説明

チーズケーキの大量生産方法

配合すべき必須の原材料としてクリームチーズを使用し、かつそれを焼いた、ベークトタイプのチーズケーキを得るためのチーズケーキの大量生産方法が提供され、その結果、そのチーズケーキは、デザートとして適した望ましい物理的特性および優れた風味を有し、大量に生産できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チーズケーキの大量生産方法に関する。
【背景技術】
【0002】
最近、米国およびヨーロッパと同様、韓国においても、ケーキは、アイスクリーム、ヨーグルト、ケーキ、フルーツ、プディング、乳製品、ゼリーなど、デザートとして分類される各種食品の中で、好まれるデザートとしての重要性が増大し続けている。韓国の食品産業において、ケーキの大量生産に関する技術は、ヨーロッパ諸国、米国および日本など、この分野で進んだ技術を有するこれらの国々の先導にならって発展して来た。現在、冷却および/または冷蔵貯蔵で保存され、大量生産されるショートケーキは、好ましいデザートとして特にヨーロッパおよび米国において普及している。
【0003】
国内状況をみると、伝統的な手作りケーキ類を製造、販売する、ホテル、菓子店またはケーキ店のベーカリーなど、様々なベーカリーが発達しつつあるが、そのようなケーキ類は、流通の際の微生物増殖を抑制することに加えて、個々の包装および流通に関して困難性を抱えている。この理由により、従来のケーキ型デザート類は、通常、その地域のベーカリーによって焼かれかつ販売され、大量生産品ではない。さらに、連続的製造法によってケーキ類を大量に生産するための技術は、現在、実質的には提案されていないと思われる。
【0004】
デザート類の大量生産に関する研究開発および技術の実際例が韓国で開示されているが、それらのほとんどは、特定タイプのデザート類、例えば、フルーツゼリー、ヨーグルト、フルーツプディング、アイスクリームまたはクッキーだけに応用される。しかし、現代消費者の多様な嗜好および摂食習慣に適したケーキ型デザート類のための大量生産技術の開発に関する実際的事例は極めて稀である。
【0005】
デザート類を大量生産する分野においては、例えば、様々な風味および色彩を有する冷蔵デザート類の製造方法を開示している韓国特許公開KR2002−0069947(J.Y.Leeら、韓国特許出願2001−0010547)、フレーバーの改善された酸味のあるゼリーデザート類の製造方法を開示している韓国特許公開KR2000−0065637(W.D.Chungら、韓国特許出願1999−0012084)、および機能性プディング類の製造方法およびアイスクリーム、ヨーグルトなどを調製するためのその他の技術を開示している韓国特許公開KR2002−0046344(D.Y.Kwon、韓国特許出願2000−0075675)を含む従来技術が提案されている。
【0006】
しかし、消費者の生活様式の動向および多様な嗜好を満足させる観点から、より多くの多様性を必要とするのが通常である食品としてのデザート類の特性を考慮すると、様々な種類のデザート類がなお求められている。
【0007】
したがって、本発明は、特定のケーキ型デザート類のこれまで提案されていない新規な大量生産方法を開発することを目的とする。
【0008】
より詳細には、スポンジ状ケーキおよびショートケーキの調製方法を開示している特開平9−266749(Tsuruta Takahiro、特願平8−77839)および特開平7−135922(Ishi Akira、特願平5−314481)を含むケーキ型デザート類に関する技術文献がある。しかし、スポンジケーキは、デザートの分類には属さず、一方、生クリームをトッピングしたショートケーキは、理想的なデザートではあるが、該ケーキを大量に生産、販売する場合には、流通の条件および期間を保証する上で困難を伴う。
【0009】
ケーキ型デザート類の中で、チーズケーキは、ホテル、カフェおよびベーカリーにおいて消費者に人気を得ている。チーズケーキは、市場シェアのより大きな比率を、すなわち、韓国におけるケーキ型デザート類に対する10億韓国ウオンの市場の中で、2001年には10パーセントのシェアを、2002年には20パーセントのシェアを占めるに至っており、それによって、消費者の選択の中で主導的地位を占めている。しかし、上述のその他のケーキ製品と同様、チーズケーキの市場も、その地域でケーキを手作りして消費者に販売するベーカリーが中心である。これが最も一般的な販売手法であり、そこでは消費者が直接ベーカリーに来て、そこでケーキを入手する。チーズケーキは、通常、1個当たり3,500〜4,000韓国ウオンのような若干高価な値段で消費者に販売される。
