説明

チャネル・パラメータの推定のためのダイビット抽出

【課題】一実施形態において、読み取りチャネル、およびビット・シーケンスが記憶された記憶媒体を含む記憶デバイスの1つまたは複数のチャネル・パラメータを推定するための、記憶デバイスにより実装される方法を提供すること。
【解決手段】方法は、(a)記憶デバイスが、記憶媒体からビット・シーケンスの少なくとも一部を読み取って、ビット応答を生成するステップと、(b)記憶デバイスが、ビット応答を畳み込んで、読み取りチャネルのインパルス応答を計算するステップと、(c)記憶デバイスが、計算されたインパルス応答に基づいて、1つまたは複数のチャネル・パラメータを推定するステップとを含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、チャネル・パラメータ推定に関し、より詳細には、ハードディスク・ドライブなどの記憶媒体におけるチャネル・パラメータの推定に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク・ドライブなどの磁気媒体ベースの記憶デバイスは、ポータブル・ミュージック・プレイヤから大規模なデータセンタに至るまで、幅広い範囲のコンピューティング・デバイス用のデータを記憶するために、一般的に使用されている。磁気記憶デバイスのパフォーマンスおよび信頼性を向上させることは、絶えず存在する目標である。
【0003】
典型的なハードディスク・ドライブは、磁気面を有する複数の回転プラッタと、磁気面からデータを読み取り、そこにデータを書き込むための複数の読み取り/書き込みヘッドとを含む。読み取り/書き込みヘッドは、サーボ・メカニズムを使用して磁気面に対して位置付けされ、電磁場を生成してそれをプラッタ上で検出するための回路によって制御される。ドライブにデータを記憶するためには、書き込みチャネル回路が、コンピューティング・デバイスから受信したバイナリ・デジタル・データを磁気エンコーディングに符号化し、それが磁気面に書き込まれる。ドライブからデータを取り出すためには、サーボ・メカニズムが、最初に適切なポジションを特定し、次いで読み取りチャネル回路が、その位置で磁気エンコーディングを検出し、それをもともと記憶されていたバイナリ・デジタル・データに変換する。
【0004】
プラッタ上のデータは、「非ゼロ復帰」(NRZ)として知られる方式において、プラッタ上の2つの隣接した位置間の磁束反転を使用して符号化され、それによって、1の値を有するビットが、一方向の磁化としてディスク上に記憶され、0の値を有するビットが、反対方向の磁化として記憶される。
【0005】
長手記録アプローチの初期に使用されていた、ピーク検出として知られる1つのデータ検出技術では、読み取りチャネルが、磁化が方向を変える位置を検出して、バイナリ1およびゼロの記憶されたシーケンスの回復を可能にする。しかしながら、この方式は、互いに比較的離された磁気転移に依存し、それが、記憶密度を、結果的にはドライブの記憶容量を限定する。
【0006】
部分応答最大尤度(partial−response maximum−likelihood:PRML)検出として知られる別のデータ検出技術では、アナログ「再生電圧」がデジタル方式でサンプリングされて、読み取りヘッドによって感知されたアナログ波形で表現される最も可能性の高いビット・パターンを決定する。PRMLは、ピーク検出方法よりも互いに近い磁気転移を書き込むことにより、ピーク検出に比べて記憶密度を向上させる。情報パルスのオーバーラップのために、隣接する磁気転移の縮小された隔たりが、シンボル間干渉(ISI)を引き起こす傾向にあるものの、PRML検出は、読み取りヘッドからの信号を、各ビットが隣接するビットとオーバーラップする範囲を特徴付ける目標多項式の形にするように、等化技術を利用することによってISIを考慮に入れる。したがって、PRML検出を利用している記憶デバイスでは、読み取りチャネル回路が、そのようなISIを補償する。
【0007】
記録システムに非線形性が存在しない場合、ハードディスク・ドライブの再生電圧V(t)を、以下の式によって記述することができる。
【0008】
【数1】

