説明

テトラフルオロエチレン重合体水性分散液、その製造方法、テトラフルオロエチレン重合体粉末及びテトラフルオロエチレン重合体成形体

含フッ素界面活性剤の不存在下又は低濃度下に重合したものであるにもかかわらず高濃度で安定なTFE重合体水性分散液を提供する。本発明は、カルボン酸基を有する含フッ素ビニル基含有化合物からなる含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に、水性媒体中においてTFEを重合することにより得られたTFE重合体水性分散液であって、上記水性媒体中にTFE重合体からなる粒子が分散しているものであり、含フッ素界面活性剤の含有率が質量で1000ppm以下であることを特徴とするTFE重合体水性分散液である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テトラフルオロエチレン[TFE]重合体水性分散液、その製造方法、TFE重合体粉末及びTFE重合体成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1では、CF=CFO(CFCOOM(式中、nは1〜7の整数、Mはアミン又はアルカリ金属)で示される重合性二重結合を有するフッ素系界面活性剤の存在下に重合反応を行うことからなる、粒子径が0.02μmのビニリデンフルオライド[VdF]/TFE/ヘキサフルオロプロピレン系含フッ素エラストマーからなる粒子が分散されてなる水性分散液の製法が記載されているが、TFE単量体単位の含有率が高い重合体を含有する水性分散液に関する記載はない。
【0003】
特許文献2では、種々の重合性二重結合を有するフッ素系界面活性剤の存在下に重合反応を行うことからなる、粒子径が200nm以下、濃度が30質量%以上のVdF系重合体からなる粒子が分散されてなる水性分散液の製法が記載されているが、TFE単量体単位の含有率が高い重合体を含有する水性分散液、及び、得られるVdF系重合体水性分散液における含フッ素界面活性剤の含有率については記載されていない。
【0004】
特許文献3、特許文献4及び特許文献5は、それぞれ、CF=CFO(CF)SOFで表されるモノマーとTFEとからなる共重合体、CF=CFOCFCF(CF)OCFCFSOFで表されるモノマーとTFEとからなる共重体合、CF=CFOCF(CF)OCFCFSOFで表されるモノマーとTFEとからなる共重合体を記載しているが、いずれも比較的多量のフッ素系界面活性剤の存在下に重合を行っており、更に安定な微小粒子径のTFE重合体からなる粒子が分散されてなる水性分散液が得られる記載もない。
【特許文献1】特公昭61−33848号公報
【特許文献2】特開平8−67795号公報
【特許文献3】特開昭60−250009号公報
【特許文献4】特開昭62−288614号公報
【特許文献5】特開昭62−288616号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、上記現状に鑑み、含フッ素界面活性剤の不存在下又は低濃度下に重合したものであるにもかかわらず高濃度で安定なTFE重合体水性分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合することにより得られたTFE重合体水性分散液であって、上記TFE重合体水性分散液は、上記水性媒体中にTFE重合体からなる粒子が分散しているものであり、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、下記一般式(I)
CF=CF−(CF−Y (I)
[式中、aは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(I)、下記一般式(II)
CF=CF−(CFC(CF)F)−Y (II)
[式中、bは、1〜5の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(II)、下記一般式(III)
CF=CFO−(CFX)−Y (III)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、cは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(III)、下記一般式(IV)
CF=CFO−(CFCFXO)−(CF−Y (IV)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、dは、1〜10の整数を表し、eは、1〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(IV)、下記一般式(V)
CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y (V)
[式中、fは、0〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(V)、及び/又は、下記一般式(VI)
CF=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y(VI)
[式中、gは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(VI)からなるものであり、上記TFE重合体水性分散液は、含フッ素界面活性剤の含有率が質量で1000ppm以下であることを特徴とするTFE重合体水性分散液である。
【0007】
本発明は、上記TFE重合体水性分散液を凝析することより得られることを特徴とするTFE重合体粉末である。
【0008】
本発明は、上記TFE重合体水性分散液、又は、上記TFE重合体粉末を用いて成形加工することにより得られることを特徴とするTFE重合体成形体である。
【0009】
本発明は、含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合することよりなるTFE重合体水性分散液の製造方法であって、上記TFE重合体水性分散液は、上記水性媒体中にTFE重合体からなる粒子が分散しており、含フッ素界面活性剤の含有率が質量で1000ppm以下であるものであり、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、上記水性媒体の0.00001〜2質量%の量を添加するものであり、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、下記一般式(I)
CF=CF−(CF−Y (I)
[式中、aは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(I)、下記一般式(II)
CF=CF−(CFC(CF)F)−Y (II)
[式中、bは、1〜5の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(II)、下記一般式(III)
CF=CFO−(CFX)−Y (III)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、cは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(III)、下記一般式(IV)
CF=CFO−(CFCFXO)−(CF−Y (IV)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、dは、1〜10の整数を表し、eは、1〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(IV)、下記一般式(V)
CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y(V)
[式中、fは、0〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(V)、及び/又は、下記一般式(VI)
CF=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y(VI)
[式中、gは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(VI)からなるものであることを特徴とするTFE重合体水性分散液の製造方法である。
