説明

チャイルドロック装置付きプッシュプル錠

【課題】ガタ、遊び等の無い高品質性能のチャイルドロック装置を有したプッシュプル錠を構成すること。
【解決手段】プッシュプル錠20のプッシュハンドル22又はプルハンドル24に掩蔽された配置で設けられ、人が操作する操作可動子51をハンドル22又は24の取付け座に可動に植設し、その操作可動子51の取付け座内部における一部分に接続したロックプレート53をラッチ42駆動用の梃子アーム機構34における梃子35に係合、分離可能にし、係合時にはハンドル操作を規制してラッチ42の解錠を阻止し、また操作可動子51の外部操作つまみ部分52をプッシュハンドル22又はプルハンドル24に形成した突片54と衝接させてロックプレート53のロック作用と協働してハンドル操作を規制し得るようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、扉用のプッシュプル錠に関し、特に扉ハンドル部位に主として児童、幼児の一定領域内、例えば浴室内への入室阻止を大人が所要に応じて操作できると同時に幼児等による操作は予め安全管理の観点から阻止できる機構として設けられるチャイルドロック装置を組み込んだプッシュプル錠の新規構造に関する。
【背景技術】
【0002】
建物、特に一般家屋などでは、建物構造の洋式化に伴い、玄関扉に開き戸式の扉が多用されており、扉に設けたハンドル部をプッシュ操作(押し動作)やプル操作(引き動作)するだけで錠のラッチを相手のストライク金具に対して出没させ得る操作の簡便性から益々多用されるプッシュプル錠が回転式のハンドル錠に代わって用いられる傾向にあり、このようなプッシュプル錠の典型例は、例えば、特許文献1の特開平10−311173号公報に開示されている。
他方、この種のプッシュプル錠を備えた扉装置は、家屋内部においても部屋の入口やトイレ、浴室等の入口には多く開き戸式扉を配置する傾向にある。すなわち、扉に設けたハンドル部を上述のようにプッシュ操作やプル操作するだけで錠のラッチを相手のストライク金具に対して出没させ得る操作の簡便性は、建物外部と建物内部との遮断、開放手段としての用途のみならず、建物内部における種々の領域の仕切り部分、ないし入口部分においても開閉操作の簡便性に基づいて益々多用される傾向にある。
【0003】
そして、建物内部の特にプライバシー度の高い部屋、トイレ、浴室等では、入室、入域後にプッシュプル錠のラッチを扉閉位置で錠止するラッチ錠止装置を備えたプッシュプル錠を有した開き戸式扉が多く用いられている。このようなラッチ錠止装置の一例は、特許文献2の特開2002−129796号に開示されている。すなわち、プッシュプル錠が、扉の二表面に配置されたハンドルのプッシュまたはプル動作をスライドベースの水平移動に変換することにより、可動ストッパを起動してラッチ錠の錠止解除を行い、扉を開放動作させる開錠作動機構を設けたもので、このとき、別にカムと、このカム回動に応じて上下する係止板、その係止板に形成した凹所を中立位置にあるスライドベースの内端に設けた突起に係合させるとスライドベースの摺動変位を阻止して上記開錠作動機構を作動不可状態にすることができる開錠阻止機構が備えられ、この開錠阻止機構の上記カムは扉面の一方側に設けたサムターン等の操作レバーによって回転変位させ得るように形成され、扉面の他方側ではコイン等を小道具として用いれば、操作可能に形成されている。
【0004】
【特許文献1】特開平10−311173号公報
【特許文献2】特開2002−129796号公報
【0005】
他方、プッシュプル錠を備えた開き戸式の扉を浴室に用いた際には、扉の開扉作動が簡単であることから、近時、主として幼児が大人の目が届かない際等に一人で開扉して浴室内に入り込み、誤って浴槽に転落する事故が予想されることから室外側からのプッシュハンドルまたはプルハンドルによるラッチの開放を防止するためのロック機構を作動させるためのロック操作部を設ける必要がある。
【0006】
