説明

ディスクドライブ装置

【課題】カートリッジホルダの水平方向への移動距離を短くして、装置全体の小型化を図る。
【解決手段】ディスクカートリッジが装着されるカートリッジホルダと、フレーム部材と、第1スライダと、ホルダ移動部を設ける。フレーム部材はカートリッジホルダを移動可能に保持し、第1スライダはフレーム部材に摺動可能に支持される。ホルダ移動部は第1スライダの動作を介してカートリッジホルダをディスクカートリッジが出し入れされる第1、第2の方向に移動させる。第1スライダに設けた第1カム部と、スライダに設けた第2カム部と、ギアブラケットに回転自在に支持されたカムギアを有する。ホルダ移動部は、カムギアに設けられ且つ第1カム部に摺動可能に係合される第1カムピンと、カートリッジホルダに設けられ且つ第2カム部に摺動可能に係合される第2カムピンを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジホルダを、そのディスクカートリッジが出し入れされる第1の方向及び当該第1の方向と交差する第2の方向に移動させるディスクドライブ装置に関する。特に、カートリッジホルダの移動方向を第1の方向と第2の方向とで方向変換するときに、ホルダ移動部の動作によりカートリッジホルダを直線的に移動させることができるディスクドライブ装置に関わる。
【背景技術】
【0002】
従来の、この種のディスクドライブ装置としては、例えば、特許文献1に記載されているようなものがある。特許文献1には、ディスクカートリッジが装填されるディスクドライブ装置に関するものが記載されている。この特許文献1に記載されたディスクドライブ装置は、内部にディスク状記録媒体が収容されるディスクカートリッジと、このディスクカートリッジが挿入されるカートリッジホルダと、駆動機構とを備えている。カートリッジホルダは、固定フレームに取り付けられており、挿入されたディスクカートリッジをイジェクト位置からローディング位置まで引き込む。駆動機構は、ディスクカートリッジがカートリッジホルダに挿入された後、カートリッジホルダをイジェクト位置からローディング位置まで引き込み駆動する。これと共に駆動機構は、ディスクカートリッジ内のシャッタ開閉用回転部材を回転駆動してシャッタを開くようになされた、ことを特徴としている。
【0003】
この特許文献1に記載されたディスクドライブ装置によれば、ディスクカートリッジをディスクドライブ装置内に装填する際に、使用者が手指や異物をディスクカートリッジの開口部内に誤って挿入することがある。そして、光ディスク等を汚すことがあるが、この光ディスク等に汚れや塵が付着するのを抑制することができる(特許文献1の段落[0058])等の効果が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−5880号公報
【0005】
しかしながら、上述した従来のディスクドライブ装置では、カートリッジホルダをイジェクト位置と、引込み位置と、ローディング位置との間で水平方向及び垂直方向に移動させるために、L型の移動経路に沿ってガイドするガイド構造を備えていた。そのガイド構造は、カートリッジホルダの左右両側面の外側で、前後2箇所に横向きに突出された合計4本のガイドピンと、固定フレームの左右両側板に形成された合計4つのL型ガイド溝とによって構成されている。そして、合計4本のガイドピンを合計4つのL型ガイド溝に沿って駆動する駆動部材が左右一対のスライドカムとして構成されており、固定フレームに保持されて水平方向に平行にスライド可能とされていた。
【0006】
この従来のディスクドライブ装置では、カートリッジホルダが、イジェクト位置まで排出方向にイジェクトされている時には、各ガイドピンが各L型ガイド溝の水平部の前端に位置し、各傾斜ガイド溝の上端の垂直部内に位置している。そのため、左右一対のスライドカムがカートリッジホルダの挿入方向へスライド駆動されると、各傾斜ガイド溝の垂直部によって各ガイドピンが各L型ガイド溝の水平部に沿って水平方向に水平に駆動される。これにより、カートリッジホルダがイジェクト位置から引き込み位置まで水平に引き込まれる。一方、左右一対のスライドカムが引き続きカートリッジホルダの挿入方向へスライド駆動されると、各ガイドピンが各傾斜ガイド溝の垂直部から下方に外れ、各傾斜ガイド溝のカム作用によって各L型ガイド溝の垂直部に沿って下方向に垂直に駆動される。これにより、カートリッジホルダが引き込み位置からイジェクト位置まで垂直に下降される。
【0007】
この場合、傾斜ガイド溝の垂直部と水平部との間は、適宜半径のR(アール)形状の溝によって連続されている。このR形状溝に沿ってガイドピンを移動させることにより、ガイドピンを滑らかに移動させて、カートリッジホルダを引き込み位置からイジェクト位置まで滑らかに下降させることができる。このとき、R形状溝を廃止して垂直部と水平部を直接連続させる構成とすることも理論上は可能であるが、そうすると、連続部においてガイドピンが垂直部を急速に降下することになり、移動時に衝撃力が加わることになって好ましくない。そのため、R形状溝において、その機能を考えると、R形状の曲線部の存在は必要条件であり、カートリッジホルダを水平方向及び垂直方向にスムースに移動させるためには、R形状部は無くてはならない必須の要素である。