【0010】
したがって、本発明は、より低価格、より広範な入手可能性、および製品を消費できる方法および時間に関する利便性の点で消費者にとっての利点を有する、チーズケーキの大量生産方法を提供する。また、該方法は、衛生上の安全性と共に大量生産および流通を確実にする。Callen Dennis M.らの所有する米国特許第4163806号は、クリームチーズを砂糖および非乳発泡トッピング材料と混合し、得られた混合物を冷蔵し、次いで、熟成することによる、焼かれていないチーズケーキの調製方法を開示している。この方法は、加熱および殺菌工程を伴っていないので、流通期間を望ましい期間内に保証することに関して困難を伴う。Sakamoto Kenshiらの所有する米国特許第4425369号は、チーズケーキを製造するためのエマルション組成物を開示している。しかし、そのエマルション組成物は、最終のケーキ製品を調製するのに有用な原材料形態であるに過ぎず、工業的応用の見地からみると完成された製品形態に結び付かない。
【0011】
上記の状況下で、本発明者らは、消費者の生活様式および多様な嗜好に適合し、消費者の居住地区に関係なく運搬し、楽しむのに便利であり、また、その流通期間を容易に保証する改善されたチーズケーキ、ならびに該チーズケーキの大量生産方法を見出すべく徹底的に研究した。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明者らは、運搬上の不便さ、および流通許容期間の短さなど、チーズケーキの調製に関するこれまでの技術に伴う上記問題の解決を試みた。また、製品の優れた風味を可能にする所望の工業的製造特性を有する、チーズケーキの原材料としてのチーズベースのシートの特定な配合比率を見出すべく、さらには、チーズケーキの調製において殺菌を確実にする焼成工程を開発すべく徹底的に研究した。結果として、本発明を完成した。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、チーズケーキの大量生産方法に関する。より詳細には、本発明の目的は、優れた風味と望ましい工業的製造特性を有する、チーズをベースにした原材料、および微生物に関する安全性と同時に多様な消費者の好みを満足させる焼成工程を提供し、それによって、流通期間を容易に保証すると同時に、それを運搬および楽しむための利便性を有する、消費者の生活様式の動向および嗜好に適合した新規なチーズケーキ製品を得ることである。
【0014】
本発明による方法は、クリームチーズおよび卵などを含む本体材料と砂糖またはブドウ糖などの甘味材料を混合する工程、その混合物をパンに仕込み、次いで充填した混合物を形のある材料に成型する工程、成型された材料をオーブン中で焼き、焼き製品を滅菌し、次いで、製品の形状を保つために処理された製品に可塑性を与える工程、冷却貯蔵の効率を高めるために熱を除去した後、可塑性を与えた製品を冷却および冷蔵する工程、最終段階として製品を10個のケーキ片に切断し、次いで流通期間を保証するためにそれぞれのケーキを包装することによって冷えた製品を分割および包装する工程を含む。
【0015】
以下、本発明をより詳細に説明する。この説明では、例えば、1.チーズケーキの組成についての研究、2.流通期間を保証するための殺菌/焼成工程についての研究、3.以下の実験例1〜3中の本発明による大量生産工程に関連する研究を明らかにする。さらに、本発明によるチーズケーキの大量生産方法を、以下の実施例1および2で説明する。
【発明の効果】
【0016】
本発明を利用するチーズケーキの大量生産方法により、消費者の生活様式の動向および嗜好に適合した優れた品質、流通期間を保証するための好ましい貯蔵能力および安全性を有するチーズケーキは、多様なケーキ型デザート製品を生み出す。したがって、本発明は、食品産業において実際に応用可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、次の好ましい実験例を参考にして本発明をより詳細に説明する。しかし、次の例は、例示の目的のための好ましい実施形態としてのみ提供するものであり、本発明をそれに限定することを意図しないことに留意されたい。
【0018】
実験例1:チーズケーキの組成に関する研究
次の実験は、韓国人消費者、特に、デザート製品に対する主要な消費者群を構成する20歳台の女性を使って実施した。
【0019】
(1)チーズベースの材料の研究