ここで、a∈{−1,+1}は、k番目のNRZ書き込みによる現在のビットを表し、tは、連続時間を表し、Tは、1つのビットの持続時間を表し、h(t)は、離された転移に対する再生電圧応答を表す。
【0009】
しかしながら、典型的なハードディスク・ドライブには、読み取り/書き込みチャネルが補償すべきであるさまざまな非線形性が記録システムに存在する。これらの非線形性の特徴付けおよび補償における精度の向上が、結果としてハードディスク・ドライブのパフォーマンスを高めることになる。
【0010】
そのような非線形性に関する参考資料を含むある研究論文が、Palmerら、「Identification Of Nonlinear Write Effects Using Pseudorandom Sequences」、IEEE Transactions On Magnetics、Vol.Mag−23、No.5、1987年9月、2377〜2379頁であり、その全体が参照により本明細書に組み込まれ、この論文は、読み取りチャネルにおいて発生する線形歪みおよび非線形歪みを論じ、最大長擬似ランダム・ビット・シーケンス(maximal−length pseudorandom bit sequence:PRBS、「mシーケンス」とも呼ばれる)の固有の特性に基づいて、線形効果および非線形効果を分離するための技術を説明している。Palmerらは、非線形歪み効果を識別し、検査するために、「ダイビット応答」(すなわち、離されたNRZビットに対する読み取りヘッドの応答)を分析する、「ダイビット抽出」として知られる技術を説明している。
【0011】
ダイビット抽出は、最大長PRBSシーケンスの整数個の周期を書き込むこと、次いで読み取ること、および再生電圧V(t)からダイビット応答を抽出することに基づき、それによって、NRZデータビットが再生データから解析されて(すなわち、システムの測定された出力および入力に関する情報から、システム伝達関数、またはインパルス応答を決定するプロセス)、ダイビット応答を取得する。用語「ダイビット」は、当技術分野において、ダイビットそれ自体、およびダイビット応答の両方を指すように使用されることに留意されたい。
【0012】
ダイビット応答が正確である場合、たとえば、書き込み事前補償を使用することによりディスクに書き込まれているように信号を調整することにより、または代替的には、チャネル・パルス幅パラメータを推定することにより、読み取りチャネルにおける非線形性の適切な補償が行われて、読み取り動作を向上させることができる。抽出されたダイビットは、いくつかのタイプの非線形歪みについての情報を含む。1つのタイプの非線形歪みが、非線形転移シフト(nonlinear transition shift:NLTS)であり、これは、前の転移からの反磁界が次の転移への書き込みのタイミングに影響するのに十分なほど接近して書き込まれた2つの転移を含む。別のタイプの非線形歪みは、ハード転移シフト(hard transition shift:HTS)であり、これは、既に磁化された領域において、磁化の方向が反転することを含む。他のタイプの非線形歪みには、たとえば、部分消去、磁気抵抗ヘッド非対称性(magneto−resistive head asymmetry:MRA)、およびオーバーライト(OW)が含まれる。抽出されたダイビットそれ自体、または抽出されたダイビットを使用して計算された一定のメトリックのどちらかを使用して、記録チャネル・パラメータを適応させて、そのような非線形性を最小限にすることができる。
【0013】
典型的な用途では、最大長PRBSシーケンス(たとえば、127ビットのPRBSシーケンス)が、ディスクに書き込まれ、次いで読み戻されて、再生電圧V(t)を取得する。aが、最大長NRZ PRBSシーケンスにおけるビットであるとすると、非線形効果は、そのビットのさまざまな積に関連付けられる。たとえば、MRAは、ak−1に関連付けられ、NLTSは、ak−1k+1に関連付けられる。最大長PRBSシーケンスの「シフト・アンド・アッド」特性(ここで、異なる位相を有する任意の2つの同一PRBSシーケンスのモジュロ2加算が、別の位相を有するもう1つの同一PRBSシーケンスを生成する)に基づいて、非線形NRZビットの積が、抽出されたダイビットにおいてエコーを生み出す。
【0014】
そのような非線形エコーは、しばしば、互いに、または主要なダイビット応答による干渉を引き起こし、結果として、読み取り/書き込みチャネルを特徴付けるためのダイビット抽出の精度および有用性に悪影響を及ぼすことがある、構造的または破壊的な干渉をもたらす。
【0015】
したがって、これらのエコーの位置を特定し、エコーを適切に補償することが重要である。
【0016】
図1は、長手記録シナリオにおいて、非線形性によるエコーを有するダイビット応答を図示する例示的な波形を示す。図1は、いくつかの考え得る非線形エコー103、104、および106と共に、主要なダイビット応答101を示す。垂直軸は、ボルトにおけるダイビット応答信号の振幅を表し、水平軸は、PRBSシーケンスの離散時間シフトを表す。図1において、−63ビットから+63ビットまでの離散時間シフト(ビットで測定される)の範囲の水平軸にわたって、127値が分布する。主要なダイビット応答101は、読み取りチャネルの線形応答を表す。各エコーの位置は、特定の非線形性と相互作用する、PRBSシーケンスの「シフト・アンド・アッド」特性の結果であり、したがって、一般的には、各エコーの位置を予測することが可能である。長手記録シナリオにおいて、主要なダイビット応答101は、図1に示されるようなダイパルス形状を有するが、垂直記録シナリオ(図示せず)においては、主要なダイビット応答は、ガウスのようなパルスの形状を有することになることに留意されたい。
【0017】
チャネル・パラメータ(たとえば、NLTS)を推定するための1つの知られている方法は、関連付けられたエコー振幅(またはエコー領域)対ダイビットの主パルスの振幅の比を取ることを含む。しかしながら、この方法は、2つ以上のタイプの歪みのせいで、エコーのオーバーラップが存在することがあるために、結果として不正確な推定となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【特許文献1】米国特許出願第12/463626号
【非特許文献】
【0019】
【非特許文献1】Palmerら、「Identification Of Nonlinear Write Effects Using Pseudorandom Sequences」、IEEE Transactions On Magnetics、Vol.Mag−23、No.5、1987年9月、2377〜2379頁
【非特許文献2】LinおよびWood、「An estimation technique for accurately modeling the magnetic recording channel including nonlinearities」、IEEE Transactions on Magnetics、Vol.25、No.5、4084〜4086頁、1989年9月
【非特許文献3】Y.Lin、「‘Shift and add’property of m−sequences and its application to channel characterisation of digital magnetic recording」、IEEE Proc.Commun.、Vol.142、No.3、135〜140頁、1995年6月
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明の実施形態は、エコーが、エコーを引き起こした歪みのパラメータを推定するのに使用され得る前に、これらのエコーの位置を特徴付けるために、所与の擬似ランダム・バイナリ・シーケンス(PRBS)多項式のために抽出されたダイビットのより正確な分析を展開する。この分析は、チャネル・パラメータ、たとえば、第1および第2のNLTS、OW、MRA、ならびにチャネル・ビット密度(CBD)を推定するために、体系的で数学的な、堅実な手段を提供するための式を導き出すのに使用される。
【0021】
ある実施形態では、エコーからNLTSおよびMRAを推定するための閉形式の式が展開される。さらに、本発明の実施形態は、MRAおよびOWによるエコーがオーバーラップしても、エコーを使用してMRAおよびOWを正確に推定し、それにより、関連付けられたエコーのオーバーラップを明らかにするのを可能にする。さらに、抽出されたダイビットから、CBDを推定するための補間ベースのアプローチが提供される。
【0022】
本発明の実施形態と一致したアプローチは、数学的に非常に厳密であると同時に、チャネル・パラメータの推定における効率を提案し、それにより、ヘッドおよび媒体の分析、読み取り/書き込みチャネルの品質の評価、読み取り/書き込みチャネル・パラメータの最適化、および他の用途において非常に有効なツールを提供する。
【0023】
一実施形態において、本発明は、読み取りチャネル、およびビット・シーケンスが記憶された記憶媒体を含む記憶デバイスの1つまたは複数のチャネル・パラメータを推定するための、記憶デバイスにより実装される方法を提供する。方法は、(a)記憶デバイスが、記憶媒体からビット・シーケンスの少なくとも一部を読み取って、ビット応答を生成するステップと、(b)記憶デバイスが、ビット応答を畳み込んで、読み取りチャネルのインパルス応答を計算するステップと、(c)記憶デバイスが、計算されたインパルス応答に基づいて、1つまたは複数のチャネル・パラメータを推定するステップとを含む。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】望ましくないエコーを有するダイビット応答を図示する例示的な波形を示す図である。
【図2】本発明の第1の実施形態と一致した、ホスト・デバイスに結合された例示的なハードディスク・デバイスのブロック図である。
【図3】図2のハードディスク・デバイスの読み取り/書き込みチャネルのブロック図である。
【図4】本発明の実施形態における、さまざまな位相シフトを生成するための補間フィルタ係数を示すテーブルの図である。