以下に本発明を詳細に説明する。
【0010】
本発明のTFE重合体水性分散液は、含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合することにより得られるものである。
【0011】
上記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、含フッ素ビニル基含有化合物(I)、含フッ素ビニル基含有化合物(II)、含フッ素ビニル基含有化合物(III)、含フッ素ビニル基含有化合物(IV)、含フッ素ビニル基含有化合物(V)、及び/又は、含フッ素ビニル基含有化合物(VI)からなるものである。
【0012】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(I)は、下記一般式(I)
CF=CF−(CF−Y (I)
[式中、aは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表されるものである。
【0013】
上記一般式(I)において、上記aは、5以下の整数であることが好ましく、2以下の整数であることがより好ましい。上記Yは、適度な水溶性及び界面活性を得やすい点で、−COOMであることが好ましく、Mは、TFE重合体に残留しにくいという点で、H又はNHであることが好ましい。
【0014】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(I)としては、例えば、
CF=CF−CF−COONH、CF=CF−CF−COOH、
CF=CF−CFCF−COOH、CF=CF−CF−COONa、
CF=CF−CF−SONH、CF=CF−CF−SOH、
CF=CF−CFCF−SOH、CF=CF−CFCF−SONa
等が挙げられるが、比較的、粒子径が大きく安定なTFE重合体水性分散液が得やすい点で、CF=CFCF−COONHが好ましい。
【0015】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(II)は、下記一般式(II)
CF=CF−(CFC(CF)F)−Y (II)
[式中、bは、1〜5の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表されるものである。
【0016】
上記一般式(II)において、bは、界面活性能の点で、3以下の整数であることが好ましく、Yは、適度な水溶性及び界面活性が得やすい点で、−COOMであることが好ましく、Mは、TFE重合体からなる粒子に残留しにくいという点で、H又はNHであることが好ましい。
【0017】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(II)としては、例えば、
【0018】
【化1】

【0019】
等が挙げられるが、TFE重合体からなる粒子が小粒径となりやすい点で、
【0020】
【化2】

【0021】
が好ましい。
【0022】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(III)は、下記一般式(III)
CF=CFO−(CFX)−Y (III)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、cは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表されるものである。
【0023】
上記一般式(III)において、上記Xは、適度な水溶性及び界面活性が得やすい点で、−CFが好ましく、上記cは、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性及び界面活性が得やすい点で、−COOMであることが好ましく、上記Mは、TFE重合体からなる粒子に残留しにくい点で、H又はNHであることが好ましい。
【0024】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(III)としては、例えば、
CF=CF−OCFCFCF−COOH、
CF=CF−OCFCFCF−COONa、
CF=CF−OCFCF−COONH
CF=CF−OCF−COOH
等が挙げられるが、TFE重合体からなる粒子が小粒子径となりやすい点で、CF=CF−OCFCFCF−COOHが好ましい。
【0025】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(IV)は、下記一般式(IV)
CF=CFO−(CFCFXO)−(CF−Y (IV)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、dは、1〜10の整数を表し、eは、1〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表されるものである。
【0026】
上記一般式(IV)において、上記Xは、界面活性能の点で、−CFであることが好ましく、上記dは、水溶性の点で5以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と界面活性が得やすい点で−COOMであることが好ましく、上記eは、2以下であることが好ましく、上記Mは、H又はNHであることが好ましい。
【0027】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(IV)としては、例えば
【0028】
【化3】

【0029】
等が挙げられるが、TFE重合体からなる粒子が小粒子径となりやすい点で、
【0030】
【化4】

【0031】
が好ましい。
【0032】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(V)は、下記一般式(V)
CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y(V)
[式中、fは、0〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表されるものである。
【0033】
上記一般式(V)において、上記fは、界面活性能の点で0〜5の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性と界面活性が得やすい点で−COOMであることが好ましく、上記Mは、TFE重合体からなる粒子に残留しにくい点で、Na又はNHであることが好ましい。
【0034】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(V)としては、例えば、
【0035】
【化5】

【0036】
等が挙げられるが、TFE重合体からなる粒子が小粒子径となりやすい点、及び、TFE重合体からなる粒子に残留しにくいという点で、
CH=CFCFOCF(CF)−COONH、及び/又は、
CH=CFCFOCF(CF)−CFOCF(CF)−COONHであることが好ましい。
【0037】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(VI)は、下記一般式(VI)
CF=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y(VI)
[式中、gは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表されるものである。
【0038】
上記一般式(VI)において、上記gは、界面活性能の点で3以下の整数であることが好ましく、上記Yは、適度な水溶性及び界面活性が得やすい点で−COOMであることが好ましく、上記Mは、TFE重合体からなる粒子に残留しにくい点で、H又はNHであることが好ましい。
【0039】
上記含フッ素ビニル基含有化合物(VI)としては、例えば、
【0040】
【化6】

【0041】
等が挙げられ、TFE重合体からなる粒子が小粒径となりやすい点で、
【0042】
【化7】

【0043】
であることが好ましい。
【0044】
