説明

テラヘルツ波光素子、及びそれを用いた装置

【課題】キャリヤ発生部の厚み方向に電界を印加する形態のテラヘルツ波光素子について、励起光の入射角度調整を担う工程を簡易にすることができる素子を提供する。
【解決手段】テラヘルツ波発生素子などとして用い得るテラヘルツ波光素子は、励起光の照射によって急峻にキャリヤを発生させる光スイッチ部106と、光スイッチ部106の厚み方向に電界を印加するために光スイッチ部106を間に介在させて対向配置された第1電極部103と第2電極部104を備える。第1電極部103は、少なくとも一部に、励起光の照射によって発生するキャリヤを電界の印加方向と交わる方向に分布させるためのアンテナ機能を持つアンテナ部105を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、励起光の照射によってテラヘルツ波を発生させるテラヘルツ波発生素子などのテラヘルツ波光素子に関する。また、本発明は、この発生素子を用いたテラヘルツ波発生装置などの装置に関する。
【背景技術】
【0002】
テラヘルツ波は、0.03THzから30THzの範囲のうちの任意の周波数帯域を有する電磁波である。テラヘルツ波帯域には、生体分子をはじめとする様々な物質の構造や状態に由来する特徴的な吸収域が多く存在する。この様な特徴を活かして、非破壊にて物質の分析や同定を行う検査技術が開発されている。また、X線に替わる安全なイメージング技術や高速な通信技術への応用が期待されている。
【0003】
これらの技術を実用化するためには、テラヘルツ波の発生技術の進歩が重要な要素の一つとなっている。近年、テラヘルツ波の発生技術として、PINフォトダイオードを用いた発生素子が提案されている(非特許文献1参照)。この発生素子は、キャリヤ発生部であるPINフォトダイオード層を挟むように電極を配置し、PINフォトダイオード層の厚み方向に電界を印加する構成を有する。そして、電界の印加方向に対して斜め方向よりパルス光を照射することで、テラヘルツ波を発生させている。テラヘルツ波の強度は、発生したキャリヤに印加する電界強度に依存する。この様な素子構造では、キャリヤ発生部の膜厚の調整によって電極の間隔を調整する。その結果、より強い電界をキャリヤに印加することが容易となり、高強度なテラヘルツ波発生素子を提供できる可能性がある。
【非特許文献1】Appl.Phys.Lett.,59、3357(1991)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
テラヘルツ波は、励起光の照射によって急峻に発生したキャリヤの移動に伴うダイポール輻射により発生する。この時、ダイポール方向の延長線上にはテラヘルツ波の電界、磁界の成分が存在しないので、電界の印加方向にテラヘルツ波を放射させることは困難である。そのため、非特許文献1の素子のようにキャリヤ発生部の厚み方向に電界を印加する形態の発生素子では、発生素子に対して斜め方向より励起光を照射することが広く行われてきた。また、励起光の入射角度も素子構成に依り、最大の放射効率を得られる角度が存在することが知られている。これらのことより、発生素子に照射する励起光の入射角度調整を担う工程が必要となり、光学調整が煩雑になる場合がある。提供する装置形態によっては、この様な調整の煩雑さの改善が求められることがある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題に鑑み、本発明のテラヘルツ波光素子は、励起光によって急峻にキャリヤを発生させる(典型的には、瞬間的に導通する)光スイッチ部と、光スイッチ部の厚み方向に電界を印加するために光スイッチ部を間に介在させて対向配置された第1電極部と第2電極部を備える。前記第1電極部は、少なくとも一部に、アンテナ機能を持つアンテナ部を有し、前記アンテナ部は、前記励起光によって発生するキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させる構成を有する。こうした構成により、前記励起光が、前記第2電極部側より、前記キャリヤが前記アンテナ部に結合できる様に該アンテナ部に対して位置決めされた照射領域に照射されるのに伴い、テラヘルツ波が前記第1電極部側から放射される。
【0006】
また、上記課題に鑑み、励起光の照射によってテラヘルツ波を放射する本発明のテラヘルツ波発生装置は、前記テラヘルツ波光素子と、第1電極部と第2電極部を介し光スイッチ部の厚み方向に電界を印加するバイアス印加部と、照射領域に照射する励起光を発生する励起光発生部を備える。こうした構成により、前記励起光が、前記第2電極部側より、前記キャリヤが前記アンテナ部に結合できる様に該アンテナ部に対して位置決めされた照射領域に照射されるのに伴い、テラヘルツ波が前記第1電極部側から放射される。
【0007】
更に、上記課題に鑑み、テラヘルツ波発生素子等として用い得る本発明のテラヘルツ波光素子は、励起光の照射によって急峻にキャリヤを発生させる光スイッチ部と、光スイッチ部の厚み方向に電界を印加するために光スイッチ部を間に介在させて対向配置された第1電極部と第2電極部を備える。そして、前記第1電極部は、少なくとも一部に、前記励起光の照射によって発生するキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させるためのアンテナ機能を持つアンテナ部を有する。
