説明

チューブ波を用いたダウンホール流体の音速測定

5kHzから100kHzの周波数範囲で流体の音速および他の特性を測定するためのチューブ波を用いる技術。ドリルストリングは、掘削孔泥または層流体のようなダウンホール流体で満たされたキャビティを有するセンサチューブを備える。音響発信器およびアレイ状の音響受信器はチューブに搭載され、流体と特設接触する。処理回路は、例えば音速のような特性を、送信器により形成され、アレイ状の受信器により受信された音響信号の飛行時間に基づいて計算する。代わりに、周波数の関数とした信号位相の変化が、処理回路により用いられても良い。この技術は、特に、掘削孔の泥の音速を、その場で測定するのに適している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に地下層の分析に関し、特に、層評価と貯蔵特性のための音響検層作業を容易にするための、ダウンホール(downhole)流体中の音速測定に関する。
【背景技術】
【0002】
ワイヤラインツールおよび掘削検層(LWD:logging-while-drilling)ツールは、掘削孔の周囲の層の、物理的、化学的、および構造的な特徴を測定するのに使用される。例えば、検層ツールで集められたデータを、層の地層学、岩石学、鉱物学的な解明、および間隙流体の含有物の解明に使用できる。検層ツールは、一般的に、1またはそれ以上の音響、電磁気、および光の信号を発射し、その信号の反応を測定する。音響検層ツール(acoustic logging tool)の場合、振幅、位相、および速度が、層を特徴付けるのに使用される。幾つかの音響検層ツールは、スタンレー、双極子および四重極子モードのようなモード伝搬を用い、層の圧縮速度および剪断速度を測定する。例は、ワイヤライン検層中の掘削孔の撓みモード(a.k.a.双極子モード)からの層の剪断速度の測定、掘削検層中の掘削孔の四重極子モードからの層の剪断速度の引き出し、および漏れのある流体モードからの層の圧縮速度のより拡がらない引き出しを含む。これらの音響検層ツールは、層の音響特性に対する掘削孔モードの速度の依存性に基づいて動作する。しかしながら、モードの速度は、掘削泥のような掘削流体の音波速度にも依存する。それゆえに、より正確に層の特徴付けを行うために、ダウンホールの流体の音速を独立して測定することが望まれる。全体の掘削活動の動機付けとなるため、ダウンホールの層流体の特徴付けには非常に興味がある。
【0003】
掘削孔の環境の外側に流体の音速測定のためには、非常に様々な装置が入手可能である。しかしながら、流体の音速はその物質、温度、および圧力の関数であるため、掘削孔の外側の掘削流体の音速測定は問題を有する。掘削流体が表面に運搬されると、温度と圧力が変化するとともに、掘削孔中の所定の位置における流体の物質、温度、および圧力も掘削して井戸を形成する時間中に変化するため、ダウンホールの流体の音速を測定するためのより良い技術が必要とされた。
【発明の概要】
【0004】
本発明は、地下層の分析を容易にする装置に関する。装置は、内部がダウンホール流体で満たされたチューブを含む。装置は、更に、チューブキャビティ中のダウンホール流体を通って伝達される少なくとも1つの音響信号を形成するように操作可能な、少なくとも1つの音響送信器を含んでも良い。更に、装置は、音響信号を受けるための、少なくとも1つの音響受信器を含んでも良い。装置はまた、少なくとも1つの受信した音響信号の特徴を、少なくとも1つの他の信号と比較し、比較に基づいて流体の特徴を計算する回路を含む。少なくとも1つの他の信号は、少なくとも1つの他の受信した音響信号、形成した音響信号のいずれか、または双方であっても良い。流体の特性は、メモリ中に蓄積され、テレメトリーを介して表面に送られ、または双方が行われる。
【0005】
本発明の他の具体例は、地下層の分析を容易にする方法である。この方法は、キャビティを有するチューブをダウンホール流体で満たされるようにする工程と、続いて、チューブキャビティ中のダウンホール流体を通って伝達される少なくとも1つの音響信号を、少なくとも1つの音響送信器を用いて形成する工程を含む。次に、この方法は、更に、少なくとも1つの音響信号を、少なくとも1つの音響受信器を用いて受信する工程と、少なくとも1つの他の信号と、少なくとも1つの受信した音響信号の特徴を比較する工程と、比較に基づいて、流体の特性を計算する工程とを含む。最後に、この方法は、形成された音響信号、少なくとも1つの受信した音響信号、またはその双方である少なくとも1つの他の信号を含んでも良い。流体の特性は、メモリに蓄積され、テレメトリーを介して表面に送られ、または双方であっても良い。
