説明

ディスクドライブのシャッター装置

【課題】 イジェクト時において記録ディスクをディスクスロット近傍の適切な位置で停止させることを簡単な構成で実現する。
【解決手段】 記録ディスク1がディスクドライブ10内に装着されていないときには、シャッター板16を開き、ディスク通路14を開通させる。記録ディスク1がディスクドライブ10内に装着されているときには、シャッター板16を閉じ、ディスク通路14を遮断する。記録ディスク1をイジェクトするときには、シャッター板16の上端部16Aを記録ディスク1の下面1Aに接触させ、記録ディスク1をスロット13近傍の適切な位置に停止させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばDVDドライブやCD(Compact Disc)ドライブなどのスロットイン方式のディスクドライブに用いられ、ディスクのローディングおよびイジェクトを行うための通路を開閉するシャッター装置に関する。
【背景技術】
【0002】
DVD、CD、ブルーレイディスク、磁気ディスクなどの記録ディスクに対し、情報の読み取りまたは書き込みを行うディスクドライブは、ディスクプレーヤ、ディスクレコーダ、オーディオシステム、パーソナルコンピュータ、カーナビゲーションシステムなど様々な装置に用いられている。
【0003】
ディスクドライブには、一般的な光ディスクドライブのように、記録ディスクを着脱することができるタイプと、一般的なハードディスクドライブのように、記録ディスクを着脱することができないタイプがある。さらに、記録ディスクを着脱することができるタイプのディスクドライブには、記録ディスクの着脱方式に関し、スロットイン方式、ドロアー方式、トレー方式などがある。
【0004】
スロットイン方式のディスクドライブにおけるローディング動作は、例えば次の通りである。ユーザーは、記録ディスクの端部をディスクスロットに挿入し、この記録ディスクをディスクドライブの内部に向けて軽く押し込む。すると、ディスクドライブは、例えばローディングアームなどのローディング機構によって記録ディスクをディスクドライブの内部に引き込み、記録ディスクの中心がターンテーブル上に位置するまで記録ディスクを搬送する。続いて、ディスクドライブは、記録ディスクをターンテーブル上に固定(クランプ)する。
【0005】
また、スロットイン方式のディスクドライブにおけるイジェクト動作は、例えば次の通りである。ディスクドライブ内のターンテーブル上にクランプされた記録ディスクをイジェクト(排出)する旨の指示が発せられると、これに応じて、ディスクドライブは、記録ディスクのクランプを解除する。続いて、ディスクドライブは、例えばイジェクトアームなどのイジェクト機構により、記録ディスクを、ディスクスロットを通してディスクドライブの外側へ押し出す。
【0006】
また、スロットイン方式のディスクドライブには、ディスクスロット近傍にシャッターが設けられているものがある。このシャッターは、ディスクドライブ内に記録ディスクが装着されている間、閉じている。これにより、ディスクドライブ内に記録ディスクが装着されている間に、別の記録ディスクがディスクドライブ内に挿入されるのを防止することができる。また、このシャッターは、何らかの事故により、ディスクドライブ内で回転している記録ディスクが、ディスクドライブから外へ飛び出すのを防止する機能も果たす。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、スロットイン方式のディスクドライブのイジェクト時には、イジェクト機構によってディスクドライブ内から外側へ押し出された記録ディスクを、ディスクスロット近傍の適切な位置で停止させることが望ましい。例えば、記録ディスクにおいて、その表面面積のおよそ5分の3ないし4分の3程度に相当する部分をディスクスロットから外に露出させ、残りの部分をディスクドライブ内に留めた状態で、記録ディスクを停止させることが望ましい。これにより、イジェクト時に、記録ディスクがディスクスロットから外へ脱落するのを防止することができ、かつ、ユーザーがイジェクトされた記録ディスクを手で取り出しやすくすることができる。
【0008】
現在普及しているディスクドライブでは、イジェクト開始により駆動を開始したイジェクト機構の駆動を適切なタイミングで停止させることにより、記録ディスクをディスクスロット近傍の適切な位置に停止させるものが多い。
【0009】
しかし、モーター、ギア列、ローラーなどといったイジェクト機構を構成している駆動要素の時定数などを考慮しつつ、記録ディスクを適切な位置に停止させることは容易でない。
【0010】
本発明は上記に例示したような問題点に鑑みなされたものであり、本発明の課題は、イジェクト時において記録ディスクをディスクスロット近傍の適切な位置で停止させることを簡単な構成で実現することができるディスクドライブのシャッター装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために請求項1に記載のシャッター装置は、記録ディスクのローディングおよびイジェクトを行うために記録ディスクを通過させるディスク通路を有するディスクドライブ本体に設けられ、前記ディスク通路を開閉するシャッター装置であって、シャッター板と、前記シャッター板と前記ディスクドライブ本体との間に設けられ、前記シャッター板の上端部が上下方向に移動可能となるように前記シャッター板を支持する支持部材と、前記シャッター板の上端部の上下方向における位置を遮断位置、開通位置および中間位置のいずれかに変更可能に決定する位置決め機構とを備え、前記遮断位置は、前記ディスク通路の上側に存在し、前記ディスク通路を前記記録ディスクが通過するのを前記シャッター板により遮る位置であり、前記開通位置は、前記ディスク通路の下側に存在し、前記ディスク通路を通過する前記記録ディスクの下面と前記シャッター板の上端部との間に空隙が形成される位置であり、前記中間位置は、前記遮断位置と前記開通位置との間に存在し、前記ディスク通路を通過する前記記録ディスクの下面と前記シャッター板の上端部とが接触する位置である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明の実施形態であるシャッター装置を搭載したディスクドライブを示している。図1中のディスクドライブ10は、例えばDVD、CD、ブルーレイディスクなどの記録ディスク1に対し、情報の読み取りまたは書き込みを行う装置である。ディスクドライブ10は、記録ディスクを着脱することができるタイプであり、また、記録ディスクの着脱方式についてスロットイン方式を採用している。
【0014】
なお、ディスクドライブ10は、光ディスクドライブであるが、本発明のシャッター装置は、光ディスクドライブに限らず、磁気ディスクドライブ、光磁気ディスクドライブなど、種々の情報読み取り方式または種々の情報書き込み方式を採用したディスクドライブに適用することができる。
【0015】