【図5】本発明の実施形態と一致した、チャネル・パラメータを推定するための例示的な方法を図示する流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明は、抽出されたダイビットを使用して、読み取り/書き込みチャネルのいくつかの重要なパラメータを推定するための方式を提供する。これらのパラメータには、1ビット前の転移(Δで表す)による、および2ビット前の転移(Δで表す)による非線形転移シフト(NLTS)、ハード転移シフト(HTS)を使用してモデル化されたオーバーライト(OW)(Δで表す)、磁気抵抗ヘッド非対称性(MRA)(αで表す)、および50%の振幅におけるインパルス応答のパルス幅(PW50で表す)が含まれる。これらのパラメータの知識は、磁気媒体および読み取り/書き込みヘッドの品質を理解するためだけでなく、読み取り/書き込みチャネルの読み取りパスおよび書き込みパスにおいて使用される、回路および/またはアルゴリズムを最適化するためにも役立つことができる。
【0026】
図2は、本発明の第1の実施形態と一致した、ホスト・デバイス212に結合された例示的なハードディスク・ドライブ200のブロック図を示す。わかりやすさのために、ドライブ200のいくつかのコンポーネント、たとえば、スピンドル・モータおよびサーボ/アクチュエータ・モータ・コントロールは、図2では省略されている。ドライブ200は、1つまたは複数の磁気媒体202と、1つまたは複数の対応する読み取り/書き込みヘッド204と、読み取り増幅器206rと、書き込み増幅器206wと、読み取り/書き込みチャネル208と、コントローラ210とを含む。読み取り/書き込みチャネル208は、インターフェース214および216を介して増幅器206r、206wに結合され、インターフェース218および220を介してコントローラ210に結合されている。
【0027】
読み取り動作の間、ホスト・デバイス212は、データが読み取られることになる磁気媒体202の位置に対応した識別子(たとえば、シリンダおよびセクタ・アドレス)を生成し、その識別子をコントローラ210に提供する。識別子に基づいて、コントローラ210は、データが読み取られることになる磁気媒体202の物理的位置を計算し、読み取り/書き込みヘッド204をその物理的位置に、またはその物理的位置の付近に動かす。読み取り/書き込みヘッド204は、読み取り/書き込みヘッド204によって感知された磁気媒体202上のデータに対応したアナログ信号のストリームを、読み取り増幅器206rに提供する。読み取り増幅器206rは、読み取り/書き込みヘッド204から受信したアナログ信号を増幅し、増幅された信号を、インターフェース214を介して、読み取り/書き込みチャネル208に提供する。読み取り/書き込みチャネル208は、増幅されたアナログ信号をデジタル・バイナリ・データに復号化し、デジタル・バイナリ・データを、インターフェース218を介して、コントローラ210に提供する。コントローラ210は、ドライブ200とホスト・デバイス212との間のインターフェースとして働き、たとえば、キャッシング、エラー検出、またはエラー訂正などの追加的な機能を実行することができる。
【0028】
書き込み動作の間、ホスト・デバイス212は、バイナリ・デジタル・データと、そのバイナリ・デジタル・データが書き込まれることになる磁気媒体202の位置に対応した識別子(たとえば、シリンダおよびセクタ・アドレス)とを、コントローラ210に提供する。識別子に基づいて、コントローラ210は、データが書き込まれることになる磁気媒体202の物理的位置を計算し、読み取り/書き込みヘッド204をその物理的位置に、またはその物理的位置の付近に動かす。コントローラ210は、デジタル・バイナリ・データを、インターフェース220を介して、読み取り/書き込みチャネル208に提供する。読み取り/書き込みチャネル208は、バイナリ・デジタル・データを符号化し、対応するアナログ信号を生成し、アナログ信号を、インターフェース216を介して、書き込み増幅器206wに提供する。書き込み増幅器206wは、アナログ信号を使用して、読み取り/書き込みヘッド204を駆動し、読み取り/書き込みヘッド204は、磁気媒体202上に、バイナリ・デジタル・データに対応する磁束反転を作成する。
【0029】
図3は、読み取り/書き込みチャネル208のブロック図を示す。わかりやすさのために、いくつかのコンポーネントは、図3では省略されている。この実施形態では、読み取り/書き込みチャネル208が、トランジスタに相補型金属酸化膜半導体(CMOS)プロセスを使用した集積回路として実装されているが、他のプロセス技術が使用されてもよく、本明細書に開示されている回路は、ドライブ200に含まれる他の回路、たとえばコントローラ210と一体化されてもよいことが企図される。上記で説明したように、読み取り/書き込みチャネル208は、バイナリ・デジタル情報と、磁気媒体202の磁束に対応するアナログ信号とを変換する。読み取り/書き込みチャネル208は、読み取りパス302と、書き込みパス304と、クロック332とを含む。
【0030】
クロック332は、論理演算を制御するためのタイミング信号を、読み取りパス302および書き込みパス304に提供する。
【0031】
書き込みパス304は、パラレル/シリアル変換器320と、符号器322と、書き込み事前補償回路328と、ドライバ回路330とを含む。パラレル/シリアル変換器320は、インターフェース220を介して、コントローラ210から一度に8ビットのデータを受信し、パラレル入力データから、符号器322に提供されるシリアル・ビット・ストリームを生成する。符号器322は、たとえば、ランレングス制限(RLL)アルゴリズムを使用して、シリアル・ビット・ストリームを、磁気媒体202に記録するためのシンボリック・バイナリ・シーケンスに符号化し、符号化されたシーケンスを、書き込み事前補償回路328に提供する。書き込み事前補償回路328は、記録プロセスにおける磁気歪みを明らかにするためにビット・ストリームのパルス幅を動的に調整し、調整された信号をドライバ回路330に提供する。ドライバ回路330は、インターフェース216を介して、調整された信号を書き込み増幅器206wに駆動し、書き込み増幅器206wは、読み取り/書き込みヘッド204を駆動して、データを磁気媒体202に記録する。
【0032】
PRBS生成器333が、PRBSシーケンスを、書き込みパス304中の書き込み事前補償回路328に提供し、その結果、PRBSシーケンスをディスクに書き込むことができる。PRBS生成器333は、同じPRBSシーケンスを、読み取りパス302中のダイビット抽出器309に提供し、ダイビット抽出器309は、以下でさらに詳細に説明するように、ダイビット応答を抽出する目的のために、以前にディスクに書き込まれたPRBSシーケンスを読み取る。この実施形態では、PRBS生成器333は、ダイビット抽出が所望されるときにのみ使用され、通常の読み取り/書き込み動作の間には使用されない。
【0033】
読み取りパス302は、アナログ・フロントエンド(AFE)306と、アナログ/デジタル変換器(ADC)308と、有限インパルス応答(FIR)フィルタ310と、補間タイミング・リカバリ(ITR)回路312と、ビタビ・アルゴリズム検出器314と、復号器316とを含む。読み取り/書き込みチャネル208は、インターフェース214を介して、磁気媒体202から、読み取り/書き込みヘッド204によって感知された増幅された磁気信号を受信する。増幅された磁気信号に対応するアナログ波形が、最初にAFE306に提供され、AEF306は、デジタル信号への変換のために、アナログ波形を所望のパルス振幅および帯域幅に処理する。
【0034】
AFE306は、処理されたアナログ信号を、ADC308に提供し、ADC308は、アナログ信号をサンプリングし、アナログ信号の振幅サンプルに関連付けられた時系列バイナリ信号を生成することによって、アナログ信号をデジタル信号に変換する。ADC308は、サンプリングされたデジタル信号を、FIRフィルタ310(たとえば、10タップFIRフィルタ)に提供し、FIRフィルタ310は、所望のパルス応答に従って、デジタル信号のサンプルを等化する。FIRフィルタ310は、等化された信号をITR回路312に提供し、ITR回路312は、信号サンプルに存在するタイミング乱れを補償するように、デジタル信号のサンプル・タイミングを調整する。ITR回路312のタイミングは、たとえば、位相同期回路(PLL)(図示せず)によって、制御されてもよい。
【0035】
ITR回路312は、同期されたデジタル信号を、ビタビ検出器314に提供し、ビタビ検出器314は、デジタル信号処理(DSP)技術を使用して、デジタル信号によって表されるバイナリ・ビット・パターンを決定する。ビタビ検出器314は、デジタル信号によって表されるバイナリ・データを、復号器316に提供し、復号器316は、バイナリ・ビット・パターンからパリティ・ビットを取り除き、符号化されたシンボルの実際のバイナリ・データへの復号化(たとえばRLL復号化)を実行する。復号器316は、実際のバイナリ・データを、インターフェース218を介して、コントローラ210に提供する。
【0036】
読み取りパス302はまた、ダイビット抽出器309と、チャネル・パラメータ推定器311とを含む。ダイビット抽出器309は、ADC308からサンプルを、かつPRBS生成器333からPRBSシーケンスを受信し、サンプルと、磁気媒体202に以前に書き込まれた既知のPRBSシーケンスとの間で、相関を実行する。この相関は、非線形歪みによって引き起こされるエコーに対応する、サンプルとPRBSシーケンスのデータビットとの間の特定の遅延により行われ、結果として、1つまたは複数のエコー点の識別をもたらす。ダイビット抽出器309はさらに、ビット応答hを決定し、抽出されたダイビットを使用してインパルス応答hを計算する。ダイビット抽出器309は、(i)(たとえば、ポジションM、M、M、およびMそれぞれにおける、エコーの振幅の形EM0、EM1、EM2、およびEM3での)抽出されたエコー点、(ii)ビット応答h、および(iii)計算されたインパルス応答hのうちの少なくとも1つを、チャネル・パラメータ推定器311に提供し、チャネル・パラメータ推定器311は、この情報を使用して、チャネル・パラメータ、たとえば、NLTS、HTS、MRA、およびチャネル・ビット密度(CBD)を計算する。チャネル・パラメータ推定器311は、計算されたチャネル・パラメータのうちの1つまたは複数を、読み取りパス302または書き込みパス304中の1つまたは複数の他のブロックに提供して、たとえば、FIRフィルタ310の動作を調整することができる。
信号モデル
【0037】
次に、ダイビット抽出器309およびチャネル・パラメータ推定器311の動作を、さらに詳細に説明する。
【0038】
ダイビット抽出器309は、ADC308から、以下の式(1a)および(1b)を使用してモデル化される複数のサンプルx[n]を受信する。
【0039】
【数2】

