説明

テーブルリフタおよび基板処理装置

【課題】初期動作における推力軽減を図ると共に自由落下を有効に防止するテーブルリフタを提供する。
【解決手段】互いに枢支されたアーム部材18,19を有するパンタグラフ機構4の伸縮動作により昇降操作される載置テーブル3と、アーム部材19を押し上げることによりパンタグラフ機構4の初期伸張動作を行うカム駆動機構と、カム駆動機構による初期伸張動作に続いてパンタグラフ機構4の一方の支点部21を他方の支点部27に向けて移動させパンタグラフ機構4の伸張動作を行うパンタグラフ伸縮操作機構とを備える。パンタグラフ伸縮操作機構の動作を停止させる自由落下防止装置39を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンタグラフ機構の伸縮動作により載置テーブルが昇降操作されるテーブルリフタおよびこのテーブルリフタを備えた基板処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種のテーブルリフタとして、互いに枢支されたアーム部材によってパンタグラフ機構が構成され、パンタグラフ機構の下部の支点部が支持台に連結されて支持され、パンタグラフ機構の上部の支点部が載置テーブルに連結されて支持された構造のものがある。
【0003】
そして、下部における一方の支点部を他方の支点部に向けて移動させることにより、パンタグラフ機構を上下方向に伸張動作させて載置テーブルを上昇させ、前記一方の支点部を前記他方の支点部から遠ざかる方向に移動させることにより、パンタグラフ機構を上下方向に短縮動作させて載置テーブルを下降させる構造とされていた。
【0004】
しかしながら、載置テーブルの上昇操作時において、載置テーブルのテーブル高が低い時には非常に大きな推力が必要となる。そのため、載置テーブルにおける載置面の低床化が妨げられ、昇降ストロークが有効に確保し難く、昇降ストロークが短くなるという問題があった。
【0005】
そこで、パンタグラフ機構の初期伸張動作をカム機構により行うことによって、初期の推力軽減を図ったテーブルリフタが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
【特許文献1】特開平7−187587号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一方、上記のような従来のテーブルリフタにおいては、載置テーブルに搭載される搭載負荷が大きくなると、その負荷に耐えられずに載置テーブルが自然に下降するいわゆる自由落下のおそれが生じ、載置テーブルを所望の高さ位置で停止させておくことができないという問題があった。
【0008】
そこで、本発明は上記のような課題に鑑み、初期動作における推力軽減を図ると共に自由落下を有効に防止するテーブルリフタを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するための技術的手段は、互いに枢支されたアーム部材を有するパンタグラフ機構の伸縮動作により昇降操作される載置テーブルと、前記アーム部材を押し上げることにより前記パンタグラフ機構の初期伸張動作を行うカム駆動機構と、該カム駆動機構による前記初期伸張動作に続いて前記パンタグラフ機構の一方の支点部を他方の支点部に向けて移動させパンタグラフ機構の伸張動作を行うパンタグラフ伸縮操作機構とを備えたテーブルリフタにおいて、前記パンタグラフ伸縮操作機構の動作を停止させる自由落下防止装置が備えられている点にある。
【0010】
また、前記パンタグラフ伸縮操作機構は、回転操作自在に支持されたネジ軸体と、該ネジ軸体に螺挿されたナット体とを備え、前記ナット体が前記一方の支点部に連動連結されると共に、このナット体と前記アーム部材の相互間に前記カム駆動機構を備え、前記自由落下防止装置で前記ネジ軸体の回転操作が解除自在に規制される構造としてもよい。
【0011】
さらに、前記載置テーブルが下降する方向の前記ネジ軸体の回転に負荷を付与する一方向ロータリダンパが備えられている構造としてもよい。
【0012】
また、前記自由落下防止装置は、前記ネジ軸体に固定されたラチェットギアと、該ラチェットギアの歯部に係脱自在に係止されて前記載置テーブルが下降する方向のネジ軸体の回転を規制するラチェット爪とを備えた構造としてもよい。
【0013】
さらに、前記自由落下防止装置は、前記ネジ軸体の回転を規制する電磁ブレーキからなる構造としてもよい。
【0014】
