説明

ツーサイクルエンジンの燃費向上機構およびツーサイクルエンジンの燃費向上方法

【課題】簡易機構であっても、ツーサイクルエンジンの燃費等を効率的に向上させることが可能な燃費向上機構、およびそれを用いたツーサイクルエンジンの燃費向上方法を提供する。
【解決手段】ツーサイクルエンジンから排出される排気ガスを導入する入口管と、当該排気ガスを外部に放出する出口管と、消音装置とを、備えたサイレンサ内に、当該サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材が挿入してあるツーサイクルエンジンの燃費向上機構、およびそのような燃費向上機構を用いたツーサイクルエンジンの燃費向上方法である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ツーサイクルエンジンの燃費向上機構およびツーサイクルエンジンの燃費向上方法に関し、特に、簡易構造であっても、効率的に燃費向上等することが可能なツーサイクルエンジンの燃費向上機構およびツーサイクルエンジンの燃費向上方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ツーサイクルエンジン等における排気ガス浄化方法として、エンジン排気ガスを理論空燃比に相当する状態よりも濃い還元雰囲気ガス状態にて、三元触媒(第1の触媒)に通し、排気ガス中のNOxを実質的に最終所要浄化率まで浄化すると同時に、HCおよびCOの一部を浄化し、次いで、排気ガスに空気を添加することにより、理論空燃比に相当する状態よりも薄い酸化雰囲気ガス状態にして酸化反応を促進せしめる第2の触媒による浄化方法が多用されている。
しかしながら、第2の触媒において、十分な酸化反応を行うべく、その容量を相対的に大きくしなければならないという問題が見られた。
また、ツーサイクルエンジンは、フォーサイクルエンジンと比較して、相対的な小型化が可能である一方、排気ガス中に燃料を混入しやすく、そのため燃費効率が低く、排気ガス浄化装置が複雑化、大型化しやすいという問題も見られた。
【0003】
そこで、サイレンサ等のインレットパイプの内周壁に沿って巻成装着されたラスメタル要素からなり、消音された排気ガスをアウトレットパイプから排気する排気ガス浄化用触媒装置(消音器)が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
より具体的には、図7(a)に、その外形を示すようにサイレンサ101の所定場所にインレットパイプ102およびアウトレットパイプ105が取り付けられている排気ガス浄化用触媒装置(消音器)100である。
そして、図7(b)に、その内側主要部の断面を示すように、インレットパイプ102の内周壁に沿って、SUS304等から構成され、例えば、厚さ1.5mm、軸線方向長さが400mmのラスメタル要素(ラスメタル金網)106を巻成装着してなる排気ガス浄化用触媒装置(消音器)100である。
【0004】
また、ツーサイクルエンジン等において、排気ノイズの減少および汚染物質の放出制御を同時に行う排気ガス浄化用触媒装置(マフラーキャニスター)210が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
より具体的には、図8に示すように、入口管220および出口管270を有し、エンジン200から矢印方向に排出された排気ガスを触媒浄化するためのキャニスター210である。
そして、当該キャニスター210の内部に、放出触媒を有する複数の中空部材230を備えており、キャニスター210の入口管220に侵入する排出ガス放出流の実質的な層流を遮断し、かつ、キャニスター210の入口管220および出口管270を横切って撹乱流および圧力低下を生じさせ、それによってキャニスター210の出口管270からの退出前に排気ガス放出流からノイズを消す構成の排気ガス浄化用触媒装置210である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開昭53−136115号公報(特許請求の範囲等)
【特許文献2】特開平11−324657号公報(特許請求の範囲等)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された排気ガス浄化用触媒装置(消音器)は、排気ガスの更なる浄化には寄与するものの、エンジンとしての燃焼効率の上昇については何ら考慮しておらず、ツーサイクルエンジン等における燃費向上機構としては機能しないという問題が見られた。
また、特許文献2に記載された排気ガス浄化用触媒装置(マフラーキャニスター)についても、排気ノイズの減少および汚染物質の放出制御については所定効果を発揮するものの、エンジンとしての燃焼効率の上昇については何ら考慮しておらず、ツーサイクルエンジン等における燃費向上機構としては機能しないという問題が見られた。
