説明

チーズ入り練り製品およびその製造方法

【課題】 本発明は、新規な形状を有するチーズ入り魚肉練り製品を提供すること、および喫食時、魚肉の薄片が剥がれ、新規な食感を有するチーズ入り魚肉練り製品を提供することを課題とする。本発明はまた、これらのチーズ入り魚肉練り製品を製造する方法を提供することも課題とする。
【解決手段】 本発明者らは、これまでにない形状を有し、またはこれまでにない食感を有するチーズ入り魚肉練り製品を開発することを目的として鋭意研究を行った結果、塩摺りした魚肉スリ身と、魚肉スリ身の摺りあがり温度で半溶解するチーズとを、層状構造が残る程度に不完全に混合し、その後加熱することにより、塩摺りした魚肉スリ身とチーズとの不均一な層状構造を有する食品を製造することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な形状を有するチーズ入り魚肉練り製品およびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、チーズ入り魚肉練り製品の代表的なものとして、いわゆる「チーズかまぼこ」と呼ばれる、チーズの小片を含有するかまぼこ様製品が一般的に知られている。この「チーズかまぼこ」は、タラ、イトヨリ、などの原料魚の魚肉スリ身に対して、10〜20%のチーズの小片を混合して攪拌・成形した後、加熱して製造したものである。このように物性の異なる魚肉とチーズを単に混合する製造方法をとるため、「チーズかまぼこ」は、魚肉の成分とチーズの成分とが完全に独立した状態になっている。
【0003】
これに対して、チーズ入り魚肉練り製品の一例として、魚肉スリ身とチーズとを成分的に完全に均一になるまで混合し、魚肉成分とチーズ成分とを一体化させた魚肉練り製品も知られている(特開平4-316465、特開昭62-205737)。この様な練り製品は、外見上均質的な構造を有しており、また食感的にも全体として均一的にチーズ風味がするかまぼこといったものになる。
【特許文献1】特開平4-316465
【特許文献2】特開昭62-205737 しかしながら、当該技術分野において、これ以外の形状を有するチーズ入り魚肉練り製品は、存在しなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、新規な形状を有するチーズ入り魚肉練り製品を提供すること、および喫食時、魚肉の薄片が剥がれ、新規な食感を有するチーズ入り魚肉練り製品を提供することを課題とする。本発明はまた、これらのチーズ入り魚肉練り製品を製造する方法を提供することも課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、これまでにない形状を有し、またはこれまでにない食感を有するチーズ入り魚肉練り製品を開発することを目的として鋭意研究を行った結果、塩摺りした魚肉スリ身と、魚肉スリ身の摺りあがり温度で半溶解するチーズとを、層状構造が残る程度に不完全に混合し、その後加熱することにより、塩摺りした魚肉スリ身とチーズとの不均一な層状構造を有する食品を製造することができることを見いだし、本発明を完成するに至った。
【0006】
本発明においては、まず塩摺りした魚肉スリ身を調製する。本発明において使用することができる魚肉スリ身の原料魚は、例えばスケトウダラ、イトヨリ、グチ、サメ、ヒラメ、ホッケ、カジキマグロ、イワシ等いずれであっても、またはこれらのいずれかの組み合わせであってもよい。塩摺りした魚肉スリ身の摺りあがり温度は、5〜25℃である。これに反して、摺りあがりの時点で25℃以上の温度になると、最終製品のゲル強度が低下し、魚肉練り製品の原料として不適切になる。
【0007】
