ディザマスクの生成方法、印刷装置およびそのプログラム
【課題】印刷画像の濃度ムラの発生を抑制する。
【解決手段】プリンター20に搭載するディザマスク61の生成においては、まず、複数の格納要素に格納する閾値を用意する。次に、用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき閾値の1つを着目閾値として選択する。次に、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、ドットの形成パターンから想定される印刷媒体上のドットの重なりの程度の指標としての評価値E1と、ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度の指標としての評価値E2を算出する。そして、評価値E1と評価値E2とを所定の重み付けで合算した総合評価値CEが最も小さくなる空白格納要素に着目閾値を格納する。
【解決手段】プリンター20に搭載するディザマスク61の生成においては、まず、複数の格納要素に格納する閾値を用意する。次に、用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき閾値の1つを着目閾値として選択する。次に、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、ドットの形成パターンから想定される印刷媒体上のドットの重なりの程度の指標としての評価値E1と、ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度の指標としての評価値E2を算出する。そして、評価値E1と評価値E2とを所定の重み付けで合算した総合評価値CEが最も小さくなる空白格納要素に着目閾値を格納する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の格納要素の各々に閾値が格納されたディザマスクの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル方式のインクジェット式プリンターでは、複数のノズルを備えた印刷ヘッドを印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、当該ノズルからインクを吐出して、印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う。かかるインクジェット式プリンターでは、印刷ヘッドのノズルから吐出されたインクの印刷媒体への着弾位置が目標位置からずれる位置ずれを起こすことがある。こうした位置ずれの要因としては、印刷ヘッドの動作精度の問題、紙送り精度の問題などが挙げられる。例えば、印刷ヘッドの往動と復動のインク吐出タイミングが厳密に一定していないと、印刷ヘッドの往動で形成されるドット群と、復動で形成されるドット群との相対的な位置関係が目標位置からずれることとなる。
【0003】
このような位置ずれが生じると、ドット配置の局所的な疎密の偏りを生じる。かかる疎密の偏りが大きくなれば、印刷画像の局所的な濃度ムラを招き、印刷画質が低下する。このような濃度ムラの現象は、印刷速度が高速化されるほど顕著となる。かかる濃度ムラの問題は、シリアル方式のインクジェット式プリンターに限らず、印刷ヘッドを移動させながら印字する種々のプリンター、例えば、ドットインパクト式プリンターにも共通する問題であった。また、複数の印刷ヘッドを印刷媒体の幅方向の全体に亘って配列し、隣接する印刷ヘッド同士の一部をオーバーラップさせたラインプリンターでも、印刷ヘッドの据付精度の問題から、オーバーラップ領域において位置ずれが生じ、同様の問題が生じ得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題の少なくとも一部を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、印刷画像の濃度ムラの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]複数の格納要素の各々に閾値が格納されたディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、画像の所定の階調値に対して、前記閾値が格納された格納要素の配置に基づいて、印刷媒体上に所定の形成パターンでドットを生じさせるハーフトーン処理に用いられ、
前記ドットの形成パターンから想定される前記印刷媒体上のドットの重なりの程度と、該ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度とを指標として、前記閾値の少なくとも一部が格納される前記格納要素の配置を決定する
ディザマスクの生成方法。
【0008】
かかるディザマスクの生成方法は、ディザマスクのドット形成パターンから想定されるドットの重なりの程度と、ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度とを指標として、閾値を格納する格納要素の配置を決定する。ドットの重なりの程度を指標とすることで、ドットの形成位置が目標位置から局所的にずれた場合に生じる、ドットの重なりの程度の変動を抑制するように、ディザマスクを生成することができる。ドットの重なりの程度の変動が抑制されると、上述のずれに伴うドットの疎密の偏りが抑制されるので、かかる方法により生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行えば、ドットの形成位置が目標位置からずれた場合でも、ドットの疎密の偏りが抑制された印刷画像を得ることができ、濃度ムラの発生を抑制することができる。しかも、ドットの分散の程度をも指標とすることで、ドットの分散性にも優れたディザマスクを生成することができる。かかる方法により生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行えば、濃度ムラの抑制に加えて、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1記載のディザマスクの生成方法であって、前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、前記算出した第1の評価値および第2の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第5の工程とを備え、前記第2ないし第5の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成するディザマスクの生成方法。
【0010】
かかるディザマスクの生成方法は、第1の評価値と第2の評価値とを用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。第1の評価値は、閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンから想定される、ドットの重なりの程度に関する評価値であり、第2の評価値は、閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて算出されるドットの分散の程度を示す評価値であるから、ドットの重なりの程度とドットの分散の程度とを評価して、ドットの重なりの程度の変動を抑制でき、かつ、ドットの良好な分散性も得られるディザマスクを好適に生成することができる。
【0011】
[適用例3]適用例1記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、前記算出した第1の評価値、第2の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第8の工程とを備え、前記第2ないし第4、第7および第8の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成するディザマスクの生成方法。
【0012】
かかるディザマスクの生成方法は、第1の評価値と第2の評価値とを用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定することから、適用例2と同様の効果を奏する。しかも、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分された複数の格納要素のグループごとに、当該グループに属する格納要素に対応するドットの形成パターンに基づいて算出する、ドットの分散の程度を示す第3の評価値も用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定するので、グループごとのドットの分散性を良好に確保したディザマスク61を生成することができる。かかるディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って、印刷を行えば、当該グループ間で位置ずれが生じた場合にも、画像全体としてドットの分散性の低下を抑制することができ、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0013】
[適用例4]適用例1記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、
前記算出した第1の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第9の工程とを備え、前記第2、第3、第6、第7および第9の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成するディザマスクの生成方法。
【0014】
かかるディザマスクの生成方法は、第1の評価値と第3の評価値とを用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。第1の評価値を用いることにより、適用例2と同様に、ドットの重なりの程度を評価して、ドットの重なりの程度の変動を抑制できるディザマスクを好適に生成することができる。また、第3の評価値を用いることにより、グループごとのドットの分散性を良好に確保したディザマスク61を生成することができる。かかるディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って、印刷を行えば、当該グループ間で位置ずれが生じた場合にも、画像全体としてドットの分散性の低下を抑制することができ、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0015】
[適用例5]前記第1の評価値は、前記ドットの形成パターンから想定される、実際に形成されるドットが前記印刷媒体を覆う割合を示すドット被覆率に基づいて算出される適用例2ないし適用例4のいずれか記載のディザマスクの生成方法。
【0016】
かかるディザマスクの生成方法は、着目閾値を格納する空白格納要素を決定するための所定の評価値を、実際に形成されるドットが印刷媒体を覆う割合に基づいて算出する。ドットが印刷媒体を覆う割合は、ドットの重なりの程度により変化するので、この方法によれば、ドットの重なりの程度を好適に評価することができる。また、ドットが印刷媒体を覆う割合は、容易に算出することができるので、効率的である。
【0017】
[適用例6]適用例2ないし適用例5のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、前記印刷媒体上にインクを吐出して前記ドットを形成する印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記第3の工程は、前記インクが前記印刷媒体上に着弾した際の、該インクの該印刷媒体上での広がりを想定し、該想定した広がりを前記ドットの形成パターンに反映させて、前記第1の評価値を算出するディザマスクの生成方法。
【0018】
かかるディザマスクの生成方法は、インクが印刷媒体上に着弾した際の、インクの印刷媒体上での広がりを反映して、第1の評価値を算出するので、より実際に近い状態でドットの重なりの程度を評価することができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0019】
[適用例7]前記インクの広がりを、該広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定する適用例6記載のディザマスクの生成方法。
かかるディザマスクの生成方法は、インクの広がりを、広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定するので、ドットの重なりの程度の評価精度を高めることができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0020】
[適用例8]適用例2ないし適用例7のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記第3の工程は、前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間で、所定の方向に所定量だけずれた状態を示す、ずれパターンを複数種類想定する工程と、前記複数種類のずれパターンごとに、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、前記複数種類のずれパターンごとに算出された評価値の、該複数種類のずれパターンの間における変動を定量化した評価値を、前記第1の評価値として算出する工程とを備えたディザマスクの生成方法。
【0021】
かかるディザマスクの生成方法は、複数種類のずれパターンを想定し、ずれパターンごとに、ドットの重なりの程度を示す評価値を算出し、当該評価値の変動を定量化した第1の評価値によって、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。したがって、ずれパターンとして想定したずれが生じた場合に、ドットの重なりの程度の変動を好適に抑制することができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、ずれパターンとして想定したずれが生じても、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0022】
[適用例9]前記複数種類のずれパターンには、前記ずれが生じていない状態を含む適用例8記載のディザマスクの生成方法。
かかるディザマスクの生成方法は、想定する複数種類のずれパターンに、ずれが生じていない状態を含むので、ずれが生じなかった場合と、ずれが生じた場合との間で、ドットの重なりの程度が大きく変動することを抑制することができる。その結果、ずれが生じる場合と、生じない場合とのいずれの場合においても、濃度ムラを抑制した印刷結果が得られるディザマスクを生成することができる。
【0023】
[適用例10]適用例6または適用例7記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記第3の工程は、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、印刷階調に応じた、前記ドットの重なりの程度を示す評価値の目標値を設定する工程と、前記ドットの重なりの程度を示す評価値と、前記設定した目標値との離隔の程度を示す評価値を前記第1の評価値として算出する工程とを備え、前記目標値は、前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間でいずれの方向にもずれていない状態における前記ドットの形成パターンから想定される前記ドットの重なりの程度よりも、該ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定されるディザマスクの生成方法。
【0024】
かかるディザマスクの生成方法は、所定の評価値の目標値を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置がずれていない状態におけるドットの形成パターンから想定されるドットの重なりの程度よりも、ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定する。そして、ドットの重なりの程度を示す評価値と、設定した目標値との離隔の程度を示す評価値を、所定の評価値として、着目閾値を格納する空白格納要素に着目閾値を格納する。したがって、ドットの重なりの程度が目標値に近くなるように、着目閾値を空白格納要素に格納することが可能である。通常、ディザマスクは、ずれが生じていない場合に、ドットの重なりが最も少なくなるように最適化されるため、ずれが生じた場合には、ドットの重なりの程度が大きく変動する。一方、本適用例の目標値は、ドットの重なりの程度が相対的に大きいので、ずれが生じた場合のドットの重なりの程度の変動を抑制するディザマスクを生成することができる。
【0025】
また、本発明は、ディザマスクの生成方法のほか、適用例11の印刷装置、適用例12のプログラム、ディザマスクの生成プログラム、これらのプログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
[適用例11]印刷装置であって、適用例1ないし適用例10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを記憶する手段と、前記記憶したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う手段とを備えた印刷装置。
[適用例12]適用例1ないし適用例10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う機能をコンピューターに実現させるためのプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例としてのプリンター20の概略構成図である。
【図2】プリンター20における印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】プリンター20におけるドット形成の仕組みを示す説明図である。
【図4】印刷画像を構成する画素グループを示す説明図である。
【図5】印刷画像を構成する画素グループを示す説明図である。
【図6】ディザマスク生成処理の手順を示す工程図である。
【図7】第1のディザマスク評価処理の手順を示す工程図である。
【図8】ディザマスク61の格納要素の一部に閾値が格納された状態等を示す説明図である。
【図9】被覆率Cの算定方法を示す説明図である。
【図10】被覆率Cの算定方法を示す説明図である。
【図11】被覆率Cの目標値を概念的に示す説明図である。
【図12】印刷時に位置ずれが生じた場合の被覆率Cの変動を概念的に示す説明図である。
【図13】第2のディザマスク評価処理の手順を示す工程図である。
【図14】ブルーノイズ特性及びグリーンノイズ特性の説明図である。
【図15】評価値E2の算定基礎とする感度特性VTFの一例を示す説明図である。
【図16】第2実施例としての第1のディザマスク評価処理の手順を示す工程図である。
【図17】想定するずれパターンの具体例を示す説明図である。
【図18】第2実施例としての被覆率Cの算定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
A.第1実施例:
本発明の第1実施例について説明する。
A−1.装置構成:
図1は、本発明の第1実施例としてのプリンター20の概略構成図である。プリンター20は、双方向印刷を行うシリアル式インクジェットプリンタであり、図示するように、プリンター20は、紙送りモータ74によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモータ70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された印刷ヘッド90を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモータ74,キャリッジモータ70,印刷ヘッド90および操作パネル99との信号のやり取りを司る制御ユニット30とから構成されている。
【0028】
キャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構は、プラテン75の軸と平行に架設され、キャリッジ80を摺動可能に保持する摺動軸73と、キャリッジモータ70との間に無端の駆動ベルト71を張設するプーリ72等から構成されている。
【0029】
キャリッジ80には、カラーインクとして、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエロインク(Y)、ブラックインク(K)、ライトシアンインク(Lc)、ライトマゼンタインク(Lm)をそれぞれ収容したカラーインク用のインクカートリッジ82〜87が搭載される。キャリッジ80の下部の印刷ヘッド90には、上述の各色のカラーインクに対応するノズル列が形成されている。キャリッジ80にこれらのインクカートリッジ82〜87を上方から装着すると、各カートリッジから印刷ヘッド90へのインクの供給が可能となる。
【0030】
制御ユニット30は、CPU40や、ROM51、RAM52、EEPROM60がバスで相互に接続されて構成されている。制御ユニット30は、ROM51やEEPROM60に記憶されたプログラムをRAM52に展開し、実行することにより、プリンター20の動作全般を制御するほか、入力部41、ハーフトーン処理部42、印刷部43としても機能する。これらの機能部の詳細については後述する。
【0031】
EEPROM60には、ディザマスク61が記憶されている。ディザマスク61は、組織的ディザ法による、ドット分散型のハーフトーン処理に用いるものであり、複数の閾値が、同数の格納要素にそれぞれ格納されて構成される。
【0032】
制御ユニット30には、メモリカードスロット98が接続されており、メモリカードスロット98に挿入したメモリカードMCから画像データORGを読み込んで入力することができる。本実施例においては、メモリカードMCから入力する画像データORGは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。
【0033】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンター20は、キャリッジモータ70を駆動することによって、印刷ヘッド90を印刷媒体Pに対して主走査方向に往復動させ、また、紙送りモータ74を駆動することによって、印刷媒体Pを副走査方向に移動させる。制御ユニット30は、キャリッジ80が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷媒体P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンター20は、印刷媒体P上にメモリカードMCから入力したカラー画像を印刷することが可能となっている。