【0007】
そこで、本発明者らは、鋭意研究した結果、ツーサイクルエンジンのサイレンサ内に、所定の燃費向上部材を挿入することによって、ツーサイクルエンジンの燃費や消音性が向上することを見出し、本発明を完成させたものである。
すなわち、本発明は、簡易構造であっても、効率的にツーサイクルエンジンの燃費等を向上させることが可能な燃費向上機構、およびそのような燃費向上機構を用いたツーサイクルエンジンの燃費向上方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、ツーサイクルエンジンから排出される排気ガスを導入する入口管と、当該排気ガスを外部に放出する出口管と、消音装置とを、備えたサイレンサ内に、当該サイレンサの出口管に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材が挿入してあることを特徴とするツーサイクルエンジンの燃費向上機構が提供され、上述した問題点を解決することができる。
すなわち、所定の燃費向上部材を、ツーサイクルエンジンのサイレンサ内(特に、サイレンサの出口管)に挿入することによって、簡易構造であっても、棒状の燃費向上部材がツーサイクルエンジンの振動等に呼応して、サイレンサの出口管の内壁に沿って、往復的に平行移動を繰り返すことから、ツーサイクルエンジンから排出される燃料消費を抑制することができる。
また、所定の燃費向上部材が、サイレンサの出口管内を往復平行移動することから、出口管内における気流関係を調整し、サイレンサにおける消音効果を向上させることができる。
【0009】
なお、棒状の燃費向上部材による往復的な平行移動と、ツーサイクルエンジンにおける燃費向上との関係は必ずしも明確ではないが、例えば、燃費向上部材の所定動作によって、ツーサイクルエンジンから排出された生ガスを、ツーサイクルエンジンまで押し戻す効果が大きくなり、かつ、サイレンサの出口管の内壁における炭化物等を除去する効果が大きくなることが影響していると推定される。
さらに、棒状の燃費向上部材による往復的な平行移動と、ツーサイクルエンジンにおける消音効果の向上との関係も必ずしも明確ではないが、例えば、燃費向上部材の平行移動に伴って、排気流が乱流化され、サイレンサにおける消音効果が高まったものと推定される。
但し、本発明において、所定の燃費向上部材が、出口管の内壁に沿って、往復的に平行移動することを規定しているものの、常に、一定方向に平行移動する必要はない。
したがって、時に、ツーサイクルエンジンを搭載したオートバイ等の動き等に呼応して、所定の燃費向上部材が、斜め方向に移動したり、垂直方向に移動したり、あるいはこれらの移動が併合された態様であっても、所定の平行移動の態様に含めるものとする。
【0010】
また、本発明のツーサイクルエンジンの燃費向上機構を構成するにあたり、棒状の燃費向上部材が、中空管構造であることが好ましい。
このように燃費向上部材を、中空管構造とすることによって、燃費向上部材の軽量化が図られるとともに、当該燃費向上部材の平行移動性をさらに容易かつ円滑とすることができる。
【0011】
また、本発明のツーサイクルエンジンの燃費向上機構を構成するにあたり、棒状の燃費向上部材の周囲に、金属箔が席捲してあることが好ましい。
このように燃費向上部材の周囲に、金属箔が席捲してあることによって、燃費向上部材の平行移動による燃費向上性をさらに高めることができる。
【0012】
また、本発明のツーサイクルエンジンの燃費向上機構を構成するにあたり、棒状の燃費向上部材の端部に、当該棒状の燃費向上部材の所定距離以上の移動を制御するためのストッパ部材が設けてあることが好ましい。
このようにストッパ部材を設けることによって、ツーサイクルエンジンの振動等にあわせて、燃費向上部材をサイレンサの出口管内の所定範囲で繰り返し、往復的に平行移動することが可能となって、燃費向上性をさらに高めることができる。
また、このようにストッパ部材を設けることによって、挿入した燃費向上部材を外部に取り出すような場合であっても、容易かつ迅速に行うことができる。
【0013】
また、本発明のツーサイクルエンジンの燃費向上機構を構成するにあたり、棒状の燃費向上部材が、平行方向に移動するための軸心またはガイド部材を有することが好ましい。
このように軸心またはガイド部材を設けることによって、ツーサイクルエンジンの振動等に呼応させて、燃費向上部材をより円滑に平行移動させることが可能となる。
【0014】
また、本発明のツーサイクルエンジンの燃費向上機構を構成するにあたり、棒状の燃費向上部材の周囲に、平行移動方向に沿って、円筒状のネット部材が設けてあることが好ましい。
