説明

テキスタイルの表面に通気性コーティングフィルムを形成するための液状シリコーンゴム組成物およびテキスタイルの表面に通気性コーティングフィルムを形成する方法

本発明は、テキスタイル、特に織布、不織布または編物および合成皮革上に通気性コーティングフィルムを形成するのに有用な液状シリコーンゴム(LSR)組成物、およびテキスタイル上に通気性コーティングフィルムを形成する方法に関する。このコーティングフィルムは湿気透過性および防水性を示すことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テキスタイル、特に、織布、不織布または編物および衣料用の合成皮革上に通気性コーティングフィルムを形成するのに有用な液状シリコーンゴム(LSR)組成物、およびテキスタイル上に通気性コーティングフィルムを形成する方法に関する。用語「通気性コーティングフィルム(breathable coating film)」とは、水蒸気を透過するが水滴を透過させないコーティングフィルムを意味する。
【背景技術】
【0002】
液状シリコーンゴム(「LSR」)は、シリコーン産業分野において広く知られており、液体形態で入手可能であり、硬化してシリコーンエラストマーを形成する。LSRは、柔軟な感触および洗濯耐久性のため、織物分野で多く使用されている。したがって、LSR被覆テキスタイル、例えば、織布、不織布または編物および合成皮革は、衣服、靴、家具の室内装飾品、例えば、シーツ、椅子、ソファなどに有用であった。
【0003】
LSRコーティングは、シリコーンエラストマー自体の固有の特性として、ガス透過性および撥水性を有する。しかし、LSRコーティングの水蒸気透過性が依然として低いために、LSR被覆衣類は雨水を発散させる利点はあるが、LSR被覆衣類では汗による水蒸気を十分に排出することはできなかった。したがって、衣類市場において十分満足できなかった。
【0004】
本発明は、(A)各分子内に少なくとも2個のアルケニルラジカルを含有する液体ポリジオルガノシロキサン、(B)各分子内に少なくとも3個の珪素結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、(C)熱膨張性マイクロカプセルおよび(D)ヒドロシリル化触媒、ならびに、必要に応じて、(E)補強性充填剤を含むLSRコーティング組成物を調製し、該LSRコーティング組成物をテキスタイル、例えば、織物および合成皮革の上にコーティングし、該LSRコーティング組成物を該テキスタイル上で硬化/発泡させることにより達成された。
【0005】
米国特許第5246973号には、熱膨張性中空プラスチック微細粒子を含有するLSR組成物が、シリコーンゴム発泡生成物を提供し、これが、毒性および/または副産物である分解ガスのような問題を起こすことなく発泡可能であり、そして軽量で卓越した耐熱性と耐候性を示して広範囲な用途、例えば、自動車部品、シール(seal)、パッキング、ガスケット、Oリング、ならびに従来のシリコーンゴム発泡体に使用されることが開示されている。この米国特許は、テキスタイルの適用における発泡性組成物の使用については示唆していない。
【0006】
米国特許第6420037号は、エアバック用LSRコーティング組成物を開示する。エアバックのコーティングフィルムの表面粘着性を減少させるために球体粉末、例えば、中空アルミノシリケート粉末、ガラス球体、シリカ球体、中空プラスチック球体などを含有するこの組成物を、エアバック織物に塗布したが、この場合、エアバック中に充填されたガスが漏出してはならない。しかし、この米国特許は、より高い水蒸気透過性が要求される織物適用におけるLSR組成物の使用を教示していない。
【発明の開示】
【0007】
本発明は、テキスタイル、特に、織布、不織布または編物および合成皮革上に通気性コーティングフィルムを形成するのに有用な液状シリコーンゴム(LSR)組成物、およびテキスタイル上に通気性コーティングフィルムを製造する方法に関する。このコーティングフィルムは、湿気透過性および防水性を示すことを特徴とする。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本発明は、テキスタイル、特に織布、不織布または編物および合成皮革における通気性コーティングフィルムに有用な液状シリコーンゴム(LSR)組成物を提供し、
(A)各分子内に少なくとも2個のアルケニルラジカルを含有する液体ポリジオルガノシロキサン100質量部、
