説明

テープ無し継ぎ目を有する防水呼吸性衣服

【課題】 防水呼吸性衣服(10)を提供する。
【解決手段】 この防水衣服は、積層複合材料(30)の第1セグメント(32)、積層複合材料(30)の第2セグメント(34)、および衣服を形成するための積層複合材料の第1および第2セグメントを結合する継ぎ目(18)を含む。この継ぎ目は、光硬化性接着剤(40)を含む。前記継ぎ目(18)はオーバーラップ継ぎ目を含み、該オーバーラップ継ぎ目が、前記第2セグメント(34)の部分(38)にオーバーラップしている前記第1セグメント(32)の部分(36)および前記第1セグメントおよび第2セグメントの前記オーバーラップ部分の間に位置する前記光硬化性接着剤(40)を含んでもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的に防水性衣服に関するものであり、さらに詳細にはテープ無し継ぎ目を有する防水呼吸性衣服に関するものである。
【背景技術】
【0002】
いくつかの知られている衣服は、ステッチがない。そのような衣服は、布地を合わせて超音波または熱溶着することによって作られている。しかしながら、これらのタイプの溶着は、構造面で十分に完全な状態を付与しないか、または衣服を防水性にしない。これらのタイプの溶着を防水性にし、強くするために、継ぎ目テープが、典型的に使用される。また、いくつかの知られている衣服は、ステッチングによって結合される継ぎ目を含んでいる。しかしながら、ステッチングの方法で作成される穴のために、防水衣服の製造においては、継ぎ目テープが使用される。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
継ぎ目テープの使用により、嵩が加わり、継ぎ目の縁が、衣服の外から目に見えるようになることがある。また、継ぎ目テープを適用するための設備は特殊なものになり、開発の時間およびコストを必要とする。さらに、被服縫製工場が、工場が処理するトリコットのあらゆるバージョンのために1つの継ぎ目テープを棚卸する必要があるので、継ぎ目テープの使用は、さらに衣服の全コストを引き上げる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
1つの態様において、呼吸可能な防水衣服が提供される。この衣服は、積層複合材料の第1セグメント、積層複合材料の第2セグメント、および衣服を形成するための積層複合材料の第1および第2セグメントを接合する継ぎ目を含んでいる。継ぎ目は、光硬化性接着剤を含んでいる。
【0005】
別の態様において、呼吸可能な防水衣服の製造方法が提供される。この方法は、第1セグメントおよび第2セグメントを含む複合材料を供給する工程、および複合材料の第1および第2セグメントを接合して継ぎ目を形成する工程を含んでいる。継ぎ目は、光硬化性接着剤を含んでいる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
テープ無し継ぎ目を有する防水呼吸性衣服は、以下に詳細に記述される。典型的な実施形態において、防水衣服の継ぎ目は、可視光硬化性接着剤を含んでいる。1つの実施形態において、ステッチングまたは継ぎ目テープを組み込んでいないオーバーラップ継ぎ目を形成するために光硬化性接着剤が使用される。別の実施形態においては、継ぎ目を防水し、追加された強度を与えるために継ぎ目を一緒にステッチした後に接着剤が使用される。継ぎ目テープを排除すると、外から見えない継ぎ目が作られ、より軽い重さとより着心地の良い衣服が提供される。また、継ぎ目のテープを排除すると、防水衣服を製造する時間および費用を削減する継ぎ目シール設備の必要性が一掃される。
【0007】
図面に言及すると、図1は、衣服10の正面図を例示する。例示された実施形態は、他の用途もまた考えられるので、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。衣服10は、水蒸気透過性および耐水性でありながら、衣服(ベスト)を着ている人の少なくとも一部に相対的に動く空気が接触するのを防止するように構成される。衣服10は、衣服10を着ている人の前部胴体の上部の少なくとも一部をカバーするように適合させた防風前面パネル12を含んでいる。衣服10は、ベストの中央平面Mによって1組の等しい大きさの側面に分割される。ベスト10の前面パネル12の各側面は、上部前面パネル部14と下部前面パネル部16とを含んでいる。衣服10の各側面の上部前面パネル部14は、継ぎ目18によって下部前面パネル部16に付けられている。
【0008】
ベスト10の前面パネル12は、総丈のジッパー20を含んでいる。衣服10は、場合により、ジッパー20に隣接してウインドフラップ(図示せず)を含むことができる。衣服10は、1組のアームホール22を有している。各アームホール22は、着用者の腕を受け入れることができる。また、衣服10は、1組のポケット24を含んでいる。各ポケット24は、衣服10の前面パネル12のそれぞれの側面に位置していて、ウインドフラップを含んでいる。衣服10は、衣服10を着ている人の首の周りで広がるカラー26を含んでいる。衣服10に関するさらなる詳細は、本件譲受人に譲渡されている米国特許第6,018,819号において説明されている。
