説明

チャッキング装置、ブラシレスモータおよびディスク駆動装置、並びに、チャッキング装置の製造方法

【課題】ヨークとマグネットの間からの接着剤の漏れを確実に防止する。
【解決手段】ターンテーブルより軸方向上側に配置されるコーン42と、前記コーン42の上方にて前記シャフトに固定される環状のヨーク43と、前記ヨーク43上に接着剤を介して固定されるクランプマグネット44と、を備え、前記ヨーク43の上面が、前記中心軸を中心とする環状の凹部71を有し、前記接着剤9の少なくとも一部が、前記凹部71よりも径方向内側の領域に塗布されており、前記凹部71の径方向外側の側壁712が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記凹部71の径方向内側の側壁711が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記径方向外側の側壁712と前記中心軸とのなす角が、前記径方向内側の側壁711と前記中心軸とのなす角よりも小さい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、円盤状のディスクを着脱可能とするチャッキング装置、および、このチャッキング装置を搭載したブラシレスモータおよびディスク駆動装置に関する。特に、ディスクの中心開口部の中心とチャッキング装置の中心とを高精度に一致させることが必要なチャッキング装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、CD、DVD等の円盤状のディスクへの記録再生の高倍速化に伴い、ディスクおよびこのディスクを回転させるブラシレスモータの回転速度が向上している。特に現在では、ブラシレスモータを毎分約12,000回転の速度にて回転させる場合がある。このようなブラシレスモータでは、ディスクの中心とモータの中心軸とが一致しない状態にてディスクが回転すると、モータが振動してしまう。そこで、ディスクを高速回転させるのに対応したチャッキング装置として、ディスクの中心開口部の内周面の全周と接触する円環状の傾斜面を含むコーンを有する構造が採用されている。このコーンは、回転軸となるシャフトの軸方向に沿って移動自在である。そしてコーンは、コイルばね等の弾性部材によって、軸方向上側に付勢される(このような従来のチャッキング装置の構造として、例えば、特開2004−234773号公報参照)。
【0003】
特開2009−59410号公報に開示されるチャッキング装置は、コーンと、磁性体にて形成された環状のヨークと、略円環状のクランプマグネットとを備える。ヨークの上面には、環状の凹部が形成される。ヨークはコーンの軸方向上側に配置され、シャフトに固定される。クランプマグネットはヨークの上面に接着剤により固定される。
【0004】
ヨークにクランプマグネットが取り付けられる際には、接着剤が凹部よりも径方向内側の領域に塗布される。これにより、径方向外側に広がった接着剤は凹部内に収容され、接着剤がヨークからはみ出すことが防止される。
【特許文献1】特開2004−234773号公報
【特許文献2】特開2009−59410号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、クランプマグネットをヨークに取り付ける際には、クランプマグネットはヨークとの間の磁気吸引力により勢いよくヨーク上に載置される。このため、ヨークの上面に接着剤が一様に塗布されない場合、ヨークとクランプマグネットとの間から接着剤が流出する虞がある。ヨークをシャフトに固定してからクランプマグネットを接着する場合、流出した接着剤がヨークおよびクランプマグネットとコーンとの間に付着すると、コーンの移動が妨げられる。また、クランプマグネットをヨークに接着してからヨークをシャフトに固定する場合、流出した接着剤を拭き取ることが可能となるが、微小な部品に対する拭き取り作業は容易ではない。
【0006】
本発明は、接着剤がヨークとクランプマグネットとの間から流出することをより確実に防止することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1の側面からは、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とするチャッキング装置は、所定の中心軸と同軸に配置されるシャフトと、前記シャフトに固定され、ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルと、前記ターンテーブルより軸方向上側に配置され、前記シャフトに対して上下に摺動可能に配置される摺動部と、径方向外側に向かい軸方向下側に傾斜する円環状のディスク保持面を有するディスク保持部と、を有するコーンと、前記摺動部の上方にて前記シャフトに固定される環状のヨークと、前記ヨーク上に接着剤を介して固定されるクランプマグネットとを備え、前記ヨークの上面が、前記中心軸を中心とする環状の凹部を有し、前記接着剤の少なくとも一部が、前記凹部よりも径方向内側の領域に塗布されており、前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記凹部の径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記径方向外側の側壁と前記中心軸とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記中心軸とのなす角よりも小さい。
【0008】
本発明の第2の側面からは、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とするチャッキング装置の製造方法は、ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルを、シャフトに上側から嵌入して固定する工程と、径方向外側に向かうにつれて下方に傾斜する円環状のディスク保持面を有するコーンを、前記シャフトに上側から嵌入することにより、前記コーンを前記シャフトの対して上下に摺動可能に配置する工程と、環状のヨークを前記シャフトに上側から嵌入して、前記ヨークを前記シャフトに固定する工程と、前記ヨークの上面のうち、前記上面に設けられた環状の凹部よりも径方向内側の領域に接着剤を塗布する工程と、前記接着剤を介して前記ヨークの前記上面上にクランプマグネットを固定する工程と、を備え、前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記径方向外側の側壁と前記中心軸とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記中心軸とのなす角よりも小さい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着剤がヨークとクランプマグネットとの間から流出することをより確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、本発明のブラシレスモータの実施例の一形態を示した、軸方向に切った模式断面図である。
【図2】図2は、本発明のチャッキング装置の実施例の一形態を示した、上側より見た模式平面図である。
【図3】図3は、コーンの断面図である。
【図4】図4は、コーンの底面図である。
