説明

チャッキング装置、モータ、およびディスク駆動装置

【課題】振動および騒音を抑制できるとともに、ディスク載置部および調芯部を、設計の基準となる面に対して、それぞれ高い位置精度で配置できる構造を提供する。
【解決手段】チャッキング装置104では、ディスクを載置するディスク載置部141と、ディスクの内周部を支持する調芯部139とが、別部材となっている。すなわち、ディスク載置部と調芯部とが、連続しておらず、それぞれ、シャフト131に対して直接的または間接的に、固定されている。このため、ディスク載置部および調芯部を、設計の基準となる面に対して、それぞれ高い位置精度で配置できる。また、ディスク載置部および調芯部に相当する部位を含む一体の部材をシャフトの上端部付近に固定する場合と比較して、シャフトの上端部付近に掛かる荷重が軽減する。これにより、シャフトの上端部付近の弾性変形が、抑制される。その結果、回転時におけるディスクの振動および騒音が、抑制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャッキング装置、モータ、およびディスク駆動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
光ディスクドライブ等のディスク駆動装置には、ディスクを回転させるためのブラシレスモータが搭載されている。ブラシレスモータは、回転部とともに回転するチャッキング装置を有する。ディスク駆動装置は、チャッキング装置によりディスクを保持しつつ、ブラシレスモータを駆動させることにより、ディスクを回転させる。
【0003】
チャッキング装置を有する従来のブラシレスモータについては、例えば、特開2008−305460号公報に記載されている。特開2008−305460号公報には、ロータヨークと、ロータヨークより上側においてシャフトに固定されたターンテーブルとを有するモータが、記載されている。
【特許文献1】特開2008−305460号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特開2008−305460号公報のターンテーブルは、ディスクが搭載されるテーブル部と、ディスクの内周面に接触する複数の爪と、を有している。そして、当該ターンテーブルが、シャフトの上端部付近に固定されている。このため、特開2008−305460号公報の構造では、シャフトの上端部付近に、ターンテーブルおよびディスクによるモーメント荷重が、大きく作用すると考えられる。この場合、シャフトが弾性変形し、それにより、回転時におけるディスクの振動および騒音が、大きくなる虞がある。
【0005】
また、特開2008−305460号公報のターンテーブルでは、テーブル部と複数の爪とが一体で形成されている。このため、設計の基準となる面に対して、テーブル部の高さ位置と複数の爪の高さ位置とを、個々に調整することは、困難である。そのため、テーブル部および複数の爪を、それぞれ高い位置精度で配置することが難しい、という問題がある。
【0006】
本発明の目的は、チャッキング装置において、振動および騒音を抑制できるとともに、ディスク載置部および調芯部を、設計の基準となる面に対して、それぞれ高い位置精度で配置できる構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願の第1発明は、上下に延びる中心軸に沿って配置されたシャフトと、前記シャフトに固定された有蓋略円筒状のロータホルダと、前記ロータホルダに固定されるとともに、中央に円孔を有する円板状のディスクを載置する載置面を有するディスク載置部と、前記ロータホルダより上方において前記シャフトに直接的または間接的に固定されるとともに、ディスクの内周部を支持する支持面を有する調芯部と、前記調芯部に固定された磁性体であるクランプヨークと、を備え、前記調芯部は、径方向外側かつ下方へ向けて広がるガイド面が、周方向に複数配列された基部と、前記複数のガイド面の間において、前記基部の上部から径方向外側かつ下方へ向けて延びる複数の調芯爪と、を有し、前記ディスク載置部と前記調芯部とは、別部材であるチャッキング装置である。
【発明の効果】
【0008】
本願の第1発明によれば、ディスク載置部と調芯部とが、連続しておらず、それぞれ、シャフトに対して直接的または間接的に、固定されている。このため、ディスク載置部および調芯部を、設計の基準となる面に対して、それぞれ高い位置精度で配置できる。
【0009】
