説明

テープカートリッジおよびテープ印刷装置

【課題】テープコアの傾きを抑制し、その回転を安定させることができるテープカートリッジおよびテープ印刷装置を提供する。
【解決手段】テープコア21bをカートリッジケース25内に回転自在に軸支して、テープコア21bに巻回した印刷テープ21aを繰出し可能に収容するテープカートリッジ2であって、テープコア21bは、外周面に印刷テープ21aが巻回されたコア本体26と、コア本体26の内周面の軸方向中間部に設けた円板状のリブ部27と、リブ部27の軸心に形成した軸孔28と、を有し、カートリッジケース25は、軸孔28に挿通してテープコア21bを回転自在に軸支する軸支部41と、コア本体26の内周面に摺接する回転ガイド部42と、を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープコアをカートリッジケース内に回転自在に軸支して、テープコアに巻回したテープを繰出し可能に収容するテープカートリッジおよびテープ印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、外周面にテープが巻回されたコア本体と、コア本体の内周面の中段位置に設けられ、下ケースの突起に回転自在に軸支される円板状のリブ部を有するテープコアと、上下二分割のカートリッジケースと、により構成されるテープカートリッジが知られている(特許文献1参照)。
テープカートリッジのテープコアは、リブ部がコア本体の内周面の軸方向中間部に設けられているため、突起に挿通させるテープコアの向きはどちら向きでもよく、組み立て時の装着ミスを未然に防止することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−071756号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、テープコアは、突起に対して所定の寸法公差をもってリブ部でのみ軸支されているため、テープの繰り出し等によるテープコアの回転に伴ってテープコアの「がたつき」等が生じていた。このため、テープを引き出す力が、テープの幅方向において不均一に作用すると、テープコアが傾き、テープが斜行しながら繰り出される等の問題があった。
【0005】
本発明は、テープコアの傾きを抑制し、その回転を安定させることができるテープカートリッジおよびテープ印刷装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のテープカートリッジは、テープコアをカートリッジケース内に回転自在に軸支して、テープコアに巻回したテープを繰出し可能に収容するテープカートリッジであって、テープコアは、外周面にテープが巻回されたコア本体と、コア本体の内周面の軸方向中間部に設けた円板状のリブ部と、リブ部の軸心に形成した軸孔と、を有し、カートリッジケースは、軸孔に挿通してテープコアを回転自在に軸支する軸支部と、コア本体の内周面に摺接する回転ガイド部と、を有していることを特徴とする。
【0007】
この構成によれば、リブ部が軸支部に摺接すると共に、回転ガイド部がコア本体の内周面に摺接することで、テープコアは、軸支部と回転ガイド部との2箇所でカートリッジケース内に回転自在に軸支される。これにより、テープコアは、「がたつく」ことなく(傾くことなく)回転し、テープコアに巻回したテープを真っ直ぐ繰出すことができる。なお、リブ部を軸方向中間部に設け、テープコアの方向性を無くしているため、組み立ての際、軸支部に挿通させるテープコアの向きはどちら向きでもよい。
【0008】
この場合、回転ガイド部は、テープが繰出されて巻回状態が解かれる位置の法線上に配設されていることが好ましい。
【0009】
ところで、テープが繰出されると、テープコアは、テープが繰出される方向に引っ張られて傾く。すなわち、テープが繰出されて巻回状態が解かれる位置において、傾きを生じさせる力が作用する。
しかし、この構成によれば、最も力が掛る位置に回転ガイド部を設けることによって、テープコアが傾くことを防止し、「がたつき」のない安定した回転を保証することができる。
【0010】
また、この場合、回転ガイド部は、軸支部の周方向に少なくとも1箇所設けられていることが好ましい。
【0011】
また、この場合、回転ガイド部は、軸支部の全周に亘って設けられていることが好ましい。
【0012】
これらの構成によれば、任意の方向へのテープコアの傾きを阻止することができ、さらに、確実にテープコアの「がたつき」を防ぐことができる。
【0013】
この場合、回転ガイド部は、軸支部に添接され、軸支部および回転ガイド部は、所定の肉厚を有してカートリッジケースと一体に成形されていることが好ましい。
【0014】