このようにネット部材を設けることによって、排気ガスの排出を過度に抑制することなく、ツーサイクルエンジンの振動等にあわせて、ネット部材の内部で、燃費向上部材をより円滑に平行移動させることが可能となる。
また、このようにネット部材を設けることによって、サイレンサの出口管内に圧入することができ、燃費向上部材の装着性も向上する。
【0015】
また、本発明のツーサイクルエンジンの燃費向上機構を構成するにあたり、棒状の燃費向上部材が、鉄、アルミニウム、ニッケル、真鍮、および銅からなる群から選択される少なくとも一つの金属から構成してあることが好ましい。
このような金属から構成することによって、安価かつ軽量な燃費向上部材とすることができるとともに、燃費向上部材として、より確実に燃費向上効果を得ることができる。
【0016】
また、本発明の別の態様は、ツーサイクルエンジンから排出される排気ガスを導入する入口管と、当該排気ガスを外部に放出する出口管と、消音装置とを、備えたサイレンサ内に、当該サイレンサの出口管に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材を挿入するツーサイクルエンジンの燃費向上方法であって、ツーサイクルエンジンのサイレンサを準備する工程と、サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材を挿入する工程と、を含むことを特徴とするツーサイクルエンジンの燃費向上方法である。
このように実施することによって、簡易構造であっても、棒状の燃費向上部材がツーサイクルエンジンの振動等に呼応して、サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動することから、ツーサイクルエンジンから排出される燃料消費を抑制することができる。
また、所定の燃費向上部材が、サイレンサの出口管の内壁に沿って、往復的に平行移動することから、サイレンサの出口管内の気流関係を調整し、サイレンサにおける消音効果をさらに向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】図1は、棒状の燃費向上部材の取り付け状態を説明するために供する図である。
【図2】図2(a)〜(d)は、それぞれ棒状の燃費向上部材を説明するために供する図である。
【図3】図3は、ツーサイクルエンジンにおけるサイレンサ(チャンバー)を説明するために供する図である。
【図4】図4(a)〜(d)は、それぞれ棒状の燃費向上部材の変形例を説明するために供する図である。
【図5】図5は、ツーサイクルエンジンを搭載したスクータを説明するために供する図である。
【図6】図6は、ツーサイクルエンジンを搭載したスクータ(オートバイ)を説明するために供する部分拡大図である。
【図7】図7(a)〜(b)は、従来のラスメタル要素を巻成装着してなる排気ガス浄化用触媒装置(消音器)を説明するために供する図である。
【図8】図8は、従来の排気ガス浄化用触媒装置(マフラーキャニスター)を説明するために供する図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
[第1の実施形態]
第1の実施形態は、図1に例示するように、ツーサイクルエンジン(図示せず)から排出される排気ガス(A)を導入する入口管(図示せず)と、当該排気ガス(A)を外部に放出する出口管20と、消音装置26とを、備えたサイレンサ22の内部に、当該サイレンサ22の出口管20に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材10が挿入してあることを特徴とするツーサイクルエンジンの燃費向上機構5である。
また、図2(a)〜(c)にそれぞれ例示するように、あるいは、図2(d)に示す写真のように、棒状の燃費向上部材10としては、通常、円筒形の金属製燃費向上部材であって、その両側を、押圧して扁平化させているのが好適態様である。
すなわち、このように燃費向上部材を含んで燃費向上機構を構成することによって、簡易構造であってもツーサイクルエンジンから排出される燃料消費を抑制することができるとともに、所定の燃費向上部材が、サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動することから、サイレンサの出口管内の気流関係を調整し、サイレンサにおける消音効果を向上させることもできる。
以下、第1の実施形態のツーサイクルエンジンの燃費向上機構について、適宜図面を参照しながら、具体的に説明する。
【0019】
1.ツーサイクルエンジンのサイレンサ
ツーサイクルエンジンのサイレンサ(チャンバーと称する場合もある。)は、図3に示すように、ツーサイクルエンジン(図示せず)から排出される排気ガス(A)を導入する入口管29と、当該排気ガス(A)を外部に放出する出口管20と、排気音を消音するための消音装置22とを、基本的に備えており、所定の消音効果を発揮できる構成であれば好適である。