また、ディスク載置部および調芯部を含む一体の部材をシャフトの上端部付近に固定する場合と比較して、シャフトの上端部付近に掛かる荷重が軽減する。これにより、シャフトの上端部付近の弾性変形が、抑制される。その結果、回転時におけるディスクの振動および騒音が、抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、チャッキング装置の縦断面図である。
【図2】図2は、ディスク駆動装置の縦断面図である。
【図3】図3は、ブラシレスモータの縦断面図である。
【図4】図4は、回転部の部分縦断面図である。
【図5】図5は、変形例に係る回転部の部分縦断面図である。
【図6】図6は、変形例に係る回転部の部分縦断面図である。
【図7】図7は、変形例に係る回転部の部分縦断面図である。
【図8】図8は、変形例に係る回転部の部分縦断面図である。
【図9】図9は、変形例に係るブラシレスモータの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の例示的な実施形態について、図面を参照しつつ説明する。なお、以下では、チャッキング装置の中心軸に沿う方向を上下方向とし、ロータホルダに対して調芯部側を上として、各部の形状や位置関係を説明する。ただし、これは、説明の便宜のために上下方向を定義したものであって、本発明に係るモータおよびディスク駆動装置の、使用時の姿勢を限定するものではない。
【0012】
<1.一実施形態に係るチャッキング装置>
図1は、本発明の一実施形態に係るチャッキング装置104の縦断面図である。図1に示すように、チャッキング装置104は、シャフト131、ロータホルダ132、ディスク載置部141、調芯部139、およびクランプヨーク140を、備えている。
【0013】
シャフト131は、上下に延びる中心軸109に沿って、配置されている。ロータホルダ132は、シャフト131に固定された有蓋略円筒状の部材である。ディスク載置部141は、ロータホルダ132に固定されている。また、ディスク載置部141は、中央に円孔を有する円板状のディスク190を載置する載置面を、有している。
【0014】
調芯部139は、ロータホルダ132より上方において、シャフト131に直接的または間接的に固定されている。調芯部139は、基部151および複数の調芯爪152を、有している。基部151には、径方向外側かつ下方へ向けて広がるガイド面151aが、周方向に複数配列されている。複数の調芯爪152は、複数のガイド面151aの間において、基部の上部から径方向外側かつ下方へ向けて延びている。調芯爪152には、ディスク190の内周部を支持する支持面が、設けられている。
【0015】
また、調芯部139には、磁性体であるクランプヨーク140が、固定されている。
【0016】
このチャッキング装置104では、ディスク載置部141と調芯部139とが、別部材となっている。すなわち、ディスク載置部141と調芯部139とが、連続しておらず、それぞれ、シャフト131に対して直接的または間接的に、固定されている。このため、ディスク載置部141および調芯部139を、設計の基準となる面に対して、それぞれ高い位置精度で配置できる。
【0017】
また、ディスク載置部141および調芯部139に相当する部位を含む一体の部材をシャフト131の上端部付近に固定する場合と比較して、シャフト131の上端部付近に掛かる荷重が軽減する。これにより、シャフト131の上端部付近の弾性変形が、抑制される。その結果、回転時におけるディスク190の振動および騒音が、抑制される。
【0018】
<2.より具体的な実施形態>
<2−1.ディスク駆動装置の構成>
続いて、本発明のより具体的な実施形態について説明する。
【0019】
図2は、ディスク駆動装置1の縦断面図である。ディスク駆動装置1は、中央に円孔を有する円板状の光ディスク90(以下、単に「ディスク90」という)を回転させつつ、ディスク90に対して情報の読み出しおよび書き込みを行う装置である。ディスク駆動装置1は、装置ハウジング11、ディスクトレイ12、ブラシレスモータ13、クランパ14、およびアクセス部15を備えている。
【0020】
装置ハウジング11は、ディスクトレイ12、ブラシレスモータ13、クランパ14、およびアクセス部15を、内部に収容する筐体である。ディスクトレイ12は、装置ハウジング11の外部と内部との間で、ディスク90を搬送するための機構である。ブラシレスモータ13は、装置ハウジング11の内部に設けられたシャーシ16に固定されている。ディスクトレイ12からブラシレスモータ13へ移載されたディスク90は、ブラシレスモータ13の回転部3とクランパ14との間に保持され、ブラシレスモータ13により、中心軸9を中心として回転される。
