説明

チューブ容器

【課題】肩部及び口頸部を構成する部位と、胴部を構成する部位とをそれぞれ別体に形成し、それらを一体に接合した形態のチューブ容器であって、より良好なガスバリアー性を付与することのできるチューブ容器を提案する。
【解決手段】肩部11を形成する肩部形成部20及び口頸部12を形成する口頸部形成部21を備えた合成樹脂製の頂部構成部Aと、上端縁を肩部形成部20の上面周縁部に積層固定して接合し、ガスバリアー性の第1中間層30を備えた胴部10を構成する筒状の胴部構成部Bと、口頸部形成部21内面から肩部形成部20裏面にわたり積層し、ガスバリアー性の第2中間層40を備えたバリアー層構成部Cとを備え、バリアー層構成部Cの外周縁部を胴部構成部Bの内面に沿って位置させた状態で、胴部構成部B端部とバリアー層構成部C端部とを頂部構成部Aにより接合した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はチューブ容器に関し、詳しくは、ガスバリアー性に富んだチューブ容器に関する。
【背景技術】
【0002】
チューブ容器として、圧搾可能な胴部から肩部を介して口頸部を起立した形態のものが一般的であり、肩部及び口頸部の部分と胴部とを一体に成形したものや、それらを別体に成形し、互いに融着接合させたものなどが知られている。また、これらにガスバリアー性を付与したものも種々提案されている。
【0003】
上記一体に形成したものでは、肩部から胴部にかけてガスバリアー層を連続して形成できるためガスバリアー性が優れているという利点を備えているが、反面この成形手段は歩留まりが悪いという欠点もある。
【0004】
この様な点を考慮して、肩部及び口頸部と、胴部とを別体に形成した後者の形態の容器に対してガスバリアー性を付与したものが種々提案されている。(例えば特許文献1或いは特許文献2を参照。)
【0005】
上記特許文献1に記載された容器は、胴部を構成する部分と、肩部及び口頸部を構成する部分とを接合一体化して形成するタイプのものであり、胴部にはガスバリアー層を備え、また、肩部にもガスバリアー層を備えているが、胴部のガスバリアー層の上端と肩部のガスバリアー層下端との間に隙間があり、その部分からの外気の浸入が問題となる。
【0006】
また、特許文献2に記載された容器の場合には、胴部のガスバリアー層と肩部のガスバリアー層とが、肩部の外周縁部でオーバーラップした状態で接合されているものの、肩部を構成する樹脂層の上下離間位置にそれぞれ接合されているため、樹脂層を介して外気が容器内に浸入するという虞がある。内容物の種類によっては僅かな外気の浸入によっても変色したり、変質したする虞があり、ガスバリアー性の更なる性能向上が望まれている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特公昭47−48583号公報
【特許文献2】特開2002−225057号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は上記した点に鑑みてなされたもので、肩部及び口頸部を構成する部位と、胴部を構成する部位とをそれぞれ別体に形成し、それらを一体に接合した形態のチューブ容器であって、より良好なガスバリアー性を付与することのできるチューブ容器を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、筒状胴部10から肩部11を介して口頸部12を起立したチューブ容器であって、肩部11を形成する肩部形成部20及び口頸部12を形成する口頸部形成部21を備えた合成樹脂製の頂部構成部Aと、内方へ屈曲させた上端縁を肩部形成部20の上面周縁部に積層固定して接合するとともに、ガスバリアー性の第1中間層30を備えた積層構造をなし、且つ、胴部10を構成する筒状の胴部構成部Bと、口頸部形成部21内面から肩部形成部20裏面にわたり積層して頂部構成部Aとで口頸部12及び肩部11を形成するとともに、ガスバリアー性の第2中間層40を備えた積層構造をなすバリアー層構成部Cとを備え、バリアー層構成部Cの外周縁部を胴部構成部Bの内面に沿って位置させた状態で、胴部構成部B端部とバリアー層構成部C端部とを頂部構成部Aにより接合した。
【0010】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、バリアー層構成部Cの外周縁部の外周面と胴部構成部Bの内周面とに僅かな隙間dを設け、該隙間d内に頂部構成部Aの一部が浸入固定して接合している。
