説明

ディスクドライブのヘッドジンバルアセンブリ内のピッチ及びロール静止トルクの調節

【課題】フレクシャの変形及びロードフォースのオフセットの両方に応答し、且つ、ABS摩擦と関連した誤差の影響を受けない計測法を提供する。
【解決手段】ヘッドジンバルアセンブリ内のスライダ上の静止トルクを調節するためのシステム及び方法において、スライダのエアベアリング表面(ABS)上に実質的な剛体質量を配置する。スライダの静止姿勢を計測し、フレクシャがゼロのスライダ静止姿勢を実現するための調節場所及び強度を計算する。計測及び計算に基づいてフレクシャを調節する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁気ハードディスクドライブに関するものである。更に詳しくは、本発明は、ディスクドライブのヘッドジンバルアセンブリ内のピッチ及びロール静止トルクを調節する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図1は、当技術分野において一般的なハードディスクドライブの設計を示している。磁気記録ハードディスクドライブ100は、ディスクとの間においてデータを読み取り及び/又は書き込みするべく、エアベアリングスライダ上に取り付けられた読み取り/書き込みトランスデューサ又はヘッドを使用している。スライダは、サスペンションによってアクチュエータアームに装着されている。このスライダとサスペンションの組み合わせをヘッドジンバルアセンブリ(Head−Gimbal Assembly:HGA)102と呼んでいる。一般に、ディスクドライブ100は、ディスク101の積層体と、HGA102の積層体と、を具備可能であり、1つのHGAがそれぞれのディスク表面と関連付けられている。サスペンションは、ロードビームと、フレクシャと、を更に包含可能である。フレクシャは、スライダをロードビームに接続することにより、フレクシャとロードビームの間の相対的な同一プレーン内におけるアライメントを維持しつつ、スライダがロードビームとの関係において「ピッチング」及び「ローリング」できるようにしている。ロードビームは、通常、少なくとも1つの柔軟な部分によって接続された2つの硬い部分から構成されている。柔軟な部分を弾性的に折り曲げることにより、(当技術分野において「グラムロード」と呼ばれている)反力を生成可能であり、これをロードディンプルを通じてスライダに伝達し、スライダをディスクに押圧している。グラムロードは、完全に、ディスクに対して伝達され、ディスクによって支持される。
【0003】
静止したディスクに対してスライダがローディングされた際の状態を「コンタクトストップ」状態と呼んでいる。そのピッチ及びロール角は、いずれもゼロである。この同一の場所において、ロードビームがスライダ外部の支持部によって保持され、且つ、ディスクが除去されると、スライダは、もはやグラムロードの影響を受けなくなる。基準プレーン(これは、消失したディスク表面を表現可能である)との関係におけるそのピッチ及びロール角を、それぞれ、ピッチ静止姿勢(Pitch Static Attitude:PSA)及びロール静止姿勢(Roll Static Attitude:RSA)と呼んでいる。PSA及びRSAを静止姿勢と総称可能である。ピッチ及びロール角の変化は、フレクシャの弾性変形に起因し、ピッチ及びロールトルクを含んでいる。
【0004】
スライダは、正常な動作において回転するディスク上にローディングされた際には、ディスクに直接接触することなしに、ディスクの回転によって生成されるクッション又はエアベアリング上に載置される。エアベアリングは、グラムロードを相殺する吸引力及び揚力の両方を生成している。スライダとディスク表面の間の離隔距離を飛行高度と呼んでいる。これは、一般に、非常に小さい(通常、最新技術のディスクドライブにおいて、10nmのレベルである)。スライダのピッチ及びロール角も、静止姿勢と比べて格段に小さい。飛行高度、ピッチ、及びロールを「飛行姿勢」と総称可能である。飛行姿勢は、ディスクドライブの性能及び信頼性にとって極めて重要である。これらは、ディスクの回転速度、スライダのエアベアリング表面(Air−Bearing Surface:ABS)の空気力学的な形状、グラムロード、並びに、サスペンションによってスライダに印加されるピッチ及びロールトルクなどの要因の影響を受けることになる。
【0005】
前述のように、ピッチ及びロールトルクは、部分的にフレクシャによってもたらされている。直観的に、ピッチ及びロールトルクは、それぞれ、フレクシャのフレクシャピッチ及びロール剛性(Kp又はKr)及び対応するピッチ静止姿勢(PSA)又はロール静止姿勢(RSA)の積に等しい。Zengは、フレクシャ剛性が、サスペンションごとに大幅に異なる可能性があることに注目し、米国特許出願公開第2005/0165561A1号において、トルク調節の際にフレクシャ剛性を計測する方法を開示している。フレクシャ剛性は、ピッチ及びロール角の関数としても大幅に変化可能である。Zengの方法は、スライダがローディング位置にない際にフレクシャの剛性を計測しており、従って、ピッチ及びロール角は、それぞれ、PSA及びRSAに等しい。この結果は、ローディングの際の、即ち、ピッチ及びロール角がPSA及びRSAから飛行姿勢に変化した際の平均剛性と大きく異なる可能性がある。従って、この結果は、フレクシャによって作用するピッチ及びロールモーメントを正確に表現不可能である。