【0021】
アクセス部15は、光ピックアップ機能を備えたヘッド15aを有している。アクセス部15は、ブラシレスモータ13に保持されたディスク90の記録面に沿ってヘッド15aを移動させて、ディスク90に対する情報の読み出しおよび書き込みを行う。なお、アクセス部15は、ディスク90に対して、情報の読み出しおよび書き込みの一方のみを行うものであってもよい。
【0022】
<2−2.ブラシレスモータの構成>
続いて、上記のブラシレスモータ13の構成について説明する。
【0023】
図3は、ブラシレスモータ13の縦断面図である。図3に示すように、ブラシレスモータ13は、静止部2と回転部3とを備えている。静止部2は、ディスク駆動装置1のシャーシ16(図2参照)に固定されている。回転部3は、静止部2に対して回転可能に支持されている。
【0024】
静止部2は、ベース部材21、静止軸受ユニット22、予圧マグネット23、および電機子ユニット24を有する。
【0025】
静止軸受ユニット22は、シャフト31を回転可能な状態で支持する機構である。静止軸受ユニット22は、スリーブ22aと、スリーブハウジング22bと、を有する。スリーブ22aは、シャフト31の外周面を包囲する略円筒状の部材である。スリーブハウジング22bは、スリーブ22aを内部に保持する、略カップ状の部材である。スリーブハウジング22bは、ベース部材21に固定されている。
【0026】
予圧マグネット23は、スリーブハウジング22bの上端部に固定されている。予圧マグネット23は、後述するロータホルダ32との間に、軸方向(中心軸に沿う方向。以下同じ)の磁気的吸引力を発生させる。これにより、回転部3が静止部2側へ引き付けられ、回転部3の回転姿勢が安定する。
【0027】
電機子ユニット24は、複数本のティース部25aを有するステータコア25と、各ティース部25aに巻回されたコイル26と、を有する。ステータコア25は、スリーブハウジング22bの外周面に、固定されている。また、ステータコア25およびコイル26は、後述するロータマグネット33の、径方向(中心軸に直交する方向。以下同じ)内側に配置されている。
【0028】
コイル26に駆動電流を与えると、ステータコア25の複数のティース部25aに磁束が発生する。そして、ティース部25aと後述するロータマグネット33との間の磁束の作用により、ロータマグネット33に周方向のトルクが発生する。その結果、静止部2に対して回転部3が、中心軸9を中心として回転する。回転部3に保持されたディスク90は、回転部3とともに、中心軸9を中心として回転する。
【0029】
図4は、回転部3の部分縦断面図である。図3および図4に示すように、回転部3は、シャフト31、ロータホルダ32、ロータマグネット33、樹脂部材34、緩衝シート35、閉塞部材36、防音シート37、複数の球体38、調芯部材39、およびクランプヨーク40を有する。回転部3のうち、シャフト31、ロータホルダ32、樹脂部材34、緩衝シート35、閉塞部材36、防音シート37、複数の球体38、調芯部材39、およびクランプヨーク40が、ディスク90を保持するチャッキング装置4を、構成している。
【0030】
シャフト31は、中心軸9に沿って上下方向に延びる、略円柱状の部材である。シャフト31の下部は、スリーブ22aの内側に、挿入されている。シャフト31は、静止軸受ユニット22に支持されつつ、中心軸9を中心として回転する。シャフト31は、例えば、ステンレス等の金属により構成される。
【0031】
ロータホルダ32は、シャフト31に固定された有蓋略円筒状の部材である。ロータホルダ32は、締結部32a、内側平板部32b、傾斜部32c、外側平板部32d、および円筒部32eを有する。
【0032】
締結部32aは、シャフト31に圧入により締結された、略円筒状の部位である。内側平板部32bは、締結部32aと傾斜部32cとの間において、径方向に広がる部位である。傾斜部32cは、内側平板部32bの径方向外側の端縁部から、径方向外側へ向けて高くなるように、斜めに広がる部位である。外側平板部32dは、傾斜部32cと円筒部32eとの間において、径方向に広がる部位である。また、円筒部32eは、外側平板部32dの径方向外側の端縁部から下方へ向けて延びる、略円筒状の部位である。
【0033】