【0006】
ダウンホール流体の音速を測定するためにチューブ波を用いる1の長所は、典型的なチューブ形状が単純であり、比較的容易にワイヤラインやLWDツールの形状に取り付けられることである。また、チューブは、また、流路の一部を形成し、テスト体積をその位置の流体で満たして保持されるのを助け、即ち、表面に運ばれた試料と比べてその物質は汚染されない。測定時に流体はその場所の周囲の条件、即ち温度、圧力、およびガスフラックスにあるために、測定の精度が向上する。
【0007】
チューブ波の他の長所は、流体充填チューブ中で最も低次のモード、即ち、低周波数で支配的なモードであり、比較的容易に発生させ、検出できることである。チューブ波を用いる他の長所は、波長の長さスケールを越えてチューブ波の速度が測定されることで、これは1桁までで、チューブのIDより十分に大きい。この比較的大きなテスト体積は、大きな時間による変動の代わりに、体積平均化速度中で、小さな固体粒子、カッティング、または気泡のような異物を反映する。
【0008】
本発明は、地下層の分析を容易にするための装置に関する。この装置は、流体で満たされたチューブと、チューブのキャビティ中の流体を通って伝達される少なくとも1つの音響信号を形成する少なくとも1つの音響送信器とを含む。
【0009】
装置は、更に、少なくとも1つの音響信号を受信する少なくとも1つの音響受信器を含む。最後に、装置は、少なくとも1つの音響信号の第1の受信された音響信号と、第2の信号とを比較する回路を含み、比較に基づいて流体の特性を計算する。
【0010】
本発明の1の形態では、装置は、少なくとも1つの他の受信された音響信号、第1の受信された音響信号の送信、またはそれらの組み合わせからなるグループから選択される第2の信号を含んでも良い。更に、比較は、音響信号の飛行時間、および/または周波数の関数としての位相変化、の少なくとも1つを示す。更に、装置は、流体の音速、流体中の気泡の存在、または流体の粘度、の少なくとも1つを表す特性を含む。少なくとも1つの音響送信器は、音響振動子(トランスデューサ)を含み、少なくとも1つの音響受信器は、アレイ状の音響振動子を含むことも可能である。
【0011】
本発明の1の形態では、装置は、更に、リング形状、ボタン形状、ディスク形状、またはそれらの組み合わせである音響振動子を含んでも良い。音響送信器および音響受信器は、直接流体に接続されても良い。ここで、流体は、掘削孔泥、および/または層流体を含む。更に、チューブは、ツールストリングの一部でも良い。更に、装置は、チューブのキャビティを通って配置される主軸を含み、ツールストリングの一部を、チューブの対向する端部に接続しても良い。
【0012】
本発明の他の具体例では、本発明は、地下層の分析を容易にするための方法を含む。この方法は、キャビティを有するチューブを、ダウンホール流体で満たされるようにする工程を含む。この方法は、更に、少なくとも1つの音響送信器を用いて、チューブキャビティ中のダウンホール流体を通って伝達することができる少なくとも1つの音響信号を形成する工程を含む。この方法は、また、少なくとも1つの音響受信器を用いて、少なくとも1つの音響信号を受ける工程と、次に、少なくとも1つの音響信号の第1の受信された音響信号の特徴と、第2の信号を比較する工程とを含む。最後に、この方法は、比較に基づいて流体の特性を計算する工程を含む。
【0013】
本発明の1の形態では、この方法は、少なくとも1つの他の受信された音響信号、第1の受信された音響信号の送信、またはそれらの組み合わせからなるグループから第2信号を選択する工程を含んでも良い。更に、この方法は、音響信号の飛行時間、および/または周波数の関数としての位相変化、の少なくとも1つを示す工程を含んでも良い。この方法は、流体の音速、流体中の気泡の存在、または流体の粘度、の少なくとも1つを表す特性を表す工程を含むことが可能である。
【0014】
本発明の1の形態では、この方法は、音響振動子を有する少なくとも1つの音響送信器を含んでも良い。この方法は、更に、アレイ状の音響振動子を有する少なくとも1つの音響受信器を含んでも良い。音響振動子は、リング形状、ボタン形状、ディスク形状、またはそれらの組み合わせの1つでも良い。更に、この方法は、流体に直接接続された音響送信器および音響受信器を含んでも良く、この流体は、掘削孔泥および/または層流体を含む。更に、チューブは、ツールストリングの一部でも良い。この方法は、チューブのキャビティを通って配置された主軸を含み、ツールストリングの部分をチューブの対向する端部に接続しても良い。
【0015】