【0011】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれか一つの手段に於いて、バリアー層構成部Cの外周縁部を、胴部構成部B内周面に沿って上方へ起立させた起立部位45として構成した。
【0012】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれか一つの手段に於いて、バリアー層構成部Cの外周縁部を、胴部構成部Bの内周面に沿って下方へ垂下させた垂下部位46として構成した。
【0013】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第4の手段のいずれか一つの手段に於いて、ガスバリアー性の第1中間層30及びガスバリアー性の第2中間層40がそれぞれ金属薄膜層である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【0014】
第6の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第5の手段のいずれか一つの手段に於いて、頂部構成部Aをガスバリアー性の合成樹脂により形成した。
【0015】
第7の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段乃至第6の手段のいずれか一つの手段に於いて、バリアー層構成部Cが、口頸部形成部21に積層した積層部位の上端縁より口頸部12開口を閉塞する押圧破断可能な頂壁部位43を一体に延設してなる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、バリアー層構成部Cの外周縁部を胴部構成部Bの内面に沿って位置させた状態で、胴部構成部B端部とバリアー層構成部C端部とを頂部構成部Aにより接合しているので、ガスバリアー性の第1中間層30と、ガスバリアー性の第2中間層40との間の隙間を極力なくすことができ、その結果、外気の容器内への浸入をより確実に防止できる。バリアー層構成部Cの外周縁部を、胴部構成部B内周面に沿って上方へ起立させた起立部位45として構成しても、胴部構成部Bの内周面に沿って下方へ垂下させた垂下部位46として構成しても、いずれの場合も上記効果を発揮できる。
【0017】
バリアー層構成部Cの外周縁部の外周面と胴部構成部Bの内周面とに僅かな隙間dを設け、該隙間d内に頂部構成部Aの一部が浸入固定して接合している場合には、隙間に頂部構成部Aの樹脂を介在させて胴部構成部Bと頂部構成部Aとの接合がより強固となり、容器としての強度の向上を図れる。また、隙間dは例えば、1×10-4m 〜2×10-4m と極めて狭いものであるから、ここからの外気の浸入は極力防止でき、容器内への外気の浸入を防止するという所期の目的を充分果たすことができる。
【0018】
ガスバリアー性の第1中間層30及びガスバリアー性の第2中間層40がそれぞれ金属薄膜層である場合には、より確実なガス不透過性を発揮することができる利点がある。
【0019】
頂部構成部Aをガスバリアー性の合成樹脂により形成した場合には、コスト面に自由度がある場合には、より確実な外気の遮断を行える。
【0020】
バリアー層構成部Cが、口頸部形成部21に積層した積層部位の上端縁より口頸部12開口を閉塞する押圧破断可能な頂壁部位43を一体に延設した場合には、保管,輸送時を含めて開封前のガスバリアー性を更に確実にできる利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】チューブ容器の半断面図である。(実施例1)
【図2】チューブ容器の要部拡大断面図である。(実施例1)
【図3】図2の一部を更に拡大した要部拡大断面面図である。(実施例1)
【図4】チューブ容器の要部拡大断面図である。(実施例2)
【図5】図4の一部を更に拡大した要部拡大断面面図である。(実施例2)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の形態を図面を参照して説明する。
【0023】
図1乃至図3はチューブ容器1の一例を示す。チューブ容器1は、胴部10より肩部11を介して口頸部12を起立したもので、図1の例では、内容物を充填前の胴部10の下端を開放した状態を示しており、内容物の充填後に扁平に胴部10の下端縁を閉塞する。また、口頸部12の外周には螺条13を周設し、口頸部12の内周上部には突条14を周設している。また、口頸部12には図示しないがキャップを着脱可能に装着する。その場合のキャップもガスバリアー性能を持つものを採用するとよい。
【0024】
本発明のチューブ容器1は、頂部構成部Aと、胴部構成部Bと、バリアー層構成部Cとから形成されている。
【0025】