内側平板部32b、傾斜部32c、および外側平板部32dは、電機子ユニット24の上方において径方向に広がる蓋部32fを、構成している。ロータホルダ32の蓋部32fには、複数の貫通孔32gが、形成されている。複数の貫通孔32gは、周方向に等間隔に配列され、蓋部32fを軸方向に貫通している。
【0034】
ロータマグネット33は、円環状の永久磁石である。ロータマグネット33は、ロータホルダ32の円筒部32eの内周面に、固定されている。ロータマグネット33の内周面は、ステータコア25のティース部25aの端面と、径方向に対向する磁極面となっている。
【0035】
樹脂部材34は、ポリカーボネート等の成型用樹脂で構成された部材である。樹脂部材34は、インサート成型により、ロータホルダ32と一体化されている。図3および図4に示すように、樹脂部材34は、ディスク載置部41、中央樹脂部42、外側樹脂部43、転走部44、および被固定部45を、有している。蓋部32fの上側に設けられたディスク載置部41および中央樹脂部42と、蓋部32fの下側に設けられた転走部44および被固定部45とは、貫通孔32gを介して連続している。
【0036】
ディスク載置部41は、蓋部32fの上側かつ調芯部材39の径方向外側に、配置されている。ディスク載置部41の上面には、円環状の緩衝シート35が、固定されている。本実施形態では、ディスク載置部41の上面が、緩衝シート35を介してディスク90を載置する載置面となっている。なお、ディスク載置部41は、緩衝シート35を介することなく、ディスク90を直接的に載置するものであってもよい。
【0037】
本実施形態のディスク載置部41は、ロータホルダ32の蓋部32fの上側と下側とに亘って設けられた単一の樹脂部材34の一部分となっている。したがって、ロータホルダ32とディスク載置部41とが、強固に固定されている。これにより、回転時におけるディスク90の振動および騒音が、抑制されている。
【0038】
中央樹脂部42は、ロータホルダ32の内側平板部32bの上側かつ傾斜部32cの径方向内側に、配置されている。外側樹脂部43は、ディスク載置部41から下方へ向けて延びる、円筒状の部位である。ロータホルダ32の円筒部32eの外周面は、外側樹脂部43に覆われている。
【0039】
転走部44は、蓋部32fの下側かつ円筒部32eの径方向内側に、配置されている。図4に示すように、転走部44は、天板部44a、外周壁44b、および内周壁44cを有する。天板部44aは、蓋部32fの下面に接する、円環状の部位である。外周壁44bは、天板部44aの径方向外側の端縁部から下方へ向けて延び、円筒部32eの内周面に接する、円筒状の部位である。内周壁44cは、天板部44aの径方向内側の端縁部から下方へ向けて延びる、円筒状の部位である。
【0040】
天板部44a、外周壁44b、および内周壁44cにより、転走部44は、下方へ向けて開口した円環溝状となっている。転走部44の下部には、転走部44を下方から閉塞する円環状の閉塞部材36が、取り付けられている。本実施形態では、閉塞部材36の上面に防音シート37が固定されている。そして、転走部44と閉塞部材36との間に、防音シート37の端部が挟まれている。
【0041】
転走部44と閉塞部材36とに包囲された円環状の空間には、複数の球体38が、周方向に転走自在に配置されている。複数の球体38は、防音シート37上に載置されている。回転部3およびディスク90が回転し、その回転数が一定以上になると、複数の球体38は、中心軸9に対して重心とは反対の方向へ、転走移動する。これにより、回転部3およびディスク90の全体としての重心の位置が、中心軸9に近づくように、調整される。
【0042】
被固定部45は、転走部より径方向内側において、ロータホルダ32の蓋部32fより下方へ突出した部位である。本実施形態では、ロータホルダ32の円筒部32eと、被固定部45との間に、閉塞部材36が圧入されている。これにより、ロータホルダ32および樹脂部材34に対して、閉塞部材36が強固に固定されている。
【0043】
調芯部材39は、ディスク90の内周部を支持するとともに、ディスク90の中心を中心軸9上に位置決めするための部材である。調芯部材39は、例えば、ポリカーボネート等の成型用樹脂で構成される。調芯部材39は、基部51と、複数の調芯爪52と、を有している。基部51は、径方向外側かつ下方へ向けて広がるガイド面51aを、有している。ガイド面51aは、周方向に複数配列されている。調芯爪52は、複数のガイド面51aの間において、基部51の上部から径方向外側かつ下方へ向けて、延びている。
【0044】