【発明の効果】
【0008】
本発明のテラヘルツ波光素子によれば、アンテナ部によって、光励起によるキャリヤの分布が電界の印加方向と交わる方向に調整される。このことにより、例えば、キャリヤの移動に伴うダイポールの方向を傾ける(ダイポールの方向を光スイッチ部の厚み方向と交差させる)ことができ、電界の印加方向にテラヘルツ波を発生・放射することが可能となる。この結果、例えば、発生素子において励起光を斜めに入射する必要がなくなり、この励起光の入射角度調整を行う工程を簡略化ないし省略できるという効果が奏せられる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明の発生素子などのテラヘルツ波光素子において重要なことは、光スイッチ部の厚み方向に電界を印加することと、アンテナ機能を持つアンテナ部が、励起光によって発生するキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させる構成を有することである。この考え方に基づき、本発明のテラヘルツ波光素子の基本的な実施形態は、励起光によって急峻にキャリヤを発生させる光スイッチ部と、光スイッチ部の厚み方向に電界を印加するために光スイッチ部を間に介在させて対向配置された第1電極部と第2電極部を備える。そして、第1電極部は、少なくとも一部に、アンテナ機能を持つアンテナ部を有し、アンテナ部は、励起光によって発生するキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させる構成を有する。これにより、励起光が、第2電極部側より、キャリヤがアンテナ部に結合できる様に該アンテナ部に対して位置決めされた照射領域に照射されるのに伴い、光スイッチ部の厚み方向と交差した方向にダイポールが生じて、テラヘルツ波が第1電極部側から放射される。
【0010】
また、同様の考え方に基づき、発生素子などとして用いられる本発明のテラヘルツ波光素子の基本的な実施形態は、励起光の照射によって急峻にキャリヤを発生させる光スイッチ部と、光スイッチ部を間に介在させて対向配置された第1電極部と第2電極部を備える。そして、第1電極部は、少なくとも一部に、励起光の照射によって発生するキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させるためのアンテナ機能を持つアンテナ部を有する。
【0011】
上記基本構成を前提として、各部の構成、配置などは種々の形態を採り得る。例えば、後述の実施形態1などの様に、前記アンテナ部が、光スイッチ部の厚み方向と交わる方向に伸びる縁を有し、励起光の照射領域が前記縁付近に位置決めされる様に構成することができる。また、後述の実施形態3などの様に、前記第2電極部が、一部に、励起光を採光するための採光部を有し、採光部が、光スイッチ部の厚み方向から見て、励起光の照射領域と重なる位置にある様に構成することができる。また、後述の実施形態1などの様に、前記第1電極部が、アンテナ部に前記電界を印加するための細線部を有し、細線部が、その長手方向とテラヘルツ波の電界成分の方向とが交差するように配置される様に構成することができる。更には、後述の実施形態4などの様に、当該光素子を構成する要素が、複数組、集積され、前記励起光が、第2電極部側より、複数組の要素の照射領域に一括照射される様に構成することができる。
【0012】
次に、本発明の思想を実施し得るより具体的な形態について、図面を参照して説明する。
(実施形態1)
実施形態1は、本発明のテラヘルツ波光素子に関する一形態である。また、この素子を動作し得るテラヘルツ波発生装置の一形態に係る。
【0013】
図1は、本実施形態の素子の概略構成を示す図である。ここでは、テラヘルツ波光素子の上面図(a)と下面図(b)を示している。図1に示すように、テラヘルツ波発生素子(101)は、光スイッチ部(102)、第1電極部(103)、及び第2電極部(104)を有する。第1電極部(103)の一部に、アンテナ部(105)と細線部(106)が形成されている。アンテナ部(105)、細線部(106)などは、空間と当該素子との間で行われる電磁波エネルギーの変換の特性を規定するものである。典型的には、後述する様に、テラヘルツ波を外部に取り出すためのインピーダンス変換器(アンテナ)として機能する。
【0014】
光スイッチ部(102)は、外部から入射する励起光によってキャリヤを発生する部分である。励起光として、パルス光を用いる場合、光スイッチ部(102)は、この励起光によって瞬間的に導通する。ここで重要なことは、光励起キャリヤの寿命が短いことではなく、キャリヤの生成が急峻であることである。励起光としては、2つの光源からの光の差周波の連続光(これ自体がテラヘルツ領域の周波数で変調している)などを用いることもできる。このキャリヤの挙動は、テラヘルツ波の放射特性を変化させる。
【0015】
光スイッチ部(102)の構成としては、励起光に対して吸収特性を示す半導体材料や半導体素子が適用できる。この様な半導体材料として、ガリウムヒ素(GaAs)や、インジウムガリウムヒ素(InGaAs)等がある。本明細書では、光スイッチ部(102)として適用される半導体材料を光伝導膜と呼ぶこともある。また、半導体素子として、フォトダイオードのように、励起光によって整流作用を示すような素子が適用できる。これらの半導体材料や半導体素子の素子構造は、励起光の波長や、発生するキャリヤの所望される挙動(これは半導体材料などのキャリヤ移動度等で決まる)によって適宜選択される。