ここで、a[n]∈{−1,+1}は、瞬間nにおけるNRZデータビットを表し、h[k]は、ADC308の出力における非等化チャネルのステップ応答を表し、Δ[k]は、瞬間kの時間に書き込まれたデータ転移により経験される転移シフトの量を表し(ここで、Δ[k]>0は、時間遅延を示し、Δ[k]=0は転移シフトなしを示し、Δ[k]<0は時間前進を示す)、αは、読み取り/書き込みヘッド204の出力波形における非対称の量を表すパラメータ(すなわち、MRA)であり、z[n]は、MRAなしの再生信号を表し、v[n]は、ノイズを表す項である。データビットa[n]は、長さN個のビットのPRBSシーケンスを周期的に反復することによって、生成される。
【0040】
式(1a)および1(b)は、ドライブ200が、たとえばノイズ除去、および/またはパルス整形のために、連続時間フィルタ(CTF)を含む場合、CTFが、バイパスされる、またはフラット設定されることを想定する。AFE306が、オールパス・フィルタの機能を実行することもまた仮定される。
【0041】
Δ[k]が、非線形転移シフトにより、信号z[n]の線形化を許容するのに十分小さいと仮定すると、z[n]を、一次テイラー級数を使用して、以下の式(2a)、(2b)、および2(c)を使用して表すことができる。
【0042】
【数3】