この魚肉スリ身には、魚肉の塩摺りの際に使用される、当該技術分野において通常使用されている添加剤、例えば、でんぷん、砂糖、グルタミン酸ソーダ、魚介類エキス等のいずれかまたはそれらの組み合わせを添加してもよいが、添加剤はこれらのものに限定されない。
【0008】
本発明においては、次いで、その魚肉スリ身の摺りあがり温度で半溶解状態となるチーズを調製する。すなわち、上述したとおり、魚肉スリ身の摺りあがり温度は5〜25℃であるため、この温度において、チーズが、半溶解状態になっていることが必要である。ここで、「半溶解」状態という場合、チーズが、塩摺りした魚肉スリ身と、不均一な層状構造を形成する様に混合可能な程度の粘度を有する半固体状の流動性を有するゾル状態であることをいう。
【0009】
本発明においては、魚肉スリ身の摺りあがり温度で半溶解状態となるチーズと、塩摺りした魚肉スリ身とを不完全に混合することにより、塩摺りした魚肉スリ身の層とチーズの層とが、互いに入り組み合いながら、これらの層が不均一な層状構造を形成するようにする。一般的に、2種類の粘度が異なる物質を混合する場合、両者を一緒に攪拌しても、粘度の低い物質と粘度の高い物質は融和せず、帯状様の層状構造を形成することができない。一方、塩摺りした魚肉スリ身の摺りあがりの粘度と、溶解したチーズの粘度とがほぼ均等である状態になるようにチーズの粘度を調整すると、不完全に混合した際にチーズと塩摺りした魚肉スリ身とが互いに不均一な層状構造を形成しやすくなる。
【0010】
ここで、「不完全に混合する」という場合、別々に調製する塩摺りした魚肉スリ身とチーズとを混合する際に、両者が一体不可分になり原材料の識別ができなくなってしまうほどには混合しない、ということを意味しており、その混合の程度は自由に決定することができる。そしてこのように「不完全に混合する」結果生じる「不均一な層状構造」は、塩摺りした魚肉スリ身の層とチーズの層とが、互いに入り組み合いながら多層の構造を構成している状態をいう。この場合に、塩摺りした魚肉スリ身の層およびチーズの層ともに均一な厚さでなくてもよく、層は途中で切断されていても、途中で他の層と結合していてもよい。
【0011】
塩摺りした魚肉スリ身とチーズとを混合する方法は、当該技術分野において原料の混合に使用されるあらゆる道具、装置を使用することができる。例えば、付け包丁、フードカッター、サイレントカッター、バチ等を使用することができる。いずれの道具、装置を使用する場合であっても、「不均一な層状構造」を形成するように「不完全に混合する」程度は、混合を停止するタイミングを決定することにより、当業者が適宜調整することができる。
【0012】
このように形成した、塩摺りした魚肉スリ身とチーズとの不均一な層状構造を有する混合物を、成形したのち、加熱することにより、塩摺りした魚肉スリ身を凝固させてチーズ入り魚肉練り製品を製造する。加熱を行う際、成形した上記混合物中に含まれるチーズは、温度の上昇とともに粘度が減少する。そのため、塩摺りした魚肉スリ身に対するチーズの割合が高ければ高いほど、加熱の際に成形した混合物の形状が崩れることとなる。従って、本発明においては、塩摺りした魚肉スリ身と、溶解したチーズの混合割合が、7.5:2.5〜5:5となるように混合する。この様な割合を採用する結果、加熱した際にも、成形した混合物の形状が崩れにくくなる。
【0013】
この加熱後の製品は、チーズの存在が明確に認識されるものではなく、ゲル化した魚肉の間に不均一な薄膜状として存在するものである。この膜の存在が隣接する層状の魚肉の結着を阻止し、一定の力を加えることで層状のゲル化した魚肉断片を剥離することができる。したがって、本願発明のチーズ入り魚肉練り製品は、薄い魚肉層と薄いチーズ層が何層にも重なったものであり、明確に魚肉とチーズが識別できる従来のチーズ入りかまぼこの形態とは異なるものである。