回転部3にディスク90を取り付けるときには、ガイド面51aが、ディスク90の内周部と接触しつつ、ディスク90を所定の径方向位置に案内する。また、ディスク90を取り付けた後は、調芯爪52の外周面が、ディスク90の内周部を支持する。
【0045】
クランプヨーク40は、クランパ14側に設けられたマグネットとの間に、磁気的吸引力を発生させるための磁性部材である。ディスク90は、クランプヨーク40とクランパ14との間の磁気的吸引力によって、ディスク載置部41とクランパ14との間に、挟持される。
【0046】
クランプヨーク40は、円環状のヨーク本体部40aと、ヨーク本体部40aの径方向内側の端部から下方へ向けて延びる筒状部40bとを、有している。筒状部40bの内周面は、ロータホルダ32の締結部32aより上側において、シャフト31に固定されている。また、調芯部材39およびクランプヨーク40は、インサート成型により、一体化されている。すなわち、本実施形態の調芯部材39は、クランプヨーク40を介して、シャフト31に間接的に固定されている。
【0047】
シャフト31は、クランプヨーク40の筒状部40bに、圧入されている。これにより、シャフト31とクランプヨーク40とは、強固に固定されている。また、クランプヨーク40にシャフト31を圧入すれば、接着剤を使用せずとも、両部材を、高い固定強度で固定できる。したがって、チャッキング装置4の製造工程において、接着剤を塗布する作業を省略できる。
【0048】
チャッキング装置4の上部には、ヨーク本体部40aの内周面とシャフト31の上面とで規定される穴状の空間60が、設けられている。ディスク90を保持するときには、この空間60に、クランパ14側に設けられた突起が、挿入される。それにより、チャッキング装置4に対するクランパ14の径方向の位置ずれが、許容範囲内に抑制される。
【0049】
また、調芯部材39は、ヨーク本体部40aの上面に部分的に接触する上接触部53と、ヨーク本体部40aの下面に接触する下接触部54と、を有している。このため、仮に、調芯部材39が、クランパ14から下向きに押圧されたとしても、クランプヨーク40に対する調芯部材39の軸方向の位置ずれや分離が、生じにくい。なお、上接触部53は、クランプヨーク40の少なくとも一部分の上面に接していればよい。また、下接触部54は、クランプヨーク40の少なくとも一部分の下面に接していればよい。
【0050】
このチャッキング装置4では、樹脂部材34と調芯部材39とが、別部材となっている。このため、ディスク載置部41と調芯部材39とは、連続しておらず、それぞれ、シャフト31に対して間接的に固定されている。これにより、ディスク載置部41および調芯部材39を、設計の基準となる面、例えばベース部材21の上面に対して、それぞれ高い位置精度で配置できる。
【0051】
また、樹脂部材34および調芯部材39のうち、シャフト31の上端部付近には、調芯部材39のみが固定されている。このため、樹脂部材34および調芯部材39に相当する部位を含む一体の部材を、シャフト31の上端部付近に固定する場合と比較して、シャフト31の上端部付近に掛かる荷重が軽減される。したがって、シャフト31の上端部付近の弾性変形が、抑制される。その結果、回転時におけるディスク90の振動および騒音が、抑制される。
【0052】
特に、本実施形態の調芯部材39は、ロータホルダ32および樹脂部材34から隙間を隔てて上方に、配置されている。これにより、ロータホルダ32または樹脂部材34から調芯部材39への直接的な荷重の伝播が、防止されている。したがって、シャフト31の上端部付近に掛かる荷重が、さらに軽減されている。
【0053】
また、本実施形態では、ロータホルダ32と樹脂部材34とが、インサート成型により一体化されている。このため、ロータホルダ32および樹脂部材34の固有振動数f1は、それぞれが単体で配置された場合の固有振動数f2より、低くなっている。これにより、ロータホルダ32および樹脂部材34の共振が抑えられ、回転部3およびディスク90の振動が、さらに抑制されている。
【0054】
また、仮に、ロータホルダ32より上方において、樹脂部材34および調芯部材39に相当する一体の部材が、シャフト31に固定されていたとすると、当該一体の部材の固有振動数f3は、本実施形態におけるロータホルダ32および樹脂部材34の固有振動数f1より、高くなる。その場合には、ディスク90に対する読み書きの際の回転数における周波数と、当該一体の部材の固有振動数f3とが一致して、共振が生じやすい。その結果、ロータホルダ32と樹脂部材34との間の高さ位置において、シャフト31が弾性変形しやすい。これに対し、本実施形態では、樹脂部材34が、ロータホルダ32に固定されている。このため、ロータホルダ32および樹脂部材34の固有振動数f1が低くなり、共振が抑制される。また、ロータホルダ32と樹脂部材34との間の高さ位置において、シャフト31が弾性変形しにくくなる。