【0016】
第1電極部(103)と第2電極部(104)は、光スイッチ部(102)を介して対向配置されている。これらの電極部は、光スイッチ部(102)の厚み方向に電界を印加する。この電界は、光スイッチ部(102)で発生するキャリヤが移動する方向や速度を決定するものである。第1電極部(103)及び第2電極部(104)は、導電性の物質で構成する。例えば、これらの電極部の材料として、金(Au)の様な金属材料を適用できる。また、不純物を混ぜて伝導性を調整した半導体材料と金属材料を組み合わせた構成も適用できる。この様な半導体材料としては、例えば、スズ(Sn)をドープしたインジウムリン(InP)がある。
【0017】
アンテナ部(105)は、本実施形態では、第1電極部(103)の一部に構成する。図1に示す様に、アンテナ部(105)は第1電極部(103)に対してほぼ孤立した形状を有する。
【0018】
アンテナ部の別の形態として、図7に示す様に、アンテナ部(705)に相当する部分の電極材料を抜いた形態も取り得る。図1のアンテナ部(105)は、パッチアンテナとして動作し、図7のアンテナ部(705)は、スロットアンテナとして動作する。図7の様なアンテナ部(705)は、アンテナ部(705)の縁に沿って光励起キャリヤによる電流が分布することで、第1電極部(103)を含めてアンテナとして機能する。つまり、第1電極部(103)の全部をアンテナ部(705)とみなすこともできる。この場合、励起光の照射領域107辺りを起点として前記電流がアンテナ部(705)の縁に沿って振動する。これにより、図7の左右方向については互いに逆方向の振動電流が相殺しあい、図7の上下方向の互いに同方向の振動電流により生じるダイポールのみが残って、図7のほぼ上下方向に伸びるダイポールが発生する。こうして、図7の符号108で示す電界成分方向のテラヘルツ波が紙面にほぼ垂直方向に放射される。
【0019】
図7の様な形態は、図1のアンテナ部の形態にも適用できる。すなわち、パッチアンテナのパッチ部分(アンテナ部(105)に相当)を残して他の部分(細線部や枠形状の部分)を省略し、該パッチ部分に外部から直接プローブなどでバイアスを印加する。この様に構成すれば、第1電極部(103)の全部がアンテナ部(105)とみなすことができる。
【0020】
また、図1では、アンテナ部(105)は第1電極部(103)によって囲まれているが、図8に示す様に、第1電極部(803)はアンテナ部(105)を囲わない形状も取り得る。以上のことを言い換えれば、アンテナ部を含む第1電極部と第2電極部は、光スイッチ部(102)の厚み方向に電界を印加できて、光励起によるキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させることができる構成であれば、どの様な形態であってもよい。
【0021】
図1に示す本実施形態において、励起光は、アンテナ部(105)と一部が重なる領域に照射される。本明細書では、こうした領域を励起光の照射領域(107)と呼ぶこともある。アンテナ部(105)は、第1電極部(103)と同じく導電性の物性を持つため、光スイッチ部(102)で発生したキャリヤは、アンテナ部(105)に沿って分布する。すなわち、第1電極部(103)と第2電極部(104)によって印加した電界方向と交わる方向に分布する。光スイッチ部(102)の厚みに対しアンテナ部(105)を十分大きくすることで、キャリヤが分布する方向は、アンテナ部(105)に沿う方向が支配的となる。
【0022】
図1に示す本実施形態でも、図7の形態の上述の説明のように、励起光の照射領域107辺りを起点として光励起キャリヤによる電流がアンテナ部(105)の縁に沿って振動する。これにより、図1の上下方向については互いに逆方向の振動電流が相殺しあい、図1の左右方向の互いに同方向の振動電流によるダイポールのみが残って、図1のほぼ左右方向に伸びるダイポールが発生する。こうして、図1の符号108で示す電界成分方向のテラヘルツ波が紙面にほぼ垂直方向に放射されることになる。
【0023】
本実施形態では、アンテナ部(105)は、光スイッチ部(102)の厚み方向と交わる方向に伸びる縁を有し、該縁付近に励起光の照射領域(107)がある。しかし、この形態に限らず、光励起によるキャリヤがアンテナ部に結合できる程度に該アンテナ部に近い所が照射領域になっていればよい。よって、こうした動作が保障できれば、照射領域がアンテナ部から多少離れた所や、アンテナ部とほぼ重なった所になっていてもよい。
【0024】
前述した様に、アンテナ部(105)は、テラヘルツ波を外部に取り出すためのインピーダンス変換器(アンテナ)として機能するため、アンテナ部(105)の大きさは、発生するテラヘルツ波の波長と同程度の大きさを有する。このことは他の実施形態でも同様である。
【0025】