本発明の他の具体例では、発明は、層の分析を容易にするデバイスを含んでも良い。デバイスは、流体で満たされたチューブを含む。デバイスは、更に、チューブのキャビティ中の流体を通って伝達される1またはそれ以上の音響信号を形成する少なくとも1つの音響送信器を含んでも良い。このデバイスは、また、1またはそれ以上の音響信号を受信する少なくとも1つの音響受信器を含む。最後に、このデバイスは、1またはそれ以上の音響信号の第1の受信音響信号の特徴を、第2信号と機能的に比較して、比較に基づいて1またはそれ以上の流体の特性を計算する手段を含む。
【0016】
本発明の更なる特徴および長所は、添付の図面と関連して、以下の詳細な説明から、より容易に明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明は、更に、これに続く詳細な説明中に記載され、複数の図面に関しては、本発明の例示的な具体例を限定しないものであり、図面の中では、多くの図面を通して同一の参照符号は類似の部分を示す。
【0018】
【図1】本発明の形態にかかる掘削孔中のツールストリングを示す。
【図2】本発明の形態にかかる流体の音速を測定するためのセンサチューブの具体例を示す。
【図3】本発明の形態にかかるセンサチューブの代わりの具体例を示す。
【図4】本発明の形態にかかるワイヤライン配置中の泥速度を測定するためにツールストリング中に集積されたセンサチューブの側面図である。
【図5】本発明の形態にかかるセンサチューブの具体例の、図4のa−a断面における断面図である。
【図6】本発明の形態にかかるセンサチューブの具体例の、図4のa−a断面における断面図である。
【図7】本発明の形態にかかる掘削検層中の泥速度を測定するために取り付けられた代わりの具体例を示す。
【図8】本発明の形態にかかる掘削検層中の泥速度を測定するために取り付けられた代わりの具体例を示す。
【図9】本発明の形態にかかる掘削検層中の泥速度を測定するために取り付けられた代わりの具体例を示す。
【図10】本発明の形態にかかるチューブ波を用いた層流体の音速を測定するために取り付けられた代わりの具体例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0019】
ここに示される詳細は、例示の方法により、本発明の具体例の事例検討のみを目的とし、本発明の原理や概念的な形態の、最も有用で理解しやすい記載となると信じるものを提供するために表される。このことについて、本発明の基本の理解に必要な以上に詳細には、本発明の構造的な細部を示さないようにした。図面を考慮した説明は、当業者にとって、本発明の多くの形態が、どのように実際に具体化されるのかを明らかにするであろう。更に、多くの図面中の参照番号や表示は、類似の要素を示す。
【0020】
本発明は、地下層の容易な分析のための装置に関する。装置は、ダウンホール流体で満たされた内部を有するチューブを含む。装置は更に少なくとも1つの音響送信器を含み、チューブキャビティ中のダウンホール流体を通って伝わる少なくとも1つの音響信号を形成する。更に、装置は少なくとも1つの音響受信器を含み、音響信号を受ける。装置は、また、少なくとも1つの受信した音響信号の特徴を、少なくとも1つの他の信号と比較することができる回路を含み、比較に基づいて流体の特性を計算する。少なくとも1つの他の信号は、少なくとも1つの他の受信した音響信号、形成された音響信号のいずれか、または双方であっても良い。流体の特性は、メモリに蓄積されてもよく、テレメトリーを介して表面に伝えられても良く、または双方でも良い。
【0021】
図1を参照すると、ツールストリング(または「ツール」と呼ばれる)(100)は、掘削孔(102)の周囲の層の、物理的、化学的、および構造的な特徴を測定するのに使用される。ツールストリング(100)は、ワイヤライン検層ツールまたは掘削検層ツールの一部でも良く、表面に配置された制御ユニット(104)に対応して操作される。制御ユニット(104)はプロセッサとメモリを備え、とりわけ、データ分析、データ蓄積、および貯蔵モデルの作成を容易にする。ワイヤラインケーブルまたはドリルストリングがツールストリング(100)を制御ユニット(104)に接続する。ツールストリング(100)は、掘削孔(102)中に降ろされ、一般には不浸透性層(108)に隣接する貯蔵(106)を含む層や、表土を形成する多くの他の層に関係する物理的特性を測定する。ツールストリング(100)により集められるデータは、ワイヤラインケーブルを介してリアルタイムに制御ユニットと接続されても良い。データは続いて制御ユニットに蓄積され、貯蔵モデルを形成するのに使用される。
【0022】
