説明

テストピースの製造方法

【課題】複雑な密度分布を有するテストピースを作成する場合でも、所望の密度分布を有するテストピースを作成可能な製造方法を提供する。
【解決手段】対象物5の欠陥につながる密度差の有無を検出するための打音検査に用いられる装置の校正に使用するテストピース1の製造方法であって、任意の密度を有する立方体状の焼結粗材10と、焼結粗材10と比較して密度の高い焼結粗材11を粉末材料12から作成する焼結粗材作成工程S1と、焼結粗材10、11の各面をフライス盤によって平面加工して加工焼結粗材20、21を形成する焼結粗材加工工程S2と、複数の加工焼結粗材20、21を互いに接合して所望の密度分布を有する立方体状の焼結体30を形成する焼結粗材接合工程S3と、焼結体30を打音検査の対象物5と略同形状、かつ、所望の密度分布となるように形状加工する形状加工工程S4と、を具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テストピースの製造方法に関し、特に、所望の密度分布を有するテストピースの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属粉体等を焼結することにより得られた焼結品のクラック等の欠陥を生じる原因として、粗材内部の密度差が挙げられる。この密度差の有無を非破壊で検査するために、前記焼結品を検査対象物とする打音検査が行われているが、前記打音検査を行うにあたり、当該検査の作業前点検として、対象物と略同形状に作成されたテストピースを使用して検査装置の動作確認が行われている。詳細には、予め密度差が無いことが確認されている物品(OKマスタ)及び予め密度差が有ることが確認されている物品(NGマスタ)を対象物とする検査の判定結果が正常であるか等の確認が行われている。
従来、テストピースであるOKマスタ及びNGマスタは製造時に条件変更(成形時の粉体量やプレスの挙動の制御等)を行うことにより作成されるが、製造された焼結品が実際どのような密度分布であるかは、切断して密度測定しなければ把握することができず、切断した場合でも切断によるバラツキ等により正確な密度分布が把握できない。そのため、所望の密度分布を有するテストピースを作成して、打音検査における明確な判定基準を把握することができない等の問題があった。
【0003】
上記のような問題を解消するために、特許文献1に記載の密度の異なる複数の焼結体が接合された焼結接合体をテストピースとして使用することが考えられるが、複雑な密度分布に対応するのが困難である。
【特許文献1】特開2000−26904号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、複雑な密度分布を有するテストピースを作成するにあたっても、所望の密度分布を有するテストピースを作成することが可能なテストピースの製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
請求項1に記載のテストピースの製造方法は、対象物の欠陥につながる密度差の有無を検出するための打音検査に用いられる装置の校正に使用するテストピースの製造方法であって、任意の密度を有する複数の立体状の焼結粗材を粉末材料から作成する焼結粗材作成工程と、前記焼結粗材の各面を平面加工して加工焼結粗材を形成する焼結粗材加工工程と、前記複数の加工焼結粗材を互いに接合して焼結体を形成する焼結粗材接合工程と、前記焼結体を、前記対象物と略同形状、かつ、所定の密度分布となるように形状加工する形状加工工程と、を具備するものである。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、複雑な密度分布を有するテストピースを作成する場合でも、所望の密度分布を有するテストピースを作成して、打音検査における明確な判定基準を把握することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下では、本発明に係るテストピースの製造方法の一実施形態であるテストピース1の製造工程について説明する。
【0008】
まず、テストピース1について説明する。テストピース1は、対象物5の密度差の有無を検出するための打音検査に用いられる装置の校正に使用するものである。
図1(a)に示すように、テストピース1は略円柱状に形成される焼結品にて構成されており、図1(b)に示す打音検査の実際の検査対象となる対象物5と略同形状に作成されたものである。テストピース1は、外側部2と、外側部2と比較して密度の高い内側部3からなり、所定の密度分布となるように構成される。
【0009】
次に、テストピース1の製造工程について説明する。
図2に示すように、テストピース1の製造工程は、焼結粗材作成工程S1、焼結粗材加工工程S2、焼結粗材接合工程S3、形状加工工程S4を具備する。
【0010】