また、ディスクドライブ10は、裸の記録ディスクを取り扱うタイプのディスクドライブであるが、本発明のシャッター装置は、裸の記録ディスクを取り扱うタイプのディスクドライブに限らず、例えばDVD−RAM(DVD-Random Access Memory)やMD(Mini Disc)など、記録ディスクがカートリッジに収容されている、いわゆるカートリッジ式記録ディスクを取り扱うタイプのディスクドライブにも適用することができる。
【0016】
さらに、ディスクドライブ10は、1種類の記録ディスクに対して情報の読み取り・書き込みを行うタイプのディスクドライブでもよいし、多種類の記録ディスクに対して情報の読み取り・書き込みを行うタイプのディスクドライブ、いわゆるマルチディスクドライブでもよい。また、ディスクドライブ10は、異なる直径(例えば12cmと8cm)の記録ディスクを取り扱うことができるタイプのディスクドライブでもよい。
【0017】
図1に示すように、ディスクドライブ10は、ハウジング11およびフロントカバー12を備えており、フロントカバー12にはスロット13が形成されている。スロット13は、記録ディスク1のローディングおよびイジェクトを行うために記録ディスク1を通過させる溝である。スロット13のスロット形状は、記録ディスク1の通過を可能にする程度に、上下方向に短く、左右方向に長い。
【0018】
また、ハウジング11内には、ディスク通路14およびシャッター装置15が設けられている(図2参照)。さらに、ハウジング11内には、ローディング機構、イジェクト機構、クランプ機構、ターンテーブル、スピンドルモーターおよび光ピックアップなどが設けられている(いずれも図示せず)。なお、ハウジング11、フロントカバー12、ディスク通路14、ローディング機構、イジェクト機構、クランプ機構、ターンテーブル、スピンドルモーターおよび光ピックアップなどを含む構造体がディスクドライブ本体に当たる。また、以下の説明では、図1中の矢示X方向を左右方向といい、矢示Y方向を前後方向といい、矢示Z方向を上下方向という。
【0019】
図2は、ディスクドライブ10を図1中の矢示A−A方向から見た断面図である。図2中のディスク通路14は、記録ディスク1のローディングおよびイジェクトを行うために記録ディスク1を通過させる通路である。ディスク通路14は、スロット13と接続されている。ディスク通路14は、スロット13のスロット形状とほぼ一致するように左右方向および上下方向に広がっており、さらに、スロット13からハウジング11の後ろ側に向けて前後方向に広がっている。
【0020】
シャッター装置15は、ディスクドライブ本体に設けられ、ディスク通路14を開閉する装置である。さらに、シャッター装置15は、記録ディスク1のイジェクト時に、記録ディスク1をスロット13近傍の適切な位置で停止させる機能をも備えている。
【0021】
図2に示すように、シャッター装置15は、シャッター板16、支持板17およびカム板18を備えている。
【0022】
シャッター板16は、ディスク通路14の開閉、およびイジェクト時における記録ディスク1のブレーキング(制動)を行う。シャッター板16は、例えば樹脂材料あるいは金属材料などにより形成され、上下方向に短く、左右方向に長く、厚みの薄い板であることが望ましい。シャッター板16の形状は、スロット13のスロット形状とほぼ同様の長方形であり、シャッター板16の表面の面積は、スロット13のスロット面積と等しいか、またはスロット面積よりも一回り大きいことが望ましい。
【0023】
なお、シャッター板16の形状および面積はこれに限られない。記録ディスク1がディスク通路14を通り抜けるのを阻止することができ、かつ、イジェクト時に記録ディスク1の下面に接触して記録ディスク1をスロット13近傍の適切な位置に停止させることができれば、シャッター板16の形状および面積を様々に設定することができる。
【0024】
シャッター板16の左側縁部および右側縁部には、支持突部19をそれぞれ形成することが望ましい(図2では右側の支持突部のみを図示)。支持突部19は、シャッター板16が上下方向に移動可能となるように、シャッター板16を支持板17に支持させる。左側の支持突部19の一端側はシャッター板16の左側縁部に固定されており、他端側はシャッター板16の左側縁部から左方向に所定長さ突出している。右側の支持突部19の一端側はシャッター板16の右側縁部に固定されており、他端側はシャッター板16の右側縁部から右方向に所定長さ突出している。支持突部19は、シャッター板16と同一の材料を用いて、シャッター板16と一体的に形成してもよいし、シャッター板16と異なる材料を用いて、シャッター板16に取り付けてもよい。
【0025】
シャッター板16の後面には、制御ピン20を設けることが望ましい。制御ピン20は、カム板18と協働し、シャッター板16の上下方向における位置を変更する。制御ピン20の一端側はシャッター板16の後面に固定されており、他端側はシャッター板16の後面から後ろ方向に所定長さ突出している。制御ピン20は、シャッター板16と同一の材料を用いて、シャッター板16と一体的に形成してもよいし、シャッター板16と異なる材料を用いて、シャッター板16に取り付けてもよい。
【0026】
シャッター板16の上端部16Aは、イジェクト時に記録ディスク1の下面1Aと接触する。この接触によって記録ディスク1の下面1Aが傷つくのを防止するために、シャッター板16の上端部16Aに、例えばフェルトなどの柔らかい材料からなる緩衝シート(図示せず)を貼付してもよい。
【0027】
支持板17は、シャッター板16とディスクドライブ本体との間に設けられ、シャッター板16が上下方向に移動可能となるようにシャッター板16を支持する。支持板17は支持部材の具体例である。支持板17は、例えば樹脂材料または金属材料などにより形成され、ハウジング11内部においてハウジング11の底板に固定されている。支持板17は、左側および右側にそれぞれ設けられている(図2では右側の支持板17のみを点線で図示)。左側の支持板17は、シャッター板16の左側縁部よりも左方向にわずかな距離離れた位置に配置されている。右側の支持板17は、シャッター板16の右側縁部よりも右方向にわずかな距離離れた位置に配置されている。支持板17は、ハウジング11の底板から上方向に立ち上がっている。
【0028】
左側の支持板17には支持溝21が形成されている。この支持溝21は、シャッター板16の左側端部、すなわち左側の支持突部19を挿入するための溝または穴である。右側の支持板17にも支持溝21が形成されている。この支持溝21は、シャッター板16の右側端部、すなわち右側の支持突部19を挿入するための溝または穴である。支持溝21の上下方向の長さは、支持突部19の上下方向の長さよりも大幅に長い。これによりシャッター板16の上下方向における移動を可能にしている。また、支持溝21の前後方向における長さは、支持突部19の前後方向における長さよりもわずかに長い。これにより、シャッター板16が前後方向に大きく動くのを防止すると共に、シャッター板16が上下方向にスムーズに移動可能となるように、支持突部19が支持溝21内で前後方向にわずかな遊びをもって嵌め込まれる状態を作り出している。