【0006】
更には、スライダ上におけるディンプルの接触場所も、製造公差に起因し、大幅に変化可能である。グラムロードとピッチ及びロール方向における対応したディンプルのオフセットの積が、それぞれ、スライダのピッチ及びロールトルクに寄与可能である。接触地点が、2つの不透明なボディの間に位置しており、且つ、一般的なトランスデューサには不可視状態にあるため、この寄与量を計測するのは困難である。Zengは、この寄与について考慮してはいない。
【0007】
概念的には、結果的に生じるピッチ及びロールトルクは、複数の独立したフォースセンサ上にスライダABSをローディングすることによって計測可能である。2つの寄与原因(静止姿勢とディンプルのオフセット)の分離と剛性変動の分析は、いずれも不要である。結果的に生じる望ましいトルクがピッチ及びロール方向において実現される時点まで、サスペンションを単純に調節可能である。この方法は、既に試みられている。少なくとも1つの装置製造者(Matronics社)が、複数のロードセルによる静止トルク計測に基づいたシステムを市販しており、これについては、米国特許第5,787,570号を参照されたい。
【0008】
結果的に生じるトルクを調節するという概念は、第1寄与原因のみを調節することよりも望ましい。しかしながら、複数のロードセルによる計測は、ABS摩擦に対して脆弱であり、ローディングプロセスにおいてABS摩擦を回避することは困難であろう。スライダがロードセルと係合した際には、その軌道は、理想的な垂直経路をしばしば逸脱可能である。大きな摩擦力が結果的に生じることになる。対照的に、ABS上に載置されているスライダは、無視可能な摩擦を経験可能である。ABSとディンプル接点間の距離によって乗算されることにより、無関係なABS摩擦が、計測を歪ませる大きなピッチ及びロールトルクを生成可能である。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従って、スライダのピッチ静止トルク(PST)及びロール静止トルク(RST)を規定及び調節できるように、これらを計測するための改善された方法が求められている。具体的には、フレクシャの変形及びロードフォースのオフセットの両方に応答し、且つ、ABS摩擦と関連した誤差の影響を受けない改善された計測法に対するニーズが存在している。
【課題を解決するための手段】
【0010】
ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)内のスライダ上の静止トルクを調節するシステム及び方法を開示している。実質的な剛体質量をスライダのエアベアリング表面(ABS)上に配置可能である。剛体質量がスライダのABS上に配置された状態においてスライダの静止姿勢を計測可能である。ゼロのスライダ静止姿勢を実現するためのフレクシャの調節強度及び調節場所を計算可能である。スライダ静止姿勢の計測及び調節の計算に基づいて、フレクシャを調節可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
図2aは、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)の一実施例を示している。HGAは、ロードビーム225、エアベアリング表面(ABS)235を有するスライダ230、及びスライダ230をロードビーム225に結合しているジンバル又はフレクシャ240を包含可能である。ロードビームは、ベースプレート215によってアクチュエータアーム210に接続されたヒンジ接続されたセクション220を包含可能である。アクチュエータアームは、アクチュエータ205に結合可能であり、このアクチュエータは、ディスクドライブシステム内の回転ディスクの表面との関係において同一プレーン内においてスライダ230を移動可能である。ロードビーム225がベースプレート215と比較して角度θだけ傾くように、ヒンジ接続セクション220を折り曲げ可能である。ロードビーム225は、フレクシャ240を通じてスライダ230に結合可能であると共に、ディンプル245を介してスライダに接続可能である。フレクシャ240は、柔軟であってよく、これにより、スライダ230は、ディンプル上においてピッチング(即ち、そのx軸を中心として動くこと)及びローリング(即ち、そのy軸を中心として動くこと)可能である。折り曲げられたロードビームの結果として、当技術分野においてグラムロードと呼ばれている反力が生成される。グラムロードは、回転するディスクから生成されるエアベアリング力を相殺可能である。