【0055】
また、本実施形態のチャッキング装置4では、ロータホルダ32および樹脂部材34を一体化する第1のインサート成型と、調芯部材39およびクランプヨーク40を一体化する第2のインサート成型とが、別々に行われる。このため、第1のインサート成型を実現するために、調芯部材39およびクランプヨーク40の形状が、制約されることはない。また、第2のインサート成型を実現するために、ロータホルダ32および樹脂部材34の形状が、制約されることはない。したがって、ロータホルダ32、樹脂部材34、調芯部材39、およびクランプヨーク40の、設計の自由度が向上する。
【0056】
例えば、第2のインサート成型においては、調芯爪52の下面を成型するための金型を、調芯爪の52下方に配置する必要がある。しかしながら、ロータホルダ32や樹脂部材34に、当該金型を配置するための貫通孔を、設ける必要はない。また、調芯爪52の下面を成型するために、ロータホルダ32の下方から、軸方向に長い金型を挿入する必要もない。軸方向の寸法が短い金型を使用すれば、同一の金型による成型回数を、向上させることができる。
【0057】
また、転走部44と調芯爪52との位置関係も、互いに制約されない。このため、図4のように、転走部44の内周壁44cの内周面を、調芯爪52の径方向外側の端部より、径方向内側に、配置することができる。このように、転走部44の径方向位置と、調芯爪52の径方向位置とが、部分的に重複するようにすれば、チャッキング装置4の径方向の寸法が、抑制される。その結果、チャッキング装置4の慣性モーメントが、低減される。
【0058】
また、同様に、被固定部45と調芯爪52との位置関係も、互いに制約されない。このため、図4のように、被固定部45の径方向位置と、調芯爪52の径方向位置とを、部分的に重複させることができる。
【0059】
<3.変形例>
以上、本発明の例示的な実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではない。以下では、種々の変形例について、上記の実施形態との相違点を中心に説明する。
【0060】
図5は、一変形例に係る回転部203の部分縦断面図である。図5の例では、クランプヨーク240は、円環状のヨーク本体部240aと、ヨーク本体部240aの径方向内側の端部から上方へ向けて延びる筒状部240bとを、有している。そして、ヨーク本体部240aの内周面が、シャフト231に固定されている。筒状部240bの径方向内側には、クランパ側の突起を挿入するための穴状の空間260が、設けられている。
【0061】
また、ヨーク本体部240aの上面には、クランプマグネット255が配置されている。クランプマグネット255は、それ自体の磁気的吸引力のみで、クランプヨーク240に固定されていてもよいし、接着剤を併用することによって、クランプヨーク240により強固に固定されていてもよい。この例では、クランプマグネット255と、ディスク駆動装置のクランパとの間に、磁気的な吸引力が発生することとなる。クランプヨーク240は、クランプマグネット255から発生する磁界の指向性を、向上させる役割を果たす。
【0062】
図6は、他の変形例に係る回転部303の部分縦断面図である。図6の例では、調芯部材339の内周面が、シャフト331に直接的に固定されている。この調芯部材339の上面には、環状の溝339aが形成されている。そして、当該溝339aの内部に、クランプヨーク340が収容されている。調芯部材339およびクランプヨーク340は、インサート成型により、一体化されている。また、調芯部材339は、クランプヨーク340の上面に部分的に接触する上接触部353と、クランプヨーク340の下面に接触する下接触部354とを、有している。
【0063】
また、この例では、溝339aの径方向内側の面を構成する内壁339bの内周面と、シャフト331の上面とで規定される穴状の空間360に、クランパ側の突起が、挿入される。
【0064】
図7は、他の変形例に係る回転部403の部分縦断面図である。図7の回転部403は、クランプマグネット455を有している点が、図6の回転部303と相違する。クランプマグネット455は、調芯部材439の上面に設けられた溝439aの内部において、クランプヨーク440の上面に、固定されている。
