テキスタイルの模様染色における化学薬剤の選択的な塗布
少なくとも1の染色された表面を有する、染色された基材。少なくとも1の染料溶液が、移染促進組成物および/または移染制限組成物と組み合わせて、表面の少なくとも一部分に渡って配される。移染促進組成物および/または移染制限組成物は、制御された様式で、基材に渡る染料溶液の少なくとも一部分の移染を調節する。染料移染は、染料固着の1工程としてのRF(高周波)エネルギーの印加により、抑制され得る。染色された基材を形成するための方法もまた、提供される。
【発明の詳細な説明】
【発明の開示】
【0001】
本発明は、複数の着色剤アプリケーターを用いて染料または液体着色剤を施すことにより、模様もしくは均一な色合いのいずれかの状態で、染料受容性基材を染色するための方法に関する。より具体的には、本発明は、基材上の染料または液体着色剤の移染に影響を与え、移染を制御する種々の化学薬剤の選択的な塗布と組み合わせて、染料または液体着色剤を用いる方法に関する。このような化学薬剤の選択的な使用は、基材に渡り模様づけられたデザインの明瞭度を高め得る。より具体的には、染料若しくは液体着色剤の塗布に対するこのような化学薬剤の制御された塗布は、(i)基材に渡って選択された帯域において分離して塗布された染料若しくは液体着色剤の混合を高め、および/または(ii)基材に渡って選択された帯域間の染料若しくは液体着色剤の色移染を減少させ、それにより模様づけられた帯域間の境界を鮮鋭にするために用いられ得る。個々に、または互いに組み合わせて、このように制御された色の混合および封じ込めを用いることは、均一に着色された基材、及び模様づけられた基材の双方において有用であり得る。本発明の実施を、色の混合における高められた自由度を提供するために用いることができる。加えて、不均一な染料移染を意図的に、且つ選択的に模様に導入する能力(単独で、または模様内の選択された帯域における染料の封じ込めとの組み合わせのいずれかで)は、3次元効果、及び他の望ましい視覚的な効果を引き起こす模様領域または要素を強調するために用いられ得る。
【0002】
背景
分離した局在化した染料の塗布によりテキスタイルのような吸収性基材を染色することは広く知られている。一般的に、テキスタイルに対するこのような分離塗布方法は、2つの異なるアプローチに沿って発展した。第1のアプローチ(「応需滴下」アプローチ)においては、染料若しくは液体着色剤のような液体着色媒体が、模様づけされるテキスタイル基材上に配置された、バルブを備えたアプリケーターから直接的に塗布される。1つのこのようなシステムの例においては、基材上に染料若しくは着色剤を施そうとする際にバルブを開き、必要な量の染料が基材の適当な予め決めた領域に供給された際に閉じられる。
【0003】
「応需滴下」装置の1つの構成においては、複数の個々の染料ノズルを含むプリントヘッドを模様づけされる基材の進路に渡り横切らせる。1以上のノズルは、別々に、個々の染料供給源に連結され、このそれぞれは、各々割り当てられた色の染料を供給し、多色の模様づけを提供し得、それにより当該アプリケーターが予め決められた色の染料を施すことを可能にする。「オン−オフ」指令の形態の電子的に規定された模様づけデータが、プリントヘッドが基材の幅に渡り横切り、且つ基材が順次、前方へ割り出されるとき、基材上に種々の所望の色の染料を施すために選択されたノズルに向けられ、それにより、プリントヘッドを有する染料ノズルが、基材の表面に渡りラスタパターンを描き、選択された模様により指示される基材の任意の所望される領域上に所望の色の染料を施すことを可能にする。
【0004】
応需滴下塗布を行うために、染料アプリケーターを、基材の進路を横切って配置される1つの定置列に配置することができ、所定色の染料のアプリケーターは、列の長さに沿って配置されており、恐らく異なる色の染料を施すアプリケーターと混ざり合わされる。あるいは、複数の定置列を用いることができ、所定色の染料アプリケーターを所定の列に制限することができるか、異なる列に割り当てることができる。いずれの場合にも、模様制御システムは、基材に対するアプリケーターの位置についての補正を提供する必要がある。例えば、複数の列の場合において、制御システムは、基材がこれら列までの距離を進むために必要な時間間隔をもって下流の列に対するアプリケーターの模様づけ命令を遅らせることにより、隣接する列間の距離を補正する必要がある。列は実質的に平行に、密に隣り合って、基材の進路に対して実質的に横向きに整列されるように配置され得るか、模様づけされる基材の進路に沿って他の予め決められた、間隔を空けた関係で位置される線状に配置され得る。
【0005】
分離した染料塗布の第2のアプローチは、「再循環」アプローチであり、そこでは、個々の染料アプリケーターは、所定色と関連付けられる。アプリケーターは、移動するテキスタイル基材の進路に沿って間隔を空けて配置された一連の平行な列のように、移動するテキスタイル基材に対して固定された配向で配置され得る。しかしながら、模様が必要とする際にのみ染料を施すというよりは、再循環アプローチにおけるアプリケーターは常に「オン」状態であり、従って、各列に付随する溜めマス中に向けられた染料の流れが連続的に生じる。染料の流れの軌道を変え、且つ染料の流れを、溜めマスを避け、電子的に定めた模様データにより特定された染料の量を施すに十分な時間間隔の間基材の表面を打撃させる空気または他の制御流体の断続的に作動される(すなわち、模様データに合わせて作動させる)横断流により基材の進路へと方向転換させた場合にのみ、染料溶液流は基材に到達し得る。別々の一式のアプリケーターと対応する溜めマスが用いられ、従って、特定の溜めマスに向けられた染料を収集し、且つそのカラー染料に割り当てられた染料アプリケーターの列に再循環させることができる。
【0006】
このようなデバイスの例を図1〜2に示し、その詳細は以下、及び共通に付与された米国特許第4,116,626号、第5,136,520号、第5,142,481号、及び第5,208,592号を含む多数の米国特許に論述され、この教示を本明細書の一部として本願に援用する。
【0007】
上で参照した米国特許に記載される装置及び技法において、基材の模様は画素に基づいて規定され、個々の着色剤、または着色剤の組み合わせが、基材上の対応する画素または画素サイズの領域に所望の色を与えるために各画素に割り当てられる。特定の画素へのこのような着色剤の塗布は、模様付けられる移動する基材の進路を横切って間隔を置いて平行に配置された種々のカラーバー(アプリケーションバーとしても知られる)の長さに沿って据えつけられた、多くの個々の染料アプリケーターの使用を通じて成される。所定のアプリケーションバーにおける各アプリケーターは、同一の着色剤貯蔵器から着色剤を供給され、また異なるアプリケーションバーは、通常異なる着色剤を含有する別の貯蔵器から着色剤を供給される。アプリケーションバーの長さに沿ったアプリケーターの位置と、移動する基材上の目的の画素の位置に対するアプリケーションバーの位置を適応させるアプリケーター動作指令を発生させることにより、特定の模様を再現することにより要求され得るように、任意のアプリケーションバーから入手できる任意の着色剤を、基材上の模様付けの領域内の任意の画素に塗布することができる。
【0008】
染料がテキスタイル基材表面上に施される方法に関係なく、種々の化学薬剤が、時折、槽、パジング浴、噴霧器、または他の適切な装置のような技術を用いて、基材上に塗布されてきた。このような装置を用いて、界面活性剤または他の染料移染改変剤は、例えば共通に付与された米国特許第4,740,214号及び第4,808,191号に説明されているように、模様情報に従って、選択的に染料を塗布する模様付け工程前に、基材の表面上に実質的に均一に塗布される。なお、上記米国特許の双方を、本明細書中で十分に説明したものとして、本明細書の一部として本願に援用する。
【0009】
従前の方法は、種々の基材に渡り均一な、及び模様付けされた着色の双方を提供するために用いられる一方で、従来技術の方法は2つの望ましい性能を十分に実現するものではないと考えられる。すなわち、第1に、単一の模様の範囲内で、選択的且つ優先的に、模様内でのインサイチュ(in situ)混色の性能を高める能力であり、第2に、単一の模様の範囲内で、選択的且つ優先的に、視覚的強調または3次元の感覚を与えるか、逆におよび同時に、視覚的に強調しない、または2次元の感覚を与える能力である。
【0010】
概要
本発明は、制御された染料の混合および高められた模様の明瞭度を達成するために、基材に渡る染料塗布と併せて染料移染制御剤の選択的な制御された塗布を用いることにより、従来技術に対する利点および代替物を提供する。所望の混色と模様明瞭度を達成すると、塗布された染料は、展開した模様の劣化を防ぐために、基材に渡って固着される。
【0011】
本発明の1つの側面によれば、染料移染制御剤の選択的な塗布は、基材上に施された染料の移染または拡散特性を、種々の視覚的効果を有し、それにより様々な審美的な利点を与える模様付けされた製品を提供するために、模様の特定の、予め決められた領域において改変し得るように、染色模様に対して位置合わせして、あるいは染料模様に関して行われ得る。とりわけ、染色溶液は、移染促進組成物および/または移染制限組成物と組み合わせて、制御された方法で基材に渡って塗布され得る。所望される場合、染料溶液は、実質的に、移染促進組成物、移染制御組成物と位置合わせして、または移染促進組成物と移染制御組成物の模様づけられた組み合わせと位置合わせして基材に渡って塗布され得る。
【0012】
本発明の他の側面によれば、染色模様は、化学移染制御剤と、塗布された染料および染料混合物の固着を通してさらなる染料の移染およびまたは混合を抑えるためのRF(高周波)加熱との組み合わせの二重の相補的な機構により、テキスタイル基材に渡って位置的に固定され得る。従って、このようなRF加熱の使用は、さらに模様明瞭度を高める。
【0013】
本発明は、本明細書中に組み入れられ、且つ本明細書の一部を構成する添付の図面を参照することにより、さらに記述される。
【0014】
本発明の種々の側面が、以下に、いくつかの例示的な態様、実施、及び手順に関連して記載され、開示されるが、これは、図および/または記載の対象となり得るようないかなるこのような特定の態様、実施、または手順に本発明を制限することは決して意図されない。むしろ、本発明の本質的な意図及び範囲、並びにその全ての等価物と一致し得るような全ての代替物及び改変を網羅するように意図される。
【0015】
詳細な記述
図1は、一式の8つの独立のアプリケーションバー(カラーバーとしても知られる)15で構成されており、個々のアプリケーションバーは所定の色の染料、および/または染料移染制御剤を施すことができる、サウスクロライナ、スパータンバーグのMilliken&Company社により開発されたMillitron(登録商標)テキスタイル模様づけ機のような、例示的なジェット式染色装置10を示す。従って、「アプリケーションバー」という語は、基材25に定められた模様で、少なくとも1の着色剤、または少なくとも1の染料移染制御剤を送給するために適合するいずれかの塗布装置を意味する。当然ながら、装置の所望の複雑さ、幅広い範囲の色の必要性および他の因子に依存して、より多くの、またはよりわずかなアプリケーションバーが用いられ得る。
【0016】
上記例示的な装置において、各々のアプリケーションバー15は、バーの長さに沿って離間整列して配置され、且つ当該バーに割り当てられた化学薬剤または着色剤を供給された複数の個々に制御可能な流体アプリケーターまたはジェットを含む。アプリケーションバーの単位長さ当たりのアプリケーターの数は、例えば、インチ当たり10、インチ当たり12、または他の数であり得る。各アプリケーションバーは、好ましくは、基材25の全幅に渡って広がる。描かれているように、テキスタイル布のような、模様付けされていない基材25が、ロール30から供給され得、一般的に44で示されるモーターにより駆動されるコンベア40により、フレーム20を通り、各アプリケーションバーの下を移送される。
【0017】
基材の正確に定められた領域において、染料移染制御剤及び染料溶液の正確な画素様の配置を提供する方式でアプリケーションバー15の下を移送された後に、模様付けされた基材25Aは、他の、乾燥、固着等のような染色関連工程へと通され得る。例えば、模様染色されたテキスタイル材料は、さらに以下に記載されるような、RF加熱器へと通され得る。RF加熱器を離れた染色されたテキスタイル材料は、その後、染料固着を完了させるために、蒸気固着装置を通って運ばれ得る。過剰の未固着の染料や他の化学薬剤を除去するために、水洗が用いられ得る。洗浄されたテキスタイル材料は、その後、乾燥機及び引取手段へと通される。
【0018】
図2は、図1の模様づけ装置の模式的な平面図である。この図に含まれるものは、電子制御システム52、電子位置合せシステム54、および回転パルス発生器または同様の変換器56と連携したコンピュータシステム50のブロック表示である。これらシステムの総合した操作は、制御された様式で基材へのアプリケーションバーからの流体の流れを制御する個々の「オン/オフ」作動コマンドの発生をもらたす。例としてのみであり、限定されるものではないが、このような制御システムは、共通に付与された米国特許第4,033,154号、第4,545,086号、第4,984,169号及び第5,208,592号により詳細に記載されており、この各々を、その全てを本明細書の一部として本願に援用する。
【0019】
本明細書中では本発明を、この再循環型デバイスに基づいて記載するが、本明細書中の教示はこのようなデバイスに限定されず、応需滴下型のデバイスも用いられる。どの手法を用いても、テキスタイルは、用途、および染色すべき基材の繊維量に応じて、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料、媒染染料または顔料を含む幅広い種の天然染料または合成染料を用いて模様付けされ得る。本明細書中の教示は、幅広い範囲のこのような染料、および幅広い範囲のテキスタイル材料の使用に適用できる。本発明を用いて模様染色され得るテキスタイル材料は、編成、織成および不織テキスタイル材料、タフテッド材料、結合材料等を含む。典型的には、必ずしもではないが、このようなテキスタイル材料は、パイル表面を含む。このようなテキスタイル材料は、フロアカバー(例えば、カーペット、ラグ、カーペットタイル、フロアマット等)、ドラペリー生地、椅子張り生地(自動車用の椅子張り生地を含む)等を含み得る。このようなテキスタイル材料を、ポリエステル、ナイロン、ウール、コットンおよびアクリルのような天然繊維または合成繊維から形成することができ、また、テキスタイル材料はこのような天然繊維若しくは合成繊維の混合物、またはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
下記の解説を容易にするために、以下の定義を、他に示されるかまたは文脈により要されることがない限り、用いることとする。
【0021】
「模様付け」という語は、予め設定したデータに従って、基材の表面を構成する特定された領域(または全領域)への染料の選択的な塗布を意味する。模様付けは、複数の色の配置、または基材全体への単一色の均一な塗布を含み得る。
【0022】
「模様形状」という語は、基材上への染料または化学薬剤の配置を示すために用いられる際は、再現されるべき模様に合わせた配置を意味する。模様形状での配置の一例は、模様を構成する種々の着色された領域に位置合わせされた配置である。しかしながら、このような配置が、本明細書中の教示により成され得る1以上の効果を得るために、模様要素に必ずしも位置合わせする必要がない場合に(例えば、化学薬剤が、模様要素の端から予め決めた距離離れて位置する不規則な形の領域に塗布されるようなとき)、模様形状での配置は、単に、特定の模様要素に関する配置を言うこともある。
【0023】
「画素」という語は、色または対応する量の着色剤を、正確に且つ確実に塗布することができる基材上の最も小さい領域または部位を述べるために用いられる。従って、画素は、模様が規定される基礎であり、本明細書中に記載される模様付けデバイスについては、これらの模様を再現するために必要とされる染料アプリケーター作動コマンドを発生するための基礎である。派生語である画素様は、例えば、画素に基づいて規定される模様または模様要素を再現するときに行われるように、基材上の特定の画素サイズの位置に染料または他の液体の割り当てまたは塗布を記載するために用いられる。「染料溶液」という語は、基材上に施される(任意の適した種類の)染料および任意に、本明細書中で教示するような他の添加物を含む種々の成分の液状混合物を意味する。染料溶液は「染料」または「着色剤」とは区別されるべきであり、後者の語は、染料溶液の事実上の染料または着色剤成分を指す。
【0024】
「プロセスカラー」という語は、いかなる他の染料または着色剤とのあらゆる混合または配合前に、基材上に塗布された際の染料または着色剤の色を意味する。プロセスカラーの組は、それらの色から基材上に発生されるべき全ての他の色を構成する当該色である。
【0025】
「基材」という語は、限られないが、個々の天然糸または合成糸で構成されるテキスタイルを含むあらゆる染料受容性基材を意味する。本明細書中に記載した方法が特に適するテキスタイル基材は、カーペット、ラグ、カーペットタイルおよびフロアマットを含むファブリックおよびフロアカバーを包含する。しかしながら、本明細書中の教示は、インテリアデザインファブリック(例えば、ドレープ生地、家庭用リネン、椅子張り生地、壁掛け布等)、旗または他のグラフィック標識において用いられるファブリック、自動車用ファブリック(例えば、ドアパネル、シート、ボルスター、インサート、ヘッドライナー、トレー、トランクライナー等のためのファブリック)、服飾布、および他のファブリックのようなファブリックの模様付けに十分に適用できる。
【0026】
「レベル」という語は、同一色で染色された基材の領域が、視覚的に均一な色を示す度合いを意味する。低いレベルを有する染色された領域は、まだらな外観または多色混合の外観を示す。
【0027】
「拡散」または「拡散する」という語は、柔らかな、比較的ピントのはずれた外観を有すること、または、文脈が指示し得るように、比較的高い染料濃度の領域から、比較的低い染料濃度を有する隣接する領域への染料の移染により生じる外観を意味する。本明細書中で用いられる関連する語である「ソフトフォーカス」は、拡散した、またはわずかにピンボケの外観を有する模様または画像を述べるために用いられる。
【0028】