【0034】
A−2.印刷処理:
プリンター20における印刷処理について説明する。図2は、プリンター20における印刷処理の流れを示すフローチャートである。ここでの印刷処理は、ユーザーが操作パネル99等を用いて、メモリカードMCに記憶された所定の画像の印刷指示操作を行うことで開始される。印刷処理を開始すると、CPU40は、まず、入力部41の処理として、メモリカードスロット98を介してメモリカードMCから印刷対象であるRGB形式の画像データORGを読み込んで入力する(ステップS110)。
【0035】
画像データORGを入力すると、CPU40は、EEPROM60に記憶されたルックアップテーブル(図示せず)を参照して、画像データORGについて、RGB形式をCMYKLcLm形式に色変換する(ステップS120)。
【0036】
色変換処理を行うと、CPU40は、ハーフトーン処理部42の処理として、画像データを各色のドットのON/OFFデータに変換するハーフトーン処理を行う(ステップS130)。この処理は、入力データと、ディザマスク61を構成する複数の閾値のうちの、入力データに対応する位置の格納要素に格納された閾値とを比較し、入力データが閾値よりも大きければ、ドットONと判断し、入力データが閾値未満であればドットOFFと判断するものである。ディザマスク61は、主走査方向および副走査方向に並ぶ各々の入力データに対して、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用される。なお、ハーフトーン処理は、ドットのON/OFFの2値化処理に限らず、大ドットおよび小ドットのON/OFFなど、多値化処理であってもよい。また、ステップS130に供する画像データは、解像度変換処理やスムージング処理などの画像処理が施されたものであってもよい。
【0037】
ハーフトーン処理を行うと、CPU40は、プリンター20のノズル配置や紙送り量などに合わせて、1回の主走査単位で印画するドットパターンデータに並び替えるインターレース処理を行う(ステップS140)。インターレース処理を行うと、CPU40は、印刷部43の処理として、印刷ヘッド90、キャリッジモータ70、モータ74等を駆動させて、印刷を実行する(ステップS150)。
【0038】
かかる印刷処理におけるドット形成の仕組みについて、図3を用いて以下に説明する。本実施例における印刷ヘッド90は、インクの色ごとに、10個のノズルNzを備えている。これらのノズルNzは、ノズル1個分の間隔を有して副走査方向に1列に並んでいる。
【0039】
印刷画像の生成は印刷ヘッド90が主走査と副走査とを行いつつ以下のように行われる。なお、以下の説明において、1つの主走査をパスともいい、各々の主走査を区別するために、バス番号を付して、パス1、パス2などともいう。また、副走査方向に沿ったドットの並びをラスターともいい、各々のラスターを区別するために、各ラスターにラスター番号を付して説明する。また、ラスターを構成する各ドットの形成位置を区別するために、各ラスターにおけるドット形成位置を、主走査方向に沿って付した画素位置番号で特定する。本実施例においては、印刷ヘッド90等の駆動制御の態様として、オーバーラップ数を「2」、ノズルピッチを「2」、紙送り量を「5」とし、印刷ヘッド90の往動時と復動時の両方でインクを吐出する双方向印刷を行うこととしている。オーバーラップ数とは、主走査方向に形成する1本のラスターをドットですべて埋めるために必要な主走査の回数のことをいう。また、ノズルピッチとは、副走査方向に隣り合うノズルの中心間のドット数であり、隣り合う2つのノズル間に存在するラスター(ドット)の数に値1を加えた数のことをいう。また、紙送り量とは、1回の主走査につき、印刷ヘッド90が副走査方向に搬送される量(ラスター数)のことをいう。
【0040】
図3に示す1回目のパスであるパス1では、ラスター番号が1、3、5、7、9、11、13、15、17、19の10本のラスターのうちで、画素位置番号が1、3、5の画素(ドット形成位置)にドットが形成される。パス1は、印刷ヘッド90の往復動のうちの往動である。図3に示す○印は、ドットの形成位置を示し、丸印の中に記載した数字は、パス番号である。
【0041】
パス1の主走査が終了すると、副走査方向に紙送り量Ls(ここでは5)だけ、印刷媒体を移動させる(かかる移動を、副走査送りともいう)。なお、図3では、図示の都合上、印刷ヘッド90が副走査方向に移動したように示している。副走査送りが終了すると、1回目のパスであるパス2を行う。パス2では、ラスター番号が6、8、10、12、14、16、18、20、22、24の10本のラスターのうちで、画素位置番号が1、3、5の画素にドットが形成される。パス2は、印刷ヘッド90の往復動のうちの復動である。なお、ラスター番号が22、24の2本のラスターは、図示を省略している。
【0042】
パス2が終了すると、前述と同様の副走査送りを行った後に、パス3を行う。パス3では、ラスター番号が11、13、15、17、19の主走査ラインを含む10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が2、4、6の画素にドットが形成される。パス3は、印刷ヘッド90の往復動のうちの往動である。
【0043】
パス3が終了すると、前述と同様の副走査送りが行われた後に、パス4を行う。パス4では、ラスター番号が16、18、20の3本の主走査ラインを含む10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が2、4、6の画素にドットが形成される。パス4は、印刷ヘッド90の往復動のうちの復動である。
【0044】
このようにして、印刷ヘッド90の往動と復動とを繰り返しながら、紙送りを行ってドットを形成すれば、ラスター番号が15以降の副走査位置に隙間なくドットを形成可能である。
【0045】
このようにして生成される印刷画像を一定の領域に着目して観察する。例えば、ラスター番号が15〜20で画素位置番号が1〜6の領域を着目領域とし、当該着目領域を、いずれのパスによってドットが形成されるかの観点から観察すれば、着目領域の印刷画像は、図4に示すように、パス番号1〜4に対応する第1〜第4の画素グループが相互に組み合わされることによって形成されている。かかるパスの違いに基づいて区分された画素群(ドット群)の各々を総称してパスグループともいう。
【0046】
同様に、着目領域を、往動と復動のうちのいずれによってドットが形成されるかの観点から観察すれば、着目領域の印刷画像は、図5に示すように、往動に対応する往動画素グループと、復動に対応する復動画素グループとにより形成されている。かかる往動と復動との違いに基づいて区分された画素群(ドット群)の各々を総称して往復動グループともいう。パスグループおよび往復動グループは、大きな視点で見れば、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるグループ(ドット群)である。
【0047】
このように画素グループの区分方法を示したのは、以下に説明するディザマスク61の生成方法で用いるためである。なお、上述の例では、オーバーラップ数を「2」、ノズルピッチを「2」としたが、パス番号の観点から区分した画素グループは、オーバーラップ数とノズルピッチとの積に相当する数のグループに区分することができる。また、オーバーラップ数、ノズルピッチ、紙送り量は、上述の例に限らず、適宜設定すればよい。
【0048】
A−3.ディザマスク61の生成方法:
上述したディザマスク61の生成方法について説明する。ディザマスク61は、そのサイズ(閾値の数)に対応する格納要素を有している。格納要素とは、ディザマスク61を構成する閾値を格納する要素である。これらの格納要素の全てに1つずつ閾値を格納することで、ディザマスク61は生成される。以下に説明する生成方法は、メインフレーム等のCPUによって、ディザマスク61を生成する処理である。なお、以下に説明する工程の一部または全部をユーザーが手計算等によって行っても差し支えない。
【0049】
ディザマスク61のサイズは、例えば、256画素×256画素、512画素×512画素などとされる場合が多いが、以下の説明においては、ディザマスク61のサイズは、説明を簡単にするために、縦方向サイズ、横方向サイズともに6画素、つまり合計36画素(=6×6)の画像データに適用するサイズとして説明する。なお、ディザマスク61のサイズは、パスグループおよび往復動グループの繰り返し単位の倍数とすることが望ましい。例えば、図4および図5に示した画素グループを前提とすれば、ディザマスク61の縦方向のサイズは、2M(Mは1以上の整数)画素、横方向のサイズは、2N(Nは1以上の整数)画素である。このようなサイズのディザマスク61を、画像データに対して、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用すれば、各々の画素グループとディザマスク61を構成する閾値との対応関係を一定に保つことができ、効率的に所望のハーフトーン処理を行えるからである。
【0050】
ディザマスク61の生成方法の手順を示す工程図を図6に示す。ディザマスク61の生成においては、図示するように、まず、ディザマスク61のサイズに応じた閾値を用意する(ステップS200)。本実施例においては、ディザマスク61が36個の格納要素を有するので、これと同数の0〜35の閾値を用意するものとした。
【0051】
閾値を用意すると、次に、着目閾値選択処理を行う(ステップS300)。着目閾値選択処理とは、用意した0〜35の閾値のうちの、未だ格納要素に格納されていない閾値のうちから1つの閾値を着目閾値として選択する処理である。本実施例においては、用意した閾値のうちの小さい閾値から順に、着目閾値を選択することとした。図8に示すように、ディザマスク61を構成する格納要素に、後述する工程によって値0〜4の閾値が既に格納要素に格納されている場合には、次にステップS300において選択される着目閾値は値5である。
【0052】
着目閾値を選択すると、次に、第1のディザマスク評価処理を行う(ステップS400)。第1のディザマスク評価処理とは、用意した閾値が未だ格納されていない格納要素(以下、空白格納要素ともいう)の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、閾値が既に格納された格納要素(以下、決定格納要素ともいう)の配置が表すドットの形成パターンに基づいて想定する、ドットの重なりの程度に関する評価値E1を、空白格納要素の各々について算出する処理である。この評価値E1の算出方法については後述するが、本実施例では、評価値E1は、ドットの重なりの程度の変動の指標であり、その値が小さいほど当該変動が小さくなり、濃度ムラの抑制の観点から優れているといえる。
【0053】
第1のディザマスク評価処理を行うと、次に、第2のディザマスク評価処理を行う(ステップS500)。第2のディザマスク評価処理とは、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、決定格納要素の配置が表すドットの形成パターンについての、ドットの分散の程度を示す評価値E2を、空白格納要素の各々について算出する処理である。この評価値E2の算出方法については後述するが、本実施例では、評価値E2は、ドットの分散の程度についての指標であり、その値が小さいほどドットの分散性が良好となり、印刷画像の粒状性の観点から優れているといえる。
【0054】
第2のディザマスク評価処理を行うと、次に、格納要素決定処理を行う(ステップS600)。ここでの格納要素決定処理とは、第1のディザマスク評価処理で算出した評価値E1と、第2のディザマスク評価処理で算出した評価値E2とに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する処理である。具体的には、候補格納要素(空白格納要素)ごとに算出した評価値E1および評価値E2を用いて、次式(1)により、候補格納要素ごとに総合評価値CEを算出する。そして、その中で最も小さい値の総合評価値CEに対応する候補格納要素を、着目閾値を格納すべき候補格納要素として決定し、当該格納要素に着目閾値を格納する。次式(1)において、α,βは、重み付け係数である。これらの重み付け係数は、良好な印刷画質が得られるように、一定値として、実験的に定められる。 CE=θ×E1+ι×E2・・・(1)
【0055】
格納要素決定処理を行うと、ステップS200で用意した閾値を、ディザマスク61を構成する全ての格納要素に格納するまで、上記ステップS300〜S600の工程を繰り返す(ステップS700)。こうして、全ての格納要素に閾値を格納すると(ステップS700:YES)、ディザマスク61は完成となり、ディザマスク生成処理は終了となる。
【0056】
上述した第1のディザマスク評価処理の詳細について説明する。第1のディザマスク評価処理では、まず、図7に示すように、決定格納要素のドットをONにする(ステップS410)。このようにドットをONにした様子をシングルハッチングで図8に示す。
【0057】
決定格納要素のドットをONにすると、次に、候補格納要素選択処理を行う(ステップS420)。候補格納要素選択処理とは、着目閾値を格納すべき格納要素の候補である候補格納要素を選択する処理である。空白格納要素の各々には、着目閾値を格納することが可能であるから、ここでは、空白格納要素のうちの1つを、候補格納要素として選択する。候補格納要素選択処理を行うと、次に、候補格納要素のドットをONにする(ステップS430)。図8では、空白格納要素の1つを候補格納要素として選択し、当該候補格納要素のドットをONにした様子を、クロスハッチングで示している。
【0058】
候補格納要素のドットをONにすると、次に、評価値算出処理を行う(ステップS440)。ここで算出する評価値は、ドットが印刷媒体を覆う割合を示すドット被覆率C(以下、単に被覆率Cともいう)である。この被覆率Cは、空白格納要素の1つに着目閾値を格納したとした場合の、決定格納要素の配置、つまり、ステップS430でドットをONにした格納要素の配置が表すドットの形成パターン(以下、ドット形成パターンともいう)に基づいて、実際に形成されるドットを想定し、当該想定したドットに基づいて算出する。なお、ハーフトーン処理においては、ディザマスク61の閾値が入力階調値よりも小さくなる画素でドットがONとなるので、全ての画素の階調値が同一のベタ画像を入力する場合において、当該階調値を徐々に大きくしていけば、ディザマスク61における閾値の配置に応じたドットの形成パターンが現れることとなる。本実施例では、このようなドット発生特性に基づくドット形状をドット形成パターンと呼んでいる。
【0059】
被覆率Cの算出については、図9を用いてさらに詳しく説明する。図9(A)は、ステップS430で求めた決定格納要素のドット形成パターンを示している。なお、図9(A)に示す格納要素には、以下の説明の便のため、1〜6の行番号および列番号を付している。被覆率Cの算出にあたっては、まず、実際のドット形状を想定し、定義する。ここで定義するドット形状は、インクが印刷媒体に着弾した際に、実際に形成されるドットの形状である。インクジェット式プリンターにおいては、印刷媒体に着弾したインクは、所定範囲に広がって定着する。このようなことから、インクの印刷媒体上での広がりを反映したドット形状を定義するのである。
【0060】
ドット形状の定義例を図9(B)に示す。図示する3画素×3画素のうちの中心の画素(Aと表示した画素)は、インクの着弾が予定されるドット形成位置を示している。また、中心の画素の上下左右に位置する画素(Bと表示した画素)は、中心の画素にインクが着弾した際に、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットの形成位置を示している。なお、プリンター20は、印刷ヘッド90を主走査方向に移動させながらインクを吐出するので、着弾したインクは、実際には、主走査方向に広がりやすいが、ここでは、説明を簡単にするために、図9(B)に示すように、上下左右に対称な形状を定義している。
【0061】
このようにドット形状を定義すると、次に、決定格納要素のドット形状パターンと定義したドット形状とに基づいて、被覆率算定用のドット形成パターンを求める。被覆率算定用のドット形成パターンの具体例を図9(C)に示す。このドット形成パターンは、図9(A)に示したドット形成パターンの各ドットを、図9(B)に示したドット形状に置き換えたものである。図中の行番号および列番号は、図9(A)に対応している。図9(C)において、Aと表示した画素は、インクの着弾が予定される画素に形成されるドット(図9(A)に示したドット形成パターン)を示している。B,Cと表示した画素は、インクの広がりによりドットが形成されると見なし得るドット(図9(B)においてBと表示した画素)を示している。B,Cと表示した画素のうち、Cと表示した画素は、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットが、当該画素位置において重畳していることを示している。一方、Bと表示した画素は、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットが、重畳することなく形成されることを示している。なお、ディザマスク61は、入力データに対して、主走査方向および副走査方向に対して繰り返し適用されるから、例えば、第1行第0列(図中にDと表示した画素)に形成されるはずのドットや、第0行第1列(図中にEと表示した画素)に形成されるはずのドットは、第1行第6列、第6行第1列にそれぞれ形成されるように扱う。
【0062】
被覆率算定用ドット形成パターンを求めると、当該パターンをもとに、被覆率Cを算出する。被覆率Cは、次式(2)により求めることができる。図9(C)の例では、被覆率Cは、77.8%(=28/36×100)となる。
C=ドット形成パターンとしてドットが形成される画素数/総画素数×100・・・(2)
【0063】
また、被覆率Cの別の算出方法について図10を用いて説明する。以下に説明する方法では、ドット形状の定義方法が上述の例と異なる。図10(A)は、前提となる決定格納要素のドット形成パターンであり、図9(A)に示したものと同一である。ドット形状の定義例を図10(B)に示す。この例では、実際のドット形状は、インクの広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で定義する。ここでは、主走査方向および副走査方向に、それぞれ2倍の解像度変換を行うことにより、1画素を4画素に変換した上で、ドット形状を定義している。図10(B)における各画素の背景の意味は、図9(B)と同様である。すなわち、図10(B)において、塗りつぶして示した画素は、図9(B)でAと表示した画素に該当し、ハッチングで示した画素は、図9(B)でBと表示した画素に該当する。このように解像度変換を行って、ドット形状の解像度を高めることにより、精度良く実際のドット形状を反映させることができる。また、図10(B)では、副走査方向に比べて、主走査方向に対して、より広範囲にインクが広がるように定義した例を示している。ドット形状の解像度を高めることで、このようなインクの広がりの特性をより忠実に反映しやすくなる。
【0064】
図10(B)に示したようにドット形状を定義した場合の、被覆率算定用のドット形成パターンを図10(C)に示す。被覆率算定用のドット形成パターンの求め方は、図10(C)について説明した方法と同様である。また、図10(C)における、各画素の背景の意味は、図9(C)と同様である。すなわち、図10(C)において、塗りつぶして示した画素は、図9(C)でAと表示した画素に該当し、シングルハッチングで示した画素は、図9(C)でBと表示した画素に該当し、クロスハッチングで示した画素は、図9(C)でCと表示した画素に該当する。かかる被覆率算定用ドット形成パターンをもとに、上式(2)により、被覆率Cを算出すれば、被覆率Cは、80.6%(=116/144×100)となる。
【0065】
ここで説明を図7の第1のディザマスク評価処理に戻す。上述したように被覆率Cを算出すると、次に、目標値設定処理を行う(ステップS450)。目標値設定処理とは、ハーフトーン処理の対象となる入力データの入力階調値ごとに、被覆率Cの目標値を設定する処理であり、本実施例では、ユーザーが設定した目標値をCPUが読み込むこととなる。
【0066】
かかる目標値を概念的に図11に示す。この例では、入力階調値を0〜255として、それぞれの階調値に対する被覆率Cの目標値を設定している。図示するラインL1は、従来のディザマスクにおける階調値ごとの被覆率を示している。ここでの従来のディザマスクとは、上述したパスグループの間および往復動グループの間で位置ずれがいずれの方向にも生じないことを前提に、所定の条件で最適化されたディザマスクをいう。所定の条件とは、例えば、印刷画像がブルーノイズ特性を有することである。一方、図示するラインL2は、設定する被覆率Cの目標値を示している。
【0067】
ラインL1の特性を有するディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行った場合に、実際に位置ずれが生じた場合の被覆率Cの変動について、概念的に図12に示す。図示するように、印刷される印刷画像の被覆率Cは、位置ずれが生じていない場合に最大となる。そして、例えば、主走査方向に位置ずれが生じると、被覆率Cは、その位置ずれ量に応じて減少していく。この位置ずれ量が1画素分に達すると、被覆率Cは最小値となり、その後、さらに位置ずれ量が増加すると、被覆率Cは増加に転じる。そして、ずれ量が2画素分に達すると、被覆率Cは減少に転じ、ずれ量が3画素分に達すると、被覆率Cは再度、増加に転じる。
【0068】
これは、例えば、図4に示した第1の画素グループと、第3の画素グループとの位置関係で見れば、第1の画素グループと第3の画素グループとが、主走査方向にずれると、互いの画素グループは重畳し始め、1画素分ずれた時点で完全に重畳し、さらに、ずれ量が大きくなると、重畳する部分が減少していき、2画素ずれた時点で、重畳する部分がなくなることに起因している。
【0069】
実際には、被覆率の変動の特性は、形成されるドットの配置によって様々であるが、概念的には、被覆率Cは、このように、ずれ量に応じて一定の周期で減少と増加とを繰り返して変動することとなる。そして、1周期における増加・減少量は、次第に収束していく。このような被覆率Cの変動の特性は、パスグループ間における位置ずれに限らず、往復動グループ間の位置ずれに対しても現れる。また、主走査方向への位置ずれに限らず、副走査方向への位置ずれ、または、主走査方向と副走査方向とに複合した位置ずれにおいても現れる。
【0070】