【0029】
なお、支持板または支持部材の支持構造はこれに限られない。例えば、ハウジング11の側面に長溝を形成することにより、支持板または支持部材をハウジング11に一体化させてもよい。また、ハウジング11の左側側面から2枚の薄板を右方向に突出させ、これら2枚の薄板間にシャッター板16の左側端部を狭持し、ハウジング11の右側側面から2枚の薄板を左方向に突出させ、これら2枚の薄板間にシャッター板16の右側端部を狭持してもよい。
【0030】
カム板18は、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置を遮断位置H1、開通位置H2および中間位置H3のいずれかに変更可能に決定する。カム板18は位置決め機構の具体例である。遮断位置H1は、図2において矢印で示すように、ディスク通路14の上側に存在し、ディスク通路14を記録ディスク1が通過するのをシャッター板16により遮る位置である。開通位置H2は、ディスク通路14の下側に存在し、ディスク通路14を通過する記録ディスク1の下面とシャッター板の上端部16Aとの間に空隙が形成される位置である。中間位置H3は、遮断位置H1と開通位置H3との間に存在し、ディスク通路14を通過する記録ディスク1の下面1Aとシャッター板16の上端部16Aとが接触する位置である。
【0031】
カム板18は、例えば樹脂材料または金属材料により形成された薄い板である。カム板18は、シャッター板16の後ろ側に配置されている。カム板18は、ハウジング11の底側から上方向に向けて立ち上がっているものの、カム板18の上端部はディスク通路14には達していない。カム板18は、ハウジング11の底板に固定されたガイド部材22により、左右方向に移動可能に支持されている。
【0032】
図5は、カム板18を図2中の矢示B−B方向から見た拡大正面図である。図5に示すように、カム板18には、カム溝23が形成されている。カム溝23は、上下方向の位置が互いに異なる3個の縁部23A、23B、23Cを有している。これら縁部23A、23B、23Cは、遮断位置H1、開通位置H2および中間位置H3にそれぞれ対応している。カム溝23には、図2に示すように、制御ピン20の他端側がわずかな遊びをもって挿入されている。
【0033】
カム板18が左右方向に移動すると、カム溝23の縁部23A、23B、23Cの上下方向における位置の違いにより、制御ピン20が上下方向に移動し、シャッター板16が上下方向に移動する。これにより、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置を、遮断位置H1、開通位置H2および中間位置H3のいずれかに変更することができる。
【0034】
なお、本発明の位置決め機構はカム板に限られない。本発明の位置決め機構は、シャッター板の上端部の上下方向における位置を遮断位置、開通位置および中間位置のいずれかに変更可能に決定することができれば、他の機構でもよい。例えば、位置決め機構をラックおよびピニオンにより構成することも可能である。
【0035】
もっとも、位置決め機構をカム板18により構成することにより、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置を、遮断位置H1、開通位置H2および中間位置H3のそれぞれに正確に決定することができる。すなわち、図5に示すように、カム溝23の縁部23A、23B、23Cの上下方向の位置、例えば縁部23Aと縁部23Cとの間の長さM1および縁部23Bと縁部23Cとの間の長さM2を適切に設定することにより、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置を上記3通りの位置H1ないしH3のそれぞれに正確に決定することができる。また、カム溝23の縁部23A、23B、23Cの左右方向の長さM3、M4、M5をそれぞれ適切な長さに設定することにより、カム板18の左右方向の移動によってシャッター板16が上下方向に移動するタイミングを適切に設定することができる。
【0036】
シャッター装置15の動作は例えば次の通りである。まず、記録ディスク1が外からディスクドライブ10内に挿入されるのを阻止すべきとき、または、記録ディスク1がディスクドライブ10内から外に飛び出すのを防止すべきとき、シャッター装置15は図2に示すように動作する。まず、カム板18が左方向(図2では紙面の奥へと進む方向)に移動する。これにより、制御ピン20がカム溝23の縁部23Aに接する位置に移動する(図5参照)。これにより、シャッター板16が支持板17の支持溝21に沿って上方向に移動する。そして、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置が遮断位置H1に決定される。この結果、ディスク通路14がシャッター板16により遮られる。
【0037】
このようにシャッター板16が閉じた状態では、ユーザーが記録ディスクをディスクドライブ10のスロット13に挿入しようとしても、記録ディスクがシャッター板16に当たるため、記録ディスクがディスクドライブ10内に入らない。
【0038】
また、例えば情報の読み取りまたは書き込みのためにディスクドライブ10内で記録ディスクが高速回転しているときにディスク破損等の事故が発生すると、ディスクの破片などが遠心力によりディスクドライブ10からディスク通路14およびスロット13を通って外に飛び出すおそれがある。しかし、シャッター板16が閉じていれば、ディスクの破片がシャッター板16に当たるため、ディスクの破片がスロット13から外に飛び出すことがない。
【0039】
このようなシャッター板16の閉塞は、ディスクドライブ10内に記録ディスク1が装着(クランプ)されてから、情報の読み取りまたは書き込みなどが終了しまたは中断されて記録ディスク1の回転が停止するまでの間、維持されることが望ましい。これを実現するために、カム板18の左方向の移動をクランプ動作と同期させ、カム板18の右方向の移動をクランプ解除動作と同期させることが望ましい。例えば、ターンテーブルと、これと向かい合う位置に設けられたクランパーとの間に記録ディスク1をクランプするために、ターンテーブルを持ち上げる構成をディスクドライブ10が備えている場合には、このターンテーブルを持ち上げる動力を、カム板18を左方向に移動させる動力に変換する。また、クランプを解除するために、ターンテーブルを下げる動力を、カム板18を右方向に移動させる動力に変換する。これらの動力の生成には、モーターを利用してもよいし、ばねを利用してもよいし、ソレノイドを利用してもよい。また、これらの動力の変換には、カムを用いてもよいし、ラックおよびピニオンを用いてもよい。
【0040】
次に、記録ディスク1のディスクドライブ10内への挿入を許すべきとき、シャッター装置15は図3に示すように動作する。まず、カム板18が右方向(図3では紙面の手前へと進む方向)に移動する。これにより、制御ピン20がカム溝23の縁部23Bに接する位置に移動する(図5参照)。これにより、シャッター板16が支持板17の支持溝21に沿って下方向に移動する。そして、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置が開通位置H2に決定される。この結果、ディスク通路14は開通される。
