説明

チューブ型反応装置

【課題】コンパクトな構成で、エネルギ効率が良く、供給エネルギを正確に制御可能とすることができるチューブ型反応装置を提供すること。
【解決手段】複数の原料液を混合する混合部13と、混合部13から供給される混合液を通過させる内径または1辺が1μm〜1000μmの断面が円形または多角形状のチューブ型反応流路16と、を備えており、該チューブ型反応流路自体が、化学反応のための前記エネルギを供給する機能を備えることを特徴とする。このように、マイクロチューブ自体から反応エネルギを直接供給するために、投入エネルギを効率的に利用することができ、また、投入エネルギの制御を精密に制御することが可能となる。また、複数の反応チャンネルを設けることにより、条件を変えた複数の実験を同時に進行させることができるので、反応の最適値を短時間で得ることも可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原材料溶液に熱エネルギ、または光エネルギ等の反応に必要なエネルギを供給することにより化合物を製造する反応装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、原材料溶液からの微粒子生成反応において短時間で所望の粒子径範囲のものを得るには、反応槽内において、外部からの熱エネルギを短時間で伝え、反応温度、反応時間を厳密に制御する必要がある。このため、図10に示すようなキャピラリーチューブを用いたマイクロ流路型反応器90が提案されている(特許文献1及び2参照)。
【0003】
これによれば、シリンジ11a、11bから異なる種類の原料液を供給して混合し、混合液を熱容量の小さい微細系のチューブ91をオイルバス92に浸すことで、急加熱が可能となり、滞留時間は流路91の長さで設定調節できる。これにより、粒子径のばらつきの少ない微粒子が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】登録特許3740528号公報
【特許文献2】特開2007−69162号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ある反応系の反応条件(温度、時間、光量、濃度など)の最適値を見出すためには、温度、時間などの条件を何通りも設定して実験を繰り返すことにより、最適な解をみつける方法が採られている。しかし、一セットの実験系で、多くの状況に応じた実験を行って最適解を見つけ出すのは非常に時間がかかる。また、複数のマイクロチューブを用いて、反応条件を変えて同時に複数の実験を行う場合には、設定温度の異なるオイルバス92を何台も必要とするため、オイルバスの温度設定に時間がかるほか、投入エネルギも大きいので、コストがかかる他、短時間の実験が困難である。
【0006】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたもので、コンパクトな構成で、かつ供給エネルギを正確に制御可能とすることができ、低コストであり、かつ短時間で反応条件の最適値を得ることのできるチューブ型反応装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、原料溶液の混合と、混合液を通すチューブ型反応流路とを備え、チューブ型反応流路が、反応エネルギを供給する機能と、原材料溶液の反応槽としての機能を兼ね備えることにより、反応流路へのエネルギ投入量を厳密に制御可能としたコンパクトなチューブ型反応装置を提供する。
【0008】
本発明の第1の態様にかかるチューブ型反応装置は、複数の原料溶液を混合した混合液に、反応に必要なエネルギを供給して化学反応を起こさせる化合物生成反応装置において、複数の原料液を混合する混合部と、前記混合部から供給される混合液を通過させる内径または1辺が1μm〜1000μmの断面が円形または多角形状のチューブ型反応流路と、を備えており、前記チューブ型反応流路が、化学反応に必要な前記エネルギを供給するエネルギ供給部を備えることを特徴とする。
【0009】