【0012】
図2bは、ディスクドライブシステム内の静止したディスクに対するHGAの関係の一実施例を示している。この実施例においては、スライダ230及びロードビーム225は、ロードビーム225とヒンジ接続セクション220の間の(図1に示されている)角度θが実質的にゼロになるように、静止したディスク250によって下方に折り曲げられている。この位置をスライダ230及びロードビーム225の「ローディングされた状態」と呼称可能である。この変形に対するヒンジ接続セクション220による抵抗の結果として、グラムロードをロードビーム225及びディンプル245を通じてスライダ230に伝達可能である。スライダ230のABS235及びアクチュエータアーム210の上部表面255の間の距離を高度「z」と呼称可能である。
【0013】
図3aは、HGAの一実施例を示しており、且つ、スライダのピッチ静止姿勢を示している。この実施例においては、ピン305によってロードビーム225を保持することにより、図2に表示されているものと同一の高さ「z」を得ることができる。ピン305によって保持されたロードビーム225は、ローディングされた状態にあってよいが、スライダ230及びフレクシャ240は、ローディングされた状態にはない。スライダ230のABS235とアクチュエータアーム210の上部表面255の間の円弧として図3aに示されている角度αは、スライダ230のピッチ静止姿勢(PSA)を表現可能である。
【0014】
ロードビーム225は、実質的に剛性であってよいが、これは、依然として多少の柔軟性を有することになろう。ピン305とディンプル245の間のロードビーム225のセクションにおける折り曲げモーメントが多少の変形を引き起こし、この結果、PSAの計測に悪影響を及ぼす可能性がある。具体的には、ロードビーム225の剛性を無限に増大させることはできない。但し、ピン305とディンプル245の間の距離を低減することは可能である。ディンプル245がピン305にアクセスすることはできないため、この距離をゼロに低減することは不可能である。図3bは、ロードビームの変形を防止する代替実施例を示しており、この場合には、ピン305を一体のローディング/アンローディング先端部310上に配置し、これにより、ピン305とディンプル245の間の距離を低減可能である。
【0015】
図4は、HGAの一実施例の端面図を示しており、且つ、スライダのロール静止姿勢を示している。この端部図は、ローディングされた状態におけるスライダ230、フレクシャ240、ロードビーム225、及アクチュエータアーム210を示している。スライダ230のABS235とアクチュエータアーム210の上部表面255の間の角度は、βと表記されており、これは、スライダ230のロール静止姿勢(RSA)を表現可能である。PSA及びRSAを総合して「静止姿勢」と定義し、PSA及びRSAのそれぞれを「静止姿勢」の構成要素と見なすことが可能である。
【0016】
図5は、ディスクドライブシステム内の回転するディスクに対するHGAの関係の一実施例を示している。ディスク250の回転は、スライダ230をディスク250から離れるように押し出すエアベアリング力を生成可能である。これに応答し、スライダは、ディスクの表面から距離「h」において「飛行」可能である。スライダ230のABS235とディスク250の表面の間の距離「h」をスライダの飛行高度と呼称可能である。スライダの飛行高度の変動は、ディスクとの間におけるデータの読み取り又は書き込みに悪影響を及ぼす可能性を有している。
【0017】
ロードビーム225によってスライダ230に伝達される力とスライダ230上においてフレクシャ240によって作用するピッチ及びロールトルクは、エアベアリング力に対抗可能であり、且つ、スライダの飛行高度に影響を及ぼす可能性がある。スライダの飛行高度を調節及び制御するべく、ロードビームの柔軟なセクション220によって折り曲げられたロードビーム225の角度(θ)、ピッチ静止姿勢(α)、及びロール静止姿勢(β)を調節可能である。角度θの調節は、グラムロードに影響を及ぼすことが可能であり、これについは、当技術分野において十分に理解されている。PSA及びRSAの調節は、静止ピッチ及びロールトルクに提供を及ぼす可能性がある。従来技術におけるスライダの飛行高度を調節及び制御するための1つの方法は、すべてのHGAにおいて同一のピッチ及びロールトルクをフレクシャ240によって作用させる段階を伴うものであろう。この従来技術の方法の実装は、フレクシャのピッチ及びロール剛性が、スライダごとに、且つ、PSA及びRSAの関数として、変化しない定数であると仮定したものであろう。しかしながら、この方法は、ディンプルオフセットの変動を考慮してはいない。更には、この従来技術の方法は、望ましい静止ピッチ及びロールトルクの実現を保証してもいない。従来技術の方法の第2の更に複雑な実装は、Zengによって開示されており、これは、フレクシャのピッチ及びロール剛性をその場所において計測し、望ましい静止ピッチ及びロールトルクが実現される時点まで、サスペンションを調節している。しかしながら、Zengの実装は、PSA及びRSAの関数としてのピッチ及びロール剛性の変動を考慮してはいない。更には、ディンプルオフセットに起因したピッチ及びロールトルクの変動も、考慮してはいない。