【0008】
しかしながら、このような従来の構造では、ガイドピンを介してカートリッジホルダを垂直方向へ移動させるためには、垂直方向への移動ばかりでなく、R形状部があるために水平方向へも移動する必要があった。その結果、ガイドピンが水平方向に移動する分だけカートリッジホルダの水平方向への移動距離が長くなり、この水平方向への移動距離の増加分だけ装置が大型化され、装置全体の小型化の要請に反することになるという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする問題点は、従来のディスクドライブ装置では、ガイドピンを介してカートリッジホルダを垂直方向へ移動させるために、垂直方向への移動ばかりでなく、水平方向へも移動する必要があった。そのため、ガイドピンが水平方向に移動する分だけカートリッジホルダの水平方向への移動距離が長くなり、装置全体の小型化を図ることができないという点である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明のディスクドライブ装置は、ディスク状記録媒体が回転自在に収納されたディスクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジホルダと、フレーム部材と、スライダと、ホルダ移動部と、を設ける。フレーム部材はカートリッジホルダを移動可能に保持し、スライダはフレーム部材に摺動可能に支持される。そして、ホルダ移動部はスライダの動作を介してカートリッジホルダをディスクカートリッジが出し入れされる第1の方向及び第1の方向と交差する第2の方向に移動させる。ホルダ移動部は、スライダに設けた第1カム部と、スライダに設けた第2カム部と、フレーム部材が支持される支持部材に回転自在に支持されたカムギアと、を有する。更に、ホルダ移動部は、カムギアに設けられ且つ第1カム部に摺動可能に係合される第1カムピンと、カートリッジホルダに設けられ且つ第2カム部に摺動可能に係合される第2カムピンと、を有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明のディスクドライブ装置によれば、ホルダ移動部が第1カム部と第2カム部とカムギアと第1カムピンと第2カムピンとを有し、スライダを動作させることにより、カートリッジホルダを第1の方向及び第2の方向に直線的に移動することができる。そのため、カートリッジホルダの移動方向を、曲線によることなく直線的に変換することができ、カートリッジホルダの水平方向への移動を距離を短くして、装置全体の小型化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明のディスクドライブ装置を使用した電子機器の実施の形態の一例を示すディスク記録及び/又は再生装置の外観斜視図である。
【図2】本発明のディスクドライブ装置の実施の形態の一例を示すもので、ディスク出入口にディスクカートリッジを臨ませた外観斜視図である。
【図3】本発明のディスクドライブ装置の実施の形態の一例を示すもので、正面右側から見た斜視図である。
【図4】本発明のディスクドライブ装置の実施の形態の一例を示すもので、正面左側から見た斜視図である。
【図5】本発明のディスクドライブ装置に係るベース部材の斜視図である。
【図6】本発明のディスクドライブ装置に係るカートリッジホルダの斜視図である。
【図7】本発明のディスクドライブ装置に係るフレーム部材の斜視図である。
【図8】本発明のディスクドライブ装置に係るX字リンクの斜視図である。
【図9】本発明のディスクドライブ装置に係る第1スライダの斜視図である。
【図10】本発明のディスクドライブ装置に係る第2スライダの斜視図である。
【図11】本発明のディスクドライブ装置に係るギアブラケットと扉開閉アームの斜視図である。
【図12】本発明のディスクドライブ装置に係る第1揺動レバーの斜視図である。
【図13】本発明のディスクドライブ装置に係る第2揺動レバーの斜視図である。
【図14】本発明のディスクドライブ装置に係るスライダフレームの斜視図である。
【図15】本発明のディスクドライブ装置に係るカムギアを示すもので、図15Aは正面図、図15Bは図15AのE−E線断面図である。
【図16】本発明のディスクドライブ装置に係る第1ホルダロックの斜視図である。
【図17】本発明のディスクドライブ装置に係る第2ホルダロックの斜視図である。
【図18】本発明のディスクドライブ装置に係るプロテクタベースの斜視図である。
【図19】本発明のディスクドライブ装置に係るプロテクタレバーの斜視図である。