本態様によると、チューブ型反応流路自体がエネルギの供給源となるので、チューブ型反応流路から直接原料溶液にエネルギが供給されることになる。従って、投入エネルギが減少し、また、投入エネルギ量をより正確に算出することができるため、反応の適正条件を正確に把握することが可能となる。
【0010】
本発明の第2の態様にかかるチューブ型反応装置は、本発明の第1の態様にかかるチューブ型反応装置において、前記チューブ型反応流路を複数備えることを特徴とする。この態様によると、複数の反応流路を備えているので、各反応流路ごとに、濃度や温度等の各種反応条件を変えた複数の実験を同時に行うことができるので、最適解を短時間で発見することが可能となる。
【0011】
本発明の第3の態様にかかるチューブ型反応装置は、本発明の第1または第2の態様にかかるチューブ型反応装置において、前記チューブ型反応流路が、前記エネルギ供給部として発熱部を備えることを特徴とする。これにより、反応流路全体によりから包み込むように、ほぼ直接的に混合液を加熱することができるので、熱抵抗が少なくなり、投入エネルギの効率が大幅に向上する。また、投入エネルギによる影響も正確に算出することが可能となる。
【0012】
本発明の第4の態様にかかるチューブ型反応装置は、本発明の第3の態様にかかるチューブ型反応装置において、前記チューブ型反応流路は、耐薬品性材料からなる絶縁チューブと、前記絶縁チューブの外表面のほぼ全長に沿って設けられた導電性発熱チューブと、前記導電性発熱チューブに電流を供給する電源部と、を備えることを特徴とする耐薬品性材料としては例えば、シリカガラスを用いることが可能である。これにより、混合液が腐食性を有するものや導電性を有する場合でも、導電性発熱チューブは保護される。
【0013】
本発明の第5の態様にかかるチューブ型反応装置は、本発明の第3の態様にかかるチューブ型反応装置において、前記チューブ型反応流路は、前記チューブ型反応流路に沿ってほぼ全長に亘って設けられた導電性発熱チューブと、前記導電性チューブの内面及び外面を覆う絶縁性の内壁及び外壁と前記導電性発熱チューブに電流を供給する電源部と、を備えることを特徴とする。
【0014】
この態様によると、導電線発熱チューブが加熱や経年変化により参加するのを防止することが可能となる。
本発明の第6の態様にかかるチューブ型反応装置は、本発明の第3の態様にかかるチューブ型反応装置において、前記チューブ型反応流路は、耐薬品性材料からなる絶縁チューブと、前記絶縁チューブの内表面に前記絶縁チューブのほぼ全長に沿って設けられた導電性発熱チューブと、前記導電性発熱チューブに電流を供給する電源部と、を備えることを特徴とする。
【0015】
この態様によると、導電性発熱チューブにより直接混合液を加熱するので、熱効率が極めて高くなる。但し、混合液が腐食性の場合や、導電性を有する場合には、この構成は避けることが望ましい。
本発明の第7の態様にかかるチューブ型反応装置は、本発明の第1または第2の態様にかかるチューブ型反応装置において、前記チューブ型反応流路内に該反応流路に沿って光エネルギを供給してチューブ内を伝搬させることを特徴とする。
【0016】
この態様によると、チューブ型反応流路内に、反応流路に沿って直接光を供給するので、より効率的に光化学反応を行わせることが可能となる。
本発明の第8の態様にかかるチューブ型反応装置は、本発明の第7の態様にかかるチューブ型反応装置において、さらに、前記チューブ型反応流路の少なくとも一部は、光反射率の高い内面を備えており、光源と、前記光源からの光を伝搬する光導波路と、前記光導波路からの光を、前記光反射率の高い内面を有するチューブ型反応流路の開口部に、該記チューブ型反応流路の軸方向と平行に入力する光供給部と、を備えることを特徴とする。このように、投入光を細いマイクロチューブからなるチューブ型反応流路の軸方向と平行に入力することにより、投入光は少ない反射回数で反応流路の内部を進行することが可能となる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、チューブ自体が熱や光などの反応エネルギの供給源とし、そのチューブを所定の小さな径にし、チューブの長さを変化させることで、外部から所定量のエネルギを直接かつ正確に与えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】本発明の一実施形態にかかるチューブ型の反応装置を模式的に示す図である。