本実施形態において、細線部(106)は、第1電極部(103)と、第1電極部(103)の一部に構成されたアンテナ部(105)とを電気的に接続する部分である。発生素子から発生する電磁波は、アンテナ部(105)の他に、アンテナ部(105)と接続する電極の部分からも発生することがある。発生素子の構成によっては、この細線部(106)に沿って電磁波が発生することもあるので、細線部(106)の長さは、アンテナ部(105)のサイズに対して十分大きくすることが望ましい。例えば、細線部(106)の長さを、アンテナ部(105)がアンテナとして機能する波長に対して、数10倍以上確保することが望ましい。この結果、細線部(106)から発生する電磁波の波長を、アンテナ部(105)から発生するテラヘルツ波の波長に比して桁オーダーで大きくすることができるので、波長による電磁波の切り分けが容易になる。
【0026】
また、テラヘルツ波の電界成分の方向(108)に対して、細線部(106)を傾けることで、互いの電界成分の偏光方向を傾けることができる。この結果、偏光による電磁波の切り分けが容易となり、不要な電磁波成分を容易に取り除くことができる。この様な偏光制御による電磁波の切り分けは、細線部(106)の長手方向がテラヘルツ波の電界成分の方向(108)に対して垂直である時に、最も効果を奏する。こうした構成の発生素子では、電界を印加するために用いた細線部(106)から発生する不要な電磁波成分がテラヘルツ波の電磁波成分に対して傾いて伝搬するため、不要な電磁波成分を取り除くことが容易となる。ただし、図1の構成では、細線部(106)の長手方向がテラヘルツ波の電界成分の方向(108)に対して垂直ではなく、45度の角度をなしている。この形態は、同じ素子サイズで細線部(106)を出来るだけ長くするという設計意図に基づいている。
【0027】
図2は、上記発生素子の図1の破線AA’部分の断面図と、この発生素子を発生装置とした装置構成とを示すものである。図2によると、発生素子(101)は基板(213)上に形成されている。ここでは、光スイッチ部(102)として、光伝導膜(202)を適用している。そして、発生装置は、この発生素子に加え、励起光(211)を発生する励起光発生部(209)とバイアス印加部(210)で構成される。
【0028】
基板(213)は、発生素子(101)を保持する部分である。基板(213)は、励起光(211)を透過する材料、若しくは構造を有する。材料としては、例えば、励起光(211)として800nmや1500nmの波長を用いる場合、石英基板やサファイア基板のように、励起光(211)を透過させるものがある。また、炭化ケイ素(SiC)や窒化ガリウム(GaN)等の半導体基板が適用できる。特に、1500nmの波長の励起光を用いる場合、ガリウムヒ素(GaAs)、シリコン(Si)、インジウムリン(InP)等の半導体基板が適用できる。シクロオレフィン類、ポリエチレン、ポリカーボネートなどの樹脂材料も適用できる。更には、窒化アルミニウム(AlN)等のセラミック材料も適用できる。これらの材料は、励起光(211)の波長により、適宜選択される。構造としては、励起光(211)が通過する経路に開口構造を作り込む手法が適用できる。
【0029】
本実施形態では、第2電極部(104)は、励起光(211)が透過する程度に薄く形成する。このことにより、励起光(211)は、基板(213)と第2電極部(104)を介して、光伝導膜(202)に到達する。
【0030】
励起光発生部(209)は、所定の波長の励起光(211)を発生する部分である。本実施形態では、励起光発生部(209)から発生する励起光(211)は、数フェムト秒から数ピコ秒のパルス幅を有するパルス光である。励起光発生部(209)としては、固体レーザやファイバレーザが適用できる。図2に示す様に、励起光発生部(209)から発生した励起光(211)は、第2電極部(104)側より、基板(213)を介して照射領域(107)に集光し照射される。図2では、照射領域(107)は、アンテナ部(105)の縁と第2電極部(104)に挟まれた領域に位置しているが、前述した様に、この位置に限らない。テラヘルツ波の放射特性に応じて、照射領域の位置は適宜調整される。また、この照射領域(107)は、アンテナ部(105)のサイズに対して点波源とみなせる大きさに集光される。具体的には、アンテナ部(105)がアンテナとして機能する波長に対して、照射領域(107)はその1/20〜1/100の大きさであることが望ましい。こうした構成においては、テラヘルツ波の放射方向が主として前述のダイポールの方向により規定されて、放射方向の制御が容易となる。ただし、こうした構成に限られるものではなく、照射領域(107)が前記波長に対して或る程度の大きさを持つ構成も可能で、この場合は、テラヘルツ波の放射方向の励起光入射方向への依存性が大きくなる。
【0031】
バイアス印加部(210)は、第1電極部(103)と第2電極部(104)を介し、光伝導膜(202)に電界を印加する部分であるが、この電界は、直流でもよいし、交流でもよい。この電界の増大により、光励起キャリヤの移動が加速されてテラヘルツ波の放射強度が増大されることになる。
【0032】
図1と図2を用いて、上記説明を踏まえて本実施形態の動作を説明する。
励起光発生部(209)はパルス形状の励起光(211)を発生する。励起光(211)は発生素子の照射領域(107)に集光するように、予め光学調整が行われている。本実施形態では、励起光(211)は、基板(213)側より、光伝導膜(202)の所定の領域辺りに照射される。この所定の領域は、図1と図2に示す様に、アンテナ部(105)の片方の縁において、縁の中心を含む部分と第2電極部(104)に挟まれた光伝導膜(202)の領域である。