チーズケーキを評価するための重要な因子としてのチーズケーキの風味品質を20歳台の女性を参加させて調査するために、彼女らの中から200名のパネルを、チーズケーキのチーズベースのシートに関する風味優先度の調査に供した。その調査から、チーズケーキの最も重要な風味品質は、優先度の順序で、<1>チーズフレーバー、<2>柔らかさ、および<3>しっとり感/テクスチャーであることが見出された。このような主要な品質を満足させるには、風味品質のそれぞれを評価する能力のある代表的な感覚特性の選択を必要とした。この実験については、記述分析技術を利用した。上記分析の結果として、感覚特性の構成要素は、下表1に示すように様々な風味特性の代表であり得ることが判った。次の風味特性の他に、さらに、黄色着色度、甘さおよび酸味を選択した。
【0020】
【表1】

【0021】
上記の風味特性を製品に実際的に応用するために、最も重要なパラメータの1つは、チーズケーキ混合物の組成である。本研究においては、上記チーズケーキ混合物の風味品質を達成するために、製品を手作りするベーカリーで入手可能な、従来からのチーズケーキに主として使用される原材料を選択し、最終チーズケーキ製品の風味品質に対する各原材料の影響を調べた。
【0022】
まず、チーズケーキで欠かさず使用される原材料としては、クリームチーズ、小麦粉、砂糖、食塩、卵、生クリーム、レモンジュースおよびベーキングパウダーなどが含まれ、そのすべてがチーズケーキの製造で一般的に使用される。最終製品は、製品を調製するために製造業者および/または工程によって規定される原材料の組成(または含有量)に基づく実質的に異なる風味を有するが、チーズケーキ混合物の組成は、今日のデザート市場における製造業者の経験および/またはノウハウに応じて規定されるのが最近の傾向である。
【0023】
本発明では、風味特性に対する原材料の効果を明瞭に把握するために、チーズケーキの主要な原材料とその風味特性との間の相関を調べた。調査の結果、下表2に示すような、風味特性に対して最も効果のある原材料の因子、およびそれらの相関を見出した。
【0024】
表2に示すように、チーズケーキの必須成分、すなわち、クリームチーズは、総合的着色(黄色度)、酸味、チーズフレーバー、熟成ミルクフレーバー、湿り度、および伸び特性に関して「正」の相関を、一方、甘味および焼き小麦粉フレーバーに関して「負」の相関を示した。
【0025】
【表2】

【0026】
上表2からの結果に基づいて、原材料の含有量を精細に調節することによって優れた風味およびテクスチャー品質を得た。流通の間に最終製品の当初の形状を維持するのに望ましいチーズケーキ混合物の組成について本研究を反復実施した。結果として、表3に示すような、最終チーズケーキ製品の大量生産および/または流通に対して望ましく規定された、数字で表した範囲の原材料組成が得られた。表3に示した配合比率を適用すると、代わりの複雑な混合工程(クリームの発泡工程など)なしに、すべての原材料をミキサー中で混合するだけで優れた風味品質を有するチーズケーキを調製することが可能である。
【0027】
【表3】

【0028】
(2)チーズケーキの組成についての研究
上記(1)の研究は、チーズケーキ製品のチーズベースのシートに関してだけの発明に関する。
【0029】
しかし、チーズケーキの独自性および多様性を具体化するため、チーズベースのシートだけで作ったチーズケーキの他に、クッキー、ソース、チーズベースのシート、および砂糖シロップを含む4層を有するケーキの製造方法をさらに提案および開発した。
【0030】
詳細には、優れたデザートとしての4層を有するチーズケーキは、クッキーで満たした底基部を調製すること、ソースおよびチーズベースのシートを順々に仕込むこと、調製した積層物をオーブン中で焼き、焼いたケーキを砂糖シロップで被覆することによって形成される。クッキーは、好ましくは、チーズベースのシートの柔らかさにバリバリした特性を付加することによって様々なチーズケーキを提供し、消費者に変わった口当たり感を与えるために使用される。より詳細には、使用されるこのようなクッキーとしては、様々なタイプの口当たり感を提供するための、一般的なプレーンクッキー、またはチョコレート、アーモンドナッツ、およびオートミールなどの少なくとも1種を含むクッキーが挙げられる。さらに、ソースとしては、特に限定はしないが、ブルーベリー、ストロベリー、アップル、ナシ、マンゴー、ライム、レモン、オレンジ、ピーチ、マンダリン、グレープフルーツ、トロピカルフルーツおよび柑橘類などのフルーツ類を、ならびに砂糖と共にメープル、コーヒー、および液状チョコレートをそれぞれ含むメープルシロップ、コーヒーシロップおよびチョコレートシロップなどのシロップ類を主として含有する果物加工ソースが含まれる。別法として、チーズ本来の豊かな風味を好む消費者のためには、シロップのないプレーンチーズケーキ製品を調製する。