【図2】図1に示すチューブ型反応流路に使用する2種類の原料溶液を混合する混合器の一例を示す斜視図である。
【図3】図1に示すチューブ型反応装置において使用するチューブ型反応流路を加熱する加熱部とチューブ型反応流路の接続構造の一例を示す模式図である。
【図4】本発明にかかるチューブ型反応流路の他の実施形態を示す断面図であり、図4(a)は、チューブ型反応流路の軸方向の断面図を示し、図4(b)は図4(a)のA−A‘方向の断面を示す断面図である。
【図5】本発明にかかるチューブ型反応流路のさらに他の実施形態を示す、チューブの切断面を示す断面図である。
【図6】本発明にかかるチューブ型反応流路として、矩形状(多角形状の一例)のチューブを複数用いた場合の積層構造例を示す断面図である。
【図7】多心コネクタの構造の一例を説明する斜視図である。図7(a)は、混合液が送流される導入流路14とチューブ型反応流路を多心コネクタにより接続した状態を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)で使用した多心コネクタ部材の1つの構造を示す斜視図である。図7(c)は、シールドフィルム(絶縁フィルムを兼ね備えることができる)の一例を示す斜視図である。
【図8】回収流路18に冷却槽40を設けた構成を示す模式図である。
【図9】本発明の第2の実施形態にかかるチューブ型反応装置の構造を模式的に示す断面図である。
【図10】従来のキャピラリーチューブを用いたマイクロ流路型反応器を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
この発明にかかるチューブ型反応装置を、図面を参照して説明する。なお、以下に説明する実施形態は説明のためのものであり、本発明の範囲を制限するものではない。従って、当業者であればこれらの各要素もしくは全要素をこれと均等なもので置換した実施形態を採用することが可能であるが、これらの実施形態も本発明の範囲に含まれる。
【0020】
図1は、本発明の一実施形態にかかるチューブ型の反応装置を模式的に示す図である。本実施形態では、熱エネルギを供給する構成を示している。図2は、図1に示すチューブ型反応流路に使用する2種類の原料溶液を混合する混合器の一例を示している。図3は、チューブ型反応流路を加熱する電源部20とチューブ型反応流路の接続構造の一例を示す模式図である。
【0021】
図4は、図3とは別のタイプのチューブ型反応流路46の実施形態を示す断面図であり、図4(a)は、チューブ型反応流路46の軸方向の断面図を示し、図4(b)は図4(a)のA−A‘方向の断面図である。図5は、本発明にかかるチューブ型反応流路のさらに他の例を示す断面図であり、図5(a)はチューブ型反応流路56の軸方向の断面図であり、図5(b)はチューブ型反応流路56を切断する方向の断面図である。図6は、チューブ型反応流路16として、矩形状(多角形状の一例)のチューブを複数用いた場合の積層構造例を示す断面図である。図7は、多心コネクタの一例の構造を説明する斜視図である。
【0022】
図1に示す本発明の一実施形態にかかるチューブ型反応装置おいては、粒子状化合物生成のために可溶性化合物を含有する2種の溶液A及びBを混合する例を示している。この2種の可溶性化合物含有溶液(原料溶液)A及びBはそれぞれ、例えばシリンジポンプ等の供給器11a、11bに収容されており、原料溶液は供給機11a、11bからチューブ等の供給路12を介して混合器13に送られて、混合器13において2種類の原料溶液A及びBが混合される。
【0023】
2種類の溶液を混合する場合、混合器としては、図2に示すようなY型合流コネクタを使用することができる。原料供給路12a、12bは、混合機13の入力路13a、13bに接続されており、入力路13a、13bの合流点13cで混合される。混合液は出力路13dを経て開口部13eに接続されている導入流路14に送液される。