「インサイチュ(in situ)混色」およびその派生語は、染料が基材に塗布された後の染料の移染または混合を指す。1つの例において、同じ色の染料が、隣接する画素に塗布され、隣接する画素間での染料の移染は、基材の染色された領域により均一な外観を促進する傾向がある。他の例において、2以上の色の染料が、同じ画素に塗布され、主に同じ画素内で(および、より低い程度で、染料の横への移染が生じるその程度によって、隣接する画素において)混色が起こる。第3の例において、異なる色の染料が隣接する画素に塗布され、種々の塗布された染料をより高い程度/より低い程度にまで効率的に混合する画素間の移染が起こり、混成色を作り出す。当然ながら、上記の種々の組み合わせ(例えば、2以上の隣接する画素のそれぞれに多数の染料が塗布され、画素間の移染が起こる)が可能であり、一定の条件下で有利であり得る。
【0029】
「高鮮明」という語は、細部の高度な印象を与える、鮮鋭で、高度に焦点を合わせた外観を有することを意味する。これは、本明細書における教示によれば、染料を、染料が塗布されたすぐ隣の領域から移染または拡散されるその程度を効果的に制限する染料移染阻害剤または染料移染抑制剤の塗布により達成され得る。このような移染または拡散は、横方向(例えば、隣接する画素に)、または垂直方向(例えば、カーペット、ラグ、またはパイル布上の定めた画素を占めるパイル糸の長さに沿って)であり得る。
【0030】
「緩慢飽和度(loose saturation)」という語は、繊維束中の繊維が染色されぬまま残っており、それにより、糸束において白色の外観を有している状態を指す。関連語の「霜白」という語は、先端より下の部分と比較して繊維束の先端におけるより明るい色合いの着色の外観であって、それによって、あたかも部分が染められてないままであるかのように表面が見えるようにすることを指す。
【0031】
「超画素」という語は、インサイチュ混色が促進されるモノリシック単位(すなわち、個々の画素と同様の模様内で覆われ得る)として用いられるように作られた、隣接する画素の群を述べるために用いられる。事実、プロセスカラーの混合を含む各単一画素を作るために用いられるインサイチュ混色技術は、むしろ、多数の画素構造内で用いられる。
【0032】
上に記載した双方の従来技術の模様染色アプローチ(すなわち、応需滴下または再循環)の種々の態様が少なからぬ成功を収めたという事実にも関わらず、性能のいくつかの分野における改善が推し進められている。1つのこのような分野は、基材に到達した後の染料溶液の流れまたは移染特性を含むものであり、本明細書中の教示が指向される分野である。例えば、1以上の染料の均一な塗布を必要とする模様の領域において、染料溶液が基材に塗布された後の不十分な画素間のインサイチュ混合または染料移染に結びつく、小さいが著しい画素間の不均一性による、微細な、しかし視覚的に外見上まだらな印象を有する染色領域をもたらす不均一な色レベルを有する領域を見出すことは珍しいことではない。
【0033】
インサイチュ混合を高めるために、染料溶液の粘度を、画素間の染料移染を促進するために減じることができることが一般的に知られている。しかしながら、このような減じられた粘度は、塗布された模様の領域における十分な鮮明度または高鮮明さを得ることができないことをも導き得る。これは、種々の染色された部分間の、制御されないわずかにはっきりしない境界をもたらし得る。減じられた粘度は、着色剤との減じられた接触時間のために、染色されぬままに糸束が残る緩慢飽和度または「霜白」をももたらし得る。
【0034】
本発明による方法は、塗布された染料が、実質的に、基材に渡る予め決められた帯域に含まれる一方、制御された染料移染を他の帯域においては許すように、基材25(図2)に渡って染料移染制御剤を選択的に塗布することにより、インサイチュ混色を促進すると同時に、基材に渡る高鮮明な画像の展開を促進するという一見矛盾した要求に取り組む。とりわけ、移染促進表面活性剤が、基材に渡る高められたおよび制限された移染帯域の模様配列を展開するように、移染制御剤と組み合わせて用いられる。
【0035】
第1の意図される実施によれば、第1のまたは第2のアプリケーションバーの一方において、移染促進組成物、またはPapalosへの米国特許第4,110,367号(本明細書の一部として本願に援用)に記載されているようなアニオン性の表面活性剤等の「均質剤(leveler)」が、基材25に渡って、均一に、または所望の模様状のいずれかで塗布される。移染促進組成物の性質は、好ましくは、中性であるか、染料溶液と同じイオン性のものである。最も好ましくは、移染促進組成物は、染料溶液と同じイオン性のものであり、基材に対しては対イオン性のものである。従って、基材が、一般的に性質が中性またはカチオン性であるナイロンである場合に、移染促進剤および染料溶液は、最も好ましくは、性質がアニオン性であり得る。例としてのみであり、限られないが、アニオン性の種々の意図される移染促進表面活性剤は、混合脂肪アルコール硫酸ナトリウム、アルキルスルホネート、アルキルジアリールスルホネート、スルホン化スルホンジアルキルスルホスクシネート、アルカン−アミド−ベンゼンスルホン酸およびアルケン−アミド−ベンゼンスルホン酸、モノスルホン化アルキルフェノキシグリセロール、アルキル置換ジフェニルエーテルスルホネートおよびスルホン化アルキルフェノキシアセトンを含む。対応するスルフェート化合物またはホスフェート化合物が、任意の上記したスルホン化化合物の代わりに用いられ得ることも意図される。特に有用であると考えられる1つのアニオン性表面活性剤は、米国、ペンシルバニア、ピッツバーグに会社を有するBayer Corporation Industrial Chemicals Division社製の、販売名称「TANAPURE AC」の下で入手できるスルホネート分散体であると考えられる。
【0036】
他の第1のまたは第2のアプリケーションバーにおいて、移染制限組成物を塗布することができる。本発明の好ましい実施によれば、移染制限組成物は、染料溶液に対して対イオン性である。移染促進組成物がイオン性である場合には、移染制限組成物は、好ましくは、移染促進組成物に対して対イオン性である。移染制限組成物の塗布は、移染が制限されるべき帯域に渡って均一であり得るか、移染を防止する境界を規定するように輪郭をたどるように塗布され得るかのいずれかである。染色されるべき帯域に渡る移染制限組成物による被覆は、その帯域における高鮮明な彩色の展開を容易にする。好ましくは、移染促進組成物と移染制限組成物は、一方の他方との混合が、混合物の性質を一方の移染性質から他方のものへと徐々に変化させるように(すなわち、移染促進から移染制限へと、逆もまた同様)互いに、質的に且つ量的に反作用する。
【0037】
当然ながら、移染制限組成物または移染促進組成物のどちらか一方が、基材の全表面に渡って均一に塗布されるべき場合には、このような塗布は、アプリケーションバー15の上流で、パッドコーティング、浸漬コーティング、スプレイコーティング等のような種々の塗布法により行われ得ることが意図される。このような実施を用いる場合には、反作用する移染制御組成物を、基材25に渡る移染性質を調節するために、染料の打撃前に、第1のアプリケーションバーにおいて模様状に塗布することができる。例としてのみであり、限られないが、どちらか一方の移染制御組成物が、スプレイ装置等によりアプリケーションバーの上流で均一に塗布され得る。
【0038】
理解され得るように、予め塗布された移染促進組成物に対して反作用性の移染制限組成物の塗布は、移染制限組成物が塗布された場所において、少なくとも部分的に移染促進組成物の効果に勝る傾向がある。従って、たとえ、基材が、準備段階において移染促進組成物を用いて均一に処理されていても、減じられた移染の局在化した帯域が、有効量の反作用性の移染制限組成物の模様状の塗布により、基材に渡ってもたらされ得る。同様に、基材は、移染制限組成物を用いて前処理を施された後に、反作用性の移染促進組成物を用いて模様付けられ得る。従って、基材の染料移染性質を、基材上のそれぞれの部分における移染制限剤および移染促進剤の相対量を制御することにより、基材に渡って変化させることができる。さらに下に述べるように、このことは、これまで達成できなかった程度にまで、基材に渡る染料の制御された混合および封じ込めを可能にする。
【0039】
意図される実施によれば、移染制限組成物は、染料溶液と反応するように、染料溶液中の成分に対して対イオン性である成分を含む。従って、好ましい実施によれば、染料溶液または移染制限組成物の一方がカチオン性成分を含む一方で、他方は、アニオン性成分を含む。所望の場合、染料溶液は、染料溶液の対イオン性成分と移染制限組成物との間の反応を高めるような成分をも含み得る。好ましくは、移染制限組成物または染料溶液の少なくとも一方における反応性のイオン性成分は、例えば、少なくとも約5,000、好ましくは少なくとも約10,000の分子量を有する材料であるイオン性ポリマー材料を含む。より好ましくは、染料溶液と移染制限組成物の双方が、少なくとも約5000(より好ましくは少なくとも約10,000)の分子量を有する反応性ポリマー材料を含む。最も好ましく意図される実施によれば、染料溶液と移染制限組成物の双方が、少なくとも約5000(より好ましくは少なくとも約10,000)の分子量を有するアニオン性の反応性ポリマー材料を含む。意図されるアニオン性ポリマー成分は、キサンタンガム、アクリル酸含有ポリマー、アルギン酸ナトリウム等のようなバイオ多糖類を含む。カチオン性ポリマー成分は、例えば1級、2級および3級アミン(4級化されているもの、されていないものの双方)を含むポリアクリルアミドコポリマーである、カチオン性基を有するポリアクリルアミドコポリマーを含む。非ポリマーのアニオン性成分は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のような、アニオン性表面活性剤を含む。非ポリマーのカチオン性成分は、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のような、カチオン性表面活性剤を含む。
【0040】
染料溶液および移染制限組成物が反応性の対イオン性成分を含有する工程において、カチオン性成分(染料溶液または移染制限組成物の一方に由来する)およびアニオン性成分(染料溶液または移染制限組成物の他方に由来する)は、好ましくは、染料溶液がテキスタイル材料に塗布された際に、互いに接触するようになる。その後、イオン性相互作用が起こり、染料の不所望の移染を効果的に制御する。例えば、テキスタイル材料への染料の塗布前に、カチオン性成分とアニオン性成分を反応させておいた場合、形成され得る染料の液滴が、所望の模様での染料の塗布を、非常に困難に、または不可能にさえし得る。他方で、カチオン性成分とアニオン性成分とを、染料溶液が、かなりの時間に渡りテキスタイル材料と接触した後に反応させると、染料は、既に望ましくなく移染してしまっていることがあり得る。
【0041】
移染が制限されるべき帯域における、カチオン性成分とアニオン性成分の所望の相互作用は、所望の模様での染料溶液の塗布の前に、水溶液に担持された移染制限組成物(移染促進剤に対して基材に渡って模様状に配される)の形態で一方のイオン性成分をテキスタイル材料に塗布し、その後、染料溶液の成分としての対応する対イオン性材料を、移染制限剤と位置合わせして塗布することにより都合よく達成され得る。従って、移染制限剤の成分として、カチオン性成分を、最初にテキスタイル材料に塗布した場合に、染料溶液の成分として、アニオン性成分を塗布することができる。同様に、水溶液の成分として、アニオン性成分を、最初にテキスタイル材料に塗布した場合、染料溶液の成分として、カチオン性成分を塗布することができる。
【0042】
上述したように、一方の反応性のイオン性成分を含有する移染制限組成物は、染料溶液の塗布前に、好ましくは、染料が含められるべき帯域においてテキスタイル材料に塗布される。このイオン性成分、すなわち、アニオン性成分またはカチオン性成分のいずれかは、典型的に、水溶液の重量に基づいて、約0.1重量パーセント〜約10重量パーセント、好ましくは、約0.2重量パーセント〜約5重量パーセントの量で溶液中に提供され得る。広い範囲の付加的なテキスタイル染色前処理化学物質もまた、これら化学物質が上記したようなイオン性相互作用を妨げない限り、任意に、水溶液中に提供され得る。例は、例えば、湿潤剤、緩衝液等を含む。理想的には、水溶液のpHは約3〜約9であり得るが、pHは重要なものではない。
【0043】
テキスタイル材料に塗布される移染制限組成物を担持する溶液の量は、テキスタイル材料を完全に飽和させるに十分な量から、テキスタイル材料をただわずかに湿らせ得るのみである量まで広く渡り得る。提供されるカチオン性成分またはアニオン性成分の量は、イオン性基の分子量、数等に依存して幅広く変化し得る。一般的に、塗布される移染制限組成物の量は、テキスタイル材料の重量に基づいて、約1重量パーセント〜約500重量パーセント、好ましくは、約5重量パーセント〜約300重量パーセント、最も好ましくは、約50重量パーセント〜約200重量パーセントであり得る。
【0044】
所望の模様状での移染制限組成物の塗布後に、テキスタイル材料は、染料溶液の塗布前に乾燥され得るか、あるいは、染料溶液が、テキスタイル材料を事前に乾燥することなく、直接的に塗布され得る。
【0045】
当然ながら、他の移染制限組成物が、基材に渡って模様状に塗布され得る。例としてのみであり、限られないが、米国特許第4,808,191号(本明細書の一部として本願に援用する)に記載されている方法であって、+2以上の電荷を有する金属塩の水溶液を基材に塗布した後、染料および予め塗布された金属塩と錯体を形成する増粘剤を含有する水溶液を基材に渡って模様状に塗布する方法が用いられ得ることが意図される。染料に配位する錯体によって、模様の境界を実質的に越えた染料の移染を防止する。このような方法において、染色されるテキスタイル材料の前処理の結果、水性の染料−増粘剤溶液が後に塗布された際に、所望の模様に従って、増粘剤が「固着された」金属と錯体を形成し、この錯体が染料に配位するように、金属塩がテキスタイル材料の繊維に結合すると考えられる。結果として、染料分子は、テキスタイル基材−金属−増粘剤−染料錯体によって安定に結合し、拡散または毛管現象経路のいずれかによる染料移染は防止される。潜在的に好ましい金属塩は、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、バリウム、ガリウムおよびベリリウムの金属塩を含む
潜在的に好ましい実施によれば、このような移染制限組成物が用いられる場合には、従来技術において教示されるように全体の基材に渡って配されるよりもむしろ、高鮮明さをもたらす移染制限が望まれる帯域において、基材に渡って模様付けられた配置で選択的に塗布されることが意図される。加えて、移染促進剤は、移染制限と移染促進の組み合わせが基材に渡って同時にもたらされるように、好ましくは、基材の残りの少なくとも一部分に渡って配される。
【0046】
染料固着/受容性組成物の形態の他の移染制限組成物が、選択的に、高鮮明さが所望の帯域に塗布されることもまた、意図される。1つの考えられる実施によれば、このような染料固着/受容性組成物は、染料固着剤およびインク受容剤を含む。1つの態様において、染料固着/受容性化合物は、相溶性樹脂バインダを含み得る。白化剤、抗微生物剤、光安定剤/紫外線吸収剤および潤滑剤のような、さらなる添加剤が、染料固着/受容性組成物と共に用いられ得る。
【0047】
1つの態様において、染料固着剤は、少なくとも約1000の分子量を有する。1つの態様において、染料固着剤は、高度にカチオン性の反応性アミノ化合物を含む。1つの潜在的に好ましい反応性アミノ化合物は、高い正電荷密度(すなわち、グラム当たり少なくとも1ミリ当量)を有する化合物である。本発明で用いられ得る反応性アミノ化合物は、少なくとも1の1級、2級、3級または4級アミノ基を含有する化合物を含む。さらに、反応性アミノ化合物は、テキスタイル基材または樹脂バインダと反応して、それに対して結合を形成し得る反応性基を含有し得る。反応性基の例は、エポキシド、イソシアネート、ビニルスルホンおよびハロトリアジンを含む。とりわけ、エピクロロヒドリン−ポリアミン縮重合体が特に有用であり得る。
【0048】
有用であり得る染料固着/受容性組成物中のインク受容剤は、吸着性または吸収性によりインクを受容する無機粒子を含む。1つの態様において、インク受容剤の粒子サイズは、約10ミクロンであるか、それ未満である。他の態様において、インク受容剤の粒子サイズは、約3ミクロンであるか、それ未満である。さらに他の態様において、インク受容剤の粒子サイズは、約1ミクロンであるか、それ未満である。意図されるインク受容剤の例は、シリカ、シリケート、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化チタンを含む。ベーマイトアルミナおよびシリカゲルが、染料固着/受容性組成物中のインク受容剤として特に首尾よく働き得、とりわけ、カチオン電荷を担持するように処理されたシリカゲルが特に首尾よく働き得る。シリカゲル粒子の場合に、アルミナ表面コーティングとカチオン性シラン表面変性が所望され得る。微孔性のベーマイトアルミナとシリカゲルが、アニオン性染料/顔料のような染料/顔料のさらなる物理的な捕獲を可能にし、改善された洗濯堅牢度をもたらすと考えられる。1つの態様において、無機粒子は、約10nm〜約200nmの孔直径の多孔度を有する。
【0049】
殆どの配合において、カチオン性の反応性アミノ化合物由来のカチオン性電荷は、無機粒子上に存在するカチオン性電荷よりもより大きい。従って、無機粒子上の比較的小さいカチオン性電荷の単なる存在は、カチオン−アニオン電荷相互作用を介して染料/基材相互作用を著しく高めることはない。処理された基材の移染制限性質をさらに改善するのは、高度に荷電した反応性アミノ化合物と微孔質無機粒子の組み合わせである。
【0050】
1つの態様において、染料固着剤は、典型的に、処理されたテキスタイル基材の約0.2重量%〜約20重量%を構成し得る。インク受容剤は、典型的に、処理されたテキスタイル基材の約0.2重量%〜約20重量%を構成し得る。1つの態様において、染料固着/吸収組成物は、処理されたテキスタイル基材の約1重量%〜約20重量%を構成する。他の態様において、染料固着/吸着組成物は、処理されたテキスタイル基材の約1重量%〜約5重量%を構成する。他のさらなる態様において、染料固着/吸着組成物は、処理されたテキスタイル基材の約5重量%〜約10重量%を構成する。テキスタイル基材上への配置前に、染料固着/受容性組成物は、好ましくは、安定な水溶液または分散体の形態である。
【0051】
示したように、染料固着/吸着組成物は、染料の移染を制限するために、樹脂バインダと組み合わせて用いられ得る。樹脂バインダは、テキスタイル基材の繊維との良好な結合を有する特性のものであり得ることが意図される。樹脂バインダは、熱可塑性または熱硬化性のポリマーバインダであり得る。このようなバインダは、好ましくは、約40℃より低いガラス転移温度を有する。また、洗濯に供した際に、バインダが耐久性であることが好ましい。樹脂バインダの例は、エチレンビニルアセテート、アクリル、ウレタンポリマー、ポリアミド、ポリエステルおよびポリビニルクロライドのような、非アニオン性、またはカチオン性ラテックスを含む。1つの態様において、樹脂バインダは、処理された基材の最大で約10重量%までを構成する。
