説明

テレフタル酸単位ならびにトリメチルヘキサメチレンジアミン単位を含有するコポリアミドをベースとする成形材料

以下のモノマー:a)1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンの群から選択されるジアミン、ならびにテレフタル酸からなる組み合わせ50〜95モル%、およびb)2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびこれらの混合物の群から選択されるジアミン、ならびにテレフタル酸からなる組み合わせ 5〜50モル%から得られるコポリアミドを少なくとも30質量%含有している成形材料は、結晶質であり、かつ低い吸水率を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の対象は、テレフタル酸、9〜12個の炭素原子を有する線状ジアミン、ならびにトリメチルヘキサメチレンジアミン(TMD)から得られる単位を含有するコポリアミドをベースとする成形材料である。
【0002】
公知の標準ポリアミド、たとえばPA6およびPA66は、加工が容易であり、かつ高い融点と高い熱成形安定性を、特にガラス繊維によって強化されているか、または鉱物質の充填剤を含有している場合に有している。しかし、これらのポリアミドは一般に水中で貯蔵した場合に10%までの高い吸水率を有している。濡れた、もしくは湿った条件下でも寸法安定性に対する高い要求が課される多くの適用のためには、これらの脂肪族ポリアミドを使用することができない。吸水と共に寸法が変化するのみではなく、機械的特性も変化する。剛性および強度は、吸水によって、数分の1まで低下する。従って、水または周囲の湿分と接触しながらの機械的負荷がかかる適用では、これらの標準ポリアミドの使用は問題がある。
【0003】
US4,607,073に記載されているような、PA6T/6Iタイプの部分芳香族ポリアミドは、PA6およびPA66と比較して低減された吸水率を有しており、機械的特性は吸水後にほぼ維持されている。精密部材に関しては膨潤により吸水率は依然として高すぎる。同様に融点も高すぎ、この場合、イソフタル酸の使用によって結晶性ならびに結晶化速度が著しく低下する。このため加工性に問題がある。
【0004】
他方、PA10Tは、同様にUS4,607,073に開示されているように、吸水率が著しく低減されている。水中での貯蔵の際に、その機械的特性は顕著な変化を示さない。この材料は、316℃の結晶融点を有しており、高融点であり、高度に結晶質で、極めて迅速に結晶化するので、射出成形の際に、ノズルにおける凝固が生じる。ガラス繊維強化されたPA10T成形部材の表面は、著しい欠陥を有している。
【0005】
文献EP0659799A2、EP0976774A2、EP1186634A1およびEP1375578A1には、テレフタル酸60〜100モル%、および1,9−ノナンジアミンと2−メチル−1,8−オクタンジアミンとからなるジアミン成分60〜100モル%からなる部分芳香族ポリアミドが記載されている。これらの生成物は、良好な加工性、優れた結晶性、良好な熱成形安定性、低い吸水率、良好な耐薬品性、形状寸法安定性および靱性によって優れている。しかし2−メチル−1,8−オクタンジアミンは、ヨーロッパでは目下、新物質規定(Neustoffverordnung)および旧物質規定(Altstoffverordnung)に規定されておらず、従って認められていない。これは、欧州の市場への製品の迅速な導入の妨げとなっている。
【0006】
出願人は、TROGAMID(登録商標)T5000としてテレフタル酸と、2,2,4−TMDおよび2,4,4−TMDからなる混合物とから構成されているポリアミドを市販している。このポリアミドは、高い機械的強度および高い靱性によって優れている。しかし、この材料は、嵩だかなジアミン成分のために非晶質であり、従ってごく限定的な、特に極性の有機媒体に対して応力亀裂によって表される耐薬品性を有しているにすぎない。結晶質の割合が欠けていることによって、熱時の形状安定性も限定されている。最大の吸水率は約7.5%と比較的高い。一般に、ポリアミド中で線状の脂肪族ジアミンと嵩だかなモノマー、たとえばTMDとを交換することによって、確かにガラス転移温度が高くなるが、しかし同時に結晶性は劇的に低下する。
【0007】