この構成によれば、構造的な剛性を十分に確保した回転ガイド部の成形を考慮して、回転ガイド部を形成することができ、これによりテープコアの回転を安定させることができる。
【0015】
本発明のテープ印刷装置は、上記したテープカートリッジが着脱自在に収容されるカートリッジ装着部を有し、テープカートリッジから繰出したテープに印刷を行うテープ印刷装置であって、カートリッジ装着部には、装着したテープカートリッジの回転ガイド部に嵌合する嵌合突起が設けられていることを特徴とする。
【0016】
この構成によれば、回転ガイド部に嵌合突起が嵌合することで、テープカートリッジはカートリッジ装着部に回転不能に固定される。これにより、カートリッジ装着部におけるテープカートリッジ自体の「がたつき」を無くすことができる。すなわち、テープカートリッジを位置決め状態で不動に収容することができ、テープカートリッジ内のテープコアの回転を安定させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】テープ印刷装置の開蓋状態の外観斜視図である。
【図2】上ケースを破断した第1実施形態に係るテープカートリッジの平面図である。
【図3】テープカートリッジの表裏斜視図である。
【図4】テープカートリッジの分解斜視図である。
【図5】図2に示すテープカートリッジのA−A線における断面図およびカートリッジ装着部の断面図である。
【図6】上ケースを省略した第2実施形態に係るテープカートリッジの平面図である。
【図7】上ケースを省略したテープカートリッジであって、(a)は第3実施形態に係るテープカートリッジの平面図、(b)はその変形例に係るテープカートリッジの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付の図面を参照しながら、第1実施形態に係る本発明のテープ印刷装置について説明する。このテープ印刷装置は、装着したテープカートリッジから印刷テープおよびインクリボンを繰り出し、張りを与えた状態で併走させながら印刷を行い、印刷テープの印刷済み部分を切断して、ラベル(テープ片)を作成するものである。
【0019】
図1および図2を参照して、テープ印刷装置1等について説明する。図1は、テープ印刷装置1の開蓋状態の外観斜視図である。図2は、上ケース25aを破断したテープカートリッジ2の平面図である。テープ印刷装置1は、その外殻を形成する装置本体10と、開閉蓋11の内側に窪入形成され、印刷テープ21a等を収容したテープカートリッジ2を着脱自在に装着するカートリッジ装着部12と、テープカートリッジ2から印刷テープ21aを繰り出しながら送るテープ送り手段13と、印刷済みの印刷テープ21aを切断するカッター手段14と、を備えている。ユーザーは、装置本体10の上面に配設されたキーボード15を操作し、操作結果等を表示したディスプレイ16を確認しながら印刷動作を実行させる。
【0020】
テープカートリッジ2は、印刷テープ21aをテープコア21bに巻回してなるテープ体21と、インクリボン22aをリボンコア22bに巻回してなるリボン体22と、使用後のインクリボン22aを巻き取る巻取りコア23と、印刷テープ21aをテープ体21から繰り出して送るプラテンローラー24と、を備えている。
【0021】
テープ送り手段13は、カートリッジ装着部12に装着したテープカートリッジ2内の印刷テープ21aおよびインクリボン22aを走行させるためにプラテンローラー24および巻取りコア23を回転させる複数の駆動軸17と、テープコア21bに係合して位置決めする位置決め突起18と、複数の駆動軸17を同期回転させる駆動機構(図示省略)と、を備えている。
【0022】
テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着すると、サーマルヘッド19が、印刷テープ21aおよびインクリボン22aを挟んでプラテンローラー24に当接し、印刷待機状態となる(図2参照)。印刷が開始されると、インクリボン22aは、プラテンローラー24の部分で、印刷テープ21aに重なって併走する。そして、サーマルヘッド19により印刷処理が行われた印刷テープ21aは、テープカートリッジ2および装置本体10の外部に送り出され、カッター手段14により印刷済み部分がテープ幅方向に切断され、テープ片(ラベル)が作成される。一方、インクリボン22aは、テープカートリッジ2内を所定の経路に沿って送られ巻取りコア23に巻き取られる。
【0023】
次に、図2ないし図5を参照して、テープカートリッジ2について詳細に説明する。図3は、テープカートリッジ2の表裏斜視図である。図4は、テープカートリッジ2の分解斜視図である。図5は、図2に示すテープカートリッジ2のA−A線における断面図およびカートリッジ装着部12の断面図である。テープカートリッジ2は、上ケース25aと下ケース25bとからなるカートリッジケース25により、その外殻が形成され、上記した、テープ体21、リボン体22、巻取りコア23およびプラテンローラー24をカートリッジケース25内に収容している。上ケース25aおよび下ケース25bは、接合端面に形成したピンおよび貫通孔により、圧入接合されている(分解・再利用可能)。