【0052】
染料固着剤は、電荷型引力で、イオン性染料と相互作用し、および本発明の染料固着剤は、典型的に、テキスタイル基材の繊維と反応してテキスタイル基材と化学結合を形成し得るということが考えられる。樹脂バインダを用いる態様において、染料固着剤は、テキスタイル基材と結合している樹脂バインダと、化学的に結合し得るということが考えられる。また、インク受容剤は、インクジェットプリンタからのインクに、染料固着剤と相互作用するための表面積を与え、それにより、染料固着剤の効果が促進するということが考えられる。
【0053】
塗布された染料と位置合わせして、上記したような染料固着/吸着組成物の模様状に塗布することは、印刷されたテキスタイルに、優れた色の明るさと印刷解像度を提供し得る。これらの利益は、画素ごとに基づいて、処理されたテキスタイル基材上に配された水性顔料インクについて、特に著しいものであり得る。
【0054】
さらにとりわけ、重量で約10対1またはそれよりも大きい顔料対インク比を有する、バインダの水性顔料インクを、処理されたテキスタイル基材上に印刷することができ、処理されたテキスタイル上に、耐水および耐候性の印刷された画像を作り出す。さらに、約10重量%またはそれ以下のバインダを有する顔料インクを、無機粒子を有する、または有さない4級アミノ化合物の処理剤とともに、テキスタイル基材上に印刷することができ、耐久性の印刷を提供する。4級アミノ化合物は、化学結合、または任意の他の適切な方法により、テキスタイル基材に固定され得る。処理剤は、水性インクを受け取ると、膨らむことが考えられる。この膨張によって、インクの顔料粒子、および高いカチオン性であり多孔性の処理剤との相互作用の機会が増加することも考えられる。
【0055】
本明細書中で用いられる染料溶液という語は、幅広い種類の染料液剤を含むことを理解すべきである。従って、例えば、染料または着色剤は、水性媒体に溶解し得るか、あるいは、染料は完全に溶解せずに、むしろ単に、模様染色の最終用途使用に適していると慣習的にみなされる形態で、水性媒体中に分散または懸濁し得る。一般的に、テキスタイル材料に塗布される染料溶液は、酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料、直接染料、顔料等を含む1以上の慣用の染料を、染色されるべきテキスタイル材料に応じて含有し得る。染料溶液中の染料の濃度は、テキスタイル染色操作について一般的である範囲であり得、例えば、染料溶液の重量に基づいて、約0.01重量パーセント〜約2重量パーセント、好ましくは、約0.01重量パーセント〜約1.5重量パーセントであり得る。当業者にとって明らかであるような、酸性材料、均質剤、増粘剤および脱泡剤のような他の慣用の配合剤および添加剤を、染料溶液中に供給することができる。染色溶液中に存在するアニオン性またはカチオン性成分は、上記したような主な機能に加えて、染料溶液中での一定の所望される機能を果たし得る。従って、とりわけ、このような成分が、用いられる模様付け技術に依存して、幅広く変化し得る染料溶液の所望の流動学特性を制御し得ることが見出された。
【0056】
染料溶液中の染料の濃度は、所望される色に完全に依存するが、一般的には、テキスタイル染色操作について一般的である範囲であり得、例えば、増粘剤を除いた染料溶液の重量に基づいて、約0.01〜約2重量パーセント、好ましくは、約0.01〜約1.5重量パーセントであり得る。水性染料溶液に加えられる増粘剤の量は、個々の模様染色法に対して適切な、所望される粘度を提供するように選択される。複数の異なるカラー染色溶液を用いる場合に、水性増粘剤とその濃度は、染料溶液ごとに同じであるか、異なり得るが、しかし、一般的に、全ての染料溶液中で同じ増粘剤を用いることが好ましいということを理解すべきである。
【0057】
一般的に、染料は、増粘剤、脱泡剤、湿潤剤、殺生剤、および模様付け装置により施される染料溶液をなすための他の添加剤等の、多くの他の成分と組み合わされる。一般的に、増粘剤の量は、染料溶液の重量に基づいて、0.1未満〜約3重量パーセントに渡る。図1および2に示したような、染料溶液を再循環する模様付けシステムに必要とされるものは、染料溶液が基材上に向けられた際にのみ染料溶液が流れる応需滴下模様付けシステムに必要とされるものとは、いくぶんか異なり得る。最適な性能のためのこのような添加剤の相対的な割合と正確な組成は、それぞれの種類の模様付け装置について異なり得るが、本明細書中に開示された新規の教示が、両種の模様付け装置のための着色剤の混合に適用でき、および着色剤溶液が、基材表面に施される様式と関係なく、優れた結果を得ることができることが見出された。
【0058】
図1〜2に示される装置について、約50〜1,000センチポイズの範囲の粘度が有用であることがわかった。他の装置、例えば、染料溶液を再循環しないシステムを用いる装置は、最も良い結果のためには、操作条件(例えば、染色圧およびアプリケータオリフィスサイズ)次第で、約800〜約5000センチポイズの範囲の粘度が必要であると考えられる。本明細書中に挙げた全ての粘度値は、No.3スピンドルを有するブルックフィールドLVT粘度計で、25℃で30rpmにて駆動することにより測定されるように意図されることを特筆する。
【0059】
移染増強組成物と移染制限組成物の両者で、基材25を選択的に模様付けすることにより、大いに高められた自由度が、複雑な模様の展開においてもたらされることが見出された。とりわけ、模様状の染料塗布と組み合わせた選択的な処理薬品の塗布は、着色された領域間の鮮鋭な変わり目を形成する本質的な自由さと、プロセスカラーの制御された模様状の混合の展開とをもたらす。
【0060】
例としてのみであり、限られないが、図2の抜き出し部75において、複数のアプリケーションバーからの多数の染料溶液の塗布により作製され得るような着色されたブロック70が、背景帯域80の内側に示されている。着色されたブロック70は、色合いおよび/または色82、84、86の種々の帯域を包含し得、このような帯域間の異なる変わり目を有する。例としてのみであるが、第1の帯域82において、本質的に一様な、濃く陰影をつけた高鮮明な同一色が、化学的に処理された基材に渡って、1以上のアプリケーションバーからの1以上の染料溶液の模様状の塗布により達成し得る。第1の帯域82と隣接する第2の帯域84の間の連続した境界線90により示されるように、鮮鋭で、十分に明確な境界が、第1の帯域82と隣接する第2の帯域84の間に存在する。
【0061】
本発明の潜在的に好ましい実施によれば、染料溶液の塗布前に、基材25は、第1の帯域82を本質的に包含する模様状に基材25に渡って移染制限組成物を配するように、カチオン性ポリアクリルアミドコポリマー、4級アンモニウム塩、または染料溶液中の薬剤に対して対イオン性である上述した他の適切な組成物を含有する水溶液のような、カチオン性の移染制限組成物を用いて処理される。潜在的に好ましい実施によれば、移染制限剤の配置は、好ましくは、第1の帯域82の境界と同一の広がりをもつ。例としてのみであるが、移染制限組成物の制御された配置は、1つのアプリケーションバー15を用いる噴射衝突型模様付けによりもたらされ得る。この点について、移染制限組成物は、基材25の表面に渡って直接的に塗布され得るか、あるいは、移染制限組成物に対して反作用性の移染促進組成物を予め塗布した上に重ねて塗布され得るということを理解すべきである。移染制限組成物が塗布された後、増粘剤を含む、または含まない染料を含有する少なくとも1の染料溶液が、所望される模様状に塗布される。染料および/または任意の増粘剤は、第1の帯域82を覆っている移染制限組成物と反応するイオン性のものである。移染制限組成物と、染料溶液中の対イオン性成分との間の反応のために、境界90を越える染料の拡散は、実質的に防げる。
【0062】
さらなる例として、第2の帯域84内で、移染制限組成物は、移染促進組成物と組み合わせて、第1の帯域とは異なる移染性質を提供するような相対濃度で存在する。つまり、画素間の染料拡散の制御された度合いを可能にする。さらに、徐々に分散された陰影により示されるように、帯域に渡って、染料拡散の度合いを徐々に変化させることもできる。図示される例示的な実施において、境界線90にぴったりと隣接する第2の帯域84における染料拡散を、基材25に渡って、支配的な濃度の移染制限組成物を塗布することにより、実質的に排除することができる。しかしながら、境界90から距離が離れると、移染制限組成物の濃度は、移染促進組成物の濃度と比べて減少し得る。従って、ピクセル間の染料拡散は、境界90を除いた位置での「ソフトフォーカス」を導くことを促進する。移染促進組成物と移染制限組成物の制御された配置は、従って、制御された陰影または投影効果を与えるように用いられ得る。このような陰影または投影効果の使用は、第1の帯域82のような高鮮明な領域に、周囲のソフトフォーカスの帯域と比べて鮮鋭なフォーカスをもたらし、それにより、3次元的な視覚的印象を作り出す。
【0063】
上記したように、移染促進組成物と移染制限組成物は、好ましくは、基材に渡る拡散性質を移染制御組成物の相対量の量的な操作により所望される通りに調節できるような、本質的に反作用する性質のものである。例としてのみであるが、1の意図される実施によれば、第2の帯域84の全面は、移染促進組成物または移染制限組成物の一方で前処理され得る。その後、他方の移染促進組成物または移染制限組成物が、帯域84の異なる部分に最初に塗布された組成物に、完全にまたは部分的に反作用するように、所望の濃度様式で塗布され得る。
【0064】
第2の帯域84と隣接する第3の帯域86の間の断続的な境界線88により示されるように、本発明の実施は、一方のカラー帯域から他方へのゆるやかな合わさりを可能にし得ることが意図される。さらに、インサイチュ混合色のより広い系列が、少数のプロセスカラーを用いて達成され得ることが意図される。とりわけ、移染制限剤と移染促進剤の制御された組み合わせによって、基材における染料移染特性を制御することにより、種々の中間色に及ぶ色のインサイチュ混色が、第3の帯域86に渡る本質的に均一な色合いにより図示されるような、本質的に一様な単一の色合いを得るように制御される。
【0065】
上述した例から理解され得るように、基材に渡る染料、移染制限組成物および移染促進組成物の組み合わせの幅広い系列は、異なる効果を得るためにも利用され得る。種々の組み合わせが、図2で説明されるベン図により、理論的および位置的の双方で示される。理解され得るように、染料を含有する任意の帯域が、単独で、または染料を含まない(無色の基材を含む)1以上の帯域との組み合わせで用いられ、所望する模様を得ることができる。例え染色された帯域が、移染促進組成物および/または移染制限組成物を含有する帯域と重なることがなくても、これは当てはまり、何故なら、隣接する帯域が、これらの帯域への移染に影響を与え、それにより外観に影響を及ぼすからである。
【0066】
本方法の実施は、いわゆる超画素(すなわち、模様内の個々の画素として用いられる隣接する画素の群)という取り決めを用いてプロセスカラーを効果的に混合する能力をもたらす。この技法の例は以下の通りである。模様が、領域内の各画素に、特定の、広範な割合で白い顔料と赤い染料を塗布することにより形成される特定のピンクの色合いを必要とする領域を含有し、およびその色合いが、送出システムが送出できるよりも少ない量の赤い染料を各画素に必要とする場合に、それにもかかわらず、このピンクの色合いを、例えば2または4の隣接する画素の群内には発生することができ、この画素群は、模様内の必要な領域を覆うための単一の画素様に用いられうる。このように行うことで、送出システムは、例えば、個々のピクセル内の混合が試みられる場合の赤または他の色の所望の割合を形成するために必要とされ得る赤色染料よりも2または4倍多く送出することができ、それによって、プロセスカラーの非常に少ない相対量の送出ができないという送出設備のいかなる限界をも克服する。このような超画素内でのインサイチュ混色が、塗布された移染制限組成物と移染促進組成物の組み合わせにより提供され、最大限の混色が、移染促進組成物のみを用いて行われる。従って、超画素を構成する画素の数は、少量から比較的多量にまで調節され得る。この点について、より多量の画素で構成された超画素は、超画素内に塗布された染料の広い画素間での移染を利用して、均一な色を得る一方で、より少量の画素で構成された超画素は、より積極的ではない画素間の移染に利用され得ることが意図される。
【0067】
例としてのみであるが、単一のプロセスカラーまたは2以上のプロセスカラーの混合の種々の色合いが所望される場合、基材にそれぞれの染料を運ぶジェットの数は、幅広い系列の色合いを得るために、基材の染料移染性質と組み合わせて調節され得る。とりわけ、1つのプロセスカラーの濃い均一色のブロックが所望される場合、その色合いを有する染料溶液が、本質的に染料移染を防止するように処理されている基材の部分を十分に浸すように塗布される。従って、各画素において塗布された染料溶液の色は、隣接する画素への拡散によりぼけることはない。しかしながら、より明るい色合い、または混合された色合いが所望される場合、基材に渡る染料移染性質は、増加する割合で移染促進剤を塗布すると同時に、基材に本来のプロセスカラーの染料を加える、超画素内のジェットの量を減じることにより高められ得る。従って、基材に衝突する本来のプロセスカラーの染料ジェットは、隣接する未染色の画素に拡散するように、あるいは超画素内の隣接する画素に塗布された異なるプロセスカラーの1以上の染料とのインサイチュ混色に関与するように、制御された拡散を起こすことを可能にする。
【0068】
上記した実施の実際上の適用は、現実に裏付けられる。例としてのみであるが、図3において、図1に示したような装置を用いて、基材に渡って塗布され得る景観を示す。このような景色において、実質的に3次元の効果が、高鮮明な帯域と、緩慢飽和度の拡散混色帯域との制御された組み合わせによりもたらされ得る。とりわけ、最前面のものとして、あるいは、特に鮮やかな色として示される要素105は、図2において第1の帯域82に関して記載したような、本質的に移染制限性の帯域に印刷され得る。背景として示されるべき正反対の要素107は、与えられるべき背景の奥行きの印象に応じて、図2における第3の帯域86のような移染促進性の帯域において印刷され得る。
【0069】
例としてのみであるが、図4において、花の模様を示す。本発明の実施を用いることにより、3次元性が、図2における第1の帯域82に関して記載したような、実質的に移染制限性の帯域において高鮮明に示されるべき処理帯域105’により与えられ得る。このような高鮮明の印象は、例えば、図2における帯域84に関して記載したような、徐々に変化する移染性の帯域における印刷による帯域109’における制御された色合いの使用により高められ得る。
【0070】
理解され得るように、所定の帯域における移染特性にかかわらず、一度所望された度合いの混色が達成されると、さらなる望まれない混色および/または移染を防止するために、基材において染料を、すばやく且つ効果的に固着することが望ましい。従来、このような固着は、飽和したおよび過熱された蒸気、自然的なおよび強制的な空気加熱、並びに輻射および/または対流熱伝達機を用いる加熱を含む幅広い範囲の技法によりもたらされ得る。
【0071】
本発明の潜在的に好ましい実施によれば、一度、制御された度合いの染料移染および/またはインサイチュ混色が達成されると、RF(高周波)電界が、染料を固着するため、基材の染色された部分を効果的且つ迅速に加熱するように、基材の効果的な制御された深さに適用され得る。RF適用の限界は、基材中の制御された深さに迅速な方向性の加熱(directional heating)を提供すると同時に、燃焼または基材材料の構造成分の他の損傷を避けるように制御される。このようなRF加熱処理は、カーペット等のようなパイル布の処理に特に有用であり得るが、他の基材の処理においても用いられ得るということが意図される。従って、本方法は、下記で、パイルカーペット布の処理に関して記載されるが、このような記載は、単に、例示的であり、説明的であると理解されるべきである。
【0072】
本発明の1つの側面によれば、加熱エネルギーは、カーペットのパイル表面に渡って対置するように配置された交代性の正極および負極を有する、RF範囲内の周波数で操作されるいわゆる「フリンジ場」電極システムを用いて発生させた電界の形態で、基材に伝えられ得る。操作周波数および電極の配置は、所望される加熱エネルギーレベルを提供し、且つ維持するように決められる。
【0073】
図5を参照すると、RF加熱により処理され得るような、クッション状裏地を有するカーペットまたはカーペットタイルの形態の例示的な基材構造225が示されている。この例示的な構造において、基材構造225は、当業者によく知られ得るようなポリエステルまたはポリプロピレンのスクリムまたは不織繊維テキスタイル等の1次裏地216を通してタフトした複数のパイル糸214から形成された1次カーペット布212から構成される。SBRラテックスのような弾性接着剤のプレコート裏地層218が、一次裏地216の内側でパイル糸214を固定するために、一次カーペット布212の下面に渡って配置される。ホットメルト接着剤のような接着層220は、プレコート裏地層218に渡って広がる。織または不織ガラスのような補強材222の層が、接着層220と、未加工のまたは再結合ポリウレタン発泡体のようなクッション層224の間の位置に配置される。ポリエステルとポリプロピレン繊維の不織混合物のような第2の裏地層226が、クッション層224の下面に渡って配置される。
【0074】
理解され得るように、基材構造225の実際の構造は、幅広い範囲で変化し得る。従って、図5に示される多層構造は、単に、代表的なカーペットの例示的な構造を構成するものとして理解されるべきであり、本発明は、所望されるような任意の他の構造のカーペット状テキスタイルおよび、または他のテキスタイルにも等しく適用できる。カーペットタイル構造は、例えば、米国特許第6,203,881号および第6,468,623号に記載されており、これを本明細書の一部として本願に援用する。
【0075】
基材構造がカーペットの場合は、パイル糸214は、ウール、コットン等の天然繊維から形成されるスパン糸またはフィラメント糸のいずれかであり得る。パイル糸214は、ナイロン6、ナイロン6,6を含むポリアミド、PETおよびPBT等のポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、レーヨン、並びにポリアクリルニトリル等のポリビニルポリマーのような合成材料からも形成され得る。コットン、ウールおよびナイロンの混合物のような、天然繊維と合成繊維の混合物も、パイル糸214において用いられ得る。図5において、パイル糸214は、ループパイル構造で示される。当然ながら、カットパイル構造等を含む、当業者にとってよく知られ得る他のパイル構造も同様に用いられ得ることを理解されるべきである。
【0076】
