説明

ディスククランプ装置

【課題】クランパを安価に長寿命化できるディスククランプ装置を提供すること。
【解決手段】 ターンテーブル7と係脱可能に対向するクランパ6と、クランパ6をターンテーブル7へ向けて弾性付勢する板ばね4と、クランパ6を支持して昇降可能なクランパ支持体5とを備え、ターンテーブル7にセンタリングされたディスクDを板ばね4の弾性力によってクランパ6とターンテーブル7とで挟持するディスククランプ装置において、天面側に突設したピボット部9aに板ばね4を圧接させた状態で高速回転するクランパ6に、ピボット部9aよりも耐摩耗性の高い材料からなる高硬度部9bを付設し、この高硬度部9bをピボット部9aの底面側に入り込ませるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、CDやDVD等のディスクを回転駆動可能に挟持(クランプ)するディスククランプ装置に係り、特に、クランパを板ばねによってターンテーブル側へ弾性付勢しているディスククランプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、この種のディスククランプ装置は、スピンドルモータによって回転駆動されるターンテーブルと、ターンテーブルと係合可能に対向するクランパと、クランパの天面側に突設されたピボット部をターンテーブルへ向けて弾性付勢する板ばねと、クランパを支持して昇降可能なクランパ支持体とを備えて構成されており、ターンテーブルの受け部とクランパの押圧部とによってディスクの内周部が挟持できるようになっている。すなわち、非クランプ状態ではクランパがクランパ支持体に支持されてターンテーブルの上方にディスクの板厚よりも広い隙間を存して配置されており、この隙間にディスクが供給されると、ディスクの中心孔の周縁部がターンテーブルの傾斜面にガイドされつつセンタリングされると共に、クランパ支持体が下降してクランパをターンテーブルに近接させ、これらクランパとターンテーブルの中央部どうしが凹凸嵌合していく。また、板ばねがクランパをターンテーブルへ向けて弾性付勢しているため、クランパ支持体がクランパから離隔する位置まで下降した段階で、クランパの押圧部がディスクの内周部に押し付けられて、この押圧部とターンテーブルの受け部との間にディスクの内周部が挟圧された状態(クランプ状態)となる。そして、この状態でスピンドルモータを駆動源としてターンテーブルが回転動作されると、クランパおよびディスクがターンテーブルと一体的に高速回転するようになっている。
【0003】
また、こうしてクランパが高速回転するときには、板ばねに圧接されているクランパの天面側のピボット部が回転中心となるため、長期間使用すると合成樹脂製のピボット部が徐々に摩耗していく。しかしながら、図7に示すように、従来のディスククランプ装置では、クランパ21のピボット部22aが突起状に形成されているため、板ばね20との摺動によってピボット部22aが摩耗してその突出高さが低くなっても、板ばね20に対するクランパ21の摺動抵抗が極端に増大するわけではない(例えば、特許文献1参照)。なお、図7に示す従来のクランパ21は、天面側にピボット部22aを有する中央軸部22と、この中央軸部22の係止溝22bに固着された皿状のフランジ部23とを組み合わせて構成されているが、中央軸部22とフランジ部23とが一体成形されているものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−297508号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、前述した従来のディスククランプ装置において、長期間使用すると合成樹脂製のクランパ21のピボット部22aが板ばね20との摺動によって徐々に摩耗していくことは避けがたいため、ピボット部22aが突起状に形成されていてもいずれは限界まで摩耗してしまい、その時点で中央軸部22の摺動抵抗が急増するため、クランパ21を正常に回転させることは困難となる。特に、ターンテーブルの回転速度が高速化された場合には、板ばね20との摺動によって生じるピボット部22aの摩耗の進行が早まるため、クランパ21の寿命が極端に短くなってしまう虞があった。
【0006】
そこで、耐摩耗性に富む合成樹脂材料を用いてクランパを成形することが考えられるが、一般的に加工性および耐摩耗性に優れた合成樹脂材料は高価なため、クランパが大幅にコストアップしてしまうという問題があった。
【0007】
本発明は、このような従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、その目的は、クランパを安価に長寿命化できるディスククランプ装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、天面側に突設したピボット部に板ばねを圧接させた状態で高速回転するクランパに、ピボット部よりも耐摩耗性の高い材料からなる高硬度部を付設し、この高硬度部がピボット部の底面側に入り込んで該ピボット部に一体化されるようにした。