先端技術で公知の多くのセンサに加えて、ツールストリング(100)は、流体の音速(または逆の測定基準では「音の遅さ(sound slowness)」)を測定するためのチューブ波を用いるセンサを備える。音響圧力パルスは、比較的小さな散乱で流体が満たされたチューブ中を伝わり、チューブの内径より大きな波長である低周波数において減衰する。低周波数のチューブ波速度Cは、以下のように表される。
【0023】

【0024】
ここで、E(ヤング率、スチール当たり2×1011Pa)、ν(ポアソン比、スチール当たり0.3)、a(外径)、b(内径)がチューブの変数であり、ρ(密度)、B(バルク率)が流体の変数である。5mmのID寸法を有し、水で満たされたスチールチューブに対して、低周波数の範囲は、約100kHzおよびそれ以下の周波数を含む。殆どの石油流体のような水より音速の低い流体に対して、低周波数の範囲は100kHzより低くなる。上記式中の変数Mは、等価な係数やチューブの剛性を考慮してもよい。所定のチューブの公知の変数、独立して測定された流体密度を用いて、流体速度cと圧縮率βが、以下のように計算される。
【0025】

【0026】
これらの式は、チューブ波速度が、自由な流体中の音速より低くなることを示す。チューブ壁の厚さが大きくなるほど、チューブは固くなり、チューブ波速度は流体速度に近づく。石油流体の回収に使用される典型的な井戸孔の実質的な寸法制限を考慮すると、変数Mは、殆どの石油流体に対するβより1桁から2桁の大きさで大きくなり、このように、チューブ波速度と流体の自由な音速との間の小さな違いを示す。流体密度が得られ、または与えられる前に、幾つかの応用では、流体速度は、以下のように見積もられる。
【0027】

【0028】
ここで、ρは見積もりまたは「一般的な」流体密度である。Mがβの10倍より大きいと仮定すると、見積もられた流体密度ρ中で10%の不確定性は、音速cでは単に0.5%の不確定性となる。これにより、実質的なチューブ波に基づくセンサが、石油流体の回収(および他の寸法の井戸孔)と結びつくような井戸孔の寸法で使用するために、組み立てることができる。
【0029】
図1、2を参照して、チューブ波に基づくセンサの具体例は、音響源と音響受信器とを備えたチューブ(200)を含む。センサおよび制御ユニット(104)の一方または双方は、とりわけ、燃焼制御回路、検出回路、およびデータ処理ハードウエアおよりソフトウエアを含む。音響源は、少なくとも1つの送信器(202)を含み、音響受信器は、少なくとも1つの受信器(204)(図2に示されたアレイ)を含む。音響源と音響受信器(204)は、例えば圧電セラミックや他の材料からなる振動子を含んでも良い。チューブ(200)は、鋼や他の材料から形成されても良い。例えば、示された送信器(202)および受信器(204)はリング状であり、丸ごとまたは分割されて、チューブ(200)の内側に納められる。
【0030】
図3を参照すると、代わりの具体例では、送信器(302)および受信器(304)がボタン状またはディスク状であり、チューブ(300)の「Tブランチ」の内側に納められる。
【0031】
本発明の具体例では、図2と図3の双方に示すように、センサの活性素子(送信器と受信器)は、チューブ波信号の強さを大きくし、チューブに沿って伝えられる拡大モード(extensional mode)のような他のモードへのエネルギー分散を緩和するために、チューブの内側の流体に直接接合される。チューブ波の音響エネルギーを、チューブの壁を通ってチューブの外側に搭載された振動子に接続することが、音響的に効率が悪いにもかかわらず、実行可能である。更に、振動子が送信器として示されているが、様々な代わりの技術が、センサ中でチューブ波を形成するために使用できることに留意すべきである。例えば、流れをオンにしたりオフにするような、流れの急速な変化は、チューブ波を形成する。しかしながら、流れを妨害するソースの周波数成分や反復速度は、圧電性ソースより制御がずっと困難である。
【0032】
本発明の形態では、示された具体例のそれぞれにおいて、音響源と、最も近い受信器アレイの受信器との間が、約2波長の距離であれば、チューブ波を完全に生み出すことができ、遠距離場で形成されるように測定することができる。この音響源と第1受信器との間の間隔は、必要に応じて変えることができる。周波数帯域に関連した幾つかのデザイン変数は、とりわけ、チューブID、送信器−受信器(TR)間隔、受信器アレイの隙間、送信器周波数応答、燃焼回路、および受信回路を含んでも良い。チューブ波の励起は、低周波数に対してより大きくなる。しかしながら、非共鳴の圧電性ソースは、周波数の関数として、12dB/オクターブの出力増加を有する。測定されたチューブ波のスペクトルは、以下の要素:受信回路と同様に、励起、振動子の応答、および電子駆動の周波数応答の組み合わせ(生産物)である。測定周波数範囲の選択は、寸法の制約や所望の試料体積の考慮を含む。寸法の制約については、チューブは、興味のあるダウンホール流体をサンプリングするために、ツールストリングに対して多くの方法で配置できる。更に、チューブは、流体が自由にチューブの中を流れるように、ツールストリングの軸に対して平行に配置しても良く、これにより、連続してチューブを「その場の」流体で満たし直すことができる。