この種のロック操作部として、単純なくさび機構等を設ける手段を取っていたものもあるが、室外側からロック操作すると室内側から解錠できない場合もあり、うっかりすると室内に入っていた人が閉じ込められてしまう事態も発生しかねない等の機構的には未完成な状態であった。また、通常はこの種ロック機構の操作部がハンドルの周辺に設けられているので、幼児等が操作部を簡単に視認して解除操作をすることにより、扉を開けて室内に入れてしまう等という不備もあった。
【0007】
よって簡単なロック操作を幼児等以外の大人が遂行することに依ってプッシュハンドルまたはプルハンドルの扉開閉操作を阻止し得るように機能しながら扉開閉操作の阻止機能を解除すれば、自由に扉の開閉をプッシュハンドルまたはプルハンドルの操作で実行可能となる良好な操作性を有すると同時に幼児等による簡単なロック解除操作は防止できる配置の好適性にも優れ、しかも機能上の観点からも所謂、ガタ等の無い高品質のチャイルドロック装置を備えたプッシュプル錠が要望されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
よって、本発明は、上述した要望を満たすことのできるチャイルドロック装置付きプッシュプル錠を提供せんとするものであり、室外側のハンドルだけをロックして室内側からの開閉操作は自由に遂行可能であり、また、チャイルドロック装置の操作部が幼児等に容易に発見されない適正位置に配置され、加えて施錠、解錠操作も容易で解錠時にはコインやドライバー等の道具を別途に必要としないばかりでなく、ロック機能部に遊びやガタの無い品質度の高いチャイルドロック装置付きプッシュプル錠を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
従って本発明は、扉の内外壁面に取付け座を介して取り付けられるプッシュハンドル又はプルハンドルと、その扉の縦框に開口した埋込溝に配置されて前記各プッシュプルハンドルの開閉操作により施錠位置と解錠位置との間を出没するラッチを有した錠本体と、上記取付け座の内部から上記錠本体の上記ラッチに向けて挿設され、前記各プッシュプルハンドルの開閉操作を当該ラッチの出没動作に変換する伝動変換機構とを有するプッシュプル錠において、前記のプッシュハンドル又はプルハンドルによって視線から掩蔽された前記取付け座のハンドル対向表面に可動に植設されると共にハンドル側へ一部を突出させた操作可動子と、該操作可動子の前記取付け座内部に臨んだ一部に接続され、該取付け座内部で前記伝動変換機構に係合するロック位置と該伝動変換機構から分離した非ロック位置との二位置間を進退動作可能に設けられたロックプレートとを具備してなり、前記ロックプレートを前記ロック位置に設定して前記伝動変換機構をロックさせることにより前記プッシュハンドルまたはプルハンドルの開閉操作を阻止し、また前記ロックプレートを前記非ロック位置に設定して前記伝動変換機構をロック解除させることにより前記プッシュハンドルまたはプルハンドルの開閉操作を自在に復帰させるようにしたチャイルドロック装置付きプッシュプル錠を構成した。
【0010】
また、本発明に係るチャイルドロック装置付きプッシュプル錠は、上述の操作可動子が前記ロックプレートを前記ロック位置へ設定したとき、該操作可動子の前記ハンドル側への突出部と係合可能なロック突片を前記プッシュハンドルまたはプルハンドルに予め形成し、該プッシュハンドルまたはプルハンドルの開閉操作が前記操作可動子の突出部と前記ロック突片との衝接によっても規制されることを更なる特徴とする構成を有するものである。
【発明の効果】
【0011】