【0033】
アンテナ部(105)と第2電極部(104)の間には、バイアス印加部(210)によって、電界が印加されている。励起光(211)の照射によって、光伝導膜(202)中の照射領域(107)より発生したキャリヤは、まず、この電界に沿って移動する。これらのキャリヤは、励起光(211)の照射領域(107)を仮想的な波源とし、この波源から供給されるとみなすことできる。他方、第1電極部(103)の一部に形成されたアンテナ部(105)は、テラヘルツ波に対する共振器として振舞う。そのため、この仮想的な波源から供給されたキャリヤは、アンテナ部(105)に沿って、印加された電界と交わる方向に分布する。このことは、前述した様に、キャリヤの移動に伴うダイポールの方向を、印加された電界に対して傾けることを意味する。
【0034】
こうして、全体として、キャリヤの移動経路は、光伝導膜(202)の厚み方向からアンテナ部(105)に沿ったL字型となる。この時、光伝導膜(202)の厚みをテラヘルツ波の波長に対して無視し得る大きさにすることで、キャリヤの移動経路は、アンテナ部(105)に沿った方向が支配的となる。例えば、光伝導膜(202)の厚みをテラヘルツ波の波長に対して1/20〜1/100の大きさにすることで、この状態を実現できる。
【0035】
この様なキャリヤの分布に伴い、テラヘルツ波の電界成分の方向(Ethz)(108)は、図1と図2に示す様に、アンテナ部(105)と第2電極部(104)の間に印加された電界と交わる方向となる。テラヘルツ波は、テラヘルツ波の電界成分の方向(Ethz)(108)と交わる方向に伝搬するので、テラヘルツ波(212)の放射・伝搬方向は、印加された電界の方向に沿った方向となる。
【0036】
本実施形態の素子構成及び装置構成によって、テラヘルツ波(212))の伝搬方向を、印加した電界の方向に沿わせることができる。このため、印加した電界の方向に対して励起光(211)を斜めに入射する必要がなくなる。この結果、この励起光(211)の入射角度調整を行う工程を簡略化することができる。
【0037】
(実施形態2)
実施形態2は、本発明のテラヘルツ波光素子に関する他の形態に係る。具体的には、本実施形態は、上述した素子の実施形態1の変形例に関するものである。尚、これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0038】
図3は、本実施形態のテラヘルツ波光素子の断面図と、この光素子をテラヘルツ波発生装置とした装置構成を示す。実施形態1の素子と異なる点は、光スイッチ部(102)として、フォトダイオード層(302)を用いている点である。更に異なる点は、図1における第2電極部(104)が、図3に示す様に第2電極部(304)と導電性基板(313)で構成される点である。図3に示す様に、第2電極部(304)は、導電性基板(313)の底面の一部の領域に形成されている。
【0039】
導電性基板(313)は、半導体中のキャリヤ濃度を高めた基板であり、この導電性基板(313)を介して、第1電極部(103)と第2電極部(304)の間に印加した電界をフォトダイオード層(302)に印加する。この様な導電性基板(313)として、SnをドープしたInP等、既存の半導体材料が適用できる。この様な構成により、第2電極部(304)として用いる金属材料を、フォトダイオード層(302)に対して一部の領域に作製するだけで、図2の光素子と同じ電界印加状態を作ることが可能となる。
【0040】
フォトダイオード層(302)は、導電性基板(313)と同系の半導体で構成する場合、導電性基板(313)に対する半導体成長プロセスを活用して形成することができる。図3のフォトダイオード層(302)は導電性基板(313)に対して積層している構成であるが、図9のフォトダイオード(902)の様に、孤立したポスト形状でもよい。この場合、フォトダイオード(902)と第1電極部(103)の界面を調整するために、誘電体(915)で充填する。この様な誘電体(915)は、テラヘルツ波に対して損失の小さい材料を用いることが好ましい。こうした材料として、ポリエチレン系やポリオレフィン系の材料が適用できる。このように、光スイッチ部(102)に相当する部分を部分的に配置する形態は、上述した実施形態1の構成にも適用することが可能である。
【0041】
本実施形態の素子の構造は、半導体の層構成の中に金属層が介在しないため、例えば、金属層を介して貼り付けを行うような工程が省略できる。このため、本実施形態の構成によれば、素子の作製歩留りを向上することができる。その他の点は、実施形態1と同様である。
【0042】
(実施形態3)
実施形態3は、本発明のテラヘルツ波光素子に関する更に他の形態に係る。具体的には、本実施形態は、上述した素子の変形例に関するものである。これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0043】
図4は、本実施形態の素子の概略構成を示した図である。ここでは、テラヘルツ波光素子の上面図(a)と下面図(b)を示している。これまで説明した素子と異なる点は、第2電極部(104)側に、励起光(211)の照射領域を制限する採光部(414)を有している点である。
【0044】