【図5】図5は、ターンテーブルの断面図である。
【図6】図6は、ターンテーブルの断面図である。
【図7】図7は、本発明のチャッキング装置を構成するヨークとクランプマグネットとを取り付けた状態を示す、軸方向に切った模式断面図である。
【図8】図8は、ヨークの平面図である。
【図9】図9は、ヨークの凹部近傍を拡大して示す図である。
【図10】図10は、図1のチャッキング装置の付近を拡大した拡大図である。
【図11】図11は、本発明のディスク駆動装置の実施例の一形態を示した、軸方向に切った模式断面図である。
【図12】図12は、本発明のチャッキング装置にディスクを装着する状態を示した、軸方向に切った模式断面図である。
【図13】図13は、本発明のチャッキング装置にディスクを装着した状態を示した、軸方向に切った模式断面図である。
【図14】図14は、チャッキング装置の組み立ての流れを示す図である。
【図15】図15は、組み立て途上のチャッキング装置を示す図である。
【図16】図16は、チャッキング装置の組み立ての他の流れを示す図である。
【図17】図17は、第2の実施形態に係るチャッキング装置のヨークおよびクランプマグネットの断面図である。
【図18】図18は、ヨークおよびクランプマグネットの断面図である。
【図19】図19は、第3の実施形態に係るチャッキング装置のヨークおよびクランプマグネットの断面図である。
【図20】図20は、第4の実施形態に係るチャッキング装置のヨークおよびクランプマグネットの断面図である。
【図21】図21は、クランプマグネットの他の例を示す図である。
【図22】図22は、凹部の他の例を示す図である。
【図23】図23は、凹部の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
(第1の実施形態)
<ブラシレスモータの全体構造>
本発明のブラシレスモータの実施例の一形態について、図1を用いて説明する。図1は、本発明のブラシレスモータの実施例の一形態を軸方向に切った模式断面図である。
【0012】
図1を参照して、ブラシレスモータ1は、所定の中心軸J1を中心として回転駆動を行う回転部2と、回転部2を回転自在に支持する固定部3と、を有するモータ部と、回転部2の軸方向上側に配置されるチャッキング装置4と、から構成される。チャッキング装置4には、中心開口部を有するディスクが着脱可能に取り付けられる。
【0013】
まず回転部2について説明する。
【0014】
回転部2は、中心軸J1と同軸に配置される略円柱形状のシャフト21と、シャフト21に固定され、中心軸J1の周りを回転するロータホルダ22と、ロータホルダ22に固定され、シャフト21と共に中心軸J1の周りを回転する円環状のロータマグネット23と、を備える。
【0015】
ロータホルダ22は、ロータマグネット23の外周面を固定する内周面を有する外側円筒部221と、外側円筒部221から中心軸J1に向かい延びる平面である蓋部222と、蓋部222の内縁より軸方向下側に延びる、シャフト21の外周面を固定する内周面を有する内側円筒部223と、から構成される。
【0016】
次に固定部3について説明する。以下の説明では、中心軸J1を中心とする径方向を単に「径方向」といい、中心軸J1を中心とする周方向を単に「周方向」という。
【0017】
固定部3は、シャフト21を径方向に回転自在に支持する内周面を有する略円筒形状である、焼結材料製のスリーブ31と、スリーブ31の外周面を保持する内周面を有する円筒部321および円筒部321の下部を覆う底部322を有するハウジング32と、ハウジング32の円筒部321の外周面に固定される内周面を有し、ロータマグネット23の内周面と径方向に対向する外周面を有するステータ33と、ステータ33より軸方向下側に配置され、ハウジング32の円筒部321の外周面に固定される内周面を有する略平板状の取付板34と、取付板34の上面に配置される回路基板35と、を備える。
【0018】
図示しない外部電源よりステータ33に電流を通流することによって、ステータ33はロータマグネット23と対向した磁場を発生する。そしてこの磁場とロータマグネット23との磁気的な相互作用によって、回転部2は、中心軸J1を中心とする回転駆動力を得る。
【0019】
<チャッキング装置の構造>
次に本発明のチャッキング装置4について図1乃至図10を用いて説明する。図2は、本発明のチャッキング装置4を示した、軸方向上側より見た平面図である。
【0020】
図1および図2(もしくは、図7)を参照して、チャッキング装置4は、ロータホルダ22の蓋部222の上面側に配置され、シャフト21に固定される、樹脂材料を射出成型によって形成されたターンテーブル41と、ターンテーブル41の軸方向上側に配置され、図示しない円盤状のディスクの中心開口部と接触するディスク保持部421を有する、樹脂材料を射出成型によって形成されたコーン42と、コーン42の軸方向上側に配置され、シャフト21に固定される、磁性体にて形成された環状のヨーク43と、ヨーク43の上面に固定された略円環形状のクランプマグネット44と、コイルバネ47と、から構成される。クランプマグネット44は、ヨーク43との間の磁気吸引力および接着剤を利用してヨーク43の上面に固定される。これにより、クランプマグネット44はヨーク43を介してシャフト21に間接的に固定される。
【0021】
コイルバネ47は、シャフト21の周囲において、ターンテーブル41とコーン42との間にて上下方向に挟持される。なお、ブラシレスモータ1では、シャフト21は、ターンテーブル41等を取り付けるチャッキング装置4の構成部材と捉えることもできる。
【0022】
また、ターンテーブル41におけるコーン42より径方向外側には、ラバー等によって形成された円環形状のディスク載置部4131が形成される。ディスク載置部4131の上面は、ディスクの下面と接触することによって、ディスクをチャッキング装置4に載置する載置面となる。ここで、本実施例のクランプマグネット44は、周方向に2極に着磁され、表面にはニッケルめっきが施されている。
【0023】
図3はコーン42の断面図である。コーン42は、円環状のディスク保持部421と、中心軸J1に垂直な環状部425と、中心軸J1を中心とする円筒状の周壁部426と、から構成される。環状部425は、中心軸J1近傍において円筒状の摺動部423を備える。摺動部423の内側には、シャフト21が摺動部423の内側面と軽く接触した状態にて配置される。摺動部423は、ディスクの取り付け時および取り外し時において、コイルバネ47の弾性変形を利用してシャフト21に対して上下に摺動可能である。
【0024】
周壁部426は環状部425の外周から上方に向かって伸びる。コーン42の内側には、環状部425および周壁部426によりヨーク43およびクランプマグネット44を収容する収容部427が形成される。本実施例では、周壁部426の径方向の厚さは約0.9mmであり、環状部425の軸方向の厚さは約1.0mmである。図1に示すように、チャッキング装置4では、周壁部426の内周面とヨーク43の外周面およびクランプマグネット44の外周面との間に僅かな間隙が設けられる。
【0025】
図3に示すように、ディスク保持部421は、周壁部426の上端から径方向外側に向かい軸方向下側に傾斜する第1傾斜部4211と、第1傾斜部4211より径方向外側に形成され、径方向外側に向かい軸方向下側に傾斜する第2傾斜部4212と、を備える。中心軸J1と第1傾斜部4211とから成る鋭角の大きさは、中心軸J1と第2傾斜部4212とから成る鋭角の大きさよりも大きい。