上述した被覆率Cの目標値は、図11のラインL2として示すように、ラインL1よりも小さい値で設定する。つまり、ラインL2は、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置が、当該区分されたドット群の間で、いずれの方向にもずれていない状態におけるドットの形成パターンよりも、ドットの重なりが大きい範囲で設定する。このような目標値を設定できるのは、上述したように、インクの広がりを定義することにより、位置ずれが生じていない場合にも、隣り合うドット同士が重畳する部分が生じえるので、ドット配置(閾値配置)を変更することより、重畳の程度が変化するからである。なお、実際のプリンターにおいては、位置ずれが生じないことを保証し得ないので、ラインL1を構成する被覆率Cの値は、シミュレーションによって求められる。
【0071】
本実施例においては、被覆率Cの目標値として、図12に示した被覆率Cの変動特性において、1周期における増加・減少量が概ね収束した段階での、当該周期における最大値を用いた。このように、収束段階の値で目標値を設定すれば、パスグループや往復動グループにおけるグループ間のドットの相関が小さくなり、後述するドットの分散の程度よりも、ドットの重なりの程度を重視したディザマスク61の生成を行うことができる。
【0072】
こうして被覆率Cの目標値を設定すると、次に、ステップS440で算出した被覆率Cと、ステップS450で設定した被覆率Cの目標値とに基づいて、次式(3)により、ドットの重なりの程度に関する評価値E1を算出する(ステップS460)。
E1=|C算出値−C目標値|・・・(3)
【0073】
この工程で目標値となるのは、被覆率Cの目標値は階調値ごとに定められているのであるから、ラインL2を構成する各々の被覆率Cの値のうち、着目閾値から求められる階調値に対応する被覆率Cである。例えば、着目閾値が値5である場合、36個の閾値(値0〜35)のうちの6個の閾値(値0〜5)が格納要素に既に格納されたものとして、被覆率Cが算出されるのであるから、着目閾値から求められる階調値は、36階調のうちの第6階調である。CPUは、上記ステップS450において、かかる階調値に対応する目標値を読み込み、上記ステップS460を行うのである。ディザマスクを構成する格納要素の数と、ラインL2の階調数とを合わせておけば、目標値の設定が容易である。ただし、ディザマスクを構成する格納要素の数と、ラインL2の階調数とが一致しない場合にも、補間により目標値を定めることができる。もとより、ラインL2を構成する被覆率Cは、入力されるすべての階調範囲に対して設定する必要はなく、一部の階調値について被覆率Cを定めておき、設定のない階調値に対応する被覆率Cは、補間により求めてもよい。
【0074】
こうして評価値E1を算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値E1を算出するまで、上述したステップS420〜S460の処理を繰り返す(ステップS470)。こうして、全ての候補格納要素について評価値E1を算出すると(ステップS470:YES)、第1のディザマスク評価処理は終了となる。なお、算出方法からも明らかなように、評価値E1は、算出した被覆率Cがどれほど目標値に近いかを示す指標値である。その意味で、評価値E1は、値が小さいほど、ドットの重なりの程度の観点で優れているといえる。なお、評価値E1は、換言すれば、算出した被覆率Cと目標値との離隔の程度を表す評価値ということもできる。したがって、例えば、式(3)に代えて、算出した被覆率Cと目標値との比と、値1(100%)との差分の絶対値などとすることもできる。
【0075】
次に、第2のディザマスク評価処理について、図13を用いて説明する。第2のディザマスク評価処理では、まず、グループ化処理を行う(ステップS510)。グループ化処理とは、ディザマスク61を構成する複数の格納要素を、当該複数の格納要素に格納された閾値がハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、複数のグループに区分する処理である。つまり、上述したパスグループや往復動グループに基づいて、格納要素のグループを設定する処理である。本実施例においては、パスグループと往復動グループとを設定するものとした。つまり、4つのグループである第1〜第4の画素グループ、2つのグループである往動画素グループと復動画素グループ、合計6つのグループを設定するものとした。ただし、設定するグループは、パスグループと往復動グループとのうちのいずれか一方であってもよい。なお、本実施例においては、ディザマスク61を構成する格納要素の数と、図4,図5に示した着目領域を構成する画素数とは同数であるから、設定した各グループは、図4に示した第1〜第4の画素グループ、図5に示した往動画素グループ、復動画素グループにそれぞれ一致する。
【0076】
こうして、グループ化処理を行うと、次に、決定格納要素のドットをONにし(ステップS520)、候補格納要素選択処理を行い(ステップS530)、候補格納要素のドットをONにする(ステップS540)。ステップS520〜S540の処理は、第1のディザマスク評価処理におけるステップS410〜S430(図7参照)の処理と同様であり、詳しい説明は省略する。
【0077】
候補格納要素のドットをONにすると、次に、グループ選択処理を行う(ステップS550)。グループ選択処理とは、上記ステップS510で設定したp個(pは2以上の整数、ここではp=6)のグループG1〜Gpと、ディザマスク61を構成する全ての格納要素を含むグループであるグループGp+1とのうちから、1つのグループGq(qは1以上p+1以下の整数)を選択する処理である。
【0078】
グループGqを選択すると、次に、グループGqに属する格納要素に対応するドット形成パターンに基づいて、ドットの分散の程度を示す評価値E2q、つまり、ドットがどの程度満遍なく分散された状態で形成されるかを示す評価値を算出する(ステップS560)。ドットを満遍なく分散された状態で形成するためには、図14に示すブルーノイズ特性やグリーンノイズ特性を有するディザマスクを生成すればよいことが知られている。本実施例においては、このような特性のディザマスクを生成するために、ドットの分散性の程度を示す評価値として、粒状性指数を用いることとした。
【0079】
粒状性指数は、公知の技術であるため(例えば、特開2007−15359号公報)、詳しい説明は省略するが、画像をフーリエ変換してパワースペクトルFSを求め、得られたパワースペクトルFSを、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性VTF(Visual Transfer Function)に相当する重みを付けて、各空間周波数で積分して求められる指標である。図16に、VTFの一例を示す。こうしたVTFを与える実験式には、種々の式が提案されているが、次式(4)に代表的な実験式を示す。変数Lは観察距離を表しており、変数uは空間周波数を表している。粒状性指数は、かかるVTFに基づいて、次式(5)に示す計算式によって算出することができる。係数Kは、得られた値を人間の感覚と合わせるための係数である。なお、算出方法からも明らかなように、粒状性指数は、人間がドットを目立つと感じるか否かを示す指標であるとも言える。かかる粒状性指数は、その値が小さいほど印刷画質においてドットが視認されにくく、その点において優れているといえる。
【0080】
【数1】
【0081】
【数2】
【0082】
評価値E2qを算出すると、全てのグループG1〜Gp+1(ここではG1〜G7)について評価値E2qを算出するまで、上記ステップS550,S560の工程を繰り返す(ステップS570)。こうして、全てのグループG1〜G7について評価値E2qを算出すると(ステップS570:YES)、算出した評価値E21〜E27に基づいて、次式(6)により、評価値E2を算出する(ステップS580)。式(6)においてγ〜ιは重み付け係数である。これらの重み付け係数は、良好な印刷画質が得られるように、一定値として、実験的に定められる。つまり、評価値E2とは、ディザマスク61の決定格納要素の全体が表すドット形成パターンと、第1〜第4の画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンと、往復動画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンとについて、ドットの分散の程度を所定の重み付けで総合評価した評価値である。
E2=γ×E21+δ×E22+ε×E23+ζ×E24+η×E25+θ×E26+ι×E27・・・(6)
【0083】
評価値E2を算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値E2を算出するまで、上記ステップS530〜S580の工程を繰り返す(ステップS590)。こうして、全ての候補格納要素について評価値E2を算出すると(ステップS590:YES)、第2のディザマスク評価処理は終了となる。なお、上記ステップS600で式(1)により算出した総合評価値CEは、評価値E1と、評価値E2を算出するもととなる評価値E21〜E27とから、1回の演算により直接的に算出してもよい。
【0084】
A−4.効果:
上述したディザマスク61の生成方法は、決定格納要素の配置が表すドット形成パターンから想定されるドットの重なりの程度を指標として、閾値を格納する格納要素の配置を決定する。したがって、位置ずれにより生じる、ドットの重なりの程度の変動が抑制されるように、ディザマスク61を生成することができる。ドットの重なりの程度の変動が抑制されると、上述のずれに伴うドットの疎密の偏りが抑制されるので、かかる方法により生成したディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行えば、位置ずれが生じた場合でも、ドットの疎密の偏りが抑制された印刷画像を得ることができ、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0085】
また、ディザマスク61の生成方法は、用意した閾値の1つを着目閾値として選択し、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、決定格納要素の配置が表すドットの形成パターンから想定される、ドットの重なりの程度に関する所定の評価値を用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。したがって、ドットの重なりの程度を好適に評価して、ドットの重なりの程度の変動を抑制したディザマスク61を生成することができる。また、所定の評価値は、実際に形成されるドットが印刷媒体を覆う割合である被覆率Cに基づいて算出する。ドットが印刷媒体を覆う割合は、ドットの重なりの程度により変化するので、この方法によれば、ドットの重なりの程度を好適に評価することができる。また、被覆率Cは、容易に算出することができるので、効率的である。
【0086】
また、ディザマスク61の生成方法は、インクが印刷媒体上に着弾した際の、インクの印刷媒体上での広がりを反映して、被覆率Cを算出するので、より実際に近い状態で被覆率Cを算出して、ドットの重なりの程度を評価することができる。しかも、インクの広がりを、広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定するので、ドットの重なりの程度の評価精度を高めることができる。かかる方法で生成したディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0087】
また、ディザマスク61の生成方法は、被覆率Cの目標値を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置がずれていない状態におけるドットの形成パターンから想定されるドットの重なりの程度よりも、ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定する。そして、被覆率Cと、設定した目標値との離隔の程度を示す評価値E1が最も小さくなる、つまり、被覆率Cが目標値に最も近くなる空白格納要素に着目閾値を格納する。通常、ディザマスクは、ずれが生じていない場合に、被覆率Cが最も小さくなるように最適化されるため、ずれが生じた場合には、被覆率Cが大きく変動する。一方、本実施例の目標値は、被覆率Cが相対的に小さいので、ずれが生じた場合の被覆率Cの変動、つまり、ドットの重なりの程度の変動を抑制するディザマスク61を生成することができる。
【0088】
また、ディザマスク61の生成方法は、ディザマスク61のドット形成パターンから想定されるドットの重なりの程度に加えて、ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度をも指標として、閾値を格納する格納要素の配置を決定する。したがって、ドットの分散性にも優れたディザマスクを生成することができる。かかる方法により生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行えば、濃度ムラの抑制に加えて、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0089】
また、ディザマスク61の生成方法は、決定格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて算出されるドットの分散の程度を示す評価値(上述の例では評価値E27)を用いて、候補格納要素を評価するので、位置ずれが生じない場合にドットの分散性に優れたディザマスクを生成することができる。
【0090】
しかも、ディザマスク61の生成方法は、格納要素を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、各々のパスグループまたは往復動グループに区分する。そして、当該グループに属する決定格納要素に対応するドットの形成パターンに基づいて算出する、ドットの分散の程度を示す評価値(上述の例では、評価値E21〜E26)も用いて、候補格納要素を評価するので、グループごとのドットの分散性を良好に確保したディザマスク61を生成することができる。かかるディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って、印刷を行えば、当該グループ間で位置ずれが生じた場合にも、グループごとのドットの分散性は確保されたままであるから、画像全体としてドットの分散性の低下を抑制することができ、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。このように、本実施例のディザマスク61は、濃度ムラの抑制の効果と、粒状性の悪化の抑制の効果とを両立させることができる。
【0091】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。第2実施例では、プリンター20の構成は第1実施例と同様であり、ディザマスク61の生成方法が第1実施例と異なる。具体的には、第1実施例として図6に示したディザマスク生成処理のうちの、第1のディザマスク評価処理(ステップS400)の内容が第1実施例と異なる。以下、第1実施例と異なる点についてのみ説明する。
【0092】
第2実施例としての第1のディザマスク評価処理の流れを図16に示す。この処理では、図示するように、まず、グループ設定処理を行う(ステップS810)。グループ設定処理とは、ディザマスク61を構成する格納要素の各々を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるグループ(ドット群)、つまり、第1実施例で示したパスグループや往復動グループによって、グループ化する処理である。グループ設定処理では、パスグループ、往復動グループのいずれか一方と対応付けて、グループ化を行う。本実施例では、往復動グループと対応付けることとした。なお、本実施例においては、ディザマスク61を構成する格納要素の数と、図5に示した着目領域を構成する画素数とは同数であるから、各々の格納要素をグループ化した結果は、図5に示した往動画素グループと復動画素グループとの関係と一致する。
【0093】
このようにグループ設定処理を行うと、次に、ずれパターン設定処理を行う(ステップS820)。ずれパターン設定処理とは、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置が、当該区分されたドット群の間で、所定の方向に所定量だけずれた状態を示す、ずれパターンを複数種類想定し、設定する処理である。具体的には、実際に印刷を行った際に、ステップS810でグループ化したグループ間(ここでは、往動画素グループと復動画素グループとの間)で生じる位置ずれの方向およびずれ量を複数種類想定する。なお、本実施例のステップS820は、ユーザーが設定したずれパターンをCPUが読み込む処理である。
【0094】
本実施例において想定するずれパターンを図17に示す。この例では、図示するように、往動画素グループに対する復動画素グループの位置ずれを、主走査方向に沿って0.5画素間隔で−2〜2画素の間で設定し、また、副走査方向に沿って0.5画素間隔で−2〜2画素の間で設定し、これらの位置ずれの組み合わせの中から、21個のずれパターンP1〜P21を想定している。本実施例においては、想定するずれパターンの中には、位置ずれが生じていないパターン(図中のパターンP5)を含んでいる。ただし、位置ずれが生じていないパターンを含むことは必須ではない。かかるずれパターンは、上述の例に限らず、プリンター20の特性を考慮して設定すればよい。例えば、プリンター20で印刷した印刷画像を分析して、実際に生じやすい位置ずれの方向やずれ量を、ずれパターンとして設定すればよい。
【0095】
こうして、ずれパターン設定処理を行うと、次に、決定格納要素のドットをONにし(ステップS830)、候補格納要素選択処理を行い(ステップS840)、候補格納要素のドットをONにする(ステップS850)。ステップS830〜S850の処理は、第1実施例におけるステップS410〜S430(図7参照)の処理と同様であり、詳しい説明は省略する。
【0096】
候補格納要素のドットをONにすると、次に、ずれパターン選択処理を行う(ステップS860)。ずれパターン選択処理とは、ステップS820で設定したn個(nは2以上の整数、ここではn=21)のずれパターンのうちから、1つのずれパターンPj(jは1以上n以下の整数)を選択する処理である。
【0097】
パターンPjを選択すると、次に、パターンPjの位置ずれを前提とした被覆率Cjを算出する(ステップS870)。被覆率Cjの算出方法の具体例について、図18を用いて詳しく説明する。この例は、図17に示したずれパターンP7(主走査方向に1.0画素、副走査方向に0.0画素のずれ)を前提とした被覆率C7を算出する例である。
【0098】
被覆率Cjの算出においては、まず、決定格納要素のドット形成パターンの区分を行う。図18(A)は、ステップS850で求めた決定格納要素のドット形成パターンを示している。図示するように、決定格納要素のドット形成パターンは、上記ステップS810で行われたグループ化に基づいて、往動画素グループに対応する格納要素により構成される往動ドット形成パターンと、復動画素グループに対応する格納要素により構成される復動ドット形成パターンとに区分することができる。
【0099】
決定格納要素のドット形成パターンを区分すると、次に、ドット形状を定義する。図18(B)は、第1実施例の図10(B)と同様に定義したドット形状を示している。このようにドット形状を定義すると、次に、決定格納要素のドット形状パターンと定義したドット形状とに基づいて、被覆率算定用のドット形成パターンを求める。被覆率C7の算定用のドット形成パターンを図18(C)に示す。このドット形成パターンは、図18(A)に示したドット形成パターンの各ドットを、図18(B)に示したドット形状に置き換え、さらに、復動ドット形成パターンを、ずれパターンP7の位置ずれに対応させたもの、つまり、主走査方向に1.0画素分ずらしたものである。図18(C)における各画素の表示方法は、図10(c)と同様である。ただし、●印で表示した画素は、図18(A)に示したドット形成パターンに対応するドットと、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットとが重畳していることを示している。
【0100】
こうして、被覆率算定用のドット形成パターンを求めると、第1実施例と同様に、式(2)を用いて、被覆率C7を算出する。その結果、被覆率C7は、72.9%(=105/144×100)となる。なお、上述した例では、第1実施例で説明した手法により、ドット形状の解像度を高めてドット形状を定義している。こうすれば、第1実施例と同様に、インクの広がりの特性をより忠実に反映できる効果が得られるほか、図17に示したように、位置ずれ量を小数点以下の精度で設定することが可能となる。その結果、位置ずれ量の想定を、実際に生じる位置ずれに即して、精度良く行うことができる。なお、上述した被覆率Cjの算出においては、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cjを求めたが、第2実施例においては、インクの広がりを反映させずに、被覆率Cjを算出してもよい。
【0101】
ここで説明を図16の第1のディザマスク評価処理に戻す。被覆率Cjを算出すると、次に、ステップS820で設定した全てのずれパターンP1〜Pnについて被覆率Cjを算出するまで、上記ステップS860,S870の工程を繰り返す(ステップS880)。こうして、全てのずれパターンP1〜Pnについて被覆率Cjを算出すると(ステップS880:YES)、算出した被覆率C1〜Cnに基づいて、評価値E1を算出する(ステップS890)。
【0102】
この評価値E1は、第1実施例と同様に、ドットの重なりの程度に関する評価値であるが、ここでは、第1実施例と算出方法が異なる。具体的には、評価値E1は、被覆率C1〜Cnの、ずれパターンP1〜Pnの間における変動を定量化した評価値である。本実施例においては、位置ずれが生じていない状態を示す、ずれパターンP5を前提として算出される被覆率C5と、それ以外の被覆率C1〜C4,C6〜Cnとの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値のうちの最大値を評価値E1として採用するものとした。
【0103】
評価値E1を算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値E1を算出するまで、上記ステップS840〜S890の工程を繰り返す(ステップS900)。こうして、全ての候補格納要素について評価値E1を算出すると(ステップS900:YES)、第1のディザマスク評価処理は終了となる。なお、上記ステップS810では、往復動グループと対応付けて、グループ設定処理を行ったが、パスグループと対応付けてグループ設定処理を行う場合には、ステップS820において、第1〜第4の画素グループの全ての組み合わせについて、ずれパターンを想定してもよいし、一部の組み合わせについてのみ、ずれパターンを想定してもよい。パスグループと対応付けてグループ設定処理を行う場合には、位置ずれを想定する画素グループの組み合わせの数が多数になるので、一部の組み合わせについてのみ、ずれパターンを想定し、被覆率Cjを求めれば、処理を高速化することができる。