【0014】
一般的にチーズは、温度が低くなると固形化し、加温すると溶解して粘度が低下するという特徴を有する。従って、一般的なナチュラルチーズでは、5〜25℃という温度では塩摺りした魚肉スリ身よりも粘度が高く、そのままではチーズを塩摺りした魚肉スリ身と融和する様に混合することができない。この場合、最終製品においても、チーズは魚肉中に分離した状態で存在することになる。このように、5〜25℃においてチーズの粘度が塩摺りした魚肉スリ身の粘度よりも高い場合には、チーズの粘度を低下させ、塩摺りした魚肉スリ身の粘度と均等な粘度を有する半固体状液体とすることが必要である。
【0015】
一般に、チーズの粘度は、ナチュラルチーズの場合、チーズに加水し、溶融塩(乳化剤)を添加することにより調整することができる。すなわち、チーズに対して、水0〜100%、溶融塩2〜3%を添加して、加熱した後、攪拌しながら徐々に冷却することにより、5〜25℃という温度において半固体状液体の状態とすることができる。
【0016】
本発明において溶融塩として使用できるものは、メタリン酸塩、ピロリン酸塩、ポリリン酸塩、正リン酸塩、またはこれらの混合物である。また、クエン酸も使用することができる。
【0017】
本発明においては、上述したようにチーズの粘度は適宜調整することができるので、チーズの原材料としては、ナチュラルチーズであっても、また粘度が調整されたリン酸塩入りのプロセスチーズであってもよい。例えば、ナチュラルチーズを使用する場合、軟質チーズ、半硬質チーズ、硬質チーズ、超硬質チーズのうち、どのようなチーズを使用してもよい。例えば、軟質チーズとしては、カッテージ、クワルク、リンブルガー、カマンベール等;半硬質としては、マリボー、サムソー、ブルー等;硬質としては、ゴーダ、エダム、チェダー、エメンタール等;そして超硬質としては、パルメザン等を単独でまたは組み合わせて使用することができるが、これらのものに限定されない。
【発明の効果】
【0018】
このような方法を採用することにより、新規な形状を有するチーズ入り魚肉練り製品を提供すること、および喫食時、魚肉の薄片が剥がれ、新規な食感を有するチーズ入り魚肉練り製品をを提供することができる。より具体的には、塩摺りした魚肉スリ身と、チーズとが、不均一な層状構造を形成する、塩摺りした魚肉スリ身とチーズを含む食品を提供することができる。
【発明の実施の形態】
【0019】
ナチュラルチーズ100 gに対して、溶融塩を3 g添加し、さらに水を20〜30 ml加水し、これを電子レンジで80℃まで加熱し、攪拌しながら25℃まで冷却することにより、粘度を調整したチーズを調製した。
【0020】
冷凍スリ身300 gに対して、澱粉15 gおよび適量の食塩、砂糖、グルタミン酸ソーダを添加し、さらに100〜150 mlの水を添加して、摺りあがり温度が20℃になるように塩摺りすることにより、塩摺りした魚肉スリ身を調製した。
【0021】
このようにして調製した塩摺りした魚肉スリ身およびチーズを、7.5:2.5〜5:5の範囲の割合で混合し、付け包丁、フードカッター、サイレントカッター、バチなどを用いて不均一な層状構造を形成するように不完全に混合した。
【0022】
このようにして不完全に混合した混合物をケーシングに詰める等の方法により成形し、90℃の熱湯中で25分間茹で加熱して、塩摺りした魚肉スリ身を凝固させ、チーズ入り魚肉練り製品を製造した。
【0023】
以下の実施例において、本発明をさらに詳細に説明する。しかしながら、以下の実施例は単に本発明の態様を具体的に説明することのみを目的としており、請求項に記載される発明を限定する目的で記載するものではない。