上述した本発明によるチャイルドロック装置付きプッシュプル錠は、操作可動子は外部から掩蔽された取付け座の表面位置にプッシュハンドル又はプルハンドル側へ向けて突出した形態でかつ可動に設けることで幼児等が簡単に認知し得ない配置とされ、しかもこの操作可動子を操作して当該取付け座の内部に設けられたロックプレートを進退動作させることで、伝動変換機構との係合、分離を介してプッシュハンドルまたはプルハンドルを操作不可にするロック位置と操作可能にする非ロック位置との二位置間に切り替え得るのでロックプレートと伝動変換機構との係合を予め機械的に接触係合させるようにすれば、遊びやガタの無いチャイルドロック装置が主に取付け座の内部機構として形成され、操作可動子の一部だけを外部に露出させた外観デザイン上の観点からも品質度の高い製品とすることが可能となる効果を奏する。
【0012】
また、上述した更なる特徴を有した構成とすれば、取付け座の外部から掩蔽された表面位置に配設した上記の操作可動子とプッシュハンドル又はプルハンドルに形成した上記のロック突片との係合によっても当該プッシュハンドルまたはプルハンドルのプッシュ操作またはプル操作を規制することが可能となり、取付け座内部の伝動変換機構の作動阻止と相俟って二つのロック作用機構の協働でチャイルドロック装置を有効化させ得るので、いわばハンドル操作規制力を二分して負担し、プッシュプル錠の作用寿命の延命に寄与できる効果をも奏することとなる。
【0013】
なお、上述した本発明におけるチャイルドロック装置付きプッシュプル錠における上記の伝動変換装置は、プッシュハンドルまたはプルハンドルによって扉を開扉すべくプッシュ操作又はプル操作したとき、そのハンドル操作に応動してラッチを付勢ばねのばね力に抗して扉枠のストライク金具と係合した施錠位置から上述の扉框の埋込溝内に埋没させるように解錠駆動するように設けられる好ましくは梃子・アーム機構から形成され、前記のロックプレートは、ロック位置では当該梃子・アーム機構の梃子部材に機械的に係合して同梃子・アーム機構の梃子動作を規制し、以ってラッチの解錠を阻止する構成とされ、これにより取付け座の内部において梃子部材に係合又は分離するロックプレートだけを組み込み、かつそのロックプレートを操作可動子に接続した簡単な構造改良で実現していることから、既に出願人により提案済みのチャイルドロック装置付きプッシュプル錠を有効に利用しながらかつ遊び・ガタの無い、品質向上を達成したチャイルドロック装置付きプッシュプル錠を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
次に、本発明の構成及び作用効果を添付図面に示す好ましい実施の形態に従って更に詳細に説明する。
図1〜図7は、本発明の一実施形態に係るチャイルドロック装置付きプッシュプル錠の構成及び作用、効果を説明しており、以下においては、典型例として浴室内等の家屋室内領域へその外側領域(以下、単に外部)から立ち入る場合の入口に設けられる扉に適用して同プッシュプル錠を扉の両表面における片側表面にプッシュハンドルを配置し、他の片側表面にプルハンドルを配置し、かつラッチを有した錠本体を扉枠ないし扉框の端部から内奥へ穿設した埋込溝の内部に挿設した一実施形態を基本的構成とした場合について説明する。
【0015】
さて、図1、図2を参照すると、前者の図1は、扉10に組立て、装着された実施形態に係るチャイルドロック装置付きプッシュプル錠20を同扉10の上方から眺めた外観図であり、後者の図2は図1の2−2線に沿って断面した断面図であり、特に本実施形態では、扉10の外部側にプッシュハンドル22を配し、室内側にプルハンドル24を配して外部から室内への幼児等の入り込みを安全管理の観点から規制すべく外部側に後に詳述するチャイルドロック装置50を配した構成としている。勿論、外部側にプルハンドル24を配し、室内側にプッシュハンドル22を配した場合にも本発明が適用可能であることは当業者になら自明であろう。
【0016】
これらの図1、図2において、プッシュプル錠20は、上記プッシュハンドル22、プルハンドル24、外取付け座26、内取付け座28、錠本体40等を備えており、プッシュハンドル22およびプルハンドル24は、それぞれ硬質合成樹脂製の板状部材として形成され、室内側へと開放する扉10の外表面11と内表面12とにそれぞれ配置した金属製または硬質合成樹脂製の内外の取付け座本体27、29と硬質合成樹脂製のカバー31、33とからそれぞれ構成される上記外取付け座26および内取付け座28に嵌合及びビス等を用いた螺着法両者によって装着されている。