採光部(414)は、第2電極部(104)側より入射する励起光(211)の透過領域と不透過領域を定義する部分である。この様な採光部(414)を用いることで、光スイッチ部(102)に入射する励起光(211)の位置を固定できる。
【0045】
本実施形態の素子でも、アンテナ部(105)によってテラヘルツ波を外部に取り出すが、この時のテラヘルツ波の放射特性は、アンテナ部(105)を含めた素子構成によって決まる。励起光(211)の照射領域(107)は、本光素子をアンテナとみなした時の給電点に相当する。例えば、この給電点の位置が変化すると、アンテナの特性も変化し、結果としてテラヘルツ波の放射特性が変化する。本実施形態の採光部(414)は、この給電点の変化、すなわち光軸変化等による励起光(211)の照射位置のずれの影響を抑制することを狙ったものである。
【0046】
採光部(414)は、アンテナ部(105)に対して、照射領域(107)を点波源とみなせる大きさに制限する構造であることが望ましい。例えば、図4の場合、採光部(414)の大きさは、アンテナ部(105)がアンテナとして機能する波長に対して1/20〜1/100である。この大きさであれば、アンテナ部(105)から放射されるテラヘルツ波の特性に対して、採光部(414)の構造が及ぼす影響が小さくなる。
【0047】
上記採光部(414)の大きさは、テラヘルツ波の放射特性に影響を及ぼさないことを目的にした目安で決定される。例えば、採光部(414)の構造や位置によって、テラヘルツ波の放射特性を調整することも可能である。図4の構成の場合、採光部(414)の大きさは、テラヘルツ波の波長が構造として認識する大きさ、すなわち、アンテナ部(105)がアンテナとして機能する波長に対して、1/20を超える大きさであることが望まれる。
【0048】
この様に、本実施形態のテラヘルツ波光素子によれば、採光部(414)によって光スイッチ部(102)に照射される励起光の位置を固定化できる。この結果、励起光の照射位置の変化によるテラヘルツ波の放射特性の変化を抑制することができるという効果が奏せられる。ここでは、採光部(414)は、光スイッチ部(102)の厚み方向から見て、励起光の照射領域(107)と重なる位置にある。
【0049】
図5と図6は、それぞれ、この光素子の図4の破線BB’部分の断面図と、この光素子を発生装置とした装置構成とを示したものである。図5の構成によると、採光部(414)は、第2電極部(104)をパターニングして構成している。詳しくは、採光部(414)は、照射領域(107)付近において、第2電極部(104)を構成する材料を抜いて構成している。他方、図6に示す様に、励起光(211)の伝搬経路に沿って基板(213)と第2電極部(104)を抜き、採光部(614)を構成することも可能である。更に、採光部の構成のために抜いた部分に、別の材料を充填する構成も取り得る。
【0050】
また、光素子が、図3の様な断面構造を取る場合、励起光(211)の伝搬経路に沿って、部分的に導電性基板313の導電率を変化することで採光部が構成できる。また、導電率を変化させるのではなく、導電性基板(313)を励起光(212)の伝搬経路に沿って抜くことで採光部が構成できる。また、第2電極部(304)のパターンによって、フォトダイオード層(302)にある照射領域(107)を制限することで、採光部が構成できる。更には、採光部の構成のために抜いた部分に、別の材料を充填する構成も取り得る。
【0051】
こうした構成のテラヘルツ波発生装置によれば、励起光の入射角度調整を簡略化した光素子を用いることで、角度調整に要する機構を簡略化でき、装置が小型化するという効果が奏せられる。
【0052】
尚、これまでの説明では、入射する励起光(211)は、照射領域(107)に集光している形態である。しかし、本実施形態では照射領域(107)は、採光部(414)、(614)によって定義されているので、励起光(211)は厳密に照射領域(107)に集光させなくてもよい。
【0053】
以上に説明した様に、本実施形態の光素子の構造は、採光部(414)、(614)によって、光スイッチ部(102)に照射する励起光(211)の照射領域(107)を制限する。そのため、励起光(211)の光軸が変化しても、その影響を抑制し、テラヘルツ波の放射特性を安定にすることが容易となる。そして、このテラヘルツ波の放射特性は、励起光(211)の光学調整の変動に鈍感になるので、光素子を駆動させるための調整が容易となる。
【0054】
(実施形態4)
実施形態4は、本発明のテラヘルツ波光素子に関する更に他の形態に係る。具体的には、本実施形態は、上述したテラヘルツ波光素子の変形例に関するものである。これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0055】
図10は、本実施形態のテラヘルツ波発生素子(1001)の概略構成を示した図である。ここでは、テラヘルツ波発生素子の斜視図(a)と背面図(b)を示している。これまで説明した光素子と異なる点は、図10に示す様に、複数のアンテナ部(1005)と複数の採光部(1014)が集積されている点である。
【0056】
複数のアンテナ部(1005)については、第1電極部(103)に、これまで説明したアンテナ部(105)を複数形成している。同様に、複数の採光部(1014)は、各アンテナ部に対応して、第2電極部(104)に形成している。