【実施例】
【0024】
実施例1:チーズ入り魚肉練り製品の製造
本実施例においては、チーズの粘度を調整するために必要な条件を決定し、併せてチーズ入り練り製品を製造するために行った。
【0025】
ナチュラルチーズとして、ゴーダチーズ(6ヶ月熟成)を使用した。このゴーダチーズ100 gに対して、メタリン酸ナトリウムを溶融塩として3 g添加し、さらに水を20 ml(チーズI)、50 ml(チーズII)、または100 ml(チーズIII)加水し、これを500 Wの電子レンジに1分間かけることにより80℃まで加熱し、攪拌しながら25℃まで冷却した。
【0026】
魚肉スリ身の原料として、イトヨリの冷凍スリ身、イトヨリAA(PAM社製、タイ)を使用した。このイトヨリの冷凍スリ身、300 gに対して、食塩を7 g、砂糖を7 g、グルタミン酸ソーダを3 g、でんぷんを15 g添加し、さらに水を250 ml添加して、フードカッターを使用して塩摺りを行い、魚肉スリ身を調製した。
【0027】
このようにして調製した塩摺りした魚肉スリ身に対して、上述した方法で25℃にて調整したチーズI〜チーズIIIを付け包丁を用いて不完全に混合した。
不均一な層状構造が形成されたことを確認し、これをケーシングに詰めて成形し、90℃の熱湯中で25分間茹で加熱して、塩摺りした魚肉スリ身を凝固させ、チーズ入り魚肉練り製品を製造した。
【0028】
チーズIは、調製した塩摺りした魚肉スリ身と比較して硬めであり、チーズが塩摺りした魚肉スリ身にうまくからみ合った。不完全な混合の結果、形成されたチーズ入り魚肉練り製品は、内部に大きめのチーズの固まりがあったものの、離水はなく、不均一な層状構造という良好な状態を形成した。
【0029】
チーズIIは、調製した塩摺りした魚肉スリ身と比較してやや硬めであり、チーズが塩摺りした魚肉スリ身にうまくからみ合った。不完全な混合の結果、チーズが層状に入ったが、チーズ部分の水分がやや多かったが、不均一な層状構造という良好な状態を形成した。
【0030】
これに対してチーズIIIは、調製した塩摺りした魚肉スリ身と比較して柔らかめであり、混合した際に塩摺りした魚肉スリ身に完全になじんで練り込まれた状態になってしまい、不均一な層状構造を十分に形成することができなかった。
【0031】
これらの結果から、本発明においては、チーズ100 gに対して添加水を20〜50 mlの範囲で添加することとした。
実施例2:塩摺りした魚肉スリ身の粘度調整
本実施例においては、チーズ100 gに対して添加水を20〜50 mlの範囲で添加した状態で、魚肉スリ身に対して添加水を加えることにより塩摺りした魚肉スリ身の粘度を調整した。なお、実施例1では、塩摺りした魚肉スリ身の添加水がやや多めで、粘度が低かったため、本実施例においては、その添加水を調整することとした。
【0032】
実施例1と同様に、ナチュラルチーズとして、ゴーダチーズ(6ヶ月熟成)100 gに対して、メタリン酸ナトリウムを溶融塩として3 g添加し、さらに水を20 ml(チーズA)、25 ml(チーズB)、30 ml(チーズC)、または50 ml(チーズD)加水し、これを500 Wの電子レンジに1分間かけることにより80℃まで加熱し、攪拌しながら25℃まで冷却した。
【0033】
一方、魚肉スリ身についても実施例1と同様に、イトヨリの冷凍スリ身、イトヨリAA(PAM社製、タイ)、300 gに対して、食塩を7 g、砂糖を7 g、グルタミン酸ソーダを3 g、でんぷんを15 g添加し、さらに水を100 ml(スリ身1)または150 ml(スリ身2)添加して、フードカッターを使用して塩摺りを行い、塩摺りした魚肉スリ身を調製した。
【0034】