ここで、h[k]は、チャネルのインパルス応答を表し、h[k]は、チャネルのビット応答を表す。式(21a)〜(24)を参照して以下でさらに詳細に説明するように、h[k]の値は、基準線補正のためのアルゴリズムを使用して抽出されたダイビットを後処理した後に取得される。式(1a)に式(2a)を代入すると、結果として以下の式(3a)および(3b)になる。
【0043】
【数4】

[n]およびαz[n]と比較して、z[n]は、強度において一層小さいことが予想される残差項を表す。というのは、z[n]が2つの比較的小さい項の積であるからである。
NLTS、OW、およびMRAにより引き起こされるダイビット・エコー
【0044】
式(3a)および(3b)が与えられると、次に、NLTS、OW、およびMRAによるエコーの位置を特定することができる。3つのタイプの転移シフトを考慮して、Δ[k]を、以下の式(4)を使用して表すことができる。
【0045】
【数5】

【0046】
PRBSシーケンスのシフト・アンド・アッド特性により、Δ[k](a[k]−a[k−1])を、以下の式(5a)および(5b)を使用して表すことができる。
【0047】
【数6】

ここで、Δ[k]は、すべての定数項および線形項を合計する。式(5a)および(5b)において、整数{M,M,M}は、PRBSシーケンスのシフト・アンド・アッド特性から得られ、以下の式(6a)〜(6d)によって与えられる。
a[k]a[k−1]=−a[k−M]、 (6a)
a[k]a[k−1]a[k−2]=a[k−M]、 (6b)
a[k]a[k−2]a[k−3]=a[k−M]、および (6c)
a[k]a[k−2]=−a[k−M]。 (6d)
【0048】
式(5)を考慮して、転移シフトに対応する信号(Δ[k]を無視する)を、以下の式(7a)、(7b)、および(7c)として表すことができる。
【0049】
【数7】

ここで、シンボル「⇒」は、「以下を含意する」を意味する。
【0050】
式(2b)が与えられると、
【0051】
【数8】

を、以下の式(8a)および(8b)を使用して表すことができる。
【0052】
【数9】

式(8b)における項z[n]は、a[k]a[k−1]およびa[k]a[k−2]以外のすべての積を含む残差項である。PRBSシーケンスのシフト・アンド・アッド・特性により、MRAに対応する信号(z[n]を無視する)を、以下の式(9)として表すことができる。
【0053】
【数10】

【0054】
項z[n]および
【0055】
【数11】

を組み合わせることにより、以下の式(10)において与えられるように、転移シフトおよびMRAに対応する結合信号をもたらす。
【0056】
【数12】

式(10)における異なる項は、転移シフトおよびMRAによるエコーを表し、そのエコーは、抽出されたダイビットから導き出されたものである。以下の3つの観測が、式(10)に関して行われるべきである。
【0057】
第1に、ポジションMにおいて、オーバーライトおよびMRAによるエコーがオーバーラップする。結果として、エコーの直接観測により、MRAまたはOWどちらかを個別に推定することは可能ではない。
【0058】
第2に、シフト{M,M,M,M}が互いに十分に離されるようにPRBSシーケンスが選択される限り、MRAおよび/またはOWの有無は、NLTSによるエコーに影響を及ぼさない。結果として、原則的には、MRAおよび/またはOWが存在するかどうかにかかわらず、NLTSを推定することは可能であるはずである。
【0059】
第3に、ポジションMにおいて、第1および第2のNLTSによるエコーがオーバーラップする。結果として、Mにおけるエコーの直接観測により、これらのNLTSを推定することは可能ではない。
【0060】
ポジションM、M、M、およびMのそれぞれにおける、エコーの振幅EM0、EM1、EM2、およびEM3を、ADC308の出力を、項a[n−M−m]、a[n−M−m]、a[n−M−m]、およびa[n−M−m]のそれぞれと相関させることによって取得することができ、これは、ダイビット抽出プロセスの一部として行われる。これは、結果として、以下の式(11a)、(11b)、(11c)、および(11d)をもたらす。
【0061】
【数13】

ここで、kは、h[k]におけるピークサンプルの位置を表す。式(11a)〜(11c)は、MRA項を除いて、その全体が参照により本明細書に組み込まれるLinおよびWoodによる研究論文、「An estimation technique for accurately modeling the magnetic recording channel including nonlinearities」、IEEE Transactions on Magnetics、Vol.25、No.5、4084〜4086頁、1989年9月において与えられる式に類似しており、この論文は、磁気記録チャネルにおける転移シフトによる非線形歪みのモデリングおよび特徴付けについて論じている。
【0062】
この実施形態においては、長さN=127のPRBSシーケンスが使用されており、ダイビットh[k]は、対応する127係数の長さを有することになることに留意されたい。したがって、式h[k+M+m]における独立変項k+M+mは、すべてのM∈{M,M,M,M}のモジュロNを使用して、評価されるべきである。
【0063】
[m]およびh[m]は、mの大きな値の場合にゼロに近くなることから、mの考え得る値は、m∈{−2,−1,0,1,2}に限定され、ここで、m=0は、h[0]およびh[0]が、h[k]およびh[k]それぞれにおけるピークサンプルに対応するということである(すなわち、k=0)。
NLTS、OW、およびMRAの推定
【0064】
ポジションM、M、M、およびMのそれぞれにおける、4つのエコーの振幅EM0、EM1、EM2、およびEM3が、式(11a)、(11b)、(11c)および(11d)を使用して決定されたら、この情報を使用して、読み取り/書き込みチャネル208の1つまたは複数の特徴(たとえば、NLTS、OW、およびMRA)を推定することができる。
【0065】
したがって、ダイビット抽出器309は、インパルス応答値hと共に、EM0、EM1、EM2、およびEM3の値を、チャネル・パラメータ推定器311に提供し、チャネル・パラメータ推定器311は、パラメータ{Δ,Δ,Δ,α}それぞれの推定値を提供する。これらのパラメータを、たとえば、以下の式(12a)、(12b)、(12c)、および(12d)を使用して推定することができる。
【0066】
【数14】

【0067】
ノイズおよびその他の乱れが存在する中で、推定精度を向上させるためには、mのより大きい値を利用することが望ましい。言い換えれば、対象のパラメータの信号対ノイズ比を向上させるために、mの異なる値にまたがる平均が取られる。これは、チャネル・パラメータ推定器311において実装される、以下の式(13a)、(13b)、(13c)、および(13d)を使用して行うことができる。
【0068】
【数15】