【0017】
すなわち、詳述すれば、外及び内取付け座26、28における取付け座本体27、29からそれぞれのハンドル側へ向けて突出形成されたハンドルジョイント27a、29aにプッシュハンドル22、プルハンドル24の内側に同一合成樹脂材により突出形成された内外二重構造のジョイント受け22a、24aが嵌合され、外部から挿通される止めビス22c、24cによって螺着されている。このとき、各プッシュハンドル22、プルハンドル24の上記二重構造のジョイント受け22a、24aにおける外被22b、24bには図1に明示されるように円形凹部が形成され、この円形凹部が上記取付け座本体27、29のハンドルジョイント27a、29aを囲繞する樹脂材製のジョイントカバー27b、29bに形成された相補形状の円形凸部と摺動可能に衝合され、プッシュハンドル22またはプルハンドル24のプッシュ操作またはプル操作を円滑に案内する構造が設けられている。
【0018】
なお、プッシュハンドル22またはプルハンドル24は、これらのハンドルをプッシュ操作またはプル操作したときに、上記ジョイント受け22a、24aを介して取付け座本体27、29のハンドルジョイント27a、29aへそのプッシュ操作力またはプル操作力が伝動され、該取付け座本体27、29の内部に設けられた枢軸25a、25bを中心とした当該ハンドル及びその対応ハンドルジョイントの一体的な揺動々作が生起される結果として、上記のプッシュ操作またはプル操作が許容されるものである。
【0019】
そして、ハンドルジョイント27aまたは29aの揺動は、外及び内取付け座26、28における取付け座本体27、29の内部に設けられた伝動・変換機構を介して錠本体40に具備されたラッチ42の出没動作に伝動、変換されるようになっている。つまり、上記の伝動・変換機構は、後に図6、図7を参照して詳述するが、外及び内取付け座26、28における取付け座本体27、29と錠本体40との間に介挿されたそれぞれの梃子部材35、35及びアーム部材36、36を有してなる梃子・アーム機構34、34によって形成され、各ハンドル22、24のプッシュ操作、プル操作に基づいてラッチ42を扉枠に設けたストライク金具13の鍵溝中に向けて突出、嵌入させたロック位置(図1の実線表示による施錠位置)と同鍵溝から離脱して錠本体40の内へ退動、没入する非ロック位置(図1に二点鎖線で示す解錠位置)との間で駆動する構成とされ、プッシュ操作力またはプル操作力を伝動、変換してラッチ42の非ロック位置への退動を生起するのである。この際にラッチ42は、復帰ばね(図示なし)で常にロック位置へばね付勢されており、プッシュハンドル22またはプルハンドル24によるプッシュ操作またはプル操作が遂行されたとき、その復帰ばねのばね力に抗してラッチ42を非ロック位置へ退動させ、またプッシュ操作またはプル操作を解除すれば、復帰ばねの付勢力によってラッチ42はロック位置へ自動的に復帰する構成となっている。なお。梃子・アーム機構34の梃子部材35、アーム部材36は金属材料で形成されることが好ましく、ラッチ42は、錠本体40と共に一般的に硬質の合成樹脂材料で形成されることが好ましい。
【0020】
ここで、図2において、本プッシュプル錠20における室内側にはサムターン37が設けられ、室外側には解除釦38が設けられ、両者は内外の両取付け座26、28を貫通して延設された駆動軸37aによって相互に結合されており、これらは本発明に係るチャイルドロック装置とは別に従来から多くのプッシュプル錠において室内側で中の人間が意図的にサムターン37の回動でプッシュプル錠を一時的にロックしかつロック解除するために設けられている。そして、所要に応じて室外からもコイン等の小道具等を用いて解除釦38を回動することによってロック及びロック解除を行い得るようになっている。故に、外部から解除釦38をコイン等で操作してプッシュプル錠を一時的にロックすることも可能であり、その際には室内側からサムターン37でロック解除をすることも可能である。これらのサムターン37、駆動軸37a、解除釦38によるロック及びロック解除の作動機構はそれぞれ外取付け座26、28の内部に設けられているが、これらは本発明の本質部分ではないので、単に図2と後述の図5とにその構成部材を図示したのみに止めてある。