【0018】
スライダの飛行高度を調節及び制御するための従来技術における第2の方法は、静止ピッチ及びロールトルクをその場所において計測し、望ましい静止ピッチ及びロールトルクが実現される時点まで、サスペンションを調節するというものであろう。しかしながら、スライダ及びロードビームがローディングされた状態にある際の静止ピッチ及びロールトルクの計測は困難であろう。ローディングされた状態においては、グラムロードがスライダ230及びロードビーム225の変形に抵抗可能であり、且つ、スライダのABS235をディスク250との接触状態に維持可能であるため(図2bを参照されたい)、ABS摩擦を導入可能である。ABS摩擦は、ピッチ及びロールトルクの計測に悪影響を及ぼす可能性がある。スライダ及びロードビームがローディングされた状態にある際のABS摩擦及びピッチ及びロールトルクの計測と関連した問題を回避するべく、回転するディスクの上方においてスライダを飛行させ、飛行高度を計測可能である。回転するディスク上をスライダが飛行している際に、所望の飛行高度が実現される時点まで、サスペンションを調節可能である。しかしながら、実際には、スライダの飛行高度の計測は、低速であって、且つ、費用を要し、飛行の最中のサスペンション調節は、経済的に実行不可能であろう。
【0019】
図6a及び図6bは、実質的な剛体質量の一実施例を示している。剛体質量605をスライダのABS235上に配置することにより、ABS摩擦を除去可能である。質量605は、グラムロードに等しい重量を具備可能である。スライダのABS235が水平であれば、質量605がABS235上においてスライドする傾向は存在せず、且つ、ABS摩擦が除去される。又、実質的な剛体質量605を使用すれば、エアベアリング力を質量605の重量によって置換し、且つ、飛行高度の代わりにスライダピッチ及びロールを計測することにより、静止ピッチ及びロールトルクの計測及びスライダの飛行高度の計測を通じたサスペンション調節を回避可能である。スライダのピッチ及びロールは、飛行高度よりも静止ピッチ及びロール角を表現可能である。更には、スライダのピッチ及びロールは、スライダ230とディスク250の間に隠蔽された飛行高度と比べて、可視状態にあるという事実に起因し、静止ピッチ及びロールは、飛行高度よりも計測が容易であろう。又、スライダのピッチ及びロールは、一般的に、飛行高度計測(通常は、10nmのレベルある)よりも大きい(通常は、30mradのレベルある)。
【0020】
実質的な剛体質量605は、スライダのABS235に係合する接触表面615を包含可能である。又、質量605は、接触表面615に対する既知の傾斜角度を有する少なくとも1つの基準表面620をも包含可能である。一実施例においては、基準表面620は、接触表面615との関係においてゼロの傾斜角度を具備可能である。質量605の接触表面615は、スライダのABS135上におけるロッキングを回避するべく、実質的に平坦であってよいが、スライダのABS235に対する、スティクションとも呼ばれている接着を極小化するべく、十分に粗いものであってもよい。基準表面620の少なくとも一部は、鏡面反射性を有することができる。一実施例においては、基準表面620の鏡面反射性部分は、スクラップ単結晶シリコンチップ片から構成可能である。
【0021】
実質的な剛体質量605は、PSA及びRSAの計測のためのフレクシャの各部位へのアクセスを提供すると共に、ロードビーム225及びピン305との干渉を回避するべく成形可能である。質量605は、質量の中心610を保持可能であり、これは、重力に起因したピッチ及びロールモーメントが静止姿勢とは無関係になるように、ディンプル245の頂点と実質的に同じ高さであってよい。質量605は、その形状、平行性、及び質量の中心610の位置を維持するべく、実質的に剛性であってよい。質量は、磁気的及び静電気的な力に対する無関係な反力を除去するべく、磁性及び静電気帯電性を有していないものであってよい。
【0022】
図7は、スライダABSの平面図を示している。基礎静力学によれば、スライダのABS235上においてエアベアリングによって作用する吸引力及び揚力は、スライダのABS235に垂直であり、且つ、ABS235上のポイント705を通じて作用する結果的な力として表現可能である。ポイント705をABS力の中心と呼称可能である。ABS235が水平位置を実現した際には、結果的に生じるエアベアリング力は、垂直である。従って、その質量の中心610がABS力の中心705と垂直方向においてアライメントされている場合には、これを剛体質量605の重量によって置換可能である。