また、前記一方の支点部に枢支されたプルロッドが、前記ネジ軸体と平行な軸心を有して前記ナット体に挿通されると共に、前記カム駆動機構による前記初期伸張動作に続いてナット体がネジ軸体に沿って移動操作される際、ナット体によりプルロッドが牽引されて前記一方の支点部が前記他方の支点部に向けて移動される構造としてもよい。
【0015】
さらに、前記カム駆動機構による前記初期伸張動作から前記パンタグラフ伸縮操作機構による前記伸張動作へ切り替わる際の前記アーム部材の立ち上がり角度が15〜30度の範囲である構造としてもよい。
【0016】
また、前記ネジ軸体の一端部に、ネジ軸体回転操作用の操作ハンドルが着脱自在に備えられている構造としてもよい。
【0017】
さらに、基板処理装置は、加熱処理される基板が着脱自在にセットされる熱処理チャンバと、該熱処理チャンバの上側に配置される上側ランプハウスと、前記熱処理チャンバの下側に着脱自在に配置される下側ランプハウスとを備え、前記下側ランプハウスの下方に昇降操作自在に配置された前記テーブルリフタの上昇位置で、前記載置テーブル上に載置された前記下側ランプハウスが前記着脱操作自在とされている構造としてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明のテーブルリフタによれば、パンタグラフ伸縮操作機構の動作を停止させる自由落下防止装置がさらに備えられているため、カム駆動機構によりパンタグラフ機構の初期伸張動作における推力軽減が図れるだけでなく、自由落下防止装置によりパンタグラフ伸縮操作機構の動作を停止させることにより、載置テーブルの自由落下を有効に規制でき、所望高さ位置で載置テーブルを停止させた状態で保持できる利点がある。
【0019】
また、パンタグラフ伸縮操作機構は、回転操作自在に支持されたネジ軸体と、該ネジ軸体に螺挿されたナット体とを備え、ナット体が一方の支点部に連動連結されると共に、このナット体とアーム部材の相互間にカム駆動機構を備え、自由落下防止装置でネジ軸体の回転操作が解除自在に規制される構造とすれば、ネジ軸体の回転操作を規制することによって、載置テーブルの自由落下を有効に規制できる。
【0020】
さらに、載置テーブルが下降する方向のネジ軸体の回転に負荷を付与する一方向ロータリダンパが備えられている構造とすれば、載置テーブルの下降操作時においては一方向ロータリダンパのダンパ機能により下降速度を遅くでき、搭載負荷が大きい場合であっても急速な下降が有効に防止できる。一方、載置テーブルの上昇操作時には、ダンパ機能が何ら作用せず、搭載負荷に抗して上昇操作すればよい。
【0021】
また、自由落下防止装置は、ネジ軸体に固定されたラチェットギアと、該ラチェットギアの歯部に係脱自在に係止されて載置テーブルが下降する方向のネジ軸体の回転を規制するラチェット爪とを備えた構造とすれば、簡単な構造によって載置テーブルの自由落下を有効に規制できる。
【0022】
さらに、自由落下防止装置は、ネジ軸体の回転を規制する電磁ブレーキからなる構造としても、同様に、簡単な構造によって載置テーブルの自由落下を有効に規制できる。
【0023】
また、一方の支点部に枢支されたプルロッドが、ネジ軸体と平行な軸心を有してナット体に挿通されると共に、カム駆動機構によるパンタグラフ機構の初期伸張動作に続いてナット体がネジ軸体に沿って移動操作される際、ナット体によりプルロッドが牽引されて一方の支点部が他方の支点部に向けて移動される構造とすれば、カム駆動機構によるパンタグラフ機構の初期伸張動作と、その後のパンタグラフ伸縮操作機構によるパンタグラフ機構の伸張動作とを効率よく切り替えることができる。
【0024】
さらに、カム駆動機構による初期伸張動作からパンタグラフ伸縮操作機構による伸張動作へ切り替わる際のアーム部材の立ち上がり角度が15〜30度の範囲である構造とすれば、載置テーブルの上昇操作に際して、大きな推力が必要とされる初期段階をカム駆動機構により有効にカバーできると共に、その後のパンタグラフ伸縮操作機構によるパンタグラフ機構の伸張動作が円滑に行える。
【0025】
また、ネジ軸体の一端部に、ネジ軸体回転操作用の操作ハンドルが着脱自在に備えられている構造とすれば、ネジ軸体に操作ハンドルを装着して、手動で操作ハンドルを回転操作することにより、載置テーブルの移動状況を確認しながら昇降操作できる。テーブルリフタの不使用時には、操作ハンドルを外しておくことにより、コンパクトな待機状態が得られる。
【0026】