【0041】
このようにシャッター板16が開いた状態では、ユーザーは記録ディスク1をディスクドライブ10のスロット13に挿入し、記録ディスク1をディスクドライブ10内に装着することができる。スロット13に挿入された記録ディスク1がディスク通路14を通過するとき、記録ディスク1の下面1Aとシャッター板16の上端部16Aとは離れており、両者間には図3に示すように空隙SPが形成される。したがって、記録ディスク1は、ディスク通路14をスムーズに移動することができる。
【0042】
このようなシャッター板16の開放は、記録ディスク1がスロット13への挿入が開始されてから、記録ディスク1がディスクドライブ10内に完全に挿入されるまでの間、維持されることが望ましい。これを実現するために、記録ディスク1のスロット13への挿入開始とカム板18の右方向の移動とを同期させることが望ましい。例えば、記録ディスク1の挿入が開始されたことを検出し、この検出結果に基づいてカム板18を右方向に移動させてもよい。また、ローディングアームが記録ディスク1の挿入に応じて開く動きを、カム板18を右方向に移動させる動きに変換してもよい。この動力の変換には、カムを用いてもよいし、ラックおよびピニオンを用いてもよい。
【0043】
あるいは、記録ディスク1がディスクドライブ10から完全に取り出されてから、記録ディスク1がディスクドライブ10内に完全に挿入されるまでの間、カム板18を右方向に移動させた状態を維持してもよい。
【0044】
次に、記録ディスク1をイジェクトするとき、シャッター装置15は図4に示すように動作する。記録ディスク1をイジェクトする前の段階では、記録ディスク1はディスクドライブ10内にクランプされている。さらにこの段階では、カム板18は、制御ピン20がカム溝23の縁部23Aに接する位置に移動しており、これにより、シャッター板16の上端部16Aは遮断位置H1にあり、シャッター板16はディスク通路14を遮断している(図2参照)。この状態で、記録ディスク1をイジェクトする旨の指示が発せられると、これに応じて、記録ディスク1のクランプが解除される。続いて、記録ディスク1は、例えばイジェクトアームなどのイジェクト機構により前方向に押され、ディスク通路14を通ってスロット13に向けて移動する。
【0045】
記録ディスク1のクランプが解除された後、制御ピン20がカム溝23の縁部23Cに接する位置となるようにカム板18が右方向に移動する(図5参照)。これにより、シャッター板16が支持板17の支持溝21に沿って下方向に移動する。そして、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置が中間位置H2に決定される。
【0046】
これにより、ディスク通路14を前方向に移動している記録ディスク1の下面1Aがシャッター板16の上端部16Aと接触する。この接触により生じた摩擦力により、記録ディスク1の前方向の移動にブレーキがかかる。より具体的には、スロット13の上側に位置する内縁部とシャッター板16の上端部16Aとの間に記録ディスク1が挟まり、これにより、記録ディスク1の下面1Aとシャッター板16の上端部16Aとの間に、あるいは記録ディスク1の上面とスロット13の上側に位置する内縁部との間に摩擦力が生じ、この摩擦力により、記録ディスク1の前方向の移動にブレーキがかかる。この結果、記録ディスク1がスロット13近傍の適切な位置で停止する。
【0047】
イジェクト時に記録ディスク1を停止させる適切な位置は、例えば、図6に示すように、記録ディスク1において、その表面面積のおよそ5分の3ないし4分の3程度に相当する部分がスロット13から外に露出し、残りの部分がディスクドライブ10内に留まっているような位置であることが望ましい。これにより、イジェクト時に、記録ディスク1がスロット13から外へ脱落するのを防止することができ、かつ、ユーザーがイジェクトされた記録ディスク1を手で取り出しやすくすることができる。
【0048】
このようなブレーキングのためのシャッター板16の移動は、記録ディスク1がスロット13近傍の適切な位置に移動した時にタイミングよく行うことが望ましい。これを実現するために、例えば、記録ディスク1のクランプが解除された直後、まず、制御ピン20をカム溝23の縁部23Bに接するようにカム板18を右方向に大きく移動させ、シャッター板16の上端部16Aの位置を開通位置H2にし、続いて、記録ディスク1がスロット13近傍の適切な位置に到達した時に、制御ピン20をカム溝23の縁部23Cに接するようにカム板18を左方向に移動させ、シャッター板16の上端部16Aの位置を中間位置H3にすることが望ましい。記録ディスク1のクランプが解除された直後にシャッター板16の上端部16Aをいったん開通位置H1にすることにより、記録ディスク1をスロット13近傍の適切な位置へスムーズに前進させることができる。そして、記録ディスク1がスロット13近傍の適切な位置に移動したタイミングを見計らって、シャッター板16の上端部16Aを中間位置H3にすることにより、記録ディスク1をスロット13近傍の適切な位置に正確に停止させることができる。なお、記録ディスク1がスロット13近傍の適切な位置に到達したことは、例えばローディングアームの回動などに基づいて検出することができる。
【0049】
以上説明した通り、シャッター装置15では、イジェクト時にシャッター板16の上下方向の位置を中間位置H3に決定し、シャッター板16の上端部16Aをイジェクトされる記録ディスク1の下面1Aに接触させる。これにより、イジェクトのために前方向に押し出される記録ディスク1にブレーキをかけることができ、記録ディスク1をスロット13近傍の適切な位置に停止させることができる。
【0050】
シャッター装置15では、イジェクト時における記録ディスク1のブレーキングを、シャッター板16と記録ディスク1との接触により実現している。これにより、シャッター装置15に、その本来的機能、つまり記録ディスク1の挿入阻止および記録ディスク1の飛び出し防止といった機能のほかに、イジェクト時において記録ディスク1にブレーキをかけるという機能を併せ持たせることができる。したがって、記録ディスク1のブレーキングを実現しながらも、部品点数の増加を防止することができ、ディスクドライブ10の小型化、薄型化、軽量化および製造コストの削減を図ることができる。
【0051】
また、シャッター装置15では、シャッター板16と記録ディスク1との接触により発生する摩擦力を用いて、記録ディスク1にブレーキをかける。これにより、記録ディスク1のブレーキングを簡単な構成で実現することができる。
【0052】
また、シャッター板16の上端部16Aの上下方向における位置(中間位置H3)、記録ディスク1を前方向に押し出す力、およびシャッター板16と記録ディスク1との接触強度などを調整することにより、記録ディスク1の適切な停止位置を簡単に設定することができ、かつ、設定した停止位置に記録ディスク1を正確に停止させることができる。
