説明

テープ測定装置

【課題】試験片とテープの間に一定の電位差を生じさせてテープを走行させ、電位差と試験片への付着物の状態の関係、すなわち電気化学的に発生する付着物の測定を行う装置を提供する。
【解決手段】テープを供給する供給リールと、前記テープを巻き取る巻き取りリールと、前記供給リールと前記巻き取りリールとの間でテープの走行をガイドするガイドロールと、一対の前記ガイドロールに支持されている前記テープの測定面に当接するように試験片を固定する固定手段とを備えたテープ測定装置において、前記テープまたは前記試験片に所定の電位を発生させる電位発生手段を備え、該電位発生手段により前記テープまたは前記試験片に所定の電位を付与するとともに、前記テープと前記試験片とを当接させた状態で前記テープを走行させ、前記走行後に前記試験片のテープとの摺動面の付着物の観察を行うことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、テープ状の長尺体(例えば、ビデオやコンピュータ用バックアップテープ等に用いられる磁気テープ等)の走行時の当接物への付着物発生状態を測定する測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走行するテープ状の長尺体に当接物を当接させて、何らかの機能を発生させる装置の一つに磁気記録再生装置がある。以下、磁気記録再生装置を例にとって本発明を説明する。
【0003】
磁気テープの大容量化に伴い、従来に比べて記録密度が高くなる傾向にあり、記録信号を良好に磁気ヘッドで書き込んだり読み込んだりするためには、磁気テープと磁気ヘッドとの接触状態のさらなる高精度化が要求されるようになってきた。
【0004】
従来から磁気テープと磁気ヘッドとの接触を良好な状態に維持するため、磁気テープの走行時に磁気テープ構成材料の一部が磁気ヘッドへ付着し、磁気ヘッドと磁気テープとの間にスペーシングが発生することを防ぐための改良がなされてきている。スペーシングが生じると、記録再生時に損失が発生し短波長信号の記録再生が良好に行えなくなる。
【0005】
前記磁気ヘッドへの付着の評価の方法として、磁気テープ走行後の磁気ヘッドへの付着物を観察する試みがなされており、従来のこの種の装置においては、例えば磁気ヘッドの代わりに試験片として角柱を用い、試験片を磁気テープに当接させて走行し、走行後に試験片の付着物の観察を行ったり、試験片の代わりに磁気ヘッドを当接させて磁気テープを走行し、走行後に磁気ヘッドの付着物の観察を行ったりしていた。このときの付着物発生メカニズムとしては、磁気テープ構成材料の一部が単純に付着する場合や、摩擦熱などによる付着物の固着などが考えられている。
【0006】
しかしながら、近年、これらのメカニズムによる付着物発生に加え、電気化学的な付着物発生メカニズムの知見が得られるようになってきた。電気化学的な付着物の発生のメカニズムについて検討するためには、例えば磁気ヘッドと磁気テープとの間に電位差(以下、電圧ともいう)を与えたり、発生する電位差を正確に測定する必要がある。
【0007】
従来この種の装置においては、例えば特許文献1に示されているように、角柱を磁気テープに当接させて走行させ、角柱の磨耗量から磁気テープの研磨能を評価する装置があった。
【0008】
また非特許文献1から電位差による電気化学的プロセスが磁気テープと磁気ヘッドとのスペーシングにどう影響するかが検討されていることが分る。
【0009】
【特許文献1】特開平10−90089号公報
【非特許文献1】CMRR(Center for Magnetic Recording Research) Report, page11,number24 Summer 2005 ,University of California, San Diego
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
従来のこの種の装置では、例えば特許文献1で開示されている測定装置では、磁気テープの研磨能の評価は可能であるものの、電位差を測定したり、付与したりする手段は備えておらず、本発明の目的とする評価は行えない。また、非特許文献1では、電位差の測定は行われているようであるが、詳細は不明である。
【0011】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであり、試験片とテープの間に一定の電位差を生じさせてテープを走行させ、電位差と試験片への付着物の状態との関係、すなわち電気化学的に発生する付着物の測定を行う装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するために、本発明者らが鋭意検討した結果、テープ測定装置を下記の構成にするより上記課題を達成することができ、本発明のテープ測定装置をなすに至った。