つまり、図3に示すように、所定の密度を有する焼結粗材10・10・・・と、焼結粗材10と比較して高い密度を有する焼結粗材11を、それぞれ粉末材料12から作成する焼結粗材作成工程S1、焼結粗材10・10・・・、及び焼結粗材11を平面加工して加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21をそれぞれ形成する焼結粗材加工工程S2、加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21を互いに接合して焼結体30を形成する焼結粗材接合工程S3、ならびに焼結体30を形状加工する形状加工工程S4の順に各作業工程を経て焼結品となるテストピース1が製造される。
【0011】
続いて、焼結粗材作成工程S1、焼結粗材加工工程S2、焼結粗材接合工程S3、及び形状加工工程S4の各作業工程の詳細について説明する。
【0012】
(焼結粗材作成工程)
図4に示すように、焼結粗材作成工程S1においては、金属粉末等の粉末材料12をプレスして成形された圧粉体17、18を焼結することによって、立体状の焼結粗材10、11が作成される。ここで、「立体状」とは、複数の焼結粗材10、11をある程度密着した状態で互いに組み合わせることが可能なブロック状を示し、特に、組み合わせの自由度、簡便性等を考慮して、立方体状であることが望ましい。
【0013】
詳細には、図4(a)に示すように、ダイ13と下パンチ14より形成されるキャビティ16に充填された所定量の粉末材料12を下パンチ14及び上パンチ15でプレスすることによって、圧粉体17が成形される。この時、下パンチ14及び上パンチ15は、圧粉体17が立方体状になるように制御される。
つまり、キャビティ16の断面形状は正方形に形成されており、当該正方形の一辺の長さLを一辺の長さとする立方体状で所定の密度を有する圧粉体17が成形されるように、キャビティ16に充填される粉末材料12の量や下パンチ14及び上パンチ15の動作が制御される。そして、圧粉体17を焼結炉で焼結させることによって焼結粗材10が作成される。
【0014】
また、図4(b)に示すように、ダイ13と下パンチ14より形成されるキャビティ16に圧粉体17を成形する場合と比較して多量の粉末材料12を充填し、前記同様に粉末材料12を下パンチ14及び上パンチ15でプレスすることによって、一辺の長さがLである立方体状の圧粉体18が成形され、圧粉体18を焼結炉で焼結させることによって焼結粗材11が作成される。圧粉体18は、圧粉体17を成形する場合と比較して多量の粉末材料12によって成形され、圧粉体17と圧粉体18は略同一の体積であるので、圧粉体18は圧粉体17と比較して高い密度を有し、延いては焼結粗材11は焼結粗材10と比較して高い密度を有する。
【0015】
このように成形される圧粉体17、18内の密度分布は均一であり、成形時に用いられる粉末材料12の重量と圧粉体17、18の体積から圧粉体17、18の密度を取得できるので、所望の密度の焼結粗材10、11を作成することができる。
なお、粉末材料12は、一般的な焼結材料であって、ステンレス鋼粉、アルミニウム粉等の金属粉体、及びセラミック粉体等を用いることができ、その種類を限定するものではない。
また、焼結粗材10、11の作成方法は本実施形態に限定せず、所望の密度の焼結粗材10、11を作成できればよく、放電プラズマ焼結法やホットプレス焼結法等を適用してもよい。
【0016】
(焼結粗材加工工程)
焼結粗材加工工程S2においては、焼結粗材作成工程S1で作成された焼結粗材10、11の各面を平面加工することによって、加工焼結粗材20、21が形成される。ここで、「平面加工」とは、焼結後の焼結粗材10、11における各面を切削や研磨等することで、前記各面の平面度を向上させる加工である。
加工焼結粗材20、21は、焼結粗材10、11と略同一の体積の立方体状に形成される。また、加工焼結粗材20、21は、焼結粗材10、11を平面加工して形成されたものであるので、それぞれ焼結粗材10、11と同一の密度を有する。
なお、本工程における平面加工は、加工精度、加工容易性等を考慮して、フライス盤による加工が望ましい。
【0017】
(焼結粗材接合工程)
焼結粗材接合工程S3においては、焼結粗材加工工程S2で形成された加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21を適宜数量及び適宜位置に配置して、隣接する加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21を互いに接合することによって焼結体30が形成される。接合する加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21の数量や配置位置は、形成される焼結体30が所望の形状・密度分布となるように設定される。
図3に示す本実施形態の焼結体30は、一個の加工焼結粗材21を中心とし、その周囲に二十六個の加工焼結粗材20を配置して形成された立方体状に構成される。