【図20】本発明のディスクドライブ装置に係る開閉扉の斜視図である。
【図21】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、イジェクト(待機)状態の説明図である。
【図22】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、ディスクカートリッジ挿入状態の説明図である。
【図23】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、ディスクカートリッジ挿入完了状態の説明図である。
【図24】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、垂直移動開始状態の説明図である。
【図25】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、垂直移動途中状態の説明図である。
【図26】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、垂直移動完了状態の説明図である。
【図27】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、水平移動開始状態の説明図である。
【図28】本発明のディスクドライブ装置の動作を説明するもので、水平移動完了状態の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
ディスクカートリッジが出し入れされる第1の方向及びこれと交差する第2の方向にカートリッジホルダを移動させるホルダ移動部を設け、カートリッジホルダを、平行移動部で第2の方向に平行移動させると共に直進移動部で第1の方向に直進移動させる。これにより、ホルダ移動部でカートリッジホルダの動きを制御し、カートリッジホルダの水平方向(第1の方向)への移動距離を短くして、装置全体の小型化を図ることができる。
【実施例】
【0014】
図1は、本発明のディスクドライブ装置1が使用されている電子機器の実施の形態の一例を示すディスク記録再生装置200と、このディスク記録再生装置200に使用される情報記録媒体であるディスクカートリッジ300の実施の形態の一例を示すものである。
【0015】
図1に示すように、ディスク記録再生装置200は、中空の筐体からなる外装ケース201と、この外装ケース201内に収納された記録再生装置本体等を備えて構成されている。外装ケース201は、上面に開口されたケース本体202と、ケース本体202の上面を閉じるように着脱可能に取り付けられたケース蓋体203と、ケース蓋体203の前面の開口部を閉じるように着脱可能に取り付けられた前面パネル204等を備えている。ケース本体202の4箇所には下方に突出する脚体205が設けられており、これらの脚体205によって外装ケース201が支えられ、また、適宜位置にネジ止め等によって固定可能とされている。
【0016】
前面パネル204は横長に形成されており、その略中央部には、横長に形成されたカートリッジ出入口206が設けられている。カートリッジ出入口206は、前面パネル204の内側に回動可能に支持された開閉扉207によって開閉可能とされている。開閉扉207は、常時は図示しない捩りバネのバネ力により付勢されて、カートリッジ出入口206が開閉扉207によって閉じられている。この開閉扉207をディスクカートリッジ300の先端部で押圧し、ディスクカートリッジ300をディスク取出部から所定位置まで差し込むことにより、ローディング機構によって自動的に取り込まれ、所定のディスク装着部まで搬送される。
【0017】
ディスクカートリッジ300は、上下に重ね合わされる上シェル及び下シェルからなるカートリッジ筐体301と、このカートリッジ筐体301内に形成されたディスク収納室内に回転自在に収納された光ディスク等を備えて構成されている。光ディスクの一面は、情報信号の記録及び再生が可能な情報記録面として形成されており、その情報記録面の一部が、カートリッジ筐体301の下面に設けた開口部から露出されている。ディスクカートリッジ300をディスクドライブ装置1に装着すると、ターンテーブルと光ピックアップが開口部内に入り込み、光ディスクがターンテーブルに装着される。これと同時に又は前後して、光ピックアップの対物レンズが光ディスクの情報記録面に対向される。これにより、光ディスクの情報記録面に対する情報信号の記録又は再生が可能となり、記録・再生の準備が完了する。
【0018】
ディスクドライブ装置1は、図2〜図4に示すような構成を有している。即ち、ディスクドライブ装置1は、ベース部材2と、カートリッジホルダ3と、フレーム部材4と、X字リンク5と、第1スライダ6及び第2スライダ7と、ギアブラケット8及び扉開閉アーム9と、第1揺動レバー11及び第2揺動レバー12を備えている。更に、ディスクドライブ装置1は、スライダフレーム14と、カムギア15と、第1ホルダロック16及び第2ホルダロック17等を備えている。