【0021】
さて、ここで図1、図2に加えて図3ないし図7の諸図をも参照すると、本発明の要部に係るチャイルドロック装置50は、扉10を隔てた外部側のプッシュハンドル22と外取付け座26との間において外部領域に居る幼児視線からは掩蔽されるような位置に選定、配設されている。
すなわち、このチャイルドロック装置50は、外取付け座26側に設けられた操作可動子51を備え、この操作可動子51は、上記外取付け座26の内部からその外表面の開口25を経てプッシュハンドル22の向き合った裏面側に向けて突出した角形の外部操作つまみ部分52を有して上記開口25においては扉10上下方向に沿った上下方向に可動に植設されている合成樹脂製の部材として形成されている。つまり、操作可動子51は図4に示すように、プッシュハンドル22によって掩蔽された位置で開口25内を上下に可動に設けられているので、プッシュハンドル22の外側からは同操作可動子51の操作つまみ部分52は少なくとも幼児の視線では不可視状態に配設されているのである。
【0022】
更にチャイルドロック装置50は、該樹脂製操作可動子51の上記外取付け座26の内部に臨んだ一部分に一体に形成されるか、或いは別体に形成後、ねじ止目等の固定方法で強固に上記操作可動子51の一部分に接続され、外取付け座26の内部で前述した伝動変換機構におけるプッシュハンドル22側に関連した梃子・アーム機構34における梃子部材35に接触係合するロック位置と該梃子部材35から分離した非ロック位置との二位置間を摺動動作によって進退可能に設けられたロックプレート53(図5参照)を具備している。図5には、このロックプレート53が非ロック位置に設定されている場合を実線で、また伝動・変換機構の梃子部材35の側面部位に係合するロック位置へ下動、設定された状態を鎖線で図示し、かつその動作方向を矢印“Q”で示してある。つまり、このロックプレート53は、図4に配置状態を示す操作可動子51の外部操作つまみ部分52を外取付け座26に対して人が上方から押動すると、その押動に従って下動し、梃子部材35に接触係合するもので、逆に同外部操作つまみ部分52を外取付け座26に対して人が上方へ引き上げれば、それに従って同ロックプレート53は梃子部材35から分離するのである。図4の矢印“P”は外部操作つまみ部分52の上下動を示している。
なお、ロックプレート53は、外取付け座26の内部では、適宜のガイド壁又はガイド溝等に沿って案内され、摺動する構成とすることが好ましく、故に同ロックプレート53は、潤滑性を有した市販合成樹脂材で形成することが好ましい。
【0023】
さて、本発明は、上述したチャイルドロック装置50の構成に当り、上記の操作可動子51における外部操作つまみ部分52が外取付け座26の外表面からプッシュハンドル22の裏面部位に向けて突出していることから、この外部操作つまみ部分52(突出部)が図4に示す上動した非ロック位置に設定されているときはプッシュハンドル22のプッシュ操作を許容しながら同外部操作つまみ部分52が図4に示す下動したロック位置に設定されているときは、それと衝接するような突片54をプッシュハンドル22の裏面側に予め同ハンドル22の一部分として一体に形成してある。つまり、外部操作つまみ部分52とプッシュハンドル22の突片54とが衝接すると、機械的にプッシュハンドル22のプッシュ操作を規制し、延いてはプッシュプル錠20の解錠を阻止するので、ここでもチャイルドロック機能を得ることが可能となるのである。図3は、操作可動子51の外部操作つまみ部分52とプッシュハンド22の裏面に一体形成した突片54とが衝接している様子を図示したもので、図2の円3の部分を拡大図示したものである。