上記したように、移染制御化学薬品と染料の模様状の配置が、基材225の表面に渡って所望の模様を展開するように、基材225に渡って適用され得る。展開される模様は、基材225に渡る模様状の不連続なプロセスカラー、および/または2以上のプロセスカラーの制御されたインサイチュ混色の結果であり得る。さらに、模様は、可能な染料移染の程度を実質的に制御することにより、さらに制御され得る。用いられる模様付け技法に関わらず、染料をその場に固着することによる迅速に制御された様式で、実質的に、さらなる染料移染および/または混色を実質的に抑える能力を有することが望ましい。
【0077】
潜在的に好ましい実施によれば、RF(高周波)加熱器を用いると、基材の染色された部分において染料固着を促進するように、基材の制御された深さに対する迅速且つ効果的な温度上昇を達成できる。操作において、RF加熱器は、加熱されるべき披験品目に交互性の電界を誘起し、それによって、このような材料の水分子を、変化する電界に追随するように迅速に回転させる。このような回転は、製品内部に熱を発生させ、それにより被験品目内部の加熱を引き起こす。
【0078】
出願者は、パイル糸に対する染料溶液の模様状の塗布に続いて、RF加熱の適切な使用が、カーペットまたは他のテキスタイル基材に渡る染料固着を高めるように用いられ得ると認識している。とりわけ、RF電界の印加は、迅速且つ制御された様式で染料拡散を抑えるように迅速な加熱を提供し得ることが見出された。さらに、加熱が制御された深さで行われるということから、基材へのエネルギー移動がより効率的であり、基材の染色された表面の下に重なる種々の構造層に対する損傷の可能性を実質的に最小限にする。
【0079】
印加において、本発明は、好ましくは、図8に模式的に示されるような、いわゆる「フリンジ場」RF加熱装置を用いる。RF適用装置230は、交互に荷電した細長い電極234の配列に接続された発生器232を含有する。潜在的に好ましい構造において、電極234は、加熱帯の中に、基材225を輸送するコンベア236の上方に広がり且つ横断するロッドの形態である。基材に対する操作周波数と電極配置の適切な選択により、適切な表面加熱と固着が、電極間のアーク放電の潜在的に不利益な発生および/または表面下の構造要素の過度の加熱を伴うことなく達成され得ることが見出された。仮想線で示されるように、印加電場が、交互の電極間のパターン化された配置において発生する。このように発生した場は、場の境界内の分子回転に影響を与えるためのエネルギーを供給するように、基材225中の作用距離に広がる。
【0080】
基材の多層構造の種々の層に対する、電極間で発生した場の実質的に制御された作用深さを、図9に図示した。示すように、作用周波数と電極の間隔の取り方は、有効電界が、水分を含有し得る全ての下に重なる層のいかなる実質的な加熱も回避するように、パイル糸の真下の場所に広がるようなものである。
【0081】
染料固着を高めるためのRF加熱の使用は、比較的低い濃度の染料でさえも、より深い色合いがパイル糸214の可視表面で得られるように、パイル糸214に染料発色団(chromaphore)の迅速な固着を促進すると考えられる。色合い保持力の改善が、図10に示され、ここで、光反射は同じ染料の同濃度を用いて染色されたカーペットサンプルの糸の先端部にて測定されるが、一方のサンプルはRF予備加熱、続く蒸気処理を用いて染料固着を受けるに対して、他方のサンプルは、蒸気固着のみを用いる染料固着を受けるものである。Y軸の反射率の測定は、より低い数値が、高められた光吸収および相応して減じられた反射に対応するより濃い色合いを示すところのアドビフォトショップ(ADOBE PHOTOSHOP)L値に関して記載される。示されるように、より低い濃度の染料塗布では、RF予備加熱で処理されたカーペットは、より濃い色合いを示した。色合いにおける差異は、高められた濃度の染料が塗布されると、より顕著ではなくなってくる。しかしながら、より高い染料塗布濃度でさえも、RF予備加熱を用いて処理されたカーペットの糸の先端部における高められた色合いが測定できた。
【0082】
糸の先端部における高められた着色をもたらす現象は、完全に理解されてはいないが、RF加熱の使用は、塗布帯域から毛管作用によって排出されるという染料溶液の傾向を抑えるに十分な程度にまで、基材の染色された部分を迅速に加熱することが考えられる。対流加熱および/または伝導性加熱は、RF加熱によりもたらされると思われる染料移染の非常に初期の抑制を提供するとは思われない。従って、RF加熱の使用は、画素間の拡散が所望される地点より下に進行することを防ぐと同時に、染色された糸の先端部における、いわゆる霜白の発生を回避することにより、基材に渡る模様の解像度を実質的に改善することが見出された。
【0083】
実際の実施において、フリンジ場RF染料固着の使用は、染料固着プロセスの効率と、それにより形成された製品の審美的な外観の双方を実質的に改善するために利用され得ると想定される。染料固着を助力するRF加熱を含む、幅広い系列の実際の製品形成実施が意図される。例としてのみであり、限られないが、カーペットの処理に適用できる種々の手順を、図6および7に示す。
【0084】
第1の意図される実施によれば、複数の外向きに突出するパイル糸を含有するタフテッドまたは不織構造のカーペット布のような基材を、染料塗布工程に供し、その中で染料は表面に渡って模様状に塗布される。この塗布は、任意の既知の技法によるものであり得るが、染料が画素ごとに基づいて塗布される染料溶液の制御された流れが好ましいものであり得る。カーペットパイルへの染料の塗布に続いて、パイルを、励起電界をカーペットパイルの予め決められた深さに印加するような、フリンジ場RF加熱装置を用いるRF加熱により加熱する。染料は、所望されるならば、この工程において固着され得る。RF加熱工程に続いて、カーペットを冷却する。所望されるならば、本冷却は、強制冷却装置の使用により容易にされ得る。
【0085】
図7において、潜在的に好ましい基材染色と処理方法における主な工程を示す。本方法において、多数の外向きに突出するパイル糸を含有するタフテッドまたは不織構造のカーペットのような基材を、上記したような、移染促進組成物と、反作用性の移染制限組成物の双方により前処理する。移染制御組成物の塗布に続いて、染料を、任意の適切な技法によりカーペットパイルに渡って模様状に塗布する。染料塗布に続いて、パイルを、励起電界をカーペットパイル内の有効な深さに印加するフリンジ場RF加熱装置により予備加熱する。RF加熱工程に続いて、染料固着を、蒸気熱の使用により完成させる。カーペットは、その後、使用前に洗浄、乾燥および冷却され得る。
【0086】
当然ながら、種々の潜在的に好ましい態様、手順および実施を示し、記載したが、本発明はそれらに限定されるものでは決してなく、何故なら、改変を成すことができ、および本発明に適する本発明の原理に基づく他の態様が、当業者等には思い浮かび得ることを理解すべきである。従って、添付した特許請求の範囲は、本発明の本質的な意図および範囲に属する本発明の特徴を有し得るような任意の改変および他の態様を網羅するものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】一組のアプリケーションバーの長さに沿って配列した複数の個々に制御可能なアプリケーターを、模様づけられるべき基材ウェブの進行方向に渡って配置する例示的な模様付け装置を模式的に示す図。
【図2】着色されることを意味する、基材の模様付けられる領域を示す図1の装置の平面図を模式的に示す図。
【図2A】基材に渡る、染料、移染制限組成物、移染促進組成物およびそれらの組み合わせの種々の配置を論理的に、および位置的に示すベン図。
【図3】本明細書中の教示を用いて達成される一群の可能な視覚効果(すなわち、奥行き/画像強調)を述べるに有用である、選ばれた基材上に配置される第1の例示的な模様を示す図。
【図4】本明細書中の教示を用いて達成される第2の一群の可能な視覚効果(色の範囲の強調)を述べるに有用である、選択された基材上に配置された、第2の例示的な模様を示す図。
【図5】例示的な多層カーペット構造の分解模式図。
【図6】カーペットパイルへの染料塗布および染料の固着についての簡略化されたプロセスフロー図。
【図7】パイル表面への染料の塗布および固着を含む、カーペット製造における一連の段階を示す増補されたフロー図。
【図8】乾燥用の電界の印加のための、カーペットタイルの移動方向に渡って広がる複数の電極を含む、フリンジ場高周波(RF)印加装置を示す図。
【図9】カーペット構造内の実質的に制御された深さに適用されるRF場を示す、図5と同様の分解側面図。
【図10】RF予備加熱を用いた改善された染色を示すグラフ。
【発明の開示】
【0001】
本発明は、複数の着色剤アプリケーターを用いて染料または液体着色剤を施すことにより、模様もしくは均一な色合いのいずれかの状態で、染料受容性基材を染色するための方法に関する。より具体的には、本発明は、基材上の染料または液体着色剤の移染に影響を与え、移染を制御する種々の化学薬剤の選択的な塗布と組み合わせて、染料または液体着色剤を用いる方法に関する。このような化学薬剤の選択的な使用は、基材に渡り模様づけられたデザインの明瞭度を高め得る。より具体的には、染料若しくは液体着色剤の塗布に対するこのような化学薬剤の制御された塗布は、(i)基材に渡って選択された帯域において分離して塗布された染料若しくは液体着色剤の混合を高め、および/または(ii)基材に渡って選択された帯域間の染料若しくは液体着色剤の色移染を減少させ、それにより模様づけられた帯域間の境界を鮮鋭にするために用いられ得る。個々に、または互いに組み合わせて、このように制御された色の混合および封じ込めを用いることは、均一に着色された基材、及び模様づけられた基材の双方において有用であり得る。本発明の実施を、色の混合における高められた自由度を提供するために用いることができる。加えて、不均一な染料移染を意図的に、且つ選択的に模様に導入する能力(単独で、または模様内の選択された帯域における染料の封じ込めとの組み合わせのいずれかで)は、3次元効果、及び他の望ましい視覚的な効果を引き起こす模様領域または要素を強調するために用いられ得る。
【0002】
背景
分離した局在化した染料の塗布によりテキスタイルのような吸収性基材を染色することは広く知られている。一般的に、テキスタイルに対するこのような分離塗布方法は、2つの異なるアプローチに沿って発展した。第1のアプローチ(「応需滴下」アプローチ)においては、染料若しくは液体着色剤のような液体着色媒体が、模様づけされるテキスタイル基材上に配置された、バルブを備えたアプリケーターから直接的に塗布される。1つのこのようなシステムの例においては、基材上に染料若しくは着色剤を施そうとする際にバルブを開き、必要な量の染料が基材の適当な予め決めた領域に供給された際に閉じられる。
【0003】
「応需滴下」装置の1つの構成においては、複数の個々の染料ノズルを含むプリントヘッドを模様づけされる基材の進路に渡り横切らせる。1以上のノズルは、別々に、個々の染料供給源に連結され、このそれぞれは、各々割り当てられた色の染料を供給し、多色の模様づけを提供し得、それにより当該アプリケーターが予め決められた色の染料を施すことを可能にする。「オン−オフ」指令の形態の電子的に規定された模様づけデータが、プリントヘッドが基材の幅に渡り横切り、且つ基材が順次、前方へ割り出されるとき、基材上に種々の所望の色の染料を施すために選択されたノズルに向けられ、それにより、プリントヘッドを有する染料ノズルが、基材の表面に渡りラスタパターンを描き、選択された模様により指示される基材の任意の所望される領域上に所望の色の染料を施すことを可能にする。
【0004】
応需滴下塗布を行うために、染料アプリケーターを、基材の進路を横切って配置される1つの定置列に配置することができ、所定色の染料のアプリケーターは、列の長さに沿って配置されており、恐らく異なる色の染料を施すアプリケーターと混ざり合わされる。あるいは、複数の定置列を用いることができ、所定色の染料アプリケーターを所定の列に制限することができるか、異なる列に割り当てることができる。いずれの場合にも、模様制御システムは、基材に対するアプリケーターの位置についての補正を提供する必要がある。例えば、複数の列の場合において、制御システムは、基材がこれら列までの距離を進むために必要な時間間隔をもって下流の列に対するアプリケーターの模様づけ命令を遅らせることにより、隣接する列間の距離を補正する必要がある。列は実質的に平行に、密に隣り合って、基材の進路に対して実質的に横向きに整列されるように配置され得るか、模様づけされる基材の進路に沿って他の予め決められた、間隔を空けた関係で位置される線状に配置され得る。
【0005】
分離した染料塗布の第2のアプローチは、「再循環」アプローチであり、そこでは、個々の染料アプリケーターは、所定色と関連付けられる。アプリケーターは、移動するテキスタイル基材の進路に沿って間隔を空けて配置された一連の平行な列のように、移動するテキスタイル基材に対して固定された配向で配置され得る。しかしながら、模様が必要とする際にのみ染料を施すというよりは、再循環アプローチにおけるアプリケーターは常に「オン」状態であり、従って、各列に付随する溜めマス中に向けられた染料の流れが連続的に生じる。染料の流れの軌道を変え、且つ染料の流れを、溜めマスを避け、電子的に定めた模様データにより特定された染料の量を施すに十分な時間間隔の間基材の表面を打撃させる空気または他の制御流体の断続的に作動される(すなわち、模様データに合わせて作動させる)横断流により基材の進路へと方向転換させた場合にのみ、染料溶液流は基材に到達し得る。別々の一式のアプリケーターと対応する溜めマスが用いられ、従って、特定の溜めマスに向けられた染料を収集し、且つそのカラー染料に割り当てられた染料アプリケーターの列に再循環させることができる。
【0006】
このようなデバイスの例を図1〜2に示し、その詳細は以下、及び共通に付与された米国特許第4,116,626号、第5,136,520号、第5,142,481号、及び第5,208,592号を含む多数の米国特許に論述され、この教示を本明細書の一部として本願に援用する。
【0007】
上で参照した米国特許に記載される装置及び技法において、基材の模様は画素に基づいて規定され、個々の着色剤、または着色剤の組み合わせが、基材上の対応する画素または画素サイズの領域に所望の色を与えるために各画素に割り当てられる。特定の画素へのこのような着色剤の塗布は、模様付けられる移動する基材の進路を横切って間隔を置いて平行に配置された種々のカラーバー(アプリケーションバーとしても知られる)の長さに沿って据えつけられた、多くの個々の染料アプリケーターの使用を通じて成される。所定のアプリケーションバーにおける各アプリケーターは、同一の着色剤貯蔵器から着色剤を供給され、また異なるアプリケーションバーは、通常異なる着色剤を含有する別の貯蔵器から着色剤を供給される。アプリケーションバーの長さに沿ったアプリケーターの位置と、移動する基材上の目的の画素の位置に対するアプリケーションバーの位置を適応させるアプリケーター動作指令を発生させることにより、特定の模様を再現することにより要求され得るように、任意のアプリケーションバーから入手できる任意の着色剤を、基材上の模様付けの領域内の任意の画素に塗布することができる。
【0008】
染料がテキスタイル基材表面上に施される方法に関係なく、種々の化学薬剤が、時折、槽、パジング浴、噴霧器、または他の適切な装置のような技術を用いて、基材上に塗布されてきた。このような装置を用いて、界面活性剤または他の染料移染改変剤は、例えば共通に付与された米国特許第4,740,214号及び第4,808,191号に説明されているように、模様情報に従って、選択的に染料を塗布する模様付け工程前に、基材の表面上に実質的に均一に塗布される。なお、上記米国特許の双方を、本明細書中で十分に説明したものとして、本明細書の一部として本願に援用する。
【0009】
従前の方法は、種々の基材に渡り均一な、及び模様付けされた着色の双方を提供するために用いられる一方で、従来技術の方法は2つの望ましい性能を十分に実現するものではないと考えられる。すなわち、第1に、単一の模様の範囲内で、選択的且つ優先的に、模様内でのインサイチュ(in situ)混色の性能を高める能力であり、第2に、単一の模様の範囲内で、選択的且つ優先的に、視覚的強調または3次元の感覚を与えるか、逆におよび同時に、視覚的に強調しない、または2次元の感覚を与える能力である。
【0010】
概要
本発明は、制御された染料の混合および高められた模様の明瞭度を達成するために、基材に渡る染料塗布と併せて染料移染制御剤の選択的な制御された塗布を用いることにより、従来技術に対する利点および代替物を提供する。所望の混色と模様明瞭度を達成すると、塗布された染料は、展開した模様の劣化を防ぐために、基材に渡って固着される。
【0011】
本発明の1つの側面によれば、染料移染制御剤の選択的な塗布は、基材上に施された染料の移染または拡散特性を、種々の視覚的効果を有し、それにより様々な審美的な利点を与える模様付けされた製品を提供するために、模様の特定の、予め決められた領域において改変し得るように、染色模様に対して位置合わせして、あるいは染料模様に関して行われ得る。とりわけ、染色溶液は、移染促進組成物および/または移染制限組成物と組み合わせて、制御された方法で基材に渡って塗布され得る。所望される場合、染料溶液は、実質的に、移染促進組成物、移染制御組成物と位置合わせして、または移染促進組成物と移染制御組成物の模様づけられた組み合わせと位置合わせして基材に渡って塗布され得る。
【0012】
本発明の他の側面によれば、染色模様は、化学移染制御剤と、塗布された染料および染料混合物の固着を通してさらなる染料の移染およびまたは混合を抑えるためのRF(高周波)加熱との組み合わせの二重の相補的な機構により、テキスタイル基材に渡って位置的に固定され得る。従って、このようなRF加熱の使用は、さらに模様明瞭度を高める。
【0013】
本発明は、本明細書中に組み入れられ、且つ本明細書の一部を構成する添付の図面を参照することにより、さらに記述される。
【0014】
本発明の種々の側面が、以下に、いくつかの例示的な態様、実施、及び手順に関連して記載され、開示されるが、これは、図および/または記載の対象となり得るようないかなるこのような特定の態様、実施、または手順に本発明を制限することは決して意図されない。むしろ、本発明の本質的な意図及び範囲、並びにその全ての等価物と一致し得るような全ての代替物及び改変を網羅するように意図される。
【0015】
詳細な記述
図1は、一式の8つの独立のアプリケーションバー(カラーバーとしても知られる)15で構成されており、個々のアプリケーションバーは所定の色の染料、および/または染料移染制御剤を施すことができる、サウスクロライナ、スパータンバーグのMilliken&Company社により開発されたMillitron(登録商標)テキスタイル模様づけ機のような、例示的なジェット式染色装置10を示す。従って、「アプリケーションバー」という語は、基材25に定められた模様で、少なくとも1の着色剤、または少なくとも1の染料移染制御剤を送給するために適合するいずれかの塗布装置を意味する。当然ながら、装置の所望の複雑さ、幅広い範囲の色の必要性および他の因子に依存して、より多くの、またはよりわずかなアプリケーションバーが用いられ得る。