【0053】
なお、上述したシャッター装置15では、シャッター板16を上下方向に移動させることにより、シャッター板16の上端部16Aを、遮断位置H1、開通位置H2および中間位置H3のいずれかの位置に変更可能に決定する場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。例えば、図7に示すディスクドライブ30に搭載されたシャッター装置31のように、シャッター板32の支軸33を支持板34の支持穴35に挿入することにより、シャッター板32を回動可能に支持し、シャッター板32を回動させることによってシャッター板32の傾きを変化させ、これによりシャッター板32の上端部32Aの上下方向における位置を、遮断位置H1、開通位置H2および中間位置H3のいずれかの位置に変更可能に決定してもよい。
【0054】
あるいは、以下に述べる実施例のように、シャッター板の上下動と回動とを組み合わせることにより、シャッター板の上端部の上下方向における位置を遮断位置、開通位置および中間位置のいずれかの位置に変更可能に決定してもよい。これにより、シャッター板が上下方向に移動する範囲、またはシャッター板が回動する範囲を小さくすることができる。したがって、ディスクドライブの薄型化または小型化をよりいっそう促進させることができる。
【実施例】
【0055】
以下、本発明の実施例について図面を参照しながら説明する。図8は、本発明の実施例であるシャッター装置を搭載したディスクドライブを示している。図9は、図8中のディスクドライブ50を矢示D−D方向から見た拡大断面図であり、図10は、図8中のディスクドライブ50を矢示E−E方向から見た拡大断面図である。
【0056】
図8中のディスクドライブ50は、例えばDVD、CD、ブルーレイディスクなどの記録ディスクに対し、情報の読み取りまたは書き込みを行う装置である。ディスクドライブ50は、記録ディスクを着脱することができるタイプであり、また、記録ディスクの着脱方式についてスロットイン方式を採用している。
【0057】
図8に示すように、ディスクドライブ50の外殻は、底板、左側壁板、右側壁板および後ろ側壁板を有するハウジングプレート51と、ハウジングプレート51の上側に取り付けられたカバープレート52とから構成されている。ハウジングプレート51およびカバープレート52は例えば金属材料により形成されている。なお、説明の便宜上、図8では、カバープレート52を、その一部を破断して取り除いた状態で示している。
【0058】
また、ディスクドライブ50の前側には、フロントカバー53が取り付けられている。フロントカバー53は例えば樹脂材料に形成されている。フロントカバー53には、図9に示すように、左右方向に長いスロット54が形成されている。
【0059】
さらに、ディスクドライブ50内には、図10に示すように、スロット54からハウジングプレート51の後ろ側壁板に向けてディスク通路55が形成されている。記録ディスクの着脱は、スロット54およびディスク通路55を通じて行われる。
【0060】
ディスクドライブ50内においてスロット54近傍には、シャッター装置60が設けられている。シャッター装置60は、ディスク通路55を開閉する機能と、イジェクト時に記録ディスクをスロット54近傍の適切な位置に停止させる機能とを有する。シャッター装置60は、シャッター板61、2個の支持板62、62、2個のねじりコイルばね63、63、カム板64および2個の回動阻止部74、74を備えている。
【0061】
シャッター板61は、例えば樹脂材料により形成され、上下方向に短く、左右方向に長く、厚みの薄い板である。
【0062】
シャッター板61の左側縁部の下側には支軸65が設けられ、シャッター板61の左側縁部の上側には突起66が設けられ、これら左側の支軸65および突起66は、左方向にそれぞれ伸びている。シャッター板61の右側縁部にも同様に、支軸65および突起66が設けられ、これら右側の支軸65および突起66は、右方向にそれぞれ伸びている。また、シャッター板61の後面には、2本の制御ピン67、67が設けられ、これら制御ピン67は後ろ方向に伸びている。各支軸65、各突起66および各制御ピン67は、例えば樹脂成形によりシャッター板61と一体的に形成されている。
【0063】
また、シャッター板61の上端部61Aには、例えばフェルトなどの柔らかい材料からなるシート68が貼付されている。
【0064】
支持板62、62は、シャッター板61の左側および右側にそれぞれ配置されている。各支持板62は、その下端がハウジングプレート51の底板に固定されており、上端は上方向に立ち上がっている。支持板62は、例えば折り曲げ加工により、ハウジングプレート51と一体的に形成されている。
【0065】
各支持板62には、上下方向に長い支持穴69が形成されている。左側の支持板62の支持穴69には、シャッター板61の左側の支軸65が前後方向にわずかな遊びをもって挿入されている。また、右側の支持板62の支持穴69には、シャッター板61の右側の支軸65が前後方向にわずかな遊びをもって挿入されている。これにより、支持板62、62は、シャッター板61を上下方向に移動可能に、かつ回動可能に支持している。また、支持板62、62は、シャッター板61が上下方向に限りスライドすることができるように、シャッター板61のスライド方向を規制している。
【0066】
ねじりコイルばね63、63は、シャッター板61の左側および右側にそれぞれ設けられている。ハウジングプレート51の底板上には、ばね支持台70、70が固定されており、各ねじりコイルばね63の下端側は、このばね支持台70に固定されている。各ねじりコイルばね63の上端側は、シャッター板61の後面に固定されている。各ねじりコイルばね63のコイル部には、シャッター板61の支軸65が挿入されている。
【0067】
図11に示すように、各ねじりコイルばね63は、シャッター板61を矢示D1方向に付勢していると共に、シャッター板61を矢示D2方向に付勢している。なお、シャッター板61の矢示D1方向の回動は、制御ピン67とカム溝72との接触によって規制される。また、シャッター61の矢示D2方向の移動は、支軸65と支持溝69との接触によって規制される。
【0068】
カム板64は、例えば金属材料により形成された薄い板である。カム板64は、シャッター板61の後ろ側に配置されている。ハウジングプレート51にはガイド部材71が固定されており、カム板64はこのガイド部材71により左右方向に移動可能に支持されている。
【0069】
図12に示すように、カム板64には、2個のカム溝72、72が形成されている。各カム溝72には、上下方向に位置が互いに異なる3個の縁部72A、72B、72Cが形成されている。また、縁部72Cと対向する位置には縁部72Dが形成されている。各カム溝72には、シャッター板61の制御ピン67がわずかな遊びをもって嵌め込まれている。
【0070】
