説明

ディスククランプ装置

【課題】簡易構造でありながらディスクの反りなどに起因する面振れ回転を好適に抑制することのできるディスククランプ装置を提供する。
【解決手段】ディスクDを回転させるターンテーブル1と協同してディスクDを挟み込む回転自在なクランプ盤4を有する。クランプ盤4は、ターンテーブル1と対向する側の第1の面に、ディスクDの外周縁を当接させるための環状凸部42と該環状凸部で囲まれる凹部43とを備える。又、クランプ盤4は、該クランプ盤4の軸線を中心とする円周上の位置で、前記第1の面とは反対の第2の面側に突出する所定の断面形状を有した隆起部44を備える。隆起部44は、クランプ盤4がディスクDを介してターンテーブル1で回転されるとき凹部43内の空気が前記第2の面側に流出するよう穿設された吸気孔45を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク駆動装置に用いられるディスククランプ装置に係わり、特に回転すべきディスクの反りを矯正し、その回転時の面振れを抑制できるようにしたディスククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、オーディオ情報やビジュアル情報の記録/再生に用いられるディスク駆動装置は、情報記録媒体としてのディスクをターンテーブルに載せて回転させながら、その半径方向にピックアップを移動させて情報の読み出しや書き込みを行う構成とされている。
【0003】
ここに、ディスクをターンテーブルに固定する方法として、ターンテーブルにディスクの中心孔の周縁を押え込むチャック爪を設けたもの、あるいはターンテーブルに対向して配置されるクランプ盤によりディスクの中心部をターンテーブルに押し付けるようにしたものが知られる。
【0004】
しかし、その何れもディスクの中心部分を保持するだけなので、ディスクの回転時に外部からの伝搬振動を受けてディスクの外周側が大きく振動してしまったり、ディスクの反りにより面振れを起こしてしまったりすることがあり、このためトラッキングサーボやフォーカスサーボといった制御系が激しく変動し、再生音にノイズを生ずるなど情報の記録/再生に支障を来たすことがあった。
【0005】
そこで、クランプ盤(クランパ)にディスクを上面から覆う大きさのクランパテーブルを設ける一方、ターンテーブルの回転軸(スピンドルモータの回転軸)にファンを固定するか、又はクランプ盤にファンモータを内蔵し、そのファンの回転によりクランプ盤とディスクとの間の空気がディスクの中心側を通じて外部に流出するようにしたディスククランプ装置が発案されている(例えば、特許文献1)。
【0006】
そして、特許文献1によれば、クランプ盤とディスクとの間の空気が流出されることにより、ディスクが全面的にクランプ盤に吸着して平面状となるために、その面振れ等が抑制されるとしている。
【0007】
又、ターンテーブルをその外周にリング状リブを有した皿状回転盤とし、その外周面あるいは底面に排気通路を設け、皿状回転盤の回転による遠心力によりその内部空気が排気通路を通じて外部に排出されることで皿状回転盤上に載置されたディスクが皿状回転盤に吸着するようにした装置が発案されている(例えば、特許文献2)。
【0008】
【特許文献1】特開平9−63167号公報
【0009】
【特許文献2】特開昭57−150104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、特許文献1のように、ターンテーブルの回転軸にファンを取り付けたりクランプ盤にファンモータを内蔵したりする構成では、ターンテーブルやクランプ盤の構造が複雑となり、装置コストが高くなるという欠点がある。
【0011】
特に、クランプ盤にファンモータを内蔵する構成では、ファンモータを組み付けるために作業工数が増え、生産性の悪化を招く上、ファンモータをターンテーブルに同期して回転させるための制御回路を構築しなければならない。
【0012】
一方、特許文献2は、ディスクと皿状回転盤とで囲まれた空間内の空気が遠心力の作用で外部に排出されるようにしたものであるから、皿状回転盤の内側にディスクの反りを矯正するような大きな負圧を発生させることは難しく、しかもターンテーブルでディスクの片面側を覆うような構成では、情報の読み書きに用いられるピックアップの配置に工夫を凝らさなければならない。
【0013】
本発明は以上のような事情に鑑みて成されたものであり、その目的は簡易構造でありながらディスクの反りなどに起因する面振れ回転を好適に抑制することのできるディスククランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0014】
上記目的を達成するため、本発明に係るディスククランプ装置は、
ディスクDを回転させるターンテーブル1と協同してディスクDを挟み込む回転自在なクランプ盤4を有し、
クランプ盤4は、
ターンテーブル1と対向する側の第1の面に、ディスクDの外周縁を当接させるための環状凸部42と該環状凸部で囲まれる凹部43とを備えると共に、
該クランプ盤4の軸線を中心とする円周上の位置で、前記第1の面とは反対の第2の面側に突出する所定の断面形状を有した隆起部44を備え、