上記含フッ素ビニル基含有乳化剤としては、TFE重合体からなる粒子が小粒径となりやすく、TFE重合体濃度が高いTFE重合体水性分散液が得やすい点で、上記含フッ素ビニル基含有化合物(I)、上記含フッ素ビニル基含有化合物(II)、上記含フッ素ビニル基含有化合物(III)、上記含フッ素ビニル基含有化合物(IV)及び/又は上記含フッ素ビニル基含有化合物(V)からなるものであることが好ましく、上記含フッ素ビニル基含有化合物(II)、上記含フッ素ビニル基含有化合物(III)及び/又は上記含フッ素ビニル基含有化合物(V)からなるものであることがより好ましい。
【0045】
上記含フッ素ビニル基含有乳化剤としては、TFE重合体からなる粒子が小粒径となりやすい点で、下記一般式(i)
CF=CF−(O)−(CFCF(CF)O)−(CF−Y (i)
[式中、hは、0又は1の整数を表し、iは、0〜2の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(i)、及び/又は、下記一般式(ii)
CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y (ii)
[式中、kは、0〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(ii)からなるものであることが更に好ましい。
【0046】
上記一般式(i)において、hは、1であることが好ましく、iは、0又は1であることが好ましく、jは、1又は2であることが好ましく、Yは、−SONa又は−COONHであることが好ましい。
上記一般式(ii)において、kは、0〜2であることが好ましく、Yは、−COONH又は−COONaであることが好ましい。
【0047】
上記含フッ素ビニル基含有乳化剤として、上述の含フッ素ビニル基含有化合物(I)、含フッ素ビニル基含有化合物(II)、含フッ素ビニル基含有化合物(III)、含フッ素ビニル基含有化合物(IV)、含フッ素ビニル基含有化合物(V)及び含フッ素ビニル基含有化合物(VI)の6種のうち1種又は2種以上を用いてもよいし、上記6種のうち1種の含フッ素ビニル基含有化合物として、その1種又は2種以上を用いてもよい。
上記含フッ素ビニル基含有化合物は、公知の方法により調製することができる。
【0048】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下にTFEを重合することにより得られるものであるので、TFE重合体濃度が高く、TFE重合体からなる粒子が小粒径であるものである。従って、本発明のTFE重合体水性分散液は、成形加工性に優れ、機械的安定性等の物性に優れたTFE重合体からなる粒子を含有する。
【0049】
本発明のTFE重合体水性分散液において、「水性媒体」は、重合を行わせる反応媒体であって、水を含む液体である。上記水性媒体は、水を含むものであれば特に限定されず、水に加え、例えば、アルコール、エーテル、ケトン、パラフィンワックス等のフッ素非含有有機溶媒及び/又はC318等のフッ素含有有機溶媒をも含むものであってもよい。
【0050】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上述の含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に上記水性媒体中においてTFEを重合することにより得られるものであれば、TFEとTFE以外の単量体とを共重合することにより得られたものであってもよい。
上記TFE以外の単量体としては、特に限定されず、例えば、TFE以外のフッ素含有単量体、フッ素非含有単量体等が挙げられる。
【0051】
上記「フッ素含有単量体」としては、例えば、フルオロオレフィン、環式のフッ素化された単量体、フッ素化アルキルビニルエーテル等が挙げられる。
【0052】
上記フルオロオレフィンとしては、例えば、ヘキサフルオロプロピレン[HFP]、フッ化ビニル、フッ化ビニリデン[VDF]、トリフルオロエチレン、ヘキサフルオロイソブチレン、パーフルオロブチルエチレン等が挙げられる。
【0053】
上記環式のフッ素化された単量体としては、パーフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソール[PDD]、パーフルオロ−2−メチレン−4−メチル−1,3−ジオキソラン[PMD]等が挙げられる。
【0054】
上記フッ素化アルキルビニルエーテルとしては、例えば、式CZ=CZOR又はCZ=CZOROR[Zは、同一若しくは異なって、H又はFであり、Zは、H又はFであり、Rは、水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置換されている炭素数1〜8のアルキル基であり、Rは、水素原子の一部又は全てがフッ素原子で置換されている炭素数1〜8のアルキレン基である。]で表されるものが挙げられる。
上記フッ素アルキルビニルエーテルとしては、例えば、パーフルオロ(メチルビニルエーテル)[PMVE]、パーフルオロ(エチルビニルエーテル)[PEVE]、パーフルオロ(プロピルビニルエーテル)[PPVE]が好ましい。
【0055】
上記フッ素非含有単量体としては、上記TFEと共重合性を有するものであれば特に限定されず、例えば炭化水素系単量体等が挙げられる。上記炭化水素性単量体は、フッ素以外のハロゲン原子、酸素、窒素等の元素、各種置換基等を有するものであってもよい。
【0056】
上記炭化水素系単量体としては、例えば、アルケン類、アルキルビニルエーテル類、ビニルエステル類、アルキルアリルエーテル類、アルキルアリルエステル類等が挙げられる。
【0057】
本発明のTFE重合体水性分散液は、通常、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤、TFE及び所望により添加する上記TFE以外の単量体に加え、重合開始剤を添加して重合することにより得られる。上記重合開始剤としては、例えば、過硫酸アンモニウム[APS]等の過硫酸塩や、ジコハク酸パーオキシド[DSP]、ジグルタル酸パーオキシド等の有機過酸化物を、単独で又はこれらの混合物の形で使用することができる。また、上記重合開始剤として、亜硫酸ナトリウム等の還元剤と共用し、レドックス系にしたものを用いてもよいし、重合中に、ヒドロキノン、カテコール等のラジカル捕捉剤を添加したり、亜硫酸アンモニウム等のパーオキサイドの分解剤を添加し、系内のラジカル濃度を調整したものを使用することもできる。
【0058】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤及びTFE、並びに、所望により添加する上記重合開始剤及び上記TFE以外の単量体に加え、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤以外の含フッ素界面活性剤(以下、「非副生含フッ素界面活性剤」と称する)、公知の連鎖移動剤、ラジカル捕捉剤等の添加剤等を添加して重合することにより得られたものであってもよい。
【0059】
本明細書において、上記「非副生含フッ素界面活性剤」とは、分子構造中にフッ素原子を少なくとも1つ有し、界面活性能を有する化合物であって、上記TFEの重合時に添加するものを意味する。上記「非副生含フッ素界面活性剤」は、上記TFEの重合時に添加するものである点で、TFEの重合により副生する後述の短鎖副生含フッ素界面活性剤とは概念が異なる。
【0060】
上記非副生含フッ素界面活性剤としては、例えば、
−(CF−COOH
[式中、Zは、F又はHを表し、nは、3〜20の整数を表す。]で表されるカルボン酸化合物、並びに、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩及び第四級アンモニウム塩;
−(CHCF−COOH
[式中、Zは、F又はClを表し、mは、3〜13の整数を表す。]で表されるカルボン酸化合物、並びに、そのアルカリ金属塩、アンモニウム塩、アミン塩及び第四級アンモニウム塩;
RfO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Z
[式中、Rfは、炭素数1〜7のパーフルオロアルキル基を表し、rは、0〜10の整数を表し、Zは、−COOM又は−SOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表されるカルボン酸化合物等が挙げられる。
上記非副生含フッ素界面活性剤は、上記TFEの重合の際、1種又は2種以上添加してもよい。
【0061】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合するものであれば、公知の重合方法により得ることができる。