【0024】
本明細書では、2種類の原料溶液を混合する例を示しているが、3種類以上の原料溶液をそれぞれの供給機11に収納しておいて、混合器で3種類の原料溶液を混合するように構成することも可能である。
【0025】
図1に示すように、原料溶液A、Bの供給器11は、それぞれ複数設けることができ(図1ではn個)、1組の供給器11a、11bの数に応じて混合機13が設けられる(13(1〜n)のn個)。このように、供給器及び混合機等を複数設けて、それぞれ対応する混合器13で混合し、各混合液を後述する複数のチューブ型反応流路にそれぞれ供給する構造(図1ではn個:複数チャンネル構成)とすることが望ましい。これにより、チューブ型反応流路ごとに加熱条件等、実験のパラメータ(条件)を変えた実験を同時に複数実行することができるので、より短時間で反応最適値を発見することが可能となる。
【0026】
なお、図1に示すように、複数の供給器や流路による複数チャンネル構成であっても、各チャンネルの構成要素はそれぞれ同じであるから、以下の説明においては、特に必要が無い限り、1つのチャンネルについてのみ説明する。
【0027】
複数の混合器13から導入流路14を通じて供給された各混合液は、多心コネクタ15により、各混合液がそれぞれ対応する各チューブ型反応流路16に供給される。多心コネクタ15の構造については後述する。
【0028】
各チューブ型反応流路16はそれぞれ、反応流路自身が直接エネルギを供給可能な構成となっている。図1のチューブ型の反応装置10は、電源部20を備えており、チューブ型反応流路のそれぞれに電気エネルギ(電流)を供給する。
【0029】
電源部20は、電源21と、該電源21に電気的に接続されている導線22を備えている。また、チューブ型反応流路16は、導電性発熱チューブ16aと絶縁体のチューブ16bを備えている。図3及び図4にチューブ型反応流路の実施形態を示す。
【0030】
図3に示す実施形態においては、チューブ型反応流路16は、シリカガラスなどの絶縁性の材料で構成された絶縁体のチューブ16bの外側に導電性発熱チューブ16aを備える2層構造となっている。導電性発熱チューブ16bは化学反応に必要なエネルギを供給するエネルギ供給部としての発熱部として機能する。電源21に接続されている導線22は、接続点Sa、Sbにおいて、チューブ型反応流路16の導電性発熱チューブ16aに接続される。導電性発熱チューブ16aは、電源21から電流を流すことによりその全長(長さT)に亘って発熱する。これにより、絶縁体のチューブ16b内の混合液に熱エネルギを供給する。発熱量は電流及び通電時間により制御することができるので、供給するエネルギ量をチューブ型反応流路毎に正確に制御可能となる。
【0031】
図4に示すチューブ型反応流路46は、図3の実施形態とは異なり、絶縁体のチューブ16bの内面に導電性発熱チューブ46aが設けられている。絶縁体のチューブ46bの内面に設けられた導電性発熱チューブ46aは絶縁体のチューブ46bの端部で折り返されて絶縁体のチューブ46bの外側に環状に導電性発熱チューブ46aが露出している。この環状の露出部S1が、接続点Sa、Sbにおいて、電源部20に接続された導線22と電気的に接続される。
【0032】
チューブ型反応流路16の他の実施形態として、図5(a)、(b)に示すようなチューブ型反応流路56とすることもできる。この実施形態にかかるチューブ型反応流路56は、導電性発熱チューブ56aの内面及び外面を、絶縁体のチューブ56b、56cで覆うよう構成されている。導電性発熱チューブ56aは、図4に示す実施形態と同様に、端部で折り返されて、外部に露出されている(図示せず)。混合液の電導率が高い場合及び腐食性が高い場合には、図4に示すような内面に導電性発熱チューブ46aが露出する構造よりも、このように内部も絶縁することが好ましい。
【0033】
チューブ型反応流路16は多心コネクタ15bを介して反応液を回収するための回収流路18に接続されて、回収流路18を介して回収部19に接続される。回収流路18に図8に示すような装置を設けることにより、急冷することも可能である。