【0024】
テープ体21を構成するテープコア21bは、外周面に印刷テープ21aが巻回されたコア本体26と、コア本体26の内周面の軸方向中間部に突設されたリブ部27と、リブ部27の軸心に形成した軸孔28と、で一体に形成されている(図2および図5参照)。コア本体26は、中空円筒形を為しており、リブ部27は、軸心に軸孔28が開口した中空円板状を為している。
【0025】
また、コア本体26の内周面には、印刷テープ21aの繰出し端がカートリッジケース25内へ、引き込まれることを防止するための逆転防止機構31が組み込まれている(図4および図5参照)。逆転防止機構31は、上記したリブ部27の表裏両面にそれぞれ形成され、印刷テープ21aの繰出し方向にのみ回転を許容するように形成された鋸歯状の爪車で構成されたラチェット溝(図示省略)と、両端部をリブ部27および上ケース25aにそれぞれ当接し、直線状に延長した線状係止部33が下側端部に形成された逆転防止ばね32(いわゆる、コイルばね)と、を有している。
【0026】
下ケース25bは、軸孔28に挿通してテープコア21bを回転自在に軸支する軸支部41と、コア本体26の内周面に摺接するように軸支部41に添設する回転ガイド部42と、を有している。
【0027】
軸支部41は、下ケース25bから立設した中空円筒形を為しており、その上端から縦溝43が形成されている。縦溝43は、軸支部41に装着したテープコア21bのラチェット溝よりも低い位置まで切り込まれている(図5(a)参照)。
【0028】
したがって、逆転防止ばね32は、縦溝43に線状係止部33を位置合わせして、軸支部41の内周部分に投入すると、線状係止部33がラチェット溝の上に載り、さらに、この状態で上ケース25aを装着すると、逆転防止ばね32は、圧縮され、その線状係止部33がラチェット溝に押し付けられる(図5(a)参照)。これにより、テープコア21bは、印刷テープ21aの繰出し方向(図2におけるB方向)への回転は許容され、その逆方向への回転が阻止される。一方、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着すると、上記の位置決め突起18が逆転防止ばね32を下側から押圧し、線状係止部33のラチェット溝に対する係合を解く(図5(b)参照)。すなわち、ラチェット溝から線状係止部33が離間し、テープコア21bは自由回転が可能となる。なお、逆転防止ばね32は、軸支部41の外周面に装着する構造にしてもよい。
【0029】
回転ガイド部42は、軸支部41の基端部分において、軸支部41から凸設されており、所定の肉厚を有して下ケース25bと一体に成形されている。なお、本実施形態では、回転ガイド部42は、図2において上側に一箇所設けられている。回転ガイド部42は、コア本体26の内周面に摺接する部分が、当該内周面とほぼ同一の曲率をもって形成されており、テープコア21bの回転を妨げることがないようになっている。このような構成によれば、テープコア21bを下ケース25bの軸孔28に支持させると、コア本体26のリブ部27が軸支部41に摺接すると共に、回転ガイド部42がコア本体26の内周面に摺接する。したがって、テープコア21bは、軸支部41と回転ガイド部42との2箇所で下ケース25b内に回転自在に軸支される。これにより、テープコア21bは、「がたつく」ことなく(傾くことなく)回転し、テープコア21bに巻回した印刷テープ21a斜行しながら繰出されることが防止できる。
【0030】
なお、下ケース25bの下面(裏面)には、軸支部41の内周面となる中空部44aと、回転ガイド部42により凹部44bと、が一体となった嵌合開口部44が形成されている(図3(b)参照)。
【0031】
次に、テープカートリッジ2を着脱自在に装着するカートリッジ装着部12について説明する。カートリッジ装着部12には、上述したように、テープコア21bに係合して位置決めする位置決め突起18が立設している(図1および図5参照)。位置決め突起18は、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着したときに、軸支部41の中空部44aに嵌合する嵌合軸18aと、回転ガイド部42により凹部44bに嵌合する嵌合突起18bと、が一体となって設けられている。すなわち、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に装着すると、位置決め突起18は、下ケース25bの下面の嵌合開口部44に嵌合し、テープカートリッジ2をカートリッジ装着部12に位置決めして回転不能に固定される。これにより、カートリッジ装着部12におけるテープカートリッジ2自体の「がたつき」を無くすことができ、テープカートリッジ2内のテープコア21bの回転を安定させることができる。
