシュには前記チャイルドプロテクタレバーに設けた長孔に係合するピン部が設けられていて、前記チャイルドプロテクタレバーに設けた前記長孔が円弧状部と直線状部を有しており、
前記円弧状部は、前記チャイルドプロテクタレバーがアンセット位置に保持されている状態にて、前記第1レバーの回転中心を中心とする円弧形状に形成され、
前記直線状部は、前記円弧状部の一端から延びて前記第1レバーの回転中心から遠ざかる直線状に形成されていて、
前記チャイルドプロテクタレバーが前記アンセット位置に保持されていて、前記ブッシュが前記アンセット位置に保持されている状態では、前記第2レバーの動きが前記ブッシュを介して前記第1レバーに伝達されて、前記ブッシュにおける前記ピン部が前記チャイルドプロテクタレバーにおける前記長孔の前記円弧状部を移動するように構成され、
前記チャイルドプロテクタレバーが前記アンセット位置から前記セット位置に移動されるときに、前記ブッシュにおける前記ピン部が前記チャイルドプロテクタレバーにおける前記長孔の前記円弧状部と前記直線状部に沿って移動して、前記ブッシュが前記アンセット位置から前記セット位置に移動するように構成されているチャイルドプロテクタ機構。
【請求項6】
請求項1乃至5の何れか一項に記載のチャイルドプロテクタ機構において、
前記ベース部材は前記ドアに組付けられるハウジングのハウジングボディであり、前記第1レバーは、前記ハウジングボディに一体的に設けた支持ピン部に回転可能に嵌合され、前記ハウジングボディに組付けられるハウジングカバーに一体的に設けた押え部によって前記支持ピン部の軸方向での移動を規制されているチャイルドプロテクタ機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate


【公開番号】特開2012−225038(P2012−225038A)
【公開日】平成24年11月15日(2012.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−92862(P2011−92862)
【出願日】平成23年4月19日(2011.4.19)
【出願人】(000000011)アイシン精機株式会社 (5,421)
【出願人】(000100827)アイシン機工株式会社 (122)
【Fターム(参考)】