加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21は焼結粗材加工工程S2で平面加工されているため、平面加工しない場合、つまり焼結粗材10・10・・・、及び焼結粗材11のまま接合した場合と比較して、加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21を互いに接合した際に接合面同士が密着することとなるため、接合面の接触面積が大きくなり、接合不良を低減することができる。
なお、本工程における接合は、TIG溶接、ロウ付け等、その種類を限定するものではなく、接合する粗材の種類に適した接合方法を選択すればよい。
【0018】
(形状加工工程)
形状加工工程S4においては、焼結粗材接合工程S3で形成された焼結体30を打音検査の対象物5と略同形状、かつ、所望の密度分布となるように形状加工してテストピース1を形成する。
テストピース1は、加工焼結粗材20と比較して高い密度を有する加工焼結粗材21を中心部とする立方体状の焼結体30を形状加工して形成されたものであり、所定の密度の外側部2と、外側部2と比較して密度の高い内側部3とを有する形状に加工されている。
なお、本工程における形状加工は、フライス加工、旋盤加工等、その種類を限定するものではない。
【0019】
前述の通り、焼結粗材10、11の密度は既知であるので、それらを平面加工して形成された加工焼結粗材20、21の密度も既知である。よって、複数の加工焼結粗材20、21を接合して所望の密度分布を有する焼結体30を形成することができ、延いては所望の密度分布を有するテストピース1を作成することができるのである。
【0020】
以上のように、本発明の一実施形態であるテストピース1の製造方法は、打音検査装置の校正に使用されるテストピース1の製造方法であって、任意の密度を有する立方体状の焼結粗材10・10・・・と、焼結粗材10と比較して密度の高い立方体状の焼結粗材11を粉末材料12から作成する焼結粗材作成工程S1と、焼結粗材10・10・・・、及び焼結粗材11をフライス盤によって平面加工して加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21を形成する焼結粗材加工工程S2と、加工焼結粗材20・20・・・、及び加工焼結粗材21を互いに接合して所望の密度分布を有する立方体状の焼結体30を形成する焼結粗材接合工程S3と、焼結体30を打音検査の対象物5と略同形状、及び所望の密度分布となるように形状加工する形状加工工程S4と、を具備するものとされる。
【0021】
このような方法によりテストピース1を作成することで、対応する打音検査の対象物5が複雑な密度分布を有する場合でも、つまり複雑な密度分布を有するテストピース1を作成する場合でも、所望の密度分布を有するテストピース1を作成することが可能となる。
これにより、例えば、密度差が無い焼結品と同等の密度分布を有するテストピース1を作成したり、密度差がある焼結品と同等の密度分布を有するテストピース1を作成したりといったように、所望の密度分布を有するテストピース1を作成して、打音検査における明確な判定基準を把握することができる。
また、種々の密度分布のテストピース1を作成することで、様々な密度の違いに対応した、打音時に発生する音響を知ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】(a)は本発明の一実施形態に係るテストピースの構成を示す斜視図であり、(b)は打音検査の対象物を示す斜視図。
【図2】本発明の一実施形態に係るテストピースの製造方法を示すフローチャート。
【図3】本発明の一実施形態に係るテストピースの製造方法を示す図。
【図4】焼結粗材の作成過程を示す側面断面図であり、(a)は比較的密度の低い焼結粗材の作成過程、(b)は比較的密度の高い焼結粗材の作成過程。
【符号の説明】
【0023】
1 テストピース
5 対象物
10 焼結粗材
11 焼結粗材
12 粉末材料
17 圧粉体
18 圧粉体
20 加工焼結粗材
21 加工焼結粗材
30 焼結体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
対象物の欠陥につながる密度差の有無を検出するための打音検査に用いられる装置の校正に使用するテストピースの製造方法であって、
任意の密度を有する複数の立体状の焼結粗材を粉末材料から作成する焼結粗材作成工程と、
前記焼結粗材の各面を平面加工して加工焼結粗材を形成する焼結粗材加工工程と、
前記複数の加工焼結粗材を互いに接合して焼結体を形成する焼結粗材接合工程と、
前記焼結体を、前記対象物と略同形状、かつ、所定の密度分布となるように形状加工する形状加工工程と、
を具備するテストピースの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−150584(P2010−150584A)
【公開日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−328400(P2008−328400)
【出願日】平成20年12月24日(2008.12.24)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】