隆起部44は、クランプ盤4がディスクDを介してターンテーブル1で回転されるとき凹部43内の空気が前記第2の面側に流出するよう穿設された吸気孔45を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るディスククランプ装置によれば、クランプ盤の片面(第1の面)にディスクの外周縁を当接させるための環状凸部と該環状凸部で囲まれる凹部とを設け、そのクランプ盤がディスクを介してターンテーブルで回転されるとき凹部内の空気がターンテーブルとは反対の面(第2の面)側に流出する構成としたことから、反りを生じているディスクでも、これを平面状に矯正して面振れなく安定回転させることができる。
【0016】
特に、本発明ではクランプ盤にディスクを吸着せしめる吸気力を発生させるために、クランプ盤における第2の面に所定の断面形状を有する隆起部を設け、その隆起部の部位に凹部内の空気を流出させる吸気孔を穿設しただけなので、簡易構造にして装置コストを抑制することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係るディスククランプ装置の具体的な構成例を図面に基づいて詳しく説明する。図1、図2は係るディスククランプ装置の使用態様を示した部分断面図であり、図1はディスクがクランプされていない状態、図2はディスクがクランプされた状態を示している。
【0018】
図1、図2において、1はディスクDを回転させるためのターンテーブル、2はターンテーブル1により回転されるディスクDの盤面に沿ってその半径方向に移動しながらディスクDに情報を記録したりその記録情報を読み出したりするピックアップであり、そのターンテーブル1やピックアップ2はトラバースメカと呼ばれる一体構造のユニット(ドライブユニット)を構成し、そのユニット全体がターンテーブル1の軸方向に移動可能とされる。
【0019】
ここに、ターンテーブル1は、モータ3のロータ軸に固着されて一方向に回転駆動するものであり、その中心部にはディスクDの中心孔に嵌合する円錐台状のボス部1aが設けられ、そのボス部1aの外周には鍔部1bが設けられる。そして、その鍔部1bによりディスクDが中心孔の周囲を支持されるようになっている。尚、本例においてターンテーブル1は強磁性体から形成され、ディスクDをクランプするときには磁力作用により後述するクランプ盤と吸着する。
【0020】
4はディスク回転時にターンテーブル1と協同してディスクDを挟み込む(クランプする)上記のクランプ盤であり、このクランプ盤4はターンテーブル1に対向する位置で装置フレーム5に回転自在に取り付けられる。尚、クランプ盤4の回転軸4aの一端外周部には、ターンテーブル1側への移動を規制する抜止め用の鍔部6が設けられる。
【0021】
又、クランプ盤4はディスクDより少し大きい直径を有する円盤状で、ターンテーブル1と対向する側の面(第1の面)には、図2のようにディスクDの片面を支持する2つの環状凸部41,42が同心円状に形成され、その両者41,42間が外周側の環状凸部42により囲まれる環状の凹部43とされている。そして、ディスクDのクランプ時において、内周側の環状凸部41の内側にターンテーブル1のボス部1aが入り込み、外周側の環状凸部42に対してディスクDの外周縁が当接するようになっている。
【0022】
尚、クランプ盤4には、回転軸4aの外周部においてマグネット7が取り付けられており、その磁力によりターンテーブル1とクランプ盤4とが互いに吸引し合い、その吸引力にてディスクDのクランプが行われるようになっている。又、クランプ盤4とターンテーブル1とのラジアル方向の位置決めは、図3のように回転軸4aとボス部1aの中心に形成した窪1a´との嵌合で行われる。
【0023】
一方、クランプ盤4の表面(環状凸部41,42や凹部43などが形成される面とは反対の第2の面)には、凹部43の位置に対応して所定の断面形状を有する隆起部44が突設される。
【0024】
図4は係るクランプ盤4を表面側からみた平面図であり、図5にはその一部を拡大した断面を示している。図4から明らかなように、上記隆起部44はクランプ盤4の軸線(回転軸4a)を中心とする円周上に複数が等間隔に設けられる。本例において、係る隆起部44は、4つが90度間隔に設けられており、その各々は曲面状の凸面44aを有してクランプ盤4の回転方向に沿う縦断面が翼形とされている。
【0025】
そして、クランプ盤4には、その回転時において凹部43内の空気がターンテーブル1とは反対の面(上記第2の面)側に流出するよう、凹部43から各隆起部44の部位に開通する吸気孔45が穿設される。特に、各隆起部44には、ターンテーブル1によるクランプ盤4の回転方向(図4の時計回り)に対して後方となる位置で吸気孔45が穿設されている。これによれば、クランプ盤4の回転時に各隆起部44の凸面44aに沿って流れる空気の流速が上がり、その周囲の気圧が凹部43内よりも低下するために、凹部43内の空気が吸気孔45を通じてクランプ盤4の表面側に流出し、その吸気力により凹部43に対向するディスクをクランプ盤4に吸着せしめることができる。
【0026】