(B)該成分(A)中のすべてのアルケニルラジカルの総量に対する当該成分中の珪素結合水素原子の総数のモル比が0.5:1〜20:1である量の、各分子内に少なくとも3個の珪素結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)成分(A)、成分(B)、成分(D)および成分(E)の合計100質量部当たり0.1〜10質量部の熱膨張性マイクロカプセル、
(D)ヒドロシリル化触媒、および必要に応じて
(E)該成分(A)の量を基準として、0〜50質量部の補強性充填剤、
を含む。
【0009】
本発明はまた、(I)上記の液状シリコーンゴム組成物の調製工程、(II)当該組成物をテキスタイル上に塗布する工程、および(III)液体シリコーン組成物をテキスタイル上で硬化および発泡させる工程を含むことにより、テキスタイル、特に、織布、不織布または編物および合成皮革上に通気性コーティングを製造する方法を提供する。
【0010】
本発明はまた、上記のLSRコーティング組成物を調製し、LSRコーティング組成物をテキスタイルに塗布し、成分(C)を膨張させるのに十分な温度でLSRコーティング組成物を基材上で加熱して同時に硬化および発泡させ、そしてLSRコーティング組成物を硬化させることによる、テキスタイル、特に、織布、不織布または編物および合成皮革上の通気性コーティングフィルムの製造を提供する。
【0011】
本発明のLSR組成物に含まれ得る成分について、以下にて論議する:
【0012】
(A)液体アルケニル含有ポリジオルガノシロキサン
成分(A)は、各分子内に少なくとも2個の珪素結合アルケニルラジカルを含有する液体ポリジオルガノシロキサンである。成分(A)の適切なアルケニルラジカルは、2〜10の炭素原子を含み、この好ましい種類は、例えば、ビニル、アリルおよび5−ヘキセニルである。成分(A)は、アルケニルラジカル以外の珪素結合有機基を有し得る。このような珪素結合有機基は、代表的には、一価飽和炭化水素ラジカル(好ましくは1〜10の炭素原子を含む)および一価芳香族炭化水素ラジカル(好ましくは6〜12の炭素原子を含む)から選択され、これらは置換されないか、または本発明の組成物の硬化を妨害しない基、例えば、ハロゲン原子に置換される。珪素結合有機基の好ましい種類は、例えば、メチル、エチルおよびプロピルのようなアルキル;3,3,3−トリフルオロプロピルのようなハロゲン化アルキル;およびフェニルのようなアリールである。
【0013】
成分(A)の分子構造は、代表的には直鎖であるが、分子内三価シロキサン単位の存在により時々分岐され得る。本発明のLSR組成物を硬化させることにより調製されたエラストマーにおいて有用なレベルの物理的特性を達成するためには、成分(A)の分子量は、25℃で少なくとも0.1Pa.sの粘度を達成にするのに十分でなければならない。成分(A)の分子量上限値は特に限定されず、代表的には本発明のLSR組成物の加工性によってのみ制限される。
【0014】
成分(A)の好ましい実施様態は、2つの末端にアルケニルラジカルを含有するポリジオルガノシロキサンであり、化学式Iで表される。
【0015】
R'R''R'''SiO−(R''R'''SiO)−SiOR'''R''R' I
【0016】
式Iにおいて、各R'は、アルケニルラジカルであり、好ましくは2〜10の炭素原子を含み、例えば、ビニル、アリルおよび5−ヘキセニルである。
【0017】
R''は、エチレン系不飽和を含有せず、そして同一または異なり、それぞれ一価飽和炭化水素ラジカル(好ましくは1〜10の炭素原子を含む)および一価芳香族炭化水素ラジカル(好ましくは6〜12の炭素原子を含む)から選択される。R''は、置換され得ないか、または本発明の組成物の硬化を妨害しない基、例えば、ハロゲン原子に置換され得る。R'''は、R'またはR''である。mは、成分(A)が25℃で少なくとも0.1Pa.s、好ましくは0.1〜300Pa.sの粘度を有するものと同等の重合度を表す。
【0018】
好ましくは、化学式IのR''およびR'''のすべてはメチルである。他の好ましい態様は、化学式IのR''およびR'''の少なくとも1つまたはR''およびR'''のほとんどがメチルであり、そして残りがフェニルまたは3,3,3−トリフルオロプロピルである。この好ましい態様は、ポリジオルガノシロキサン(成分(A))を調製するのに代表的に用いられる反応物の利用可能性とこのようなポリジオルガノシロキサンを含む組成物から調製された硬化されたエラストマーに所望の特性とに基づく。
【0019】