【0104】
以上の説明からも明らかなように、本実施例では、位置ずれが生じない場合の被覆率と、想定した位置ずれが生じた場合の被覆率との間での変動が小さくなるように、着目閾値を格納する格納要素を決定するために、評価値E1を設定しているのである。こうすれば、位置ずれが生じない場合を基準として、位置ずれによるドットの疎密の偏りが当該基準から小さくなるように、着目閾値を格納する格納要素を決定することができる。
【0105】
かかるディザマスク61の生成方法は、複数種類のずれパターンを想定し、ずれパターンごとに、ドットの重なりの程度を示す被覆率Cを算出し、被覆率Cの変動を定量化した評価値によって、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。したがって、ずれパターンとして想定したずれが生じた場合に、ドットの重なりの程度の変動を好適に抑制することができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、ずれパターンとして想定したずれが生じても、濃度ムラの発生を抑制することができる。また、想定する複数種類のずれパターンに、ずれが生じていない状態を含むので、ずれが生じなかった場合と、ずれが生じた場合との間で、ドットの重なりの程度が大きく変動することを抑制することができる。その結果、ずれが生じる場合と、生じない場合とのいずれの場合においても、濃度ムラを抑制した印刷結果が得られるディザマスク61を生成することができる。なお、第2実施例としてのディザマスク61の生成方法は、第1実施例で説明した評価値E2に基づく評価手法も含んでいるので、印刷画質の粒状性について、第1実施例と同様の効果を奏することは勿論である。
【0106】
C.変形例:
上述の実施形態の変形例について説明する。
C−1.変形例1:
上述の実施形態においては、ドットの重なりの程度に関する指標としての評価値E1と、ドットの分散の程度に関する指標としての評価値E2とに基づいて算出される総合評価値CEによって、着目閾値を格納する空白格納要素を決定したが、かかる決定工程において、評価値E2は必ずしも考慮しなくてもよい。つまり、第2のディザマスク評価処理(ステップS500)を省略して、評価値E1のみに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定してもよい。こうしても、上述した濃度ムラの抑制効果を奏する。しかも、ドットの重なりの程度のみを指標としてディザマスク61を生成することから、上述した実施形態よりも、ドットの重なりの変動を抑制する効果を高めることができる。また、評価値E2の算出を省略すると、ディザマスク61の生成に係る演算速度を速くすることができる。
【0107】
なお、評価値E1のみに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する場合、格納要素決定処理においては、評価値E1が最も小さい候補格納要素が複数存在することも考えられるが、その場合には、これら複数の候補格納要素の中から、ランダムに1つを選択してもよいし、評価値E2を算出して、ドットの分散性に優れたものを選択してもよい。あるいは、所定の設定に基づいて選択してもよい。こうした設定としては、例えば、候補格納要素を右上から主走査方向に沿ってスキャンしていき、最初の候補格納要素を選択すること、往動と復動とのうちの往動に対応する候補格納要素を優先することなどとすることができる。あるいは、所定の法則に基づいて選択してもよい。こうした法則としては、例えば、第1〜第4の画素グループに対応する候補格納要素を順番に選択することなどとすることができる。
【0108】
C−2.変形例2:
上述の実施形態では、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cを算出する際、ドットのON/OFFのみに着目して、式(2)により被覆率を算出したが、各画素におけるドットの重なりの数を反映した被覆率を算出してもよい。例えば、上述した式(2)により被覆率Cを算出するために、ドットが形成される画素数を計上するにあたり、ドットの重なりのない画素(1つのドットのみが形成される画素、例えば、図9(C)では、A,Bと表示した画素)は、調整係数0.6を乗じた画素数、2つのドットが重なって形成される画素(例えば、図9(C)では、Cと表示した画素)は、調整係数0.8を乗じた画素数、3つ以上のドットが重なって形成される画素(図9(C)では、該当無し)は、調整係数1.0を乗じた画素数で計上してもよい。このように、ドットの重なりが増えるほど、重み付けを大きくしているのは、1つの画素に形成されるドットが多く重なるほど、当該画素における印刷濃度が高くなるからである。要するに、各画素の濃度差を反映した被覆率を算出するのである。印刷画像の濃度ムラは、局所的なドットの疎密の偏りに限らず、ドットの濃度の偏りによっても生じ得るので、このようにして、位置ずれに伴う濃度変動も抑制すれば、被覆率Cに基づいた濃度ムラの抑制効果を高めることができる。以上の説明からも明らかなように、ドットの重なりの程度に関する評価値は、単純なドットのON/OFFの割合に限らず、ドットの重なりに応じて算出される所定範囲の平均階調値とすることもできる。例えば、1つのドットのみが形成される画素の階調値を値128,2つのドットが重畳して形成される画素の階調値を値200として、平均階調値を算出してもよい。
【0109】
また、同様の観点から、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cを算出する際、インクの着弾が予定される画素(例えば、図9(C)では、Aと表示した画素)は、インクの広がりによりドットが形成されると見なし得る画素(例えば、図9(C)では、B,Cと表示した画素)よりも、相対的に重み付けを大きくして、ドットが形成される画素数を計上してもよい。インクが着弾したドット形成位置においては、インクの広がりによりドットが形成されたドット形成位置よりも、インク濃度が高くなるためである。
【0110】
C−3.変形例3:
上述の実施形態においては、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cを算出する際、全てのドット形状を同一の形状で定義したが、形成されるドットの特性に応じて、異なる形状でドット形状を定義してもよい。例えば、ドットを複数の大きさ、例えば、大ドット、中ドット、小ドットで打ち分ける場合には、それぞれのドットの大きさに応じて、インクの着弾が予定される画素や、インクの広がりによりドットが形成される画素の大きさを変化させてもよい。こうすれば、ドットの重なりの程度の評価をより高精度に行うことができ、その結果、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0111】
あるいは、印刷ヘッド90の往動で形成されるドットの形状と、復動で形成されるドットの形状とを異なる形状として定義してもよい。印刷ヘッド90から吐出され、印刷媒体に着弾するインクは、印刷ヘッド90の進む方向に速度成分を持つので、印刷ヘッド90の進む方向に対して、より広がりやすい特性を有するからである。こうしても、ドットの重なりの程度の評価をより高精度に行うことができ、その結果、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0112】
C−4.変形例4:
上述の実施形態では、全ての階調において、つまり、ディザマスク61を構成する全ての閾値について、ドットの重なりの程度やドットの分散の程度を評価して、閾値を格納する格納要素を決定する態様について示したが、かかる格納要素の決定手法は、一部の階調範囲のみに適用してもよい。例えば、濃度ムラが顕著になりやすい高階調(高濃度)領域についてのみ、第1実施例、第2実施例または変形例1の手法により、閾値を格納する格納要素を決定してもよい。あるいは、階調によって、上述した手法を切り替えてもよい。例えば、中間階調(中濃度)領域では、位置ずれに伴う粒状性の悪化が生じやすいので、第1実施例や第2実施例に示した手法を用い、高階調(高濃度)領域では、位置ずれに伴う粒状性の悪化が生じにくいので、変形例1に示した手法を用いてもよい。
【0113】
C−5.変形例5:
上述の実施形態においては、評価値E2として、ディザマスク61の決定格納要素の全体が表すドット形成パターンと、第1〜第4の画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンと、往復動画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンとについて、ドットの分散の程度を所定の重み付けで総合評価した評価値を用いたが、必ずしも、全体が表すドット形成パターンと、第1〜第4の画素グループに対応するドット形成パターンと、往復動画素グループに対応するドット形成パターンとの3つのドット形成パターンを対象とする必要はなく、これらのうちの少なくとも1つを対象とするものであってもよい。
【0114】
C−6.変形例6:
上述の実施形態では、式(1),式(6)に用いるα〜ιの重み付け係数を一定値としたが、これらは、印刷階調に応じて変化するように設定してもよい。例えば、位置ずれに伴い粒状性の悪化を招きやすい低階調(低濃度)〜中間階調領域においては、他の階調領域と比べて、画像を構成するドットの一部を構成するグループに対する評価値の重み付け係数γ〜θを、画像を構成する全てのドットに対する評価値の重み付け係数ιよりも大きくしてもよい。また、位置ずれにより濃度ムラが発生しやすい高階調領域においては、他の階調領域と比べて、ドットの重なりの程度に関する評価値E1の重み付け係数αを、ドットの分散の程度に関する評価値E2の重み付け係数βよりも大きくしてもよい。こうすれば、印刷階調に応じた主要な課題を解決することができ、広範囲な印刷階調にわたって、印刷画質を向上させることができる。また、このように、印刷階調に応じて重み付け係数を変化させる場合、その変化を段階的なものとしてもよい。こうすれば、わずかな階調変化によってドット形成パターンが急激に変化することがない。したがって、印刷画質をさらに向上させることができる。
【0115】
C−7.変形例7:
上述の実施形態においては、ドットの分散の程度を示す評価値E2qとして、粒状性指数を用いたが、評価値E2qは、ドット配置の分散の程度を評価できるものであればよい。例えば、評価値E2qは、RMS粒状度を用いてもよい。RMS粒状度は公知の技術であるため(例えば、特開2007−174272号公報)、詳しい説明は省略するが、ドット密度値に対して、ローパスフィルターを用いてローパスフィルター処理を行うとともに、ローパスフィルター処理がなされた密度値の標準偏差を算出するものである。あるいは、ローパスフィルター処理後のドット密度を評価値E2qとしてもよい。これは、いわゆるポテンシャル法に用いられる評価値である。
【0116】
C−8.変形例8:
上述の第2実施例では、評価値E1として、位置ずれが生じていない状態を示す、ずれパターンP5を前提として算出される被覆率C5と、それ以外の被覆率C1〜C4,C6〜Cnとの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値のうちの最大値を用いたが、この評価値E1は、被覆率C1〜Cnの、ずれパターンP1〜Pnの間における変動を定量化した評価値であればよい。例えば、被覆率C1〜Cnの全ての組み合わせについて、当該組み合わせの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値の最大値を評価値E1としてもよい。こうしても、ドットの重なりの程度の最大の変動幅を小さくすることができるので、濃度ムラの抑制効果が得られる。また、評価値E1として、被覆率C1〜Cnの標準偏差や分散などを用いてもよい。こうすれば、被覆率C1〜Cnのばらつきの程度を小さくすることができるので、安定した濃度ムラの抑制効果が得られる。
【0117】
あるいは、被覆率C1〜Cnの全ての組み合わせについて、当該組み合わせの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値の各々を所定の重み付けで足し合わせた値を評価値E1としてもよい。こうした場合には、位置ずれが生じていない状態を示す、ずれパターンP5を前提として算出される被覆率C5との差分は、重み付けを大きくしてもよい。その理由は、以下の通りである。例えば、所定方向に2画素分の位置ずれが生じた第1の印刷領域と、当該所定方向に−2画素分の位置ずれが生じた第2の印刷領域との間には、位置ずれが生じていない第3の領域が存在する可能性が高い。換言すれば、第1の印刷領域と第2の印刷領域とが隣接することは少なく、多くの場合、その間に第3の印刷領域が介在する。このようなことから、第3の印刷領域の領域と第1の印刷領域との間での被覆率Cの変動と、第3の印刷領域の領域と第2の印刷領域との間での被覆率Cの変動とを抑制すれば、つまり、位置ずれが生じていない状態に対する被覆率の変動差に重きをおけば、濃度ムラは視認されにくくなるのである。
【0118】
C−9.変形例9:
上述した実施形態においては、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとして、空白格納要素の各々について所定の評価値を算出し、当該評価値に基づいて、着目閾値の格納場所を決定することにより、順次、閾値を空白格納要素に格納していくことで、ディザマスク61を生成する手法について示したが、ディザマスク61の生成手順はこの限りではない。例えば、以下のように、ディザマスク61を生成してもよい。(1)まず、ディザマスク61の格納要素にランダムに閾値を格納する。なお、上述した評価値E2などによって、閾値の配置を決定してもよい。次に、(2)その中から任意の2つの閾値を選択し、当該2つの閾値の格納場所を入れ替えた場合と、入れ替えない場合について、上述した総合評価値CE(または評価値E1)を算出する。そして、(3)評価値が優れた方向に変化する場合に限り、2つの閾値の格納場所を入れ替える。そして、(4)上記(2),(3)の工程を、評価値が優れた方向に収束するまで繰り返す。こうしても、上述の実施形態と同様の特性を有するディザマスク61を生成することができる。
【0119】
C−10.変形例10:
上述した実施形態においては、シリアル方式のインクジェット式プリンターに搭載するディザマスク61の生成方法について示したが、本発明のディザマスクの生成方法や、当該方法により生成したディザマスクは、他の形式のプリンターにも適用することができる。例えば、第2実施例に示した方法は、印刷ヘッドを移動させながら印字する種々のプリンターであれば、広く適用することができ、例えば、ドットインパクト式プリンターにも適用することができる。
【0120】
また、本発明のディザマスクの生成方法や、当該方法により生成したディザマスクは、複数の印刷ヘッドを印刷媒体の幅方向の全体に亘って配列し、隣接する印刷ヘッド同士の一部をオーバーラップさせたラインプリンターにも適用することができる。具体的には、印刷ヘッドのオーバーラップ領域に適用するディザマスクの生成方法などとしても実現することができる。この場合、上述の実施形態で述べた位置ずれは、オーバーラップ領域を構成する印刷ヘッド間でのインクの着弾位置ずれとして捉えればよい。また、ディザマスク61は、プリンターに搭載されるものに限らず、パーソナルコンピュータなどの情報端末でハーフトーン処理が行われる場合には、情報端末に搭載するものであってもよい。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、ディザマスクの生成方法、当該方法により生成したディザマスクを搭載した印刷装置、当該方法により生成したディザマスクによりハーフトーン処理を行うプログラム、ディザマスクの生成プログラム、これらのプログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0122】
20…プリンター
30…制御ユニット
40…CPU
41…入力部
42…ハーフトーン処理部
43…印刷部
51…ROM
52…RAM
60…EEPROM
61…ディザマスク
70…キャリッジモータ
71…駆動ベルト
72…プーリ
73…摺動軸
74…紙送りモータ
75…プラテン
80…キャリッジ
82〜87…インクカートリッジ
90…印刷ヘッド
98…メモリカードスロット
99…操作パネル
P…印刷媒体
MC…メモリカード
Nz…ノズル
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の格納要素の各々に閾値が格納されたディザマスクの生成方法に関する。
【背景技術】
【0002】
シリアル方式のインクジェット式プリンターでは、複数のノズルを備えた印刷ヘッドを印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、当該ノズルからインクを吐出して、印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う。かかるインクジェット式プリンターでは、印刷ヘッドのノズルから吐出されたインクの印刷媒体への着弾位置が目標位置からずれる位置ずれを起こすことがある。こうした位置ずれの要因としては、印刷ヘッドの動作精度の問題、紙送り精度の問題などが挙げられる。例えば、印刷ヘッドの往動と復動のインク吐出タイミングが厳密に一定していないと、印刷ヘッドの往動で形成されるドット群と、復動で形成されるドット群との相対的な位置関係が目標位置からずれることとなる。
【0003】
このような位置ずれが生じると、ドット配置の局所的な疎密の偏りを生じる。かかる疎密の偏りが大きくなれば、印刷画像の局所的な濃度ムラを招き、印刷画質が低下する。このような濃度ムラの現象は、印刷速度が高速化されるほど顕著となる。かかる濃度ムラの問題は、シリアル方式のインクジェット式プリンターに限らず、印刷ヘッドを移動させながら印字する種々のプリンター、例えば、ドットインパクト式プリンターにも共通する問題であった。また、複数の印刷ヘッドを印刷媒体の幅方向の全体に亘って配列し、隣接する印刷ヘッド同士の一部をオーバーラップさせたラインプリンターでも、印刷ヘッドの据付精度の問題から、オーバーラップ領域において位置ずれが生じ、同様の問題が生じ得た。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−49443号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述の問題の少なくとも一部を踏まえ、本発明が解決しようとする課題は、印刷画像の濃度ムラの発生を抑制することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]複数の格納要素の各々に閾値が格納されたディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、画像の所定の階調値に対して、前記閾値が格納された格納要素の配置に基づいて、印刷媒体上に所定の形成パターンでドットを生じさせるハーフトーン処理に用いられ、
前記ドットの形成パターンから想定される前記印刷媒体上のドットの重なりの程度と、該ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度とを指標として、前記閾値の少なくとも一部が格納される前記格納要素の配置を決定する
ディザマスクの生成方法。
【0008】
かかるディザマスクの生成方法は、ディザマスクのドット形成パターンから想定されるドットの重なりの程度と、ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度とを指標として、閾値を格納する格納要素の配置を決定する。ドットの重なりの程度を指標とすることで、ドットの形成位置が目標位置から局所的にずれた場合に生じる、ドットの重なりの程度の変動を抑制するように、ディザマスクを生成することができる。ドットの重なりの程度の変動が抑制されると、上述のずれに伴うドットの疎密の偏りが抑制されるので、かかる方法により生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行えば、ドットの形成位置が目標位置からずれた場合でも、ドットの疎密の偏りが抑制された印刷画像を得ることができ、濃度ムラの発生を抑制することができる。しかも、ドットの分散の程度をも指標とすることで、ドットの分散性にも優れたディザマスクを生成することができる。かかる方法により生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行えば、濃度ムラの抑制に加えて、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0009】
[適用例2]適用例1記載のディザマスクの生成方法であって、前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、前記算出した第1の評価値および第2の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第5の工程とを備え、前記第2ないし第5の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成するディザマスクの生成方法。
【0010】
かかるディザマスクの生成方法は、第1の評価値と第2の評価値とを用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。第1の評価値は、閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンから想定される、ドットの重なりの程度に関する評価値であり、第2の評価値は、閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて算出されるドットの分散の程度を示す評価値であるから、ドットの重なりの程度とドットの分散の程度とを評価して、ドットの重なりの程度の変動を抑制でき、かつ、ドットの良好な分散性も得られるディザマスクを好適に生成することができる。
【0011】
[適用例3]適用例1記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、前記算出した第1の評価値、第2の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第8の工程とを備え、前記第2ないし第4、第7および第8の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成するディザマスクの生成方法。
【0012】