UD4,495,328には、テレフタル酸と、ヘキサメチレンジアミンおよびTMDの混合物とからなる部分結晶質のポリアミドが記載されている。例としてここにはPA6T/TMDT(モル%で60/40)が記載されており、これは310℃の融点を有している。US4,476,280は、テレフタル酸、イソフタル酸およびアジピン酸とからなり、ヘキサメチレンジアミンおよびTMDが組み合わされたコポリアミドを記載している。相応する系は、US4,617,342にも記載されている。これら全ての文献にも水と接触した際の形状寸法安定性ならびにコンディショニングされた状態でのメカニズムもしくは耐薬品性についての記載はない。
【0008】
EP1988113A1は、モノマーの1,10−デカンジアミン、1,6−ヘキサンジアミンおよびテレフタル酸から形成されているコポリアミド10T/6Tをベースとするポリアミド成形材料を記載している。しかし、PA10Tの高い融点は、1,6−ヘキサンジアミンの併用によって低下しており不十分なものである。
【0009】
本発明は、十分に高い結晶性と、射出成形直後ならびに湿分によってコンディショニングされた状態での機械的特性、熱成形安定性及び寸法安定性の相違ができる限り低いこととが組み合わされた、約250℃〜約300℃の範囲、さらに良好には約290℃までの融点によって優れている、加工性が良好なポリアミド成形材料を提供するという課題に基づいている。
【0010】
前記課題は、成形材料であって、以下のモノマー(以下に記載のモル%は、成分a)およびb)の合計に対するものである)
a)1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンの群から選択されるジアミン、ならびにテレフタル酸からなる組み合わせ50〜95モル%、有利には55〜90モル%、および特に有利には60〜85モル%および
b)2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(2,2,4−TMD)、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン(2,4,4−TMD)およびこれらの混合物の群から選択されるジアミン、ならびにテレフタル酸からなる組み合わせ 5〜50モル%、有利には10〜45モル%、および特に有利には15〜40モル%
から得られるコポリアミドを少なくとも30質量%、有利には少なくとも40質量%、特に有利には少なくとも50質量%、およびとりわけ有利には少なくとも60質量%含有している成形材料によって解決される。
【0011】
有利な1実施態様では、コポリアミドは、その他のモノマーから得られる成分を含有していない。もう1つの実施態様では、コポリアミドは、最大で30モル%、最大で25モル%、最大で20モル%、最大で15モル%、最大で10モル%、または最大で5モル%の、別のモノマーから得られた成分を含有している。この場合に考慮すべきことは、この場合にはジアミンおよびジカルボン酸ならびに場合によりラクタムもしくは場合によりアミノカルボン酸が、組成を計算する際にそれぞれ単独で計算されることである。
【0012】
さらに、成形材料に対して0〜70質量%、有利には0〜60質量%、特に有利には0〜50質量%、およびとりわけ有利には0.1〜40質量%の添加剤が含有されていてもよい。従って、成形材料は純粋なコポリアミドからなっていてもよい。
【0013】
別のモノマーから得られる成分は、以下のカテゴリーに分類される:
ジアミンおよびジカルボン酸の組み合わせから誘導されるもの。ここでは以下の場合が区別される:
a)ジカルボン酸がテレフタル酸であり、ジアミンは、請求項に記載のジアミンである1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−デカンジアミン、2,2,4−TMDおよび2,4,4−TMDとは異なるものである。
【0014】
b)ジカルボン酸はテレフタル酸以外のものであり、ジアミンは、上記の請求項に記載の通りのジアミンである。
【0015】
c)ジカルボン酸はテレフタル酸以外のものであり、ジアミンも上記の請求項に記載のジアミン以外のものである。
【0016】
あるいは、ラクタムまたはアミノカルボン酸から誘導されるものである。
【0017】
適切な他のジアミンはたとえば4〜22個の炭素原子を有するジアミン、たとえば1,4−ブタンジアミン、1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、1,8−オクタンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、1,18−オクタデカンジアミン、2−メチル−1,5−ジアミノペンタン、2,2−ジメチル−1,5−ジアミノペンタン、4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′−ジメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、3,3′,5,5′−テトラメチル−4,4′−ジアミノジシクロヘキシルメタン、m−キシリレンジアミンもしくはp−キシリレンジアミン、またはイソホロンジアミンである。