【0033】
ワイヤラインツールに適したセンサチューブの代わりの具体例が、図4から図6に示される。それらの具体例は、チューブ(400、500)を含み、例えばこれらはツールストリング(100)に組み込まれる。集積されたチューブは、ツールストリングの外壁を通る入力開口部および出力開口部を有し、ツールの動きに応答して掘削孔の泥がそれらの開口部を通って流れ、それらの具体例を、特に掘削孔の泥音速の測定に適したものにする。ツールストリングは、チューブ(400、500)として機能する内部キャビティを備えた円筒状のボディを有する。送信器(402)と受信器アレイ(404)は、ツールストリングボディの壁の内側に沿って配置される。チューブIDおよびこれによりキャビティの直径は、興味のある周波数範囲に基づいて選択される。チューブ波は、強く励起され、より低い周波数で支配的であり、一方、他のモノポールモードは、より高い周波数でより重要になる。この文脈中で、低周波数と高周波数の範囲の間の推移は、チューブのIDに依存する。操作に関して、IDが大きいほど掘削孔の屑によりチューブが詰まる可能性がより小さくなり、泥のサンプリングの信頼性がより高くなる。チューブの材料と厚さに関しては、チューブの剛性が大きくなるほど、低周波数における分散が小さくなり、流体密度に対してチューブモードがより敏感でなくなる。
【0034】
図6の具体例は、図5の具体例と、チューブ(500)の反対側に、ツールストリングボディのセグメントが取り付けられた中央主軸(502)を含むことである。主軸(502)は、追加の剛性と強さを与える。図6の具体例では、チューブ波が形成され、主軸とツールボディの間の環帯(annulus)を伝わる。環帯中のチューブ波の特徴は、主軸の無いチューブ中の特徴(例えば図5)と類似している。先に記載された具体例のように、送信器および受信器として使用される振動子は、非共鳴(nin-resonance)の圧電デバイスでも良い。測定されたチューブ波のスペクトルは、励起、電子デバイス、および送信および受信回路の周波数応答の組み合わせ(生産物)である。振動子は、機械的な耐久性や泥流の障害回避のために選択されても良い。内部の溝に埋め込まれたリング状の振動子(分離またはセクターとしてのいずれか)や、チューブの壁を通って挿入されたT―振動子が用いられても良い。T−R間隔および受信器の隙間は、それぞれ、測定精度を上げるために、1波長のかなりの割合である。
【0035】
図7から図9を参照すると、代わりの具体例が、掘削検層(LWD)のために取り付けられる。LWDの具体例は、チューブ(802)で接続された2つのポート(700)を含む。泥チャンネル(804)は、必要であれば、チューブ(802)から離れるように通る。掘削孔の泥は、ドリル操作中にチューブを通って流れ、これにより、局所の泥についての測定を確実にできる。振動子(806)がチューブ中に配置され、既に上で述べたような方法で操作される。
【0036】
図10は、チューブ波を用いた層流体の音速を測定するために取り付けられる代わりの具体例を示す。この具体例では、ツール(1000)は、横方向の引き出しチューブ(1002)、測定チューブ(1004)、およびサンプルホルダーチャンバ(1006)を備える。引き出しチューブ(1002)は、ツールストリング(および掘削孔)で規定される軸を横切って配置され、テストのために層から流体を引き出すために、掘削孔の壁(1008)に向かって、その中に押しつけられる。横方向のチューブは、また掘削孔中の流体、即ち掘削孔流体をサンプリングするために用いられても良い。これら双方の場合、テストされる流体は測定チューブ(1004)中に流れ込み、ここで既に上で述べたようにテストされる。測定チューブ(1004)は、測定後に排出され、連続した測定が新しいサンプルに対して行われる。特に、流体は、サンプルホルダーチャンバ(1006)の中に排出される。分離バルブが、引き出しチューブ、測定チューブ、および排出チャンバを、互いに、選択的に分離するために用いられる。代わりに、流体が、排出チャンバではなく、直接掘削孔中に排出されても良い。