かかるディザマスクの生成方法は、第1の評価値と第2の評価値とを用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定することから、適用例2と同様の効果を奏する。しかも、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分された複数の格納要素のグループごとに、当該グループに属する格納要素に対応するドットの形成パターンに基づいて算出する、ドットの分散の程度を示す第3の評価値も用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定するので、グループごとのドットの分散性を良好に確保したディザマスク61を生成することができる。かかるディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って、印刷を行えば、当該グループ間で位置ずれが生じた場合にも、画像全体としてドットの分散性の低下を抑制することができ、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0013】
[適用例4]適用例1記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、
前記算出した第1の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第9の工程とを備え、前記第2、第3、第6、第7および第9の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成するディザマスクの生成方法。
【0014】
かかるディザマスクの生成方法は、第1の評価値と第3の評価値とを用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。第1の評価値を用いることにより、適用例2と同様に、ドットの重なりの程度を評価して、ドットの重なりの程度の変動を抑制できるディザマスクを好適に生成することができる。また、第3の評価値を用いることにより、グループごとのドットの分散性を良好に確保したディザマスク61を生成することができる。かかるディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って、印刷を行えば、当該グループ間で位置ずれが生じた場合にも、画像全体としてドットの分散性の低下を抑制することができ、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0015】
[適用例5]前記第1の評価値は、前記ドットの形成パターンから想定される、実際に形成されるドットが前記印刷媒体を覆う割合を示すドット被覆率に基づいて算出される適用例2ないし適用例4のいずれか記載のディザマスクの生成方法。
【0016】
かかるディザマスクの生成方法は、着目閾値を格納する空白格納要素を決定するための所定の評価値を、実際に形成されるドットが印刷媒体を覆う割合に基づいて算出する。ドットが印刷媒体を覆う割合は、ドットの重なりの程度により変化するので、この方法によれば、ドットの重なりの程度を好適に評価することができる。また、ドットが印刷媒体を覆う割合は、容易に算出することができるので、効率的である。
【0017】
[適用例6]適用例2ないし適用例5のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、前記印刷媒体上にインクを吐出して前記ドットを形成する印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記第3の工程は、前記インクが前記印刷媒体上に着弾した際の、該インクの該印刷媒体上での広がりを想定し、該想定した広がりを前記ドットの形成パターンに反映させて、前記第1の評価値を算出するディザマスクの生成方法。
【0018】
かかるディザマスクの生成方法は、インクが印刷媒体上に着弾した際の、インクの印刷媒体上での広がりを反映して、第1の評価値を算出するので、より実際に近い状態でドットの重なりの程度を評価することができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0019】
[適用例7]前記インクの広がりを、該広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定する適用例6記載のディザマスクの生成方法。
かかるディザマスクの生成方法は、インクの広がりを、広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定するので、ドットの重なりの程度の評価精度を高めることができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0020】
[適用例8]適用例2ないし適用例7のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記第3の工程は、前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間で、所定の方向に所定量だけずれた状態を示す、ずれパターンを複数種類想定する工程と、前記複数種類のずれパターンごとに、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、前記複数種類のずれパターンごとに算出された評価値の、該複数種類のずれパターンの間における変動を定量化した評価値を、前記第1の評価値として算出する工程とを備えたディザマスクの生成方法。
【0021】
かかるディザマスクの生成方法は、複数種類のずれパターンを想定し、ずれパターンごとに、ドットの重なりの程度を示す評価値を算出し、当該評価値の変動を定量化した第1の評価値によって、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。したがって、ずれパターンとして想定したずれが生じた場合に、ドットの重なりの程度の変動を好適に抑制することができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、ずれパターンとして想定したずれが生じても、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0022】
[適用例9]前記複数種類のずれパターンには、前記ずれが生じていない状態を含む適用例8記載のディザマスクの生成方法。
かかるディザマスクの生成方法は、想定する複数種類のずれパターンに、ずれが生じていない状態を含むので、ずれが生じなかった場合と、ずれが生じた場合との間で、ドットの重なりの程度が大きく変動することを抑制することができる。その結果、ずれが生じる場合と、生じない場合とのいずれの場合においても、濃度ムラを抑制した印刷結果が得られるディザマスクを生成することができる。
【0023】
[適用例10]適用例6または適用例7記載のディザマスクの生成方法であって、前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、前記第3の工程は、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、印刷階調に応じた、前記ドットの重なりの程度を示す評価値の目標値を設定する工程と、前記ドットの重なりの程度を示す評価値と、前記設定した目標値との離隔の程度を示す評価値を前記第1の評価値として算出する工程とを備え、前記目標値は、前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間でいずれの方向にもずれていない状態における前記ドットの形成パターンから想定される前記ドットの重なりの程度よりも、該ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定されるディザマスクの生成方法。
【0024】
かかるディザマスクの生成方法は、所定の評価値の目標値を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置がずれていない状態におけるドットの形成パターンから想定されるドットの重なりの程度よりも、ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定する。そして、ドットの重なりの程度を示す評価値と、設定した目標値との離隔の程度を示す評価値を、所定の評価値として、着目閾値を格納する空白格納要素に着目閾値を格納する。したがって、ドットの重なりの程度が目標値に近くなるように、着目閾値を空白格納要素に格納することが可能である。通常、ディザマスクは、ずれが生じていない場合に、ドットの重なりが最も少なくなるように最適化されるため、ずれが生じた場合には、ドットの重なりの程度が大きく変動する。一方、本適用例の目標値は、ドットの重なりの程度が相対的に大きいので、ずれが生じた場合のドットの重なりの程度の変動を抑制するディザマスクを生成することができる。
【0025】
また、本発明は、ディザマスクの生成方法のほか、適用例11の印刷装置、適用例12のプログラム、ディザマスクの生成プログラム、これらのプログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
[適用例11]印刷装置であって、適用例1ないし適用例10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを記憶する手段と、前記記憶したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う手段とを備えた印刷装置。
[適用例12]適用例1ないし適用例10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う機能をコンピューターに実現させるためのプログラム。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の第1実施例としてのプリンター20の概略構成図である。
【図2】プリンター20における印刷処理の流れを示すフローチャートである。
【図3】プリンター20におけるドット形成の仕組みを示す説明図である。
【図4】印刷画像を構成する画素グループを示す説明図である。
【図5】印刷画像を構成する画素グループを示す説明図である。
【図6】ディザマスク生成処理の手順を示す工程図である。
【図7】第1のディザマスク評価処理の手順を示す工程図である。
【図8】ディザマスク61の格納要素の一部に閾値が格納された状態等を示す説明図である。
【図9】被覆率Cの算定方法を示す説明図である。
【図10】被覆率Cの算定方法を示す説明図である。
【図11】被覆率Cの目標値を概念的に示す説明図である。
【図12】印刷時に位置ずれが生じた場合の被覆率Cの変動を概念的に示す説明図である。
【図13】第2のディザマスク評価処理の手順を示す工程図である。
【図14】ブルーノイズ特性及びグリーンノイズ特性の説明図である。
【図15】評価値E2の算定基礎とする感度特性VTFの一例を示す説明図である。
【図16】第2実施例としての第1のディザマスク評価処理の手順を示す工程図である。
【図17】想定するずれパターンの具体例を示す説明図である。
【図18】第2実施例としての被覆率Cの算定方法を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
A.第1実施例:
本発明の第1実施例について説明する。
A−1.装置構成:
図1は、本発明の第1実施例としてのプリンター20の概略構成図である。プリンター20は、双方向印刷を行うシリアル式インクジェットプリンタであり、図示するように、プリンター20は、紙送りモータ74によって印刷媒体Pを搬送する機構と、キャリッジモータ70によってキャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構と、キャリッジ80に搭載された印刷ヘッド90を駆動してインクの吐出およびドット形成を行う機構と、これらの紙送りモータ74,キャリッジモータ70,印刷ヘッド90および操作パネル99との信号のやり取りを司る制御ユニット30とから構成されている。
【0028】
キャリッジ80をプラテン75の軸方向に往復動させる機構は、プラテン75の軸と平行に架設され、キャリッジ80を摺動可能に保持する摺動軸73と、キャリッジモータ70との間に無端の駆動ベルト71を張設するプーリ72等から構成されている。
【0029】
キャリッジ80には、カラーインクとして、シアンインク(C)、マゼンタインク(M)、イエロインク(Y)、ブラックインク(K)、ライトシアンインク(Lc)、ライトマゼンタインク(Lm)をそれぞれ収容したカラーインク用のインクカートリッジ82〜87が搭載される。キャリッジ80の下部の印刷ヘッド90には、上述の各色のカラーインクに対応するノズル列が形成されている。キャリッジ80にこれらのインクカートリッジ82〜87を上方から装着すると、各カートリッジから印刷ヘッド90へのインクの供給が可能となる。
【0030】
制御ユニット30は、CPU40や、ROM51、RAM52、EEPROM60がバスで相互に接続されて構成されている。制御ユニット30は、ROM51やEEPROM60に記憶されたプログラムをRAM52に展開し、実行することにより、プリンター20の動作全般を制御するほか、入力部41、ハーフトーン処理部42、印刷部43としても機能する。これらの機能部の詳細については後述する。
【0031】
EEPROM60には、ディザマスク61が記憶されている。ディザマスク61は、組織的ディザ法による、ドット分散型のハーフトーン処理に用いるものであり、複数の閾値が、同数の格納要素にそれぞれ格納されて構成される。
【0032】
制御ユニット30には、メモリカードスロット98が接続されており、メモリカードスロット98に挿入したメモリカードMCから画像データORGを読み込んで入力することができる。本実施例においては、メモリカードMCから入力する画像データORGは、レッド(R)、グリーン(G)、ブルー(B)の3色の色成分からなるデータである。
【0033】
以上のようなハードウェア構成を有するプリンター20は、キャリッジモータ70を駆動することによって、印刷ヘッド90を印刷媒体Pに対して主走査方向に往復動させ、また、紙送りモータ74を駆動することによって、印刷媒体Pを副走査方向に移動させる。制御ユニット30は、キャリッジ80が往復動する動き(主走査)や、印刷媒体の紙送りの動き(副走査)に合わせて、印刷データに基づいて適切なタイミングでノズルを駆動することにより、印刷媒体P上の適切な位置に適切な色のインクドットを形成する。こうすることによって、プリンター20は、印刷媒体P上にメモリカードMCから入力したカラー画像を印刷することが可能となっている。
【0034】
A−2.印刷処理:
プリンター20における印刷処理について説明する。図2は、プリンター20における印刷処理の流れを示すフローチャートである。ここでの印刷処理は、ユーザーが操作パネル99等を用いて、メモリカードMCに記憶された所定の画像の印刷指示操作を行うことで開始される。印刷処理を開始すると、CPU40は、まず、入力部41の処理として、メモリカードスロット98を介してメモリカードMCから印刷対象であるRGB形式の画像データORGを読み込んで入力する(ステップS110)。
【0035】
画像データORGを入力すると、CPU40は、EEPROM60に記憶されたルックアップテーブル(図示せず)を参照して、画像データORGについて、RGB形式をCMYKLcLm形式に色変換する(ステップS120)。
【0036】
色変換処理を行うと、CPU40は、ハーフトーン処理部42の処理として、画像データを各色のドットのON/OFFデータに変換するハーフトーン処理を行う(ステップS130)。この処理は、入力データと、ディザマスク61を構成する複数の閾値のうちの、入力データに対応する位置の格納要素に格納された閾値とを比較し、入力データが閾値よりも大きければ、ドットONと判断し、入力データが閾値未満であればドットOFFと判断するものである。ディザマスク61は、主走査方向および副走査方向に並ぶ各々の入力データに対して、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用される。なお、ハーフトーン処理は、ドットのON/OFFの2値化処理に限らず、大ドットおよび小ドットのON/OFFなど、多値化処理であってもよい。また、ステップS130に供する画像データは、解像度変換処理やスムージング処理などの画像処理が施されたものであってもよい。
【0037】
ハーフトーン処理を行うと、CPU40は、プリンター20のノズル配置や紙送り量などに合わせて、1回の主走査単位で印画するドットパターンデータに並び替えるインターレース処理を行う(ステップS140)。インターレース処理を行うと、CPU40は、印刷部43の処理として、印刷ヘッド90、キャリッジモータ70、モータ74等を駆動させて、印刷を実行する(ステップS150)。
【0038】
かかる印刷処理におけるドット形成の仕組みについて、図3を用いて以下に説明する。本実施例における印刷ヘッド90は、インクの色ごとに、10個のノズルNzを備えている。これらのノズルNzは、ノズル1個分の間隔を有して副走査方向に1列に並んでいる。
【0039】
印刷画像の生成は印刷ヘッド90が主走査と副走査とを行いつつ以下のように行われる。なお、以下の説明において、1つの主走査をパスともいい、各々の主走査を区別するために、バス番号を付して、パス1、パス2などともいう。また、副走査方向に沿ったドットの並びをラスターともいい、各々のラスターを区別するために、各ラスターにラスター番号を付して説明する。また、ラスターを構成する各ドットの形成位置を区別するために、各ラスターにおけるドット形成位置を、主走査方向に沿って付した画素位置番号で特定する。本実施例においては、印刷ヘッド90等の駆動制御の態様として、オーバーラップ数を「2」、ノズルピッチを「2」、紙送り量を「5」とし、印刷ヘッド90の往動時と復動時の両方でインクを吐出する双方向印刷を行うこととしている。オーバーラップ数とは、主走査方向に形成する1本のラスターをドットですべて埋めるために必要な主走査の回数のことをいう。また、ノズルピッチとは、副走査方向に隣り合うノズルの中心間のドット数であり、隣り合う2つのノズル間に存在するラスター(ドット)の数に値1を加えた数のことをいう。また、紙送り量とは、1回の主走査につき、印刷ヘッド90が副走査方向に搬送される量(ラスター数)のことをいう。
【0040】
図3に示す1回目のパスであるパス1では、ラスター番号が1、3、5、7、9、11、13、15、17、19の10本のラスターのうちで、画素位置番号が1、3、5の画素(ドット形成位置)にドットが形成される。パス1は、印刷ヘッド90の往復動のうちの往動である。図3に示す○印は、ドットの形成位置を示し、丸印の中に記載した数字は、パス番号である。
【0041】
パス1の主走査が終了すると、副走査方向に紙送り量Ls(ここでは5)だけ、印刷媒体を移動させる(かかる移動を、副走査送りともいう)。なお、図3では、図示の都合上、印刷ヘッド90が副走査方向に移動したように示している。副走査送りが終了すると、1回目のパスであるパス2を行う。パス2では、ラスター番号が6、8、10、12、14、16、18、20、22、24の10本のラスターのうちで、画素位置番号が1、3、5の画素にドットが形成される。パス2は、印刷ヘッド90の往復動のうちの復動である。なお、ラスター番号が22、24の2本のラスターは、図示を省略している。
【0042】
パス2が終了すると、前述と同様の副走査送りを行った後に、パス3を行う。パス3では、ラスター番号が11、13、15、17、19の主走査ラインを含む10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が2、4、6の画素にドットが形成される。パス3は、印刷ヘッド90の往復動のうちの往動である。
【0043】
パス3が終了すると、前述と同様の副走査送りが行われた後に、パス4を行う。パス4では、ラスター番号が16、18、20の3本の主走査ラインを含む10本の主走査ラインのうちで、画素位置番号が2、4、6の画素にドットが形成される。パス4は、印刷ヘッド90の往復動のうちの復動である。
【0044】
このようにして、印刷ヘッド90の往動と復動とを繰り返しながら、紙送りを行ってドットを形成すれば、ラスター番号が15以降の副走査位置に隙間なくドットを形成可能である。
【0045】
このようにして生成される印刷画像を一定の領域に着目して観察する。例えば、ラスター番号が15〜20で画素位置番号が1〜6の領域を着目領域とし、当該着目領域を、いずれのパスによってドットが形成されるかの観点から観察すれば、着目領域の印刷画像は、図4に示すように、パス番号1〜4に対応する第1〜第4の画素グループが相互に組み合わされることによって形成されている。かかるパスの違いに基づいて区分された画素群(ドット群)の各々を総称してパスグループともいう。
【0046】
同様に、着目領域を、往動と復動のうちのいずれによってドットが形成されるかの観点から観察すれば、着目領域の印刷画像は、図5に示すように、往動に対応する往動画素グループと、復動に対応する復動画素グループとにより形成されている。かかる往動と復動との違いに基づいて区分された画素群(ドット群)の各々を総称して往復動グループともいう。パスグループおよび往復動グループは、大きな視点で見れば、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるグループ(ドット群)である。
【0047】
このように画素グループの区分方法を示したのは、以下に説明するディザマスク61の生成方法で用いるためである。なお、上述の例では、オーバーラップ数を「2」、ノズルピッチを「2」としたが、パス番号の観点から区分した画素グループは、オーバーラップ数とノズルピッチとの積に相当する数のグループに区分することができる。また、オーバーラップ数、ノズルピッチ、紙送り量は、上述の例に限らず、適宜設定すればよい。
【0048】
A−3.ディザマスク61の生成方法:
上述したディザマスク61の生成方法について説明する。ディザマスク61は、そのサイズ(閾値の数)に対応する格納要素を有している。格納要素とは、ディザマスク61を構成する閾値を格納する要素である。これらの格納要素の全てに1つずつ閾値を格納することで、ディザマスク61は生成される。以下に説明する生成方法は、メインフレーム等のCPUによって、ディザマスク61を生成する処理である。なお、以下に説明する工程の一部または全部をユーザーが手計算等によって行っても差し支えない。
【0049】
ディザマスク61のサイズは、例えば、256画素×256画素、512画素×512画素などとされる場合が多いが、以下の説明においては、ディザマスク61のサイズは、説明を簡単にするために、縦方向サイズ、横方向サイズともに6画素、つまり合計36画素(=6×6)の画像データに適用するサイズとして説明する。なお、ディザマスク61のサイズは、パスグループおよび往復動グループの繰り返し単位の倍数とすることが望ましい。例えば、図4および図5に示した画素グループを前提とすれば、ディザマスク61の縦方向のサイズは、2M(Mは1以上の整数)画素、横方向のサイズは、2N(Nは1以上の整数)画素である。このようなサイズのディザマスク61を、画像データに対して、主走査方向および副走査方向に繰り返し適用すれば、各々の画素グループとディザマスク61を構成する閾値との対応関係を一定に保つことができ、効率的に所望のハーフトーン処理を行えるからである。