【0018】
適切な他のジカルボン酸はたとえば6〜22個の炭素原子を有するジカルボン酸、たとえばアジピン酸、コルク酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、オクタデカン二酸、2,2,4−トリメチルヘキサン二酸もしくは2,4,4−トリメチルヘキサン二酸、イソフタル酸、2,6−ナフタリンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸または2−メチル−1,4−シクロヘキサンジカルボン酸である。
【0019】
適切なラクタムもしくはアミノカルボン酸はたとえばカプロラクタム、ラウリンラクタムまたはω−アミノウンデカン酸である。
【0020】
この場合、他のジアミンの混合物、他のジカルボン酸の混合物、ラクタムもしくはアミノカルボン酸の混合物、ならびに他のジアミンもしくは他のジカルボン酸とラクタムもしくはアミノカルボン酸との混合物を使用することができる。
【0021】
コポリアミドは通常、溶融重縮合によって製造される。相応する方法は従来技術のものである。しかしあるいは、任意のその他の公知のポリアミド合成法を使用することもできる。
【0022】
成形材料中で適切な添加剤はたとえば以下のものである:
a)他のポリマー、
b)繊維状の強化材、
c)充填剤、
d)可塑剤、
e)顔料および/または着色剤、
f)難燃剤、
g)加工助剤、および
h)安定剤。
【0023】
他のポリマーはたとえばポリアミド、ポリフェニレンエーテル、および/または耐衝撃性改善剤である。
【0024】
適切なポリアミドはたとえばPA46、PA66、PA68、PA610、PA612、PA613、PA410、PA412、PA810、PA1010、PA1012、PA1013、PA1014、PA1018、PA1212、PA6、PA11およびPA12、ならびにこれらのタイプのものから得られるコポリアミドである。基本的に部分結晶質の芳香族ポリアミド、たとえばPA6T/6I、PA6T/66、PA6T/6またはPA6T/6I/66を使用することができる。
【0025】
適切なポリフェニレンエーテルは、慣用の方法によりオルト位でアルキル基により二置換されたフェノール類から参加結合により製造される。特に有利なポリフェニレンエーテルは、ポリ(2,6−ジメチル−1,4−フェニレン)エーテルであり、これは場合により2,3,6−トリメチルフェノール単位と組み合わされている。従来技術によれば、ポリフェニレンエーテルは、ポリアミドマトリックスに結合するための官能基を有している。これらの官能基はたとえば無水マレイン酸を用いた処理により導入される。
【0026】
適切な耐衝撃性改善剤はたとえば、オレフィンの主鎖にグラフトされているか、または主鎖中に重合によって導入されている官能基を有するオレフィン系ポリマーである。適切なタイプおよび組み合わせは、たとえばEP1170334A2に開示されている。さらに、ポリアクリレートゴムまたはイオノマーも使用することができる。
【0027】
成形材料は、他のポリマーを有利には最大で40質量%、特に有利には最大で30質量%、およびとりわけ有利には最大で25質量%含有している。
【0028】
適切な繊維状の強化材はたとえばガラス繊維、カーボン繊維、アラミド繊維、ステンレススチール製の繊維またはチタン酸カリウムホイスカである。
【0029】
適切な充填剤はたとえばタルク、雲母、ケイ酸塩、石英、グラファイト、二硫化モリブデン、二酸化チタン、ウォラストナイト、カオリン、非晶質ケイ酸、炭酸マグネシウム、白亜、石灰、長石、硫酸バリウム、導電性カーボンブラック、グラファイトフィブリル、中実もしくは中空のガラス球または粉砕したガラスである。
【0030】
可塑剤およびポリアミドにおけるその使用は公知である。ポリアミドに適切な可塑剤に関する一般的な概要は、Gaechter/MuellerのKunststoffadditive、C.Hanser Verlag、第2版、第296頁から読み取ることができる。
【0031】