【0057】
この様な構成によると、励起光(211)を複数の採光部(1014)を含むように照射することで、各採光部(1014)に対応する光スイッチ部(102)に複数の照射領域(107)を形成することができる。この結果、複数のアンテナ部(1005)の各アンテナ部からテラヘルツ波を出射することが可能となる。つまり、励起光(211)の数より多い発生素子を、一括して動作させることが可能となる。
【0058】
本実施形態の光素子の構成によると、アレイ化することにより、複数の発生素子を一括して動作させることができるため、テラヘルツ波の放射電力を向上することが容易となる。
【実施例】
【0059】
以下、より具体的な実施例を図に沿って説明する。
(実施例1)
実施例1は、上記実施形態1に示した素子に対応する構成を有する実施例に関するものである。本実施例は、図1と図2に示す構成を有し、光スイッチ部(102)を成す光伝導膜(202)としては、低温成長GaAs(LT-GaAs)を用いる。基板(213)は、石英基板を用いる。光伝導膜(202)を挟んで設けられる第1電極部(103)と第2電極部(104)には、チタン(Ti)/Auを用いる。第1電極部(103)の一部には、図1に示す様に、アンテナ部(105)と細線部(106)を形成する。
【0060】
本実施例の光素子は次の作製方法で作製することができる。光伝導膜(202)のLT-GaAsの厚みは5μmである。LT-GaAsは、半絶縁性のガリウムヒ素(SI-GaAs)基板に対し、分子ビーム低温エピタキシャル成長(成長温度250°C)を実行することによって形成する。そして、LT-GaAsに対して第2電極部(104)を形成する。この第2電極部(104)は励起光(211)に対して半透明となるように、厚みは100nmである。この第2電極部(104)が境となるように、光伝導膜(202)のLT-GaAsと基板(213)の石英基板(厚さ500μm)を接着する。この接着には、圧着プロセスを用いてもよいし、接着剤等の接合手段を用いることもできる。LT-GaAsの成長に用いたGaAs基板は、エッチングによって除去する。その後、第1電極部(103)を図1に示す様にパターニングして、光素子を構成する。
【0061】
ここで、第1電極部(103)にパターニングされるアンテナ部(105)は、1辺が50μmの正方形とする。図1において、アンテナ部(105)は、第1電極部(103)中に、このアンテナ部(105)の縁から500μmの領域の材料を除いて形成している。細線部(106)の線幅は、5μmである。この細線部(106)は、図1に示す様に、アンテナ部(105)の一頂点よりアンテナ部(105)の対角線に沿うように伸びて第1電極部(103)と接続している。
【0062】
この様な構成によって、およそ1THz近傍に比較的大きな強度を有するテラヘルツ波を発生する発生素子(101)を提供することができる。
【0063】
また、この発生素子(101)を駆動するために、本実施例では、バイアス印加部(210)によって5Vの直流電界を第1電極部(103)と第2電極部(104)間に印加する。励起光発生部(209)には、チタンサファイアレーザを用いる。この励起光発生部(209)は、中心波長800nm、パルス幅50fsec、繰り返し周波数76MHzの超短パルスレーザを励起光(211)として発生する。この励起光(211)は、励起光の照射領域(107)に集光する。この様な構成によって、図2に示す様なテラヘルツ波発生装置を提供することができる。本実施例により、上記実施形態1のところで述べた作用・効果と同様な作用・効果が奏される。
【0064】
(実施例2)
実施例2は、上記実施形態2に示した光素子に対応する構成を有する実施例に関するものである。これまでの説明と共通する部分の説明は省略する。
【0065】
本実施例では、図3で示すフォトダイオード層(302)としては、インジウムガリウムヒ素(InAlAs)を主成分とするショットキー接合型フォトダイオードを用いる。導電性基板(313)には、SnをドープしたInP基板(厚さ500μm)を用いる。フォトダイオード層(302)と導電性基板(313)を挟んで設けられる第1電極部(103)と第2電極部(304)には、Ti/Auを用いる。第1電極部(103)には、実施例1の第1電極部(103)と同じ構成を適用する。
【0066】
フォトダイオード層(302)は、導電性基板(313)に対してIn0.53Ga0.47As(500nm)とIn0.52Al0.48As(100nm)を、順次、分子ビームエピタキシャル成長させることによって形成する。アンテナ部(105)を含む第1電極部(103)は、実施例1のものと同じ形状で、フォトダイオード層(302)のIn0.52Al0.48As層側に形成する。また、第2電極部(304)は、導電性基板(313)側に形成する。特に、図3に示す様に、第2電極部(304)は、励起光(211)の伝搬経路を避けるように形成されている。
【0067】
この様な構成によって、およそ1THz近傍に比較的大きな強度を有するテラヘルツ波を発生する発生素子(101)を提供することができる。本実施例により、上記実施形態2のところで述べた作用・効果と同様な作用・効果が奏される。
【図面の簡単な説明】
【0068】
【図1】本発明の実施形態1と実施例1のテラヘルツ波発生素子ないし光素子の構成を説明する図。