【0031】
実験例2:流通期間を保証するための焼成工程に関する研究
チーズケーキは、焼成工程により、一般に、スフレ型およびレア型のケーキに分類される。スフレ型チーズケーキは、オーブン中で焼成工程を実施することによって作られる。焼成工程とは、焼けた香り、色合いおよび風味を与えるために、混合した生地を焼くこと、および流体のドウを固体形態の製品に加工することを指す。焼成工程は、製品のテクスチャーを作り出し、ほとんどの場合、殺菌作用により細菌および/または微生物を除去することもできる。
【0032】
したがって、本発明は、大量生産チーズケーキの開発における多様な消費者の好みに基づいた、焼いたような風味および色合いを調節するために、および、同時に流通期間および衛生上の安全性を保証し、かつ大量生産および流通環境(国内流通環境を考慮して)に好ましいテクスチャーを生み出すために、チーズケーキを調製するのに焼成工程を使用し、その焼成工程を徹底的に検討した。
【0033】
(1)風味品質に対する焼成工程の影響
風味品質に対する焼成工程の効果および消費者による風味の評価を調べるために、上記で提案した組成物の配合比率を有する3種の混合物を準備し、次いで、可塑化時間がそれぞれ50、60および70分であることを別にすれば、同一条件の温度および湿気の下でその混合物を焼くことによって3種の製品を作った。得られたチーズケーキ製品を消費者からなるパネルに提供し、パネルは、試験して、製品の不快な特性および品質を記述した。結果として、パネルは、70分間焼成した製品については焦げた苦い風味などの不快な風味を、50分間焼成した製品については油っぽい風味を感じた。しかし、60分間焼成した製品について、パネルは、特に異常な風味を感知しなかった。
【0034】
さらに、消費者の選択に対する焼成工程の影響を確認するために、30名のパネルに、チーズケーキの外観品質、総合的風味品質、ならびに柔らかさおよびしっとり感のレベルに関して評価するための製品を個々に付与した。評価後、パネルの個々の選択を最低等級の1から最高等級の5までの格付尺度に従って記録した。
【0035】
結果から、製品に対する総合的風味品質の選択は、焼成時間60分に対して最高の格付け3.89、50分に対して3.61、および70分に対して2.98の順序であった。このような評点は、偏差で95%の信頼性を有した。外観品質の評価は、焼成時間に依存する製品の表面色について実施した。結果として、外観品質の選択は、焼成時間60分に対して最高の格付け3.60、50分に対して3.52、および70分に対して1.96の順序であった。このような評点は、偏差で95%の信頼性を有した。製品の柔らかさについての評価から、柔らかさの選択は、焼成時間50分に対して最高の格付け4.00、60分に対して3.92、および70分に対して3.25の順序であった。このような評点は、偏差で95%の信頼性を有した。さらに、製品の湿り度の評価から、その選択は、焼成時間50分に対して最高の格付け3.66、60分に対して3.52、および70分に対して3.28の順序であった。このような評点は、偏差で95%の信頼性を有した。
【0036】
したがって、上記評価を総合的に考えると、パネル、すなわち、消費者は、60分間焼成した製品を、次いで50分および70分間焼成した製品を、この順序で好んだ。
【0037】
(2)細菌および/または微生物に対する安全性に与える焼成工程の影響
焼成工程は、滅菌工程として焼き製品にとって重要なので、細菌および/または微生物に対する安全性に与える焼成工程の影響に関する検討も、好みの調査と同時に実施した。
【0038】
まず、チーズケーキの製造中に汚染されがちな原材料および関係する微生物種を試験し、研究および検討で使用される対照としての微生物を選択するために、焼成工程前のすべての原材料を高温で培養し、その培養液中に存在する微生物を分離、同定した。分離および同定の結果として、例えば、耐熱性微生物として小麦粉などの穀類から検出されたBacillus subtilis(枯草菌)、Staphylococcus epidermis(表皮ブドウ球菌)、Straphylococcus scuiri、土壌および小麦粉などの穀類中に存在する真菌に属するAltenaria alternate、Penicillium aurantiogriseum、Rhizopus oryzaeおよびAspergillus oryzae、チーズの起源であるPenicillium expansumおよびCryptococcus infirmo−miniatus、ならびにフルーツソースに由来する微生物Penicillium expansumを含む、生き残った細菌が検出された。