上記TFEの重合は、通常、予め窒素圧入、脱気を繰り返し、溶存空気を除去して行う。
【0062】
上記TFEの重合において、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、上記水性媒体の0.00001〜2質量%の量を添加することが好ましい。
上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加量は、0.00001質量%未満である場合、TFE重合体が沈降安定性の不充分な大きな粒子となる傾向があり、2質量%を超える場合、重合反応性が低下し、却って上記含フッ素ビニル基含有乳化剤を用いる効果が得られないことがある。
上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加量のより好ましい下限は0.0001質量%であり、更に好ましい下限は0.001質量%である。上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加量のより好ましい上限は1質量%であり、更に好ましい添加量は0.5質量%である。
【0063】
上記TFEの重合において、全単量体の合計添加量は、目的とするTFE重合体の分子量や製造量等によって適宜決定することができる。
上記全単量体の合計添加量は、経済性、生産性の点で、上記水性媒体の10質量%以上であることが好ましく、また、反応系の安定性の点で、上記水性媒体の150質量%以下であることが好ましい。
上記全単量体の合計添加量のより好ましい下限は、上記水性媒体の20質量%であり、より好ましい上限は100質量%、更に好ましい上限は70質量%である。
このうち、上記TFE以外の単量体の添加量は、所望のTFE重合体の組成に応じて、適宜設定することができる。
【0064】
上記TFEの重合において、TFE及び所望により添加する上述のTFE以外の単量体は、通常、重合反応の間、反応系の圧力が後述する範囲になるよう、連続的に又は間欠的に供給する。
【0065】
上記重合開始剤は、上記水性媒体の0.005〜1質量%の量で添加することが好ましい。
上記重合開始剤について、上記水性媒体の0.005質量%未満の量で添加する場合、重合速度が極端に遅くなる傾向があり、上記水性媒体の1質量%を超える量で添加する場合、電解質濃度が増加し、TFE重合体からなる粒子の粒子径が大きくなる傾向がある。
上記添加量のより好ましい下限は、0.01質量%であり、上記添加量のより好ましい上限は、0.5質量%である。
【0066】
上記非副生含フッ素界面活性剤は、本発明のTFE重合体水性分散液の性質を損なわない範囲で添加することができ、通常、水性媒体の1質量%以下の量を添加することができる。上記非副生含フッ素界面活性剤は、0.5質量%以下を添加することが好ましく、0.2質量%以下を添加することがより好ましい。しかしながら、上記TFEの重合は、得られるTFE重合体水性分散液から生じ得る廃液の処理が簡便になる点で、非副生含フッ素界面活性剤の非存在下に行うことが好ましい。
【0067】
上記TFEの重合において、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加は、必要に応じ、TFEの重合反応の進行に伴い追加添加することにより行うことが好ましい。
上記TFEの重合において、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加を上記追加添加することにより行う場合、TFEと含フッ素ビニル基含有化合物との反応性が良くなるので、得られるTFE重合体水性分散液における上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の含有量を低減することができ、後述する含フッ素界面活性剤の含有量を低減することができる。
上記追加添加は、連続的添加であってもよいし、間欠的添加であってもよく、TFEの重合反応開始前に添加しその後追加して連続的又は間欠的に添加してもよいし、TFEの重合反応開始前又は重合反応初期に添加せず重合反応の進行に合わせて添加を開始したのち連続的又は間欠的に添加してもよい。
上記TFEの重合において、上述の非副生含フッ素界面活性剤の添加も、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤と同様に、必要に応じ、TFEの重合反応の進行に伴い追加添加することにより行ってもよい。
【0068】
上記TFEの重合において、温度、圧力、重合時間等の反応条件は、調製するTFE重合体水性分散液の量、TFE重合体の組成及び濃度により適宜設定することができる。
上記TFEの重合は、通常、重合温度10〜100℃、重合圧力0.05〜5MPaGの圧力にて、5〜100時間行う。
【0069】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上記TFEの重合により得られるものであって、上記水性媒体中にTFE重合体からなる粒子が分散しているものである。
本発明のTFE重合体水性分散液は、上述のTFEの重合により得られるものであれば、上述のTFEの重合後に希釈、濃縮等の操作を行っていない重合上がりの水性分散液であってもよいし、上記操作を行った水性分散液であってもよい。
【0070】
上記TFE重合体は、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合することにより得られるものであれば特に限定されず、例えば、TFE単独重合体であってもよいし、変性ポリテトラフルオロエチレン[変性PTFE]であってもよいし、TFEとTFE以外の単量体とからなるTFE共重合体であってもよい。
上記TFE重合体は、また、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合することにより得られるものであるので、そのポリマー鎖の一部が上記含フッ素ビニル基含有化合物が付加してなるものであってもよい。
【0071】
本明細書において、上記「変性PTFE」とは、TFEと、TFE以外の微量単量体との共重合体であって、非溶融加工性であるものを意味する。
上記微量単量体としては、例えば、上述のパーフルオロオレフィン、フルオロハロオレフィン、フルオロ(アルキルビニルエーテル)、環式のフッ素化された単量体、パーフルオロアルキルエチレン等が挙げられる。
【0072】
上記変性PTFEにおいて、上記微量単量体に由来する微量単量体単位の全単量体単位に占める含有率は、通常、0.001〜2モル%の範囲である。
本明細書において、上記微量単量体単位等の「単量体単位」は、TFE重合体の分子構造上の一部分であって、対応する単量体に由来する部分を意味する。例えば、TFE単位は、TFE重合体の分子構造上の一部分であって、TFEに由来する部分であり、−(CF−CF)−で表される。上記「全単量体単位」は、TFE重合体の分子構造上、単量体に由来する部分の全てである。
上記「全単量体単位に占める単量体単位の含有率」は、TFE重合体を溶融NMR測定することにより求められる値である。
本明細書において、「全単量体単位に占める微量単量体単位の含有率(モル%)」とは、上記「全単量体単位」が由来する単量体、即ち、TFE重合体を構成することとなった単量体全量に占める、上記微量単量体単位が由来する微量単量体の割合(モル%)を意味する。
【0073】
本明細書において、上記「TFE共重合体」とは、TFEとTFE以外の単量体との共重合体であって、上記TFE以外の単量体に由来する単量体単位の全単量体単位に占める含有率が2モル%を超えるものを意味する。
上記TFE共重合体において、上記TFE以外の単量体としては、特に限定されず、例えば、上述したフッ素含有単量体、フッ素非含有単量体等が挙げられる。
【0074】
上記TFE共重合体としては、例えば、溶融加工性含フッ素重合体等が挙げられる。
上記溶融加工性含フッ素重合体としては、380℃での溶融粘度が10Pa・s以下であるものが好ましい。
上記溶融加工性含フッ素重合体としては、例えば、溶融加工性含フッ素樹脂を構成する含フッ素重合体、エラストマー性含フッ素共重合体等が挙げられる。
【0075】
上記溶融加工性含フッ素樹脂を構成する含フッ素重合体としては、例えば、エチレン/TFE共重合体[ETFE]、TFE/HFP共重合体[FEP]、TFE/パーフルオロ(アルキルビニルエーテル)共重合体[TFE/PFVE共重合体]等が挙げられる。