【0019】
ベース部材2は、図5に示すような構成を有している。ベース部材2は、平面形状が日の字形をした枠状の部材からなり、一対の長辺側枠片2a,2aと、一対の短辺側枠片2b,2bと、長手方向の中途部において一対の長辺側枠片2a,2a間に掛け渡された中央枠片2cとを有している。中央枠片2cの略中央部には、図2〜図4に示すように、スピンドルモータ21を搭載するためのモータ搭載部22が設けられている。モータ搭載部22には、スピンドルモータ21の固定部がカシメ等の固定手段によって固定され、回転部がベース部材2の一面側に突出されている。スピンドルモータ21の回転部の上端には、ディスクカートリッジ300に収納されている光ディスクが着脱可能に装着されるターンテーブル23が固定され、その回転部と一体にターンテーブル23が回転駆動可能とされている
【0020】
ベース部材2には、2組のピックアップ装置が取り付け可能とされている。2組のピックアップ装置は、例えば、1組はDVD(Digital Versatile Disc)用のピックアップ装置であり、他の1組はブルーレイ・ディスク用のピックアップ装置である。図2〜図4では1組のピックアップ装置25のみを図示しているが、各ピックアップ装置は、一対のガイド軸26,26と、スライド部材27と、光ピックアップ28と、図示しないピックアップ移動用モータ及び送りネジ等を備えている。一対のガイド軸26,26は、ベース部材2の長手方向の一側において、スピンドルモータ21を挟むように両側に所定の間隔をあけて平行に配置されており、この一対のガイド軸26,26間にスライド部材27が摺動可能に掛け渡されている。
【0021】
一対のガイド軸のうち、一方のガイド軸の外側にピックアップ移動用モータが配置されており、そのモータの回転軸とされた送りネジが、一方のガイド軸と平行に配設されている。送りネジには、スライド部材27に設けた送りナットが摺動可能に係合されており、モータの回転力が送りネジ及び送りナットを介してスライド部材に伝達されるように構成されている。かくして、ピックアップ移動用モータを駆動すると、その回転力が送りネジから送りナットに伝達され、これにより、モータの回転方向に応じて、スライド部材がスピンドルモータ21に対して近づく方向又は遠ざかる方向に移動される。このスライド部材がスピンドルモータ21から遠ざかる方向へ移動する際に、光ディスクの情報記録面に対物レンズを臨ませた光ピックアップ28によって情報信号の読み出し又は書き込みが実行される。
【0022】
ベース部材2のターンテーブル23側の面にフレーム部材4が配設され、図示しない固定ネジによってベース部材2の上面にフレーム部材4が締付固定されている。フレーム部材4は、図7に示すような構成を有している。フレーム部材4は、ベース部材2の幅方向に展開された上面部4aと、この上面部4aの一側に連続された左側面部4bと、上面部4aの他側に連続された右側面部4cとを有している。フレーム部材4の上面部4aには、略長方形をなす大きな開口部31が設けられており、これにより上面部4aは、前端片32aと後端片32bを有する枠状の部分として形成されている。上面部4aの後端片32bの、右側面部4c側の端部には幅方向に延在する長穴33が設けられ、左側面部4b側の端部にはピン受け穴34が設けられている。
【0023】
フレーム部材4の左側面部4bには、第1スライダ6の第1カム部57を露出させるための切欠き部35が設けられている。更に、左側面部4bの切欠き部35より前側には、外側に張り出した膨出片36が設けられている。膨出片36には、内側に突出する枢軸37が固定されている。そして、左側面部4bの先端には、第1揺動レバー11が回動する際の倒れを防止する規制片38が斜め上方へ突出するように設けられている。左側面部4bの前部の下端部にはベース部材2に固定するための脚片39aが設けられ、後部の下端部には同じくベース部材2に固定するための脚片39bが設けられている。
【0024】
また、フレーム部材4の右側面部4cの前側には、外側に張り出した膨出片41が設けられている。膨出片41には、内側に突出する枢軸42が固定されている。そして、右側面部4cの先端には、第2揺動レバー12が回動する際の倒れを防止する規制片43が斜め上方へ突出するように設けられている。更に、右側面部4cの下部には、第2スライダ7を摺動可能に支える支持ピン44が前後方向に適宜な間隔をあけて2箇所に設けられている。そして、右側面部4cの前部の下端部にはベース部材2に固定するための脚片45aが設けられ、後部の下端部には同じくベース部材2に固定するための脚片45bが設けられている。
【0025】