【0037】
図1から図10は、本発明の形態を示し、流体の音速測定が、時間領域または周波数領域のいずれかで行われる。時間領域で測定するために、圧力パルスが音響源で形成され、受信アレイを横切って受信される。公知の送信器の発火時間(firing time)と受信器の到達時間に基づいて、飛行時間が測定されて記録される。チューブ中の流体の音速は、飛行時間データから計算される。本発明の1つの形態では、飛行時間を測定する1の方法が、最初の動作検出である。アレイ状の複数の受信器を用いて、例えば、Kimball, C.V. and Marzetta, T.L., Semblance Processing of Borehole Acoustic Array Data, Geophysics, Vol. 49, No. 3, March 1986, p. 274-281 に記載された"Slow Time Coherence"のような標準音波処理技術が適用される。使用できる他の標準処理技術は、例えば、Lang, S,W,, Kurkjian, A.L., McClellan, J.H., Morris, C.F., and Parks, T.W., Estimation Slowness Dispersion from Array of Sonic Logging Waveforms, Geophysics, Vol. 52, No. 4, April 1987 pp 530-544 に記載されたProny法である。Pony法は、周波数の速度依存性について仮定を設けず、速度分布を周波数の関数として調査するのに有用である。しかしながら、Prony法は、slow time coherenceより、計算的により徹底した傾向にある。周波数領域で測定するために、Chung, S.K. and Hsu, C.J., A preliminary Study of Discrete Frequency Tube Wave Logging, GEO-003, SDR Research Note, June 1986; および、Chung, S.K. and Hsu, C.J., Methods and Apparatus for Discrete Frequency Tube Wave Logging of Boreholes, US patent 5,331,604, 7/19/79 が使用されての良い。上述の技術に関して、位相(phase)は周波数の関数であり、時間の関数としての圧力パルスと反対であり、受信器で測定され音速を計算するために使用される。
【0038】
本発明の他の形態では、チューブ波に基づくセンサが、流体の音速に関する他の測定に使用できる。例えば、チューブ波速度は、圧力を上げる間または下げる間に、気体の存在を検出するために、連続して測定される。液体中の気泡の存在は、平均バルク圧縮率を増加させ、これにより、音速を減らす。チューブ波速度は流体速度に非常に関連するため、井戸の深さによる通常の傾向、または泥の演繹的知識に基づき期待される範囲のいずれかからのチューブ波速度の偏差は、泥中の気体の存在の指標となる。センサは、また、流体粘性測定にも使用できる。チューブ波の減衰は、チューブの壁や泥のバルク中での消失に関係する。このように、チューブ波データから泥の消失を見積もることが可能である。
【0039】
なお、先の例は単に説明を目的とするものであり、本発明を限定するものと解釈するものではない。例示の具体例を参照しながら本発明が説明されたが、ここで使用された文言は、限定する文言ではなく、説明や開示のための文言であると理解される。添付された請求の範囲内で、その形態において、本発明の範囲や精神から離れることなく、現在述べられたように、および補正されたように、変形を行うことができる。本発明は、特定の手段、材料、および具体例を参照しながらここで説明されたが、本発明はここで述べられた特定事項に限定することを意図するものではなく、むしろ、本発明は、添付された請求項の範囲内のような全ての機能的に等価な構造、方法、および使用に拡張される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
地下層の分析を容易にする装置であって、
流体で満たされたチューブと、
チューブのキャビティ内の流体を通って伝わる少なくとも1つの音響信号を形成する、少なくとも1つの音響送信器と、
少なくとも1つの音響信号を受信する、少なくとも1つの音響受信器と、
少なくとも1つの音響信号の第1の受信した音響信号の特徴を、第2の信号と比較して、比較に基づいて流体の特性を計算する回路と、を含む装置。