可塑剤として適切な慣用の化合物は、たとえばアルコール成分中に2〜20個の炭素原子を有するp−ヒドロキシ安息香酸のエステル、またはアミン成分中に2〜12個の炭素原子を有するアリールスルホン酸のアミドであり、有利であるのはベンゼンスルホン酸のアミドである。
【0032】
可塑剤として特にp−ヒドロキシ安息香酸エチルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸オクチルエステル、p−ヒドロキシ安息香酸−i−ヘキサデシルエステル、トルエンスルホン酸−n−オクチルアミド、ベンゼンスルホン酸−n−ブチルアミド、またはベンゼンスルホン酸−2−エチルヘキシルアミドが考えられる。
【0033】
適切な顔料および/または着色剤はたとえばカーボンブラック、酸化鉄、硫化亜鉛、ウルトラマリン、ニグロシン、真珠光沢顔料および金属光輝顔料である。
【0034】
適切な難燃剤はたとえば三酸化アンチモン、ヘキサブロモシクロデカン、テトラブロモビスフェノール、ホウ酸塩、赤燐、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、シアヌル酸メラミン、およびこれらの縮合生成物、たとえばメラム、メレム、メロン、ピロリン酸メラミンおよびポリリン酸メラミンのようなメラミン化合物、ポリリン酸アンモニウム、ならびに有機リン化合物、もしくはこれらの塩、たとえばレゾルシノールジフェニルホスフェート、ホスホン酸エステル、またはホスフィン酸の金属塩である。
【0035】
適切な加工助剤はたとえばパラフィン、脂肪アルコール、脂肪酸アミド、パラフィンロウ、モンタンエステルまたはポリシロキサンである。
【0036】
適切な安定剤はたとえば銅塩、モリブデン塩、銅錯体、ホスファイト、立体障害フェノール、第二級アミン、UV吸収剤およびHALS安定剤である。
【0037】
本発明による成形材料は、たとえば射出成形、押出成形またはブロー成形によって成形部材へと加工することができる。射出成形の範囲で典型的な適用例は、自動車または電子部材産業ならびにアーマチャーのためのコネクタまたはケーシング、飲料水の適用のためのフィルターケースまたはケーシングである。押出成形の範囲では、たとえば導管または単層もしくは多層のシートが挙げられる。さらに、このような成形材料から、たとえばガラス繊維またはカーボン繊維との複合材のための粉末を製造することができる。最後に、ブロー成形部材のための例として、自動車の給気管が挙げられる。
【0038】
本発明によるポリアミド成形材料は、モノフィラメント(単繊維)を製造するためにも、マルチフィラメント(たとえばそれぞれ100本の単繊維を有する糸)を製造するためにも好適である。物質温度はこの場合、方法と、成形材料の使用粘度に応じて約280℃〜約340℃である。典型的な延伸温度は、約160℃〜約180℃の範囲である。フィラメントはたとえばテキスタイル織布のため、複合材の強化繊維として、たとえばジュロマーマトリックスと一緒に、またはブラシとして使用することができる。
【0039】
本発明による成形材料からなる粉末は、たとえば粉砕により、沈殿により、またはその他の公知のあらゆる方法により製造することができる。粉末はたとえば層状に成形する方法(ラピッド・プロトタイピング)、表面被覆、または繊維複合材(コンポジット)を製造するために使用することができる。この粉末は通常、ISO13320:2009によるレーザー回折によって測定して、最大で500μm、有利には最大で400μm、特に有利には最大で300μm、およびとりわけ有利には最大で200μmの粒径d90を有している。
【0040】
繊維複合材は強化繊維とプラスチックマトリックスとからなる。繊維は接着力により、または粘着力(凝集力)により繊維を完全に取り巻いているプラスチックマトリックスと結合している。強化繊維を配向することによって繊維プラスチック複合材は異方性の機械的特性を有する。これらは通常、高い特有の剛性および強度を有する。このことによって、これらは軽量構造物の適用において適切な材料となる。繊維複合材から主として平坦な構造物が製造される。
【0041】
本発明の場合には、使用される繊維は無機質であっても(たとえばガラス繊維または玄武岩繊維)、有機質であっても(たとえばアラミド繊維または炭素繊維)よい。種々の繊維の混合物を使用することもできる。繊維複合材はたとえば平面状の繊維構造物を、請求項に記載の成形材料からなる粉末で含浸し、かつホットプレスすることによって製造することができる。こうして得られた複合材は、平面状であるか、または立体状であってもよい。平面状の複合材は、引き続き熱によって成形することができる。
【0042】
繊維構造物を粉末で含浸する際に、主として2つの方法が適用される:
ポリマーが微粉末として液体中に懸濁している懸濁液と、繊維とを接触させることによる含浸、または
粉末散布法による含浸。
【0043】
さらに、請求項に記載の成形材料からなる繊維複合材は、たとえば強化繊維の溶融含浸法によっても、またはポリマーフィルムと強化繊維とのプレス成形(フィルム積層)によっても製造することができる。
【0044】
粉末から出発して複合材を製造する際に、基本的には本発明による成形材料からなる粉末を、他の熱可塑性プラスチックの粉末と一緒に、および特にジュロプラスチックマトリックス材料のための出発材料と組み合わせて(たとえば粉末を2成分エポキシ樹脂の成分と一緒に)使用することが可能である。このような繊維強化系または強化されていない系において、ジュロプラスチックマトリックスあるいはまた熱可塑性プラスチックマトリックス(たとえばビスマレイミド樹脂)と共に粉末は耐衝撃性改善成分として作用する。
【0045】
本発明を以下では詳細に説明する。
【0046】
高融点タイプの本発明によるコポリアミドを製造するために、たとえばUS2,361,717の図2に記載されているような装置が適切である。実験室規模に適合させるために、ここに記載の位置23、24および25は、耐圧性オートクレーブに置き換え、これにより不活性ガスによるブランケットによって反応器中を通過する一定の搬送圧力を保証することができる。以下の例では、第一の管型反応器(位置26に相応)が、長さ6mと、内径1.4mmを有し、かつ第二の管型反応器(位置27′に相応)が、長さ10mと、内径2mmを有する。両方の反応器を、360℃のオイルを循環させて運転した。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明によりコポリアミドの吸水率と、市販品の吸水率との比較を示すグラフの図
【0048】
例1:CoPA10T/TMDT(80:20)
オートクレーブ中に、1,10−デカンジアミン(98.6%のもの)675.2g、2,2,4−TMDおよび2,4,4−TMDからなる混合物150.3g、テレフタル酸789.3g、完全脱塩水(VE水)452g、熱安定剤3.1gおよび5パーセント濃度のH3PO2水溶液2.88gを充填し、窒素で3回不活性化し、オートクレーブを閉じて230℃のオイル循環温度で加熱した。この場合、清澄で均質な塩溶液が形成された。オートクレーブを窒素で44バールの一定した全圧力に調整した。この圧力によって材料は装置を通過した。フラッシャー(位置30)においてポリマー16.5g/hが生じた。分析結果は以下のとおりであった:
カルボキシル末端基含有率:113ミリモル/kg、
アミノ末端基含有率:106ミリモル/kg、
相対溶液粘度ηrel、m−クレゾール中の0.5質量%の溶液、23℃でISO307により測定:1.59、
g(ISO11357による):126℃、
m1(ISO11357による):256℃(2回目の加熱で測定)、
m2(ISO11357による):278℃(主ピーク、2回目の加熱で測定)。
【0049】
生成物を、固相でわずかな窒素流中、180℃で30時間、後コンディショニングすることによりηrel=1.79を有する材料を得た。
【0050】
例2:CoPA10T/TMDT(94:6)
オートクレーブ中に、1,10−デカンジアミン(98.6%のもの)654.9g、2,2,4−TMDおよび2,4,4−TMDからなる混合物38.0g、テレフタル酸664.6g、VE水372.5g、次亜リン酸ナトリウム1.2g、熱安定剤2.4gおよび5パーセント濃度のH3PO2水溶液1.2gを充填し、窒素で3回不活性化し、オートクレーブを閉じて230℃のオイル循環温度で加熱した。この場合、清澄で均質な塩溶液が形成された。オートクレーブを窒素で42バールの一定した全圧力に調整した。この圧力によって材料は装置を通過した。フラッシャーにおいてポリマー17.9g/hが生じた。分析結果は以下のとおりである:
カルボキシル末端基含有率:172ミリモル/kg、
アミノ末端基含有率:167ミリモル/kg、
ηrel:1.42、
g:122℃、
m:297℃(主ピーク)。
【0051】
生成物を、固相でわずかな窒素流中、180℃で40時間、後コンディショニングすることによりηrel=1.74を有する材料を得た。
【0052】
例3:
例1に相応して、以下の表に記載の、85:15のデカンジアミン/TMD比を有する更なるコポリアミドを製造した。
【0053】
参考例1:
例1に相応して、ホモポリマーPA10Tを製造した。
【0054】
例4:
CoPA10T/TMDT(70:30)を製造するために、30lの攪拌式オートクレーブに以下の原料を装入した:
1,10−デカンジアミン(99.3質量%の水溶液として) 3.962kg、
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン異性体混合物 1.549kg、
テレフタル酸 5.563kg、ならびに
次亜リン酸の50質量%水溶液(0.006質量%に相応) 1.12gおよび
VE水 5.96kg。
【0055】
原料を窒素雰囲気中で溶融し、かつ閉鎖されたオートクレーブ中、撹拌下に約220℃に加熱し、その際、内圧を約20バールに調整した。この内圧を2時間維持した。その後、溶融物を連続的に放圧しながら標準圧力でさらに305℃に加熱し、その後、窒素流中、1.5時間、この温度に維持した。引き続き3時間以内に、雰囲気圧に放圧し、かつさらに3時間、回転モーメントを用いて溶融粘度の上昇がそれ以上示されなくなるまで、溶融物に窒素を導入した。その後、溶融物を歯車式ポンプにより搬出し、かつストランドとして造粒した。この顆粒を窒素下に110℃で24時間乾燥させた。
【0056】
搬出物:7.4kg。
【0057】
生成物は以下の特性値を有していた:
結晶融点Tm:270℃、
相対溶液粘度ηrel:1.76、
COOH末端基:291ミリモル/kg、
NH2末端基:17ミリモル/kg。
【0058】
例5:
CoPA12T/TMDT(60:40)を製造するために、30lの攪拌式オートクレーブに以下の原料を装入した:
1,12−ドデカンジアミン(99.4質量%の水溶液として) 3.788kg、
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン異性体混合物 1.982kg、
テレフタル酸 5.305kg、ならびに
次亜リン酸の50質量%水溶液(0.006質量%に相応) 1.13gおよび
VE水 5.96kg。
【0059】
原料を窒素雰囲気中で溶融し、かつ閉鎖されたオートクレーブ中、撹拌下に約220℃に加熱し、その際、内圧を約20バールに調整した。この内圧を2時間維持した。その後、溶融物を連続的に放圧しながら標準圧力でさらに295℃に加熱し、その後、窒素流中、1.5時間、この温度に維持した。引き続き3時間以内に、雰囲気圧に放圧し、かつさらに3時間、回転モーメントを用いて溶融粘度の上昇がそれ以上示されなくなるまで、溶融物に窒素を導入した。その後、溶融物を歯車式ポンプにより搬出し、かつストランドとして造粒した。この顆粒を窒素下に110℃で24時間乾燥させた。
【0060】
搬出物:8.9kg。
【0061】
生成物は以下の特性値を有していた:
結晶融点Tm:232℃、
相対溶液粘度ηrel:1.53、
COOH末端基:275ミリモル/kg、
NH2末端基:84ミリモル/kg。
【0062】
例6:
CoPA12T/TMDT(70:30)を製造するために、30lの攪拌式オートクレーブに以下の原料を装入した:
1,12−デカンジアミン(99.4質量%の水溶液として) 4.356kg、
2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよび2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン異性体混合物 1.465kg、
テレフタル酸 5.258kg、ならびに
次亜リン酸の50質量%水溶液(0.006質量%に相応) 1.13gおよび
VE水 5.97kg。
【0063】
原料を窒素雰囲気中で溶融し、かつ閉鎖されたオートクレーブ中、撹拌下に約220℃に加熱し、その際、内圧を約20バールに調整した。この内圧を2時間維持した。その後、溶融物を連続的に放圧しながら標準圧力でさらに295℃に加熱し、その後、窒素流中、1.5時間、この温度に維持した。引き続き3時間以内に、雰囲気圧に放圧し、かつさらに3時間、回転モーメントを用いて溶融粘度の上昇がそれ以上示されなくなるまで、溶融物に窒素を導入した。その後、溶融物を歯車式ポンプにより搬出し、かつストランドとして造粒した。この顆粒を窒素下に110℃で24時間乾燥させた。
【0064】
搬出物:9.1kg。
【0065】
生成物は以下の特性値を有していた:
結晶融点Tm:257℃、
相対溶液粘度ηrel:1.56、
COOH末端基:269ミリモル/kg、
NH2末端基:17ミリモル/kg。
【0066】
例7:
例6に相応して、75:25のドデカンジアミン/TMD比を有するコポリアミドを製造した。
【0067】
例8および9:
例4に相応して、60:40もしくは52:48のデカンジアミン/TMD比を有する2種類のコポリアミドを製造した。
【0068】
比較例1および2:
例4に相応して、33:67もしくは12:88のデカンジアミン/TMD比を有するコポリアミドを製造した。
【0069】
製造されたポリアミドもしくはコポリアミドの特性は、以下の表に記載されている。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
図1には、例3からの生成物(23℃で完全に接触する貯蔵)の相対的な吸水率が、1,6−ヘキサメチレンジアミンと、テレフタル酸65モル%、イソフタル酸25モル%、およびアジピン酸10モル%からなるジカルボン酸混合物とから製造された市販のPPAの吸水率と比較して示されている。本発明によるコポリアミドにおける吸水率が著しく低いことが明らかである。
【0073】
第3表は、例3からの生成物が、湿分によるコンディショニング(ここではオートクレーブ中、120℃で完全に接触する貯蔵)の後に、その機械的特性をほぼ維持していることを示している。第一のケースにおける弾性率は、再結晶化に起因するものである。
【0074】
【表3】

【0075】
粉末の製造
例8からの生成物を、長さ約5mmおよび直径約3mmのストランド成形顆粒として、ピンミル(Alpine CW160)で粉砕した。冷却蛇管により使用顆粒を−50℃に冷却し、粉砕室中で220m/sまで加速し、かつ対向して回転する粉砕ディスクのピンの間で粉砕した。この場合、15kg/hの処理量で粉砕物が生じ、これは100μm未満の粒径を有する割合が50質量%であった。この粉砕物を63μmで篩分けした。得られた微細画分はd10=14.9μm、d50=43.7μm、およびd90=75.4μmの粒径分布(レーザー回折により測定)を有していた。
【0076】
この微粉末を、繊維複合材の製造のために使用した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形材料であって、以下のモノマー(以下に記載のモル%は、成分a)およびb)の合計に対するものである)
a)1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミンおよび1,12−ドデカンジアミンの群から選択されるジアミン、ならびにテレフタル酸からなる組み合わせ50〜95モル%、および
b)2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミンおよびこれらの混合物の群から選択されるジアミン、ならびにテレフタル酸からなる組み合わせ 5〜50モル%
から得られるコポリアミドを少なくとも30質量%含有している成形材料。
【請求項2】
前記コポリアミドが、さらに別のモノマーから得られる成分を最大で30モル%含有していることを特徴とする、請求項1記載の成形材料。
【請求項3】
純粋なコポリアミドからなることを特徴とする、請求項1または2記載の成形材料。
【請求項4】
コポリアミド以外に、少なくとも0.1質量%の添加剤を含有していることを特徴とする、請求項1または2記載の成形材料。
【請求項5】
粉末であることを特徴とする、請求項1から4までのいずれか1項記載の成形材料。
【請求項6】
請求項1から5までのいずれか1項記載の成形材料から製造された成形部材。
【請求項7】
請求項1から5までのいずれか1項記載の成形材料から製造されたシート。
【請求項8】
請求項1から5までのいずれか1項記載の成形材料から製造されたフィラメント。
【請求項9】
請求項1から5までのいずれか1項記載の成形材料から製造された繊維複合材。

【図1】
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【公表番号】特表2012−532943(P2012−532943A)
【公表日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−518992(P2012−518992)
【出願日】平成22年7月8日(2010.7.8)
【国際出願番号】PCT/EP2010/059809
【国際公開番号】WO2011/003973
【国際公開日】平成23年1月13日(2011.1.13)
【出願人】(501073862)エボニック デグサ ゲーエムベーハー (837)
【氏名又は名称原語表記】Evonik Degussa GmbH
【住所又は居所原語表記】Rellinghauser Strasse 1−11, D−45128 Essen, Germany
【Fターム(参考)】