説明

テレビジョンチューナ用イコライザ回路

【課題】イコライザ本来の機能を損なうことなく、また部品点数を増加することなく、広い帯域で十分な減衰を実現でき妨害波を十分に減衰させること。
【解決手段】このテレビジョンチューナ用イコライザ回路4は、ビデオ信号が入力される入力端4aと処理後のビデオ信号が出力される出力端4bとの間に並列共振回路からなる第1の共振回路11を設けると共に出力端4bとグラウンドとの間に抵抗素子17を設ける。さらに、出力端4bとグラウンドとの間に直列共振回路からなる第2の共振回路12を設ける。第1及び第2の共振回路11、12の共振周波数を上側隣接チャンネルにおける映像周波数に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のチャンネルを受信するテレビジョンチューナ用のイコライザ回路に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、テレビジョンチューナではビデオ信号の出力段にビデオイコライザ回路を設けてビデオ信号の周波数特性を補正する処理を行っている。図4はビデオ信号出力段にビデオイコライザ回路を備えたテレビジョンチューナの構成図である。同図に示すテレビジョンチューナでは、受信されたテレビジョン信号(RF)は混合回路101によって中間周波信号(IF)に周波数変換され、SAWフィルタ102を介して集積回路103内に構成された中間周波増幅回路103aに入力される。SAWフィルタ102は中間周波数帯における映像中間周波数と色副搬送周波数と音声中間周波数とを所定のレベルにするような伝送特性を有している。中間周波増幅回路103aで所定レベルに増幅された中間周波信号は、集積回路103内に構成されたビデオ検波回路103bによって検波されてビデオ信号(V)に変換され、映像増幅回路103cで増幅されてからビデオイコライザ回路104へ出力される。ビデオイコライザ回路104の基本構成はインダクタンス素子104aと容量素子104bとを有するローパスフィルタであり、インダクタンス素子104aには抵抗104cが並列接続される。ビデオイコライザ回路104にて所望の周波数特性に補正されたビデオ信号はバッファトランジスタ105で増幅され、図示しないビデオ回路に供給される。
【0003】
ところで、現行アナログ放送及びデジタル放送ともにチャンネル帯域幅6MHzで伝送されている。このため、希望受信チャンネルの上側隣接チャンネル(希望チャンネルの中心周波数を基準として上側に6MHz離れたチャンネル)の放送信号がビデオイコライザ回路104の前段のチューナ部分で十分にカットされていない場合、上側隣接チャンネルの放送信号が希望受信チャンネルに対する妨害波となる。
【0004】
そこで、図5に示すように、上側隣接チャンネル(6MHz)のところに減衰極を持つ上隣接トラップ回路106を設けて、上側隣接チャンネル(6MHz)の放送信号を減衰させる構成を採っている。上隣接トラップ回路106は、インダクタンス素子106aと容量素子106bとの直列回路からなるLC直列共振回路で構成される。ブラウン管のテレビジョン装置の場合、希望チャンネルの中心周波数から4.5MHz程度までのビデオ信号しか認識していなかったので、さらに上側となる4.5MHzから上隣接トラップ回路106で減衰させた6MHzまでの帯域(例えば、5MHzから5.5MHz)に妨害波が存在しても映像に悪影響を与えることは無かった。
【特許文献1】特開2003−348469号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、最近の液晶テレビ又はプラズマテレビは、ビデオ周波数特性を高域まで延ばす傾向にある為、5.5MHz付近の映像まで認識して表示する能力を備えて来ている。このため、希望受信チャンネルの中心周波数から上側へ5.5MHz付近の減衰量が不十分であると映像品質が劣化することになるが、従来の上隣接トラップ回路106では5.5MHz付近まで含んだ広い帯域での減衰には限界があり、減衰極を6MHzに設定した場合には5MHzから5.5MHz付近の減衰が不十分となりノイズが発生する可能性が高くなる問題があった。
【0006】
なお、上隣接トラップ回路106とは別に、希望受信チャンネルから上側へ5.5MHz付近の帯域を減衰させる追加トラップ回路を設置することも考えられるが、それでは追加トラップ回路の分だけ部品点数が増加するという問題がある。
【0007】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、イコライザ本来の機能を損なうことなく、また部品点数を増加することなく、広い帯域で十分な減衰を実現でき妨害波を十分に減衰させることのできるテレビジョンチューナ用イコライザ回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のテレビジョンチューナ用イコライザ回路は、ビデオ信号が入力される入力端と、処理後のビデオ信号が出力される出力端と、前記入力端と前記出力端との間に設けられ第1のインダクタンス素子と第1の容量素子とを並列接続してなる並列共振回路と、前記出力端とグラウンドとの間に設けられた抵抗素子とを具備したことを特徴とする。
【0009】