上記TFE/PFVE共重合体としては、TFE/PMVE共重合体[MFA]、TFE/PEVE共重合体、TFE/PPVE共重合体[PFA]等が挙げられ、なかでも、MFA、PFAが好ましく、PFAがより好ましい。
【0076】
上記エラストマー性共重合体としては、TFE/プロピレン共重合体、HFP/エチレン/TFE共重合体等が挙げられる。
【0077】
上記TFE重合体は、耐熱性等の物性に優れ、取り扱いが容易となる点で、TFE単位が全単量体単位の40モル%を超えるものであることが好ましい。
上記TFE重合体におけるTFE単位は、全単量体単位の60モル%以上であることがより好ましく、95モル%以上であることが更に好ましい。
【0078】
上記TFE重合体は、後述のパーフルオロ系重合体以外の非パーフルオロ系重合体であってもよいが、耐熱性等の物性に優れ、取り扱いが容易となる点で、パーフルオロ系重合体であることが好ましい。
本明細書において、上記「パーフルオロ系重合体」とは、単量体としてパーフルオロ単量体のみを重合して得られるパーフルオロ重合体、及び、上記パーフルオロ重合体が有する物性を損なわない範囲で非パーフルオロ化合物を単量体として用いて得られる含フッ素重合体を意味する。
上記パーフルオロ系重合体としては、例えば、フッ素非含有官能基及び/又はC−H結合を有する含フッ素重合体等が挙げられる。
【0079】
上記パーフルオロ系重合体としては、全単量体単位に対するパーフルオロ単量体単位の占める割合が90モル%以上であるものが好ましく、95モル%以上であるものがより好ましく、98モル%以上であるものが更に好ましい。
上記パーフルオロ系重合体は、上記定義のものであれば、TFEに加え、何れの種類の単量体単位を有していてもよい。
【0080】
上記TFE重合体は、耐熱性等の物性に優れ、取り扱いが容易となる点で、TFE単位が全単量体単位の40モル%を超えるパーフルオロ系重合体であることがより好ましく、TFE単位が全単量体単位の60モル%を超えるパーフルオロ系重合体であることが更に好ましく、TFE単位が全単量体単位の95モル%を超えるパーフルオロ系重合体であることが特に好ましい。
【0081】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上記TFE重合体の数平均分子量が、通常、100000〜20000000であるものである。上記TFE重合体の平均分子量の好ましい下限は、成形加工性の点で、500000、好ましい上限は10000000である。
本明細書において、上記TFE重合体の平均分子量は、ASTM D−145769に従い測定される標準比重(SSG)により得られる値である。
【0082】
本発明のTFE重合体水性分散液において、上記TFE重合体からなる粒子は、平均一次粒子径が50〜500nmであることが好ましい。
上記平均一次粒子径が50nm未満である場合、TFE重合体水性分散液においてTFE重合体の濃度を上げたときの粘度が急激に増加する傾向があり、上記平均一次粒子径が500nmを超える場合、TFE重合体水性分散液の分散安定性、機械的安定性等が低下する傾向がある。
上記平均一次粒子径の好ましい下限は100nmであり、より好ましい下限は150nmである。また上記平均一次粒子径の好ましい上限は400nmであり、より好ましい上限は、350nmである。
上記平均一次粒子径は、上述のTFEの重合に使用する含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加量、含フッ素ビニル基含有乳化剤の追加添加、重合圧力、変性PTFEの微量単量体の種類や量等により調整することが可能である。
【0083】
本明細書において、上記「平均一次粒子径」とは、TFEの重合反応後、希釈、濃縮等の操作を行ってない重合上がりのTFE重合体水性分散液におけるTFE重合体粒子の平均粒子径を意味する。
上記平均一次粒子径は、一定の固形分濃度にしたTFE重合体水性分散液について、単位長さに対する550nmの投射光の透過率と電子顕微鏡写真により決定された平均粒子径との検量線を作成し、測定対象であるTFE重合体水性分散液について、上記透過率を測定し、上記検量線を基に間接的に求められる値である。
【0084】
本発明のTFE重合体水性分散液は、含フッ素界面活性剤の含有率が質量でTFE重合体水性分散液の1000ppm以下であるものである。
本明細書において、含フッ素界面活性剤濃度は、得られた水性分散液を、メタノール等の溶媒を抽出液とする還流により抽出を行い、回収した抽出液をカラムクロマトグラフィーにより分画し、1000ppmの濃度の標準水溶液に関するデータと比較することにより測定されるものである。
【0085】
本明細書において、上記「含フッ素界面活性剤」とは、上記水性媒体に存在し、分子構造中に少なくとも1つのフッ素原子を有する全ての界面活性剤を意味する。上記含フッ素界面活性剤としては、例えば、(1)含フッ素ビニル基含有乳化剤、(2)短鎖副生含フッ素カルボン酸化合物、(3)非副生含フッ素界面活性剤、(4)単量体付加含フッ素ビニル基含有乳化剤等が挙げられる。
【0086】
上記含フッ素界面活性剤の含有率は、TFE重合体水性分散液から生じる廃液の処理が簡便になる点で、質量でTFE重合体水性分散液の100ppm以下であることが好ましく、50ppm以下であることがより好ましく、30ppm以下であることが更に好ましい。
【0087】
上記含フッ素界面活性剤のうち、(1)含フッ素ビニル基含有乳化剤及び(3)非副生含フッ素界面活性剤は、上述したものである。
上記(2)短鎖副生含フッ素カルボン酸化合物は、上述のTFEの重合において重合開始剤として過硫酸アンモニウム[APS]等の過硫酸塩又はジコハク酸パーオキシド[DSP]等の有機過酸化物を使用する場合に副生するTFE等の単量体からなる短鎖カルボン酸化合物を意味する。上記短鎖副生含フッ素カルボン酸化合物は、過硫酸塩に由来するラジカル(・OSOM[Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。])又は有機過酸化物に由来するラジカル(・OR[Rは、有機基を表す。])が、単量体からなる短鎖末端に付加したのち分解して生じる−COOH末端を有する。
【0088】
上記短鎖副生含フッ素カルボン酸化合物は、TFE等の単量体1〜約5分子からなるオリゴマー部分を疎水性基、−COOH末端を親水性基とする含フッ素化合物であり、界面活性剤として作用する。上述のTFEの重合は、重合反応速度が非常に速く、上記オリゴマーの生成比率は非常に低いので、短鎖副生含フッ素カルボン酸化合物は殆ど生じない。ゆえに、TFEの重合により得られる本発明のTFE重合体水性分散液は、短鎖副生含フッ素カルボン酸化合物を実質的に含有しない点で、上記含フッ素界面活性剤の含有量が低い。
【0089】
上記(4)単量体付加含フッ素ビニル基含有乳化剤は、上述のTFEの重合において副生するものであって、上述の含フッ素ビニル基含有化合物にTFE等の単量体1〜約5分子からなるオリゴマーが付加してなる化合物からなる乳化剤である。上述のTFEの重合は、重合反応速度が非常に速く、また、上記含フッ素ビニル基含有化合物をポリマー鎖中に取り込みながら重合反応が進行する。ゆえに、得られる水性分散液中において未反応の単量体や上記オリゴマーの存在比率は非常に低く、未反応の含フッ素ビニル基含有化合物の残存量が非常に少ないので、上記単量体付加含フッ素ビニル基含有乳化剤は殆ど生じない。従って、上記TFEの重合により得られる本発明のTFE重合体水性分散液は、上記単量体付加含フッ素ビニル基含有乳化剤を実質的に含有しない点で、上記含フッ素界面活性剤の含有率が低い。
【0090】
本発明の上記TFE重合体水性分散液は、更に、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下にTFEを重合することより得られるものであるので、上記TFE重合体として、通常、その分子構造中に、上記含フッ素ビニル基含有化合物が付加したものが生じる。
上記TFE重合体に含フッ素ビニル基含有化合物が付加した場合、上記含フッ素ビニル基含有化合物に由来するカルボキシレート基[−COO]は、水性媒体中、TFE重合体からなる粒子の表面に位置することとなるので、TFE重合体からなる粒子自体が分散安定性に優れたものとなる。ゆえに、本発明のTFE重合体水性分散液は、含フッ素界面活性剤の含有率が、質量で水性媒体の1000ppm以下であっても優れた分散安定性を有することができる。