さらに、基板処理装置は、加熱処理される基板が着脱自在にセットされる熱処理チャンバと、該熱処理チャンバの上側に配置される上側ランプハウスと、熱処理チャンバの下側に着脱自在に配置される下側ランプハウスとを備え、下側ランプハウスの下方に昇降操作自在に配置されたテーブルリフタの上昇位置で、載置テーブル上に載置された下側ランプハウスが前記着脱操作自在とされている構造とすれば、通常は、テーブルリフタを折り畳み姿勢で待機させ、下側ランプハウスのメンテナンス時には、下方に配置されたテーブルリフタの昇降操作を介して下側ランプハウスを即座に取り外すことができ、重量物である下側ランプハウスのメンテナンス作業を効率よく行える利点がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明すると、図1ないし図7はテーブルリフタ1を示しており、下部に配置された支持台2と、上部に配置された載置テーブル3と、支持台2と載置テーブル3間に配置されるパンタグラフ機構4と、パンタグラフ機構4を伸縮操作するための駆動操作装置5とを備えている。なお、説明の都合上、図1の正面図を基準に、前後、左右および上下の方向を規定して説明する。
【0028】
図3に示されるように、前記支持台2は平面視略矩形に構成され、支持台2における前後両側辺部の右半部には、下側ガイド台7がそれぞれ着脱自在に取り付けられており、各下側ガイド台7の互いに対向する内面側には、それぞれ左右方向に沿った下側ガイドレール8が着脱自在に装着されている。
【0029】
また、支持台2における左右両側辺部の前後方向中央部には、軸受ブラケット9がそれぞれ着脱自在に取り付けられており、両軸受ブラケット9に軸受を介してネジ軸体10が回転自在に支持されている。このネジ軸体10の両側方に位置した支持台2上には、ネジ軸体10の軸心と平行な方向に延びるガイドレール11がそれぞれ振り分け状に着脱自在に装着されている。ここに、ネジ軸体10は左右方向の軸心を有し、各ガイドレール11は左右方向に延びる構造とされている。
【0030】
前記ネジ軸体10にはナット体12が螺挿されており、ナット体12には前後方向に延設された張出部12aがそれぞれ備えられている。そして、図4に示されるように、各張出部12aの下面には、前記各ガイドレール11に沿ってスライド自在なスライダ13が着脱自在に装着されており、ネジ軸体10が回転操作されると、ナット体12は各スライダ13による各ガイドレール11の案内下、ネジ軸体10の軸心方向に沿って往復移動操作自在に構成されている。なお、本実施形態においては、ネジ軸体10とナット体12とはボールネジ構造とされている。
【0031】
図2に示されるように、前記載置テーブル3は、支持台2と略同じ大きさの平面視矩形に構成され、載置テーブル3の下面側における前後両側辺部の右半部には、上側ガイド台15がそれぞれ着脱自在に取り付けられており、各上側ガイド台7の互いに対向する内面側には、それぞれ左右方向に沿った上側ガイドレール16が着脱自在に装着されている。
【0032】
前記パンタグラフ機構4は、図1、図5ないし図7に示されるように、長手方向中間部で支軸17を介して互いに枢支され、いわゆるX字状に連結されたアーム部材18,19を、前後に離隔して2組備えた構造とされている。
【0033】
そして、前後の外側に配置された各アーム部材18の右側端部は、支持台2に備えられた前後両側の前記各下側ガイドレール8に沿ってスライド自在な各下側スライダ20に、支軸21を介して前後方向の軸心回り(支軸21の軸心回り)に回動自在に枢支されている。また、各アーム部材18の左側端部は、載置テーブル3の左側下面に着脱自在に取り付けられた支持ブラケット22に、支軸23を介して前後方向の軸心回り(支軸23の軸心回り)に回動自在に枢支されている。
【0034】
一方、前後の内側に配置された各アーム部材19の右側端部は、載置テーブル3に備えられた前後両側の前記各上側ガイドレール16に沿ってスライド自在な各上側スライダ24に、支軸25を介して前後方向の軸心回り(支軸25の軸心回り)に回動自在に枢支されている。また、各アーム部材19の左側端部は、支持台2の左側上面に着脱自在に取り付けられた支持ブラケット26に、支軸27を介して前後方向の軸心回り(支軸27の軸心回り)に回動自在に枢支されている。
【0035】
ここに、パンタグラフ機構4における一方の支点部としての右側の上部および下部は、各ガイドレール8,9に沿ってスライド自在な可動支点部とされ、他方の支点部としての左側の上部および下部は、それぞれ支持ブラケット22,26に枢支された固定支点部とされている。また、図7に示されるように、外側に配置された各アーム部材18相互間が連結杆28を介して互いに連結されると共に、内側に配置された各アーム部材19相互間も連結杆29を介して互いに連結されている。