【0034】
なお、これらの原料供給路12a、12b、導入流路14、チューブ型反応流路16は、径1μm〜1000μmの範囲のマイクロチューブで構成される。
ここで、図7に、多心コネクタ15a及び15bの一実施例を説明する。多心コネクタ15a及び15bは同じ構造とすることができるので、ここでは、多心コネクタ15aについてのみ説明する。図7(a)は、混合液が送流される導入流路14とチューブ型反応流路16を接続するコネクタの一例であり、2つの多心コネクタ部材C1,C2により、2つの流路14と16が接続された状態を示す斜視図である。図7(b)は、図7(a)で使用した多心コネクタ部材C1の構造を説明するための斜視図であり、図7(c)は、シールドフィルム(絶縁フィルムを兼ね備えることができる)の一例を示す斜視図である。
【0035】
図7(a)に示すように、2つのコネクタC1,C2を対向させて突き合わせ、弾性部材34により互いに押圧されることにより接合されて、2つの流路14と16は接続される。接続された2つのコネクタ部材C1,C2(図7(a))を構成する1つのコネクタ部材C1の構造を図7(b)に示す。接続する2つのコネクタ部材C1及びC2は左右対称の同一の構造であるので、コネクタ部材C1を用いてその構造を説明する。コネクタ部材C1は、例えばガラス材や樹脂から成る本体31と、分岐フェルール(図示しない)に接続されている複数本のマイクロチューブ32とコネクタ33で構成されている。
【0036】
コネクタ本体32の一方の端面31aは、複数個(図では4個)の位置決め用ピン穴35により位置合わせされて、接続対象となるコネクタ部材C2接続端面と接合される。接続端面31aは精密研削・研磨を施すことによって接続時に気密状態を確保できる状態になっている。
【0037】
そして、コネクタ本体31には、その接続端面31aから他方の端面に至るまで、接続対象となるマイクロチャンネルの開口部の配列態様に対応して配列される複数個の貫通孔32が形成されている。コネクタ本体31の他方の端面側においては、各貫通孔32と各チューブ型反応流路16のマイクロチューブがコネクタ33で連結されている(図7(a)に示す反対側のコネクタ部材C2では、導入流路14のマイクロチューブが連結される)。
【0038】
なお、貫通孔32の数は、接続されるチューブ型反応流路16の数に応じて適宜、変更可能である。例えば、図7(b)では、貫通孔32が4列×4列の計16個の孔が形成されているが、これは(図示しないが)チューブ型反応流路の口数と対応させているためである。
【0039】
ここで、貫通孔32の口径は、接続対象となるマイクロチューブ等のマイクロチューブの外径より大きくなっている。これは、このコネクタ部材C1,C2を用いてマイクロチューブ同士を端面接続するときに、貫通孔32にマイクロチューブを差し込んで収容することにより、気密状態を確保するためである。
【0040】
なお、コネクタ接続する際に、例えばコネクタ部材C1とC2の接続部に、図7(c)で示すようなマイクロチャンネルの配列に対応する配列で形成されている孔と位置決め用ピン穴に対応する穴が形成されているシールフィルム36(絶縁機能を兼ね備えるようにすることが望ましい)を介在させるとより、さらに気密状態(及び絶縁機能のあるものなら電気絶縁性の状態)を高めることが可能となる。
【0041】
次に、本発明にかかる実施形態1の各種実施例について説明する。
(実施例1)
たとえば、図1の構成において、チューブ型反応流路16を内径320μmで外形450μmのシリカガラス製とし、外表面に銅フィラー入りの導電性ペーストを20μmの厚さで塗布し、乾燥焼結して導電性発熱チューブ(過熱部分)を形成することができる。この場合、加熱部分の長さは自由に設定することができるが、例えば、500mmとすることができる。チューブ型反応流路の末端は、電気絶縁された絶縁シールパッキンまたは絶縁樹脂コネクタで絶縁するのが好ましい。
【0042】
(実施例1による実験例)