【0050】
ディザマスク61の生成方法の手順を示す工程図を図6に示す。ディザマスク61の生成においては、図示するように、まず、ディザマスク61のサイズに応じた閾値を用意する(ステップS200)。本実施例においては、ディザマスク61が36個の格納要素を有するので、これと同数の0〜35の閾値を用意するものとした。
【0051】
閾値を用意すると、次に、着目閾値選択処理を行う(ステップS300)。着目閾値選択処理とは、用意した0〜35の閾値のうちの、未だ格納要素に格納されていない閾値のうちから1つの閾値を着目閾値として選択する処理である。本実施例においては、用意した閾値のうちの小さい閾値から順に、着目閾値を選択することとした。図8に示すように、ディザマスク61を構成する格納要素に、後述する工程によって値0〜4の閾値が既に格納要素に格納されている場合には、次にステップS300において選択される着目閾値は値5である。
【0052】
着目閾値を選択すると、次に、第1のディザマスク評価処理を行う(ステップS400)。第1のディザマスク評価処理とは、用意した閾値が未だ格納されていない格納要素(以下、空白格納要素ともいう)の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、閾値が既に格納された格納要素(以下、決定格納要素ともいう)の配置が表すドットの形成パターンに基づいて想定する、ドットの重なりの程度に関する評価値E1を、空白格納要素の各々について算出する処理である。この評価値E1の算出方法については後述するが、本実施例では、評価値E1は、ドットの重なりの程度の変動の指標であり、その値が小さいほど当該変動が小さくなり、濃度ムラの抑制の観点から優れているといえる。
【0053】
第1のディザマスク評価処理を行うと、次に、第2のディザマスク評価処理を行う(ステップS500)。第2のディザマスク評価処理とは、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、決定格納要素の配置が表すドットの形成パターンについての、ドットの分散の程度を示す評価値E2を、空白格納要素の各々について算出する処理である。この評価値E2の算出方法については後述するが、本実施例では、評価値E2は、ドットの分散の程度についての指標であり、その値が小さいほどドットの分散性が良好となり、印刷画像の粒状性の観点から優れているといえる。
【0054】
第2のディザマスク評価処理を行うと、次に、格納要素決定処理を行う(ステップS600)。ここでの格納要素決定処理とは、第1のディザマスク評価処理で算出した評価値E1と、第2のディザマスク評価処理で算出した評価値E2とに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する処理である。具体的には、候補格納要素(空白格納要素)ごとに算出した評価値E1および評価値E2を用いて、次式(1)により、候補格納要素ごとに総合評価値CEを算出する。そして、その中で最も小さい値の総合評価値CEに対応する候補格納要素を、着目閾値を格納すべき候補格納要素として決定し、当該格納要素に着目閾値を格納する。次式(1)において、α,βは、重み付け係数である。これらの重み付け係数は、良好な印刷画質が得られるように、一定値として、実験的に定められる。 CE=θ×E1+ι×E2・・・(1)
【0055】
格納要素決定処理を行うと、ステップS200で用意した閾値を、ディザマスク61を構成する全ての格納要素に格納するまで、上記ステップS300〜S600の工程を繰り返す(ステップS700)。こうして、全ての格納要素に閾値を格納すると(ステップS700:YES)、ディザマスク61は完成となり、ディザマスク生成処理は終了となる。
【0056】
上述した第1のディザマスク評価処理の詳細について説明する。第1のディザマスク評価処理では、まず、図7に示すように、決定格納要素のドットをONにする(ステップS410)。このようにドットをONにした様子をシングルハッチングで図8に示す。
【0057】
決定格納要素のドットをONにすると、次に、候補格納要素選択処理を行う(ステップS420)。候補格納要素選択処理とは、着目閾値を格納すべき格納要素の候補である候補格納要素を選択する処理である。空白格納要素の各々には、着目閾値を格納することが可能であるから、ここでは、空白格納要素のうちの1つを、候補格納要素として選択する。候補格納要素選択処理を行うと、次に、候補格納要素のドットをONにする(ステップS430)。図8では、空白格納要素の1つを候補格納要素として選択し、当該候補格納要素のドットをONにした様子を、クロスハッチングで示している。
【0058】
候補格納要素のドットをONにすると、次に、評価値算出処理を行う(ステップS440)。ここで算出する評価値は、ドットが印刷媒体を覆う割合を示すドット被覆率C(以下、単に被覆率Cともいう)である。この被覆率Cは、空白格納要素の1つに着目閾値を格納したとした場合の、決定格納要素の配置、つまり、ステップS430でドットをONにした格納要素の配置が表すドットの形成パターン(以下、ドット形成パターンともいう)に基づいて、実際に形成されるドットを想定し、当該想定したドットに基づいて算出する。なお、ハーフトーン処理においては、ディザマスク61の閾値が入力階調値よりも小さくなる画素でドットがONとなるので、全ての画素の階調値が同一のベタ画像を入力する場合において、当該階調値を徐々に大きくしていけば、ディザマスク61における閾値の配置に応じたドットの形成パターンが現れることとなる。本実施例では、このようなドット発生特性に基づくドット形状をドット形成パターンと呼んでいる。
【0059】
被覆率Cの算出については、図9を用いてさらに詳しく説明する。図9(A)は、ステップS430で求めた決定格納要素のドット形成パターンを示している。なお、図9(A)に示す格納要素には、以下の説明の便のため、1〜6の行番号および列番号を付している。被覆率Cの算出にあたっては、まず、実際のドット形状を想定し、定義する。ここで定義するドット形状は、インクが印刷媒体に着弾した際に、実際に形成されるドットの形状である。インクジェット式プリンターにおいては、印刷媒体に着弾したインクは、所定範囲に広がって定着する。このようなことから、インクの印刷媒体上での広がりを反映したドット形状を定義するのである。
【0060】
ドット形状の定義例を図9(B)に示す。図示する3画素×3画素のうちの中心の画素(Aと表示した画素)は、インクの着弾が予定されるドット形成位置を示している。また、中心の画素の上下左右に位置する画素(Bと表示した画素)は、中心の画素にインクが着弾した際に、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットの形成位置を示している。なお、プリンター20は、印刷ヘッド90を主走査方向に移動させながらインクを吐出するので、着弾したインクは、実際には、主走査方向に広がりやすいが、ここでは、説明を簡単にするために、図9(B)に示すように、上下左右に対称な形状を定義している。
【0061】
このようにドット形状を定義すると、次に、決定格納要素のドット形状パターンと定義したドット形状とに基づいて、被覆率算定用のドット形成パターンを求める。被覆率算定用のドット形成パターンの具体例を図9(C)に示す。このドット形成パターンは、図9(A)に示したドット形成パターンの各ドットを、図9(B)に示したドット形状に置き換えたものである。図中の行番号および列番号は、図9(A)に対応している。図9(C)において、Aと表示した画素は、インクの着弾が予定される画素に形成されるドット(図9(A)に示したドット形成パターン)を示している。B,Cと表示した画素は、インクの広がりによりドットが形成されると見なし得るドット(図9(B)においてBと表示した画素)を示している。B,Cと表示した画素のうち、Cと表示した画素は、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットが、当該画素位置において重畳していることを示している。一方、Bと表示した画素は、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットが、重畳することなく形成されることを示している。なお、ディザマスク61は、入力データに対して、主走査方向および副走査方向に対して繰り返し適用されるから、例えば、第1行第0列(図中にDと表示した画素)に形成されるはずのドットや、第0行第1列(図中にEと表示した画素)に形成されるはずのドットは、第1行第6列、第6行第1列にそれぞれ形成されるように扱う。
【0062】
被覆率算定用ドット形成パターンを求めると、当該パターンをもとに、被覆率Cを算出する。被覆率Cは、次式(2)により求めることができる。図9(C)の例では、被覆率Cは、77.8%(=28/36×100)となる。
C=ドット形成パターンとしてドットが形成される画素数/総画素数×100・・・(2)
【0063】
また、被覆率Cの別の算出方法について図10を用いて説明する。以下に説明する方法では、ドット形状の定義方法が上述の例と異なる。図10(A)は、前提となる決定格納要素のドット形成パターンであり、図9(A)に示したものと同一である。ドット形状の定義例を図10(B)に示す。この例では、実際のドット形状は、インクの広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で定義する。ここでは、主走査方向および副走査方向に、それぞれ2倍の解像度変換を行うことにより、1画素を4画素に変換した上で、ドット形状を定義している。図10(B)における各画素の背景の意味は、図9(B)と同様である。すなわち、図10(B)において、塗りつぶして示した画素は、図9(B)でAと表示した画素に該当し、ハッチングで示した画素は、図9(B)でBと表示した画素に該当する。このように解像度変換を行って、ドット形状の解像度を高めることにより、精度良く実際のドット形状を反映させることができる。また、図10(B)では、副走査方向に比べて、主走査方向に対して、より広範囲にインクが広がるように定義した例を示している。ドット形状の解像度を高めることで、このようなインクの広がりの特性をより忠実に反映しやすくなる。
【0064】
図10(B)に示したようにドット形状を定義した場合の、被覆率算定用のドット形成パターンを図10(C)に示す。被覆率算定用のドット形成パターンの求め方は、図10(C)について説明した方法と同様である。また、図10(C)における、各画素の背景の意味は、図9(C)と同様である。すなわち、図10(C)において、塗りつぶして示した画素は、図9(C)でAと表示した画素に該当し、シングルハッチングで示した画素は、図9(C)でBと表示した画素に該当し、クロスハッチングで示した画素は、図9(C)でCと表示した画素に該当する。かかる被覆率算定用ドット形成パターンをもとに、上式(2)により、被覆率Cを算出すれば、被覆率Cは、80.6%(=116/144×100)となる。
【0065】
ここで説明を図7の第1のディザマスク評価処理に戻す。上述したように被覆率Cを算出すると、次に、目標値設定処理を行う(ステップS450)。目標値設定処理とは、ハーフトーン処理の対象となる入力データの入力階調値ごとに、被覆率Cの目標値を設定する処理であり、本実施例では、ユーザーが設定した目標値をCPUが読み込むこととなる。
【0066】
かかる目標値を概念的に図11に示す。この例では、入力階調値を0〜255として、それぞれの階調値に対する被覆率Cの目標値を設定している。図示するラインL1は、従来のディザマスクにおける階調値ごとの被覆率を示している。ここでの従来のディザマスクとは、上述したパスグループの間および往復動グループの間で位置ずれがいずれの方向にも生じないことを前提に、所定の条件で最適化されたディザマスクをいう。所定の条件とは、例えば、印刷画像がブルーノイズ特性を有することである。一方、図示するラインL2は、設定する被覆率Cの目標値を示している。
【0067】
ラインL1の特性を有するディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行った場合に、実際に位置ずれが生じた場合の被覆率Cの変動について、概念的に図12に示す。図示するように、印刷される印刷画像の被覆率Cは、位置ずれが生じていない場合に最大となる。そして、例えば、主走査方向に位置ずれが生じると、被覆率Cは、その位置ずれ量に応じて減少していく。この位置ずれ量が1画素分に達すると、被覆率Cは最小値となり、その後、さらに位置ずれ量が増加すると、被覆率Cは増加に転じる。そして、ずれ量が2画素分に達すると、被覆率Cは減少に転じ、ずれ量が3画素分に達すると、被覆率Cは再度、増加に転じる。
【0068】
これは、例えば、図4に示した第1の画素グループと、第3の画素グループとの位置関係で見れば、第1の画素グループと第3の画素グループとが、主走査方向にずれると、互いの画素グループは重畳し始め、1画素分ずれた時点で完全に重畳し、さらに、ずれ量が大きくなると、重畳する部分が減少していき、2画素ずれた時点で、重畳する部分がなくなることに起因している。
【0069】
実際には、被覆率の変動の特性は、形成されるドットの配置によって様々であるが、概念的には、被覆率Cは、このように、ずれ量に応じて一定の周期で減少と増加とを繰り返して変動することとなる。そして、1周期における増加・減少量は、次第に収束していく。このような被覆率Cの変動の特性は、パスグループ間における位置ずれに限らず、往復動グループ間の位置ずれに対しても現れる。また、主走査方向への位置ずれに限らず、副走査方向への位置ずれ、または、主走査方向と副走査方向とに複合した位置ずれにおいても現れる。
【0070】
上述した被覆率Cの目標値は、図11のラインL2として示すように、ラインL1よりも小さい値で設定する。つまり、ラインL2は、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置が、当該区分されたドット群の間で、いずれの方向にもずれていない状態におけるドットの形成パターンよりも、ドットの重なりが大きい範囲で設定する。このような目標値を設定できるのは、上述したように、インクの広がりを定義することにより、位置ずれが生じていない場合にも、隣り合うドット同士が重畳する部分が生じえるので、ドット配置(閾値配置)を変更することより、重畳の程度が変化するからである。なお、実際のプリンターにおいては、位置ずれが生じないことを保証し得ないので、ラインL1を構成する被覆率Cの値は、シミュレーションによって求められる。
【0071】
本実施例においては、被覆率Cの目標値として、図12に示した被覆率Cの変動特性において、1周期における増加・減少量が概ね収束した段階での、当該周期における最大値を用いた。このように、収束段階の値で目標値を設定すれば、パスグループや往復動グループにおけるグループ間のドットの相関が小さくなり、後述するドットの分散の程度よりも、ドットの重なりの程度を重視したディザマスク61の生成を行うことができる。
【0072】
こうして被覆率Cの目標値を設定すると、次に、ステップS440で算出した被覆率Cと、ステップS450で設定した被覆率Cの目標値とに基づいて、次式(3)により、ドットの重なりの程度に関する評価値E1を算出する(ステップS460)。
E1=|C算出値−C目標値|・・・(3)
【0073】
この工程で目標値となるのは、被覆率Cの目標値は階調値ごとに定められているのであるから、ラインL2を構成する各々の被覆率Cの値のうち、着目閾値から求められる階調値に対応する被覆率Cである。例えば、着目閾値が値5である場合、36個の閾値(値0〜35)のうちの6個の閾値(値0〜5)が格納要素に既に格納されたものとして、被覆率Cが算出されるのであるから、着目閾値から求められる階調値は、36階調のうちの第6階調である。CPUは、上記ステップS450において、かかる階調値に対応する目標値を読み込み、上記ステップS460を行うのである。ディザマスクを構成する格納要素の数と、ラインL2の階調数とを合わせておけば、目標値の設定が容易である。ただし、ディザマスクを構成する格納要素の数と、ラインL2の階調数とが一致しない場合にも、補間により目標値を定めることができる。もとより、ラインL2を構成する被覆率Cは、入力されるすべての階調範囲に対して設定する必要はなく、一部の階調値について被覆率Cを定めておき、設定のない階調値に対応する被覆率Cは、補間により求めてもよい。
【0074】
こうして評価値E1を算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値E1を算出するまで、上述したステップS420〜S460の処理を繰り返す(ステップS470)。こうして、全ての候補格納要素について評価値E1を算出すると(ステップS470:YES)、第1のディザマスク評価処理は終了となる。なお、算出方法からも明らかなように、評価値E1は、算出した被覆率Cがどれほど目標値に近いかを示す指標値である。その意味で、評価値E1は、値が小さいほど、ドットの重なりの程度の観点で優れているといえる。なお、評価値E1は、換言すれば、算出した被覆率Cと目標値との離隔の程度を表す評価値ということもできる。したがって、例えば、式(3)に代えて、算出した被覆率Cと目標値との比と、値1(100%)との差分の絶対値などとすることもできる。
【0075】
次に、第2のディザマスク評価処理について、図13を用いて説明する。第2のディザマスク評価処理では、まず、グループ化処理を行う(ステップS510)。グループ化処理とは、ディザマスク61を構成する複数の格納要素を、当該複数の格納要素に格納された閾値がハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、複数のグループに区分する処理である。つまり、上述したパスグループや往復動グループに基づいて、格納要素のグループを設定する処理である。本実施例においては、パスグループと往復動グループとを設定するものとした。つまり、4つのグループである第1〜第4の画素グループ、2つのグループである往動画素グループと復動画素グループ、合計6つのグループを設定するものとした。ただし、設定するグループは、パスグループと往復動グループとのうちのいずれか一方であってもよい。なお、本実施例においては、ディザマスク61を構成する格納要素の数と、図4,図5に示した着目領域を構成する画素数とは同数であるから、設定した各グループは、図4に示した第1〜第4の画素グループ、図5に示した往動画素グループ、復動画素グループにそれぞれ一致する。
【0076】
こうして、グループ化処理を行うと、次に、決定格納要素のドットをONにし(ステップS520)、候補格納要素選択処理を行い(ステップS530)、候補格納要素のドットをONにする(ステップS540)。ステップS520〜S540の処理は、第1のディザマスク評価処理におけるステップS410〜S430(図7参照)の処理と同様であり、詳しい説明は省略する。
【0077】
候補格納要素のドットをONにすると、次に、グループ選択処理を行う(ステップS550)。グループ選択処理とは、上記ステップS510で設定したp個(pは2以上の整数、ここではp=6)のグループG1〜Gpと、ディザマスク61を構成する全ての格納要素を含むグループであるグループGp+1とのうちから、1つのグループGq(qは1以上p+1以下の整数)を選択する処理である。
【0078】
グループGqを選択すると、次に、グループGqに属する格納要素に対応するドット形成パターンに基づいて、ドットの分散の程度を示す評価値E2q、つまり、ドットがどの程度満遍なく分散された状態で形成されるかを示す評価値を算出する(ステップS560)。ドットを満遍なく分散された状態で形成するためには、図14に示すブルーノイズ特性やグリーンノイズ特性を有するディザマスクを生成すればよいことが知られている。本実施例においては、このような特性のディザマスクを生成するために、ドットの分散性の程度を示す評価値として、粒状性指数を用いることとした。
【0079】
粒状性指数は、公知の技術であるため(例えば、特開2007−15359号公報)、詳しい説明は省略するが、画像をフーリエ変換してパワースペクトルFSを求め、得られたパワースペクトルFSを、人間が有する視覚の空間周波数に対する感度特性VTF(Visual Transfer Function)に相当する重みを付けて、各空間周波数で積分して求められる指標である。図16に、VTFの一例を示す。こうしたVTFを与える実験式には、種々の式が提案されているが、次式(4)に代表的な実験式を示す。変数Lは観察距離を表しており、変数uは空間周波数を表している。粒状性指数は、かかるVTFに基づいて、次式(5)に示す計算式によって算出することができる。係数Kは、得られた値を人間の感覚と合わせるための係数である。なお、算出方法からも明らかなように、粒状性指数は、人間がドットを目立つと感じるか否かを示す指標であるとも言える。かかる粒状性指数は、その値が小さいほど印刷画質においてドットが視認されにくく、その点において優れているといえる。
【0080】
【数1】
【0081】
【数2】
【0082】
評価値E2qを算出すると、全てのグループG1〜Gp+1(ここではG1〜G7)について評価値E2qを算出するまで、上記ステップS550,S560の工程を繰り返す(ステップS570)。こうして、全てのグループG1〜G7について評価値E2qを算出すると(ステップS570:YES)、算出した評価値E21〜E27に基づいて、次式(6)により、評価値E2を算出する(ステップS580)。式(6)においてγ〜ιは重み付け係数である。これらの重み付け係数は、良好な印刷画質が得られるように、一定値として、実験的に定められる。つまり、評価値E2とは、ディザマスク61の決定格納要素の全体が表すドット形成パターンと、第1〜第4の画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンと、往復動画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンとについて、ドットの分散の程度を所定の重み付けで総合評価した評価値である。
E2=γ×E21+δ×E22+ε×E23+ζ×E24+η×E25+θ×E26+ι×E27・・・(6)
【0083】
評価値E2を算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値E2を算出するまで、上記ステップS530〜S580の工程を繰り返す(ステップS590)。こうして、全ての候補格納要素について評価値E2を算出すると(ステップS590:YES)、第2のディザマスク評価処理は終了となる。なお、上記ステップS600で式(1)により算出した総合評価値CEは、評価値E1と、評価値E2を算出するもととなる評価値E21〜E27とから、1回の演算により直接的に算出してもよい。
【0084】
A−4.効果:
上述したディザマスク61の生成方法は、決定格納要素の配置が表すドット形成パターンから想定されるドットの重なりの程度を指標として、閾値を格納する格納要素の配置を決定する。したがって、位置ずれにより生じる、ドットの重なりの程度の変動が抑制されるように、ディザマスク61を生成することができる。ドットの重なりの程度の変動が抑制されると、上述のずれに伴うドットの疎密の偏りが抑制されるので、かかる方法により生成したディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行えば、位置ずれが生じた場合でも、ドットの疎密の偏りが抑制された印刷画像を得ることができ、濃度ムラの発生を抑制することができる。
【0085】
また、ディザマスク61の生成方法は、用意した閾値の1つを着目閾値として選択し、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとした場合に、決定格納要素の配置が表すドットの形成パターンから想定される、ドットの重なりの程度に関する所定の評価値を用いて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。したがって、ドットの重なりの程度を好適に評価して、ドットの重なりの程度の変動を抑制したディザマスク61を生成することができる。また、所定の評価値は、実際に形成されるドットが印刷媒体を覆う割合である被覆率Cに基づいて算出する。ドットが印刷媒体を覆う割合は、ドットの重なりの程度により変化するので、この方法によれば、ドットの重なりの程度を好適に評価することができる。また、被覆率Cは、容易に算出することができるので、効率的である。
【0086】
また、ディザマスク61の生成方法は、インクが印刷媒体上に着弾した際の、インクの印刷媒体上での広がりを反映して、被覆率Cを算出するので、より実際に近い状態で被覆率Cを算出して、ドットの重なりの程度を評価することができる。しかも、インクの広がりを、広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定するので、ドットの重なりの程度の評価精度を高めることができる。かかる方法で生成したディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0087】
また、ディザマスク61の生成方法は、被覆率Cの目標値を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置がずれていない状態におけるドットの形成パターンから想定されるドットの重なりの程度よりも、ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定する。そして、被覆率Cと、設定した目標値との離隔の程度を示す評価値E1が最も小さくなる、つまり、被覆率Cが目標値に最も近くなる空白格納要素に着目閾値を格納する。通常、ディザマスクは、ずれが生じていない場合に、被覆率Cが最も小さくなるように最適化されるため、ずれが生じた場合には、被覆率Cが大きく変動する。一方、本実施例の目標値は、被覆率Cが相対的に小さいので、ずれが生じた場合の被覆率Cの変動、つまり、ドットの重なりの程度の変動を抑制するディザマスク61を生成することができる。
【0088】
また、ディザマスク61の生成方法は、ディザマスク61のドット形成パターンから想定されるドットの重なりの程度に加えて、ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度をも指標として、閾値を格納する格納要素の配置を決定する。したがって、ドットの分散性にも優れたディザマスクを生成することができる。かかる方法により生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行えば、濃度ムラの抑制に加えて、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。
【0089】
また、ディザマスク61の生成方法は、決定格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて算出されるドットの分散の程度を示す評価値(上述の例では評価値E27)を用いて、候補格納要素を評価するので、位置ずれが生じない場合にドットの分散性に優れたディザマスクを生成することができる。
【0090】
しかも、ディザマスク61の生成方法は、格納要素を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、各々のパスグループまたは往復動グループに区分する。そして、当該グループに属する決定格納要素に対応するドットの形成パターンに基づいて算出する、ドットの分散の程度を示す評価値(上述の例では、評価値E21〜E26)も用いて、候補格納要素を評価するので、グループごとのドットの分散性を良好に確保したディザマスク61を生成することができる。かかるディザマスク61を用いてハーフトーン処理を行って、印刷を行えば、当該グループ間で位置ずれが生じた場合にも、グループごとのドットの分散性は確保されたままであるから、画像全体としてドットの分散性の低下を抑制することができ、印刷画質の粒状性を抑制した良質な印刷画像を得ることができる。このように、本実施例のディザマスク61は、濃度ムラの抑制の効果と、粒状性の悪化の抑制の効果とを両立させることができる。
【0091】
B.第2実施例:
本発明の第2実施例について説明する。第2実施例では、プリンター20の構成は第1実施例と同様であり、ディザマスク61の生成方法が第1実施例と異なる。具体的には、第1実施例として図6に示したディザマスク生成処理のうちの、第1のディザマスク評価処理(ステップS400)の内容が第1実施例と異なる。以下、第1実施例と異なる点についてのみ説明する。
【0092】
第2実施例としての第1のディザマスク評価処理の流れを図16に示す。この処理では、図示するように、まず、グループ設定処理を行う(ステップS810)。グループ設定処理とは、ディザマスク61を構成する格納要素の各々を、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるグループ(ドット群)、つまり、第1実施例で示したパスグループや往復動グループによって、グループ化する処理である。グループ設定処理では、パスグループ、往復動グループのいずれか一方と対応付けて、グループ化を行う。本実施例では、往復動グループと対応付けることとした。なお、本実施例においては、ディザマスク61を構成する格納要素の数と、図5に示した着目領域を構成する画素数とは同数であるから、各々の格納要素をグループ化した結果は、図5に示した往動画素グループと復動画素グループとの関係と一致する。
【0093】
このようにグループ設定処理を行うと、次に、ずれパターン設定処理を行う(ステップS820)。ずれパターン設定処理とは、ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の印刷媒体上での形成位置が、当該区分されたドット群の間で、所定の方向に所定量だけずれた状態を示す、ずれパターンを複数種類想定し、設定する処理である。具体的には、実際に印刷を行った際に、ステップS810でグループ化したグループ間(ここでは、往動画素グループと復動画素グループとの間)で生じる位置ずれの方向およびずれ量を複数種類想定する。なお、本実施例のステップS820は、ユーザーが設定したずれパターンをCPUが読み込む処理である。
【0094】
本実施例において想定するずれパターンを図17に示す。この例では、図示するように、往動画素グループに対する復動画素グループの位置ずれを、主走査方向に沿って0.5画素間隔で−2〜2画素の間で設定し、また、副走査方向に沿って0.5画素間隔で−2〜2画素の間で設定し、これらの位置ずれの組み合わせの中から、21個のずれパターンP1〜P21を想定している。本実施例においては、想定するずれパターンの中には、位置ずれが生じていないパターン(図中のパターンP5)を含んでいる。ただし、位置ずれが生じていないパターンを含むことは必須ではない。かかるずれパターンは、上述の例に限らず、プリンター20の特性を考慮して設定すればよい。例えば、プリンター20で印刷した印刷画像を分析して、実際に生じやすい位置ずれの方向やずれ量を、ずれパターンとして設定すればよい。
【0095】
こうして、ずれパターン設定処理を行うと、次に、決定格納要素のドットをONにし(ステップS830)、候補格納要素選択処理を行い(ステップS840)、候補格納要素のドットをONにする(ステップS850)。ステップS830〜S850の処理は、第1実施例におけるステップS410〜S430(図7参照)の処理と同様であり、詳しい説明は省略する。
【0096】
候補格納要素のドットをONにすると、次に、ずれパターン選択処理を行う(ステップS860)。ずれパターン選択処理とは、ステップS820で設定したn個(nは2以上の整数、ここではn=21)のずれパターンのうちから、1つのずれパターンPj(jは1以上n以下の整数)を選択する処理である。
【0097】
パターンPjを選択すると、次に、パターンPjの位置ずれを前提とした被覆率Cjを算出する(ステップS870)。被覆率Cjの算出方法の具体例について、図18を用いて詳しく説明する。この例は、図17に示したずれパターンP7(主走査方向に1.0画素、副走査方向に0.0画素のずれ)を前提とした被覆率C7を算出する例である。
【0098】
被覆率Cjの算出においては、まず、決定格納要素のドット形成パターンの区分を行う。図18(A)は、ステップS850で求めた決定格納要素のドット形成パターンを示している。図示するように、決定格納要素のドット形成パターンは、上記ステップS810で行われたグループ化に基づいて、往動画素グループに対応する格納要素により構成される往動ドット形成パターンと、復動画素グループに対応する格納要素により構成される復動ドット形成パターンとに区分することができる。
【0099】
決定格納要素のドット形成パターンを区分すると、次に、ドット形状を定義する。図18(B)は、第1実施例の図10(B)と同様に定義したドット形状を示している。このようにドット形状を定義すると、次に、決定格納要素のドット形状パターンと定義したドット形状とに基づいて、被覆率算定用のドット形成パターンを求める。被覆率C7の算定用のドット形成パターンを図18(C)に示す。このドット形成パターンは、図18(A)に示したドット形成パターンの各ドットを、図18(B)に示したドット形状に置き換え、さらに、復動ドット形成パターンを、ずれパターンP7の位置ずれに対応させたもの、つまり、主走査方向に1.0画素分ずらしたものである。図18(C)における各画素の表示方法は、図10(c)と同様である。ただし、●印で表示した画素は、図18(A)に示したドット形成パターンに対応するドットと、インクの広がりにより形成されると見なし得るドットとが重畳していることを示している。
【0100】
こうして、被覆率算定用のドット形成パターンを求めると、第1実施例と同様に、式(2)を用いて、被覆率C7を算出する。その結果、被覆率C7は、72.9%(=105/144×100)となる。なお、上述した例では、第1実施例で説明した手法により、ドット形状の解像度を高めてドット形状を定義している。こうすれば、第1実施例と同様に、インクの広がりの特性をより忠実に反映できる効果が得られるほか、図17に示したように、位置ずれ量を小数点以下の精度で設定することが可能となる。その結果、位置ずれ量の想定を、実際に生じる位置ずれに即して、精度良く行うことができる。なお、上述した被覆率Cjの算出においては、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cjを求めたが、第2実施例においては、インクの広がりを反映させずに、被覆率Cjを算出してもよい。
【0101】
ここで説明を図16の第1のディザマスク評価処理に戻す。被覆率Cjを算出すると、次に、ステップS820で設定した全てのずれパターンP1〜Pnについて被覆率Cjを算出するまで、上記ステップS860,S870の工程を繰り返す(ステップS880)。こうして、全てのずれパターンP1〜Pnについて被覆率Cjを算出すると(ステップS880:YES)、算出した被覆率C1〜Cnに基づいて、評価値E1を算出する(ステップS890)。
【0102】
この評価値E1は、第1実施例と同様に、ドットの重なりの程度に関する評価値であるが、ここでは、第1実施例と算出方法が異なる。具体的には、評価値E1は、被覆率C1〜Cnの、ずれパターンP1〜Pnの間における変動を定量化した評価値である。本実施例においては、位置ずれが生じていない状態を示す、ずれパターンP5を前提として算出される被覆率C5と、それ以外の被覆率C1〜C4,C6〜Cnとの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値のうちの最大値を評価値E1として採用するものとした。
【0103】
評価値E1を算出すると、全ての候補格納要素(空白格納要素)について評価値E1を算出するまで、上記ステップS840〜S890の工程を繰り返す(ステップS900)。こうして、全ての候補格納要素について評価値E1を算出すると(ステップS900:YES)、第1のディザマスク評価処理は終了となる。なお、上記ステップS810では、往復動グループと対応付けて、グループ設定処理を行ったが、パスグループと対応付けてグループ設定処理を行う場合には、ステップS820において、第1〜第4の画素グループの全ての組み合わせについて、ずれパターンを想定してもよいし、一部の組み合わせについてのみ、ずれパターンを想定してもよい。パスグループと対応付けてグループ設定処理を行う場合には、位置ずれを想定する画素グループの組み合わせの数が多数になるので、一部の組み合わせについてのみ、ずれパターンを想定し、被覆率Cjを求めれば、処理を高速化することができる。
【0104】
以上の説明からも明らかなように、本実施例では、位置ずれが生じない場合の被覆率と、想定した位置ずれが生じた場合の被覆率との間での変動が小さくなるように、着目閾値を格納する格納要素を決定するために、評価値E1を設定しているのである。こうすれば、位置ずれが生じない場合を基準として、位置ずれによるドットの疎密の偏りが当該基準から小さくなるように、着目閾値を格納する格納要素を決定することができる。
【0105】
かかるディザマスク61の生成方法は、複数種類のずれパターンを想定し、ずれパターンごとに、ドットの重なりの程度を示す被覆率Cを算出し、被覆率Cの変動を定量化した評価値によって、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する。したがって、ずれパターンとして想定したずれが生じた場合に、ドットの重なりの程度の変動を好適に抑制することができる。かかる方法で生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行って印刷を行えば、ずれパターンとして想定したずれが生じても、濃度ムラの発生を抑制することができる。また、想定する複数種類のずれパターンに、ずれが生じていない状態を含むので、ずれが生じなかった場合と、ずれが生じた場合との間で、ドットの重なりの程度が大きく変動することを抑制することができる。その結果、ずれが生じる場合と、生じない場合とのいずれの場合においても、濃度ムラを抑制した印刷結果が得られるディザマスク61を生成することができる。なお、第2実施例としてのディザマスク61の生成方法は、第1実施例で説明した評価値E2に基づく評価手法も含んでいるので、印刷画質の粒状性について、第1実施例と同様の効果を奏することは勿論である。
【0106】
C.変形例:
上述の実施形態の変形例について説明する。
C−1.変形例1:
上述の実施形態においては、ドットの重なりの程度に関する指標としての評価値E1と、ドットの分散の程度に関する指標としての評価値E2とに基づいて算出される総合評価値CEによって、着目閾値を格納する空白格納要素を決定したが、かかる決定工程において、評価値E2は必ずしも考慮しなくてもよい。つまり、第2のディザマスク評価処理(ステップS500)を省略して、評価値E1のみに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定してもよい。こうしても、上述した濃度ムラの抑制効果を奏する。しかも、ドットの重なりの程度のみを指標としてディザマスク61を生成することから、上述した実施形態よりも、ドットの重なりの変動を抑制する効果を高めることができる。また、評価値E2の算出を省略すると、ディザマスク61の生成に係る演算速度を速くすることができる。
【0107】
なお、評価値E1のみに基づいて、着目閾値を格納する空白格納要素を決定する場合、格納要素決定処理においては、評価値E1が最も小さい候補格納要素が複数存在することも考えられるが、その場合には、これら複数の候補格納要素の中から、ランダムに1つを選択してもよいし、評価値E2を算出して、ドットの分散性に優れたものを選択してもよい。あるいは、所定の設定に基づいて選択してもよい。こうした設定としては、例えば、候補格納要素を右上から主走査方向に沿ってスキャンしていき、最初の候補格納要素を選択すること、往動と復動とのうちの往動に対応する候補格納要素を優先することなどとすることができる。あるいは、所定の法則に基づいて選択してもよい。こうした法則としては、例えば、第1〜第4の画素グループに対応する候補格納要素を順番に選択することなどとすることができる。
【0108】
C−2.変形例2:
上述の実施形態では、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cを算出する際、ドットのON/OFFのみに着目して、式(2)により被覆率を算出したが、各画素におけるドットの重なりの数を反映した被覆率を算出してもよい。例えば、上述した式(2)により被覆率Cを算出するために、ドットが形成される画素数を計上するにあたり、ドットの重なりのない画素(1つのドットのみが形成される画素、例えば、図9(C)では、A,Bと表示した画素)は、調整係数0.6を乗じた画素数、2つのドットが重なって形成される画素(例えば、図9(C)では、Cと表示した画素)は、調整係数0.8を乗じた画素数、3つ以上のドットが重なって形成される画素(図9(C)では、該当無し)は、調整係数1.0を乗じた画素数で計上してもよい。このように、ドットの重なりが増えるほど、重み付けを大きくしているのは、1つの画素に形成されるドットが多く重なるほど、当該画素における印刷濃度が高くなるからである。要するに、各画素の濃度差を反映した被覆率を算出するのである。印刷画像の濃度ムラは、局所的なドットの疎密の偏りに限らず、ドットの濃度の偏りによっても生じ得るので、このようにして、位置ずれに伴う濃度変動も抑制すれば、被覆率Cに基づいた濃度ムラの抑制効果を高めることができる。以上の説明からも明らかなように、ドットの重なりの程度に関する評価値は、単純なドットのON/OFFの割合に限らず、ドットの重なりに応じて算出される所定範囲の平均階調値とすることもできる。例えば、1つのドットのみが形成される画素の階調値を値128,2つのドットが重畳して形成される画素の階調値を値200として、平均階調値を算出してもよい。
【0109】
また、同様の観点から、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cを算出する際、インクの着弾が予定される画素(例えば、図9(C)では、Aと表示した画素)は、インクの広がりによりドットが形成されると見なし得る画素(例えば、図9(C)では、B,Cと表示した画素)よりも、相対的に重み付けを大きくして、ドットが形成される画素数を計上してもよい。インクが着弾したドット形成位置においては、インクの広がりによりドットが形成されたドット形成位置よりも、インク濃度が高くなるためである。
【0110】
C−3.変形例3:
上述の実施形態においては、インクの広がりを反映したドット形状を定義して被覆率Cを算出する際、全てのドット形状を同一の形状で定義したが、形成されるドットの特性に応じて、異なる形状でドット形状を定義してもよい。例えば、ドットを複数の大きさ、例えば、大ドット、中ドット、小ドットで打ち分ける場合には、それぞれのドットの大きさに応じて、インクの着弾が予定される画素や、インクの広がりによりドットが形成される画素の大きさを変化させてもよい。こうすれば、ドットの重なりの程度の評価をより高精度に行うことができ、その結果、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0111】
あるいは、印刷ヘッド90の往動で形成されるドットの形状と、復動で形成されるドットの形状とを異なる形状として定義してもよい。印刷ヘッド90から吐出され、印刷媒体に着弾するインクは、印刷ヘッド90の進む方向に速度成分を持つので、印刷ヘッド90の進む方向に対して、より広がりやすい特性を有するからである。こうしても、ドットの重なりの程度の評価をより高精度に行うことができ、その結果、濃度ムラの抑制効果を高めることができる。
【0112】
C−4.変形例4:
上述の実施形態では、全ての階調において、つまり、ディザマスク61を構成する全ての閾値について、ドットの重なりの程度やドットの分散の程度を評価して、閾値を格納する格納要素を決定する態様について示したが、かかる格納要素の決定手法は、一部の階調範囲のみに適用してもよい。例えば、濃度ムラが顕著になりやすい高階調(高濃度)領域についてのみ、第1実施例、第2実施例または変形例1の手法により、閾値を格納する格納要素を決定してもよい。あるいは、階調によって、上述した手法を切り替えてもよい。例えば、中間階調(中濃度)領域では、位置ずれに伴う粒状性の悪化が生じやすいので、第1実施例や第2実施例に示した手法を用い、高階調(高濃度)領域では、位置ずれに伴う粒状性の悪化が生じにくいので、変形例1に示した手法を用いてもよい。
【0113】
C−5.変形例5:
上述の実施形態においては、評価値E2として、ディザマスク61の決定格納要素の全体が表すドット形成パターンと、第1〜第4の画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンと、往復動画素グループに対応する決定格納要素が表すそれぞれのドット形成パターンとについて、ドットの分散の程度を所定の重み付けで総合評価した評価値を用いたが、必ずしも、全体が表すドット形成パターンと、第1〜第4の画素グループに対応するドット形成パターンと、往復動画素グループに対応するドット形成パターンとの3つのドット形成パターンを対象とする必要はなく、これらのうちの少なくとも1つを対象とするものであってもよい。
【0114】
C−6.変形例6:
上述の実施形態では、式(1),式(6)に用いるα〜ιの重み付け係数を一定値としたが、これらは、印刷階調に応じて変化するように設定してもよい。例えば、位置ずれに伴い粒状性の悪化を招きやすい低階調(低濃度)〜中間階調領域においては、他の階調領域と比べて、画像を構成するドットの一部を構成するグループに対する評価値の重み付け係数γ〜θを、画像を構成する全てのドットに対する評価値の重み付け係数ιよりも大きくしてもよい。また、位置ずれにより濃度ムラが発生しやすい高階調領域においては、他の階調領域と比べて、ドットの重なりの程度に関する評価値E1の重み付け係数αを、ドットの分散の程度に関する評価値E2の重み付け係数βよりも大きくしてもよい。こうすれば、印刷階調に応じた主要な課題を解決することができ、広範囲な印刷階調にわたって、印刷画質を向上させることができる。また、このように、印刷階調に応じて重み付け係数を変化させる場合、その変化を段階的なものとしてもよい。こうすれば、わずかな階調変化によってドット形成パターンが急激に変化することがない。したがって、印刷画質をさらに向上させることができる。
【0115】
C−7.変形例7:
上述の実施形態においては、ドットの分散の程度を示す評価値E2qとして、粒状性指数を用いたが、評価値E2qは、ドット配置の分散の程度を評価できるものであればよい。例えば、評価値E2qは、RMS粒状度を用いてもよい。RMS粒状度は公知の技術であるため(例えば、特開2007−174272号公報)、詳しい説明は省略するが、ドット密度値に対して、ローパスフィルターを用いてローパスフィルター処理を行うとともに、ローパスフィルター処理がなされた密度値の標準偏差を算出するものである。あるいは、ローパスフィルター処理後のドット密度を評価値E2qとしてもよい。これは、いわゆるポテンシャル法に用いられる評価値である。
【0116】
C−8.変形例8:
上述の第2実施例では、評価値E1として、位置ずれが生じていない状態を示す、ずれパターンP5を前提として算出される被覆率C5と、それ以外の被覆率C1〜C4,C6〜Cnとの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値のうちの最大値を用いたが、この評価値E1は、被覆率C1〜Cnの、ずれパターンP1〜Pnの間における変動を定量化した評価値であればよい。例えば、被覆率C1〜Cnの全ての組み合わせについて、当該組み合わせの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値の最大値を評価値E1としてもよい。こうしても、ドットの重なりの程度の最大の変動幅を小さくすることができるので、濃度ムラの抑制効果が得られる。また、評価値E1として、被覆率C1〜Cnの標準偏差や分散などを用いてもよい。こうすれば、被覆率C1〜Cnのばらつきの程度を小さくすることができるので、安定した濃度ムラの抑制効果が得られる。
【0117】
あるいは、被覆率C1〜Cnの全ての組み合わせについて、当該組み合わせの差分の絶対値をそれぞれ算出し、得られた値の各々を所定の重み付けで足し合わせた値を評価値E1としてもよい。こうした場合には、位置ずれが生じていない状態を示す、ずれパターンP5を前提として算出される被覆率C5との差分は、重み付けを大きくしてもよい。その理由は、以下の通りである。例えば、所定方向に2画素分の位置ずれが生じた第1の印刷領域と、当該所定方向に−2画素分の位置ずれが生じた第2の印刷領域との間には、位置ずれが生じていない第3の領域が存在する可能性が高い。換言すれば、第1の印刷領域と第2の印刷領域とが隣接することは少なく、多くの場合、その間に第3の印刷領域が介在する。このようなことから、第3の印刷領域の領域と第1の印刷領域との間での被覆率Cの変動と、第3の印刷領域の領域と第2の印刷領域との間での被覆率Cの変動とを抑制すれば、つまり、位置ずれが生じていない状態に対する被覆率の変動差に重きをおけば、濃度ムラは視認されにくくなるのである。
【0118】
C−9.変形例9:
上述した実施形態においては、空白格納要素の1つに対して着目閾値を格納したとして、空白格納要素の各々について所定の評価値を算出し、当該評価値に基づいて、着目閾値の格納場所を決定することにより、順次、閾値を空白格納要素に格納していくことで、ディザマスク61を生成する手法について示したが、ディザマスク61の生成手順はこの限りではない。例えば、以下のように、ディザマスク61を生成してもよい。(1)まず、ディザマスク61の格納要素にランダムに閾値を格納する。なお、上述した評価値E2などによって、閾値の配置を決定してもよい。次に、(2)その中から任意の2つの閾値を選択し、当該2つの閾値の格納場所を入れ替えた場合と、入れ替えない場合について、上述した総合評価値CE(または評価値E1)を算出する。そして、(3)評価値が優れた方向に変化する場合に限り、2つの閾値の格納場所を入れ替える。そして、(4)上記(2),(3)の工程を、評価値が優れた方向に収束するまで繰り返す。こうしても、上述の実施形態と同様の特性を有するディザマスク61を生成することができる。
【0119】
C−10.変形例10:
上述した実施形態においては、シリアル方式のインクジェット式プリンターに搭載するディザマスク61の生成方法について示したが、本発明のディザマスクの生成方法や、当該方法により生成したディザマスクは、他の形式のプリンターにも適用することができる。例えば、第2実施例に示した方法は、印刷ヘッドを移動させながら印字する種々のプリンターであれば、広く適用することができ、例えば、ドットインパクト式プリンターにも適用することができる。
【0120】
また、本発明のディザマスクの生成方法や、当該方法により生成したディザマスクは、複数の印刷ヘッドを印刷媒体の幅方向の全体に亘って配列し、隣接する印刷ヘッド同士の一部をオーバーラップさせたラインプリンターにも適用することができる。具体的には、印刷ヘッドのオーバーラップ領域に適用するディザマスクの生成方法などとしても実現することができる。この場合、上述の実施形態で述べた位置ずれは、オーバーラップ領域を構成する印刷ヘッド間でのインクの着弾位置ずれとして捉えればよい。また、ディザマスク61は、プリンターに搭載されるものに限らず、パーソナルコンピュータなどの情報端末でハーフトーン処理が行われる場合には、情報端末に搭載するものであってもよい。
【0121】
以上、本発明の実施形態について説明したが、上述した実施形態における本発明の構成要素のうち、独立クレームに記載された要素以外の要素は、付加的な要素であり、適宜省略、または、組み合わせが可能である。また、本発明はこうした実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を脱しない範囲において、種々なる態様で実施できることは勿論である。例えば、本発明は、ディザマスクの生成方法、当該方法により生成したディザマスクを搭載した印刷装置、当該方法により生成したディザマスクによりハーフトーン処理を行うプログラム、ディザマスクの生成プログラム、これらのプログラムを記録した記憶媒体等としても実現することができる。
【符号の説明】
【0122】
20…プリンター
30…制御ユニット
40…CPU
41…入力部
42…ハーフトーン処理部
43…印刷部
51…ROM
52…RAM
60…EEPROM
61…ディザマスク
70…キャリッジモータ
71…駆動ベルト
72…プーリ
73…摺動軸
74…紙送りモータ
75…プラテン
80…キャリッジ
82〜87…インクカートリッジ
90…印刷ヘッド
98…メモリカードスロット
99…操作パネル
P…印刷媒体
MC…メモリカード
Nz…ノズル
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の格納要素の各々に閾値が格納されたディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、画像の所定の階調値に対して、前記閾値が格納された格納要素の配置に基づいて、印刷媒体上に所定の形成パターンでドットを生じさせるハーフトーン処理に用いられ、
前記ドットの形成パターンから想定される前記印刷媒体上のドットの重なりの程度と、該ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度とを指標として、前記閾値の少なくとも一部が格納される前記格納要素の配置を決定する
ディザマスクの生成方法。
【請求項2】
請求項1記載のディザマスクの生成方法であって、
前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、
前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、
前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、
前記算出した第1の評価値および第2の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第5の工程と
を備え、
前記第2ないし第5の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成する
ディザマスクの生成方法。
【請求項3】
請求項1記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、
前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、
前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、
前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、
前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、
前記算出した第1の評価値、第2の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第8の工程と
を備え、
前記第2ないし第4、第7および第8の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成する
ディザマスクの生成方法。
【請求項4】
請求項1記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、
前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、
前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、
前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、
前記算出した第1の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第9の工程と
を備え、
前記第2、第3、第6、第7および第9の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成する
ディザマスクの生成方法。
【請求項5】
前記第1の評価値は、前記ドットの形成パターンから想定される、実際に形成されるドットが前記印刷媒体を覆う割合を示すドット被覆率に基づいて算出される請求項2ないし請求項4のいずれか記載のディザマスクの生成方法。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、前記印刷媒体上にインクを吐出して前記ドットを形成する印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記第3の工程は、前記インクが前記印刷媒体上に着弾した際の、該インクの該印刷媒体上での広がりを想定し、該想定した広がりを前記ドットの形成パターンに反映させて、前記第1の評価値を算出する
ディザマスクの生成方法。
【請求項7】
前記インクの広がりを、該広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定する請求項6記載のディザマスクの生成方法。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記第3の工程は、
前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間で、所定の方向に所定量だけずれた状態を示す、ずれパターンを複数種類想定する工程と、
前記複数種類のずれパターンごとに、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、
前記複数種類のずれパターンごとに算出された評価値の、該複数種類のずれパターンの間における変動を定量化した評価値を、前記第1の評価値として算出する工程と
を備えたディザマスクの生成方法。
【請求項9】
前記複数種類のずれパターンには、前記ずれが生じていない状態を含む請求項8記載のディザマスクの生成方法。
【請求項10】
請求項6または請求項7記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記第3の工程は、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、
印刷階調に応じた、前記ドットの重なりの程度を示す評価値の目標値を設定する工程と、
前記ドットの重なりの程度を示す評価値と、前記設定した目標値との離隔の程度を示す評価値を前記第1の評価値として算出する工程と
を備え、
前記目標値は、前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間でいずれの方向にもずれていない状態における前記ドットの形成パターンから想定される前記ドットの重なりの程度よりも、該ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定される
ディザマスクの生成方法。
【請求項11】
印刷装置であって、
請求項1ないし請求項10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを記憶する手段と、
前記記憶したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う手段と
を備えた印刷装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う機能をコンピューターに実現させるためのプログラム。
【請求項1】
複数の格納要素の各々に閾値が格納されたディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、画像の所定の階調値に対して、前記閾値が格納された格納要素の配置に基づいて、印刷媒体上に所定の形成パターンでドットを生じさせるハーフトーン処理に用いられ、
前記ドットの形成パターンから想定される前記印刷媒体上のドットの重なりの程度と、該ドットの形成パターンが表すドットの分散の程度とを指標として、前記閾値の少なくとも一部が格納される前記格納要素の配置を決定する
ディザマスクの生成方法。
【請求項2】
請求項1記載のディザマスクの生成方法であって、
前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、
前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、
前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、
前記算出した第1の評価値および第2の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第5の工程と
を備え、
前記第2ないし第5の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成する
ディザマスクの生成方法。
【請求項3】
請求項1記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、
前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、
前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表すドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第2の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第4の工程と、
前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、
前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、
前記算出した第1の評価値、第2の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第8の工程と
を備え、
前記第2ないし第4、第7および第8の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成する
ディザマスクの生成方法。
【請求項4】
請求項1記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記複数の格納要素の少なくとも一部に対応して、該少なくとも一部の格納要素に格納する閾値を用意する第1の工程と、
前記用意した閾値が未だ格納されていない格納要素である空白格納要素に格納すべき前記閾値の1つを着目閾値として選択する第2の工程と、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度に関する第1の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第3の工程と、
前記複数の格納要素に格納された各々の閾値が前記ハーフトーン処理で適用されるドット形成位置でのドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して、該複数の格納要素を、複数のグループに区分する第6の工程と、
前記区分されたグループごとに、該グループに属する格納要素に対応し、かつ、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンに基づいて、該ドットの分散の程度を示す第3の評価値を、前記指標として、前記空白格納要素の各々について算出する第7の工程と、
前記算出した第1の評価値および第3の評価値に基づいて、前記着目閾値を格納する前記空白格納要素を決定する第9の工程と
を備え、
前記第2、第3、第6、第7および第9の工程を所定回数繰り返して、前記ディザマスクを生成する
ディザマスクの生成方法。
【請求項5】
前記第1の評価値は、前記ドットの形成パターンから想定される、実際に形成されるドットが前記印刷媒体を覆う割合を示すドット被覆率に基づいて算出される請求項2ないし請求項4のいずれか記載のディザマスクの生成方法。
【請求項6】
請求項2ないし請求項5のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、前記印刷媒体上にインクを吐出して前記ドットを形成する印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記第3の工程は、前記インクが前記印刷媒体上に着弾した際の、該インクの該印刷媒体上での広がりを想定し、該想定した広がりを前記ドットの形成パターンに反映させて、前記第1の評価値を算出する
ディザマスクの生成方法。
【請求項7】
前記インクの広がりを、該広がりがないと仮定した場合のドットサイズよりも高い解像度で想定する請求項6記載のディザマスクの生成方法。
【請求項8】
請求項2ないし請求項7のいずれか記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記第3の工程は、
前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間で、所定の方向に所定量だけずれた状態を示す、ずれパターンを複数種類想定する工程と、
前記複数種類のずれパターンごとに、前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、
前記複数種類のずれパターンごとに算出された評価値の、該複数種類のずれパターンの間における変動を定量化した評価値を、前記第1の評価値として算出する工程と
を備えたディザマスクの生成方法。
【請求項9】
前記複数種類のずれパターンには、前記ずれが生じていない状態を含む請求項8記載のディザマスクの生成方法。
【請求項10】
請求項6または請求項7記載のディザマスクの生成方法であって、
前記ディザマスクは、印刷ヘッドを前記印刷媒体に対して主走査方向および副走査方向に相対移動させながら、該印刷媒体上にドットを形成して印刷を行う印刷装置で印刷を行うための前記ハーフトーン処理に用いられ、
前記第3の工程は、
前記空白格納要素の1つに対して前記着目閾値を格納したとした場合に、前記閾値が既に格納された格納要素の配置が表す前記ドットの形成パターンから想定される、前記ドットの重なりの程度を示す評価値を算出する工程と、
印刷階調に応じた、前記ドットの重なりの程度を示す評価値の目標値を設定する工程と、
前記ドットの重なりの程度を示す評価値と、前記設定した目標値との離隔の程度を示す評価値を前記第1の評価値として算出する工程と
を備え、
前記目標値は、前記ドットの形成をいずれの主走査で行うかの違いに着目して区分されるドット群の前記印刷媒体上での形成位置が、該区分されたドット群の間でいずれの方向にもずれていない状態における前記ドットの形成パターンから想定される前記ドットの重なりの程度よりも、該ドットの重なりの程度が大きい範囲で設定される
ディザマスクの生成方法。
【請求項11】
印刷装置であって、
請求項1ないし請求項10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを記憶する手段と、
前記記憶したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う手段と
を備えた印刷装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項10のいずれか記載の方法によって生成したディザマスクを用いてハーフトーン処理を行う機能をコンピューターに実現させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−121250(P2011−121250A)
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−280086(P2009−280086)
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月23日(2011.6.23)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年12月10日(2009.12.10)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】
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