【0091】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上述のTFEの重合により得られる重合上がりのものであっても、含フッ素界面活性剤の含有量が低く、成形加工性がよいが、更に、相分離、イオン交換処理等の公知の精製方法により上述の含フッ素界面活性剤を除去してなるものが好ましい。
【0092】
本発明のTFE重合体水性分散液において、固形分濃度は、通常、5〜70質量%である。上記固形分濃度が70質量%を超える場合、TFE重合体水性分散液自体の安定性が低下する傾向がある。上記固形分濃度は、上記TFE及び/又は上記TFE以外の単量体の添加量を設定することにより、適宜調節することができる。
【0093】
本発明のTFE重合体水性分散液において、固形分濃度は、5〜65質量%であることが好ましい。
上記固形分濃度のより好ましい下限は、TFE重合体を凝析により回収する際の回収率の点で10質量%であり、更に好ましい下限は、精製が効率よくできる点で20質量%である。
上記固形分濃度のより好ましい上限は、TFE重合体水性分散液の槽内における固形分の付着を抑制する点で40質量%である。
本明細書において、上記「固形分濃度」は、TFE重合体水性分散液を150℃にて1時間乾燥した後の質量減少より求められる値である。
【0094】
本発明のTFE重合体水性分散液は、公知の顔料、増粘剤、分散剤、消泡剤、凍結防止剤、成膜助剤等の配合剤を配合することにより、又は、更に他の高分子化合物を複合して、コーティング用水性塗料として用いることができる。
【0095】
本発明のTFE重合体水性分散液の用途としては、また、TFE重合体水性分散液を凝析又は凝集に供して回収し、乾燥し、所望により造粒して得られる粉末を利用する用途が挙げられる。
上述の本発明のTFE重合体水性分散液を凝析することより得られるTFE重合体粉末もまた、本発明の一つである。
【0096】
上記凝析は、通常、ポリマーラテックス等、乳化重合により得た水性分散液を、10〜20質量%の重合体濃度になるように水で希釈し、場合によっては、pHを中性又はアルカリ性に調整した後、撹拌機付きの容器中で反応中の撹拌よりも激しく撹拌して行う。
上記凝析は、メタノール、アセトン等の水溶性有機化合物、硝酸カリウム、炭酸アンモニウム等の無機塩や、塩酸、硫酸、硝酸等の無機酸等を凝析剤として添加しながら撹拌を行ってもよい。
上記凝析前や凝析中に、着色のための顔料や機械的性質を改良するための各種充填剤を添加することにより、顔料や充填剤が均一に混合した顔料入り又は充填剤入りのTFE重合体ファインパウダーを得ることもできる。
上記凝析は、また、インラインミキサー等を使用して連続的に行ってもよい。
【0097】
上記凝析により得られた湿潤粉末の乾燥は、通常、上記湿潤粉末をあまり流動させない状態、好ましくは静置の状態を保ちながら、真空、高周波、熱風等の条件下にすることにより行う。
なお、TFE重合体がファインパウダーである場合、粉末同士の、特に高温での摩擦は、TFE重合体からなる粒子が小さな剪断力により簡単にフィブリル化して、元の安定な粒子構造の状態を失うので、一般に、好ましくない。
上記乾燥は、10〜250℃、好ましくは100〜200℃の乾燥温度で行う。
本発明のTFE重合体粉末の平均粒子径は、通常50μm〜1000μmである。上記平均粒子径の好ましい下限は、成形加工性等の点で、100μmであり、好ましい上限は700μmである。
本明細書において、上記TFE重合体粒子の平均粒子径は、走査型電子顕微鏡により測定された値である。
【0098】
本発明のTFE重合体粉末は、本発明のTFE重合体水性分散液より得られるものであるので、成形加工性がよく、機械的特性等の物性に優れたTFE重合体成形体等の原料として有用である。
本発明のTFE重合体粉末は、TFE重合体ファインパウダーである場合、特に、成形用として好ましく、その好適な用途としては、航空機及び自動車等の油圧系、燃料系のチューブ等が挙げられ、薬液、蒸気等のフレキシブルホース、電線被覆用途等が挙げられる。
【0099】
上述の本発明のTFE重合体水性分散液、又は、本発明のTFE重合体粉末を用いて成形加工することにより得られるTFE重合体成形体もまた、本発明の一つである。
【0100】
本発明のTFE重合体成形体は、ペレット、成形品、コーティング及びキャスト膜の何れであってもよい。
本明細書において、上記ペレットの製造、上記成形品の製造、上記コーティングの製造、及び/又は、上記キャスト製膜を「成形加工」ということがある。
【0101】
上記成形加工は、公知の方法により適宜行うことができる。
上記成形加工の方法のうち、上記ペレットの製造方法としては特に限定されず、例えば、本発明のTFE重合体粉末を、混練機又は押出機に投入して溶融混練することによりペレットを製造する方法等が挙げられる。
上記成形品の製造方法としては特に限定されず、例えば、圧縮成形、押出成形、ペースト押出成形、射出成形等が挙げられる。
【0102】
上記コーティング加工は、通常、上述のTFE重合体水性分散液を被塗装物に塗装することにより行う。上記コーディング加工における塗装方法としては特に限定されず、例えば、吹付け塗装、浸漬塗装、はけ塗り塗装、静電塗装等が挙げられる。
上記コーティング加工において、上記塗装前に上述のTFE重合体水性分散液にノニオン性界面活性剤を加えることにより、上述のTFE重合体水性分散液を安定化して、更に濃縮し、目的に応じ、有機又は無機の充填剤を加えて得られる組成物を塗装することができる。上記組成物は、金属又はセラッミクスからなる基材上に被覆する場合、非粘着性と低摩擦係数を有し、光沢や平滑性、耐摩耗性、耐候性及び耐熱性に優れた塗膜表面とすることができ、また、ロールや調理器具等の塗装、ガラスクロスの含浸加工等に適している。
【0103】
上記キャスト製膜の方法としては、例えば、基材上に塗布し乾燥して得られる塗布膜を、所望により、例えば水中への投入等により上記基材から剥離することよりなる方法が挙げられる。
上記成形加工の条件は、成形加工の方法の種類、成形加工するTFE重合体の組成や量等に応じて、適宜設定することができる。
【0104】
本発明のTFE重合体成形体は、本発明のTFE重合体水性分散液、又は、本発明のTFE重合体粉末より得られるものであるので、耐久性、耐侯性、表面特性、機械的特性等の物性に優れている。
【0105】
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法は、含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてTFEを重合することよりなるものである。
【0106】
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法において、使用する含フッ素ビニル基含有乳化剤、TFE及び水性媒体の種類、添加量並びにその好ましい範囲は、本発明のTFE重合体水性分散液に関し説明したものと同じである。
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法において、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、上記水性媒体の0.00001〜2質量%の量を添加するものである。
【0107】
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法では、本発明のTFE重合体水性分散液に関する説明で述べたTFE以外の単量体、非副生含フッ素ビニル基含有界面活性剤等を使用することもできる。
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法は、しかしながら、得られるTFE重合体水性分散液により生じうる廃液処理が簡略になる点で、非副生含フッ素界面活性剤の非存在下に、水性媒体中においてTFEを重合することよりなるものであることが好ましい。
【0108】
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法において、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加は、TFEの重合反応の進行に伴い追加添加することにより行うことが好ましい。