【0026】
第1傾斜部4211の外面は、ディスクをチャッキング装置4に装着する際に、ディスクの中心開口部の下端部と接触する。そして、第1傾斜部4211は、ディスクの中心開口部の下端部を第2傾斜部4212へと案内する。
【0027】
第2傾斜部4212の外面であるディスク保持面4212aは、ディスクをチャッキング装置4に装着した際に、ディスクの中心開口部の内周面の下端部と接触する。そしてディスク保持面4212aは、ディスクを径方向に保持する。
【0028】
図4はコーン42の底面図である。図3および図4に示すように、コーン42では、射出成形時に樹脂材料が金型(不図示)より流れる入り口の痕であるゲート部4214aが環状部425の下面に形成される。また、環状部425の図3に示す上面には、金型よりコーン42を離す複数のエジェクトピン(不図示)が接触する。このエジェクトピンによって、金型から成型品であるコーン42を離間させる。本実施例では、環状部425の下面にゲート部4214aを設け、環状部425の上面にエジェクトピンを接触させているが、環状部425の上面にゲート部4214aを設け、環状部425の下面にエジェクトピンを接触させてもよい。コーン42における他の部位より厚さが厚い環状部425にゲート部4214aを設けることによって、ゲート部4214aを金型の離型の際に、ゲート部4214aと成型品であるコーン42とを切り離すのに必要な強度を保持することができる。
【0029】
図3および図4に示すように、周壁部426の外周面と第1傾斜部4211および第2傾斜部4212との径方向の間には、互いを接続するようにリブ424が形成される。特に本実施例では、周壁部426における周方向に隣り合うリブ424の間隔は、略60度である。
【0030】
図5はターンテーブル41の断面図である。ターンテーブル41は、径方向外側に延びる略平面状の径方向延長部412と、径方向延長部412より径方向外側に形成されるディスクを載置する載置部413と、から構成される。
【0031】
載置部413は、径方向延長部412と接続し、軸方向に沿って延びる略円筒形状の内周壁部4132と、内周壁部4132より径方向外側に形成され、内周壁部4132と同心に形成される略円筒形状の外周壁部4133と、内周壁部4132および外周壁部4133をそれぞれの上部にて径方向に連結する略円環形状の連結部4134と、を備える。
【0032】
内周壁部4132の内周面と連結部4134の下面との間には、径方向内側に向かい軸方向下側に傾斜する円環傾斜面4136が形成される。円環傾斜面4136の径方向内側には、中心軸J1に平行に伸びる円筒面4138が形成される。後述するように、円筒面4138の内側には、図1のコーン42にディスクが保持された状態において、コーン42のディスク保持部421の先端が位置する。チャッキング装置4では、円環傾斜面4136が設けられることにより、円環傾斜面4136と円筒面4138との間の部位が他の部位に比べて過度に薄くなることが防止される。これにより、ターンテーブル41を射出成型する際の樹脂材料の流動性が良好となり、ターンテーブル41の成型不良が低減される。
【0033】
連結部4134は、外周壁部4133より径方向外側まで延びる。そして、連結部4134の外周部には、ディスク載置部4131が形成される。また連結部4134の外周壁部4133より径方向外側の下面と外周壁部4133の外周面とは径方向外側に向かい軸方向上側に傾斜する傾斜面4137によって接続される。
【0034】
図6に示すように、内周壁部4132の下端部および外周壁部4133の下端部を径方向に接続するように金属板にて形成された略円環状のプレート45が固定される。プレート45は、内周壁部4132の内周面に固定される円筒部451と、円筒部451から径方向外側に延び、内周壁部4132の下面および外周壁部4133の下面と接触する平板部452と、から構成される。そして、平板部452における内周壁部4132と外周壁部4133との径方向の間には、樹脂材料製の円環状のシート46が固定されている。そして、シート46の上面には、ブラシレスモータ1の回転部2の回転バランスを補正する、複数の鋼球48が配置されている。したがって、ブラシレスモータ1を高速回転させたとしても、振動を低減することができる。
【0035】
図7はヨーク43およびクランプマグネット44を示す図である。図7を参照して、ヨーク43は、プレス成型にて成型され、シャフト21の外周面と固定する内周面を有し、中心軸J1に対して垂直な方向に広がる円環形状の平板部431と、平板部431の上面の径方向内側において軸方向上側に延びる略円筒形状の円筒部432と、から構成される。円筒部432の内周面と平板部431の内周面とは同一径である。クランプマグネット44の下面441は中心軸J1に垂直な平面である。クランプマグネット44の内周面は、円筒部432の外周面と径方向に間隙を有している。円筒部432の上面には、軸方向下側に向かい縮径する傾斜面である案内面4321が形成される。
【0036】
図8はヨーク43の平面図である。図7および図8に示すように、平板部431の上面における外周側には、軸方向下側に凹む凹部71が形成される。凹部71は、中心軸J1を中心とする環状である。また平板部431の上面と外周面との間には、径方向外側に向かい軸方向下側に傾斜する傾斜面4312が形成される。
【0037】
図9は、図1のチャッキング装置4の凹部71近傍を拡大して示す図である。凹部71の径方向外側の側壁711は、中心軸J1に平行である。径方向内側の側壁712は、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜する。以下、径方向外側の側壁711を「第1側壁711」といい、径方向内側の側壁712を「第2側壁712」という。凹部71では、第1側壁711と第2側壁712との間の底部713からクランプマグネット44の下面441までの距離は、0.2mmである。
【0038】
クランプマグネット44の下面441と凹部71の第2側壁712との間には、径方向外方に向かって幅が漸次増大するテーパ間隙712aが形成される。また、ヨーク43の外縁部において、クランプマグネット44の下面441およびヨーク43の傾斜面4312により、径方向外側に向かって幅が漸次増大するテーパ状の間隙79が形成される。以下、間隙79を「外周間隙79」という。
【0039】
クランプマグネット44の外周面の径方向の位置は、平板部431の外周面の径方向の位置と略同一である。クランプマグネット44を平板部431の外径を基準に取り付けることによって、クランプマグネット44の外周面とコーン42の周壁部426の内周面とが接触することを防ぐことができる。したがって、クランプマグネット44とコーン42とが接触することによって、ディスク保持部421が軸方向下側に移動しない不良や、ディスク保持部421が変形してしまう不良を防ぐことができる。その結果、信頼性の高いチャッキング装置およびチャッキング装置を備えたブラシレスモータを提供することができる。
【0040】
図10を参照して、ロータホルダ22の内側円筒部223は、蓋部222から軸方向下側に屈曲して形成される。そして内側円筒部223と蓋部222との連結部には、屈曲部224が形成される。
【0041】