【0065】
図8は、他の変形例に係る回転部503の部分縦断面図である。図8の例では、閉塞部材536の内周部に設けられた係止部536aと、樹脂部材534に設けられた被固定部545とが、係止されている。これにより、樹脂部材534に対して閉塞部材536が、強固に固定されている。図8の例では、被固定部545が、ロータホルダ532の蓋部532fより上方に配置されている。しかしながら、被固定部545は、蓋部532fより下方へ延びていてもよい。
【0066】
図8の例においても、ロータホルダ532および樹脂部材534を一体化する第1のインサート成型と、調芯部材539およびクランプヨーク540を一体化する第2のインサート成型とが、別々に行われる。このため、被固定部545を成型するために、調芯部材539およびクランプヨーク540の形状が、制約されることはない。また、樹脂部材534の調芯爪552を成型するために、ロータホルダ532および樹脂部材534の形状が、制約されることもない。したがって、被固定部545を容易に成型できる。
【0067】
図9は、他の変形例に係るブラシレスモータ613の縦断面図である。図9の例では、ロータホルダ632とは別に、樹脂部材634が単体で射出成型されている。そして、ロータホルダ632の蓋部632fの上面に、成型後の樹脂部材634が、固定されている。具体的には、樹脂部材634の下面に、下方へ向けて突出する係止部634aが、設けられている。そして、ロータホルダ632の蓋部632fに設けられた貫通孔632gに、樹脂部材634の係止部634aが、係止されている。
【0068】
図9の例では、蓋部632fの上側に、複数の球体638を保持する転走部644が、配置されている。転走部644は、下方へ向けて開口するとともに、閉塞部材636により下方から閉塞されている。転走部644より径方向内側に配置された中央樹脂部642には、調芯部材639を成型するための貫通孔を、設ける必要がない。このため、中央樹脂部642の下面に、係止部634aを容易に設けることができる。
【0069】
ロータホルダ632と樹脂部材634とは、接着剤で固定されていてもよい。接着剤を使用する場合には、中央樹脂部642の下面に接着剤が接触するようにすれば、接着面を広くとることができる。
【0070】
なお、本発明のモータは、上記の実施形態や変形例のように、光ディスクを回転させるためのものであってもよく、磁気ディスク等の他の記録ディスクを回転させるためのものであってもよい。
【0071】
また、上記の実施形態や変形例に登場した要素を、矛盾が生じない範囲で、適宜に組み合わせてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0072】
本発明は、チャッキング装置、モータ、およびディスク駆動装置に利用できる。
【符号の説明】
【0073】
1 ディスク駆動装置
2 静止部
3,203,303,403,503 回転部
4,104 チャッキング装置
9,109 中心軸
11 装置ハウジング
13,613 ブラシレスモータ
14 クランパ
15 アクセス部
21 ベース部材
22 静止軸受ユニット
23 予圧マグネット
24 電機子ユニット
31,131,231,331 シャフト
32,132,532,632 ロータホルダ
32e 円筒部
32f,532f 蓋部
32g,632g 貫通孔
33 ロータマグネット
34,534,634 樹脂部材
634g 貫通孔
36,536,636 閉塞部材
38,638 球体
39,139,439,539 調芯部
40,140,240,340,440,540 クランプヨーク
41,141 ディスク載置部
42,642 中央樹脂部
43,643 外側樹脂部
44,644 転走部
45,545 被固定部
51,151 基部
52,152 調芯爪
53,353 上接触部
54,354 下接触部
255,455 クランプマグネット
60,260,360 空間
190 ディスク
339 調芯部材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下に延びる中心軸に沿って配置されたシャフトと、
前記シャフトに固定された有蓋略円筒状のロータホルダと、
前記ロータホルダに固定されるとともに、中央に円孔を有する円板状のディスクを載置する載置面を有するディスク載置部と、