【0069】
ビット応答h[m]からのインパルス応答h[m]の評価は、「インパルス応答の取得およびPW50の推定」の項目において、以下でさらに詳細に説明する。
PRBSシーケンスの選択
【0070】
次に、特定のPRBS多項式のためのエコー位置M、M、M、およびMの値、およびPRBS多項式の選択について説明する。
【0071】
PRBSシーケンスの所与の長さについては、PRBSシーケンスを生成するのに使用される多項式のためにいくつかの選択がある。そのような多項式の例が、Y.Lin、「‘Shift and add’property of m−sequences and its application to channel characterisation of digital magnetic recording」、IEEE Proc.Commun.、Vol.142、No.3、135〜140頁、1995年6月において提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。式(21a)〜(24)を参照して以下でさらに詳細に論じるように、これらのすべての多項式から生じるシーケンスは、PRBSシーケンスの特殊な相関特性を満たすことになるが、異なる非線形性に対応するエコーの位置は、選択された多項式によって左右されることから、推定されたパラメータの精度は、多項式によって変化することがある。エコーがうまく分離されていない場合、式(11a)〜(13d)がオーバーラップを反映するように修正されていない限り、結果として生じるオーバーラップが、推定プロセスの精度に影響を及ぼすことがある。
【0072】
パラメータの推定を単純化するために、エコーが互いに最大限に分離される多項式が選択されるべきである。これを実証するために、以下の式(14a)および(14b)に記述されるような、127ビットのPRBSシーケンスを生成するための2つの異なる多項式を検討する。
(z)=1+z+z、 (14a)
(z)=1+z+z+z+z。 (14b)
これらの2つの多項式のエコー位置が、以下の式(15a)および(15b)によって与えられる。
(z)の場合、{M,M,M,M}={−30,26,−12,−60}、 (15a)
(z)の場合、 ={−86,−95,−20,−45}。 (15b)
【0073】
エコー位置{M,M}は、p(z)と比較して、p(z)の場合に接近していることが観測されるはずである。したがって、p(z)と比較して、p(z)でよりよい精度が期待されるべきであり、したがって、127ビットのPRBSシーケンスを生成するための多項式としては、式(14a)に与えられたようなp(z)を使用することが望ましい。PRBSシーケンスは、ビット長127を有するため、M=−60は、M=−60+127=67と同等であることに留意されたい。
インパルス応答の取得およびPW50の推定
【0074】
ダイビット抽出を使用して、チャネル・ビット密度(CBD)を推定することもできる。たとえば、正規化された線形ビット密度を示すのに使用されるパラメータPW50は、半分のピーク振幅におけるインパルス応答hの幅である。
【0075】
ステップ応答を決定し、次いでそのステップ応答を微分することによって、インパルス応答hを、抽出されたダイビットから取得することができる。したがって、ビット応答からインパルス応答を生成するための適切なフィルタを、ステップ入力を微分フィルタに通過させることによって、取得することができる。位相シフト0.01Tおよび−0.01Tそれぞれのために設計された2つの11タップ補間フィルタの間の差を取って、その差を0.02Tで割ることによって、微分フィルタを構築することができ、ここで、Tは、1つのチャネル・ビットの持続時間を表す。補間フィルタは、好ましくは、25%の過剰帯域幅による上昇余弦関数を使用して設計される。これは、結果として、ビット応答から決定されることになるインパルス応答を許容する、以下の係数を有するフィルタをもたらす。
{0.0269,−0.0564,0.1321,−0.2605,0.6823,0.6823,−0.2605,0.1321,−0.0564,0.0269} (16)
【0076】
[k]が、ビット応答(式(21a)〜(24)参照して以下で説明するように、抽出されたダイビットを後処理することによって取得される)を表すとすると、T間隔のインパルス応答h[k]が、公式(16)において与えられたフィルタ係数で(代替実施形態においては、他のフィルタまたはフィルタ係数を使用することができることを認識すべきであるものの)、h[k]を畳み込むことによって取得される。結果として生じるインパルス応答h[k]を、チャネル・パラメータを推定するための式(13a)、(13b)、(13c)、および(13d)において使用することができ、h[0]は、インパルス応答のピークサンプルに対応する。
【0077】
PW50を推定するために、半振幅点が最初に位置を特定される。そうするために、オーバーサンプリングされたインパルス応答が利用され、それにより、補間フィルタを使用して、微細な間隔のサンプルを生成する。T間隔のインパルス応答から、{0.1T,0.2T,0.3T,0.4T,0.5T,0.6T,0.7T,0.8T,0.9T}の位相シフトを生成するための補間フィルタの係数(25%過剰帯域幅による上昇余弦関数を使用)が、図4のテーブルに提供されており、これはたとえば、ルックアップ・テーブルを使用して実装されてもよい。0.6T、0.7T、0.8T、および0.9Tのための補間フィルタは、位相0.4T、0.3T、0.2T、および0.1Tそれぞれのためのフィルタの時間反転バージョンであることに留意されたい。
【0078】
対象となる領域のみがピーク周辺の範囲であるために、それは、インパルス応答hのピーク周辺で、インターバル[−2T,2T]の間に微細な間隔のサンプルを生成するには十分である。h[0]が、T間隔のインパルス応答のピークサンプルを表すとすると、時間mT+0.1lTにおけるインパルス応答を、m=−2、−1、0、1、2として、以下の式(17a)、(17b)、(17c)、および(17d)を使用して計算することができる。
【0079】
【数16】

ここで、式
【0080】
【数17】

は、図4のテーブルのl番目の列におけるフィルタ係数を表し、式h[m]は、h[m]周辺を中心としたT間隔のインパルス応答サンプルの11×1ベクトルを表す。h(mT+0.1lT)が、m=−2、−1、0、1、2、およびl=0、1、・・・9として計算されると、パラメータPW50を、以下の5つのステップを使用して推定することができる。
【0081】
第1に、以下の式(18)を使用して、ベクトルgが構築される。
g=[h(−2T),h(−1.9T),h(−1.8T),・・・,h(1.9T),h(2T)] (18)
【0082】
第2に、ベクトルgが、そのピーク値によって正規化され、結果として
【0083】
【数18】

であるベクトルが生じる。
【0084】
第3に、
【0085】
【数19】

および
【0086】
【数20】

が、正規化されたベクトル
【0087】
【数21】

のピークサンプルの両辺で0.5(または別の選択された値)に最も近くなるように、対の整数PおよびPが決定される。
【0088】
第4に、線形補間を使用して、正規化されたベクトル
【0089】
【数22】