【0024】
このように、操作可動子51における外部操作つまみ部分52とプッシュハンドル22に設けた突片54とが外取付け座26の外部で機械的に衝接することによりチャイルドロック機能を果たすことで、既述した外取付け座26の内部におけるロックプレート53と梃子部材35との係合、分離を介して遂行されるチャイルドロック機能との相乗作用でチャイルドロック効果を確実化し、かつ外部の機械的な衝接のみでチャイルドロック機能を遂行する場合に比較してロック作用力の分散、プッシュハンドル22の遊び又はガタの排除等、チャイルドロック装置50の高品質化を図り、延いてはプッシュプル錠20自体の製品品質の向上を果たすことが可能となる。
【0025】
さて、ここで図6及び図7に注目すると、これら両図は、本実施形態に係るチャイルドロック装置付きプッシュプル錠20におけるプッシュハンドル22とそれに関連した外取付け座26における構成と作用効果を取り出し図示したものであり、特に既述したラッチ42を錠本体40の内部に退動没入させる伝動変換機構を形成する梃子・アーム機構34とチャイルドロック装置50のロックプレート53との関連を説明するものである。
【0026】
まず、図6を参照すると、プッシュハンドル22は、常時は実線図示位置から鎖線図示位置へ人が矢印“A”のようにプッシュ操作すれば、取付け座26の内部でハンドル側のジョイント受け22aと取付け座側のハンドルジョイント27aと の結合を介して枢軸25a を中心にした回動が生じ、ハンドルジョイント27aの内端が梃子・アーム機構34の梃子部材35を押圧して同梃子部材35をその旋回軸35a の回りに図6上で反時計回りに旋回させようとする。
この結果、同梃子部材35が先端に鉤状部36bを有したアーム部材36がその旋回軸36aの回りに時計回り方向の旋回駆動力を受けて同方向へ旋回することとなる。この際に、チャイルドロック装置50のロックプレート53が下動されて上記の梃子部材35の側面に図6に図示のように接触、係合していれば、梃子部材35の旋回が規制されることとなる。
【0027】
他方、図7に示すように、チャイルドロック装置50のロックプレート53が上動されて梃子部材35から分離している状態では、プッシュプルハンドル22のプッシュ操作に応じて梃子・アーム機構34のアーム部材36が時計回り方向へ旋回するから同アーム部材36の先端の鉤状部36bが図示されていないラッチ42を復帰ばねのばね付勢力に抗して錠本体40(図6、7に図示なし)内部へ退動させてラッチ42を解錠するものである。
なお、図6、図7においてくさび状部材35c は、梃子部材35のてこ作用を助勢する補助部材として設けられている。
【0028】
以上、本発明を最も典型的な実施形態に基づいて詳細に説明したが、本実施形態は、単に一例として開示したものであり、本発明が、この実施形態に限定されるものでないことは言うまでもない。例えば、上述した実施形態では、プッシュプル錠のプッシュハンドルとその対応の取付け座を室外部領域側に配設し、そのプッシュハンドルに関してチャイルドロック装置を設ける構成としたが、逆にプルハンドルを室外部領域に設け、そのプルハンドルを幼児等が簡単にプル操作するのを阻止して安全管理を図る構成とすることも全く上述のチャイルドロック装置を適用することで達成し得ることは当業者なら容易に理解できよう。
更に、チャイルドロック装置が有するロックプレートは、図示例のように単に板状部材と限定するものではなく、ハンドル取付け座の内部に設けられたラッチ駆動用の伝動変換機構における梃子部材やアーム部材の形状に応じて必ずしも板形状のみならず、曲げ板形状等の種々の形状等を設計、採用可能であることは言うまでもない。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の好実施形態に係るチャイルドロック装置付きプッシュプル錠の基本的構成を示すべく、扉に装着された状態を扉の上方から伺う形態で見た全体構成図、