第一のシリンジポンプAから、塩化金酸水溶液を流量0.05ml/分で送液し、第二シリンジポンプBからはクエン酸水溶液を流量0.05ml/分で送液して混合した。電源部から加熱部チューブ型反応流路16に20V、3Aの電流を流して加熱する。この場合の消費電力は60Wであった(導電性発熱チューブ全体の抵抗は約6.67Ω)。
【0043】
この結果、チューブ外表面は200℃が維持されて、混合水溶液は195℃まで高温に加熱された。一本のチューブ型反応流路16は、断面積が7×10−4cm2であるので、送液流量0.1ml/分で、平均流速は140cm/分となる。長さ500mmの反応区間(過熱部分)を通過する溶液の平均滞留時間は20秒と短時間で、平均粒径10nmの金コロイド粒子を得ることができた。混合液を複数のチューブ型反応流路に並列供給して、同時に反応させたが、生成粒子のばらつきは数nm(ナノメートル)程度と小さかった。
【0044】
反応溶液はシリカガラスチューブに接しているので、装置の腐食や生成物への汚染は無かった。なお、内径が1000μmより大きいと、乱流によるバックミキシングが大きくなり、内径が1μmより小さいと、装置の圧力損失が大きくなり、生産効率が低下することがわかった。
【0045】
(比較実験例)
上記実験結果と比較するために、オイルバスを利用して加熱する従来技術による反応装置による実験結果を比較例として示す。
【0046】
この比較例では、上記実験例1と同様に、第一のシリンジポンプAから、塩化金酸水溶液を流量0.05ml/分で送液し、第二シリンジポンプBからはクエン酸水溶液を流量0.05ml/分で送液して混合した。ガラスキャピラリーの内径は320μmとし、長さ500mmを500ml容積の200℃のオイルバスに浸漬した。反応混合液は自然冷却して、捕集器で捕集した。
【0047】
その結果、比較例では、混合水溶液は100℃まで急加熱され、加熱帯の滞留時間10分となり、平均粒径15nmの金コロイド粒子を得ることができた。なお、1槽のオイルバスを温度維持するのに、400Wの電力が必要であり、約6.6倍の消費電力が必要となる。また、オイルバスが200℃で、反応溶液は100℃までしか上がらず、装置の熱抵抗が大きいことが、特に問題となる。
【0048】
(実施例2)
図4に示すように、チューブ型反応流路の内表面に導電性の材料を塗布することも可能である。例えば、銅フィラー入り溶液をチューブ内に流した後、乾燥焼付けで固着させることにより内面に導電性発熱チューブ(過熱部分)を形成することができる。
チューブ型反応流路の端部で導電性発熱チューブを折り返して、チューブ反応路端部の外側にも導電性材料が繋がるようにしておき、接続点Saにおいて、外側に露出している導電性発熱チューブと電源部の導線とが接続される。この場合、内面を発熱して加熱するので、より効果的に加熱することが可能である。
【0049】
腐食性にかかわらない反応系等の条件に応じて、微細鋼管などの金属チューブを用いることも可能である。
(実施例3)
図5(a)、(b)に示すようなチューブ型反応流路56とし、この実施形態にかかるチューブ型反応流路56は、導電性発熱チューブ56aの内面及び外面を、絶縁体のチューブ56b、56cで覆うよう構成することもできる。導電性発熱チューブ56aは、図4に示す実施形態と同様に、端部で折り返されて、外部に露出されている(図示せず)。
【0050】
材料は、例えば、実施例1と同様にシリカガラスのチューブを内面の絶縁体のチューブ56bとし、その上に銅フィラー入りの導電性ペースト等の導電性材料を塗布して導電性発熱チューブ56aとし、さらにその上の外表面にシリカなどの絶縁物の酸化防止膜を塗布する構成とする。このように、導電性発熱チューブ56aを絶縁体のチューブ56b、56cで挟むことにより、加熱や経年劣化による導電性材料の酸化を防止することが可能となる。外表面のシリカ皮膜は、シリコン化合物の気相分解反応による蒸着で形成することができる。
【0051】
混合液の電導率が高い場合及び腐食性が高い場合には、図4に示すような内面に導電性発熱チューブ46aが露出する構造よりも、このように内部も絶縁することが好ましい。
(実施例4)