これらロータホルダ22およびターンテーブル41がシャフト21に固定されるために中心軸J1に対して高精度に取り付けることができる。その上、それぞれが軸方向に間隙を介して配置されるために軸方向に隣り合う部材間の接触によって、中心軸J1に対する振れを防止することができる。したがって、それぞれの部材が中心軸J1に対してより高精度に取り付けられる。
【0042】
ヨーク43の平板部431の下面は、摺動部423の上面と軸方向に間隙を介して対向する。また、ヨーク43の円筒部432の上端部は、シャフト21の上端面より軸方向上側まで延びる。
【0043】
これらコーン42およびヨーク43がシャフト21に固定されるために中心軸J1に対して高精度に取り付けることができる。その上、それぞれが軸方向に間隙を介して配置されるために軸方向に隣り合う部材間の接触によって、中心軸J1に対する振れを防止することができる。したがって、それぞれの部材が中心軸J1に対してより高精度に取り付けることができる。
【0044】
<ディスク駆動装置の構造>
次に本発明のモータを搭載したディスク駆動装置の実施例の一形態について図11を用いて説明する。図11は、本発明のディスク駆動装置を軸方向に切った模式断面図である。
【0045】
図11を参照して、ディスク駆動装置50は、中心開口部61を有した円盤形状のディスク60の中心開口部61に挿入されることによってディスク60の回転中心と同軸に調芯し、ディスク60を回転させるスピンドルモータ51と、ディスク60にレーザー光を放射することによってディスクに情報を記録再生する光ピックアップ機構52と、このピックアップ機構52をディスク60の回転径方向に移動を行う移動機構53と、これらを収容する筺体54と、を備える。
【0046】
スピンドルモータ51および光ピックアップ機構52は、シャーシ55によって、保持されている。このシャーシ55が少なくとも軸方向に移動することによって、スピンドルモータ51のチャッキング装置にディスク60の中心開口部61が装着される。またシャーシ55には、開口穴が形成されており、その開口穴の内部に光ピックアップ機構52は、配置される。
【0047】
移動機構53は、出力軸にギアを有するモータ531と、このモータ531の回転トルクを伝達する伝達側ギア532と、を備える。
【0048】
筺体54には、ディスク60の挿入および取り出しを行う開口穴542が形成されている。また筺体54内には、ディスク60が載置され、スピンドルモータ51までディスク60を運ぶ、トレイ57が配置されている。このトレイ57は、筺体54の外部に移動可能である。
【0049】
光ピックアップ機構52は、レーザーを放射する記録再生部521と、この記録再生部521のディスク60の回転径方向への移動方向とは垂直に設けられ、記録再生部521の移動を行う移動部522と、を備える。この移動部522は、伝達側ギア532と噛み合う噛み合い部522aを有する。そして記録再生部521は移動部522と噛み合うことによって径方向に移動する。
【0050】
モータ531に取り付けられた伝達側ギア532が回転し、伝達側ギア532が移動部522の噛み合い部522aと噛み合うことによって移動部522が回転径方向に移動する。そしてこの移動部522の移動によって記録再生部521は径方向に移動する。
【0051】
このディスク駆動装置50のスピンドルモータ51に本発明のブラシレスモータ1を適用することによって、ディスク60とスピンドルモータ51との調芯精度を向上したディスク駆動装置を安価に提供することができる。
【0052】
<ディスク装着の際のチャッキング装置の動作>
次に、ディスク60をチャッキング装置4に装着する際のコーン42の動作について、図12および図13を用いて説明する。図12は、ディスク60とチャッキング装置4とが接触し始めた状態を示した、軸方向に切った模式断面図である。そして図13は、ディスク60がチャッキング装置4に装着された状態を示した、軸方向に切った模式断面図である。
【0053】
図12を参照して、ディスク60の上面側には、クランプ部材56が配置されている。クランプ部材56は、クランプマグネット44に吸着する磁性体のクランプヨーク561と、クランプヨーク561と一体に形成され、ディスク60の上面を抑える樹脂材料製の押さえ部562と、押さえ部562と一体に形成され、中心軸J1とほぼ一致し、軸方向下側に伸びる調芯突起部563と、から構成される。押さえ部562には、ディスク60の上面と接触する円環状のディスク接触面5621が形成される。そしてディスク接触面5621の径は、ターンテーブル41のディスク載置部4131の径と略同一である。
【0054】
ディスク60の中心開口部61は、コーン42の第1傾斜部4211に接触する。この第1傾斜部4211により、ディスク60の中心開口部61は、第2傾斜部4212に案内されるために、中心軸J1と中心開口部61の中心とをおおよそ一致することができる。
【0055】
またクランプ部材56では、クランプヨーク561がクランプマグネット44により磁気的に吸引されつつ、調芯突起部563は、ヨーク43の円筒部432の案内面4321によって、円筒部432の内側に挿入されていく。これにより、調芯突起部563と中心軸J1とを調芯する。また案内面4321によって、調芯突起部563を良好に中心軸J1に案内することができるために、ディスク装着力を低減することができる。
【0056】
図13を参照して、コイルバネ47は、上部が下方に変位するように弾性変形し、コーン42がシャフト21に沿って下方へと移動する。ディスク保持部421では、第2傾斜部4212の先端がターンテーブル41の円筒面4138の内側に位置するとともに、第2傾斜部4212が径方向内方に僅かに弾性変形する。ディスク60は、ディスク載置部4131に当接し、クランプ部材56およびディスク載置部4131により挟まれて上下方向に固定される。また、ディスク60は、中心開口部61の中心が中心軸J1に一致した状態にて、第2傾斜部4212のディスク保持面4212aにより中心軸J1に垂直な方向に高精度に保持される。これにより、ブラシレスモータ1の回転時に、ディスクが径方向へ移動することが防止される。
【0057】
<チャッキング装置の組み立ての流れ>
図14は、チャッキング装置4の組み立ての流れを示す図である。まず、図15に示すように、鋼球48等が取り付けられたターンテーブル41が、シャフト21に上側から嵌入されて固定される(ステップS11)。なお、シャフト21は、回転部2の他の部材および固定部3に予め取り付けられている。ターンテーブル41の径方向延長部412上には、コイルバネ47が載置される(ステップS12)。
【0058】
コイルバネ47とコーン42のリブ424とが中心軸J1に平行な方向に対向しつつコーン42が上側からシャフト21に嵌入される(ステップS13)。コーン42の収容部427には、ヨーク43が上側から挿入され、平板部431の下部がシャフト21の上端部に嵌入されて固定される(ステップS14)。
【0059】
平板部431では、上面のうち、凹部71よりも径方向内側にて中心軸J1に垂直な環状の領域431aに、接着剤9が塗布される(ステップS15)。以下、領域431aを「塗布領域431a」という。ヨーク43の上方では、着磁されたクランプマグネット44が、中心軸J1とクランプマグネット44の中心軸とを一致させつつ、円筒部432に嵌入される。クランプマグネット44は、ヨーク43との間の磁気吸引力により平板部431上に勢いよく当接し、接着剤9を介してヨーク43の上面に固定される(ステップS16)。