【0039】
上記研究の結果から、チーズケーキ混合物中で汚染された主な原材料は小麦粉、チーズおよびフルーツソースであり、一方、耐熱性微生物の主な汚染物質は小麦粉であることが見出された。また、バチルス(Bacillus)が、好ましくは、焼成工程の殺菌効果を判定するのに役立つ対照微生物であることが判った。
【0040】
次に、実験基準に基づいてオーブンの温度を頂部で165℃に、底部で150℃に設定し、次いで、k型耐熱温度計およびデータロガーの双方を使用して、異なる時間に製品の中心部分の温度変化を測定することによって、焼成工程の間に変化する温度プロフィールを調べた。結果を図1に示す。
【0041】
50、60、70および80分の焼成時間で、焼成工程前のチーズケーキ生地中の総細菌数を焼成工程前のチーズケーキ製品中のそれと比較することによって、上記温度での焼成時間に依存する微生物の死滅に対する効果を判定した。生地中の総細菌数は、焼成工程前で1,250cfu/gであった。生地を50、60、70および80分間焼成工程に付すと、細菌数は、それぞれ、30以下、0〜10、0〜10、および0〜10cfu/gを示した。
【0042】
より詳細には、混合物を真菌株としてのバチルス(Bacillus)で汚染させた後、焼成工程を通過して得られたバチルス(Bacillus)の死滅度を観察した。観察された結果から、50分間の焼成工程後のバチルス(Bacillus)数はほとんど変化しなかったが、一方、60および70分間の焼成工程の場合には、その数が1回通過(1 log cycle)で約10cfu/gまで減少した。低下したこのようなバチルス計数値は、製品の貯蔵中にこれ以上増加しなかった。したがって、消費者の好み(評価から得られた総合的な風味品質、外観、柔らかさおよびしっとり感など)および微生物死滅の状態を考慮して、チーズケーキ製品に対する焼成時間は、好ましくは約60分であると予想される。
【0043】
より詳細には、焼成工程が60分間のチーズケーキ製品を10℃の冷蔵貯蔵で2週間保持した場合、微生物レベルは微生物菌株の総数に関して10cfu/g以下であった。しかし、製品を10℃で冷蔵庫中に3週間貯蔵すると、微生物濃度は10,000cfu/g以下であり、それによって、10℃の同一温度において2週間近辺での菌株の急速な増加を示した(表4参照)。
【0044】
【表4】

【0045】
実験例3:工業的応用に適した製造プロセスに関する研究
混合、仕込、焼成、冷却および冷蔵、切断および包装の工程を含む、工業的応用に適した本発明によるチーズの製造方法を開発した。工程のそれぞれを、次のように処理順に詳細に説明する。
【0046】
(1)混合工程
クリームチーズ、小麦粉、砂糖またはブドウ糖をベースにした甘味剤、卵、着香剤などを含む原材料をミキサーに導入する。ミキサーを閉じた後、高速で攪拌する。混合工程は、自然には一緒に混和しない原材料の中の少なくとも2つを乳化するための第1混合工程、および、原材料中の少なくとも1種が、第1混合段階以外の混合工程の間に容易に発泡するのを促進し、それによって混合物の比重および粘度を調節するための第2混合工程に分割される。
【0047】
第1混合工程は、低速攪拌および高速攪拌工程に分割される攪拌処理を含む。低速攪拌工程は、原材料を柔らかくすることによって粘度を低下させ、最小の空気添加で原材料を乳化する。高速攪拌工程は、混合物の温度平衡を維持しながら混合工程を完結するためにある。
【0048】
混合物および最終製品の特性に対する低速攪拌時間の影響を次表5に示す。表5に示すように、一定の低攪拌速度において攪拌時間が増加すると、粘度が低下する。このような粘度低下は、乳化の結果としての高粘度液体の物理的特性変化によって引き起こされると思われる。
【0049】
【表5】

【0050】
(2)仕込工程
この工程で、クッキー、ソース、チーズベースのシートおよび砂糖シロップの積層物を含む4層を有するチーズケーキ製品を形成するための考え方は、本発明によってのみ消費者が製品の独自性および多様性を楽しむことを可能にする本発明から引き出される。このような4層からなるチーズケーキは、原材料を次の順序で仕込む段階を含む仕込工程を利用する機械的に適用できる特性を用いて調製し、形を作ることができる。
【0051】
1.クッキーの仕込み