末端にのみエチレン系不飽和炭化水素ラジカルを含有する成分(A)の代表的な実施様態は、ジメチルビニルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ポリメチル−3,3,3−トリフルオロプロピルシロキサン、ジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン−3,3,3−トリフルオロプロピルメチルシロキサン共重合体、およびジメチルビニルシロキシ末端ジメチルシロキサン/メチルフェニルシロキサン共重合体を含むが、これらに制限されない。
【0020】
一般的に、成分(A)は、25℃で少なくとも0.1Pa.s、好ましくは0.1〜300Pa.sの粘度を有する。
【0021】
(B)オルガノハイドロジェンポリシロキサン
成分(B)は、以下に述べる成分(D)の触媒活性下における当該成分中の珪素結合水素原子と成分(A)中のアルケニル基との付加反応により、成分(A)を硬化させるための架橋結合剤として作用するオルガノハイドロジェンポリシロキサンである。成分(B)は、成分(A)を満足に硬化させるために、当該成分の水素原子が成分(A)のアルケニルラジカルと十分に反応して網状構造を形成し得るように通常3個以上の珪素結合水素原子を含有する。この反応によりLSR組成物が硬化するので、成分(A)が3個以上のアルケニルラジカルを有する場合、2個の珪素結合水素原子を有する成分(B)は、依然として架橋結合剤として作用することが容易に理解される。
【0022】
成分(B)の分子配置は特に制限されず、これは直鎖、分岐鎖含有直鎖または環状であり得る。当該成分の分子量は特に制限されないが、成分(A)との良好な混和性を得るためには、粘度は、好ましくは、25℃で0.001〜50Pa.sである。
【0023】
成分(B)は、好ましくは、成分(A)中のすべてのアルケニルラジカルの総量に対する当該成分中の珪素結合水素原子の総数のモル比が0.5:1〜20:1、好ましくは1:1〜10:1である量で添加される。この比が0.5:1未満の場合には、十分に硬化した組成物が得られない。この比が20:1を超える場合には、硬化した組成物の硬度が加熱時に増加する傾向がある。
【0024】
成分(B)の例としては以下が挙げられるが、これらに制限されない:
(i)トリメチルシロキシ末端メチルハイドロジェンポリシロキサン、
(ii)トリメチルシロキシ末端ポリジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン、
(iii)ジメチルハイドロジェンシロキシ末端ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサン共重合体、
(iv)ジメチルシロキサン−メチルハイドロジェンシロキサンサイクリック共重合体、
(v)(CHHSiO1/2単位とSiO4/2単位とで構成された共重合体、および
(vi)(CHSiO1/2単位、(CHHSiO1/2単位およびSiO4/2単位で構成された共重合体。
【0025】
(C)熱膨張性マイクロカプセル
成分(C)は、熱可塑性樹脂からなる球形シェルに埋封されている揮発物質を含みそして加熱時に膨張する熱膨張性マイクロカプセルである。当該成分のシェルを形成する熱可塑性樹脂の例としては、ポリエチレン、ポリスチレン、ポリビニルアセテート、ポリビニルクロリド、ポリビニリデンクロリド、ポリアクリロニトリル、ポリメチルメタクリレート、ポリブタジエン、ポリクロロプレン、および他のビニル重合体およびその共重合体;ナイロン6、ナイロン66および他のポリアミド;およびポリエチレンテレフタラート、ポリアセタールおよびこれらのブレンドが挙げられる。熱膨張性マイクロカプセルに埋封される揮発物質の例としては、ブタン、イソブテン、プロパンおよびその他の炭化水素;メタノール、エタノールおよび他のアルコール;ジクロロエタン、トリクロロエタン、トリクロロエチレンおよび他のハロゲン化炭化水素;およびジエチルエーテル、イソプロピルエーテルおよび他のエーテルが挙げられる。成分(C)の粒径は、膨張前には好ましくは5〜50μmの範囲、最も好ましくは5.0〜15μmの範囲であり、膨張後には好ましくは5〜200μm、最も好ましくは5.0〜50.0μmの範囲である。粒径が5μm未満であれば、良好な水蒸気透過性が得られず、そして50μmを超えると、熱可塑性樹脂中空粒子粉末の強度が、液状シリコーンゴム基材組成物を作成する間に粒子が破壊する程度に弱くなる。成分(C)の配合量は、通常、本発明の組成物中の成分(A)、成分(B)、成分(D)および成分(E)の合計100質量部当たり0.1〜10質量部である。この量が0.1質量部未満であれば、良好な水蒸気透過性が得られず、量が10質量部を超えると、液状シリコーンゴム基材組成物の粘度が非常に高くて液状シリコーンゴム基材組成物を加工することができず、および/または硬化したコーティングフィルムの表面の外観が悪くなる。成分(C)の量は、成分(A)、成分(B)、成分(D)および成分(E)の合計100質量部当たり0.1〜5質量部の範囲であることが好ましく、0.5〜1.5質量部の範囲が最も好ましい。