【0020】
すなわち、図3に示すように、排気ガス(A)を導入するための所定の入口管29を、サイレンサ22における消音装置26、28の前部(入口)に備えることによって、ツーサイクルエンジンから排出される排気ガス(A)を、サイレンサ22に設けてある消音装置26、28の内部に効率的に導入することができる。
【0021】
また、図3に示すように、排気ガス(A)を外部に放出するための所定の出口管20を、サイレンサ22における消音装置26、28の後部(出口)に備えることによって、ツーサイクルエンジンから排出される排気ガス(A)を、サイレンサ22に設けてある消音装置26、28の内部から、外部に効率的に排出することができるとともに、出口管20の内部に、後述する所定の燃費向上部材(図示せず)を挿入することが可能となる。
【0022】
そして、図3に示すように、サイレンサ22において、所定の消音装置、例えば、複数の膨張室26、28、およびそれらを連結する複数の通路24、さらには、グラスウール等からなる消音用充填材(図示せず)を備えることによって、所定の燃費向上部材(図示せず)とともに、ツーサイクルエンジンから排出される排気ガス(A)の気流関係を調整し、消音効果を効率的に発揮することができる。
【0023】
2.棒状の燃費向上部材
(1)材質
棒状の燃費向上部材の構成材料については特に制限されるものではないが、例えば、鉄、アルミニウム、ニッケル、真鍮、および銅からなる群から選択される少なくとも一つの金属から構成してあることが好ましい。
この理由は、このような金属から構成することによって、安価な燃費向上部材とすることができるとともに、燃費向上部材として、より確実に燃費向上効果を得ることができるためである。
【0024】
(2)直径
また、棒状の燃費向上部材の直径(外径)、すなわち、図2(a)に示す棒状の燃費向上部材10の直径(d)について、出口管の内壁に沿って平行移動できる態様となる値であれば特に制限されるものではないが、通常、1〜15mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる棒状の燃費向上部材の直径が1mm未満となると、燃費向上効果や消音効果が著しく低下する場合があるためである。
一方、棒状の燃費向上部材の直径が15mmを超えると、出口管の内壁の直径にもよるが、当該出口管の内壁に沿って円滑に平行移動することが困難となる場合があるためである。
したがって、棒状の燃費向上部材の直径を2〜10mmの範囲内の値とすることがより好ましく、4〜8mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0025】
なお、棒状の燃費向上部材を複数本挿入する場合には、上述した直径(外径)を、挿入する本数で除した値とすることが好ましい。
より具体的には、棒状の燃費向上部材を、例えば、2本挿入する場合、各燃費向上部材の直径をそれぞれ0.5〜7.5mmの範囲内の値とすることが好ましい。
【0026】
(3)長さ
また、棒状の燃費向上部材の長さ、すなわち、図2(a)に示す棒状の燃費向上部材10の長さ(L)について、通常、10〜120mmの範囲内の値とすることが好ましい。
この理由は、かかる棒状の燃費向上部材の長さが10mm未満となると、燃費向上効果や消音効果が著しく低下する場合があるためである。
一方、棒状の燃費向上部材の長さが120mmを超えると、出口管の内壁の直径や長さにもよるが、当該出口管の内壁に沿って円滑に平行移動することが困難となる場合があるためである。
したがって、棒状の燃費向上部材の長さを20〜100mmの範囲内の値とすることがより好ましく、30〜80mmの範囲内の値とすることがさらに好ましい。
【0027】
(4)扁平化
また、図2(a)〜(c)および図2(d)に示すように、棒状の燃費向上部材10の両端部10a、10bをそれぞれ扁平化してあることが好ましい。
この理由は、このように両端部を扁平化してあることによって、先端部が比較的鋭利となって、出口管の内壁がスス等の炭化物や窒化物によって汚染されているような場合であっても、燃費向上部材を円滑に平行移動することが可能となるためである。
また、このように両端部を扁平化してあることによって、先端部がヘラ状であって、針状ではないため、燃費向上部材を取扱う際の安全性も高まるためである。
なお、扁平化させる前の棒状の燃費向上部材の形状(立体形状)についても、特に制限されるものでなく、例えば、円柱状、多角柱状、楕円柱状、異形柱状のいずれか一つであれば良い。
【0028】
(5)被覆物
また、図4(a)に示すように、棒状の燃費向上部材10の周囲に、金属箔(金属箔テープを含む)10cが席捲してあることが好ましい。