【0016】
上記例示的な装置において、各々のアプリケーションバー15は、バーの長さに沿って離間整列して配置され、且つ当該バーに割り当てられた化学薬剤または着色剤を供給された複数の個々に制御可能な流体アプリケーターまたはジェットを含む。アプリケーションバーの単位長さ当たりのアプリケーターの数は、例えば、インチ当たり10、インチ当たり12、または他の数であり得る。各アプリケーションバーは、好ましくは、基材25の全幅に渡って広がる。描かれているように、テキスタイル布のような、模様付けされていない基材25が、ロール30から供給され得、一般的に44で示されるモーターにより駆動されるコンベア40により、フレーム20を通り、各アプリケーションバーの下を移送される。
【0017】
基材の正確に定められた領域において、染料移染制御剤及び染料溶液の正確な画素様の配置を提供する方式でアプリケーションバー15の下を移送された後に、模様付けされた基材25Aは、他の、乾燥、固着等のような染色関連工程へと通され得る。例えば、模様染色されたテキスタイル材料は、さらに以下に記載されるような、RF加熱器へと通され得る。RF加熱器を離れた染色されたテキスタイル材料は、その後、染料固着を完了させるために、蒸気固着装置を通って運ばれ得る。過剰の未固着の染料や他の化学薬剤を除去するために、水洗が用いられ得る。洗浄されたテキスタイル材料は、その後、乾燥機及び引取手段へと通される。
【0018】
図2は、図1の模様づけ装置の模式的な平面図である。この図に含まれるものは、電子制御システム52、電子位置合せシステム54、および回転パルス発生器または同様の変換器56と連携したコンピュータシステム50のブロック表示である。これらシステムの総合した操作は、制御された様式で基材へのアプリケーションバーからの流体の流れを制御する個々の「オン/オフ」作動コマンドの発生をもらたす。例としてのみであり、限定されるものではないが、このような制御システムは、共通に付与された米国特許第4,033,154号、第4,545,086号、第4,984,169号及び第5,208,592号により詳細に記載されており、この各々を、その全てを本明細書の一部として本願に援用する。
【0019】
本明細書中では本発明を、この再循環型デバイスに基づいて記載するが、本明細書中の教示はこのようなデバイスに限定されず、応需滴下型のデバイスも用いられる。どの手法を用いても、テキスタイルは、用途、および染色すべき基材の繊維量に応じて、酸性染料、塩基性染料、反応性染料、直接染料、分散染料、媒染染料または顔料を含む幅広い種の天然染料または合成染料を用いて模様付けされ得る。本明細書中の教示は、幅広い範囲のこのような染料、および幅広い範囲のテキスタイル材料の使用に適用できる。本発明を用いて模様染色され得るテキスタイル材料は、編成、織成および不織テキスタイル材料、タフテッド材料、結合材料等を含む。典型的には、必ずしもではないが、このようなテキスタイル材料は、パイル表面を含む。このようなテキスタイル材料は、フロアカバー(例えば、カーペット、ラグ、カーペットタイル、フロアマット等)、ドラペリー生地、椅子張り生地(自動車用の椅子張り生地を含む)等を含み得る。このようなテキスタイル材料を、ポリエステル、ナイロン、ウール、コットンおよびアクリルのような天然繊維または合成繊維から形成することができ、また、テキスタイル材料はこのような天然繊維若しくは合成繊維の混合物、またはそれらの組み合わせを含む。
【0020】
下記の解説を容易にするために、以下の定義を、他に示されるかまたは文脈により要されることがない限り、用いることとする。
【0021】
「模様付け」という語は、予め設定したデータに従って、基材の表面を構成する特定された領域(または全領域)への染料の選択的な塗布を意味する。模様付けは、複数の色の配置、または基材全体への単一色の均一な塗布を含み得る。
【0022】
「模様形状」という語は、基材上への染料または化学薬剤の配置を示すために用いられる際は、再現されるべき模様に合わせた配置を意味する。模様形状での配置の一例は、模様を構成する種々の着色された領域に位置合わせされた配置である。しかしながら、このような配置が、本明細書中の教示により成され得る1以上の効果を得るために、模様要素に必ずしも位置合わせする必要がない場合に(例えば、化学薬剤が、模様要素の端から予め決めた距離離れて位置する不規則な形の領域に塗布されるようなとき)、模様形状での配置は、単に、特定の模様要素に関する配置を言うこともある。
【0023】
「画素」という語は、色または対応する量の着色剤を、正確に且つ確実に塗布することができる基材上の最も小さい領域または部位を述べるために用いられる。従って、画素は、模様が規定される基礎であり、本明細書中に記載される模様付けデバイスについては、これらの模様を再現するために必要とされる染料アプリケーター作動コマンドを発生するための基礎である。派生語である画素様は、例えば、画素に基づいて規定される模様または模様要素を再現するときに行われるように、基材上の特定の画素サイズの位置に染料または他の液体の割り当てまたは塗布を記載するために用いられる。「染料溶液」という語は、基材上に施される(任意の適した種類の)染料および任意に、本明細書中で教示するような他の添加物を含む種々の成分の液状混合物を意味する。染料溶液は「染料」または「着色剤」とは区別されるべきであり、後者の語は、染料溶液の事実上の染料または着色剤成分を指す。
【0024】
「プロセスカラー」という語は、いかなる他の染料または着色剤とのあらゆる混合または配合前に、基材上に塗布された際の染料または着色剤の色を意味する。プロセスカラーの組は、それらの色から基材上に発生されるべき全ての他の色を構成する当該色である。
【0025】
「基材」という語は、限られないが、個々の天然糸または合成糸で構成されるテキスタイルを含むあらゆる染料受容性基材を意味する。本明細書中に記載した方法が特に適するテキスタイル基材は、カーペット、ラグ、カーペットタイルおよびフロアマットを含むファブリックおよびフロアカバーを包含する。しかしながら、本明細書中の教示は、インテリアデザインファブリック(例えば、ドレープ生地、家庭用リネン、椅子張り生地、壁掛け布等)、旗または他のグラフィック標識において用いられるファブリック、自動車用ファブリック(例えば、ドアパネル、シート、ボルスター、インサート、ヘッドライナー、トレー、トランクライナー等のためのファブリック)、服飾布、および他のファブリックのようなファブリックの模様付けに十分に適用できる。
【0026】
「レベル」という語は、同一色で染色された基材の領域が、視覚的に均一な色を示す度合いを意味する。低いレベルを有する染色された領域は、まだらな外観または多色混合の外観を示す。
【0027】
「拡散」または「拡散する」という語は、柔らかな、比較的ピントのはずれた外観を有すること、または、文脈が指示し得るように、比較的高い染料濃度の領域から、比較的低い染料濃度を有する隣接する領域への染料の移染により生じる外観を意味する。本明細書中で用いられる関連する語である「ソフトフォーカス」は、拡散した、またはわずかにピンボケの外観を有する模様または画像を述べるために用いられる。
【0028】
「インサイチュ(in situ)混色」およびその派生語は、染料が基材に塗布された後の染料の移染または混合を指す。1つの例において、同じ色の染料が、隣接する画素に塗布され、隣接する画素間での染料の移染は、基材の染色された領域により均一な外観を促進する傾向がある。他の例において、2以上の色の染料が、同じ画素に塗布され、主に同じ画素内で(および、より低い程度で、染料の横への移染が生じるその程度によって、隣接する画素において)混色が起こる。第3の例において、異なる色の染料が隣接する画素に塗布され、種々の塗布された染料をより高い程度/より低い程度にまで効率的に混合する画素間の移染が起こり、混成色を作り出す。当然ながら、上記の種々の組み合わせ(例えば、2以上の隣接する画素のそれぞれに多数の染料が塗布され、画素間の移染が起こる)が可能であり、一定の条件下で有利であり得る。
【0029】
「高鮮明」という語は、細部の高度な印象を与える、鮮鋭で、高度に焦点を合わせた外観を有することを意味する。これは、本明細書における教示によれば、染料を、染料が塗布されたすぐ隣の領域から移染または拡散されるその程度を効果的に制限する染料移染阻害剤または染料移染抑制剤の塗布により達成され得る。このような移染または拡散は、横方向(例えば、隣接する画素に)、または垂直方向(例えば、カーペット、ラグ、またはパイル布上の定めた画素を占めるパイル糸の長さに沿って)であり得る。
【0030】
「緩慢飽和度(loose saturation)」という語は、繊維束中の繊維が染色されぬまま残っており、それにより、糸束において白色の外観を有している状態を指す。関連語の「霜白」という語は、先端より下の部分と比較して繊維束の先端におけるより明るい色合いの着色の外観であって、それによって、あたかも部分が染められてないままであるかのように表面が見えるようにすることを指す。
【0031】
「超画素」という語は、インサイチュ混色が促進されるモノリシック単位(すなわち、個々の画素と同様の模様内で覆われ得る)として用いられるように作られた、隣接する画素の群を述べるために用いられる。事実、プロセスカラーの混合を含む各単一画素を作るために用いられるインサイチュ混色技術は、むしろ、多数の画素構造内で用いられる。
【0032】
上に記載した双方の従来技術の模様染色アプローチ(すなわち、応需滴下または再循環)の種々の態様が少なからぬ成功を収めたという事実にも関わらず、性能のいくつかの分野における改善が推し進められている。1つのこのような分野は、基材に到達した後の染料溶液の流れまたは移染特性を含むものであり、本明細書中の教示が指向される分野である。例えば、1以上の染料の均一な塗布を必要とする模様の領域において、染料溶液が基材に塗布された後の不十分な画素間のインサイチュ混合または染料移染に結びつく、小さいが著しい画素間の不均一性による、微細な、しかし視覚的に外見上まだらな印象を有する染色領域をもたらす不均一な色レベルを有する領域を見出すことは珍しいことではない。
【0033】
インサイチュ混合を高めるために、染料溶液の粘度を、画素間の染料移染を促進するために減じることができることが一般的に知られている。しかしながら、このような減じられた粘度は、塗布された模様の領域における十分な鮮明度または高鮮明さを得ることができないことをも導き得る。これは、種々の染色された部分間の、制御されないわずかにはっきりしない境界をもたらし得る。減じられた粘度は、着色剤との減じられた接触時間のために、染色されぬままに糸束が残る緩慢飽和度または「霜白」をももたらし得る。
【0034】
本発明による方法は、塗布された染料が、実質的に、基材に渡る予め決められた帯域に含まれる一方、制御された染料移染を他の帯域においては許すように、基材25(図2)に渡って染料移染制御剤を選択的に塗布することにより、インサイチュ混色を促進すると同時に、基材に渡る高鮮明な画像の展開を促進するという一見矛盾した要求に取り組む。とりわけ、移染促進表面活性剤が、基材に渡る高められたおよび制限された移染帯域の模様配列を展開するように、移染制御剤と組み合わせて用いられる。
【0035】
第1の意図される実施によれば、第1のまたは第2のアプリケーションバーの一方において、移染促進組成物、またはPapalosへの米国特許第4,110,367号(本明細書の一部として本願に援用)に記載されているようなアニオン性の表面活性剤等の「均質剤(leveler)」が、基材25に渡って、均一に、または所望の模様状のいずれかで塗布される。移染促進組成物の性質は、好ましくは、中性であるか、染料溶液と同じイオン性のものである。最も好ましくは、移染促進組成物は、染料溶液と同じイオン性のものであり、基材に対しては対イオン性のものである。従って、基材が、一般的に性質が中性またはカチオン性であるナイロンである場合に、移染促進剤および染料溶液は、最も好ましくは、性質がアニオン性であり得る。例としてのみであり、限られないが、アニオン性の種々の意図される移染促進表面活性剤は、混合脂肪アルコール硫酸ナトリウム、アルキルスルホネート、アルキルジアリールスルホネート、スルホン化スルホンジアルキルスルホスクシネート、アルカン−アミド−ベンゼンスルホン酸およびアルケン−アミド−ベンゼンスルホン酸、モノスルホン化アルキルフェノキシグリセロール、アルキル置換ジフェニルエーテルスルホネートおよびスルホン化アルキルフェノキシアセトンを含む。対応するスルフェート化合物またはホスフェート化合物が、任意の上記したスルホン化化合物の代わりに用いられ得ることも意図される。特に有用であると考えられる1つのアニオン性表面活性剤は、米国、ペンシルバニア、ピッツバーグに会社を有するBayer Corporation Industrial Chemicals Division社製の、販売名称「TANAPURE AC」の下で入手できるスルホネート分散体であると考えられる。
【0036】
他の第1のまたは第2のアプリケーションバーにおいて、移染制限組成物を塗布することができる。本発明の好ましい実施によれば、移染制限組成物は、染料溶液に対して対イオン性である。移染促進組成物がイオン性である場合には、移染制限組成物は、好ましくは、移染促進組成物に対して対イオン性である。移染制限組成物の塗布は、移染が制限されるべき帯域に渡って均一であり得るか、移染を防止する境界を規定するように輪郭をたどるように塗布され得るかのいずれかである。染色されるべき帯域に渡る移染制限組成物による被覆は、その帯域における高鮮明な彩色の展開を容易にする。好ましくは、移染促進組成物と移染制限組成物は、一方の他方との混合が、混合物の性質を一方の移染性質から他方のものへと徐々に変化させるように(すなわち、移染促進から移染制限へと、逆もまた同様)互いに、質的に且つ量的に反作用する。
【0037】
当然ながら、移染制限組成物または移染促進組成物のどちらか一方が、基材の全表面に渡って均一に塗布されるべき場合には、このような塗布は、アプリケーションバー15の上流で、パッドコーティング、浸漬コーティング、スプレイコーティング等のような種々の塗布法により行われ得ることが意図される。このような実施を用いる場合には、反作用する移染制御組成物を、基材25に渡る移染性質を調節するために、染料の打撃前に、第1のアプリケーションバーにおいて模様状に塗布することができる。例としてのみであり、限られないが、どちらか一方の移染制御組成物が、スプレイ装置等によりアプリケーションバーの上流で均一に塗布され得る。
【0038】
理解され得るように、予め塗布された移染促進組成物に対して反作用性の移染制限組成物の塗布は、移染制限組成物が塗布された場所において、少なくとも部分的に移染促進組成物の効果に勝る傾向がある。従って、たとえ、基材が、準備段階において移染促進組成物を用いて均一に処理されていても、減じられた移染の局在化した帯域が、有効量の反作用性の移染制限組成物の模様状の塗布により、基材に渡ってもたらされ得る。同様に、基材は、移染制限組成物を用いて前処理を施された後に、反作用性の移染促進組成物を用いて模様付けられ得る。従って、基材の染料移染性質を、基材上のそれぞれの部分における移染制限剤および移染促進剤の相対量を制御することにより、基材に渡って変化させることができる。さらに下に述べるように、このことは、これまで達成できなかった程度にまで、基材に渡る染料の制御された混合および封じ込めを可能にする。
【0039】
意図される実施によれば、移染制限組成物は、染料溶液と反応するように、染料溶液中の成分に対して対イオン性である成分を含む。従って、好ましい実施によれば、染料溶液または移染制限組成物の一方がカチオン性成分を含む一方で、他方は、アニオン性成分を含む。所望の場合、染料溶液は、染料溶液の対イオン性成分と移染制限組成物との間の反応を高めるような成分をも含み得る。好ましくは、移染制限組成物または染料溶液の少なくとも一方における反応性のイオン性成分は、例えば、少なくとも約5,000、好ましくは少なくとも約10,000の分子量を有する材料であるイオン性ポリマー材料を含む。より好ましくは、染料溶液と移染制限組成物の双方が、少なくとも約5000(より好ましくは少なくとも約10,000)の分子量を有する反応性ポリマー材料を含む。最も好ましく意図される実施によれば、染料溶液と移染制限組成物の双方が、少なくとも約5000(より好ましくは少なくとも約10,000)の分子量を有するアニオン性の反応性ポリマー材料を含む。意図されるアニオン性ポリマー成分は、キサンタンガム、アクリル酸含有ポリマー、アルギン酸ナトリウム等のようなバイオ多糖類を含む。カチオン性ポリマー成分は、例えば1級、2級および3級アミン(4級化されているもの、されていないものの双方)を含むポリアクリルアミドコポリマーである、カチオン性基を有するポリアクリルアミドコポリマーを含む。非ポリマーのアニオン性成分は、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のような、アニオン性表面活性剤を含む。非ポリマーのカチオン性成分は、ジデシルジメチルアンモニウムクロライド等のような、カチオン性表面活性剤を含む。
【0040】
染料溶液および移染制限組成物が反応性の対イオン性成分を含有する工程において、カチオン性成分(染料溶液または移染制限組成物の一方に由来する)およびアニオン性成分(染料溶液または移染制限組成物の他方に由来する)は、好ましくは、染料溶液がテキスタイル材料に塗布された際に、互いに接触するようになる。その後、イオン性相互作用が起こり、染料の不所望の移染を効果的に制御する。例えば、テキスタイル材料への染料の塗布前に、カチオン性成分とアニオン性成分を反応させておいた場合、形成され得る染料の液滴が、所望の模様での染料の塗布を、非常に困難に、または不可能にさえし得る。他方で、カチオン性成分とアニオン性成分とを、染料溶液が、かなりの時間に渡りテキスタイル材料と接触した後に反応させると、染料は、既に望ましくなく移染してしまっていることがあり得る。
【0041】
移染が制限されるべき帯域における、カチオン性成分とアニオン性成分の所望の相互作用は、所望の模様での染料溶液の塗布の前に、水溶液に担持された移染制限組成物(移染促進剤に対して基材に渡って模様状に配される)の形態で一方のイオン性成分をテキスタイル材料に塗布し、その後、染料溶液の成分としての対応する対イオン性材料を、移染制限剤と位置合わせして塗布することにより都合よく達成され得る。従って、移染制限剤の成分として、カチオン性成分を、最初にテキスタイル材料に塗布した場合に、染料溶液の成分として、アニオン性成分を塗布することができる。同様に、水溶液の成分として、アニオン性成分を、最初にテキスタイル材料に塗布した場合、染料溶液の成分として、カチオン性成分を塗布することができる。