【0026】
(D)ヒドロシリル化触媒
本発明のLSR組成物の硬化は、周期律表の白金族から選ばれる金属またはこのような金属の化合物であるヒドロシリル化触媒である成分(D)により行われる。金属としては、白金、パラジウムおよびロジウムが挙げられる。白金および白金化合物が、ヒドロシリル化反応におけるこれらの触媒の高い活性レベルのため、より好ましい。
【0027】
好ましい硬化触媒の例としては、白金ブラック、種々の固体支持体上の白金、塩化白金酸、塩化白金酸のアルコール溶液、および塩化白金酸と液体エチレン系不飽和化合物(例えば、エチレン系不飽和珪素結合炭化水素ラジカルを含有するオレフィンおよびオルガノシロキサン)との錯体が含まれるが、これらに制限されない。塩化白金酸とエチレン系不飽和炭化水素ラジカルを含有するオルガノシロキサンとの錯体は、米国特許第3419593号に記載されている。
【0028】
本発明のLSR組成物中の成分(D)の濃度は、成分(A)と成分(B)とを合わせた質量を基準にして、百万部当たり(ppm)で白金族金属0.1〜500質量部である白金族金属濃度に等価である。
【0029】
上記成分(A)、成分(B)および成分(D)の混合物は、周囲温度で硬化を開始し得る。
【0030】
本発明のLSR組成物の作用時間または可使時間(pot life)を延長するために、触媒の活性を遅延または抑制するための適切な阻害剤が使用され得る。例えば、米国特許第3989887号に記載されているようなアルケニル置換されたシロキサンが使用され得る。サイクリックメチルビニルシロキサンが好ましい。
【0031】
白金触媒の公知の阻害剤の他のクラスとしては、米国特許第3445420号に開示されたアセチレン系化合物が挙げられる。アセチレン系アルコール、例えば、2−メチル−3−ブチン−2−オールは、25℃で白金含有触媒の活性を抑制する阻害剤の好ましいクラスを構成する。これらの阻害剤を含有する組成物は、代表的には、実用的な速度で硬化させるために、70℃以上の温度で加熱することを要する。
【0032】
阻害剤濃度が金属1モル当たり阻害剤1モル程度と同程度に低い場合、満足できる貯蔵安定性および硬化速度を提供する。場合によっては、金属1モル当たり阻害剤500モルまでの阻害剤濃度が要求される。所定の組成物中の所定の阻害剤についての最適濃度は、通常の実験により容易に決定される。
【0033】
(E)補強性充填剤
本発明のLSR組成物を用いて調製され得るいくつかのタイプの硬化したエラストマーを特徴付ける高いレベルの物理的特性を達成するために、微粉シリカのような補強性充填剤を必要に応じて含むことが望ましい。シリカおよび他の補強性充填剤は、しばしば硬化性組成物の加工中の「クレーピング(creping)」または「クレープ硬化(crepe hardening)」と呼ばれる現象を防止するため1つ以上の公知の充填剤処理剤で処理される。
【0034】
微粉化されたシリカの形態は、好ましい補強性充填剤である。コロイド状シリカは、代表的には少なくとも50m/gの比較的高い表面積のため、特に好ましい。少なくとも200m/gの表面積を有する充填剤が、本発明での使用に好ましい。コロイド状シリカは沈降型または発煙型であり得る。両方のタイプのシリカが市販されている。
【0035】
本発明のLSR組成物に用いられる微粉シリカまたは他の補強性充填剤の量は、少なくとも部分的には、硬化したエラストマーに所望される物理的特性により決定される。本発明のLSR組成物は、代表的には、ポリジオルガノシロキサン(成分(A))100質量部当たり補強性充填剤(例えば、シリカ)0〜50質量部を含む。シリカまたは他の充填剤の量は、本発明のLSR組成物の粘度を300Pa.s以上増加させる量を超えるべきではない。
【0036】
充填剤処理剤は、加工中にポリジオルガノシロキサン組成物のクレーピングを防止するために適用可能な技術分野に開示されているいかなる低分子量有機珪素化合物でもあり得る。
【0037】