図6は、クランプ盤4の回転によりディスクDがクランプ盤4に吸着されている状態を示す。尚、図6において、クランプ盤4は図4のX−X断面として示される。ここに、ディスクDがターンテーブル1側に反っている場合、ターンテーブル1で支持されないディスクDの外周縁は環状凸部42に当接せずしてその両者間に隙間を生ずるが、本発明ではクランプ盤4の回転に起因して凹部43内の空気がクランプ盤4の表面側に流出されることにより、ディスクDの外周側が凹部43側に引き寄せられ、その外周縁が環状凸部42に当接される。このため、反りを生じているディスクDでも、これを平面状に矯正して面触れのない安定した状態で回転させることができる。
【0027】
ここで、以上のように構成されるディスククランプ装置の作用を説明すれば、図1のように、ディスクDがクランプされていない状態において、ディスクDを載せたターンテーブル1がクランプ盤4側に移動されると、環状凸部41の内側にターンテーブルのボス部1aが入り込み、そのボス部1aに対して作用するマグネット7の磁力によりターンテーブル1とクランプ盤4が吸引し合い、これによってターンテーブル1の鍔部1bとクランプ盤4の環状凸部41でディスクDの中心部分がクランプされる。
【0028】
そして、この状態でターンテーブル1を一方向に回転駆動すると、そのターンテーブル1に対してマグネット7の磁力作用で吸着されているクランプ盤4もディスクDと共にターンテーブル1と同方向に回転される。
【0029】
クランプ盤4が回転されると、当該クランプ盤4に対してその回転方向と逆向きの空気流が発生するが、隆起部44の凸面44a上では空気流の速度が上がり、その周囲の気圧が凹部43内よりも低下するために、凹部43内の空気が吸気孔45を通じてクランプ盤4の表面(上記第2の面)側に流出され、その吸気作用によりディスクDが凹部43側に引き寄せされ、その外周縁が環状凸部42に吸着されるようになる。よって、反りを生じているディスクでも平面状に矯正されて面振れなく安定状態で回転される。
【0030】
一方、ターンテーブル1を停止すれば、クランプ盤4も停止して凹部43内に吸気力が作用しなくなるので、その状態でターンテーブル1をクランプ盤4から離間する方向に移動させれば、ディスクDをターンテーブル1で支持したままクランプ盤4から離間させることができる。
【0031】
以上、本発明について説明したが、係るディスククランプ装置は上記例に限定されず、ディスクDのクランプ及びその解除に際し、ターンテーブル1に対してクランプ盤4が接近方向と離間方向に移動するようにしてもよいし、ターンテーブル1とクランプ盤4の双方がそれぞれ移動するようにしてもよい。
【0032】
又、上記例ではクランプ盤4にマグネット7を設けたが、そのマグネット7に代えて板バネなどの弾性部材を用い、これによりクランプ盤4をターンテーブル1側に付勢するようにしてもよい。
【0033】
又、クランプ盤4は回転軸4aと一体に形成することができ、マグネット7の保持方法も上記例にとらわれず、例えばクランプ盤4内に埋設するようにしてもよい。更に、クランプ盤4の保持方法も上記例にとらわれず、クランプ盤4は装置フレーム4に対して回転自在に支持されていればよい。
【0034】
特に、上記例では凹部43から隆起部44に開通する吸気孔45をクランプ盤4の回転方向に対して後方となる位置に穿設したが、これを隆起部44の頂部やその近傍に穿設するようにしてもよい。尚、隆起部44は翼形に限らず、クランプ盤4の回転により当該隆起部44に沿って流れる空気の流速が上がってその周囲の気圧が低下するような形態であればよい。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明に係るディスククランプ装置を示す説明図(ディスクの非クランプ時)
【図2】本発明に係るディスククランプ装置を示す説明図(ディスクのクランプ時)
【図3】図2の部分拡大図
【図4】クランプ盤の平面図
【図5】隆起部の拡大断面図
【図6】ディスクがクランプ盤に吸着した状態を示す説明図
【符号の説明】
【0036】
1 ターンテーブル
1a ボス部
1b 鍔部
2 ピックアップ
3 モータ
4 クランプ盤
42 環状凸部
43 凹部
44 隆起部
44a 凸面
45 吸気孔
7 マグネット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを回転させるターンテーブルと協同して前記ディスクを挟み込む回転自在なクランプ盤を有し、
前記クランプ盤は、
前記ターンテーブルと対向する側の第1の面に、前記ディスクの外周縁を当接させるための環状凸部と該環状凸部で囲まれる凹部とを備えると共に、
該クランプ盤の軸線を中心とする円周上の位置で、前記第1の面とは反対の第2の面側に突出する所定の断面形状を有した隆起部を備え、
前記隆起部は、前記クランプ盤が前記ディスクを介して前記ターンテーブルで回転されるとき前記凹部内の空気が前記第2の面側に流出するよう穿設された吸気孔を有していることを特徴とするディスククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−282480(P2008−282480A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−126224(P2007−126224)
【出願日】平成19年5月11日(2007.5.11)
【出願人】(000004329)日本ビクター株式会社 (3,896)
【Fターム(参考)】