【0009】
図2は、典型的な実施形態において、少なくとも1つのテープ無し継ぎ目18を含んでいる衣服10の部分図である。衣服10は、多層布地積層体30から形成される。衣服10は、第1セグメント32および第2セグメント34を含む。継ぎ目18は、第1セグメント32の部分36と第2セグメント34の部分38のオーバーラップによって形成される。光硬化性接着剤40が、それぞれ第1および第2セグメント32および34の部分36および38の間に位置付けられる。接着剤40は、硬化時に継ぎ目18に防水バリアを形成する。
【0010】
また、図3に言及すると、多層布地積層体30は、多孔質の膜層である開口気孔膜層42およびこの開口気孔膜層42の第1面46に積層された第1布地層44を含む。場合により、第2布地層48が、膜層42の第2面50に積層される。別の実施形態において、積層体30は、第1および第2布地層44および48の間に積層された多重の層を含む。例えば、1つの実施形態においては、積層体30は、第1および第2布地層44および48の間に積層されている、例えば発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)から形成された開口気孔膜層および活性炭層を含む。別の典型的な実施形態においては、積層体30は、第1および第2布地層44および48の間に積層されている、例えばePTFEから形成された開口気孔膜層42および例えばポリウレタンから形成された開口気孔膜層を含む。
【0011】
典型的実施形態においては、膜層42は、発泡ポリテトラフルオロエチレン(ePTFE)として知られている開口気孔構造の膜を形成するためにポリテトラフルオロエチレン(PTFE)フィルムから作られている。別の実施形態においては、膜層42を作るために織物のポリテトラフルオロエチレンおよび非織物のポリテトラフルオロエチレンが使用される。防水性および呼吸性構造を与える好適な膜層42を形成するためにその他の材料を使用することができる。例えばその他の好適な材料は、次のものに限定されないが、ポリオレフィン、ポリアミド、ポリエステル、ポリスルホン、ポリエーテル、アクリルおよびメタクリル重合体、ポリスチレン、ポリウレタン、ポリプロピレン、ポリエチレンおよびCaCO充填ポリエチレンを含む。
【0012】
典型的な実施形態において、膜層42は、膜層42の通気性に妥協することなく、膜層42の表面上に例えば疎油性を高めるフッ素化ポリマー材料の処理または被覆を含む。フッ素化ポリマー材料の好適な例は、次のものに限定されないが、フッ素化ウレタンポリマー、パーフルオロアルキアクリル(メタクリル)コポリマー、フッ素化アクリレート(メタクリレート)、ブチルアクリレートまたは同等のn−アルキルアクリレート(メタクリレート)から構成されるランダムコポリマーを含む。フッ素化ポリマーは、Zonyl(登録商標)の商標名でデュポン社から市販されている。
【0013】
布地層44および48は、同じ材料または異なる材料から製造することができる。典型的な実施形態において、布地層44および/または布地層48は、ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン、熱可塑性ポリウレタン、エラストマー(例えば、HYTREL(登録商標))、ポリエーテルイミド、液晶ポリマー、ポリフェニルエーテル、ポリフェニレンスルフィド、綿およびアラミドの少なくとも1つから形成された繊維から構成された織物布地、不織布地、編物布地から形成される。1つの実施形態において、布地層44および/または48は、ユーザーの快適性を高めるために水分ウィッキングおよび殺菌特性を有する。別の実施形態において、布地層44および/または48は、長持ちする撥水性材料で処理される。別の実施形態において、布地層44および/または48は、布地の多層から形成される。
【0014】
光硬化性接着剤40は、アクリレート系であるか、またはウレタン系である。接着剤40を硬化するためには、可視光源、例えば高強度可視光源が使用される。好適な可視光源は、1つの実施形態において、約390nmから約410nmの波長、および別の実施形態において、約400nmから約410nmの波長を有する可視光を発する。光硬化性接着剤および可視光源は、知られており、例えばコネチカット州ロッキーヒルのヘンケル・ロックタイト社(Henkel Loctite Corporation)から市販されている。可視光波長は、接着剤40の中のアクリレートまたはウレタン樹脂の架橋を促進することによって接着剤40を硬化する。また、高強度の可視光波長の照準線内にはない、被着された接着剤40の領域も、高強度光に曝された接着剤40の部分の励起によって生じた接着剤40の高められた温度のために硬化する。