直径180mmの丸型パンに、直径176mmの丸型クッキーを仕込む。クッキーは、人造バターいわゆるマーガリン、精製糖、料理用食塩および着香剤を一緒に混合してクリームを作ること、篩い型の網を通してケーキ粉を添加すること、次いでこの混合物を練合して生地にすること、棒を使用して生地を転延して厚さ4mmの平板を作ること、直径176mmの円形型枠でその板を打ち抜いて丸いクッキーベースを得ること、および最後にそのクッキーベースをオーブン中で焼くことによって調製できる。
【0052】
2.フルーツソースの仕込み
フルーツソースは、チーズに起因する油っぽい風味を除去するのに、およびチーズケーキに多様性を付与するのに有効である。フルーツソースは、デンプン、ゲル化剤を用いて前処理し、その粘度を、フルーツソースを機械的に仕込むのに十分な、BOST−BIG粘度計で測定して約4〜7cmの範囲に調節する。果肉は、仕込み装置のノズルを容易に通過する大きさの断片に破砕する。
【0053】
3.チーズベースのシートの仕込み
チーズベースのシートは、高速攪拌機の攪拌時間を調節することによって0.93〜0.95の範囲の比重を有する。また、チーズベースのシートは、機械的に仕込可能な70〜100dPasの範囲の粘度を有する。丸型パンに、上記のように調製されたクッキー、フルーツソースおよびチーズベースのシートを順番に仕込んだ。比重および粘度をその規定された範囲に調節すると、フルーツソースとチーズベースのシートとの相互混合、および/または層の相互分離なしに、4層チーズケーキの形状を維持することが可能である。
【0054】
チーズケーキ製品の大量生産では、チーズベースのシートの比重を一定水準に調節することによって、多くのサンプルが同一の高さを有することができる。このような比重は、混合速度および混合時間の調節、および高速攪拌機の温度を管理することによって統御できる。
【0055】
4.砂糖シロップの仕込み
砂糖シロップは、チーズケーキ製品の表面に、より大きな視覚的魅力を与えるために、湿って輝いて見える効果を与え、また、製品の表面に被覆層を形成し、微生物による汚染およびその増殖を抑制する。砂糖シロップとしては、砂糖溶液にペクチンゲルなどのゲル化剤を添加し、次いでその溶液を熟成することによって得られるのが通常である商業的に入手可能な砂糖加工製品を挙げることができる。水と砂糖溶液の配合比率は、1:0.5〜2の範囲内で自由に調節し、望ましい粘度を獲得する。さらに、砂糖溶液中で増殖するのが通常である酵母を除去するために、上記混合物を、さらに、85℃で15分間またはそれ以上加熱すること、滅菌すること、および粘度を低下させるためにその温度に維持すること、次いで、その熱い希釈溶液をチーズケーキの表面に被覆するように噴霧ノズルで噴射することからなる後処理にかける。
【0056】
(3)焼成工程
典型的な工業用オーブンまたはいわゆる「トンネルオーブン」を使用する本発明の焼成工程は、トンネルオーブン内に蒸気を導入することによって達成される。
【0057】
通常のトンネルオーブンは、製品の連続大量生産に適用可能であるが、そのオーブンは、丸型パンを送入する入口および焼成工程後に製品を排出する出口を有し、その双方とも閉止されないので、通常の密閉非連続式オーブンを用いるよりも、製品中の水分がより速くかつ/またはより容易に蒸発するという欠点がある。
【0058】
しかし、デザートに要求される本来の特性としての湿って柔らかな口当たり感を得るために、製品には、水分の蒸発ができる限り顕著に阻止されることが求められる。このことに関し、高い蒸発度を有するこのようなトンネルオーブンは、そのままのオーブンを利用するだけで製品を具体化するには技術的側面で限定される。したがって、本発明は、焼成工程の間中に開けられるオーブンの入口に蒸気を導入する設計方法を含み、それによって、該方法を、チーズケーキ製品に含まれる水分の蒸発を最小化するように構成した。
【0059】
焼成工程中のチーズケーキに対する蒸気の効果を解析するために、焼成工程中に蒸発する水分量を、その1つは焼成工程中に蒸気を導入しない場合、もう1つはオーブンの入口に蒸気を導入する場合の2つの場合で比較した。蒸気を供給しない焼成工程を含む1番目の場合には、焼成工程中に製品から蒸発した水分量は、焼成工程前の当初製品の総重量を基準にして約8〜9重量%であった。他方、オーブンの入口を通して蒸気を導入する2番目の場合には、その蒸発した水分量は、当初製品の総重量を基準にして4〜5重量%であった。
【0060】
上で述べたように、オーブンの入口に蒸気を導入することによって、水分蒸発量の低減につながり、製品のより高い収量の達成をもたらす。また、その製品は、柔らかく湿った口当たり感を与えるので、現代消費者の多様な風味選択に適合したデザート製品を得ることができる。