【0060】
このとき、接着剤9は、塗布領域431aとクランプマグネット44の下面441との間を径方向外方および径方向内方に広がる。接着剤9が塗布領域431aの径方向外側に広がった場合、図9に示すように、凹部71のテーパ間隙712aにて毛管現象により保持される。その結果、接着剤9の少なくとも一部、通常は接着剤9の大部分が、塗布領域431aに塗布された状態となる。このように、ヨーク43では、塗布領域431aからの接着剤9の流出が抑制されるため、ヨーク43とクランプマグネット44との間の接着強度の低下が防止される。
【0061】
図16は、チャッキング装置4の組み立ての他の流れを示す図である。図16に示す例では、まず、ヨーク43の塗布領域431aに、接着剤9が塗布される(ステップS21)。そして、クランプマグネット44が、上方から円筒部432に嵌入される。クランプマグネット44は、ヨーク43との間の磁気吸引力により平板部431上に勢いよく当接し、接着剤9を介してヨーク43の上面に固定される(ステップS22)。
【0062】
ターンテーブル41は、シャフト21に上側から嵌入されて固定される(ステップS23)。ターンテーブル41の径方向延長部412上に、コイルバネ47が載置される(ステップS24)。コーン42が上側からシャフト21に嵌入される(ステップS25)。コーン42の収容部427に、ヨーク43およびクランプマグネット44が上側から挿入され、平板部431の下部がシャフト21の上端部に嵌入されて固定される(ステップS26)。
【0063】
なお、組み立て順序は、可能な範囲内にて適宜変更されてよい。
【0064】
以上、第1の実施形態について説明したが、凹部71では、第1側壁711と中心軸J1とのなす角が、第2側壁712と中心軸J1とのなす角よりも小さい。これにより、接着剤9がテーパ間隙712aから溢れた場合であっても、接着剤9には、第1側壁711とクランプマグネット44との間において径方向外方へと向かう力よりも、テーパ間隙712aにて径方向内方に向かう力の方が強く働き、接着剤9の径方向外方への移動が制限される。その結果、接着剤9がヨーク43の平板部431とクランプマグネット44の下面441との間から径方向外方に流出することが防止される。
【0065】
さらに、仮に、凹部71より径方向外方に接着剤9が移動しても、外周間隙79にて保持されるため、ヨーク43とクランプマグネット44との間から接着剤9が流出することがより確実に防止される。なお、クランプマグネット44にニッケルめっきが施されている場合、接着性が低下するため、比較的多量の接着剤が必要となる。したがって、接着材のはみ出しを防止する構造は、ニッケルめっきが施されたクランプマグネット44が用いられる場合に特に適している。
【0066】
ところで、コーンの周壁部とヨークの平板部との間の間隙が小さいチャッキング装置では、当該間隙内に僅かな接着剤9が存在することにより、コーンの摺動が妨げられてしまう。なお、コーンの外径はディスクの内径に基づいて設計されることから、コーンを大きくして当該間隙を大きく確保することができない。しかし、チャッキング装置4では、接着剤9が平板部431の外周に流出することが防止されるため、ヨーク43の平板部431をコーン42の周壁部426に近づけることができる。その結果、平板部431の面積が確保され、径が大きいクランプマグネット44を取り付けることができる。ディスクの取付時には、クランプマグネット44とクランプ部材56との間のクランプ力が向上される。
【0067】
第1の実施形態では、凹部71の底部713とクランプマグネット44の下面441との間の距離、すなわち、底部713と塗布領域431aとの間の距離は0.2mm以外の距離に設定されてよい。当該距離は、好ましくは、流出した接着剤9を十分に保持するために0.02mm以上とし、凹部71を容易に設けるために0.3mm以下とする。より好ましくは、当該距離は0.15mm以上0.25mm以下とする。なお、凹部71は、クランプマグネット44との距離が0.05mm以下の場合、接着面としても機能する。
【0068】
チャッキング装置4では、プレス成型により成型されたヨーク43に代えて、粉体を加圧成型したものを燒結することにより形成されたヨークが利用されてもよい。また、切削によりヨークが形成されてもよい。ヨークが、いずれの方法により製造される場合であっても、同様の理由により、凹部71の底部713とクランプマグネット44の下面441との間の距離は、0.02mm以上0.3mm以下とする。
【0069】
(第2の実施形態)
図17は、第2の実施形態に係るチャッキング装置のヨークおよびクランプマグネットの断面図である。ヨーク43の平板部431には、第1凹部72および第1凹部72の径方向内側に位置する第2凹部73が設けられる。第1凹部72および第2凹部73はそれぞれ、中心軸J1を中心とする環状である。他の形状は、図7に示すヨーク43と同様であり、同様の構成には同符号を付して説明する。チャッキング装置の組み立ての流れは第1の実施形態と同様である(他の実施の形態においても同様)。第1凹部72の断面形状は、図9に示すヨーク43の凹部71の断面形状と同じである。第1凹部72と第2凹部73との間には、接着剤9が塗布される塗布領域431aが設けられる。
【0070】
図18は、図17の第2凹部73近傍を拡大して示す図である。ヨーク43では、第2凹部73の径方向外側の第1側壁731が、径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜する。第1側壁731とクランプマグネット44の下面441との間には、径方向内方に向かって幅が漸次増大するテーパ間隙731aが形成される。径方向内側の第2側壁732は、図17の中心軸J1に平行であり、円筒部432の外周面432aと連続する。第2凹部73では、中心軸J1に平行な方向において、第1側壁731と第2側壁732との間の底部733とクランプマグネット44の下面441との間の距離が、0.2mmである。
【0071】
クランプマグネット44がヨーク43に固定される際には、図15と同様に、接着剤9が塗布領域431aに塗布された後に、クランプマグネット44がヨーク43の円筒部432に上方から嵌入される。図18に示すように、ヨーク43では、第2凹部73が円筒部432の外周面432aに沿って設けられることにより、平板部431とクランプマグネット44の下面441の径方向内側におけるエッジ部との干渉が防止される。このように、第2凹部73は、ヨーク43とクランプマグネット44との干渉を避けるヌスミ部としても機能する。
【0072】
クランプマグネット44が平板部431上に当接すると、接着剤9が、塗布領域431aとクランプマグネット44の下面441との間を径方向外方および径方向内方に広がる。接着剤9が塗布領域431aから径方向内方へと流出した場合、第2凹部73のテーパ間隙731a内に保持される。これにより、接着剤9が、円筒部432の外周面432aとクランプマグネット44の内周面との間から上方に流出することが防止される。
【0073】
また、接着剤9が、万一、塗布領域431aから径方向外方に流出した場合であっても、図9と同様に、第1凹部72のテーパ間隙712aに保持され、平板部431とクランプマグネット44の下面441の間から径方向外方に流出することが防止される。