このようにして調整したチーズA〜チーズDおよびスリ身1およびスリ身2を、任意に組み合わせて、不完全に混合した。
混合時の塩摺りした魚肉スリ身に対するチーズの状態は、以下の表にまとめた通りである。
【0035】
【表1】

【0036】
このようにして調製したチーズ入り塩摺りした魚肉スリ身を、ケーシングに詰めて成形し、90℃の熱湯中で25分間茹で加熱して、塩摺りした魚肉スリ身を凝固させ、チーズ入り魚肉練り製品を製造した。その後、チーズ入り魚肉練り製品を5℃まで冷却した。
【0037】
加熱後、12時間冷却した後のチーズ入り魚肉練り製品の状態は、以下の表にまとめた通りである。
【0038】
【表2】

【0039】
ここで示すように、不均一な層状構造を有するチーズ入り魚肉練り製品は、塩摺りした魚肉スリ身300 gに対して水100 mlを添加し、一方チーズ100 gに対して水20〜30 mlを添加したものを用いて製造した場合に、比較的良好な結果が得られることが明らかになった。
【0040】
実施例3:塩摺りした魚肉スリ身とチーズの配合比の検討
本実施例においては、実施例2において好ましいことが示された条件で調製したチーズと塩摺りした魚肉スリ身を使用して、塩摺りした魚肉スリ身とチーズの配合比について検討を行った。
【0041】
まずプロセスチーズを調製した。原材料となるナチュラルチーズとしてゴーダチーズ(6ヶ月熟成)100 gを使用し、これに溶融塩としてのメタリン酸ナトリウム3 gを添加し、さらに水25 mlを加水した。これを500 Wの電子レンジに1分間かけることにより80℃まで加熱し、攪拌しながら25℃まで冷却して、プロセスチーズを調製した。
【0042】
次に、塩摺りした魚肉スリ身を調製した。イトヨリの冷凍スリ身、イトヨリAA(PAM社製、タイ)300 gに対して、食塩を7 g、砂糖を7 g、グルタミン酸ソーダを3 g、でんぷんを15 g添加し、さらに水を100 ml添加して、フードカッターを使用して塩摺りを行い、摺りあがり温度が20℃の塩摺り魚肉スリ身を調製した。
【0043】
これらの塩摺り魚肉スリ身とチーズ調製物とを、5:5で混合したもの(混合物I)、6:4で混合したもの(混合物II)、および7:3で混合したもの(混合物III)、7.5:2.5で混合したもの(混合物IV)を調製した。混合は、フードカッター(松下電器産業製)を用いて、チーズと塩摺りした魚肉スリ身とが不均一な層状構造を形成する程度に、不完全に混合することにより行った。
【0044】
不均一な層状構造が形成されたことを確認し、これをケーシングに詰めて成形し、90℃の熱湯中で25分間茹で加熱して、塩摺りした魚肉スリ身を凝固させ、チーズ入り魚肉練り製品を製造した。
【0045】
混合物Iから製造した魚肉練り製品は、ゲル化した魚肉とチーズが層状構造を形成していた。この練り製品は、ゲル化した魚肉、チーズからの離水はなく、ソフトなチーズが散在し、良好な不均一な層状構造を有していた。
【0046】
混合物IIおよびIIIは、混合物Iと同様に層状構造を形成し、しかも離水はなく、良好な不均一な層状構造を有していた。
混合物IVで製造した魚肉練り製品は、ゲル化した魚肉とチーズとの層状構造は、やや不明確であった。しかし、ゲル化した魚肉、チーズからの離水はなく、チーズの存在によって構成されるゲル化した魚肉の膜が層状構造をわずかに形成していた。
【0047】
実施例4:塩摺りした魚肉スリ身の摺りあがり温度の影響についての検討
本実施例においては、実施例2において好ましいことが示された条件で調製したチーズと摺りあがり温度が5℃になるように塩摺りした魚肉スリ身を使用して、魚肉スリ身の摺りあがり温度の影響について検討を行った。
【0048】
使用するチーズとして、5℃にて冷蔵された市販のプロセスクリームチーズ(Kiri)200 gを使用した。