【図2】図1の2―2線に沿って切断した内外取付け座の内部構造とチャイルドロック装置の構成とを明示する断面図、
【図3】図2に“3”で示す一部分を拡大図示した部分拡大図、
【図4】図1に示したプッシュプル錠におけるプッシュハンドルとその対応取付け座の外観図であり、チャイルドロック装置の操作可動子が配置される掩蔽位置を明示した図、
【図5】図4に示した取付け座を垂直断面してチャイルドロック装置のロックプレートの配置、構成を明示した断面図、
【図6】プッシュハンドルのプッシュ操作に対応して作動する伝動変換機構とチャイルドロック装置のロックプレートとの関連を説明する断面図、
【図7】図6と同様の断面図でプッシュハンドルがプッシュ操作された状態を明示した図。
【符号の説明】
【0030】
10:扉
11:扉外表面
12:扉内表面
13:ストライク金具
20:プッシュプル錠
22:プッシュハンドル
22a:ジョイント受け
22b:外被
24:プルハンドル
26:外取付け座
28:内取付け座
34:梃子アーム機構
35:梃子部材
36:アーム部材
40:錠本体
42:ラッチ
50:チャイルドロック装置
51:操作可動子
52:外部操作つまみ部分
53:ロックプレート
54:突片





【特許請求の範囲】
【請求項1】
扉の内外壁面に取付け座を介して取り付けられるプッシュハンドル又はプルハンドルと、その扉の縦框に開口した埋込溝に配置されて前記各プッシュハンドル又はプルハンドルの開閉操作により施錠位置と解錠位置との間を出没するラッチを有した錠本体と、前記取付け座の内部から前記錠本体の前記ラッチに向けて挿設され、前記各プッシュハンドル又はプルハンドルの開閉操作を当該ラッチの出没動作に変換する伝動変換機構とを有するプッシュプル錠において、
前記プッシュハンドル又はプルハンドルによって視線から掩蔽された前記取付け座のハンドル対向表面に可動に植設されると共にハンドル側へ一部を突出させた操作可動子と、
前記操作可動子の前記取付け座内部に臨んだ一部に接続され、該取付け座内部で前記伝動変換機構に係合するロック位置と該伝動変換機構から分離した非ロック位置との二位置間を進退動作可能に設けられたロックプレートとを備え、
前記ロックプレートを前記ロック位置に設定して前記伝動変換機構をロックさせることにより前記プッシュハンドルまたはプルハンドルの開閉操作を阻止し、また前記ロックプレートを前記非ロック位置に設定して前記伝動変換機構をロック解除させることにより前記プッシュハンドルまたはプルハンドルの開閉操作を自在に復帰させるようにしたチャイルドロック装置付きプッシュプル錠。
【請求項2】
前記操作可動子が前記ロックプレートを前記ロック位置へ設定したとき、該操作可動子の前記ハンドル側への突出部と係合可能なロック突片を前記プッシュハンドルまたはプルハンドルに予め形成し、該プッシュハンドルまたはプルハンドルの開閉操作が前記操作可動子の突出部と前記ロック突片との衝接によっても規制されるようにしたことを特徴とする請求項1に記載のチャイルドロック装置付きプッシュプル錠。
【請求項3】
前記伝動変換装置は、前記プッシュハンドルまたはプルハンドルによって扉を開扉すべくプッシュ操作又はプル操作したとき、そのハンドル操作に応動してラッチを付勢ばねのばね力に抗して扉枠のストライク金具と係合した施錠位置から扉框の埋込溝内に埋没させるように解錠駆動するように設けられた梃子・アーム機構から形成され、前記ロックプレートは、ロック位置では該梃子・アーム機構の梃子部材に機械的に係合して同梃子・アーム機構の梃子動作を規制し、以って前記ラッチの解錠を阻止するように構成された請求項1または2に記載のチャイルドロック装置付きプッシュプル錠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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