前記ロータホルダより上方において前記シャフトに直接的または間接的に固定されるとともに、ディスクの内周部を支持する支持面を有する調芯部と、
前記調芯部に固定された磁性体であるクランプヨークと、
を備え、
前記調芯部は、
径方向外側かつ下方へ向けて広がるガイド面が、周方向に複数配列された基部と、
前記複数のガイド面の間において、前記基部の上部から径方向外側かつ下方へ向けて延びる複数の調芯爪と、
を有し、
前記ディスク載置部と前記調芯部とは、別部材であるチャッキング装置。
【請求項2】
請求項1に記載のチャッキング装置において、
前記調芯部は、前記ロータホルダおよび前記ディスク載置部から隙間を隔てて上方に、配置されているチャッキング装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のチャッキング装置において、
前記調芯部は、前記クランプヨークを介して、前記シャフトに固定されているチャッキング装置。
【請求項4】
請求項1または請求項2に記載のチャッキング装置において、
前記調芯部の内周部が、前記シャフトに直接的に固定され、
前記基部の上面に、前記クランプヨークが配置されているチャッキング装置。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記ロータホルダは、
径方向外側へ向けて広がる蓋部と、
前記蓋部の径方向外側の端部から下方へ向けて延びる円筒部と、
を有し、
前記ディスク載置部は、前記蓋部の上側と下側とに亘って設けられた単一の樹脂部材の一部分であるチャッキング装置。
【請求項6】
請求項5に記載のチャッキング装置において、
前記樹脂部材は、前記蓋部の下側かつ前記円筒部の径方向内側に、下方へ向けて開口する円環溝状の転走部を有し、
前記転走部に、複数の球体が配置されているチャッキング装置。
【請求項7】
請求項6に記載のチャッキング装置において、
前記転走部は、前記複数の球体の径方向内側に配置された円筒状の内周壁を有し、
前記内周壁の内周面は、前記調芯爪の径方向外側の端部より、径方向内側に配置されているチャッキング装置。
【請求項8】
請求項6または請求項7に記載のチャッキング装置において、
前記転走部を下方から閉塞する閉塞部材をさらに備え、
前記樹脂部材は、前記転走部より径方向内側に、被固定部を有し、
前記閉塞部材は、前記被固定部に固定されているチャッキング装置。
【請求項9】
請求項1から請求項4までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記ロータホルダは、
径方向外側へ向けて広がる蓋部と、
前記蓋部の径方向外側の端部から下方へ向けて延びる円筒部と、
を有し、
前記ディスク載置部は、前記蓋部の上側において、下方へ向けて開口する円環溝状の転走部を有し、
前記転走部に、複数の球体が配置され、
前記転走部より径方向内側において、前記ディスク載置部と前記蓋部とが、固定されているチャッキング装置。
【請求項10】
請求項1から請求項9までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記調芯部は、
前記クランプヨークの少なくとも一部分の上面に接する上接触部と、
前記クランプヨークの少なくとも前記一部分の下面に接する下接触部と、
を有するチャッキング装置。
【請求項11】
請求項1から請求項10までのいずれかに記載のチャッキング装置において、
前記クランプヨークの上面に配置されたクランプマグネット
をさらに備えるチャッキング装置。
【請求項12】
静止部と、
請求項1から請求項11までのいずれかに記載のチャッキング装置を有する回転部と、
を備え、
前記静止部は、磁束を発生させる電機子を有し、
前記回転部は、前記電機子と径方向に対向するロータマグネットをさらに有するモータ。
【請求項13】
請求項12に記載のモータと、
前記モータの前記回転部に保持されたディスクに対し、情報の読み出しおよび書き込みの少なくとも一方を行うアクセス部と、
前記モータおよび前記アクセス部を収容するハウジングと、
を備えたディスク駆動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−104176(P2012−104176A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250770(P2010−250770)
【出願日】平成22年11月9日(2010.11.9)
【出願人】(000232302)日本電産株式会社 (697)
【Fターム(参考)】