また、図10に示すように、カム板64の下側は上下方向に立ち上がっているものの、カム板64の上側は、ガイド部材71の上端部を覆うように折れ曲がっており、後ろ方向に伸びている。そして、図8に示すように、カム板64上側の左右方向中央部には連結部73が形成されている。
【0071】
回動阻止部74、74は、図9に示すように、シャッター板61の左側上方および右側上方にそれぞれ配置されている。各回動阻止部74は、例えば折り曲げ加工により、ハウジングプレート51の壁板またはカバープレート52に一体的に形成されている。
【0072】
後に詳述するように、カム板64が左右方向に移動することにより、シャッター板61が上下方向に移動し、ディスク通路55の開閉およびイジェクト時における記録ディスクのブレーキングが行われる。ディスクドライブ50内には、このような動作のきっかけを作り出すのに貢献するいくつかの部材が設けられている。それらは、図8に示すように、2個のローディングアーム81、81、ラック板82、制御レバー83およびクランプバー84などである。
【0073】
ローディングアーム81、81は、シャッター装置60の左側後方および右側後方にそれぞれ配置されている。各ローディングアーム81は、軸81Aを中心にして図8中の矢示D3、D4方向に回動することができる。各ローディングアーム81の内側端部上面にはローラー85が設けられている。各ローラー85はモーター(図示せず)により回転する。
【0074】
また、各ローディングアーム81の軸近傍部下面にはピニオン86が固定されている。左側のピニオン86は、小ピニオン87を介してラック板82のラック部82Aに噛合している。右側のピニオン86は、ラック板82のラック部82Aに直接噛合している。
【0075】
ラック板82は、ハウジングプレート51の底板とローディングアーム81、81との間に、左右方向に移動可能に設けられている。ラック板82の左側および右側には、ラック82Aがそれぞれ形成されている。また、ラック板82の中央近傍には、カム溝88が形成されている。図13に示すように、カム溝88には、前後方向に位置が互いに位置が異なる縁部88A、88Bが形成されている。さらに、ラック板82の中央近傍には、長溝89が形成されている。
【0076】
制御レバー83は、ラック板82上にわずかな空隙を介して設けられている。制御レバー83は軸83Aを介してハウジングプレート51の底板に回動可能に支持されている。軸83Aは、ラック板82の長溝89を、遊びをもって貫通している。これにより、制御レバー83は、ラック板82とは独立して回動することができ、ラック板82が左右方向に移動しても、制御レバー83の軸83Aは移動しない。また、制御レバー83は、ねじりコイルばね(図示せず)などにより、図8において反時計回り方向に付勢されている。
【0077】
さらに、図13に示すように、制御レバー83の前端部には、上方向に伸びる連結ピン90が設けられている。連結ピン90の先端部は、カム板64の連結部73にわずかな遊びをもって挿入されている。また、制御レバー83の後端部には、上方向に伸びるアッパーピン91が設けられている。さらに、制御レバー83には、下方向に伸びるロワーピン92が設けられている。ロワーピン92の先端部は、ラック板82のカム溝88に挿入されている。
【0078】
クランクバー84は、ラック板82の後ろ側に配置されており、図13に示すように、前方向に伸びる突起93を備えている。
【0079】
さらに、ディスクドライブ50は、ターンテーブル94のほか、クランプ機構、イジェクト機構および光ピックアップ(いずれも図示せず)などを備えている。
【0080】
シャッター装置60は例えば次のように動作する。まず、記録ディスクがディスクドライブ50に挿入されていないときには、図8に示すように、ローディングアーム81は、ローラー85が設けられた内側端部が互いに向かい合うような位置で停止している。この状態が初期状態である。
【0081】
このような初期状態では、図13に示すように、制御レバー83のロワーピン92がラック板82のカム溝88の縁部88Aに接している。また、制御レバー83のアッパーピン91とクランクバー84の突起93とが互いに離れている。この結果、制御レバー83の連結ピン90が図13中の位置P1に位置しており、これによりカム板64の連結部73も位置P1に位置している。
【0082】
カム板64がこのような位置にあるときには、図9に示すように、シャッター板61の制御ピン67がカム板64のカム溝72の縁部72Bに接している。この結果、シャッター板61の上端部61Aは図9中の中間位置Q1に位置している。
【0083】
このとき、図10に示すように、シャッター板61の突起66は、回動阻止部74から離れており、かつ、制御ピン67の下側には障害物がない。この結果、シャッター板61は、ねじりコイルばね63の付勢力に抗してディスクドライブ50の奥(後ろ側)に向けて回動することができる。例えば、ユーザーが記録ディスクをスロット54に挿入し、記録ディスクを通じてシャッター板61を押せば、シャッター板61は容易に後ろ側に倒れ込む。
【0084】
次に、ユーザーが記録ディスクをスロット54からディスクドライブ50内に挿入すると、記録ディスクの周縁部によりシャッター板61が押され、シャッター板61が後ろ側に倒れ込む。そして、記録ディスクの周縁部がディスク通路55に進入し、記録ディスクの周縁部が各ローラー85に嵌る。さらに、ユーザーが記録ディスクをディスクドライブ50内に軽く押し込むと、この力により、各ローディングアーム81が初期状態の位置から図8中の矢示D3方向に回動する。この回動は、ピニオン86、小ピニオン87およびラック82Aを介してラック板82に伝わり、これによりラック板82が左方向に移動する。このラック板82の移動をきっかけに、図示しないモーターが始動し、各ローラー85が回転を開始する。これにより、記録ディスクは、ディスク通路55を通じてディスクドライブ50内を後ろ方向に移動する。これにより、記録ディスクが自動的にディスクドライブ50内に引き込まれていく。
【0085】
記録ディスクが後ろ方向に移動するに従って、各ローディングアーム81が矢示D3方向にさらに回動し、これに従ってラック板82が左方向にさらに移動する。そして、図14に示すように、制御レバー83のロワーピン92がラック板82のカム溝88の縁部88Bに接するようになる。これにより、制御レバー83が軸83Aを中心に反時計回りに回動する。この回動により、制御レバー83の連結ピン90が図14中の位置P2に移動し、カム板64の連結部73も位置P2に移動し、この結果、カム板64が右方向に移動する。カム板64が右方向に移動すると、図15に示すように、シャッター板61の制御ピン67がカム板64のカム溝72の縁部72Aに接するようになる。これにより、シャッター板61が下方向に移動し、シャッター板61の上端部61Aが図15中の開通位置Q2に移動する。これにより、シャッター板61は、後ろ方向に移動中の記録ディスクから離れ、シャッター板61はハウジングプレート51に対しほぼ垂直となるように立ち直る。そして、記録ディスクは、ローラー85の回転により、シャッター板61の上端部61Aの上方をスムーズに通過する。