【0023】
図8は、フレクシャを調節するシステムの一実施例を示している。ロードビーム225をピン305によってローディングすることにより、望ましい高さ「z」を実現可能である。ABS力の中心705と質量の中心が垂直方向においてアライメントされるように、質量605をスライダのABS235上に配置可能である。簡潔にするべく、質量605の接触表面615の下の部分は、図示されていない。一実施例においては、製造公差により、ロードビーム225によって供給されるグラムロードが、その正常値を下回る可能性がある。このような実施例においては、質量605の重量により、ロードビーム225がピン305から係合解除され、この結果、高さ「z」が増大すると共に、角度αの計測に悪影響を及ぼす可能性がある。ピン305の反対側において、ロードビーム225の下部表面上に配置された更なるピン820により、この問題を修正可能である。
【0024】
検出器810は、ピッチ及びロール角を計測可能である。検出器は、非接触型スロープ検出器であってよく、且つ、レーザーダイオードなどのコリメートされた光源を包含可能であり、この光源は、基準表面620を照射すると共に、反射された光のパターンを、クワッドセル、ダイオードアレイ、又は電荷結合デバイスなどの光学センサ上に投影するべく配置されている。反射光のパターンを標準パターンと比較することにより、スライダの静止姿勢又はスライダのピッチ及びロール角を判定可能である。スライダ230にグラムロードが印加されていない場合には、報告されるピッチ及びロール角は、それぞれ、RSA及びPSAに等しくなる。しかしながら、スライダ230が質量605によってローディングされている際には、報告されるピッチ及びロール角の理想的な値はゼロである。実際に報告されるピッチ及びロール角は、PSA、RSA、ピッチ剛性、ロール剛性、ディンプルのオフセット、及びグラムロードにおける製造公差に起因し、ゼロを逸脱可能である。
【0025】
コントローラ805は、検出器810から情報を受信及び処理可能であり、且つ、非接触型熱源815を制御可能である。一実施例においては、コントローラ805は、命令を入力するためのキーボード、システム情報を表示するためのモニタ、並びに、マイクロプロセッサによって制御されたマザーボード、ハードディスクドライブ、及びフロッピー(登録商標)ディスクドライブを含むコンピュータを具備したデスクトップコンピュータ825を包含可能である。又、コントローラ805は、検出器810によって報告されたピッチ及びロール角に基づいて加熱の望ましい場所、強度、及び持続時間を計算するべく、コンピュータ825上においてインストールされ、且つ、稼動するソフトウェアをも包含可能である。非接触型熱源815は、コントローラ805から指示又は命令を受信可能であり、且つ、相応してフレクシャを調節可能である。非接触型熱源815は、エキシマレーザーであってよく、且つ、フレクシャの選択された部位を熱膨張及び変形させることにより、結果的にスライダの静止姿勢の調節を実現可能である。これらの調節は、これらがその個々の製造公差を満足するように、報告されるピッチ及びロール角が実質的にゼロになる時点まで、反復可能である。
【0026】
図9は、HGA内においてスライダ上の静止トルクを調節する一実施例をフローチャートにおいて示している。ブロック910において、実質的な剛体質量をスライダABS上に配置可能である。ブロック920において、スライダの静止姿勢を計測可能である。ブロック930において、フレクシャがゼロのスライダ静止姿勢を実現するための調節強度及び場所を計算可能である。この計測及び計算に基づいて、ブロック940においてフレクシャを調節可能である。
【0027】
図10は、HGA内のスライダ上の静止トルクを調節する一実施例をフローチャートにおいて示している。ブロック1010において、スライダのピッチ及びロールを計測可能である。スライダは、エアベアリング表面と、スライダのABS上に配置された剛体質量の重心と垂直方向においてアライメントされたエアベアリング力の中心と、を具備可能である。ブロック1020において、スライダのピッチ及びロール角をゼロにするためのフレクシャに対する調節を計算可能である。この計測及び計算に基づいて、ブロック1030において、フレクシャを調節可能である。ブロック1040において、規定の製造公差が実現される時点まで、このプロセスを反復可能である。
【0028】
従って、以上の内容は、本発明の原理を例示したものに過ぎない。更には、当業者であれば、多数の変更及び変形が可能であり、且つ、以上において説明した実施例の開示は、本発明を図示の構造及び動作そのままに限定するものではなく、従って、すべての変更及び等価物は、本発明の範囲内に含まれるということを認識するであろう。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】当技術分野において一般的なハードディスクドライブの設計を示している。