【0061】
トンネル型蒸気オーブンの導入により、次のような多少の利点が得られる。第1に、デザート製品の製造において湯煎加熱の形態で供給される工業用水の量が著しく低減すると、工業用水による製品の汚染を防止することが可能であり、それによって衛生的な製造が達成される。第2に、トンネルオーブン中の蒸気流の圧力および量を調節することによって、水分含有量およびその水分含有量によって生み出される口当たり感を容易に調節できる。第3に、蒸気は、オーブン中に導入され、乾式加熱を使用する伝統的なオーブンとは対照的に、湿式加熱を使用する焼成工程を可能にする。
【0062】
湿式加熱は、製品を徐々に加熱し、乾式加熱と対照的に製品に湿り感を付与し、それによって、湿式加熱を利用する焼成工程は、チーズケーキ、スフレ、プディングなどのより高い水分含有量を有する繊細なデザートを製造するのに好ましい。
【0063】
これに対して、乾式加熱は、温度を湿式加熱よりも短時間で急速に上昇させ、その結果、それが、製品の表面色を調節し、製品を膨張させ、望ましい最終製品の形状を提供する。
【0064】
ケーキなどのデザートの表面色は、糖類の加熱によって形成される熱分解および/または熱酸化物質に起因する褐変反応によって、実質上決定される。このような褐変反応は、糖類または糖類を含む水溶液を高温で加熱する際に起こるのが通常である。したがって、ケーキの焼き色のために必要なら、液状の混合物に焼成、熟成および乾燥の段階を通過させ、最終段階で、例えば褐変反応を起こすに十分な、頂部が165℃以上のオーブン中でその表面を着色すべきである。チーズケーキの色付けのためのオーブン頂部温度は、好ましくは、165〜180℃の範囲である。
【0065】
(4)冷却/冷蔵工程
冷却/冷蔵工程は、焼成工程後のチーズケーキから熱を取り除き、冷蔵下にチーズケーキを保つに十分な冷蔵温度にまで急速に低下させ、かつ微生物の増殖を防ぐためにある。
【0066】
この工程は、焼成工程後のチーズケーキを冷却室内に移動させること、およびそのチーズケーキをその場所に約30分間保持し、冷却を加速するために焼成工程で使用したパンを取り除くことからなる。その後、チーズケーキを、本冷却段階下、5℃以下の冷蔵庫に約1時間入れ、理想的な物理的特性および硬さを有する、中心部分が10℃の温度を有する冷蔵状態の最終製品を製造することになる。
【0067】
(5)切断工程
切断工程は、直径18cmの最終丸形製品を滅菌状態下で断片に分割し、個々の一片を得ることからなる。結果として、各チーズケーキ片は、使い捨て容器で個々に包装され、消費者に提供され、消費者は、時間および/または機会の如何にかかわらずそのケーキを簡便に楽しむことができる。丸いチーズケーキを切断する場合には、円形の回転台を回転させながら、その中心点から一定角度の直線で均等にケーキを分割する熟練が要求される。例えば、ケーキを8片に分割するには、回転台を45°の角度で回転しなければならない。同様に、回転台が36°の角度で回転すれば丸いケーキは10片に分割され、一方、回転台を30°の角度で回転させれば12片のショートケーキが得られる。
【0068】
(6)包装工程
冷却および切断工程を終えた後の完成したチーズケーキ製品を滅菌状態下で三角形のプラスチック容器で包装し、次いで密封する。ここで、酸素除去剤などの微生物学的安全性を強化するための補助剤を、チーズケーキと一緒に包装中に入れると、製品は、冷蔵状態での流通中でさえ少なくとも2週間は安全であり得る。
【0069】
上述のように、(1)〜(6)の工程を含む本発明方法は、チーズケーキの大量生産、例えば、自動化により比較的低減した手作業で1時間当たり少なくとも3,000片の生産につながる。結果として、本発明方法によって、微生物的安全性を冷蔵状態で2週間維持し、経済的に好ましい、三角形のチーズケーキ片を製造することができる。
【実施例1】
【0070】
この実施例は、チーズベースのシートを上表3に示した配合比率で練合した後、クッキーを使用する豊かなチーズのフレーバーと風味を有する純粋なチーズケーキの製造方法を例示する。
【0071】
まず、上にペーパーを敷いたパンにクッキーを仕込んだ。クッキーとしては、限定はしないが、一般的なプレーンクッキー、および、チョコレート、アーモンド、ナッツなど、チーズとよく調和した若干の材料を含むその他のクッキーが挙げられる。クッキーの代わりにパイ、タルトなどのその他の材料も使用できる。
【0072】