【0074】
第2の実施形態では、第2凹部73の第2側壁732と中心軸J1とのなす角が、第1側壁731と中心軸J1とのなす角よりも小さい。これにより、接着剤9がテーパ間隙731aから溢れた場合であっても、第2側壁732にて接着剤9の移動が制限され、接着剤9が第2凹部73内に保持される。また、第1凹部72では、図9に示す凹部71と同様に、第1側壁711の中心軸J1に対する傾きが、第2側壁712の中心軸J1に対する傾きよりも小さいことから、接着剤9に径方向内方へと向かう力が強く働き、接着剤9の径方向外方への移動が制限される。
【0075】
第2凹部73の底部733とクランプマグネット44の下面441との間の距離は、0.2mm以外の距離に設定されるとよく、好ましくは、塗布領域431aから流出した接着剤9を十分に保持するために0.02mm以上とし、第2凹部73を容易に設けるために0.3mm以下とする。より好ましくは、当該距離は、0.15mm以上0.25mm以下とする。第1凹部72についても同様であり、以下の実施形態の第1凹部および第2凹部についても同様である。第1凹部72および第2凹部73は、クランプマグネット44との距離が0.05mm以下の場合、接着面としても機能する。燒結等により形成されたヨークが利用される場合においても、凹部72,73とクランプマグネット44との間の距離は、0.02mm以上0.3mm以下とする。以下の実施形態においても同様である。
【0076】
(第3の実施形態)
図19は、第3の実施形態に係るチャッキング装置のヨークおよびクランプマグネットの断面図である。図19では、ヨーク43およびクランプマグネット44の断面の左半分を拡大して示している。後述の図20についても同様である。ヨーク43では、第1凹部72と傾斜面4312との間に位置する環状領域431bが、中心軸J1に平行な方向において、塗布領域431aよりも下方に位置する。ヨーク43の他の形状は、図17のヨーク43とほぼ同様である。
【0077】
ヨーク43にクランプマグネット44が固定された状態では、第1凹部72の径方向外側に位置する環状領域431bとクランプマグネット44の下面441との間に、微小間隙78が形成される。中心軸J1に平行な方向において、微小間隙78の大きさは0.05mmである。第1凹部72の底部723とクランプマグネット44の下面441との間の距離は、0.2mmである。
【0078】
第3の実施形態では、クランプマグネット44の固定時において、接着剤9が塗布領域431aから径方向外方に流出した場合であっても、第1凹部72において、接着剤9が保持される。また、接着剤9が第1凹部72から微小間隙78に流入しても、微小間隙78内にて、毛管現象により接着剤9の径方向外方への移動が制限されるとともに、接着剤9が保持される。これにより、接着剤9がヨーク43とクランプマグネット44との間から流出することが確実に防止される。
【0079】
微小間隙78の大きさは0.05mm以外の大きさに設定されてもよく、接着剤9を微小間隙78内に保持するために0.02mm以上とし、毛管現象を利用して接着剤9を微小間隙78内に保持するために0.1mm以下とする。もちろん、微小間隙78の大きさは、底部723とクランプマグネット44との間の距離よりも小さい。
【0080】
(第4の実施形態)
図20は、第4の実施形態に係るチャッキング装置のヨークおよびクランプマグネットの断面図である。ヨーク43では、塗布領域431aが環状領域431bよりも中心軸J1に平行な方向において下方に位置する。他の形状は、図19のヨーク43と同様である。塗布領域431aとクランプマグネット44の下面441との間には、微小間隙77が形成される。中心軸J1に平行な方向において、微小間隙77の大きさは0.05mmである。
【0081】
第4の実施形態では、塗布領域431aに多くの接着剤9が塗布された場合であっても、クランプマグネット44の固定時に、接着剤9が塗布領域431aから径方向外方および径方向内方に流出することが抑制され、微小間隙77内に保持される。これにより、接着剤9がヨーク43とクランプマグネット44との間から流出することが確実に防止される。微小間隙77の大きさは他の大きさに設定されてよく、接着剤9を微小間隙77内に保持するために0.02mm以上とされ、塗布領域431aにてヨーク43とクランプマグネット44とが確実に接着されるために0.05mm以下とされる。なお、微小間隙77の大きさは、第1凹部72および第2凹部73とクランプマグネット44との間の距離よりも小さい。
【0082】
以上、本発明の実施例について記載したが、本発明は、上記実施例に限定されることなく、特許請求の範囲内において、種々の変形が可能である。例えば、第1の実施形態では、図21に示すように、クランプマグネット44の下面441の外縁部は、径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜する傾斜面441aであってもよい。他の実施形態においても同様である。傾斜面441aは、ヨーク43の傾斜面4312と中心軸J1に平行な方向に対向する。傾斜面441a,4312の間には、径方向外方に向かって幅が漸次増大する外周間隙79aが形成される。また、第1の実施形態では、平板部431の上面の外縁部は、断面が径方向外方に向かって滑らかに湾曲する、いわゆる、R形状であってもよい。
【0083】
上記第1の実施形態では、図22に示すように、凹部71の第1側壁711と中心軸J1とのなす角が、第2側壁712と中心軸J1とのなす角よりも小さいのであれば、第1側壁711が径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜してもよい。換言すれば、凹部71の第1側壁711とクランプマグネット44の下面441とのなす角が、第2側壁712と下面441とのなす角よりも大きい。この場合であっても、接着剤9には、第1側壁711とクランプマグネット44との間の間隙711aにて径方向外方に向かう力よりも、テーパ間隙712aにて径方向内方に向かう力の方が強く働くことから、凹部71に流入した接着剤9の径方向外方への移動が制限される。第2ないし第4の実施形態におけるヨーク43の第1凹部72についても同様である。
【0084】
また、第2の実施形態では、第2凹部73の第2側壁732と中心軸J1とのなす角が、第1側壁731と中心軸J1とのなす角よりも小さいのであれば、第2側壁732が径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜してもよい。換言すれば、第2凹部73の第2側壁732とクランプマグネット44の下面441とのなす角が、第1側壁731と下面441とのなす角よりも小さい。第2凹部73では、接着剤9に径方向外方に向かう力が強く働くため、第2凹部73に流入した接着剤9の径方向内方への移動が制限される。図19および図20に示す第2凹部73についても同様である。
【0085】
第2の実施形態では、図23に示すように、第2凹部73が円筒部432よりも径方向外側に設けられてもよい。第2側壁732と中心軸J1とのなす角が、第1側壁731と中心軸J1とのなす角よりも小さいことにより、多くの接着剤9が塗布された場合であっても、接着剤9には、テーパ間隙731aにて径方向外方に向かう力が強く働き、接着剤9の径方向外方への移動が制限される。