頂部構成部Aは、肩部11を形成する肩部形成部20及び口頸部12を形成する口頸部形成部21を備えており、口頸部形成部21外周には上記螺条13を、内周には上記突条14をそれぞれ一体に形成している。頂部構成部Aを形成する材質としては、本例で使用している如きポリエチレン樹脂に代表されるポリオレフィン系樹脂等の耐湿性或いは衛生的特性に優れた樹脂を好ましく使用することができるが、これに限らず、ガスバリアー性のあるエチレン−ビニルアルコール共重合体、ポリ塩化ビニリデン共重合体、ポリエチレンテレフタレート、ポリアミド、ポリアクリロニトリル等容器の用途によって選択して使用することができる。
【0026】
胴部構成部Bは、ガスバリアー性の第1中間層30を有する積層構造をなし、筒状に形成されている。そして、上端部を内方へ屈曲させて、肩部形成部20の上面周縁部に積層して接合している。本例に於いては、図2に拡大図で、図3に更なる拡大図で示す如く、ガスバリアー性の第1中間層30の両側を、第1内層31及び第1外層32で挟んだ三層積層構造をなしている。ガスバリアー性の第1中間層30の材質としては、本例で使用している如きアルミニューム等の金属が好ましく使用できるが、上記した如きガスバリアー性のある樹脂等を使用することもできる。また、第1内層31及び第1外層32を形成する材質としては、本例で使用している如きポリエチレン樹脂に代表されるポリオレフィン系樹脂等が最も好ましく使用できるが、これに限られたものではなく、他の合成樹脂であっても使用可能である。尚、本例に於ける胴部構成部Bは三層積層構造であるが、積層構造はこれに限られず、第1中間層30の存在があれば、四層構造であっても、四層以上のの層構造であっても良い。また、第1中間層30も一層に限らず複数層設けても良い。
【0027】
バリアー層構成部Cは、胴部構成部Bと同様に、ガスバリアー性の第2中間層40を備えた積層構造をなし、口頸部12の内面から肩部11の裏面に亘り積層してその部分にガスバリアー性を付与するもので、本例では胴部構成部Bと同様にガスバリアー性の第2中間層40の両側を第2内層41及び第2外層42で挟んだ三層積層構造をなしている。ガスバリアー性の第2中間層40の材質、或いは第2内層41,第2外層42の材質としては胴部構成部Bと同様のものが使用できる。本例では、同様に第2中間層40としてアルミニュームの薄膜層が使用され、第2内層41及び第2外層42を同様にポリエチレン樹脂で形成している。尚、この場合も第2中間層40の存在があれば、三層構造に限らず四層以上の構造を採用可能であり、第2中間層40も一層に限らず複数層設けても良い。
【0028】
本例ではバリアー層構成部Cとして、口頸部形成部21に積層した積層部位の上端縁より口頸部12開口を閉塞する押圧破断可能な頂壁部位43を一体に延設した形態をなしている。即ち、図1及び図2に示す如く、突条14下方の口頸部形成部21から肩部形成部20裏面に亘る末広がりの周壁部位44の上端を頂壁部位43で連結した形態をなしている。
【0029】
また、本発明ではバリアー層構成部Cの外周縁部を胴部構成部Bの内面に沿った状態で、胴部構成部B端部とバリアー層構成部C端部とを頂部構成部Aにより接合する形態をとっている。本例では、バリアー層構成部Cは、バリアー層構成部Cの外周縁部を上方へ起立させた起立部位45とし、この起立部位45外面を胴部構成部Bの内面に沿って位置させた状態で、バリアー層構成部C端部と胴部構成部B端部とを頂部構成部Aにより接合している。
【0030】
また、バリアー層構成部Cの外周縁部の外周面と胴部構成部Bの内周面とは密接していても良いが、バリアー層構成部Cの外周縁部の外周面と胴部構成部Bの内周面とに僅かな隙間dを設けることで、該隙間d内に頂部構成部Aの一部が浸入固定して接合させ、より良好な接合性を得られる。本例では、図3の拡大図で説明する如く、起立部位45外面と胴部構成部Bの内周面とに僅かな隙間dを設け、該隙間d内に頂部構成部Aの一部が浸入固定して接合している。隙間dの幅は3×10-4m 以下、好ましくは1×10-4m 〜2×10-4m と極めて狭いものであり製造時に頂部構成部Aの樹脂が圧入が可能な極限的な幅に構成している。
【0031】
上記の如きチューブ容器1を製造する場合には、例えば、胴部を形成する円柱状部の上端部にコア金型を備えたマンドレルを用意し、マンドレルの外周に胴部構成部Bを形成する筒状の積層シートを装着し、上面コア金型部分に上記バリアー層構成部Cを形成する積層体を装着する。バリアー層構成部Cは、上記した如く口頸部形成部21の内面から肩部11の裏面形状を備え、その起立部位45外面が上記隙間dをあけて胴部構成部Bの上部内面所定位置にある如く装着する。次いで、所定の筒状に形成された溶融樹脂を上から被せるとともに、キャビティ金型で頂部構成部Aを形成して胴部構成部Bとバリアー層構成部Cとを成形した頂部構成部Aにより一体化する。その際、胴部構成部Bの上端部は各金型により内方へ屈曲して頂部構成部Aの肩部形成部20上面周縁部に積層固定され、また、頂部構成部Aの樹脂が隙間dにも浸入して胴部構成部Bとバリアー層構成部Cとがより確実に固定される。尚、製造の方法は当然これに限られない。