【図2a】ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)の一実施例を示している。
【図2b】ディスクドライブシステム内の静止したディスクに対するHGAの関係の一実施例を示している。
【図3a】HGAの一実施例を示しており、且つ、スライダのピッチ静止姿勢を示している。
【図3b】HGAの一実施例の側面図を示している。
【図4】HGAの一実施例の端面図を示しており、且つ、スライダのロール静止姿勢を示している。
【図5】ディスクドライブシステム内の回転するディスクに対するHGAの関係の一実施例を示している。
【図6a】実質的な剛体質量の一実施例の等角図を示している。
【図6b】実質的な剛体質量の一実施例を示している。
【図7】スライダABSの平面図を示している。
【図8】フレクシャを調節するシステムの一実施例を示している。
【図9】HGA内のスライダ上の静止トルクを調節する一実施例をフローチャートにおいて示している。
【図10】HGA内のスライダ上のスライダトルクを調節する一実施例をフローチャートにおいて示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ヘッドジンバルアセンブリ内のスライダ上の静止トルクを調節する方法において、
実質的な剛体質量を前記スライダのエアベアリング表面上に配置する段階と、
前記スライダの静止姿勢を計測する段階と、
フレクシャがゼロのスライダ静止姿勢を実現するための調節強度及び調節場所を計算する段階と、
前記計測及び計算に基づいて前記フレクシャを調節する段階と、
を有する方法。
【請求項2】
前記計測、計算、及び調節段階を反復することにより、既定の製造公差を実現する請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記実質的な剛体質量の重量は、前記ヘッドジンバルアセンブリのグラムロードに等しい請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記実質的な剛体質量は、磁性を有していない請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記実質的な剛体質量は、静電気帯電性を有していない請求項1記載の方法。
【請求項6】
前記実質的な剛体質量は、前記スライダのエアベアリング表面に係合するための第1表面と、前記第1表面との関係において傾斜角度を具備した第2表面と、を具備する請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記第1表面は、実質的に平坦である請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記第2表面は、ゼロの傾斜角度を具備する請求項6記載の方法。
【請求項9】
前記第2表面の少なくとも一部は、鏡面反射性を有する請求項6記載の方法。
【請求項10】
前記実質的な剛体質量の重心は、前記スライダのエアベアリング表面のエアベアリング力の中心と垂直方向においてアライメントされている請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記計測は、光学的に実現される請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記フレクシャの調節は、非接触型熱源を使用して前記フレクシャを加熱する段階を含む請求項1記載の方法。
【請求項13】
前記非接触型熱源は、エキシマレーザーである請求項12記載の方法。
【請求項14】
ヘッドジンバルアセンブリ内のフレクシャを調節するシステムにおいて、
ロードビーム、エアベアリングスライダ、及び前記スライダを前記ロードビームに接続しているフレクシャを含むヘッドジンバルアセンブリと、
前記スライダのエアベアリング表面に係合するための第1表面と、前記第1表面との関係において傾斜角度を具備した第2表面と、を有する実質的な剛体質量と、
スライダのピッチ及びロール角を計測するための非接触型スロープ検出器と、
前記フレクシャを調節するための非接触型熱源と、
前記スライダのピッチ及びロール角の計測値を受信すると共に、前記非接触型熱源を制御するためのコントローラと、
を有するシステム。
【請求項15】
前記ロードビームは、実質的に剛性の部分を含んでおり、前記実質的に剛性の部分は、一体のロードディンプルを具備しており、前記ロードビームは、正常なスライダの飛行動作において公称高度「z」を具備しており、前記ロードビームは、前記質量が前記エアベアリング表面上に配置される前に、前記公称高度「z」を実現するべくロードピンによって弾性的に折り曲げられる請求項14記載のシステム。