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法において、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加を上記追加添加することにより行う場合、TFEの重合時におけるTFEと含フッ素ビニル基含有化合物との反応性が良くなるので、得られるTFE重合体水性分散液は、上記含フッ素ビニル基含有乳化剤、即ち、上記含フッ素界面活性剤の含有量が低いものとなる。
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法において、上記追加添加は、上述の本発明のTFE重合体水性分散液に関し説明したものと同じく行うことができる。
【0109】
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法により得られるTFE重合体水性分散液は、上記水性媒体中にTFE重合体からなる粒子が分散してなるものであって、上記含フッ素界面活性剤の含有率が、質量で1000ppm以下であるものである。
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法により得られるTFE重合体水性分散液において、上記TFE重合体及び上記TFE重合体からなる粒子は、上述の本発明のTFE重合体水性分散液に関し説明したものと同じである。
上記TFE重合体からなる粒子は、上記TFE重合体に上述の含フッ素ビニル基含有化合物が付加してなるものよりなり、上記含フッ素ビニル基含有化合物に由来するカルボキシレート基が粒子表面に位置するものであってもよい。このような上記TFE重合体からなる粒子は、それ自体が分散安定性に優れたものであるので、本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法により得られるTFE重合体水性分散液は、含フッ素界面活性剤の含有率が質量で1000ppm以下であっても分散安定性に優れている。
【発明の効果】
【0110】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上述の構成よりなるものであることから、高固形分濃度で安定であり、通常、成形加工性にも優れているので、TFE重合体粉末、TFE重合体成形体等の原料として有用である。本発明のTFE重合体水性分散液は、含フッ素界面活性剤の含有率が極めて低いので、その成形加工等により生じる廃液の処理が簡便になる点で工業上有用である。
本発明のTFE重合体粉末及び本発明のTFE重合体成形体は、本発明のTFE重合体水性分散液より得られるものであるので、本発明のTFE重合体粉末は、成形加工性に優れ、本発明のTFE重合体成形体は、機械的特性等の物性に優れている。
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法は、上述の構成よりなるものであるので、含フッ素界面活性剤の含有率が極めて低いTFE重合体水性分散液が得られるので有用である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0111】
本発明を実施例により更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0112】
(TFE重合体水性分散液の調製)
内容量3リットルの攪拌翼付きステンレススチール製オートクレーブに、脱イオン水1.5リットル、パラフィンワックス(融点60℃)60g、及び、含フッ素ビニル基含有化合物1[CF=CFOCFCF(CF)OCFCFCFSONa]700mg仕込み、系内をTFEに置換した。内温を70℃にし、内圧が0.78MPaになるようにTFEを圧入し、0.6質量%の過硫酸アンモニウム[APS]水溶液5gを仕込み、TFEの重合反応を開始した。重合の進行に伴って重合系内の圧力が低下するので、連続的にTFEを追加して、内圧を0.78MPaに保ち、反応を継続した。重合開始6.5時間後にTFEをパージして重合を停止した。この水性分散液について、下記(1)〜(5)の測定を行った。
【0113】
(1)固形分濃度:得られた水性分散液を150℃で1時間乾燥した時の質量減少より求めた。
(2)平均一次粒子径:固形分濃度を約0.02質量%に希釈し、単位長さに対する550nmの投射光の透過率と電子顕微鏡写真により決定された平均粒子径との検量線をもとにして、上記透過率から間接的に求めた。
(3)AI(アモルファスインデックス):プレスにて膜厚150μmのフィルムを作製し、IRにて吸光度を測定、2367cm−1の吸光度に対する778cm−1の吸光度の割合をAI値として求めた。AIは、結晶化度の指標であり、AI値が低いほど含フッ素ビニル基含有化合物の導入による影響が少ないと考えられる。
(4)標準比重(SSG):ASTM D−1457 69に従い測定した。
(5)含フッ素界面活性剤濃度:得られた水性分散液を50℃で1時間乾燥し、得られた固形物1gをメタノール50gに加え、メタノールの沸点での還流により抽出を行い、回収した抽出液を、カラムクロマトグラフィー(装置:TOSHO HPLC−8000、カラム ODS−120T 150mm×4.6mmφ、移動相 アセトニトリル/0.05モル%リン酸緩衝液(pH6)=6/4、流量1ml/分)により分画し、含フッ素界面活性剤濃度1000ppmの標準水溶液より得られたデータと比較することにより定量し、質量濃度で表した。
【0114】
実施例2〜6(TFE重合体水性分散液の調製)
含フッ素ビニル基含有化合物1を下記含フッ素ビニル基含有化合物2〜6(以下、化合物2〜6と称する)に代え、その添加量を表1に示す量に代えた以外は、実施例1と同様にTFE重合体水性分散液を調製し、(1)〜(5)について測定した。
【0115】
化合物2:CF=CFOCFCFCF−COONa
化合物3:CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)CF(CF)−COONH
化合物4:CH=CF−CFOCF(CF)−CFOCF(CF)−COONH
化合物5:CH=CF−CFOCF(CF)−COONH
化合物6:CF=CF−CFCF−COONH
【実施例7】
【0116】
(TFE重合体水性分散液の調製)
化合物4を重合前に110mg添加し、更に重合反応中1時間毎に110mgずつ5回追加する以外は、実施例4と同様にTFE重合体水性分散液を調製し、(1)〜(5)について測定した。
各実施例の結果を表1に示す。
【0117】
【表1】

【0118】
表1に示したように、実施例1〜7により得られたTFE重合体水性分散液は、含フッ素界面活性剤濃度が極めて低かった。特に、実施例7により得られたTFE重合体水性分散液は、実施例4により得られたTFE重合体水性分散液より含フッ素界面活性剤濃度が低く、固形分濃度が高いことから、本発明のTFE重合体水性分散液としては、含フッ素ビニル基含有化合物を追加添加して得られるものが好ましいことが分かった。
【産業上の利用可能性】
【0119】
本発明のTFE重合体水性分散液は、上述の構成よりなるものであるので、TFE重合体濃度が高く、安定であり、通常、成形加工性にも優れたものであり、TFE重合体粉末、TFE重合体成形体等の製造に適している。本発明のTFE重合体水性分散液は、また、含フッ素界面活性剤の含有率が極めて低いので、TFE重合体水性分散液の成形加工等により生じる廃液の処理が簡便になる点で有用である。
本発明のTFE重合体粉末及び本発明のTFE重合体成形体は、本発明のTFE重合体水性分散液より得られるものであるので、本発明のTFE重合体粉末は、成形加工性に優れ、本発明のTFE重合体成形体は、機械的特性等の物性に優れている。
本発明のTFE重合体水性分散液の製造方法は、上述の構成よりなるものであるので、含フッ素界面活性剤の含有率が極めて低いTFE重合体水性分散液が得られるので有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてテトラフルオロエチレンを重合することにより得られたテトラフルオロエチレン重合体水性分散液であって、前記テトラフルオロエチレン重合体水性分散液は、前記水性媒体中にテトラフルオロエチレン重合体からなる粒子が分散しているものであり、