【0042】
上述したように、一方の反応性のイオン性成分を含有する移染制限組成物は、染料溶液の塗布前に、好ましくは、染料が含められるべき帯域においてテキスタイル材料に塗布される。このイオン性成分、すなわち、アニオン性成分またはカチオン性成分のいずれかは、典型的に、水溶液の重量に基づいて、約0.1重量パーセント〜約10重量パーセント、好ましくは、約0.2重量パーセント〜約5重量パーセントの量で溶液中に提供され得る。広い範囲の付加的なテキスタイル染色前処理化学物質もまた、これら化学物質が上記したようなイオン性相互作用を妨げない限り、任意に、水溶液中に提供され得る。例は、例えば、湿潤剤、緩衝液等を含む。理想的には、水溶液のpHは約3〜約9であり得るが、pHは重要なものではない。
【0043】
テキスタイル材料に塗布される移染制限組成物を担持する溶液の量は、テキスタイル材料を完全に飽和させるに十分な量から、テキスタイル材料をただわずかに湿らせ得るのみである量まで広く渡り得る。提供されるカチオン性成分またはアニオン性成分の量は、イオン性基の分子量、数等に依存して幅広く変化し得る。一般的に、塗布される移染制限組成物の量は、テキスタイル材料の重量に基づいて、約1重量パーセント〜約500重量パーセント、好ましくは、約5重量パーセント〜約300重量パーセント、最も好ましくは、約50重量パーセント〜約200重量パーセントであり得る。
【0044】
所望の模様状での移染制限組成物の塗布後に、テキスタイル材料は、染料溶液の塗布前に乾燥され得るか、あるいは、染料溶液が、テキスタイル材料を事前に乾燥することなく、直接的に塗布され得る。
【0045】
当然ながら、他の移染制限組成物が、基材に渡って模様状に塗布され得る。例としてのみであり、限られないが、米国特許第4,808,191号(本明細書の一部として本願に援用する)に記載されている方法であって、+2以上の電荷を有する金属塩の水溶液を基材に塗布した後、染料および予め塗布された金属塩と錯体を形成する増粘剤を含有する水溶液を基材に渡って模様状に塗布する方法が用いられ得ることが意図される。染料に配位する錯体によって、模様の境界を実質的に越えた染料の移染を防止する。このような方法において、染色されるテキスタイル材料の前処理の結果、水性の染料−増粘剤溶液が後に塗布された際に、所望の模様に従って、増粘剤が「固着された」金属と錯体を形成し、この錯体が染料に配位するように、金属塩がテキスタイル材料の繊維に結合すると考えられる。結果として、染料分子は、テキスタイル基材−金属−増粘剤−染料錯体によって安定に結合し、拡散または毛管現象経路のいずれかによる染料移染は防止される。潜在的に好ましい金属塩は、アルミニウム、ジルコニウム、ハフニウム、ホウ素、マグネシウム、カルシウム、亜鉛、ストロンチウム、バリウム、ガリウムおよびベリリウムの金属塩を含む
潜在的に好ましい実施によれば、このような移染制限組成物が用いられる場合には、従来技術において教示されるように全体の基材に渡って配されるよりもむしろ、高鮮明さをもたらす移染制限が望まれる帯域において、基材に渡って模様付けられた配置で選択的に塗布されることが意図される。加えて、移染促進剤は、移染制限と移染促進の組み合わせが基材に渡って同時にもたらされるように、好ましくは、基材の残りの少なくとも一部分に渡って配される。
【0046】
染料固着/受容性組成物の形態の他の移染制限組成物が、選択的に、高鮮明さが所望の帯域に塗布されることもまた、意図される。1つの考えられる実施によれば、このような染料固着/受容性組成物は、染料固着剤およびインク受容剤を含む。1つの態様において、染料固着/受容性化合物は、相溶性樹脂バインダを含み得る。白化剤、抗微生物剤、光安定剤/紫外線吸収剤および潤滑剤のような、さらなる添加剤が、染料固着/受容性組成物と共に用いられ得る。
【0047】
1つの態様において、染料固着剤は、少なくとも約1000の分子量を有する。1つの態様において、染料固着剤は、高度にカチオン性の反応性アミノ化合物を含む。1つの潜在的に好ましい反応性アミノ化合物は、高い正電荷密度(すなわち、グラム当たり少なくとも1ミリ当量)を有する化合物である。本発明で用いられ得る反応性アミノ化合物は、少なくとも1の1級、2級、3級または4級アミノ基を含有する化合物を含む。さらに、反応性アミノ化合物は、テキスタイル基材または樹脂バインダと反応して、それに対して結合を形成し得る反応性基を含有し得る。反応性基の例は、エポキシド、イソシアネート、ビニルスルホンおよびハロトリアジンを含む。とりわけ、エピクロロヒドリン−ポリアミン縮重合体が特に有用であり得る。
【0048】
有用であり得る染料固着/受容性組成物中のインク受容剤は、吸着性または吸収性によりインクを受容する無機粒子を含む。1つの態様において、インク受容剤の粒子サイズは、約10ミクロンであるか、それ未満である。他の態様において、インク受容剤の粒子サイズは、約3ミクロンであるか、それ未満である。さらに他の態様において、インク受容剤の粒子サイズは、約1ミクロンであるか、それ未満である。意図されるインク受容剤の例は、シリカ、シリケート、炭酸カルシウム、酸化アルミニウムおよび二酸化チタンを含む。ベーマイトアルミナおよびシリカゲルが、染料固着/受容性組成物中のインク受容剤として特に首尾よく働き得、とりわけ、カチオン電荷を担持するように処理されたシリカゲルが特に首尾よく働き得る。シリカゲル粒子の場合に、アルミナ表面コーティングとカチオン性シラン表面変性が所望され得る。微孔性のベーマイトアルミナとシリカゲルが、アニオン性染料/顔料のような染料/顔料のさらなる物理的な捕獲を可能にし、改善された洗濯堅牢度をもたらすと考えられる。1つの態様において、無機粒子は、約10nm〜約200nmの孔直径の多孔度を有する。
【0049】
殆どの配合において、カチオン性の反応性アミノ化合物由来のカチオン性電荷は、無機粒子上に存在するカチオン性電荷よりもより大きい。従って、無機粒子上の比較的小さいカチオン性電荷の単なる存在は、カチオン−アニオン電荷相互作用を介して染料/基材相互作用を著しく高めることはない。処理された基材の移染制限性質をさらに改善するのは、高度に荷電した反応性アミノ化合物と微孔質無機粒子の組み合わせである。
【0050】
1つの態様において、染料固着剤は、典型的に、処理されたテキスタイル基材の約0.2重量%〜約20重量%を構成し得る。インク受容剤は、典型的に、処理されたテキスタイル基材の約0.2重量%〜約20重量%を構成し得る。1つの態様において、染料固着/吸収組成物は、処理されたテキスタイル基材の約1重量%〜約20重量%を構成する。他の態様において、染料固着/吸着組成物は、処理されたテキスタイル基材の約1重量%〜約5重量%を構成する。他のさらなる態様において、染料固着/吸着組成物は、処理されたテキスタイル基材の約5重量%〜約10重量%を構成する。テキスタイル基材上への配置前に、染料固着/受容性組成物は、好ましくは、安定な水溶液または分散体の形態である。
【0051】
示したように、染料固着/吸着組成物は、染料の移染を制限するために、樹脂バインダと組み合わせて用いられ得る。樹脂バインダは、テキスタイル基材の繊維との良好な結合を有する特性のものであり得ることが意図される。樹脂バインダは、熱可塑性または熱硬化性のポリマーバインダであり得る。このようなバインダは、好ましくは、約40℃より低いガラス転移温度を有する。また、洗濯に供した際に、バインダが耐久性であることが好ましい。樹脂バインダの例は、エチレンビニルアセテート、アクリル、ウレタンポリマー、ポリアミド、ポリエステルおよびポリビニルクロライドのような、非アニオン性、またはカチオン性ラテックスを含む。1つの態様において、樹脂バインダは、処理された基材の最大で約10重量%までを構成する。
【0052】
染料固着剤は、電荷型引力で、イオン性染料と相互作用し、および本発明の染料固着剤は、典型的に、テキスタイル基材の繊維と反応してテキスタイル基材と化学結合を形成し得るということが考えられる。樹脂バインダを用いる態様において、染料固着剤は、テキスタイル基材と結合している樹脂バインダと、化学的に結合し得るということが考えられる。また、インク受容剤は、インクジェットプリンタからのインクに、染料固着剤と相互作用するための表面積を与え、それにより、染料固着剤の効果が促進するということが考えられる。
【0053】
塗布された染料と位置合わせして、上記したような染料固着/吸着組成物の模様状に塗布することは、印刷されたテキスタイルに、優れた色の明るさと印刷解像度を提供し得る。これらの利益は、画素ごとに基づいて、処理されたテキスタイル基材上に配された水性顔料インクについて、特に著しいものであり得る。
【0054】
さらにとりわけ、重量で約10対1またはそれよりも大きい顔料対インク比を有する、バインダの水性顔料インクを、処理されたテキスタイル基材上に印刷することができ、処理されたテキスタイル上に、耐水および耐候性の印刷された画像を作り出す。さらに、約10重量%またはそれ以下のバインダを有する顔料インクを、無機粒子を有する、または有さない4級アミノ化合物の処理剤とともに、テキスタイル基材上に印刷することができ、耐久性の印刷を提供する。4級アミノ化合物は、化学結合、または任意の他の適切な方法により、テキスタイル基材に固定され得る。処理剤は、水性インクを受け取ると、膨らむことが考えられる。この膨張によって、インクの顔料粒子、および高いカチオン性であり多孔性の処理剤との相互作用の機会が増加することも考えられる。
【0055】
本明細書中で用いられる染料溶液という語は、幅広い種類の染料液剤を含むことを理解すべきである。従って、例えば、染料または着色剤は、水性媒体に溶解し得るか、あるいは、染料は完全に溶解せずに、むしろ単に、模様染色の最終用途使用に適していると慣習的にみなされる形態で、水性媒体中に分散または懸濁し得る。一般的に、テキスタイル材料に塗布される染料溶液は、酸性染料、塩基性染料、分散染料、反応性染料、直接染料、顔料等を含む1以上の慣用の染料を、染色されるべきテキスタイル材料に応じて含有し得る。染料溶液中の染料の濃度は、テキスタイル染色操作について一般的である範囲であり得、例えば、染料溶液の重量に基づいて、約0.01重量パーセント〜約2重量パーセント、好ましくは、約0.01重量パーセント〜約1.5重量パーセントであり得る。当業者にとって明らかであるような、酸性材料、均質剤、増粘剤および脱泡剤のような他の慣用の配合剤および添加剤を、染料溶液中に供給することができる。染色溶液中に存在するアニオン性またはカチオン性成分は、上記したような主な機能に加えて、染料溶液中での一定の所望される機能を果たし得る。従って、とりわけ、このような成分が、用いられる模様付け技術に依存して、幅広く変化し得る染料溶液の所望の流動学特性を制御し得ることが見出された。
【0056】
染料溶液中の染料の濃度は、所望される色に完全に依存するが、一般的には、テキスタイル染色操作について一般的である範囲であり得、例えば、増粘剤を除いた染料溶液の重量に基づいて、約0.01〜約2重量パーセント、好ましくは、約0.01〜約1.5重量パーセントであり得る。水性染料溶液に加えられる増粘剤の量は、個々の模様染色法に対して適切な、所望される粘度を提供するように選択される。複数の異なるカラー染色溶液を用いる場合に、水性増粘剤とその濃度は、染料溶液ごとに同じであるか、異なり得るが、しかし、一般的に、全ての染料溶液中で同じ増粘剤を用いることが好ましいということを理解すべきである。
【0057】
一般的に、染料は、増粘剤、脱泡剤、湿潤剤、殺生剤、および模様付け装置により施される染料溶液をなすための他の添加剤等の、多くの他の成分と組み合わされる。一般的に、増粘剤の量は、染料溶液の重量に基づいて、0.1未満〜約3重量パーセントに渡る。図1および2に示したような、染料溶液を再循環する模様付けシステムに必要とされるものは、染料溶液が基材上に向けられた際にのみ染料溶液が流れる応需滴下模様付けシステムに必要とされるものとは、いくぶんか異なり得る。最適な性能のためのこのような添加剤の相対的な割合と正確な組成は、それぞれの種類の模様付け装置について異なり得るが、本明細書中に開示された新規の教示が、両種の模様付け装置のための着色剤の混合に適用でき、および着色剤溶液が、基材表面に施される様式と関係なく、優れた結果を得ることができることが見出された。
【0058】
図1〜2に示される装置について、約50〜1,000センチポイズの範囲の粘度が有用であることがわかった。他の装置、例えば、染料溶液を再循環しないシステムを用いる装置は、最も良い結果のためには、操作条件(例えば、染色圧およびアプリケータオリフィスサイズ)次第で、約800〜約5000センチポイズの範囲の粘度が必要であると考えられる。本明細書中に挙げた全ての粘度値は、No.3スピンドルを有するブルックフィールドLVT粘度計で、25℃で30rpmにて駆動することにより測定されるように意図されることを特筆する。
【0059】
移染増強組成物と移染制限組成物の両者で、基材25を選択的に模様付けすることにより、大いに高められた自由度が、複雑な模様の展開においてもたらされることが見出された。とりわけ、模様状の染料塗布と組み合わせた選択的な処理薬品の塗布は、着色された領域間の鮮鋭な変わり目を形成する本質的な自由さと、プロセスカラーの制御された模様状の混合の展開とをもたらす。
【0060】
例としてのみであり、限られないが、図2の抜き出し部75において、複数のアプリケーションバーからの多数の染料溶液の塗布により作製され得るような着色されたブロック70が、背景帯域80の内側に示されている。着色されたブロック70は、色合いおよび/または色82、84、86の種々の帯域を包含し得、このような帯域間の異なる変わり目を有する。例としてのみであるが、第1の帯域82において、本質的に一様な、濃く陰影をつけた高鮮明な同一色が、化学的に処理された基材に渡って、1以上のアプリケーションバーからの1以上の染料溶液の模様状の塗布により達成し得る。第1の帯域82と隣接する第2の帯域84の間の連続した境界線90により示されるように、鮮鋭で、十分に明確な境界が、第1の帯域82と隣接する第2の帯域84の間に存在する。
【0061】
本発明の潜在的に好ましい実施によれば、染料溶液の塗布前に、基材25は、第1の帯域82を本質的に包含する模様状に基材25に渡って移染制限組成物を配するように、カチオン性ポリアクリルアミドコポリマー、4級アンモニウム塩、または染料溶液中の薬剤に対して対イオン性である上述した他の適切な組成物を含有する水溶液のような、カチオン性の移染制限組成物を用いて処理される。潜在的に好ましい実施によれば、移染制限剤の配置は、好ましくは、第1の帯域82の境界と同一の広がりをもつ。例としてのみであるが、移染制限組成物の制御された配置は、1つのアプリケーションバー15を用いる噴射衝突型模様付けによりもたらされ得る。この点について、移染制限組成物は、基材25の表面に渡って直接的に塗布され得るか、あるいは、移染制限組成物に対して反作用性の移染促進組成物を予め塗布した上に重ねて塗布され得るということを理解すべきである。移染制限組成物が塗布された後、増粘剤を含む、または含まない染料を含有する少なくとも1の染料溶液が、所望される模様状に塗布される。染料および/または任意の増粘剤は、第1の帯域82を覆っている移染制限組成物と反応するイオン性のものである。移染制限組成物と、染料溶液中の対イオン性成分との間の反応のために、境界90を越える染料の拡散は、実質的に防げる。
【0062】
さらなる例として、第2の帯域84内で、移染制限組成物は、移染促進組成物と組み合わせて、第1の帯域とは異なる移染性質を提供するような相対濃度で存在する。つまり、画素間の染料拡散の制御された度合いを可能にする。さらに、徐々に分散された陰影により示されるように、帯域に渡って、染料拡散の度合いを徐々に変化させることもできる。図示される例示的な実施において、境界線90にぴったりと隣接する第2の帯域84における染料拡散を、基材25に渡って、支配的な濃度の移染制限組成物を塗布することにより、実質的に排除することができる。しかしながら、境界90から距離が離れると、移染制限組成物の濃度は、移染促進組成物の濃度と比べて減少し得る。従って、ピクセル間の染料拡散は、境界90を除いた位置での「ソフトフォーカス」を導くことを促進する。移染促進組成物と移染制限組成物の制御された配置は、従って、制御された陰影または投影効果を与えるように用いられ得る。このような陰影または投影効果の使用は、第1の帯域82のような高鮮明な領域に、周囲のソフトフォーカスの帯域と比べて鮮鋭なフォーカスをもたらし、それにより、3次元的な視覚的印象を作り出す。
【0063】
上記したように、移染促進組成物と移染制限組成物は、好ましくは、基材に渡る拡散性質を移染制御組成物の相対量の量的な操作により所望される通りに調節できるような、本質的に反作用する性質のものである。例としてのみであるが、1の意図される実施によれば、第2の帯域84の全面は、移染促進組成物または移染制限組成物の一方で前処理され得る。その後、他方の移染促進組成物または移染制限組成物が、帯域84の異なる部分に最初に塗布された組成物に、完全にまたは部分的に反作用するように、所望の濃度様式で塗布され得る。
【0064】
第2の帯域84と隣接する第3の帯域86の間の断続的な境界線88により示されるように、本発明の実施は、一方のカラー帯域から他方へのゆるやかな合わさりを可能にし得ることが意図される。さらに、インサイチュ混合色のより広い系列が、少数のプロセスカラーを用いて達成され得ることが意図される。とりわけ、移染制限剤と移染促進剤の制御された組み合わせによって、基材における染料移染特性を制御することにより、種々の中間色に及ぶ色のインサイチュ混色が、第3の帯域86に渡る本質的に均一な色合いにより図示されるような、本質的に一様な単一の色合いを得るように制御される。
【0065】
上述した例から理解され得るように、基材に渡る染料、移染制限組成物および移染促進組成物の組み合わせの幅広い系列は、異なる効果を得るためにも利用され得る。種々の組み合わせが、図2で説明されるベン図により、理論的および位置的の双方で示される。理解され得るように、染料を含有する任意の帯域が、単独で、または染料を含まない(無色の基材を含む)1以上の帯域との組み合わせで用いられ、所望する模様を得ることができる。例え染色された帯域が、移染促進組成物および/または移染制限組成物を含有する帯域と重なることがなくても、これは当てはまり、何故なら、隣接する帯域が、これらの帯域への移染に影響を与え、それにより外観に影響を及ぼすからである。
【0066】