【0013】
すなわち、テープを供給する供給リールと、前記テープを巻き取る巻き取りリールと、前記供給リールと前記巻き取りリールとの間でテープの走行をガイドするガイドロールと、一対の前記ガイドロールに支持されている前記テープの測定面に当接するように試験片を固定する固定手段とを備えたテープ測定装置において、前記テープまたは前記試験片に所定の電位を発生させる電位発生手段を備え、該電位発生手段により前記テープまたは前記試験片に所定の電位を付与するとともに、前記テープと前記試験片とを当接させた状態で前記テープを走行させ、前記走行後に前記試験片のテープとの摺動面の付着物の観察を行うことを特徴とする。
【0014】
前記電位発生手段が、電圧発生装置もしくはイオン発生装置であることを特徴とする。
【0015】
前記走行時に前記試験片と前記テープとの電位差を測定する測定手段を備えることを特徴とする。
【0016】
前記テープが磁気テープであり、前記試験片が磁気ヘッド、模擬磁気ヘッド、磁気ヘッドを構成する材質のいずれかからなる試験片であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、磁気テープに当接させる試験片と磁気テープの間に一定の電位差を生じさせて磁気テープを走行させ、その電位差をリアルタイムで監視できるとともに、磁気テープ走行後に、電位差と試験片の付着物の状態との関係を測定することができる。また、その結果をフィードバックすることにより、電気化学的に発生する付着物を低減させて、磁気ヘッドの接触をより良好な状態に維持できる磁気テープを開発することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、図面に基づいて本発明を説明する。
【0019】
図1に本発明の一例のテープ測定装置の概略平面図を示した。本例のテープ測定装置11は、基盤10上に磁気テープ1を供給する供給リール7と、磁気テープ1を巻き取る巻き取りリール8と、供給リール7と巻き取りリール8との間で磁気テープ1の走行をガイドするガイドロール2と、磁気テープ1を支持し、テープ1に電位を付与する一対の電位付与ガイドロール2aと、試験片3と、試験片3をテープ1に当接するように固定する固定手段である試験片固定台3aとを備えている。供給リール7および巻き取りリール8は、任意の速度およびテンションでテープを走行できるようになっている。電位付与ガイドロール2aおよび試験片3は、磁気テープ1、他のガイドロール2、供給リール7、巻き取りリール8、基盤10などの走行系と電気的に絶縁されている。また、電位付与ガイドロール2aには、一定の電位を付与したり、電位を測定するための端子6が設けられている。試験片3にも一定の電位を付与したり、電位を測定する試験片端子3bが設けられている。
【0020】
図2は本発明の一例のテープ測定装置の各構成部品の電気的結線例を示す説明図である。電位付与ガイドロール2aは端子6を介して電位発生手段である電圧発生装置4の正極と結線されており所定の電位が付与されるようになっている。電圧発生装置4の負極は接地されており零電位となっている。電圧測定手段である電圧計5aの一方の端子は端子6と結線され、さらに第1スイッチ9aを介して接地可能になっている。電圧計5aの他方の端子は試験片の端子3bを介して試験片3と結線され、さらに第2スイッチ9bを介して接地されている。図4に示すように、端子6にはブラシ状の導電体6aの一端が取り付けられており、他端は電位付与ガイドロール2aに当接している。
【0021】
前述したように各部品が結線されているので、電圧発生装置4により電位付与ガイドロール2aに所定の電位を付与することができる。電位付与ガイドロール2aは金属などの導電性材料からなっているので電位付与ガイドロール2aを介して磁気テープ1に所定の電位を付与することができる。電位発生手段4は、電圧発生装置の他にイオン発生装置などの従来公知のものを用いることもできる。また、電圧計5aにより、磁気テープ1と試験片3との電位差を測定することができる。電圧計5aで得られる電位差は、磁気テープ1が静止している場合には、電圧発生装置4で設定した電位に概ね等しくなるが、磁気テープ1を走行させると、走行に伴う摩擦電気の発生により、磁気テープ1、ガイドロール2、試験片3の材質、走行速度、テンションの組み合わせにより、様々に電位が変化する。このために、走行時の試験片3と磁気テープ1との間の電位差を、電圧計5aにて常にモニターすることが好ましい。磁気テープの表面電気抵抗は一般に数MΩあるので、市販の電圧計(入力インピーダンスが数MΩ)では、誤差が大きくなる場合があるので、入力インピーダンスが10GΩ以上、より好ましくは10TΩ以上、もっとも好ましくは100TΩ以上の電圧計を用いることが好ましい。電圧測定手段としては、電圧計の他に、非接触式の帯電電位測定装置などの従来公知の物を用いることもできる。