前記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、下記一般式(I)
CF=CF−(CF−Y (I)
[式中、aは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(I)、下記一般式(II)
CF=CF−(CFC(CF)F)−Y (II)
[式中、bは、1〜5の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(II)、下記一般式(III)
CF=CFO−(CFX)−Y (III)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、cは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(III)、下記一般式(IV)
CF=CFO−(CFCFXO)−(CF−Y (IV)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、dは、1〜10の整数を表し、eは、1〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(IV)、下記一般式(V)
CH=CFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)Y (V)
[式中、fは、0〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(V)、及び/又は、下記一般式(VI)
CF=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y (VI)
[式中、gは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(VI)からなるものであり、
前記テトラフルオロエチレン重合体水性分散液は、含フッ素界面活性剤の含有率が質量で1000ppm以下である
ことを特徴とするテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項2】
テトラフルオロエチレン重合体は、テトラフルオロエチレン単位が40モル%を超えるものである請求項1記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項3】
テトラフルオロエチレン重合体は、パーフルオロ系重合体である請求項1又は2記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項4】
テトラフルオロエチレンの重合は、非副生含フッ素界面活性剤の非存在下に行うものである請求項1、2又は3記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項5】
含フッ素ビニル基含有乳化剤は、含フッ素ビニル基含有化合物(I)、含フッ素ビニル基含有化合物(III)、含フッ素ビニル基含有化合物(IV)及び/又は含フッ素ビニル基含有化合物(V)からなるものである請求項1、2、3又は4記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項6】
含フッ素ビニル基含有乳化剤は、下記一般式(i)
CF=CF−(O)−(CFCF(CF)O)−(CF−Y (i)
[式中、hは、0又は1の整数を表し、iは、0〜2の整数を表し、jは、1〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(i)、及び/又は、下記一般式(ii)
CH=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y (ii)
[式中、kは、0〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(ii)からなるものである請求項5記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項7】
固形分濃度が5〜70質量%である請求項1、2、3、4、5又は6記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項8】
テトラフルオロエチレン重合体からなる粒子は、平均一次粒子径が50〜500nmである請求項1、2、3、4、5、6又は7記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液。
【請求項9】
請求項1、2、3、4、5、6、7又は8記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液を凝析することより得られる
ことを特徴とするテトラフルオロエチレン重合体粉末。
【請求項10】
請求項1、2、3、4、5、6、7若しくは8記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液、又は、請求項9記載のテトラフルオロエチレン重合体粉末を用いて成形加工することにより得られる
ことを特徴とするテトラフルオロエチレン重合体成形体。
【請求項11】
含フッ素ビニル基含有乳化剤の存在下に水性媒体中においてテトラフルオロエチレンを重合することよりなるテトラフルオロエチレン重合体水性分散液の製造方法であって、
前記テトラフルオロエチレン重合体水性分散液は、前記水性媒体中にテトラフルオロエチレン重合体からなる粒子が分散しており、含フッ素界面活性剤の含有率が質量で1000ppm以下であるものであり、
前記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、前記水性媒体の0.00001〜2質量%の量を添加するものであり、
前記含フッ素ビニル基含有乳化剤は、下記一般式(I)
CF=CF−(CF−Y (I)
[式中、aは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(I)、下記一般式(II)
CF=CF−(CFC(CF)F)−Y (II)
[式中、bは、1〜5の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(II)、下記一般式(III)
CF=CFO−(CFX)−Y (III)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、cは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(III)、下記一般式(IV)
CF=CFO−(CFCFXO)−(CF−Y (IV)
[式中、Xは、F又は−CFを表し、dは、1〜10の整数を表し、eは、1〜3の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(IV)、下記一般式(V)
CH=CFCFO(CF(CF)CFO)CF(CF)Y (V)
[式中、fは、0〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(V)、及び/又は、下記一般式(VI)
CF=CFCFO−(CF(CF)CFO)−CF(CF)−Y (VI)
[式中、gは、1〜10の整数を表し、Yは、−SOM又は−COOMを表し、Mは、H、NH又はアルカリ金属を表す。]で表される含フッ素ビニル基含有化合物(VI)からなるものであることを特徴とするテトラフルオロエチレン重合体水性分散液の製造方法。
【請求項12】
含フッ素ビニル基含有乳化剤の添加は、テトラフルオロエチレンの重合反応の進行に伴い追加添加することにより行うものである請求項11記載のテトラフルオロエチレン重合体水性分散液の製造方法。

【国際公開番号】WO2005/037880
【国際公開日】平成17年4月28日(2005.4.28)
【発行日】平成19年11月22日(2007.11.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−514879(P2005−514879)
【国際出願番号】PCT/JP2004/015718
【国際出願日】平成16年10月22日(2004.10.22)
【出願人】(000002853)ダイキン工業株式会社 (7,604)
【Fターム(参考)】