【0036】
前記外側の各アーム部材18の下端部を枢支する各支軸21の内側突出端部には、図3や図4に示されるように、適宜長さを有するプルロッド31の右側端部が支軸21の軸心回りにそれぞれ回動自在に枢支されている。また、各プルロッド31の中間部は、ナット体12における前後両側の張出部12aよりもさらに前後方向突出状に設けられた張出端部12bのそれぞれに、ネジ軸体10と平行な軸心を有して挿通されている。さらに、各プルロッド31の左側端部には、牽引用ストッパ32が備えられており、本実施形態では、プルロッド31の軸心方向に移動調整可能にダブルナットが螺合締結された構造とされている。
【0037】
そして、ナット体12が、図3に示されるように、ネジ軸体10に沿って右側から左方向に移動操作されると、ナット体12の各張出端部12bと各プルロッド31とが相対摺動されて、各張出端部12bが各プルロッド31の牽引用ストッパ32方向に移動する。
【0038】
その後、各張出端部12bがそれぞれ各牽引用ストッパ32に接離自在に当接した状態が得られ、この当接した状態で、ナット体12がさらに左方向に移動操作されると、ナット体12により各牽引用ストッパ32を介して各プルロッド31が左方向に牽引操作されて、各下側スライダ20が各下側ガイドレール8に沿ってスライド操作される。
【0039】
また、ナット体12における前後両側の各張出部12a上には、前記内側の各アーム部材19の下方位置に対応して、前後方向の軸心回りに転動自在にカムローラ34がそれぞれ支軸35を介して軸支されている。
【0040】
一方、各カムローラ34の上方位置に対応する各アーム部材19における右半部の下面側には、特に、図5や図6に示されるような適宜傾斜角度を有する直線状のカム面36が備えられている。
【0041】
そして、図1ないし図4に示されるように、載置テーブル3の最下端位置においては、ナット体12はネジ軸体10の右端部分に位置され、各カムローラ34上に各アーム部材19におけるカム面36の右端部分が当接した状態とされている。また、各下側スライダ20および各上側スライダ24は、各下側ガイドレール8および各上側ガイドレール16の右端部分に位置された状態とされている。
【0042】
この状態で、ネジ軸体10がテーブルリフタ1の上昇方向に回転操作されると、ナット体12はネジ軸体10に沿って左方向に螺進され、漸次左方向に移動していく。このナット体12の左方向移動により、各カムローラ34が各アーム部材19下面側の各カム面36に沿ってそれぞれ転動していき、この各カムローラ34と各カム面36との相対移動により、各アーム部材19の右側端部が押し上げられていく。ここに、パンタグラフ機構4の初期伸張動作がなされ、これら各カムローラ34と各カム面36によりカム駆動機構が構成される。また、ナット体12の左方向移動に伴って、ナット体12における各張出端部12bは各プルロッド31の中間部に沿って左方向に相対移動する。
【0043】
そして、図5に示されるように、各カムローラ34が各カム面36に沿ってカム面36の左端部分まで移動すると、ナット体12における各張出端部12bが各プルロッド31の各牽引用ストッパ32に当接した状態が得られる。この状態より、さらにナット体12が左方向に移動操作されると、各張出端部12bの左方向移動により各プルロッド31が左方向に牽引操作され、各プルロッド31の右側端部に連結されている可動支点部を構成する各下側スライダ20が各下側ガイドレール8に沿って左方向にスライド操作される。
【0044】
ここに、各張出端部12bが各牽引用ストッパ32に当接した状態となった段階で、カム駆動機構によるパンタグラフ機構4の初期伸張動作が終了し、その後は、可動支点部である下側スライダ20が、固定支点部である支持ブラケット26での軸支部分に向けて漸次接近移動され、前記初期伸張動作に続いてパンタグラフ機構4の伸張動作を行う。そして、これらナット体12の各張出端部12bや各プルロッド31等により、一方の支点部である可動支点部を、他方の支点部である固定支点部に向けて移動させパンタグラフ機構4を伸張動作を行うパンタグラフ伸縮操作機構が構成される。
【0045】
なお、前記各支軸17,21,23,25,27,35による枢支部分もしくは軸支部分は、それぞれ軸受を介して支持される構造とされている。
【0046】