複数のチューブを備えるチューブ型反応装置の場合、チューブ型反応流路を、例えば図6に示すように、各チューブ型の流路37の断面が直線の辺を有する矩形、または多角形の形状になるようにして、複数のチューブを隙間なく積み重ねるようにする。これにより、大量のチューブを隙間なく束ねることができるので、大量の反応物を同時生成する場合には、チューブが隙間なく詰め込まれるので投入エネルギのロスが少ない。
【0052】
(実施例5)
図8は、回収流路18に冷却槽40を設けた構成を示す模式図である。図8に示すように、チューブ型反応流路16から、反応溶液を捕集する場合において、回収流路18の途中に冷却槽40を設け、回収流路18の一部をエタノール等の揮発性液体等その他の冷却液41をくぐらせることにより、急速に冷却するように構成する構成とすることも可能である。これにより、冷却に必要な回収流路の長さを短縮することが可能となる。
【0053】
(使用方法)
複数のチューブ型反応流路を備える装置では、チャンネル毎(チューブ型反応流路毎)に、条件を変えて同時に実験を行うことができる。たとえば、チャンネル1(系統1)では、60Wの電力を供給して、混合液の温度を195℃とし、チャンネル2(系統2)では、70Wの電力を供給して、混合液の温度206℃とするように、独立して異なる温度設定で同時に実験をおこない、生成される粒子の状況を比較することができる。また、チャンネル毎に導電性チューブの長さまたは混合液の流速を変えることにより、チャンネルごとに反応時間を変えることも可能である。
【0054】
さらに、本反応装置は、使用後にはチューブ内に溶液が残留するので、洗浄が必要となる。そのため、チューブ内に洗浄液を通して洗浄を行い乾燥させるが、その場合に、洗浄液で洗浄した後に電流を流して発熱させることにより、乾燥を速めるとともに昇温により残留物を昇華させるのが好ましい。
【0055】
(第2の実施形態:光エネルギの供給) 次に、本発明のチューブ型反応装置の第2の実施形態について説明する。第2の実施形態では、チューブ型反応流路に光エネルギを供給するチューブ型反応装置である。図9は、本発明の第2の実施形態にかかるチューブ型反応装置50の構造を模式的に示す断面図である。図9では、1チャンネルのみしか示していないが、同様のものを並列に複数設けることにより、複数のチャンネルを有するチューブ型反応装置とすることができる。原料溶液A,Bは原料供給路(チューブ)12a、12bにより混合器13に送液されて、混合器13の内部の流路において、原料溶液A,Bが合流して混合される。混合液は混合器13から導入流路(チューブ)14により光供給部51に送られる。光供給部51は、混合液をチューブ型反応流路に案内する溶液案内路52と、光出射口57aがチューブ型反応流路56の入り口の開口部56aに対向するように配置された光導波路57とを備えている。チューブ型反応流路56の内面56bは反射効率の高い材料により構成される。光導波路57には、図示しない光源から所望の光が入射される。入射された光は、光導波路57内を導波して、開口56aからチューブ型反応流路56内に入射される。入射した光は、チューブ型反応流路56内の混合液を照射しながら、チューブ型反応流路の内表面を反射しながら進んでいき、光反応を促進する。反応済の混合液は、コネクタ54bで回収流路18に接続される。光導波路57及び反射効率の高い内面56bを有するチューブ型反応流路が、化学反応に日宇町なエネルギを供給するエネルギ供給部に相当する。
【0056】
このような光エネルギを供給する実施形態2においても、チューブ型反応流路を複数設けることが可能であり、また、回収流路18に冷却装置を設ける構造とすることも可能である。
以上説明したように、本発明のチューブ型反応装置においては、反応エネルギを反応流路から混合液に直接供給するので、エネルギ供給効率を極めて向上させることができ、供給エネルギを正確により制御することが可能となる。
【0057】