この理由は、このように金属箔が席捲してあることによって、燃費向上部材の直径等の調整が容易になるばかりか、燃費向上部材の平行移動性を向上させ、ひいては、燃費向上性をさらに高めることができるためである。
なお、使用する金属箔の種類や厚さについては特に制限されるものではないが、例えば、厚さを1〜100μmの範囲内の値とするとともに、その種類をアルミニウム箔、銅箔、銀箔、鉄箔、ニッケル箔、真鍮箔、スズ箔等の少なくとも一つとすることが好ましい。
【0029】
(6)ガイド部材
また、図4(b)に示すように、棒状の燃費向上部材10が、平行方向に移動するための棒状の軸心10d(軸心の取付部材10eを含む)、または、図4(c)に示すように、円筒状のガイド部材10g(スライド部材10fとしてのベアリング等を含む)を有することが好ましい。
この理由は、このように軸心またはガイド部材を設けることによって、ツーサイクルエンジンの振動やスクータの走行等にあわせて、燃費向上部材をより円滑に平行移動させることが可能となるためである。
【0030】
すなわち、図4(b)に示すように、棒状の燃費向上部材10の内部を貫通する棒状の軸心10dおよび軸心の取付部材10eを設けることによって、燃費向上部材10が左右にぶれることなく、棒状の軸心10dに沿って、円滑に平行移動することができる。
また、図4(c)に示すように、棒状の燃費向上部材10の周囲に、円筒状のガイド部材10gおよびスライド部材10fとしてのベアリング等を備えることによって、燃費向上部材10が左右にぶれることなく、ガイド部材10gに沿って、円滑に平行移動することができる。
そして、このように軸心10dまたはガイド部材10gを設けることによって、出口管の内壁がスス等によって汚染されているような場合であっても、棒状の燃費向上部材10が、より円滑に平行移動することが可能となる。
【0031】
(7)ネット部材
さらに、図4(d)に示すように、棒状の燃費向上部材10の周囲に、かかる燃費向上部材10が平行移動する方向に沿って、円筒状のネット部材10hが設けてあることが好ましい。
この理由は、このようにネット部材を設けることによって、ツーサイクルエンジンの振動等にあわせて、燃費向上部材をより円滑に平行移動させることが可能となるためである。
また、このようにネット部材を設けることによって、後述するストッパ等を別途設けることなく、所定距離だけ平行移動することが可能となるためである。
【0032】
(8)ストッパ部材
また、図1に示すように、棒状の燃費向上部材10の端部、あるいは、図示しないものの、出口管20の内壁の一部に、当該棒状の燃費向上部材10の所定距離以上の移動を制御するためのストッパ部材12fが設けてあることが好ましい。
この理由は、このようにストッパ部材を設けることによって、ツーサイクルエンジンの振動等にあわせて、燃費向上部材をサイレンサの出口管内の所定範囲で、繰り返し平行移動することが可能となって、燃費向上性をさらに高めることができるためである。
また、このようにストッパ部材を設けることによって、挿入した燃費向上部材を外部に取り出すような場合であっても、容易かつ迅速に行うことができるためである。
【0033】
また、かかるストッパ部材の態様についても特に制限されるものでなく、通常、チェーン、ばね、ひも、ネット状物、プレート状物、棒状物等の少なくとも一つとすることが好ましい。
例えば、ストッパ部材をチェーンやひもとすることによって、燃費向上部材への取り付け等が容易になるばかりか、燃費向上部材の平行移動自体を阻害することなく、サイレンサの出口管内の所定範囲で、繰り返し平行移動することが可能となる。
また、ストッパ部材をばねとすることによって、サイレンサの出口管内の所定範囲で、燃費向上部材の平行移動を弾性的に行うことができる。
また、ストッパ部材をネット状物とすることによって、その中に、燃費向上部材を挿入するだけで、サイレンサの出口管内の所定範囲で、繰り返し平行移動することが可能となる。
さらに、ストッパ部材をプレート状物や棒状物とすることによって、出口管の内壁の一部に容易に形成することができ、サイレンサの出口管内の所定範囲での、燃費向上部材の繰り返し平行移動が可能となる。
【0034】
なお、このようにストッパ部材を設けるにあたり、図1に示すようなアダプタ12を準備し、排気ガス(A)を外部に放出する出口管20にキャッピングし、当該アダプタ12の中央付近に、横方向に突出した棒12dに、ストッパ部材12fの一端を取り付けることが好ましい。
すなわち、アダプタ上部12aおよびアダプタ下部12bを有する断面凸状のアダプタ12を準備し、アダプタ下部12bに形成してある内部空間に、所定距離(B)だけ出口管20を圧入することによって、出口管20の中央付近に、燃費向上部材10を平行移動可能に、懸垂することができる。