【0086】
第1の実施形態では、図19と同様に、塗布領域421aが環状領域431bよりも上方に位置してもよい。これにより、凹部71から径方向外方に流出した接着剤9が、環状領域431bとクランプマグネット44との間に形成された微小間隙にて保持され、ヨーク43とクランプマグネット44との間から流出することがより確実に防止される。また、図20に示すように、塗布領域431aが環状領域431bよりも下方に位置してもよい。これにより、接着剤9が塗布領域431aとクランプマグネット44との間の微小間隙に保持される。
【0087】
図20に示す第4の実施の形態では、微小間隙77が塗布領域431aの一部に設けられてもよい。例えば、塗布領域431aの中央にて円形の浅い凹部が設けられることにより、当該凹部とクランプマグネット44との間に微小間隙が設けられてよい。第1および第2の実施形態においても同様である。
【0088】
ターンテーブル41では、モータ1の振動が大きくならない場合には、鋼球48が省略されてよい。チャッキング装置4では、コーン42を上方に押圧する押圧部として、コイルバネ47に代えて樹脂等の弾性部材が利用されてよい。なお、コーン42は必ずしも上方に押圧される必要はない。
【0089】
本発明では、シャフト21を回転自在に支持するために、スリーブ31を用いたが、本発明はこれに限定されることはない。シャフト21を回転自在に支持する軸受機構がブラシレスモータに備わっていればよい。そのため、例えば、スリーブ31の代わりにボールベアリングを使用してもよい。ディスク駆動装置50の光ピックアップ機構52では、ディスク60を光学的に記録または再生の少なくともどちらか一方を行う記録再生部が設けられてよい。
【産業上の利用可能性】
【0090】
本発明は、記録ディスク駆動装置のモータとして特に適しているが、記録ディスク駆動装置以外のモータとしても利用可能である。
【符号の説明】
【0091】
1 ブラシレスモータ
2 回転部
3 固定部
4 チャッキング装置
9 接着剤
21 シャフト
23 ロータマグネット
33 ステータ
41 ターンテーブル
42 コーン
43 ヨーク
44 クランプマグネット
50 ディスク駆動装置
52 光ピックアップ機構
53 移動機構
60 ディスク
61 中心開口部
71 凹部
72 第1凹部
73 第2凹部
77,78 微小間隙
79,89a 外周間隙
421 ディスク保持部
423 摺動部
431a 塗布領域
431b 環状領域
432 円筒部
432a (円筒部の)外側面
521 記録再生部
711,731 第1側壁
712,732 第2側壁
713,723,733 (凹部の)底部
4131 ディスク載置部
4212a ディスク保持面
J1 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の中心軸と同軸に配置されるシャフトと、
前記シャフトに固定され、ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルと、
前記ターンテーブルより軸方向上側に配置され、前記シャフトに対して上下に摺動可能に配置される摺動部と、径方向外側に向かい軸方向下側に傾斜する円環状のディスク保持面を有するディスク保持部と、を有するコーンと、
前記摺動部の上方にて前記シャフトに固定される環状のヨークと、
前記ヨーク上に接着剤を介して固定されるクランプマグネットと、
を備え、
前記ヨークの上面が、前記中心軸を中心とする環状の凹部を有し、前記接着剤の少なくとも一部が、前記凹部よりも径方向内側の領域に塗布されており、
前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記凹部の径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、
前記径方向外側の側壁と前記中心軸とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記中心軸とのなす角よりも小さい、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とする、チャッキング装置。
【請求項2】
所定の中心軸と同軸に配置されるシャフトと、
前記シャフトに固定され、ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルと、
前記ターンテーブルより軸方向上側に配置され、前記シャフトに対して上下に摺動可能に配置される摺動部と、径方向外側に向かい軸方向下側に傾斜する円環状のディスク保持面を有するディスク保持部と、を有するコーンと、
前記摺動部の上方にて前記シャフトに固定される環状のヨークと、
前記ヨーク上に接着剤を介して固定されるクランプマグネットと、
を備え、
前記ヨークの上面が、前記中心軸を中心とする環状の凹部を有し、前記接着剤の少なくとも一部が、前記凹部よりも径方向内側の領域に塗布されており、
前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記凹部の径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、
前記径方向外側の側壁と前記クランプマグネットの下面とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記底面とのなす角よりも大きい、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とする、チャッキング装置。
【請求項3】
前記クランプマグネットと前記凹部の底部との間の距離が、0.02mm以上0.3mm以下である、請求項1または2に記載のチャッキング装置。
【請求項4】
前記ヨークの前記上面のうち、前記凹部よりも径方向外側の領域と、前記クランプマグネットとの間に、間隙が設けられる、請求項1ないし3のいずれかに記載のチャッキング装置。
【請求項5】
前記間隙が、前記クランプマグネットと前記凹部の底部との間の距離よりも小さく、かつ、0.02mm以上0.1mm以下である、請求項4に記載のチャッキング装置。
【請求項6】
前記ヨークの前記上面のうち、前記凹部よりも径方向内側の領域と、前記クランプマグネットとの間に、間隙が設けられる、請求項1ないし3のいずれかに記載のチャッキング装置。
【請求項7】
前記間隙が、前記クランプマグネットと前記凹部の底部との間の距離よりも小さく、かつ、0.02mm以上0.05mm以下である、請求項6に記載のチャッキング装置。
【請求項8】
前記ヨークの外縁部において、前記クランプマグネットと前記ヨークとの間に径方向外側に向かって漸次増大する間隙が設けられる、請求項1ないし7のいずれかに記載のチャッキング装置。
【請求項9】
前記ヨークの前記上面が、前記凹部の内側に、前記中心軸を中心とする環状の他の凹部を有し、前記接着剤の少なくとも一部が、前記凹部と前記他の凹部との間の領域に塗布されている、請求項1ないし8のいずれかに記載のチャッキング装置。
【請求項10】
前記他の凹部の径方向内側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記他の凹部の径方向外側の側壁が、径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、