処理剤としては、各分子内にジオルガノシロキサンの反復単位を平均2〜20個含有する液体ヒドロキシル末端ポリジオルガノシロキサン、ヘキサオルガノジシロキサン、ヘキサオルガノジシラザンなどが例示されるが、これらに制限されない。ヘキサオルガノジシラザンは、充填剤処理に用いられる条件下で加水分解されてヒドロキシル基を有する有機珪素化合物を形成することを意図する。好ましくは、処理剤に存在する珪素結合炭化水素ラジカルの少なくとも一部は、成分(A)および成分(B)に存在するほとんどの炭化水素ラジカルと同一である。少量の水が、加工助剤としてシリカ処理剤とともに添加され得る。
【0038】
処理剤は、シリカまたは他の充填剤粒子の表面に存在する珪素結合ヒドロキシル基と反応して、これらの粒子間の相互作用を減少させることにより機能すると考えられる。
【0039】
充填剤は、作成する前に処理剤で表面処理され得、そして処理された充填剤は市販されている。
【0040】
処理されていないシリカが充填剤として用いられる場合、充填剤が完全に処理されて均質な材料に対して均一に分散されるまで、これらの成分とともにブレンドすることにより、本発明のLSR組成物の他の成分の少なくとも一部の存在下にて処理剤で処理することが好ましい。好ましくは、処理されていないシリカは、成分(A)の存在下にて処理剤で処理される。
【0041】
さらに、本発明のLSR組成物は、このような組成物に従来用いられる種々の任意成分、例えば、顔料および/または染料を含有し得る。シリコーンエラストマーまたはコーティングに適用可能であるが、ヒドロキシル化硬化反応型の付加反応を阻害しないいかなる顔料および染料でも、本発明に用いることができる。顔料および染料としては、カーボンブラック、二酸化チタン、酸化クロム、酸化ビスマスバナジウムなどが挙げられるが、これらに制限されない。本発明の好ましい実施様態において、顔料および染料は、25:75〜70:30の比率で低粘度を有するポリジオルガノシロキサン(成分(A))に分散されてなる顔料マスターバッチの形態で用いられる。
【0042】
他の任意成分には、例えば、非補強性充填剤、例えば、珪藻土、石英粉末、アルミナおよび炭酸カルシウム;難燃剤;および熱および/または紫外線光安定化剤が含まれる。
【0043】
調製
本発明のLSR組成物は、すべての成分を加えて周囲温度で均一に混合することにより容易に製造することができる。先行技術分野に記載されたいかなる混合技法および装置でもこの目的のために使用することができる。使用される特定の装置は、成分の粘度および最終の硬化性コーティング組成物により決定される。適切な混合機としては、パドル型混合機、混練機型混合器および混練圧出機が挙げられるが、これらに制限されない。組成物の早期硬化を避けるために、成分を混合する間中、冷却することが所望され得る。
【0044】
成分の混合順序は、本発明では重要ではない。好ましくは、本発明のLSR組成物を最初に2つの部分に調製することが好ましく、ここで第1の部分は成分(A)、成分(D)および成分(E)を含み、そして残りの部分は成分(B)、成分(E)および、必要に応じて、ヒドロシリル化触媒の阻害剤を含み、このとき成分(C)はいずれかの部分に添加され得る。次いで、2つの部分を室温で混合して、本発明のLSR組成物を形成する。
【0045】
LSR組成物の粘度は重要ではない。スクリーンコーティングについて、粘度は、25℃で20〜150Pa.sの範囲である。3Pa.sの粘度を有する組成物は、グラビアコーティングに許容可能であり、そして200Pa.sの粘度を有する組成物はナイフコーティングによりコーティング可能であり得る。
【0046】
本発明のLSR組成物は、ナイフコーティング、ディップコーティング、グラビアコーティング、スクリーンコーティング、ラミネーションのような従来の塗布手段により、織布、不織布または編物(例えば、綿、ポリエステル、ナイロンなど)および合成皮革のようなテキスタイル上にコーティングさせ得る。50〜300ミクロンの厚いフィルムはラミネーション工程によって得られ、そしてナイフコーティングは、1〜100ミクロンの厚さを提供する。
【0047】
コーティングフィルムを110〜180℃の温度で10秒〜5.0分間加熱する。この加熱によりLSRコーティング組成物を硬化および発泡させて開放気泡を形成する。
【実施例】
【0048】
本発明のコーティング組成物を、以下のような2つのパートAおよびパートBの形態で調製した:
【0049】