したがって、このようにストッパ部材12fを介して、燃費向上部材10を有するアダプタ12を設けることによって、燃費向上部材10の位置合わせが容易になり、例えば、出口管20の中央付近に対応した箇所に懸垂でき、ひいては、出口管20の内壁との干渉を抑制しつつ、燃費向上部材10のより円滑な平行移動が可能となる。
【0035】
[第2の実施形態]
また、本発明の第2の実施形態は、ツーサイクルエンジンから排出される排気ガスを導入する入口管と、当該排気ガスを外部に放出する出口管と、消音装置とを、備えたサイレンサ内に、当該サイレンサの出口管に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材を挿入するツーサイクルエンジンの燃費向上方法であって、ツーサイクルエンジンのサイレンサを準備する工程と、サイレンサの出口管に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材を挿入する工程と、を含むことを特徴とするツーサイクルエンジンの燃費向上方法である。
すなわち、このような方法を実施することによって、ツーサイクルエンジンから排出される燃料消費を抑制することができるとともに、所定の燃費向上部材が、サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動することから、サイレンサの出口管内の気流関係を調整し、サイレンサにおける消音効果を向上させることもできる。
以下、第2の実施形態のツーサイクルエンジンの燃費向上方法について、第1の実施形態と異なる点を中心に、具体的に説明する。
【0036】
1.ツーサイクルエンジンのサイレンサを準備する工程
ツーサイクルエンジンのサイレンサを準備する工程は、第1の実施形態で説明したように、図3に示すツーサイクルエンジンから排出される排気ガス(A)を導入する入口管29と、当該排気ガス(A)を外部に放出する出口管20と、所定の消音装置26、28とを、基本的に備えており、所定の消音効果を発揮できるサイレンサ(チャンバー)22を準備する工程である。
【0037】
2.棒状の燃費向上部材を挿入する工程
次いで、棒状の燃費向上部材を挿入する工程は、第1の実施形態で説明したように、図2(a)〜(d)あるいは図4(a)〜(c)に例示されるような所定の燃費向上部材10を、図1に示すように、サイレンサ22の出口管20の内部に、挿入する工程である。
すなわち、一部上述したように、所定のアダプタ12を準備し、アダプタ下部12bに形成してある内部空間に、所定距離(B)だけ出口管20を圧入することによって、出口管20の中央付近に、ストッパ部材12fを介して、燃費向上部材10を平行移動可能に、懸垂することができる。
【0038】
3.その他の工程
(1)調整工程
次いで、棒状の燃費向上部材を挿入した後、サイレンサの出口管の内部における燃費向上部材の位置(スタート位置)を調整するための調整工程を設けることが好ましい。
この理由は、かかる燃費向上部材の位置によって、燃費向上効率や消音性が変化する場合があるためである。
したがって、大まかには、図1に示すように、所定のアダプタ12を準備し、アダプタ下部12bに形成してある内部空間に、所定距離(B)だけ出口管20を圧入することによって、出口管20の中央付近に、ストッパ部材12fを介して、燃費向上部材10を平行移動可能に懸垂することができるが、それとは別に、微妙な位置調整をすることが好ましい。
【0039】
(2)取り出し工程
また、棒状の燃費向上部材を出口管の外部に取り出すための取り出し工程を設けることが好ましい。
この理由は、棒状の燃費向上部材の検査や交換等のために、ツーサイクルエンジンを作動させた後に、外部に取り出す必要が生じる場合があるためである。
その場合、棒状の燃費向上部材を定期的に外部に取り出しても良いし、あるいは、経時によって、燃費向上効果が低下したり、消音性が低下したりした場合に、適宜外部に取り出しても良い。
【実施例】
【0040】
以下、実施例を参照して、本願発明におけるツーサイクルエンジンの燃費向上機構等について、さらに詳細に説明する。
【0041】
[実施例1]
1.準備工程/挿入工程
図5あるいは図6に示すようなツーサイクルエンジンを備えた50cc小型バイクDio(本田技研工業(株)製)を準備して、そのサイレンサの出口管に、図2(a)〜(d)に示すような中空円柱状であって、両端部を扁平化した金属製燃費向上部材(外径:5mm、内径:4mm、長さ:60mm、材質:鉄)を挿入した。
但し、図1に示すように、金属製燃費向上部材の端部に、ストッパとして、金属製チェーン(長さ:3cm)を設け、金属製チェーンのもう一方の端部を、サイレンサの出口管に取り付けるアダプタ(ネジ部材)の一部に固定し、所定距離だけ平行移動等できるように構成した。