また、図5に示されるように、カム駆動機構によるパンタグラフ機構4の初期伸張動作からパンタグラフ伸縮操作機構による伸張動作に切り替わる際の各アーム部材19の立ち上がり角度θが、15〜30度、好ましくは20〜25とされている。
【0047】
ネジ軸体10を軸支する右側の軸受ブラケット9より右側に突出するネジ軸体10の突出部分に位置して、支持台2には一方向ロータリダンパ38が装着されている。即ち、載置テーブル3が下降する方向のネジ軸体10の回転に対してダンパ機能が作用して負荷を付与する構成とされ、載置テーブル3が上昇する方向のネジ軸体10の回転に対してはダンパ機能が作用しない構成とされている。
【0048】
また、ネジ軸体10を軸支する左側の軸受ブラケット9より左側に突出するネジ軸体10の突出部分に位置して、支持台2には自由落下防止装置39が備えられている。即ち、自由落下防止装置39は、支持台2に固定されたケース体40を備え、ケース体40を挿通するネジ軸体10のケース体40内に位置した部分には、図8に示されるように、ラチェットギア41がネジ軸体10と一体回転するように固定されている。さらに、ケース体40内におけるこのラチェットギア41の一側部には、ラチェットギア41の歯部41aに係脱自在に係止されるラチェット爪42が、左右方向の軸心回りに揺動自在に支軸43を介して枢支されている。
【0049】
さらにまた、ラチェット爪42をラチェットギア41の歯部41aに係止する方向に弾発付勢するためのコイルバネ等からなる付勢機構44が備えられている。また、ラチェット爪42の中途部には、ラチェット爪42の歯部41aに対する係止状態を解除操作するための解除操作部45が設けられており、この解除操作部45は、図7や図8に示されるように、ケース体40に形成されたガイド開口40aを介して、ケース体40外に突出状に配置された構造とされている。
【0050】
さらに、ケース体40の側面には、図7に示されるように、ラチェットギア41とラチェット爪42との係脱状態が視認可能な透明板等が設けられた透光窓40bが備えられている。また、図8の仮想線で示されるように、ラチェット爪42をラチェットギア41から遠ざけた解除位置で、解除操作部45が係止されて保持するための解除状態保持部46が適宜備えられている。例えば、解除状態保持部46として孔部が形成され、解除操作部45の軸部が係脱自在に係止される構造とすればよい。
【0051】
そして、本実施形態においては、ラチェットギア41に対するラチェット爪42の係止状態で、載置テーブル3が下降する方向のネジ軸体10の回転を規制する構造とされている。従って、載置テーブル3の上昇操作に際して、ネジ軸体10が回転操作される際には、ラチェット爪42の回転に伴って、付勢機構44の弾発付勢力下、ラチェット爪42とラチェットギア41の各歯部41aとの係脱が順次繰り返される構造とされている。そして、ネジ軸体10の回転操作を停止すれば、ラチェット爪42と41の所定位置の歯部41aとの係止状態が得られ、ネジ軸体10の載置テーブル3下降方向の回転が規制され、載置テーブル3の自由落下が規制される構造とされている。
【0052】
また、ケース体40より外部に突出するネジ軸体10の左側端部には、六角柱等の非円形のネジ操作部10aが一体に備えられている。そして、図9に示されるように、このネジ操作部10aに、嵌脱自在で、相対回転不能に嵌合される連結体48やこの連結体48に着脱自在に連結される操作ハンドル49が備えられている。このネジ軸体10におけるネジ操作部10aに対して、連結体48および操作ハンドル49を連結し、手動により操作ハンドル49を回転操作することによりネジ軸体10が回転操作される構造とされている。即ち、本実施形態におけるテーブルリフタ1は、手動操作により載置テーブル3を昇降操作可能な構造としている。
【0053】
本実施形態のテーブルリフタ1は以上のように構成されており、所定の重量物である搭載物を所望の高さ位置に持ち上げる場合には、図1や図4に示されるように、下降位置に位置される載置テーブル3上に搭載物を搭載し、この搭載状態で、図9に示されるように、ネジ軸体10の左側端部のネジ操作部10aに、連結体48を連結し、この連結体48に操作ハンドル49を連結する。
【0054】
そして、操作ハンドル49により載置テーブル3が上昇する方向にネジ軸体10を回転操作すれば、ネジ軸体10の回転に伴ってナット体12が右側端部から左方向に移動操作されるていく。このナット体12の左方向移動により、各カムローラ34が各アーム部材19下面側の各カム面36に沿ってそれぞれ転動していき、この各カムローラ34と各カム面36との相対移動により、各アーム部材19の右側端部が押し上げられ、パンタグラフ機構4の初期伸張動作が行われる。