パートAとして、Vi−シロキサン1、発煙シリカ、シラザン、シラザン2および水を高せん断混合機(Turello様の)で1.0〜2.0時間混合し、そして真空下で180℃にてストリッピングして均質な混合物を形成した。混合物を室温まで冷却した。熱膨張性マイクロカプセルをこの混合物と混合し、次いで白金触媒を添加した。この混合物を濾過してパートA組成物を得た。
【0050】
パートBを、Vi−シロキサン1、Vi−シロキサン2、発煙シリカ、シラザンおよび水を高せん断力混合機(Turello様の)で1.0〜2.0時間混合し、真空下で180℃にてストリッピングし、次いで室温まで冷却して均質な混合物を形成することにより調製した。H−シロキサンおよび阻害剤を、上記の均質な混合物と混合し、そしてこの混合物を濾過してパートB組成物を得た。
【0051】
これらの成分の量を、以下の表1に示す。熱膨張性マイクロカプセル(この形態は表2に示す)を、パートA組成物(熱膨張性マイクロカプセルを含まない)50質量部とパートB組成物50質量部との合計100質量部当たり0.5質量部の量で添加して、本発明のコーティング組成物を製造した。
【0052】
【表1】

【0053】
【表2】

【0054】
次いで、パートA組成物とパートB組成物とを混合してポリエステル織物上にコーティングした。コーティングの前に、ポリエステル布を110℃で10秒間予備加熱し、プラスチックシート上にコーティングされたコーティング組成物の未硬化のコーティングフィルム上に積層し、150℃で2分間加熱して、コーティング組成物を硬化および発泡させた。ポリエステル布上のコーティングフィルムは、コーティング質量(g/m)を表3に示す厚さを有していた。
【0055】
コーティングされたポリエステル布を試験して、その結果を表3に示した。
【0056】
【表3】

【0057】
上記のLSR基材を、上記の種々の量の熱膨張性マイクロカプセル1と混合して、コーティング組成物を製造した。コーティング組成物をナイフコーティングによりナイロン6布上にコーティングして、150℃の温度で2.0分間硬化させた。コーティングフィルムの厚さを以下の表4にコーティング質量として示した。
【0058】
コーティングされたナイロン6布を、上記と同一の試験により評価し、そして試験結果を表4に示す。
【0059】
【表4】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
テキスタイル上に通気性コーティングフィルムを形成するのに有用な液状シリコーンゴム(LSR)組成物であって、
(A)各分子内に少なくとも2個のアルケニルラジカルを含有する液体ポリジオルガノシロキサン100質量部、
(B)該成分(A)中のすべてのアルケニルラジカルの総量に対する当該成分中の珪素結合水素原子の総数のモル比が0.5:1〜20:1である量の、各分子内に少なくとも3個の珪素結合水素原子を含有するオルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(C)該成分(A)、該成分(B)、成分(D)および成分(E)の合計100質量部当たり0.1〜10質量部の熱膨張性マイクロカプセル、
(D)ヒドロシリル化触媒、および
(E)該成分(A)の量を基準として、0〜50質量部の補強性充填剤
を含む、液状シリコーンゴム(LSR)組成物。
【請求項2】
前記テキスタイルが、織布、不織布、編物または合成皮革である、請求項1に記載の液状シリコーンゴム組成物。
【請求項3】
テキスタイル上に通気性コーティングフィルムを形成する方法であって、
請求項1に記載のコーティング組成物を調製する工程、および
該コーティング組成物をテキスタイルに塗布し、成分(C)を硬化および膨張させるのに十分な温度で加熱してコーティングを硬化および発泡させて気泡を形成する工程
を含む、テキスタイルの表面に通気性コーティングフィルムを形成する方法。
【請求項4】
前記テキスタイルが、織布、不織布、編物または合成皮革である、請求項3に記載のテキスタイルの表面に通気性コーティングフィルムを形成する方法。

【公表番号】特表2009−535524(P2009−535524A)
【公表日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−507597(P2009−507597)
【出願日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際出願番号】PCT/KR2007/002037
【国際公開番号】WO2007/123379
【国際公開日】平成19年11月1日(2007.11.1)
【出願人】(508319819)ダウ コーニング コリア リミテッド (1)
【Fターム(参考)】