【0086】
次に、ディスクドライブ50内に挿入された記録ディスクが後ろ方向に移動し、この記録ディスクの中心がターンテーブル94の中央に一致すると、クランプ動作が開始される。クランプ動作により、クランプバー84が図17に示すように右方向に移動し、クランプバー84の突起93が制御レバー83のアッパーピン91を右方向に押す。これにより、制御レバー83が時計回りに回動する。この回動により、制御レバー83の連結ピン90が図17中の位置P3に移動し、カム板64の連結部73も位置P3に移動し、この結果、カム板64が左方向に大きく移動する。カム板64が左方向に大きく移動すると、図18に示すように、シャッター板61の制御ピン67がカム板64のカム溝72の縁部72Cに接するようになる。これにより、シャッター板61が上方向に移動し、シャッター板61の上端部61Aが図18中の開通位置Q3に移動する。
【0087】
このとき、図19に示すように、シャッター板61の突起66は、回動阻止部74と重なり合う。また、図18に示すように、制御ピン67の下側には、カム溝72の下側縁部72Dが存在し、これが障害物となる。この結果、シャッター板61は、ディスクドライブ50の奥(後ろ側)に向けて回動することができない。このとき、ユーザーが他の記録ディスクをスロット54に挿入しようとしても、当該他の記録ディスクの周縁部が、回動不能状態のシャッター板61に当たり、当該他の記録ディスクの挿入が阻止される。
【0088】
次に、記録ディスクをイジェクトすべき旨の指示が発せられ、これに応じて記録ディスクのクランプが解除されると、クランプバー84が左方向に移動する。クランプバー84が左方向に移動すると、図示しないねじりコイルばねの付勢力により、制御レバー83が反時計回りに回動する。この結果、制御レバー83の位置が、図17に示す状態から図14に示す状態に戻る。そして、制御レバー83の連結ピン90が図14中の位置P2に移動し、これに連動してシャッター板61が図15中の開通位置Q2に移動する。
【0089】
この直後、イジェクト機構により、ディスクドライブ50内の記録ディスクが前方向に押し出される。このとき、図示しないモーターにより各ローラー85が、記録ディスクのローディング時と反対の方向に回転する。これにより、記録ディスクはディスク通路55内を前方向に移動する。記録ディスクが前方向に移動するに従って、各ローディングアーム81が矢示D4方向に回動し、これに従ってラック板82が右方向に移動する。そして、図13に示すように、制御レバー83のロワーピン92がラック板82のカム溝88の縁部88Aに接するようになる。これにより、制御レバー83が軸83Aを中心に時計回りに回動する。この回動により、制御レバー83の連結ピン90が位置P1に移動し、カム板64の連結部73も位置P1に移動し、この結果、カム板64が左方向に移動する。カム板64が左方向に移動すると、図9に示すように、シャッター板61の制御ピン67がカム板64のカム溝72の縁部72Bに接する。これにより、シャッター板61が上方向に移動し、シャッター板61の上端部61Aが図9中の中間位置Q1に移動する。これにより、ディスク通路55を前方向に移動中の記録ディスクの下面に、シャッター板61の上端部61Aが接触する。この接触により、スロット54の上側内縁部またはローラー85の上側フランジ部と、シャッター板61の上端部61Aとの間に記録ディスクが挟まれる。この結果、摩擦力により記録ディスクにブレーキがかかり、記録ディスクがスロット54近傍の適切な位置に停止する。
【0090】
シャッター板61の上端部61Aが中間位置Q1で記録ディスク1の下面1Aに接触するときには、ねじりコイルばね63による上方向の付勢力が働く。すなわち、シャッター板61の上端部61Aが中間位置Q1にあるとき、シャッター板61Aは、ねじりコイルばね63の上方向の付勢力により、制御ピン67がカム溝72の縁部72Bに接するまで持ち上げられている。しかし、シャッター板61の上端部61Aに下方向の力を加えることにより、ねじりコイルばね63の付勢力に抗してシャッター板61を下方向に移動させることができる。図9および図12に示すように、制御ピン67がカム溝72の縁部72Bに接しているときには、制御ピン67の下側に障害物がないので、シャッター板61に下方向の力が加わったときには、制御ピン67は縁部72Bを離れ、シャッター板61と共に下方向に移動することができる。この結果、シャッター板61の上端部61Aは、上下方向の弾性力をもって記録ディスク1の下面1Aに接触することができ、これにより適切なブレーキング力を作り出すことができる。つまり、上端部16Aと下面1Aとの接触時には、厳密には、シャッター板61の上端部61Aは中間位置Q1よりもわずかに下側の位置で記録ディスク1の下面1Aに接触し、ねじりコイルばね63の付勢力により上端部61Aが下面1Aを上方向に押し上げる状態となる。
【0091】
なお、シャッター板61の上端部61Aが中間位置Q1に移動するのとほぼ同時に、各ローラーの回転が停止する。ローラーの回転が停止するタイミングは、イジェクト機構を構成するモーター、ギア列、ローラーなどの駆動要素の時定数によってばらつきが生じる場合がある。しかし、記録ディスクの停止位置の決定を主に支配しているのは、ローラーの回転停止ではなく、シャッター板61と記録ディスクとの接触である。このため、ローラーの回転停止のタイミングのばらつきがあっても、記録ディスクの停止位置が大幅にずれることはない。
【0092】
以上説明した通り、シャッター装置60によれば、イジェクト時において前方向に押し出される記録ディスクにブレーキをかけることができ、記録ディスクをスロット54近傍の適切な位置に停止させることができる。特に、シャッター装置60では、記録ディスクのブレーキングを、シャッター板61と記録ディスクとの接触により実現している。すなわち、シャッター板61に、ディスク通路55の開閉機能と記録ディスクのブレーキング機能とを兼用させている。これにより、記録ディスクのブレーキングを実現しながら、部品点数の増加を防止でき、ディスクドライブ50の小型化、薄型化、軽量化および製造コストの削減を図ることができる。
【0093】
また、シャッター装置60では、シャッター板61と記録ディスクとの接触により発生する摩擦力を用いて、記録ディスクを停止させる。これにより、記録ディスクの停止を簡単な構成で実現することができる。
【0094】
また、シャッター板61の上端部61Aの上下方向における位置(中間位置Q1)、記録ディスクを前方向に押し出す力、およびシャッター板61と記録ディスクとの接触強度などを調整することにより、記録ディスクの適切な停止位置を簡単に設定することができ、かつ、設定した停止位置に記録ディスクを正確に停止させることができる。
【0095】