【0055】
その後、図5に示されるように、各カムローラ34が各カム面36に沿ってカム面36の左端部分まで移動すると、カム駆動機構による初期伸張動作が終了し、ナット体12における各張出端部12bが各プルロッド31の各牽引用ストッパ32に当接した状態が得られる。
【0056】
この初期伸張動作に続いて、ネジ軸体10がさらに回転操作されて、さらにナット体12が左方向に移動操作されると、即ち、パンタグラフ伸縮操作機構による操作によりさらにナット体12が左方向に移動操作されると、各張出端部12bにより各プルロッド31が左方向に牽引操作され、各プルロッド31の右側端部に連結されている可動支点部を構成する各下側スライダ20が各下側ガイドレール8に沿って左方向にスライド操作され、パンタグラフ機構4がさらに伸張動作される。
【0057】
なお、このようなパンタグラフ機構4の伸張動作による載置テーブル3の上昇操作に際しては、一方向ロータリダンパ38によるダンパ機能が何ら作用せず、搭載負荷に抗して上昇操作すればよい。
【0058】
そして、載置テーブル3が所望の上昇位置に到着した段階で、操作ハンドル49による回転操作を停止すれば、所望の高さ位置で載置テーブル3が停止した状態が得られる。この際、自由落下防止装置39におけるネジ軸体10に固定のラチェットギア41の歯部41aに、ラチェット爪42が係止した状態が得られているため、ネジ軸体10の載置テーブル3が下降する方向の回転操作が規制された状態となっており、載置テーブル3に搭載された重量物である搭載物の負荷による自由落下が有効に防止でき、載置テーブル3を所望高さ位置で停止させた状態を有効に保持できる。
【0059】
また、ラチェットギア41とラチェット爪42との係脱による簡単な構造によって、載置テーブル3の自由落下を有効に規制でき、安価でかつ容易に提供できる利点がある。
【0060】
一方、所定高さ位置で搭載物が搭載された載置テーブル3を下降操作する場合には、図8の仮想線で示されるように、ラチェットギア41の歯部41aに対するラチェット爪42の係止を解除し、ラチェット爪42を解除状態保持部46により解除状態で保持すれば、搭載物の重量による負荷により載置テーブル3が自由落下していく。この際、一方向ロータリダンパ38のダンパ機能により、ネジ軸体10の下降方向の回転に負荷が付与されるため、載置テーブル3の下降速度を遅くでき、搭載負荷が大きい場合であっても載置テーブル3の急速な下降が有効に防止でき、安全性の向上が図れる。なお、載置テーブル3が自由落下しない程度の負荷であれば、操作ハンドル49の回転操作により下降操作することもできる。
【0061】
また、カムローラ34とカム面36とのカム駆動機構を各アーム部材19の下方位置に配置し、カム駆動機構によるパンタグラフ機構4の初期伸張動作と、その後のパンタグラフ伸縮操作機構によるパンタグラフ機構4の伸張動作とを各プルロッド31を利用して切り替える構造としているため、載置テーブル3の下方領域内でコンパクトに構成できると共に効率よく切り替えることができる利点がある。
【0062】
さらに、カム駆動機構による初期伸張動作からパンタグラフ伸縮操作機構による伸張動作へ切り替わる際のアーム部材の立ち上がり角度が15〜30度の範囲、好ましくは20〜25度の範囲としているため、載置テーブル3の上昇操作に際して、大きな推力が必要とされる初期段階をカム駆動機構により有効にカバーできると共に、その後のパンタグラフ伸縮操作機構によるパンタグラフ機構4の伸張動作が円滑に効率よく行える。
【0063】
また、ネジ軸体10の突出端部のネジ操作部10aに、連結体48および操作ハンドル49を連結して、操作ハンドル49の回転操作により載置テーブル3を昇降操作する手動操作方式の構成であり、簡単な構造であると共に、手動操作により載置テーブル3を昇降操作するため、載置テーブル3の移動状況を確認しながら昇降操作でき、安全性にも優れる。そして、テーブルリフタ1の不使用時には、連結体48や操作ハンドル49を外しておくことにより、よりコンパクトなテーブルリフタ1の待機状態が得られる。
【0064】
なお、このような操作ハンドル49を用いた手動操作方式に替えて、電磁ブレーキ付きモータを用いてネジ軸体10を回転操作する構造とすることもできる。
【0065】