のピークサンプルの両辺の半ピーク振幅{β,β}の位置が、以下の式(19a)〜(19f)を使用して計算される。
【0090】
【数23】

【0091】
第5に、PW50が、以下の式(20)を使用して推定される。
【0092】
【数24】

抽出されたダイビットの後処理
【0093】
式(11a)、(11b)、(11c)、および(11d)において、PRBSシーケンスの相関は、ゼロのラグ(サンプル遅延)の場合に1であり、非ゼロラグの場合に0である(ここで、kの非ゼロラグは、kビットまたはサンプルの相対的なシフトにおける相互相関を意味し、すなわち、a[n]であってa[n−k]である)と仮定する。この同じ仮定が、ダイビット抽出に関連した先行技術の多くにおいて暗に行われている。しかしながら、実際には、PRBSシーケンスの相関は、ゼロのラグの場合に1であり、非ゼロラグの場合には−1/Nであり、これが結果として、抽出されたダイビットにおける非ゼロ基準線をもたらし、ここで、Nは、PRBSシーケンスの1周期の長さを表す。したがって、基準線の補正は、ダイビットがチャネル・パラメータを推定するために使用される前に行われるべきである。これは、垂直記録において重要である。というのは、ビット応答およびインパルス応答が、長手記録においてはゼロDC値であるのに対し、垂直記録においては非ゼロDC値を有するからである。この非ゼロ相関についての補正は、以下の後処理方法によって実行され、その追加的な詳細が、「Systems and Methods for Dibit Correction」と題された米国特許出願第12/463626号において提供されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0094】
線形読み戻し信号が、
【0095】
【数25】

として式(2b)によって与えられ、ここで、h[k]は、真のビット応答である。PRBSシーケンスの相関特性を使用して、抽出されたダイビットを、以下の式(21a)および(21b)を使用して表すことができる。
【0096】
【数26】

真のビット応答における無視できない値(すなわち、抽出されたダイビットの後処理後に見出されることが予想されるであろう値)が、k=M、M+1、・・・、M(ここで、MおよびMは整数)の場合に、h[k]であると仮定した場合、抽出されたダイビットを、以下の式(22a)および(22b)を使用して表すことができる。
【0097】
【数27】