【図2】実施形態1と実施例1の発生素子及び発生装置の構成を説明する図。
【図3】本発明の実施形態2と実施例2の発生素子及び発生装置の構成を説明する図。
【図4】本発明の実施形態3のテラヘルツ波発生素子ないし光素子の構成を説明する図。
【図5】実施形態3の発生素子及び発生装置の構成を説明する図。
【図6】実施形態3の発生素子について、第2電極部に形成する採光部の別の形態を説明する図。
【図7】実施形態1の発生素子について、第1電極部に形成するアンテナ部の別の形態を説明する図。
【図8】実施形態1の発生素子について、第1電極部の別の形態を説明する図。
【図9】実施形態2の発生素子について、フォトダイオードの形状を説明する図。
【図10】本発明の実施形態4の発生素子の構成を説明する図。
【符号の説明】
【0069】
101、1001 発生素子
102 光スイッチ部
103、803 第1電極部
104、304 第2電極部
105、705、1005 アンテナ部(複数のアンテナ部)
106 細線部
107 励起光の照射領域
108 テラヘルツ波の電界成分の方向
202 光伝導膜(光スイッチ部)
209 励起光発生部
210 バイアス印加部
211 励起光
212 テラヘルツ波
213、313 基板(導電性基板)
302 フォトダイオード層(光スイッチ部)
414、614、1014 採光部(複数の採光部)
915 誘電体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光によって急峻にキャリヤを発生させるための光スイッチ部と、前記光スイッチ部の厚み方向に電界を印加するために前記光スイッチ部を間に介在させて対向配置された第1電極部と第2電極部、を備え、
前記第1電極部は、少なくとも一部に、アンテナ機能を持つアンテナ部を有し、
前記アンテナ部は、前記励起光によって発生するキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させる構成を有し、
前記励起光が、前記第2電極部側より、前記キャリヤが前記アンテナ部に結合できる様に該アンテナ部に対して位置決めされた照射領域に照射されるのに伴い、テラヘルツ波を前記第1電極部側から放射することを特徴とするテラヘルツ波光素子。
【請求項2】
前記アンテナ部は、前記光スイッチ部の厚み方向と交わる方向に伸びる縁を有し、前記励起光の照射領域は前記縁付近に位置決めされることを特徴とする請求項1に記載のテラヘルツ波光素子。
【請求項3】
前記第2電極部は、一部に、前記励起光を採光するための採光部を有し、
前記採光部は、前記光スイッチ部の厚み方向から見て、前記励起光の照射領域と重なる位置にあることを特徴とする請求項1または2に記載のテラヘルツ波光素子。
【請求項4】
前記第1電極部は、前記アンテナ部に前記電界を印加するための細線部を有し、
前記細線部は、その長手方向と前記テラヘルツ波の電界成分の方向とが交差するように配置されることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のテラヘルツ波光素子。
【請求項5】
前記光スイッチ部は、光伝導膜またはフォトダイオードで形成されることを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のテラヘルツ波光素子。
【請求項6】
当該光素子を構成する要素が、複数組、集積され、
前記励起光が、前記第2電極部側より、前記複数組の要素の照射領域に一括照射されることを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のテラヘルツ波光素子。
【請求項7】
励起光の照射によってテラヘルツ波を放射する発生装置であって、
請求項1から6のいずれか1項に記載のテラヘルツ波光素子と、
前記第1電極部と前記第2電極部を介し、前記光スイッチ部の厚み方向に電界を印加するためのバイアス印加部と、
前記照射領域に照射する励起光を発生する励起光発生部と、を備え、
前記励起光が、前記第2電極部側より、前記キャリヤが前記アンテナ部に結合できる様に該アンテナ部に対して位置決めされた照射領域に照射されるのに伴い、テラヘルツ波を前記第1電極部側から放射することを特徴とするテラヘルツ波発生装置。
【請求項8】
励起光の照射によって急峻にキャリヤを発生させるための光スイッチ部と、前記光スイッチ部の厚み方向に電界を印加するために前記光スイッチ部を間に介在させて対向配置された第1電極部と第2電極部、を備え、
前記第1電極部は、少なくとも一部に、前記励起光の照射によって発生するキャリヤを前記電界の印加方向と交わる方向に分布させるためのアンテナ機能を持つアンテナ部を有することを特徴とするテラヘルツ波光素子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−50399(P2010−50399A)
【公開日】平成22年3月4日(2010.3.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−215549(P2008−215549)
【出願日】平成20年8月25日(2008.8.25)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】