本方法の実施は、いわゆる超画素(すなわち、模様内の個々の画素として用いられる隣接する画素の群)という取り決めを用いてプロセスカラーを効果的に混合する能力をもたらす。この技法の例は以下の通りである。模様が、領域内の各画素に、特定の、広範な割合で白い顔料と赤い染料を塗布することにより形成される特定のピンクの色合いを必要とする領域を含有し、およびその色合いが、送出システムが送出できるよりも少ない量の赤い染料を各画素に必要とする場合に、それにもかかわらず、このピンクの色合いを、例えば2または4の隣接する画素の群内には発生することができ、この画素群は、模様内の必要な領域を覆うための単一の画素様に用いられうる。このように行うことで、送出システムは、例えば、個々のピクセル内の混合が試みられる場合の赤または他の色の所望の割合を形成するために必要とされ得る赤色染料よりも2または4倍多く送出することができ、それによって、プロセスカラーの非常に少ない相対量の送出ができないという送出設備のいかなる限界をも克服する。このような超画素内でのインサイチュ混色が、塗布された移染制限組成物と移染促進組成物の組み合わせにより提供され、最大限の混色が、移染促進組成物のみを用いて行われる。従って、超画素を構成する画素の数は、少量から比較的多量にまで調節され得る。この点について、より多量の画素で構成された超画素は、超画素内に塗布された染料の広い画素間での移染を利用して、均一な色を得る一方で、より少量の画素で構成された超画素は、より積極的ではない画素間の移染に利用され得ることが意図される。
【0067】
例としてのみであるが、単一のプロセスカラーまたは2以上のプロセスカラーの混合の種々の色合いが所望される場合、基材にそれぞれの染料を運ぶジェットの数は、幅広い系列の色合いを得るために、基材の染料移染性質と組み合わせて調節され得る。とりわけ、1つのプロセスカラーの濃い均一色のブロックが所望される場合、その色合いを有する染料溶液が、本質的に染料移染を防止するように処理されている基材の部分を十分に浸すように塗布される。従って、各画素において塗布された染料溶液の色は、隣接する画素への拡散によりぼけることはない。しかしながら、より明るい色合い、または混合された色合いが所望される場合、基材に渡る染料移染性質は、増加する割合で移染促進剤を塗布すると同時に、基材に本来のプロセスカラーの染料を加える、超画素内のジェットの量を減じることにより高められ得る。従って、基材に衝突する本来のプロセスカラーの染料ジェットは、隣接する未染色の画素に拡散するように、あるいは超画素内の隣接する画素に塗布された異なるプロセスカラーの1以上の染料とのインサイチュ混色に関与するように、制御された拡散を起こすことを可能にする。
【0068】
上記した実施の実際上の適用は、現実に裏付けられる。例としてのみであるが、図3において、図1に示したような装置を用いて、基材に渡って塗布され得る景観を示す。このような景色において、実質的に3次元の効果が、高鮮明な帯域と、緩慢飽和度の拡散混色帯域との制御された組み合わせによりもたらされ得る。とりわけ、最前面のものとして、あるいは、特に鮮やかな色として示される要素105は、図2において第1の帯域82に関して記載したような、本質的に移染制限性の帯域に印刷され得る。背景として示されるべき正反対の要素107は、与えられるべき背景の奥行きの印象に応じて、図2における第3の帯域86のような移染促進性の帯域において印刷され得る。
【0069】
例としてのみであるが、図4において、花の模様を示す。本発明の実施を用いることにより、3次元性が、図2における第1の帯域82に関して記載したような、実質的に移染制限性の帯域において高鮮明に示されるべき処理帯域105’により与えられ得る。このような高鮮明の印象は、例えば、図2における帯域84に関して記載したような、徐々に変化する移染性の帯域における印刷による帯域109’における制御された色合いの使用により高められ得る。
【0070】
理解され得るように、所定の帯域における移染特性にかかわらず、一度所望された度合いの混色が達成されると、さらなる望まれない混色および/または移染を防止するために、基材において染料を、すばやく且つ効果的に固着することが望ましい。従来、このような固着は、飽和したおよび過熱された蒸気、自然的なおよび強制的な空気加熱、並びに輻射および/または対流熱伝達機を用いる加熱を含む幅広い範囲の技法によりもたらされ得る。
【0071】
本発明の潜在的に好ましい実施によれば、一度、制御された度合いの染料移染および/またはインサイチュ混色が達成されると、RF(高周波)電界が、染料を固着するため、基材の染色された部分を効果的且つ迅速に加熱するように、基材の効果的な制御された深さに適用され得る。RF適用の限界は、基材中の制御された深さに迅速な方向性の加熱(directional heating)を提供すると同時に、燃焼または基材材料の構造成分の他の損傷を避けるように制御される。このようなRF加熱処理は、カーペット等のようなパイル布の処理に特に有用であり得るが、他の基材の処理においても用いられ得るということが意図される。従って、本方法は、下記で、パイルカーペット布の処理に関して記載されるが、このような記載は、単に、例示的であり、説明的であると理解されるべきである。
【0072】
本発明の1つの側面によれば、加熱エネルギーは、カーペットのパイル表面に渡って対置するように配置された交代性の正極および負極を有する、RF範囲内の周波数で操作されるいわゆる「フリンジ場」電極システムを用いて発生させた電界の形態で、基材に伝えられ得る。操作周波数および電極の配置は、所望される加熱エネルギーレベルを提供し、且つ維持するように決められる。
【0073】
図5を参照すると、RF加熱により処理され得るような、クッション状裏地を有するカーペットまたはカーペットタイルの形態の例示的な基材構造225が示されている。この例示的な構造において、基材構造225は、当業者によく知られ得るようなポリエステルまたはポリプロピレンのスクリムまたは不織繊維テキスタイル等の1次裏地216を通してタフトした複数のパイル糸214から形成された1次カーペット布212から構成される。SBRラテックスのような弾性接着剤のプレコート裏地層218が、一次裏地216の内側でパイル糸214を固定するために、一次カーペット布212の下面に渡って配置される。ホットメルト接着剤のような接着層220は、プレコート裏地層218に渡って広がる。織または不織ガラスのような補強材222の層が、接着層220と、未加工のまたは再結合ポリウレタン発泡体のようなクッション層224の間の位置に配置される。ポリエステルとポリプロピレン繊維の不織混合物のような第2の裏地層226が、クッション層224の下面に渡って配置される。
【0074】
理解され得るように、基材構造225の実際の構造は、幅広い範囲で変化し得る。従って、図5に示される多層構造は、単に、代表的なカーペットの例示的な構造を構成するものとして理解されるべきであり、本発明は、所望されるような任意の他の構造のカーペット状テキスタイルおよび、または他のテキスタイルにも等しく適用できる。カーペットタイル構造は、例えば、米国特許第6,203,881号および第6,468,623号に記載されており、これを本明細書の一部として本願に援用する。
【0075】
基材構造がカーペットの場合は、パイル糸214は、ウール、コットン等の天然繊維から形成されるスパン糸またはフィラメント糸のいずれかであり得る。パイル糸214は、ナイロン6、ナイロン6,6を含むポリアミド、PETおよびPBT等のポリエステル、ポリエチレンおよびポリプロピレン等のポリオレフィン、レーヨン、並びにポリアクリルニトリル等のポリビニルポリマーのような合成材料からも形成され得る。コットン、ウールおよびナイロンの混合物のような、天然繊維と合成繊維の混合物も、パイル糸214において用いられ得る。図5において、パイル糸214は、ループパイル構造で示される。当然ながら、カットパイル構造等を含む、当業者にとってよく知られ得る他のパイル構造も同様に用いられ得ることを理解されるべきである。
【0076】
上記したように、移染制御化学薬品と染料の模様状の配置が、基材225の表面に渡って所望の模様を展開するように、基材225に渡って適用され得る。展開される模様は、基材225に渡る模様状の不連続なプロセスカラー、および/または2以上のプロセスカラーの制御されたインサイチュ混色の結果であり得る。さらに、模様は、可能な染料移染の程度を実質的に制御することにより、さらに制御され得る。用いられる模様付け技法に関わらず、染料をその場に固着することによる迅速に制御された様式で、実質的に、さらなる染料移染および/または混色を実質的に抑える能力を有することが望ましい。
【0077】
潜在的に好ましい実施によれば、RF(高周波)加熱器を用いると、基材の染色された部分において染料固着を促進するように、基材の制御された深さに対する迅速且つ効果的な温度上昇を達成できる。操作において、RF加熱器は、加熱されるべき披験品目に交互性の電界を誘起し、それによって、このような材料の水分子を、変化する電界に追随するように迅速に回転させる。このような回転は、製品内部に熱を発生させ、それにより被験品目内部の加熱を引き起こす。
【0078】
出願者は、パイル糸に対する染料溶液の模様状の塗布に続いて、RF加熱の適切な使用が、カーペットまたは他のテキスタイル基材に渡る染料固着を高めるように用いられ得ると認識している。とりわけ、RF電界の印加は、迅速且つ制御された様式で染料拡散を抑えるように迅速な加熱を提供し得ることが見出された。さらに、加熱が制御された深さで行われるということから、基材へのエネルギー移動がより効率的であり、基材の染色された表面の下に重なる種々の構造層に対する損傷の可能性を実質的に最小限にする。
【0079】
印加において、本発明は、好ましくは、図8に模式的に示されるような、いわゆる「フリンジ場」RF加熱装置を用いる。RF適用装置230は、交互に荷電した細長い電極234の配列に接続された発生器232を含有する。潜在的に好ましい構造において、電極234は、加熱帯の中に、基材225を輸送するコンベア236の上方に広がり且つ横断するロッドの形態である。基材に対する操作周波数と電極配置の適切な選択により、適切な表面加熱と固着が、電極間のアーク放電の潜在的に不利益な発生および/または表面下の構造要素の過度の加熱を伴うことなく達成され得ることが見出された。仮想線で示されるように、印加電場が、交互の電極間のパターン化された配置において発生する。このように発生した場は、場の境界内の分子回転に影響を与えるためのエネルギーを供給するように、基材225中の作用距離に広がる。
【0080】
基材の多層構造の種々の層に対する、電極間で発生した場の実質的に制御された作用深さを、図9に図示した。示すように、作用周波数と電極の間隔の取り方は、有効電界が、水分を含有し得る全ての下に重なる層のいかなる実質的な加熱も回避するように、パイル糸の真下の場所に広がるようなものである。
【0081】
染料固着を高めるためのRF加熱の使用は、比較的低い濃度の染料でさえも、より深い色合いがパイル糸214の可視表面で得られるように、パイル糸214に染料発色団(chromaphore)の迅速な固着を促進すると考えられる。色合い保持力の改善が、図10に示され、ここで、光反射は同じ染料の同濃度を用いて染色されたカーペットサンプルの糸の先端部にて測定されるが、一方のサンプルはRF予備加熱、続く蒸気処理を用いて染料固着を受けるに対して、他方のサンプルは、蒸気固着のみを用いる染料固着を受けるものである。Y軸の反射率の測定は、より低い数値が、高められた光吸収および相応して減じられた反射に対応するより濃い色合いを示すところのアドビフォトショップ(ADOBE PHOTOSHOP)L値に関して記載される。示されるように、より低い濃度の染料塗布では、RF予備加熱で処理されたカーペットは、より濃い色合いを示した。色合いにおける差異は、高められた濃度の染料が塗布されると、より顕著ではなくなってくる。しかしながら、より高い染料塗布濃度でさえも、RF予備加熱を用いて処理されたカーペットの糸の先端部における高められた色合いが測定できた。
【0082】
糸の先端部における高められた着色をもたらす現象は、完全に理解されてはいないが、RF加熱の使用は、塗布帯域から毛管作用によって排出されるという染料溶液の傾向を抑えるに十分な程度にまで、基材の染色された部分を迅速に加熱することが考えられる。対流加熱および/または伝導性加熱は、RF加熱によりもたらされると思われる染料移染の非常に初期の抑制を提供するとは思われない。従って、RF加熱の使用は、画素間の拡散が所望される地点より下に進行することを防ぐと同時に、染色された糸の先端部における、いわゆる霜白の発生を回避することにより、基材に渡る模様の解像度を実質的に改善することが見出された。
【0083】
実際の実施において、フリンジ場RF染料固着の使用は、染料固着プロセスの効率と、それにより形成された製品の審美的な外観の双方を実質的に改善するために利用され得ると想定される。染料固着を助力するRF加熱を含む、幅広い系列の実際の製品形成実施が意図される。例としてのみであり、限られないが、カーペットの処理に適用できる種々の手順を、図6および7に示す。
【0084】
第1の意図される実施によれば、複数の外向きに突出するパイル糸を含有するタフテッドまたは不織構造のカーペット布のような基材を、染料塗布工程に供し、その中で染料は表面に渡って模様状に塗布される。この塗布は、任意の既知の技法によるものであり得るが、染料が画素ごとに基づいて塗布される染料溶液の制御された流れが好ましいものであり得る。カーペットパイルへの染料の塗布に続いて、パイルを、励起電界をカーペットパイルの予め決められた深さに印加するような、フリンジ場RF加熱装置を用いるRF加熱により加熱する。染料は、所望されるならば、この工程において固着され得る。RF加熱工程に続いて、カーペットを冷却する。所望されるならば、本冷却は、強制冷却装置の使用により容易にされ得る。
【0085】
図7において、潜在的に好ましい基材染色と処理方法における主な工程を示す。本方法において、多数の外向きに突出するパイル糸を含有するタフテッドまたは不織構造のカーペットのような基材を、上記したような、移染促進組成物と、反作用性の移染制限組成物の双方により前処理する。移染制御組成物の塗布に続いて、染料を、任意の適切な技法によりカーペットパイルに渡って模様状に塗布する。染料塗布に続いて、パイルを、励起電界をカーペットパイル内の有効な深さに印加するフリンジ場RF加熱装置により予備加熱する。RF加熱工程に続いて、染料固着を、蒸気熱の使用により完成させる。カーペットは、その後、使用前に洗浄、乾燥および冷却され得る。
【0086】
当然ながら、種々の潜在的に好ましい態様、手順および実施を示し、記載したが、本発明はそれらに限定されるものでは決してなく、何故なら、改変を成すことができ、および本発明に適する本発明の原理に基づく他の態様が、当業者等には思い浮かび得ることを理解すべきである。従って、添付した特許請求の範囲は、本発明の本質的な意図および範囲に属する本発明の特徴を有し得るような任意の改変および他の態様を網羅するものである。
【図面の簡単な説明】
【0087】
【図1】一組のアプリケーションバーの長さに沿って配列した複数の個々に制御可能なアプリケーターを、模様づけられるべき基材ウェブの進行方向に渡って配置する例示的な模様付け装置を模式的に示す図。
【図2】着色されることを意味する、基材の模様付けられる領域を示す図1の装置の平面図を模式的に示す図。
【図2A】基材に渡る、染料、移染制限組成物、移染促進組成物およびそれらの組み合わせの種々の配置を論理的に、および位置的に示すベン図。
【図3】本明細書中の教示を用いて達成される一群の可能な視覚効果(すなわち、奥行き/画像強調)を述べるに有用である、選ばれた基材上に配置される第1の例示的な模様を示す図。
【図4】本明細書中の教示を用いて達成される第2の一群の可能な視覚効果(色の範囲の強調)を述べるに有用である、選択された基材上に配置された、第2の例示的な模様を示す図。
【図5】例示的な多層カーペット構造の分解模式図。
【図6】カーペットパイルへの染料塗布および染料の固着についての簡略化されたプロセスフロー図。
【図7】パイル表面への染料の塗布および固着を含む、カーペット製造における一連の段階を示す増補されたフロー図。
【図8】乾燥用の電界の印加のための、カーペットタイルの移動方向に渡って広がる複数の電極を含む、フリンジ場高周波(RF)印加装置を示す図。
【図9】カーペット構造内の実質的に制御された深さに適用されるRF場を示す、図5と同様の分解側面図。
【図10】RF予備加熱を用いた改善された染色を示すグラフ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記表面の少なくとも一部に渡って配された移染促進組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項2】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性である請求項2に記載の基材。
【請求項4】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項3に記載の基材。
【請求項5】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項1に記載の基材。
【請求項6】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項5に記載に基材。
【請求項7】
表面;
前記表面の少なくとも1部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記少なくとも1の染料溶液に対して、前記表面の少なくとも一部に渡って模様状に配された移染促進組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項8】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項7に記載の基材。
【請求項9】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項8に記載の基材。
【請求項10】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項9に記載の基材。
【請求項11】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項7に記載の基材。
【請求項12】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項11に記載の基材。
【請求項13】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
予め決められた帯域において前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記表面に渡る前記予め決められた帯域において前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部と実質的に位置合わせされて配された移染促進組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項14】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項14に記載の基材。