式(22a)を使用して、以下の式(23a)および(23b)を導き出すことができる。
【0098】
【数28】

式(21a)に式(22a)を代入すると、結果として以下の式(24)をもたらし、これが、後処理されたダイビットを提供する。
【0099】
【数29】

【0100】
式(24)の右辺における括弧の中の第2項を計算するために使用される項が、抽出されたダイビットの主パルスからであり、抽出されたダイビットの非線形部分を含まないことに留意されたい。これらの項は、AC結合チャネルについてでさえ非ゼロであることになる。さらに、後処理項を計算する目的のために完全なダイビットを抽出することは必須ではなく、それは、NLTS推定の場合などの、ダイビットの一部のみが抽出されるシナリオにおいて有益であることを理解すべきである。そのような場合、ダイビットの主パルスおよび推定に使用される部分のみを抽出することで十分であり、抽出された部分を、後処理項を計算するのに使用することができる。
例示的なチャネル・パラメータ推定モデルの概要
【0101】
図5は、本発明の実施形態と一致した、チャネル・パラメータを推定するための例示的な一方法500を示す流れ図である。示されるように、最初に、ステップ501で、127ビットのPRBSシーケンスが、たとえば、式(14a)に記述されるような多項式p(z)=1+z+zを使用して生成され、これは、さまざまな非線形歪みによって引き起こされるエコーの間に大きな分離をもたらすことから、好ましく使用される。次に、ステップ502で、PRBSシーケンスの周期的反復がディスクに書き込まれる。ステップ503で、PRBSシーケンスを使用して、ダイビットが引き続きディスクから抽出される。ステップ504で、抽出されたダイビットが後処理されて、基準線補正を実行する。ステップ505で、チャネルのインパルス応答h[k]が、たとえば、公式(16)で与えられたフィルタ係数で、ビット応答h[k]を畳み込むことによって計算される。ステップ506で、ポジションM、M、M、およびMそれぞれにおける、4つのエコーの振幅EM0、EM1、EM2、およびEM3が決定される。ステップ506は、エコー振幅を使用しないCBD(たとえば、PW50)の計算には必須ではないことに留意されたい。ステップ507で、チャネル・パラメータの推定が行われる。たとえば、第1のNLTS、第2のNLTS、MRA、およびOWが、式(13a)、(13b)、(13c)、および(13d)を使用して推定され、またはPW50が、式(20)を使用して推定される。
代替実施形態
【0102】
本明細書では、ダイビット抽出が、等化器(たとえば、FIRフィルタ310)への入力において、すなわち、ADCの出力において行われるように論じられるが、サンプルを、代替的に、等化器の出力から収集することができることを理解すべきである。そうしたシナリオでは、ADC出力におけるサンプル収集に比べて、MRAの精度が減少することがあるものの、それでもなおNLTS、HTS、およびMRAを推定することができる。
【0103】
本明細書では、「インパルス応答の取得およびPW50の推定」の項目において、垂直記録の場合の、抽出されたダイビットからCBDを推定するための補間ベースのアプローチが提供される。本発明の実施形態は、この補間アプローチを使用して、抽出されたダイビットからインパルス応答を構築し、CBDが、インパルス応答の半振幅の幅を計算することによって推定される。しかしながら、代替実施形態では、かつ、とりわけ長手記録の場合には、類似の補間アプローチを使用して、ステップ応答を取得することができ、CBDを、ステップ応答の半振幅の幅から推定することができる。
【0104】
本発明の実施形態は、ハードディスク・ドライブにおいて実装されるように説明されるが、代替実施形態では、本発明は、テープ・ドライブ、光学ディスク・ドライブ、および磁気光学ディスク・ドライブなどを含む他の記憶媒体、ならびに、ネットワーク、電話通信、および有線/無線データ通信に使用される通信チャネルにおいて実装されてもよいことを認識すべきである。
【0105】
本発明の性質を明らかにするために説明され、図示されてきた部品の詳細、材質、および配置におけるさまざまな変更が、以下の特許請求の範囲で表されるような本発明の範囲から逸脱することなく、当業者によって行われてもよいことがさらに理解されるであろう。
【0106】
本発明の例示的な実施形態が、単一集積回路、マルチチップ・モジュール、単一カード、またはマルチカード回路パックとして可能な実装を含む、回路のプロセスに関して説明されてきたが、本発明はそのように限定されない。当業者には明らかであるように、回路要素のさまざまな機能がまた、ソフトウェア・プログラムにおける処理ブロックとして実装されてもよい。そのようなソフトウェアは、たとえば、デジタル信号プロセッサ、マイクロ・コントローラ、または汎用コンピュータにおいて利用されてもよい。
【0107】
本発明は、方法、およびそれらの方法を実践するための装置の形態で具体化されてもよい。本発明はまた、磁気記録媒体、光学記録媒体、固体メモリ、フロッピー・ディスケット、CD−ROM、ハード・ドライブなどの有形の媒体、または任意の他の一時的でない機械可読記憶媒体において、具体化されるプログラム・コードの形態で具体化されてもよく、ここで、プログラム・コードがコンピュータなどの機械の中にロードされ、それによって実行されるときに、機械が本発明を実践するための装置となる。本発明はまた、たとえば、機械の中にロードされる、および/または、機械によって実行されることを含む一次的でない機械可読記憶媒体に記憶されているプログラム・コードの形態で具体化されてもよく、ここで、プログラム・コードがコンピュータなどの機械の中にロードされ、それによって実行されるときに、機械が本発明を実践するための装置となる。汎用プロセッサで実装されるとき、プログラム・コードのセグメントは、プロセッサと結合して、特定の論理回路に類似して動作する固有のデバイスをもたらす。
【0108】
明示的に述べられていない限り、各数値および範囲は、「約」または「およそ」という単語が値または範囲の値に先行するかのように、近似的なものとして解釈されるべきである。
【0109】
本明細書において記述される例示的な方法のステップは、説明される順序で実行されるべきことが必ずしも求められているわけではないことを理解すべきであり、そのような方法のステップの順序は、単に例示的であることを理解すべきである。同様に、そのような方法に追加的なステップが含まれてもよく、あるステップが、本発明のさまざまな実施形態と一致した方法において、省略または結合されてもよい。
【0110】
以下の方法請求項に要素が存在する場合、その要素は、対応するラベル付けを使用した特定のシーケンスにおいて記載されるが、それらの要素の一部またはすべてを実装するための特定のシーケンスを、その請求項の記述が含意しない限り、それらの要素は、必ずしもその特定のシーケンスにおいて実装されることを限定されるものとは意図されない。
【0111】
本願の特許請求の範囲によって保護される実施形態は、(1)本明細書によって有効にされる、かつ(2)法定主題に該当する、実施形態に限定される。非有効とされる実施形態、および非法定主題に該当する実施形態は、それらが特許請求の範囲内に含まれるとしても、明示的に請求権を拒否される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
読み取りチャネル、およびビット・シーケンスが記憶された記憶媒体を含む記憶デバイスの1つまたは複数のチャネル・パラメータを推定するための、記憶デバイスにより実装される方法であって、
(a)前記記憶デバイスが、前記記憶媒体から前記ビット・シーケンスの少なくとも一部を読み取って、ビット応答を生成するステップと、
(b)前記記憶デバイスが、前記ビット応答を畳み込んで、前記読み取りチャネルのインパルス応答を計算するステップと、
(c)前記記憶デバイスが、計算されたインパルス応答に基づいて、1つまたは複数のチャネル・パラメータを推定するステップと
を含む方法。
【請求項2】
ステップ(c)が、
(c1)前記記憶デバイスが、前記ビット応答および前記計算されたインパルス応答の両方に基づいて、少なくとも1つのチャネル・パラメータを推定するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップcが、
(c1)前記記憶デバイスが、前記ビット応答に基づいて、しかし前記インパルス応答には基づかずに、少なくとも1つのチャネル・パラメータを推定するステップと、
(c2)前記記憶デバイスが、前記インパルス応答に基づいて、しかし前記ビット応答には基づかずに、少なくとも1つのチャネル・パラメータを推定するステップと、
(c3)前記記憶デバイスが、前記インパルス応答および前記ビット応答の両方に基づいて、少なくとも1つのチャネル・パラメータを推定するステップと
を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記1つまたは複数のチャネル・パラメータが、エコーのうちの少なくとも1つを引き起こす非線形転移シフト(NLTS)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
前記1つまたは複数のチャネル・パラメータが、エコーのうちの少なくとも1つを引き起こすオーバーライト(OW)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
前記1つまたは複数のチャネル・パラメータが、エコーのうちの少なくとも1つを引き起こす磁気抵抗ヘッド非対称性(MRA)を含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
ステップ(c)が、
(c1)前記記憶デバイスが、前記計算されたインパルス応答に基づいて、前記記憶媒体上の情報の推定されたチャネル・ビット密度を生成するステップ
を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
ステップ(c1)が、
(c1i)前記記憶デバイスが、前記計算されたインパルス応答に基づいて、ベクトルgを構築するステップと、
(c1ii)前記記憶デバイスが、前記ベクトルgをそのピーク値で正規化して、正規化されたベクトル
【数1】

をもたらすステップと、
(c1iii)前記記憶デバイスが、値
【数2】

および
【数3】

が、正規化されたベクトル
【数4】

のピークサンプルの両辺で選択された値に最も近くなるように、対の整数PおよびPを決定するステップと、
(c1iv)前記記憶デバイスが、正規化されたベクトル
【数5】

の前記ピークサンプルの両辺の半ピーク振幅の位置を計算するステップと、
(c1v)前記記憶デバイスが、前記半ピーク振幅の前記位置に基づいて、チャネル・ビット密度を推定するステップと、
を含む、請求項7に記載の発明。
【請求項9】
(d)前記記憶デバイスが、前記チャネル・パラメータのうちの1つまたは複数を使用して、前記読み取りチャネルの1つまたは複数の非線形性を補償するステップ
をさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項10】
請求項1乃至9のいずれかに記載の方法を実行するようになされた装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−33259(P2012−33259A)
【公開日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−164911(P2011−164911)
【出願日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.フロッピー
【出願人】(508243639)エルエスアイ コーポレーション (124)
【Fターム(参考)】