【0015】
図4は、別の典型的実施形態による衣服10の部分図である。衣服10は、多層布地積層体30から形成され、少なくとも1つのテープ無し継ぎ目60を含んでいる。衣服10は、第1セグメント62および第2セグメント64を含む。継ぎ目60は、第1セグメント62の部分66と第2セグメント64の部分68を一緒にステッチすることによって形成される。光硬化性接着剤40は、ステッチング72によって第1および第2セグメント62および64の部分66および68において形成された多数の開口部70の上に位置する。継ぎ目を防水性にする可視光による硬化時に光硬化性接着剤40が開口部70を密封する。別の実施形態において、光硬化性接着剤40は、部分66において形成された開口部70に適用されるのみである。別の実施形態において、光硬化性接着剤40は、部分68において形成された開口部70に適用されるのみである。
【0016】
例示のみの目的のために提示され、本発明の範囲を限定することを意図していない次の実施例に言及することによって、本発明は、さらに詳細に説明される。
【実施例1】
【0017】
防水呼吸性衣服を作るために使用される3層布地積層体が、この実施例において使用された。積層体(eVI38−3L)はミズーリ州、カンザスシティーのBHAグループ社(BHA Group,Inc.)から市販されている。eVI38−3L積層体における3つの層は、織物のポリアミド表面布地、疎油性に処理された微孔性ePTFE膜および編物のナイロン裏布地である。この布地積層体から、機械的なサンプルクリッカーを使用してこの材料の2つのサンプル片を切り取った。各片は、大きさが約8インチ×10インチであった。これらのサンプルの2つの長い縁を約10mmだけ重ね合わせ、この重ね合わされた縁の間に、光硬化性接着剤Loctite(登録商標)3105(コネチカット州、ロッキーヒルのヘンケル社から市販されている)の薄い均一な被覆を適用することによりこれらを一緒に結合することによって継ぎ目を形成した。この接着剤を携帯式高強度可視光源Loctite(登録商標)7700 携帯式LED光源(コネチカット州、ロッキーヒル、ヘンケル社(Henkel Corporation)から市販されている)を使用して硬化させた。光源を、布地から約1cmに保持し、約5cm/秒の速度で縦走させた。
【0018】
継ぎ目は、柔らかく、フレキシブルであり、耐久力があることがわかった。耐久性は、家庭用洗濯機の中でサンプルを40℃の温度で5サイクル(洗剤無し)の間洗濯することによって確かめられた。次いで、試験方法ASTMD−2262によって引っ張り強度に関してサンプル継ぎ目を試験した。試験の方向は、布地のオーバーラップ方向に垂直であった。引張り試験の5つの異なる反復では、継ぎ目の結合の破損の前に、布地積層体が破損することがわかった。
【0019】
また、3psigの水柱圧力が2分間加えられたときの漏れを確認することによって、重ね合わせられた継ぎ目を、防水性に関して試験した。これは、防水衣服の継ぎ目の防水性について確かめるために当業界において一般的に使用される試験方法である。試験の継ぎ目は、洗濯の前後でこの試験に合格した。
【実施例2】
【0020】
防水呼吸性衣服を作るために使用される3層布地積層体が、この実施例において使用された。積層体(eVI38−3L)はミズーリ州、カンザスシティーのBHAグループ社から市販されている。eVI38−3L積層体における3つの層は、織物のポリアミド表面布地、疎油性に処理された微孔性ePTFE膜および編物のナイロン裏布地である。この布地積層体から、機械的なサンプルクリッカーを使用してこの材料の2つのサンプル片を切り取った。各片は、大きさが約8インチ×10インチであった。
【0021】
突合せ継ぎ目を形成するためにこれらのサンプルの2つの長い縁をステッチすることによって、継ぎ目を形成した。次いで、光硬化性接着剤Loctite(登録商標)3105(コネチカット州、ロッキーヒルのヘンケル社から市販されている)の薄い均一な被覆を適用することによりステッチ穴に充填した。この接着剤を携帯式高強度可視光源Loctite(登録商標)7700 携帯式LED光源(コネチカット州、ロッキーヒルのヘンケル社から市販されている)を使用して硬化させた。光源を、布地から約1cmに保持し、約5cm/秒の速度で縦走させた。
【0022】
継ぎ目は、柔らかく、フレキシブルであり、耐久力があることがわかった。耐久性は、家庭用洗濯機の中でサンプル継ぎ目を40℃の温度で5サイクル(洗剤無し)の間洗濯することによって確かめられた。3psigの水柱圧力が2分間加えられたときの漏れを確認することによって、継ぎ目を防水性に関して試験した。この継ぎ目は、洗濯の前後でこの試験に合格した。
【0023】
前記の例は、光硬化性接着剤の使用により、衣服製造プロセスで熱密封性継ぎ目テープの必要性を排除するのが可能であることを示す。これは、より柔らかくて、より軽い重さの衣服をもたらす。さらに、得られた製品は、継ぎ目のテープの排除された重さおよび堅さのために、重さがより軽くて、より柔らかい。