また、原料から何本も並列に分岐したマイクロチューブ群からなる装置を作り、並列に同時に反応処理を行うことにより、比較的大量の反応を同時に進行させることができる。また、複数のマイクロチューブ群からなる複数のチャンネルにおいて、それぞれ異なる条件で実験を行うことにより、同時に各種条件の実験を処理することができる。これにより、短時間で反応条件の最適値を発見することが可能となる。反応時間やチャンネル毎に変えるには、チューブの長さや流速を変えることにより対応可能である。また、反応温度も簡単に帰ることができるので、容易に設定温度を変更することが可能である。
【符号の説明】
【0058】
10 本発明の一実施形態にかかるチューブ型反応装置
11a,11b 原料溶液の供給器
12a,12b 原料供給路
13〜13 混合器
14〜14 導入流路
15a、15b 多心コネクタ
16〜16 チューブ型反応流路
16a、46a、56a 導電性発熱チューブ
16b、46b、56b 絶縁体のチューブ
18〜18 回収流路
19 回収部
20 電源部
21 電源
22 導電線
50 第2の実施形態にかかるチューブ型反応装置の一部
C1,C2 多心コネクタ部材
S1 環状部
Sa,Sb 接続点

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の原料溶液を混合した混合液に、反応に必要なエネルギを供給して化学反応を起こさせる化合物生成反応装置において、
複数の原料液を混合する混合部と、
前記混合部から供給される混合液を通過させる内径または1辺が1μm〜1000μmの断面が円形または多角形状のチューブ型反応流路と、
を備えており、
前記チューブ型反応流路が、化学反応に必要な前記エネルギを供給するエネルギ供給部を備えることを特徴とするチューブ型反応装置。
【請求項2】
前記チューブ型反応流路を複数備えることを特徴とする請求項1に記載のチューブ型反応装置。
【請求項3】
前記チューブ型反応流路は、前記エネルギ供給部として発熱部を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブ型反応装置。
【請求項4】
前記チューブ型反応流路は、
耐薬品性材料からなる絶縁チューブと、
前記絶縁チューブの外表面のほぼ全長に沿って設けられた導電性発熱チューブと、
前記導電性発熱チューブに電流を供給する電源部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のチューブ型反応装置。
【請求項5】
前記チューブ型反応流路は、
前記チューブ型反応流路に沿ってほぼ全長に亘って設けられた導電性発熱チューブと、
前記導電性発熱チューブの内面及び外面を覆う絶縁性の内壁及び外壁と、
前記導電性発熱チューブに電流を供給する電源部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のチューブ型反応装置。
【請求項6】
耐薬品性材料からなる絶縁チューブと、
前記絶縁チューブの内表面に前記絶縁チューブのほぼ全長に沿って設けられた導電性発熱チューブと、
前記導電性発熱チューブに電流を供給する電源部と、
を備えることを特徴とする請求項3に記載のチューブ型反応装置。
【請求項7】
前記チューブ型反応流路内に該反応流路に沿って光エネルギを供給してチューブ内を伝搬させることを特徴とする請求項1または2に記載のチューブ型反応装置。
【請求項8】
前記チューブ型反応流路の少なくとも一部は、光反射率の高い内面を備えており、さらに、
光源と、
前記光源からの光を伝搬する光導波路と、
前記光導波路からの光を、前記光反射率の高い内面を有するチューブ型反応流路の開口部に、該記チューブ型反応流路の軸方向と平行に入力する光供給部と、
を備えることを特徴とする請求項7に記載のチューブ型反応装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−227880(P2010−227880A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−80302(P2009−80302)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】