この構成によれば、第1のインダクタンス素子と第1の容量素子とを並列接続してなる並列共振回路と、出力端とグラウンドとの間に設けられた抵抗素子とでイコライザ回路を構成したので、並列共振回路の周波数特性により直列共振回路に比べて広い帯域での減衰が可能となる一方、並列共振回路を構成する各要素と抵抗素子とでイコライザ回路本来の機能を奏することもできる。したがって、部品点数を増加させることなく、イコライザ回路本来の機能と広い帯域での減衰特性の双方を実現することができる。
【0010】
上記テレビジョンチューナ用イコライザ回路において、前記並列共振回路の共振周波数を、上側隣接チャンネルの映像周波数に設定することが望ましい。
【0011】
本発明は、上記テレビジョンチューナ用イコライザ回路において、第2のインダクタンス素子と第2の容量素子とを直列接続してなる直列共振回路を、前記出力端とグラウンドとの間に設けたことを特徴とする。
【0012】
この構成により、直列共振回路を設けた従来のイコライザ回路と同等の部品点数で、並列共振回路と直列共振回路とのダブルトラップを実現でき、希望受信チャンネルに対する上側隣接チャンネルからの妨害波をより効果的に減衰させることができる。
【0013】
上記テレビジョンチューナ用イコライザ回路において、前記直列共振回路の共振周波数を、上側隣接チャンネルの映像周波数に設定することが望ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ビデオイコライザ本来の機能を損なわずに、部品点数を増加することなく、広い帯域で十分な減衰を実現でき、上側隣接チャンネルの映像信号による妨害を防止することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について添付図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明の一実施の形態に係るテレビジョンチューナ用イコライザ回路の構成図である。同図に示すように、チューナ部は、受信されたテレビジョン信号(RF)を中間周波数に周波数変換する混合回路1と、この混合回路1から出力された中間周波信号(IF)における映像中間周波数と色副搬送周波数と音声中間周波数とを伝送特性にしたがって所定レベルに調整するSAWフィルタ2と、SAWフィルタ2から出力される中間周波信号を中間周波増幅すると共にビデオ検波してビデオ信号に変換する集積回路3とを備えている。このチューナ部の出力段にビデオイコライザ回路4が接続されている。
【0016】
ビデオイコライザ回路4は、チューナ部の出力段となる集積回路3の出力端に接続される入力端4aと、イコライザ回路出力となるビデオ信号を出力する出力端4bとを有している。ビデオイコライザ回路4は、第1の共振回路11と第2の共振回路12とからなるダブルトラップ回路を備えている。第1の共振回路11は、第1のインダクタンス素子13と第1の容量素子14との並列共振回路で構成されている。第2の共振回路12は、第2のインダクタンス素子15と第2の容量素子16との直列共振回路で構成されている。第1及び第2の共振回路11,12の共振周波数は、希望受信チャンネルの上側隣接チャンネルにおける映像周波数(6MHz)近傍に設定されている。
【0017】
第1の共振回路11では、第1のインダクタンス素子13と第1の容量素子14とが並列接続されており、両者の一方の接続点である一端が入力端4aに接続され、両者の他方の接続点である他端が出力端4bに接続されている。第2の共振回路12では、第2のインダクタンス素子15と第2の容量素子16とが直列接続されており、当該直列回路の一端となる第2のインダクタンス素子15の一端が出力端4bに接続され、当該直列回路の他端となる第2の容量素子16の一端がグラウンドに接続されている。
【0018】
また、ビデオイコライザ回路4は、第1の共振回路11の他端が接続される出力端4bが抵抗素子17を介してグラウンドに接続されている。当該抵抗素子17と第1の共振回路11の構成要素(第1のインダクタンス素子13、第1の容量素子14)とでローパスフィルタを構成している。
【0019】
このように、本実施の形態では、第1の共振回路11の構成要素(第1のインダクタンス素子13、第1の容量素子14)と抵抗素子17とで構成するローパスフィルタにより、ビデオイコライザ回路4本来の機能(ローパスフィルタ機能による周波数特性の補正)を実現している。
【0020】
また、第1の共振回路11と第2の共振回路12とを組み合わせたダブルトラップ回路により、従来回路では不十分であった広い帯域での減衰を実現している。すなわち、並列共振回路で構成される第1の共振回路11の広帯域の減衰特性と、直列共振回路で構成される第2の共振回路12の狭帯域であるが急峻な減衰特性とを組み合わせることにより、6MHz付近に上隣接トラップを形成すると共に、従来回路では減衰量が不十分であった5.5MHz付近でも十分な減衰量を確保している。
【0021】
次に、以上のように構成されたビデオイコライザ回路4の特性について説明する。
図2(a)はビデオイコライザ回路4の回路構成に基づいて伝送特性をシミュレーションしたビデオ出力波形図であり、図2(b)は図5に示す従来のビデオイコライザ回路(104,106)の回路構成に基づいて伝送特性をシミュレーションしたビデオ出力波形図である。両者の伝送特性を比較すると、図中点線で囲んだ5.5MHz付近の信号レベルの減衰が本実施の形態のビデオイコライザ回路4の方が10dB程度大きいことが確認された。第1の共振回路11と第2の共振回路12とを組み合わせたダブルトラップ回路により、広い帯域で妨害波を十分に減衰させることのできる減衰量を確保することができた。しかも、ダブルトラップ回路を構成するに当たり、部品点数の増加は発生していない。