【0024】
本発明が、様々な特定の実施形態の点から記載されてきたが、当業者は、本発明が特許請求の範囲の精神および範囲内で変更して実施され得ることを理解するはずである。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】は、衣服の前部略図である。
【図2】は、本発明の実施形態によるステッチの無いテープ無し、継ぎ目を有する図1に示された衣服の部分的な例示図である。
【図3】は、図1で示された衣服の複合材料の部分図である。
【図4】は、本発明の別の実施形態によるテープ無し継ぎ目を有する図1に示された衣服の部分図である。
【符号の説明】
【0026】
10 防水呼吸性衣服
12 防風前面パネル
14 上部前面パネル部
16 下部前面パネル部
18 継ぎ目
20 総丈のジッパー
22 アームホール
24 ポケット
26 カラー
30 多層布地積層体
32 第1セグメント
34 第2セグメント
36 部分
38 部分
40 被着された接着剤
42 開口気孔膜層
44 第1布地層
46 第1面
48 第2布地層
50 第2面
60 継ぎ目
62 第1セグメント
64 第2セグメント
66 部分
68 部分
70 開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
積層複合材料(30)の第1セグメント(32)、
前記積層複合材料の第2のセグメント(34)、および
衣服を形成するための前記積層複合材料の前記第1および前記第2セグメントを結合する継ぎ目(18)を含み、前記継ぎ目が光硬化性防水接着剤(40)を含む防水呼吸性衣服(10)。
【請求項2】
前記継ぎ目(18)が、オーバーラップ継ぎ目を含み、前記オーバーラップ継ぎ目が、前記第2セグメント(34)の部分(38)にオーバーラップしている前記第1セグメント(32)の部分(36)および前記第1セグメントおよび第2セグメントの前記オーバーラップ部分の間に位置する前記光硬化性接着剤(40)を含む請求項1に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項3】
前記第1セグメント(32)の部分(36)が、前記継ぎ目(18)を形成するステッチング(72)によって前記第2セグメント(34)の部分(38)に結合され、前記継ぎ目(18)は、前記ステッチングによって形成された、前記第1および第2セグメントにおける多数の穴(70)の上に位置する前記光硬化性接着剤(40)を含む請求項1に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項4】
前記継ぎ目(18)が、突合せ継ぎ目またはオーバーラップ継ぎ目を含む請求項3に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項5】
前記光硬化性接着剤(40)が、アクリレート系接着剤またはウレタン系接着剤である請求項1に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項6】
前記光硬化性接着剤(40)が、硬化前に液体またはフィルムを含む請求項5に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項7】
前記光硬化性接着剤(40)が、390nmから410nmの波長を有する可視光を発する可視光源への暴露によって硬化し得る請求項1に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項8】
前記積層複合材料(30)が、疎油性を有する多孔質膜層(42)に積層された少なくとも1つの布地層(44)を含む請求項1に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項9】
前記多孔質膜層(42)が、発泡ポリテトラフルオロエチレン、織物状ポリテトラフルオロエチレンおよび非織物状ポリテトラフルオロエチレンの中の少なくとも1つを含む請求項8に記載の防水呼吸性衣服(10)。
【請求項10】
多層布地材料の2片の間に形成され、光硬化性接着剤(40)を含む継ぎ目(18)。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−314927(P2007−314927A)
【公開日】平成19年12月6日(2007.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−136547(P2007−136547)
【出願日】平成19年5月23日(2007.5.23)
【出願人】(507168926)ビーエイチエイ・グループ・インコーポレーテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】BHA GROUP, INC.
【Fターム(参考)】