【発明の効果】
【0009】
本発明のディスククランプ装置は、長期間使用すると板ばねによってクランパのピボット部が天面側から徐々に摩耗していくが、ピボット部が所定量摩耗した段階で高硬度部に板ばねが圧接するようになるため、その後は板ばねによるクランパの摩耗の進行は著しく遅くなり、さらに一定期間に亘ってクランパを正常に回転させることができる。また、耐摩耗性の高い材料をクランパの一部に使用しているだけなので、クランパのコストアップはほとんど問題にならない。それゆえ、このディスククランプ装置によれば、クランパを安価に長寿命化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の第1実施例に係るディスククランプ機構を備えたディスクプレーヤの外観図である。
【図2】図1に示すディスククランプ機構の拡大図である。
【図3】図2の分解斜視図である。
【図4】第1実施例に係るディスククランプ機構にディスクが挟持されている状態を示す要部断面図である。
【図5】図4に示すクランパの中央軸部を示す断面図である。
【図6】本発明の第2実施例に係るクランパの中央軸部を示す断面図である。
【図7】従来例に係るクランパを示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明は、モータを駆動源として回転動作されるターンテーブルと、このターンテーブルと係脱可能に対向するクランパと、このクランパの天面側に突設されたピボット部に圧接して該クランパを前記ターンテーブルへ向けて弾性付勢する板ばねと、前記クランパを搭載して昇降可能なクランパ支持体とを備え、前記ターンテーブルにセンタリングされたディスクを前記板ばねの弾性力によって前記クランパと前記ターンテーブルとで挟持するディスククランプ装置において、前記クランパが、前記ピボット部の底面側に入り込んで該ピボット部に一体化された高硬度部を有し、この高硬度部が前記ピボット部よりも耐摩耗性の高い材料からなるという構成にした。
【0012】
このようにクランパのピボット部の底面側に耐摩耗性に富む高硬度部が一体化されているディスククランプ装置は、長期間使用すると板ばねとの摺動によってピボット部が天面側から徐々に摩耗していくが、ピボット部が所定量摩耗した段階で高硬度部に板ばねが圧接するようになるため、その後は板ばねによるクランパの摩耗の進行は著しく遅くなる。また、板ばねが高硬度部に圧接した後も、板ばねに対するクランパの摺動抵抗が急増する虞はないため、さらに一定期間に亘ってクランパを正常に回転させることができる。しかも、耐摩耗性の高い材料をクランパの一部に使用しているだけなので、クランパのコストアップはほとんど問題にならない。
【0013】
上記の構成において、高硬度部が合成樹脂製の成形体であると共に、この高硬度部が二色成形加工によってピボット部に一体化されていると、高硬度部が小さくても該高硬度部とピボット部とを強固かつ高精度に密着接合させることができるため、高硬度部の材料費に起因するクランパのコストアップを効果的に抑制できる。
【0014】
また、上記の構成において、高硬度部が金属製の剛体であると共に、この高硬度部がインサート成形加工によってピボット部に一体化されていると、高硬度部が小さくても該高硬度部とピボット部とを強固かつ高精度に密着接合させることができる。そのため、例えば鋼球等からなる安価で小さな高硬度部をピボット部の底面側の所定位置に確実に埋設することができ、クランパの低コスト化が図りやすくなる。
【実施例】
【0015】
以下、本発明の第1実施例に係るディスククランプ機構について図1〜図5を参照しつつ説明する。図1に示すディスクプレーヤには、その筐体1内に、ディスク挿入口2を介してディスクD(図4参照)の挿入や排出を行うディスク搬送機構と、挿入したディスクDを挟持(クランプ)するディスククランプ機構と、挟持されたディスクDを回転駆動するディスク駆動機構と、ディスクDに対して情報の読み取りや書き込みを行う光ピックアップ機構等が組み込まれている。
【0016】
この第1実施例に係るディスククランプ機構は、筐体1に対して昇降可能な可動ベース3と、可動ベース3に一端部が取り付けられた板ばね4と、可動ベース3の底面側に取り付けられたクランパ支持体5と、クランパ支持体5に支持されるクランパ6と、ディスクDが搭載されるターンテーブル7と、可動ベース3に取り付けられて板ばね4の他端部の上動を規制しているストッパ8とを備えており、クランパ6とターンテーブル7との間にディスクDの内周部が挟持できるようになっている。
【0017】