また、自由落下防止装置39として、ラチェットギア41とラチェット爪42とによりネジ軸体10の回転を規制する構造を示しているが、ラチェットギア41やラチェット爪42に替えて、電磁ブレーキによりネジ軸体10の回転を規制する構造としてもよい。このように電磁ブレーキを用いた構造としても、同様に、簡単な構造によって載置テーブル3の自由落下を有効に防止できる。
【0066】
図10は基板処理装置51における概略説明図を示しており、前記実施形態におけるテーブルリフタ1が組み付けられた構造とされている。
【0067】
即ち、基板処理装置51は、加熱処理される基板の一例としての半導体ウエハ52が着脱自在にセットされる熱処理チャンバ53を備え、該熱処理チャンバ53上側には、上側ランプハウスの一例としてのフラッシュランプハウス54が配置されている。また、熱処理チャンバ53の下側には、下側ランプハウスとしてのハロゲンランプハウス55が配置され、本実施形態では、熱処理チャンバ53に対して着脱操作自在にボルト締結される構造とされている。そして、ハロゲンランプハウス55の下方に昇降操作自在に前記テーブルリフタ1が配置された構造とされている。
【0068】
そして、ハロゲンランプハウス55のメンテナンス時には、テーブルリフタ1の載置テーブル3を仮想線で示されるように上昇操作し、ハロゲンランプハウス55が載置テーブル3上に載置された位置で、熱処理チャンバ53にハロゲンランプハウス55を固定するボルト締結を解除操作すれば、載置テーブル3上にハロゲンランプハウス55が搭載された状態が得られる。
【0069】
この状態で、自由落下防止装置39におけるラチェット爪42のラチェットギア41に対する係止状態を解除すれば、ハロゲンランプハウス55の重量の負荷により、載置テーブル3は一方向ロータリダンパ38のダンパ機能による作用下、自由落下し、下降位置に戻される。
【0070】
そして、所定のメンテナンス終了後、載置テーブル3を上昇操作して、ハロゲンランプハウス55を熱処理チャンバ53にボルト締結すれば、メンテナンス作業が終了する。この際、連結体48や操作ハンドル49は取り外して適宜位置に保管しておけばよい。
【0071】
以上のように、通常は、テーブルリフタ1を折り畳み姿勢で待機させ、ハロゲンランプハウス55のメンテナンス時には、下方に配置されたテーブルリフタ1の昇降操作を介してハロゲンランプハウス55を容易に、即座に取り外すことができ、重量物であるハロゲンランプハウス55であってもメンテナンス作業を効率よく行える利点がある。
【0072】
なお、本実施形態の基板処理装置51においては、ハロゲンランプハウス55の下方にテーブルリフタ1を予め配置して待機した構造を示しているが、必要に応じてテーブルリフタ1をハロゲンランプハウス55の下方に移動させて配置する構造としてもよい。
【0073】
また、一方向ロータリダンパ38や自由落下防止装置39を、ネジ軸体10に直接設け、直接的にネジ軸体10の回転を規制する構造を示しているが、ネジ軸体10以外に別に支持軸を設け、別に設けられた支持軸に一方向ロータリダンパ38や自由落下防止装置39を装着し、ベルト伝動機構やギア連動機構等の連動機構を介して間接的にネジ軸体10の回転を規制する構造としてもよい。
【0074】
さらに、本実施形態では、テーブルリフタ1がいわゆる1段式のパンタグラフ機構4を備えた構造とされているが、2段式や3段式等の複数段のパンタグラフ機構4を備える構造であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の実施形態に係るテーブルリフタの折り畳み姿勢を示す正面図である。
【図2】同一部切欠平面図である。
【図3】図1のIII−III線断面矢視図である。
【図4】図1の右側面図である。
【図5】同動作説明図である。
【図6】同動作説明図である。
【図7】図6の右側面図である。
【図8】自由落下防止装置の要部左側面図である。
【図9】操作ハンドルの連結状態を示す一部説明図である。
【図10】基板処理装置の概略説明図である。
【符号の説明】
【0076】
1 テーブルリフタ
3 載置テーブル
4 パンタグラフ機構
10 ネジ軸体
12 ナット体
17 支軸
18 アーム部材
19 アーム部材
20 下側スライダ
21 支軸
26 支持ブラケット
27 支軸
31 プルロッド
32 牽引用ストッパ
34 カムローラ
36 カム面
38 一方向ロータリダンパ
39 自由落下防止装置
41 ラチェットギア
42 ラチェット爪
49 操作ハンドル
51 基板処理装置
52 半導体ウエハ
53 熱処理チャンバ