チーズベースのシートの調製では、混合するのに望ましい一様な大きさの断片に切断することによってクリームチーズを用意した。レモンジュースは、水で希釈した。粉末混合物は、ケーキ粉、砂糖、食塩および膨張剤を、それらのそれぞれの重量を計量した後に塊のない粉末状で一緒に混合することによって調製した。混合工程では、用意したクリームチーズ、卵黄、全卵、砂糖、調製した粉末混合物および希釈レモンジュースを、攪拌機を備えたミキサーに低速攪拌下で全部流し込んだ。攪拌終了後、さらに高速での攪拌を数秒間実施した。次いで、残りの原材料および生クリームをミキサーに加え、次いで約2分間、高速で攪拌した。攪拌後、その混合物を、クッキーおよびブルーベリーフルーツソースの入っているパンの中に仕込んだ。その後、パンを、頂部が150℃、底部が160℃のオーブンに入れ、約60分間の焼成工程に付した。焼成工程の後、得られた製品を放置して30分間冷却し、次いで、製品の表面にトッピングゲルを噴霧した後、強制冷却した。冷えた製品を、断片に切断し、順番に、一緒に酸素除去剤を入れながら小さなプラスチック容器に詰め、包装、密封した。得られたチーズケーキ片は、貯蔵2週間後において、安全性の持続と共に豊かなチーズフレーバーを示した。
【0073】
【表6】

【実施例2】
【0074】
本実施例は、クッキー層とチーズベースのシート層の間にブルーベリーフルーツソースを含むブルーベリーチーズケーキの製造方法を例示する。
【0075】
まず、上にペーパーを敷いたパンにクッキーを仕込んだ。クッキーの上に、パンの中心部分周辺に直径5cmで所望量のブルーベリーフルーツソースを流し込んだ。ブルーベリーフルーツソースは、ゲル化剤を使用して、粘度をBOST−BIG粘度計で測定して4〜7cmに調節した。
【0076】
実施例1に記載したと同一の手順に従って、ブルーベリーフルーツソースの上に、調製したチーズベースのシートを載せた。その後、積層された原材料を室温に約10分間静置し、クッキー層とチーズベースのシート層との間にブルーベリーフルーツソースを一様に浸透させ、次いで、最終製品を製造するために、実施例1に記載したと同一条件下での焼成工程およびその他の工程にかけた。
【0077】
ブルーベリーフルーツソースは、もちろん、特に限定はされないが、アップル、ストロベリー、レモン、オレンジ、マンダリン、マンゴー、チェリー、ブラックチェリー、アプリコット、ピーチ、グレープフルーツ、ライムなどを含むその他のフルーツソース類、および/またはチョコレートシロップ、コーヒーシロップ、メープルシロップなどのシロップ類で置き換えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0078】
【図1】焼き時間による製品温度および微生物総数の変化を示すグラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
混合、仕込、焼成、冷却および冷蔵、ならびに包装の複数の工程からなるチーズケーキの大量生産方法であって、混合および仕込工程の双方を終えた後の原材料を、トンネル型オーブンおよび蒸気を使用する150〜165℃で約60〜70分間の焼成工程で処理する大量生産方法。
【請求項2】
混合、仕込、焼成、冷却および冷蔵、ならびに包装の複数の工程からなるチーズケーキの大量生産方法であって、チーズベースのシートが、40〜55重量%のクリームチーズ、10〜17重量%の砂糖、および0.5〜1重量%のレモンジュースを含む大量生産方法。
【請求項3】
混合、仕込、焼成、冷却および冷蔵、ならびに包装の複数の工程からなるチーズケーキの大量生産方法であって、仕込工程の間にクッキー、フルーツソース、チーズベースのシートおよび砂糖シロップがこの順序で添加される大量生産方法。

【図1】
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【公表番号】特表2007−517520(P2007−517520A)
【公表日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−549123(P2006−549123)
【出願日】平成17年1月10日(2005.1.10)
【国際出願番号】PCT/KR2005/000067
【国際公開番号】WO2005/067722
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(506245279)シージェイ コーポレーション (5)
【氏名又は名称原語表記】CJ CORP.
【住所又は居所原語表記】500,Namdaemunno 5ga,Jung−gu,Seoul,100−095,Korea
【Fターム(参考)】