可動ベース3は図示せぬ昇降手段によって昇降され、この昇降手段はディスクDの挿入動作や排出動作に連動して可動ベース3を昇降させるようになっている。クランパ6は、天面側に上向きのピボット部9aを有する中央軸部9と、外周部に下向きの押圧部10aを有する皿状のフランジ部10とを一体化して構成されている。中央軸部9にはピボット部9aの底面側に高硬度部9bが付設されており、この中央軸部9の係止溝9c(図5参照)にフランジ部10が固着されている。板ばね4は中央軸部9のピボット部9aに圧接してクランパ6を常時下向きに弾性付勢している。また、図4に示すように、ターンテーブル7には、中央軸部9に嵌入される凸部7aと、ディスクDの中心孔D1に挿入されてセンタリングを行うガイド部7bと、フランジ部10の押圧部10aと対向する受け部7cとが設けられている。ターンテーブル7の凸部7aにはスピンドルモータの出力軸11が圧入・固定されているため、このターンテーブル7はディスククランプ機構の構成要素であると共にディスク駆動機構の構成要素でもある。
【0018】
クランパ6の中央軸部9に付設されている高硬度部9bについて詳しく説明すると、図5の断面図に示すように、この高硬度部9bは凸状の樹脂成形体であり、二色成形加工によって高硬度部9bがピボット部9aの底面側に一体化されている。高硬度部9bは耐摩耗性に優れたPEEK(ポリエーテルエーテルケトン)等の合成樹脂材料にて形成されている。また、ピボット部9aを含めた中央軸部9の他の部分は摺動性に優れたPOM(ポリアセタール)等の合成樹脂材料にて形成されている。例えば高硬度部9bがPEEKからなり、中央軸部9の他の部分がPOMからなる場合、PEEKはPOMに比べて融点が極めて高いため、まず高硬度部9bを射出成形した後、この高硬度部9bを金型の一部として、ピボット部9aを含めた中央軸部9の他の部分を射出成形するという二色成形加工を行うことができる。かかる二色成形加工によって、高硬度部9bを、その突起状部分をピボット部9a内に入り込ませた状態で、ピボット部9aの底面側に強固に密着接合させることができる。そのため、この中央軸部9は、板ばね4との摺動によってピボット部9aが大きく摩耗すると、高硬度部9bの突起状部分に板ばね4が圧接するようになっている。
【0019】
次に、第1実施例に係るディスククランプ機構の動作について説明する。ディスクDを挟持していない非クランプ状態において、クランパ6はピボット部9aが板ばね4によって下向きに弾性付勢されているが、中央軸部9の下動はクランパ支持体5によって規制されている。したがって、クランパ6はクランパ支持体5に支持された状態で、ターンテーブル7の上方にディスクDの板厚よりも広い隙間を存して配置されている。この隙間にディスクDが供給されると、ディスクDは中心孔D1の周縁部がガイド部7bの傾斜面にガイドされて、センタリングされながら受け部7c上に搭載される。また、前記昇降手段によって可動ベース3が下降するため、可動ベース3と一体のクランパ支持体5が下降してクランパ6がターンテーブル7に近接し、中央軸部9が凸部7aに外嵌状態で係合する。このクランパ6は板ばね4によって常時ターンテーブル7側へ弾性付勢されているため、図4に示すように、クランパ支持体5が中央軸部9から離隔する位置まで下降した段階で、フランジ部10の押圧部10aがディスクDの内周部に押し付けられる。その結果、センタリングされたディスクDの内周部が、板ばね4の弾性力によってフランジ部10の押圧部10aとターンテーブル7の受け部7cとの間に挟圧された状態(クランプ状態)となる。
【0020】
そして、この状態でスピンドルモータの出力軸11によってターンテーブル7が回転駆動されると、クランパ6およびディスクDがターンテーブル7と一体的に高速回転する。それゆえ、回転中のディスクDに対して前記光ピックアップ機構がレーザ光を照射するなどして、このディスクDに記録されている情報の読み取りや、ディスクDに対する情報の書き込みが行えるようになっている。
【0021】
また、こうしてクランパ6が高速回転するときには、板ばね4が圧接している中央軸部9の天面側のピボット部9aが回転中心となるため、ピボット部9aが摺動性に優れたPOM(ポリアセタール)等の合成樹脂材料にて形成されていても、長期間使用するとピボット部9aは板ばね4との摺動によって徐々に摩耗していく。ただし、ピボット部9aが摩耗してその突出高さが低くなっても、板ばね4とピボット部9aとの接触面積が急増するわけではないので、板ばね4に対するピボット部9aの摺動抵抗はさほど変化しない。また、ピボット部9aが大きく摩耗して板ばね4が高硬度部9bの突起状部分に圧接するようになっても、板ばね4と高硬度部9bとの接触面積は小さいためクランパ6の摺動抵抗が極端に増大することはない。しかも、高硬度部9bは耐摩耗性に富むため、板ばね4との摺動によって生じる摩耗の進行は極めて遅くなる。つまり、ピボット部9aが大きく摩耗してピボット機能を果たせなくなった後は、高硬度部9bが新たにピボット機能を果たすようになっているため、板ばね4に対するクランパ6の摺動抵抗を極めて長期に亘って許容範囲内に設定しておくことができる。