【0032】
以上の構成によれば、リブ部27と回転ガイド部42とにより、テープコア21bの回転を安定させることができ、テープコア21bに巻回した印刷テープ21aの繰出しを適切に行うことができる。
【0033】
なお、本実施形態では、回転ガイド部42を軸支部41に添設させ、軸支部41と一体に形成しているが、回転ガイド部42を、軸支部41から離間した位置に独立して設けてもよい。
【0034】
(第2実施形態)
図6を参照して、第2実施形態に係るテープカートリッジ2について説明する。なお、第1実施形態に係るものと同様の説明は省略する。図6は、上ケース25aを省略した第2実施形態に係るテープカートリッジ2の平面図である。第2実施形態に係るテープカートリッジ2は、印刷テープ21aが繰出されて巻回状態が解かれる位置の法線上に回転ガイド部42を配設している。このように、傾きを生じさせる力が集中して作用する(最も力が掛る)部分に、回転ガイド部42を設けることで、テープコア21bが傾くことを確実に防止することができ、「がたつき」のない安定した回転を保証することができる。
【0035】
(第3実施形態)
図7(a)は、第3実施形態に係るテープカートリッジ2の平面図である。なお、第1実施形態に係るものと同様の説明は省略する。このテープカートリッジ2は、軸支部41の周方向に複数(本実施形態では4つ)の回転ガイド部42を等間隔に設けている。この場合、回転ガイド部42の数および位置は任意である。この構成によれば、複数の方向へのテープコア21bの傾きを阻止することができ、確実にテープコア21bの「がたつき」を防ぐことができる。
【0036】
(第3実施形態の変形例)
図7(b)は、第3実施形態の変形例に係るテープカートリッジ2の平面図である。このテープカートリッジ2は、回転ガイド部42が、軸支部41の全周に亘って設けられている。この構成によれば、テープコア21bの傾きを更に阻止することができ、確実にテープコア21bの「がたつき」を防ぐことができる。
【符号の説明】
【0037】
1:テープ印刷装置、2:テープカートリッジ、18b:嵌合突起、21a:印刷テープ、21b:テープコア、25:カートリッジケース、26:コア本体、27:リブ部、28:軸孔、41:軸支部、42:回転ガイド部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープコアをカートリッジケース内に回転自在に軸支して、前記テープコアに巻回したテープを繰出し可能に収容するテープカートリッジであって、
前記テープコアは、外周面にテープが巻回されたコア本体と、前記コア本体の内周面の軸方向中間部に設けた円板状のリブ部と、リブ部の軸心に形成した軸孔と、を有し、
前記カートリッジケースは、前記軸孔に挿通して前記テープコアを回転自在に軸支する軸支部と、前記コア本体の内周面に摺接する回転ガイド部と、を有していることを特徴とするテープカートリッジ。
【請求項2】
前記回転ガイド部は、前記テープが繰出されて巻回状態が解かれる位置の法線上に配設されていることを特徴とする請求項1に記載のテープカートリッジ。
【請求項3】
前記回転ガイド部は、前記軸支部の周方向に少なくとも1箇所設けられていることを特徴とする請求項1または2に記載のテープカートリッジ。
【請求項4】
前記回転ガイド部は、前記軸支部の全周に亘って設けられていることを特徴とする請求項1に記載のテープカートリッジ。
【請求項5】
前記回転ガイド部は、前記軸支部に添接され、
前記軸支部および前記回転ガイド部は、所定の肉厚を有して前記カートリッジケースと一体に成形されていることを特徴とする請求項1ないし4のいずれかに記載のテープカートリッジ。
【請求項6】
請求項5に記載のテープカートリッジが着脱自在に収容されるカートリッジ装着部を有し、前記テープカートリッジから繰出した前記テープに印刷を行うテープ印刷装置であって、
前記カートリッジ装着部には、装着した前記テープカートリッジの前記回転ガイド部に嵌合する嵌合突起が設けられていることを特徴とするテープ印刷装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−6295(P2012−6295A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−145005(P2010−145005)
【出願日】平成22年6月25日(2010.6.25)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】