【請求項16】
前記ロードビームは、前記ロードビームが前記ロードピンから係合解除されることを防止するべく、保持ピンによって更に制約される請求項15記載のシステム。
【請求項17】
前記質量の前記第1表面は、実質的に平坦である請求項14記載のシステム。
【請求項18】
前記質量の前記第2表面は、前記第1表面との関係においてゼロの傾斜角度を具備する請求項14記載のシステム。
【請求項19】
前記非接触型スロープ検出器は、前記質量の前記第2表面を照射するためのコリメートされた光源と、前記質量の前記照射された第2表面からの反射された光のパターンを受光するための光学センサと、を含んでおり、前記スロープ検出器は、前記反射光のパターンを基準パターンと比較することにより、前記スライダのピッチ及びロール角を判定する請求項14記載のシステム。
【請求項20】
前記光学センサは、クワッドセルである請求項19記載のシステム。
【請求項21】
前記光学センサは、ダイオードアレイである請求項19記載のシステム。
【請求項22】
前記光学センサは、電荷結合デバイスである請求項19記載のシステム。
【請求項23】
前記非接触型熱源は、エキシマレーザーである請求項14記載のシステム。
【請求項24】
前記コントローラは、
命令を入力するためのキーボード、システム情報を表示するためのモニタ、並びに、マイクロプロセッサによって制御されたマザーボード、ハードディスクドライブ、及びフロッピー(登録商標)ディスクドライブを具備したコンピュータを具備するデスクトップコンピュータと、
前記検出器によって計測された前記スライダのピッチ及びロール角に基づいて、前記フレクシャを加熱するための所望の場所、強度、及び持続時間を計算するべく前記コンピュータ上にインストールされたソフトウェアと、
を有する請求項14記載のシステム。
【請求項25】
ヘッドジンバルアセンブリ内のスライダ上の静止トルクを調節するための方法において、
前記スライダのエアベアリング力の中心と剛体質量の重心を垂直方向においてアライメントさせる段階であって、前記剛体質量は、前記スライダのエアベアリング表面上に配置される、段階と、
前記スライダのピッチ及びロール角を計測する段階と、
ゼロのスライダのピッチ及びロール角を実現するためのフレクシャ調節を計算する段階と、
前記計測及び計算に基づいて前記フレクシャを調節する段階と、
既定の製造公差が満足される時点まで、前記計測、計算、及び調節を反復する段階と、
を有する方法。
【請求項26】
前記剛体質量は、磁性を有していない請求項25記載の方法。
【請求項27】
前記剛体質量は、静電気帯電性を有していない請求項25記載の方法。
【請求項28】
前記剛体質量は、前記スライダのエアベアリング表面に係合するための第1表面であって、前記スライダのエアベアリング表面上におけるロッキングを回避するべく実質的に平坦である第1表面と、前記第1表面との関係において傾斜角度を具備しており、且つ、少なくとも一部が鏡面反射性を有する第2表面と、を具備している請求項25記載の方法。
【請求項29】
前記第2表面の傾斜角度はゼロである請求項28記載の方法。
【請求項30】
前記剛体質量の重量は、前記ヘッドジンバルアセンブリのグラムロードと等しい請求項25記載の方法。
【請求項31】
前記計測は、光学的に実現される請求項25記載の方法。
【請求項32】
前記フレクシャの調節は、非接触型熱源を使用して前記フレクシャを加熱する段階を含む請求項25記載の方法。
【請求項33】
前記非接触型熱源は、エキシマレーザーである請求項32記載の方法。

【図1】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【図4】
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【図5】
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【図6a】
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【図6b】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−217965(P2008−217965A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−330447(P2007−330447)
【出願日】平成19年12月21日(2007.12.21)
【出願人】(500393893)新科實業有限公司 (361)
【氏名又は名称原語表記】SAE Magnetics(H.K.)Ltd.
【住所又は居所原語表記】SAE Technology Centre, 6 Science Park East Avenue, Hong Kong Science Park, Shatin, N.T., Hong Kong
【Fターム(参考)】