【0032】
図4及び図5は他の例を示し、図1の例に於いて、バリアー層構成部Cの外周縁部を、胴部構成部Bの内周面に沿って下方へ垂下させた垂下部位46として構成した例を示す。本例では、この垂下部位46外面を胴部構成部Bの内面に沿って位置させた状態で、バリアー層構成部C端部と胴部構成部B端部とを頂部構成部Aにより接合している。また、図5の拡大図で説明する如く、垂下部位46外面と胴部構成部Bの内周面とに僅かな隙間dを設け、該隙間d内に頂部構成部Aの一部が浸入固定して接合している。隙間dの幅は図1の例と同様である。その他の構成は図1の例と同様であり、同符号を付して説明を省略する。
【符号の説明】
【0033】
1…チューブ容器
10…胴部,11…肩部,12…口頸部,13…螺条,14…突条
A…頂部構成部
20…肩部形成部,21…口頸部形成部
B…胴部構成部
30…第1中間層,31…第1内層,32…第1外層
C…バリアー層構成部
40…第2中間層,41…第2内層,42…第2外層,43…頂壁部位,44…周壁部位,
45…起立部位,46…垂下部位
d…隙間


【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状胴部10から肩部11を介して口頸部12を起立したチューブ容器であって、肩部11を形成する肩部形成部20及び口頸部12を形成する口頸部形成部21を備えた合成樹脂製の頂部構成部Aと、内方へ屈曲させた上端縁を肩部形成部20の上面周縁部に積層固定して接合するとともに、ガスバリアー性の第1中間層30を備えた積層構造をなし、且つ、胴部10を構成する筒状の胴部構成部Bと、口頸部形成部21内面から肩部形成部20裏面にわたり積層して頂部構成部Aとで口頸部12及び肩部11を形成するとともに、ガスバリアー性の第2中間層40を備えた積層構造をなすバリアー層構成部Cとを備え、バリアー層構成部Cの外周縁部を胴部構成部Bの内面に沿って位置させた状態で、胴部構成部B端部とバリアー層構成部C端部とを頂部構成部Aにより接合したことを特徴とするチューブ容器。
【請求項2】
バリアー層構成部Cの外周縁部の外周面と胴部構成部Bの内周面とに僅かな隙間dを設け、該隙間d内に頂部構成部Aの一部が浸入固定して接合している請求項1記載のチューブ容器。
【請求項3】
バリアー層構成部Cの外周縁部を、胴部構成部B内周面に沿って上方へ起立させた起立部位45として構成した請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【請求項4】
バリアー層構成部Cの外周縁部を、胴部構成部Bの内周面に沿って下方へ垂下させた垂下部位46として構成した請求項1又は請求項2のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【請求項5】
ガスバリアー性の第1中間層30及びガスバリアー性の第2中間層40がそれぞれ金属薄膜層である請求項1乃至請求項4のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【請求項6】
頂部構成部Aをガスバリアー性の合成樹脂により形成した請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載のチューブ容器。
【請求項7】
バリアー層構成部Cが、口頸部形成部21に積層した積層部位の上端縁より口頸部12開口を閉塞する押圧破断可能な頂壁部位43を一体に延設してなる請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載のチューブ容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−195144(P2011−195144A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−60310(P2010−60310)
【出願日】平成22年3月17日(2010.3.17)
【出願人】(000001959)株式会社 資生堂 (1,748)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】