次に、塩摺りした魚肉スリ身を調製した。イトヨリの冷凍スリ身、イトヨリAA(PAM社製、タイ)300 gに対して、食塩を7 g、砂糖を7 g、グルタミン酸ソーダを3 g、でんぷんを15 g添加し、さらに水を100 ml添加して、フードカッターを使用して塩摺りを行い、摺りあがり温度が5℃の塩摺り魚肉スリ身を調製した。
【0049】
これらの塩摺り魚肉スリ身と市販のプロセスクリームチーズとを、6:4で混合したものを調製した。混合は、フードカッター(松下電器産業製)を用いて、チーズと塩摺りした魚肉スリ身とが不均一な層状構造を形成する程度に、不完全に混合することにより行った。
【0050】
不均一な層状構造が形成されたことを確認し、これをケーシングに詰めて成形し、85℃の熱湯中で30分間茹で加熱して、塩摺りした魚肉スリ身を凝固させ、チーズ入り魚肉練り製品を製造した。その後、魚肉練り製品を5℃に冷却した。
【0051】
このようにして製造した魚肉練り製品は、多少の離水はあったものの、ゲル化した魚肉とチーズが層状構造を形成していた。この練り製品は、ゲル化した魚肉、チーズからの離水はなく、ソフトなチーズが散在し、良好な不均一な層状構造を有していた。
【産業上の利用可能性】
【0052】
このような方法を採用することにより、新規な形状を有するチーズ入り魚肉練り製品を提供すること、および喫食時、魚肉の薄片が剥がれ、新規な食感を有するチーズ入り魚肉練り製品をを提供することができる。より具体的には、ゲル化した魚肉と、チーズとが、不均一な層状構造を形成する、魚肉とチーズを含む練り製品を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塩摺りした魚肉スリ身と、チーズとが、不均一な層状構造を形成する、塩摺りした魚肉スリ身とチーズを含む食品。
【請求項2】
塩摺りした魚肉スリ身とチーズの混合割合が、7.5:2.5〜5:5であることを特徴とする、請求項1に記載の食品。
【請求項3】
塩摺りした魚肉スリ身とチーズとを、層状構造が残る程度に不完全に混合し、その後加熱して得られる、塩摺りした魚肉スリ身とチーズを含む食品。
【請求項4】
チーズが、塩摺りした魚肉スリ身の摺りあがり温度で溶解するものであることを特徴とする、請求項3に記載の塩摺りした魚肉スリ身とチーズを含む食品。
【請求項5】
塩摺りした魚肉スリ身とチーズとを、両者の粘度を均等にしてから不完全に混合することを特徴とする、請求項3または4に記載の塩摺りした魚肉スリ身とチーズを含む食品。
【請求項6】
塩摺りした魚肉スリ身と、塩摺りした魚肉スリ身の摺りあがり温度で半溶解するチーズとを、層状構造が残る程度に不完全に混合し、その後加熱することを特徴とする、塩摺りした魚肉スリ身とチーズとの不均一な層状構造を有する食品の製造方法。
【請求項7】
塩摺りした魚肉スリ身の摺りあがりの粘度と、半溶解したチーズの粘度とが均等であることを特徴とする、請求項6に記載の食品の製造方法。
【請求項8】
塩摺りした魚肉スリ身の摺りあがり温度が、5〜25℃であることを特徴とする、請求項6または7に記載の食品の製造方法。
【請求項9】
塩摺りした魚肉スリ身と、半溶解したチーズの混合割合が、7.5:2.5〜5:5であることを特徴とする、請求項6〜8のいずれか1項に記載の食品の製造方法。

【公開番号】特開2006−121922(P2006−121922A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−311429(P2004−311429)
【出願日】平成16年10月26日(2004.10.26)
【出願人】(000141509)株式会社紀文食品 (39)
【Fターム(参考)】