【請求項2】
第2の信号は、少なくとも1つの他の受信された音響信号、最初の受信された音響信号の送信、およびそれらの組み合わせ、からなるグループから選択された請求項1の装置。
【請求項3】
比較は、音響信号の飛行時間、および周波数の関数としての位相の変化、の少なくとも1つを示す請求項1の装置。
【請求項4】
特性は、流体の音速、流体中の気泡の存在、および流体の粘度、の少なくとも1つを示す請求項3の装置。
【請求項5】
少なくとも1つの音響送信器は、音響振動子を含む請求項1の装置。
【請求項6】
少なくとも1つの音響受信器は、アレイ状の音響振動子を含む請求項5に記載の装置。
【請求項7】
音響振動子は、リング形状、ボタン形状、ディスク形状、またはそれらの組み合わせである請求項6に記載の装置。
【請求項8】
音響送信器と音響受信器は、直接流体に接続された請求項1に記載の装置。
【請求項9】
流体は、掘削孔の泥を含む請求項1に記載の装置。
【請求項10】
流体は、層流体である請求項1に記載の装置。
【請求項11】
チューブは、ツールストリングの一部である請求項1に記載の装置。
【請求項12】
更に、チューブのキャビティを通って配置され、チューブの対向する端部の上にツールストリングの部分を固定する主軸を含む請求項11に記載の装置。
【請求項13】
地下層の分析を容易にするための方法であって、
キャビティを有するチューブを、ダウンホールの流体で満たされるようにする工程と、
少なくとも1つの音響送信器を用いて、チューブキャビティ中のダウンホール流体を通って伝わる少なくとも1つの音響信号を形成する工程と、
少なくとも1つの音響受信器を用いて、少なくとも1つの音響信号を受信する工程と、
少なくとも1つの音響信号の第1の受信した音響信号の特徴を、第2の信号と比較する工程と、
比較に基づいて流体の特性を計算する工程と、を含む方法。
【請求項14】
更に、少なくとも1つの他の受信された音響信号、最初の受信された音響信号の送信、およびそれらの組み合わせ、からなるグループから第2信号を選択する工程を含む請求項13に記載の方法。
【請求項15】
音響信号の飛行時間、および周波数の関数としての位相の変化、の少なくとも1つを示す比較工程を含む請求項13に記載の方法。
【請求項16】
流体の音速、流体中の気泡の存在、および流体の粘度、の少なくとも1つを示す特性を含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
少なくとも1つの音響送信器は、音響振動子を含む請求項13に記載の方法。
【請求項18】
少なくとも1つの音響受信器は、アレイ状の音響振動子を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
音響振動子は、リング形状、ボタン形状、ディスク形状、またはそれらの組み合わせである請求項18に記載の方法。
【請求項20】
音響送信器と音響受信器は、直接流体に接続された請求項13に記載の方法。
【請求項21】
流体は、掘削孔の泥を含む請求項13に記載の方法。
【請求項22】
流体は、層流体である請求項13に記載の方法。
【請求項23】
チューブは、ツールストリングの一部である請求項1に記載の装置。
【請求項24】
更に、チューブのキャビティを通って配置され、チューブの対向する端部の上にツールストリングの部分を固定する主軸を含む請求項23に記載の方法。
【請求項25】
層の分析を容易にするためのデバイスであって、
流体で満たされたチューブと、
チューブのキャビティ内の流体を通って伝わる1またはそれ以上の音響信号を形成する、少なくとも1つの音響送信器と、
1またそれ以上の音響信号を受信する、少なくとも1つの音響受信器と、
1またはそれ以上の音響信号の第1の受信した音響信号の特徴を、第2の信号と動作可能に比較して、比較に基づいて1またはそれ以上の流体の特性を計算する手段と、を含むデバイス。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−502241(P2011−502241A)
【公表日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−513505(P2010−513505)
【出願日】平成20年9月30日(2008.9.30)
【国際出願番号】PCT/US2008/078214
【国際公開番号】WO2009/055209
【国際公開日】平成21年4月30日(2009.4.30)
【出願人】(509082178)シュルンベルジェ ホールディングス リミテッド (16)
【Fターム(参考)】