【0022】
図2(a)に示すように、本実施の形態のビデオイコライザ回路4によっても従来のビデオイコライザ回路(104,106)と同様に6MHz付近に上隣接トラップが形成されていることが確認された。しかも、図中点線で囲んだ5.5MHz付近の信号減衰を除けば、全体の伝送特性は従来のビデオイコライザ回路(104,106)と同等のビデオ出力波形となっているので、ビデオイコライザ回路としての機能も損なわれていないことが確認された。
【0023】
図3は上隣接妨害波(6MHz)を入力して周波数特性をシミュレーションしたビデオ出力波形図である。ビデオ出力波形(A)は本実施の形態のビデオイコライザ回路4によるものであり、ビデオ出力波形(B)は従来のビデオイコライザ回路104によるものである。従来のビデオイコライザ回路104によるビデオ出力波形(B)は5MHzから5.5MHz付近に画像品質を劣化させる妨害波(盛り上がり)がでている。一方、本実施の形態のビデオイコライザ回路4によるビデオ出力波形(A)では5MHzから5.5MHz付近の信号レベルが10dB(1目盛)以上減衰していることが判る。すなわち、5MHzから5.5MHz付近の妨害波は画像品質を劣化させないレベルまで減衰されていることになる。
【0024】
このように本実施の形態によれば、ビデオイコライザ回路4を第1のインダクタンス素子13と第1の容量素子14とからなる並列共振回路で第1の共振回路11を構成すると共に、第1の共振回路11の出力端とグラウンドとの間に抵抗素子17を設けてローパスフィルタを構成するようにしたので、部品点数を増やすことなくビデオイコライザ回路本来の機能を実現すると共に、5.5MHz付近の妨害波を十分に減衰させることができる。
【0025】
また、ビデオイコライザ回路4を並列共振回路で構成される第1の共振回路11と直列共振回路で構成される第2の共振回路12とのダブルトラップ回路としたので、上側隣接チャンネルの映像周波数(6MHz)に減衰極を持たせると共に、5.5MHz付近でも十分な減衰量を確保することができ、広い帯域で減衰させる特性を実現できる。
【0026】
以上の説明では、ビデオイコライザ回路4を第1の共振回路11と第2の共振回路12とのダブルトラップ回路で構成しているが、ビデオイコライザ回路4へ入力する上側隣接チャンネルの信号レベルによっては第2の共振回路12が無くても良い。この場合も、第1の共振回路11と抵抗素子17との組み合わせだけで、広い帯域で所要の減衰量を確保できると共にビデオイコライザ回路4本来の機能を奏することができる。
【産業上の利用可能性】
【0027】
本発明は、広い帯域での減衰が要求されるビデオ信号用のイコライザ回路に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明の一実施の形態に係るテレビジョンチューナ用イコライザ回路の構成図
【図2】(a)上記実施の形態のテレビジョンチューナ用イコライザ回路による伝送特性図、(b)図5に示すテレビジョンチューナ用イコライザ回路による伝送特性図
【図3】上隣接妨害波を入力して周波数特性をシミュレーションしたビデオ出力波形図
【図4】従来のテレビジョンチューナ用イコライザ回路の構成図
【図5】上隣接トラップ回路を設けた従来のテレビジョンチューナ用イコライザ回路の構成図
【符号の説明】
【0029】
1…混合回路、2…SAWフィルタ、3…集積回路、4…ビデオイコライザ回路、4a…入力端、4b…出力端、11…第1の共振回路、12…第2の共振回路、13…第1のインダクタンス素子、14…第1の容量素子、15…第2のインダクタンス素子、16…第2の容量素子、17…抵抗素子

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ビデオ信号が入力される入力端と、処理後のビデオ信号が出力される出力端と、前記入力端と前記出力端との間に設けられ第1のインダクタンス素子と第1の容量素子とを並列接続してなる並列共振回路と、前記出力端とグラウンドとの間に設けられた抵抗素子と、を具備したことを特徴とするテレビジョンチューナ用イコライザ回路。
【請求項2】
前記並列共振回路の共振周波数を、上側隣接チャンネルの映像周波数に設定したことを特徴とする請求項1記載のテレビジョンチューナ用イコライザ回路。
【請求項3】
第2のインダクタンス素子と第2の容量素子とを直列接続してなる直列共振回路を、前記出力端とグラウンドとの間に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2記載のテレビジョンチューナ用イコライザ回路。
【請求項4】
前記直列共振回路の共振周波数を、上側隣接チャンネルの映像周波数に設定したことを特徴とする請求項3記載のテレビジョンチューナ用イコライザ回路。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−131433(P2008−131433A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−315247(P2006−315247)
【出願日】平成18年11月22日(2006.11.22)
【出願人】(000010098)アルプス電気株式会社 (4,263)
【Fターム(参考)】