【請求項16】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項15に記載の基材。
【請求項17】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項13に記載の基材。
【請求項18】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項17に記載の基材。
【請求項19】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料の少なくとも一部の移染を制限するように適合されるように、前記少なくとも1の染料溶液に対して、前記表面の不連続な帯域に渡って予め決められた模様状に、有効量で配された移染制限組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項20】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項19に記載の基材。
【請求項21】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項20に記載の基材。
【請求項22】
前記移染制限組成物が、実質的にカチオン性のものである請求項21に記載の基材。
【請求項23】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項22に記載の基材。
【請求項24】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項19に記載の基材。
【請求項25】
前記移染制限組成物が、実質的にアニオン性のものである請求項24に記載の基材。
【請求項26】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項25に記載の基材。
【請求項27】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って、模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
移染促進組成物が、予め決められた帯域において、前記表面に渡る少なくとも1つの染料溶液の少なくとも1部の移染を制限するように適合されるように、前記表面に渡る前記予め決められた帯域における前記少なくとも1つの染料溶液の少なくとも一部と実質的位置を合わせされて配された移染制限組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項28】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項27に記載の基材。
【請求項29】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項28に記載の基材。
【請求項30】
前記移染制限組成物が、実質的にカチオン性のものである請求項27に記載の基材。
【請求項31】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項30に記載の基材。
【請求項32】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項27に記載の基材。
【請求項33】
前記移染制限組成物が、実質的にアニオン性のものである請求項32に記載の基材。
【請求項34】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項33に記載の基材。
【請求項35】
表面;
前記表面の少なくとも1部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記表面の少なくとも1部に渡って配された移染促進組成物;および
移染促進組成物が、前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を制限するように適合されるように、前記少なくとも1の染料溶液に対して、前記表面の不連続な帯域に渡って模様状に、有効量で配された移染制限組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項36】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項35に記載の基材。
【請求項37】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項35に記載の基材。
【請求項38】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項37に基材の基材。
【請求項39】
前記移染制限組成物が、実質的にカチオン性のものである請求項38に記載の基材。
【請求項40】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項39に記載の基材。
【請求項41】
前記少なくとも1つの染料溶液が、カチオン性のものである請求項35に記載の基材。
【請求項42】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項41に記載の基材。
【請求項43】
前記移染制限組成物が、実質的にアニオン性のものである請求項38に記載の基材。
【請求項44】
表面;
第1のプロセスカラーの第1の染料溶液;
第2のプロセスカラーの少なくとも第2の染料溶液;
前記表面に渡る前記第1の染料溶液と前記第2の染料溶液の移染を促進するように適合されるように、前記表面の部分に渡って配された移染促進組成物;および
前記表面に渡る前記第1の染料溶液と前記第2の染料溶液の移染を防止するように適合されるように、前記表面の部分に渡って配された移染制限組成物
の組み合わせを含み、
前記移染制限組成物および前記移染促進組成物の一方が、前記表面に対して実質的に覆う関係に配され、前記移染制限組成物および前記移染促進組成物の他方が、前記表面に渡って選択的な模様づけ関係に配されている
染料受容性基材。
【請求項45】
前記染料受容性基材が、少なくとも1の染料溶液の塗布後に、前記少なくとも1の染料溶液の固着を開始させるために高周波加熱に供される請求項1〜44のいずれか一項に記載の基材。
【請求項46】
前記高周波加熱が、基材内の制御された深さまで行われる請求項45に記載の基材。
【請求項47】
前記高周波加熱が、フリンジ場高周波加熱器により行われる請求項46に記載の基材。
【請求項48】
染料受容性基材の表面を染色するための方法であって、
前記表面に渡って、染料移染促進組成物および/または染料移染制限組成物を塗布する工程;
前記表面の少なくとも一部に渡って少なくとも1の染料溶液を塗布する工程;および
前記塗布工程後に、高周波加熱器による高周波の印加によって前記染料受容性基材を加熱する工程
を包含する方法。
【請求項49】
前記染料移染促進組成物および前記染料移染制限組成物の少なくとも一方を、ジェット式染色機を用いて画素様形態で塗布する請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物の双方を、画素様形態で塗布する請求項49に記載の方法。
【請求項1】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記表面の少なくとも一部に渡って配された移染促進組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項2】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項1に記載の基材。
【請求項3】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性である請求項2に記載の基材。
【請求項4】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項3に記載の基材。
【請求項5】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項1に記載の基材。
【請求項6】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項5に記載に基材。
【請求項7】
表面;
前記表面の少なくとも1部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記少なくとも1の染料溶液に対して、前記表面の少なくとも一部に渡って模様状に配された移染促進組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項8】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項7に記載の基材。
【請求項9】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項8に記載の基材。
【請求項10】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項9に記載の基材。
【請求項11】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項7に記載の基材。
【請求項12】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項11に記載の基材。
【請求項13】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
予め決められた帯域において前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記表面に渡る前記予め決められた帯域において前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部と実質的に位置合わせされて配された移染促進組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項14】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項13に記載の基材。
【請求項15】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項14に記載の基材。
【請求項16】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項15に記載の基材。
【請求項17】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項13に記載の基材。
【請求項18】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項17に記載の基材。
【請求項19】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料の少なくとも一部の移染を制限するように適合されるように、前記少なくとも1の染料溶液に対して、前記表面の不連続な帯域に渡って予め決められた模様状に、有効量で配された移染制限組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項20】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項19に記載の基材。
【請求項21】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項20に記載の基材。
【請求項22】
前記移染制限組成物が、実質的にカチオン性のものである請求項21に記載の基材。
【請求項23】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項22に記載の基材。
【請求項24】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項19に記載の基材。
【請求項25】
前記移染制限組成物が、実質的にアニオン性のものである請求項24に記載の基材。
【請求項26】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項25に記載の基材。
【請求項27】
表面;
前記表面の少なくとも一部に渡って、模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
移染促進組成物が、予め決められた帯域において、前記表面に渡る少なくとも1つの染料溶液の少なくとも1部の移染を制限するように適合されるように、前記表面に渡る前記予め決められた帯域における前記少なくとも1つの染料溶液の少なくとも一部と実質的位置を合わせされて配された移染制限組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項28】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項27に記載の基材。
【請求項29】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項28に記載の基材。
【請求項30】
前記移染制限組成物が、実質的にカチオン性のものである請求項27に記載の基材。
【請求項31】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項30に記載の基材。
【請求項32】
前記少なくとも1の染料溶液が、カチオン性のものである請求項27に記載の基材。
【請求項33】
前記移染制限組成物が、実質的にアニオン性のものである請求項32に記載の基材。
【請求項34】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項33に記載の基材。
【請求項35】
表面;
前記表面の少なくとも1部に渡って模様状に配された少なくとも1の染料溶液;
前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を促進するように適合されるように、前記表面の少なくとも1部に渡って配された移染促進組成物;および
移染促進組成物が、前記表面に渡る前記少なくとも1の染料溶液の少なくとも一部の移染を制限するように適合されるように、前記少なくとも1の染料溶液に対して、前記表面の不連続な帯域に渡って模様状に、有効量で配された移染制限組成物
の組み合わせを含む染料受容性基材。
【請求項36】
前記少なくとも1の染料溶液が、非中性のイオン性のものである請求項35に記載の基材。
【請求項37】
前記少なくとも1の染料溶液が、アニオン性のものである請求項35に記載の基材。
【請求項38】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはアニオン性のものである請求項37に基材の基材。
【請求項39】
前記移染制限組成物が、実質的にカチオン性のものである請求項38に記載の基材。
【請求項40】
前記染料溶液および前記移染制限組成物の少なくとも一方が、反応性ポリマー成分を含有する請求項39に記載の基材。
【請求項41】
前記少なくとも1つの染料溶液が、カチオン性のものである請求項35に記載の基材。
【請求項42】
前記移染促進組成物が、実質的に中性またはカチオン性のものである請求項41に記載の基材。
【請求項43】
前記移染制限組成物が、実質的にアニオン性のものである請求項38に記載の基材。
【請求項44】
表面;
第1のプロセスカラーの第1の染料溶液;
第2のプロセスカラーの少なくとも第2の染料溶液;
前記表面に渡る前記第1の染料溶液と前記第2の染料溶液の移染を促進するように適合されるように、前記表面の部分に渡って配された移染促進組成物;および
前記表面に渡る前記第1の染料溶液と前記第2の染料溶液の移染を防止するように適合されるように、前記表面の部分に渡って配された移染制限組成物
の組み合わせを含み、
前記移染制限組成物および前記移染促進組成物の一方が、前記表面に対して実質的に覆う関係に配され、前記移染制限組成物および前記移染促進組成物の他方が、前記表面に渡って選択的な模様づけ関係に配されている
染料受容性基材。
【請求項45】
前記染料受容性基材が、少なくとも1の染料溶液の塗布後に、前記少なくとも1の染料溶液の固着を開始させるために高周波加熱に供される請求項1〜44のいずれか一項に記載の基材。
【請求項46】
前記高周波加熱が、基材内の制御された深さまで行われる請求項45に記載の基材。
【請求項47】
前記高周波加熱が、フリンジ場高周波加熱器により行われる請求項46に記載の基材。
【請求項48】
染料受容性基材の表面を染色するための方法であって、
前記表面に渡って、染料移染促進組成物および/または染料移染制限組成物を塗布する工程;
前記表面の少なくとも一部に渡って少なくとも1の染料溶液を塗布する工程;および
前記塗布工程後に、高周波加熱器による高周波の印加によって前記染料受容性基材を加熱する工程
を包含する方法。
【請求項49】
前記染料移染促進組成物および前記染料移染制限組成物の少なくとも一方を、ジェット式染色機を用いて画素様形態で塗布する請求項48に記載の方法。
【請求項50】
前記組成物の双方を、画素様形態で塗布する請求項49に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図2A】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2006−518422(P2006−518422A)
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−500800(P2006−500800)
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/000198
【国際公開番号】WO2004/063459
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】
【公表日】平成18年8月10日(2006.8.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年1月7日(2004.1.7)
【国際出願番号】PCT/US2004/000198
【国際公開番号】WO2004/063459
【国際公開日】平成16年7月29日(2004.7.29)
【出願人】(599060788)ミリケン・アンド・カンパニー (65)
【氏名又は名称原語表記】Milliken & Company
【Fターム(参考)】
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