【0042】
2.走行試験
次いで、小型バイクのツーサイクルエンジンを始動させた後、工場跡地内のアスファルト道路(1周200m)において、合計30kmの走行試験(時速30kmの定速運転、以下、走行タイプ1)を行って、単位体積燃料当たりの走行距離である燃費(Km/L)を測定した。
【0043】
また、小型バイクの定速走行中におけるサイレンサの消音性につき、以下の基準で評価した。
◎:ほとんどエンジン音が聞こえない。
○:わずかにしかエンジン音が聞こえない。
△:少々エンジン音が聞こえる。
×:顕著なエンジン音が聞こえる。
【0044】
[実施例2]
実施例2では、金属製燃費向上部材の外径を8mm、内径を7mmと太くした以外は、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0045】
[実施例3]
実施例3では、金属製燃費向上部材の外径を3mm、内径を2mmと細くした以外は、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0046】
[実施例4]
実施例4では、金属製燃費向上部材の材質をアルミニウム(Al)に変えるとともに、その長さを80mmと長くした以外は、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0047】
[実施例5]
実施例5では、金属製燃費向上部材の材質をアルミニウム(Al)に変えるとともに、その長さを40mmと短くした以外は、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0048】
[実施例6]
実施例6では、金属製燃費向上部材の材質をアルミニウム(Al)に変えたほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0049】
[実施例7]
実施例7では、金属製燃費向上部材の材質を銅(Cu)に変えたほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0050】
[実施例8]
実施例8では、図4(a)に示すように、金属製燃費向上部材の周囲に、アルミ箔(厚さ:15μm)を2重に巻いたほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0051】
[実施例9]
実施例9では、図4(d)に示すように、金属製燃費向上部材の周囲に、ステンレス製の円筒状メッシュを被覆したほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0052】
[実施例10]
実施例10では、図4(c)に示すように、ガイドレール付き金属製燃費向上部材に変えたほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0053】
[実施例11]
実施例11では、常時定速走行に変えて、10分間の30km定速走行、1分間のエンジンストップ(停止状態)、その後、かかる定速走行と停止状態を複数回繰り返し、合計30kmの走行試験(以下、走行タイプ2)に変えたほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0054】
[実施例12]
実施例12では、常時定速走行に変えて、5分間の30km定速走行、1分間のエンジンストップ(停止状態)、その後、かかる定速走行と停止状態を複数回繰り返し、合計30kmの走行試験(以下、走行タイプ3)に変えたほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0055】
[比較例1]
比較例1では、金属製燃費向上部材を用いなかったほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0056】
[比較例2]
比較例2では、金属製燃費向上部材を出口管に対して、平行移動できない状態に接着剤で固定したほかは、実施例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験(走行タイプ1)での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0057】
[比較例3]
比較例3では、常時定速走行に変えて、10分間の30km定速走行、1分間のエンジンストップ(停止状態)、その後、かかる定速走行と停止状態を複数回繰り返し、合計30kmの走行試験(走行タイプ2)に変えたほかは、比較例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0058】
[比較例4]