なお、上述した実施例では、図20に示すように、シャッター板61の上端部61Aを均一な高さを有する形状とし、イジェクト時には記録ディスク1の下面1Aの中央部分から周縁部分にかけて上端部61Aが接触する場合を例にあげた。しかし、本発明はこれに限られない。図21に示すように、シャッター161の左側上端部161Aと右側上端161Aとを左右方向中央に向けてそれぞれ下向きに傾斜させると共に、シャッター板161の上側中央部には凹部161Bを設けてもよい。これにより、イジェクト時には、シャッター板161の左側上端部161Aと右側上端部161Aとに、記録ディスク1の周縁部下側のエッジ部分だけが接触するので、記録ディスク1の下面1Aに傷が付くのを防止することができる。
【0096】
また、本発明は、請求の範囲および明細書全体から読み取るこのできる発明の要旨または思想に反しない範囲で適宜変更可能であり、そのような変更を伴うシャッター装置もまた本発明の技術思想に含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0097】
【図1】本発明の実施形態であるシャッター装置が搭載されたディスクドライブおよび記録ディスクを示す斜視図である。
【図2】図1中のディスクドライブを矢示A−A方向から見た断面図である。
【図3】シャッター板が開通位置にある状態のシャッター装置などを示す断面図である。
【図4】シャッター板が中間位置にある状態のシャッター装置などを示す断面図である。
【図5】図2中のカムプレートを矢示B−B方向から見た拡大正面図である。
【図6】イジェクト時において記録ディスクが適切な停止位置で停止した状態を示す斜視図である。
【図7】本発明の他の実施形態のシャッター装置が搭載されたディスクドライブを示す断面図である。
【図8】本発明の実施例であるシャッター装置が搭載されたディスクドライブを、ハウジングのカバープレートの一部を取り除いた状態で示す平面図である。
【図9】図8中のシャッター装置を矢示D−D方向から見た拡大断面図である。
【図10】図8中のシャッター装置を矢示E−E方向から見た拡大断面図である。
【図11】図8中のシャッター板およびねじりコイルばねなどを拡大して示す断面図である。
【図12】図8中のカム板を示す正面図である。
【図13】図8中のカム板、ラック板、制御レバーおよびクランクバーの第1状態(初期状態)を示す拡大平面図である。
【図14】図8中のカム板、ラック板、制御レバーおよびクランクバーの第2状態を示す拡大平面図である。
【図15】図14中の第2状態下におけるシャッター装置を示す正面図である。
【図16】図14中の第2状態下におけるシャッター装置を示す断面図である。
【図17】図8中のカム板、ラック板、制御レバーおよびクランクバーの第3状態を示す拡大平面図である。
【図18】図14中の第3状態下におけるシャッター装置を示す正面図である。
【図19】図14中の第3状態下におけるシャッター装置を示す断面図である。
【図20】図8中のシャッター板を示す正面図である。
【図21】シャッター板の変形例を示す正面図である。
【符号の説明】
【0098】
1 記録ディスク
10、30、50 ディスクドライブ
14、55 ディスク通路
15、31、60 シャッター装置
16、32、61 シャッター板
17、34、62 支持板
18、64 カム板
19 支持突部
21、69 支持溝
23、72 カム溝
23A、23B、23C、72A、72B、72C 縁部
33、65 支軸
35 支持穴
74 回動阻止部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
記録ディスクのローディングおよびイジェクトを行うために記録ディスクを通過させるディスク通路を有するディスクドライブ本体に設けられ、前記ディスク通路を開閉するシャッター装置であって、
シャッター板と、
前記シャッター板と前記ディスクドライブ本体との間に設けられ、前記シャッター板の上端部が上下方向に移動可能となるように前記シャッター板を支持する支持部材と、
前記シャッター板の上端部の上下方向における位置を遮断位置、開通位置および中間位置のいずれかに変更可能に決定する位置決め機構とを備え、
前記遮断位置は、前記ディスク通路の上側に存在し、前記ディスク通路を前記記録ディスクが通過するのを前記シャッター板により遮る位置であり、
前記開通位置は、前記ディスク通路の下側に存在し、前記ディスク通路を通過する前記記録ディスクの下面と前記シャッター板の上端部との間に空隙が形成される位置であり、
前記中間位置は、前記遮断位置と前記開通位置との間に存在し、前記ディスク通路を通過する前記記録ディスクの下面と前記シャッター板の上端部とが接触する位置であることを特徴とするシャッター装置。
【請求項2】
前記位置決め機構は、前記シャッター板を上下方向に移動させることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項3】
前記位置決め機構は、前記シャッター板の傾きを変化させることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項4】
前記支持部材は、前記シャッター板の左側端部を挿入するための上下方向に長い溝が形成された第1支持板と、前記シャッター板の右側端部を挿入するための上下方向に長い溝が形成された第2支持板とを備えていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項5】
前記位置決め機構はカム板を備え、
前記カム板には、前記遮断位置、開通位置および中間位置にそれぞれ対応する縁部を有するカム溝が形成され、
前記シャッター板は、一端側が当該シャッター板に固定され、他端側が前記カム溝に挿入されるピンを備えていることを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項6】
前記シャッター板は、当該シャッター板の左側に固定され左方向に伸びる第1支軸と、当該シャッター板の右側に固定され右方向に伸びる第2支軸とを備え、
前記支持部材は、前記第1支軸を挿入するための上下方向に長い溝が形成された第1支持板と、前記第2支軸を挿入するための上下方向に長い溝が形成された第2支持板とを備え、前記支持部材は、前記シャッター板を上下動可能にかつ回動可能に支持することを特徴とする請求項1に記載のシャッター装置。
【請求項7】
前記位置決め機構により前記シャッター板の上端部が前記遮断位置に決定されているとき、前記シャッター板の回動を阻止する回動阻止部を備えていることを特徴とする請求項6に記載のシャッター装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【公開番号】特開2007−102882(P2007−102882A)
【公開日】平成19年4月19日(2007.4.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−289364(P2005−289364)
【出願日】平成17年9月30日(2005.9.30)
【出願人】(000005016)パイオニア株式会社 (3,620)
【出願人】(591224825)株式会社ゼロエンジニアリング (22)
【Fターム(参考)】