前記径方向内側の側壁と前記中心軸とのなす角が、前記径方向外側の側壁と前記中心軸とのなす角よりも小さい、請求項9に記載のチャッキング装置。
【請求項11】
前記ヨークが、プレス成型にて成型され、
前記ヨークが、前記上面の径方向内側において上方に伸びる円筒部を有し、
前記円筒部の外側面と、前記他の凹部の径方向内側の側壁とが連続する、請求項9または10に記載のチャッキング装置。
【請求項12】
前記クランプマグネットと前記他の凹部の底部との間の距離が、0.02mm以上0.3mm以下である、請求項9ないし11のいずれかに記載のチャッキング装置。
【請求項13】
前記ヨークが、前記上面の径方向内側において上方に伸びる円筒部を有する、請求項1ないし10のいずれかに記載のチャッキング装置。
【請求項14】
前記クランプマグネットにニッケルめっきが施されている、請求項1ないし13のいずれかに記載のチャッキング装置。
【請求項15】
前記シャフトと共に前記中心軸の周りを回転するロータマグネットを有する回転部と、
前記ロータマグネットと対向した磁場を発生するステータを有する固定部と、
前記回転部上に取り付けられた請求項1ないし14のいずれかに記載のチャッキング装置と、
を備える、ブラシレスモータ。
【請求項16】
請求項15に記載のブラシレスモータと、
前記ディスクを光学的に記録または再生の少なくともどちらか一方を行う記録再生部を有する光ピックアップ機構と、
前記光ピックアップ機構を径方向に移動可能な移動機構と、
を備える、ディスク駆動装置。
【請求項17】
ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルを、シャフトに上側から嵌入して固定する工程と、
径方向外側に向かうにつれて下方に傾斜する円環状のディスク保持面を有するコーンを、前記シャフトに上側から嵌入することにより、前記コーンを前記シャフトの対して上下に摺動可能に配置する工程と、
環状のヨークを前記シャフトに上側から嵌入して、前記ヨークを前記シャフトに固定する工程と、
前記ヨークの上面のうち、前記上面に設けられた環状の凹部よりも径方向内側の領域に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記ヨークの前記上面上にクランプマグネットを固定する工程と、
を備え、
前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記径方向外側の側壁と前記中心軸とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記中心軸とのなす角よりも小さい、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とする、チャッキング装置の製造方法。
【請求項18】
ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルを、シャフトに上側から嵌入して固定する工程と、
径方向外側に向かうにつれて下方に傾斜する円環状のディスク保持面を有するコーンを、前記シャフトに上側から嵌入することにより、前記コーンを前記シャフトの対して上下に摺動可能に配置する工程と、
環状のヨークを前記シャフトに上側から嵌入して、前記ヨークを前記シャフトに固定する工程と、
前記ヨークの上面のうち、前記上面に設けられた環状の凹部よりも径方向内側の領域に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記ヨークの前記上面上にクランプマグネットを固定する工程と、
を備え、
前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記径方向外側の側壁と前記クランプマグネットの下面とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記底面とのなす角よりも大きい、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とする、チャッキング装置の製造方法。
【請求項19】
環状のヨークの上面のうち、前記上面に設けられた環状の凹部よりも径方向内側の領域に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記ヨークの前記上面上にクランプマグネットを固定する工程と、
ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルを、シャフトに上側から嵌入して固定する工程と、
径方向外側に向かうにつれて下方に傾斜する円環状のディスク保持面を有するコーンを、前記シャフトに上側から嵌入することにより、前記コーンを前記シャフトの対して上下に摺動可能に配置する工程と、
前記ヨークを前記シャフトに上側から嵌入して、前記ヨークを前記シャフトに固定する工程と、
を備え、
前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記径方向外側の側壁と前記中心軸とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記中心軸とのなす角よりも小さい、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とする、チャッキング装置の製造方法。
【請求項20】
環状のヨークの上面のうち、前記上面に設けられた環状の凹部よりも径方向内側の領域に接着剤を塗布する工程と、
前記接着剤を介して前記ヨークの前記上面上にクランプマグネットを固定する工程と、
ディスクを載置するディスク載置面を有するターンテーブルを、シャフトに上側から嵌入して固定する工程と、
径方向外側に向かうにつれて下方に傾斜する円環状のディスク保持面を有するコーンを、前記シャフトに上側から嵌入することにより、前記コーンを前記シャフトの対して上下に摺動可能に配置する工程と、
前記ヨークを前記シャフトに上側から嵌入して、前記ヨークを前記シャフトに固定する工程と、
を備え、
前記凹部の径方向外側の側壁が、前記中心軸に平行または径方向外側に向かうにつれて上方に傾斜し、径方向内側の側壁が、径方向内側に向かうにつれて上方に傾斜し、前記径方向外側の側壁と前記クランプマグネットの下面とのなす角が、前記径方向内側の側壁と前記底面とのなす角よりも大きい、中心開口部を有する円盤状のディスクを着脱可能とする、チャッキング装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate

【図17】
image rotate

【図18】
image rotate

【図19】
image rotate

【図20】
image rotate

【図21】
image rotate

【図22】
image rotate

【図23】
image rotate


【公開番号】特開2011−100515(P2011−100515A)
【公開日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−254839(P2009−254839)
【出願日】平成21年11月6日(2009.11.6)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】