比較例4では、常時定速走行に変えて、5分間の30km定速走行、1分間のエンジンストップ(停止状態)、その後、かかる定速走行と停止状態を複数回繰り返し、合計30kmの走行試験(走行タイプ3)に変えたほかは、比較例1と同様に、50cc小型バイクにおける走行試験での燃費を測定するとともに、消音性を評価した。
【0059】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0060】
本発明によれば、ツーサイクルエンジンのサイレンサにおける出口管の内部に、平行移動する棒状の燃費向上部材を挿入してなるツーサイクルエンジンの燃費向上機構や燃費向上方法が提供されることにより、簡易構造であっても、効率的な燃費向上や消音効果を図ることが可能となった。
したがって、ツーサイクルエンジンにおける燃費低下の問題や、ガソリンの外部排出の問題、さらには、エンジン音が大きいという問題をそれぞれ解決することができるようになった。
その上、本発明によれば、ツーサイクルエンジンのみならず、フォーサイクルエンジンの燃費向上や消音性向上にも寄与することが期待される。
【符号の説明】
【0061】
5:ツーサイクルエンジンの燃費向上機構
10:棒状の燃費向上部材
10a:燃費向上部材の一方の端部
10b:燃費向上部材のもう一方の端部
10c:金属箔
10d:軸心(中心棒)
10e:軸心の取付部材
10f:スライド部材(ベアリング)
10g:ガイド部材
10h:円筒状のネット部材
12:アダプタ
12a:アダプタ上部
12b:アダプタ下部
12c:取付部材(ナット)
12d:取付部材(ボルト)
12e:排気口
12f:ストッパ部材
20:出口管
22:サイレンサ
24:通路
26:消音器(第2〜第4膨張室)
28:チャンバー(第1膨張室)
29:入口管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ツーサイクルエンジンから排出される排気ガスを導入する入口管と、当該排気ガスを外部に放出する出口管と、消音装置とを、備えたサイレンサ内に、当該サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材が挿入してあることを特徴とするツーサイクルエンジンの燃費向上機構。
【請求項2】
前記棒状の燃費向上部材が、中空管構造であることを特徴とする請求項1に記載のツーサイクルエンジンの燃費向上機構。
【請求項3】
前記棒状の燃費向上部材の周囲に、金属箔が席捲してあることを特徴とする請求項1または2に記載のツーサイクルエンジンの燃費向上機構。
【請求項4】
前記棒状の燃費向上部材の端部に、当該棒状の燃費向上部材の所定距離以上の移動を制御するためのストッパ部材が設けてあることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のツーサイクルエンジンの燃費向上機構。
【請求項5】
前記棒状の燃費向上部材が、前記平行移動するための軸心またはガイド部材を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のツーサイクルエンジンの燃費向上機構。
【請求項6】
前記棒状の燃費向上部材の周囲に、平行移動方向に沿って、円筒状のネット部材が設けてあることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のツーサイクルエンジンの燃費向上機構。
【請求項7】
前記棒状の燃費向上部材が、鉄、アルミニウム、ニッケル、真鍮、および銅からなる群から選択される少なくとも一つの金属から構成してあることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のツーサイクルエンジンの燃費向上機構。
【請求項8】
ツーサイクルエンジンから排出される排気ガスを導入する入口管と、当該排気ガスを外部に放出する出口管と、消音装置とを、備えたサイレンサ内に、当該サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材を挿入するツーサイクルエンジンの燃費向上方法であって、
前記ツーサイクルエンジンのサイレンサを準備する工程と、
前記サイレンサの出口管の内壁に沿って平行移動する棒状の燃費向上部材を挿入する工程と、
を含むことを特徴とするツーサイクルエンジンの燃費向上方法。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−76378(P2013−76378A)
【公開日】平成25年4月25日(2013.4.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−217181(P2011−217181)
【出願日】平成23年9月30日(2011.9.30)
【出願人】(592167558)
【Fターム(参考)】