【0022】
以下、本発明のテープ装置の動作について説明する。図2に示された結線状態において、供給リール7、巻き取りリール8を駆動することにより、磁気テープを任意のテンションおよび速度にて走行させ、その時の電圧計5aの電圧を記録するとともに、所定長の走行後、電圧発生装置4の電圧を0に戻し、試験片3の、磁気テープとの摺動面の付着物の観察を行う。磁気テープ走行後に磁気テープおよび電位付与ガイドロール2aに帯電が発生している場合、第1スイッチ9aを閉じて接地し、再び第1スイッチ9aを開いて除電を完了することができる。
【0023】
また、電位差の測定には、前述した直接的な電圧測定のほかに、電流測定を行うことによっても可能である。図3は電流測定を行う場合の電気的結線例を示す説明図である。電流測定手段である電流計5bの一方の端子はスイッチ9bを介して接地されている。電流計5bの他方の端子は試験片の端子3bを介して試験片3と結線されている。測定方法は、電圧計を電流計に置き換えた以外は、前述した電圧測定と同様である。電位付与ガイドロール2aと試験片3との間の磁気テープ1の表面電気抵抗をR、電流計5bで得られた電流値をIとすると、試験片3とテープ1との電位差Eは、E=R×Iで求められる。電流計は入力インピーダンスが高いと、電圧降下による誤差を生じやすいため、入力インピーダンスは1kΩ以下、より好ましくは100Ω以下、もっとも好ましくは10Ω以下の電流計を用いることが好ましい。
【0024】
試験片3には、任意の材質、形状からなる材料を用いることができるが、テープが当接物と当接しながら走行し、何らかの機能を発現するように使用される場合の、前記当接物と類似または同一の材料を使用し、形状も前記当接物と類似の形状とすることが好ましい。磁気テープの評価のためには、磁気ヘッド、材料、形状を模した模擬磁気ヘッド、磁気ヘッドを構成する材質のいずれかからなる試験片を用いることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の一例のテープ測定装置の概略平面図である。
【図2】本発明の一例のテープ測定装置(電圧測定)の各構成部品の電気的結線例を示す説明図である。
【図3】本発明の一例のテープ測定装置(電流測定)の各構成部品の電気的結線例を示す説明図である。
【図4】電位付与ガイドロールに電位を与える端子を示す要部拡大図である。
【符号の説明】
【0026】
1 磁気テープ
2 ガイドロール
2a 電位付与ガイドロール
3 試験片
3a 試験片固定台
3b 試験片端子
4 電圧発生装置
5a 電圧計
5b 電流計
6 端子
6a ブラシ状の導電体
7 供給リール
8 巻き取りリール
9a 第1スイッチ
9b 第2スイッチ
10 基盤
11 テープ測定装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
テープを供給する供給リールと、前記テープを巻き取る巻き取りリールと、前記供給リールと前記巻き取りリールとの間でテープの走行をガイドするガイドロールと、一対の前記ガイドロールに支持されている前記テープの測定面に当接するように試験片を固定する固定手段とを備えたテープ測定装置において、
前記テープまたは前記試験片に所定の電位を発生させる電位発生手段を備え、該電位発生手段により前記テープまたは前記試験片に所定の電位を付与するとともに、前記テープと前記試験片とを当接させた状態で前記テープを走行させ、前記走行後に前記試験片のテープとの摺動面の付着物の観察を行うことを特徴とするテープ測定装置。
【請求項2】
前記電位発生手段が、電圧発生装置もしくはイオン発生装置であることを特徴とする請求項1に記載のテープ測定装置。
【請求項3】
前記走行時に前記試験片と前記テープとの電位差を測定する測定手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載のテープ測定装置。
【請求項4】
前記テープが磁気テープであり、前記試験片が磁気ヘッド、模擬磁気ヘッド、磁気ヘッドを構成する材質のいずれかからなる試験片であることを特徴とする請求項1ないし4に記載のテープ測定装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−192634(P2007−192634A)
【公開日】平成19年8月2日(2007.8.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−10112(P2006−10112)
【出願日】平成18年1月18日(2006.1.18)
【出願人】(000005810)日立マクセル株式会社 (2,366)
【Fターム(参考)】