54 フラッシュランプハウス
55 ハロゲンランプハウス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに枢支されたアーム部材を有するパンタグラフ機構の伸縮動作により昇降操作される載置テーブルと、前記アーム部材を押し上げることにより前記パンタグラフ機構の初期伸張動作を行うカム駆動機構と、該カム駆動機構による前記初期伸張動作に続いて前記パンタグラフ機構の一方の支点部を他方の支点部に向けて移動させパンタグラフ機構の伸張動作を行うパンタグラフ伸縮操作機構とを備えたテーブルリフタにおいて、
前記パンタグラフ伸縮操作機構の動作を停止させる自由落下防止装置が備えられていることを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項2】
請求項1に記載のテーブルリフタにおいて、
前記パンタグラフ伸縮操作機構は、回転操作自在に支持されたネジ軸体と、該ネジ軸体に螺挿されたナット体とを備え、
前記ナット体が前記一方の支点部に連動連結されると共に、このナット体と前記アーム部材の相互間に前記カム駆動機構を備え、
前記自由落下防止装置で前記ネジ軸体の回転操作が解除自在に規制されることを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項3】
請求項2に記載のテーブルリフタにおいて、
前記載置テーブルが下降する方向の前記ネジ軸体の回転に負荷を付与する一方向ロータリダンパが備えられていることを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項4】
請求項2または請求項3に記載のテーブルリフタにおいて、
前記自由落下防止装置は、前記ネジ軸体に固定されたラチェットギアと、該ラチェットギアの歯部に係脱自在に係止されて前記載置テーブルが下降する方向のネジ軸体の回転を規制するラチェット爪とを備えたことを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項5】
請求項2または請求項3に記載のテーブルリフタにおいて、
前記自由落下防止装置は、前記ネジ軸体の回転を規制する電磁ブレーキからなることを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれかに記載のテーブルリフタにおいて、
前記一方の支点部に枢支されたプルロッドが、前記ネジ軸体と平行な軸心を有して前記ナット体に挿通されると共に、前記カム駆動機構による前記初期伸張動作に続いてナット体がネジ軸体に沿って移動操作される際、ナット体によりプルロッドが牽引されて前記一方の支点部が前記他方の支点部に向けて移動されることを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項7】
請求項2ないし請求項6のいずれかに記載のテーブルリフタにおいて、
前記カム駆動機構による前記初期伸張動作から前記パンタグラフ伸縮操作機構による前記伸張動作へ切り替わる際の前記アーム部材の立ち上がり角度が15〜30度の範囲であることを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれかに記載のテーブルリフタにおいて、
前記ネジ軸体の一端部に、ネジ軸体回転操作用の操作ハンドルが着脱自在に備えられていることを特徴とするテーブルリフタ。
【請求項9】
請求項1ないし請求項8のいずれかに記載のテーブルリフタを備えた基板処理装置であって、
基板処理装置は、加熱処理される基板が着脱自在にセットされる熱処理チャンバと、該熱処理チャンバの上側に配置される上側ランプハウスと、前記熱処理チャンバの下側に着脱自在に配置される下側ランプハウスとを備え、
前記下側ランプハウスの下方に昇降操作自在に配置された前記テーブルリフタの上昇位置で、前記載置テーブル上に載置された前記下側ランプハウスが前記着脱操作自在とされていることを特徴とする基板処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−227434(P2009−227434A)
【公開日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−77444(P2008−77444)
【出願日】平成20年3月25日(2008.3.25)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)