【0022】
以上説明したように、第1実施例に係るディスククランプ機構は、クランパ6のピボット部9aの底面側に耐摩耗性の高い高硬度部9bが一体化されており、板ばね4との摺動によってピボット部9aが所定量摩耗した段階で、高硬度部9bの突起状部分に板ばね4が圧接するようにしてあるため、ピボット部9aが限界まで摩耗しても板ばね4に対するクランパ6の摺動抵抗が極端に増大する虞はなく、極めて長期に亘ってクランパ6を正常に回転させることができる。また、耐摩耗性に優れたPEEK等の合成樹脂材料は比較的高価ではあるが、高硬度部9bはピボット部9aよりも小さなものでよいため、使用する材料は少量で済み、それゆえ高硬度部9bの材料費に起因するクランパ6のコストアップはほとんど問題にならない。また、高硬度部9bは二色成形加工によってピボット部9aに一体化されているため、小さな高硬度部9bをピボット部9aに強固かつ高精度に密着接合させることは容易である。
【0023】
なお、第1実施例では高硬度部9bが耐摩耗性の高い合成樹脂製である場合について説明したが、金属製の高硬度部9bを金型の一部として中央軸部9を射出成形することによって、かかる金属製の高硬度部9bをピボット部9aの底面側に一体化させてもよい。また、第1実施例では異なる合成樹脂材料からなる中央軸部9とフランジ部10とを組み合わせてクランパ6を構成しているが、中央軸部9とフランジ部10とを一体的に成形することも可能である。
【0024】
図6は本発明の第2実施例に係るクランパの中央軸部9を示す断面図である。同図に示す中央軸部9には鋼球からなる高硬度部9dが埋設してあり、この高硬度部9dの上部がピボット部9aの底面側に入り込んでいる。この高硬度部9dは、中央軸部9の射出成形時に金型内に配置させておくというインサート成形加工によって埋設されたものであり、図示せぬ押えピンで金型内の所定位置に高硬度部9dを保持しておくため、中央軸部9には該押えピンの存した個所に一対の小孔9eが形成されている。このようにピボット部9aと高硬度部9dとがインサート成形加工によって一体化されていると、小さな高硬度部9dをピボット部9aに強固かつ高精度に密着接合させることができるため、安価な鋼球からなる高硬度部9dをピボット部9aの底面側の所定位置に確実に埋設することができて、クランパの低コスト化が図りやすくなる。
【符号の説明】
【0025】
3 可動ベース
4 板ばね
5 クランパ支持体
6 クランパ
7 ターンテーブル
7b ガイド部
7c 受け部
8 ストッパ
9 中央軸部
9a ピボット部
9b,9d 高硬度部
10 フランジ部
10a 押圧部
11 (スピンドルモータの)出力軸
D ディスク

【特許請求の範囲】
【請求項1】
モータを駆動源として回転動作されるターンテーブルと、このターンテーブルと係脱可能に対向するクランパと、このクランパの天面側に突設されたピボット部に圧接して該クランパを前記ターンテーブルへ向けて弾性付勢する板ばねと、前記クランパを搭載して昇降可能なクランパ支持体とを備え、前記ターンテーブルにセンタリングされたディスクを前記板ばねの弾性力によって前記クランパと前記ターンテーブルとで挟持するディスククランプ装置において、
前記クランパが、前記ピボット部の底面側に入り込んで該ピボット部に一体化された高硬度部を有し、この高硬度部が前記ピボット部よりも耐摩耗性の高い材料からなることを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項2】
請求項1の記載において、前記高硬度部が合成樹脂製の成形体であると共に、この高硬度部が二色成形加工によって前記ピボット部に一体化されていることを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項3】
請求項1の記載において、前記高硬度部が金属製の剛体であると共に、この高硬度部がインサート成形加工によって前記ピボット部に一体化されていることを特徴とするディスククランプ装置。
【請求項4】
請求項3の記載において、前記高硬度部が鋼球からなることを特徴とするディスククランプ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−238282(P2010−238282A)
【公開日】平成22年10月21日(2010.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−82930(P2009−82930)
【出願日】平成21年3月30日(2009.3.30)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】