このフレーム部材4の内側にカートリッジホルダ3が、ディスクドライブ装置1の第1の方向の一具体例を示す前後方向に移動可能であって、その第1の方向と交差する第2の方向の一具体例を示す上下方向にも移動可能に支持されている。カートリッジホルダ3は、図6に示すような構成を有している。カートリッジホルダ3は、U字状の切欠き部47を有する上面部3aと、上面部3aの左右に連続された左側面部3b及び右側面部3cと、背面側に連続された背面部3dと、左右の側面部3b,3cに連続された左右の下面部3e,3fとを有している。カートリッジホルダ3の上面部3aは、略四角形をなす平板部分の前端側をU字状に大きく切り欠くことによって形成されている。
【0026】
このカートリッジホルダ3の上面部3aと左右の側面部3b,3cと背面部3dと左右の下面部3e,3fとによって、ディスクカートリッジ300を着脱可能に保持するカートリッジ収納部50が構成されている。カートリッジホルダ3の上面部3aの左右側面部3b,3cの近傍には、ディスクカートリッジ300を下面部3e,3f側に付勢して振動やバタツキを抑える板バネ48,48が固定されている。板バネ48は、長手方向を第1の方向Xに向けて配置されていると共に、その長手方向の中途部をカートリッジホルダ3にネジ止めすることにより固定されている。そして、各板バネ48の両端部をカートリッジ収納部50内に突出させることにより、各端部がディスクカートリッジ300の上面に圧接するように構成されている。
【0027】
カートリッジホルダ3の左右側面部3b,3cには、第1の方向Xに所定の間隔をあけて2つの第2カムピン52,52が設けられている。左右の第2カムピン52,52は、左右方向においてそれぞれ対応する位置に設定されており、それぞれの軸心線を互いに一致させて、カートリッジホルダ3に取り付けられている。
【0028】
このカートリッジホルダ3の左側面部3bとフレーム部材4の左側面部4bとの間に第1スライダ6が摺動可能に配置されている。そして、カートリッジホルダ3の右側面部3cとフレーム部材4の右側面部4cとの間に第2スライダ7が摺動可能に配置されている。第1スライダ6は、図9に示すような構成を有している。第1スライダ6の第1の方向Xの長さはフレーム部材4の左側面部4bの長さよりも少し小さく、その幅は左側面部4bの幅よりも少し小さく形成されていて、スライダフレーム14によって第2の方向Yへの移動が防止されている。このスライダフレーム14により、フレーム部材4に対して第1スライダ6は、第1の方向Xへのみ移動可能とされていて、第2の方向Yへは移動できないように構成されている。
【0029】
第1スライダ6の前部は、後方を幅広としたくさび形状に形成されており、また、後端の上部には支持片55が設けられている。支持片55にはX字リンク5の回動ピン77が回動自在に嵌合される軸受穴56が設けられている。この第1スライダ6の長手方向の中途部に第1カム部57が設けられ、この第1カム部57より前方に第2カム部の前カム溝58が設けられ、第1カム部57より後方に第2カム部の後カム溝59が設けられている。前カム溝58と後カム溝59との間隔は、カートリッジホルダ3に設けた2つの第2カムピン51,51の間隔と同一とされている。更に、前カム溝58と後カム溝59の高さは、同一高さに設定されている。
【0030】
第1スライダ6の第1カム部57は、第1の方向Xと直交する第2の方向Yに延在され且つカムギア15の第1カムピン51を第2の方向Yに案内する直線溝61と、この直線溝61の中間部に設けた円弧状凹面62とを有している。直線溝61の幅は、第1カムピン51の直径と等しく設定されており、この直線溝61にガイドされて第1カムピン51が第2の方向Yへ移動される。円弧状凹面62は、カムギア15の回転中心を曲率半径の中心として第1カムピン51が回転するときの当該第1カムピ51の外縁が描く大きさの円弧面として形成されている。この円弧面は、直線溝61の第1の方向Xにおける前後に形成されるが、直線溝61の第1の方向Xにおける後側の円弧面のみが円弧状凹面62として使用される。
【0031】
この円弧状凹面62の存在により、第1カム部57の直線溝61は、円弧状凹面62の一側に連続された上側直線溝61aと、円弧状凹面62の他側に連続された下側直線溝61bとされている。上側直線溝61aは、カートリッジホルダ3を第1の方向Xである水平方向に移動させる作用を有する。また、下側直線溝61bは、カートリッジホルダ3を第2の方向Yである垂直方向に移動させる作用を有する。このような直線溝61と円弧状凹面62を有する第1カム部57は、その略下半分が第1スライダ6の下面から下方に突出されている。
【0032】
第1スライダ6の前カム溝58と後カム溝59は、同一の形状及び大きさに形成された同一のものであり、前側上水平部58a(59a)及び後側下水平部58b(59b)と、斜面部58c(59c)とを有している。前側上水平部58a(59a)は、第1の方向Xの前側に設定されていて、その後端に斜面部58c(59c)の先端が連続されている。斜面部58c(59c)は、第1の方向Xに対して斜め下方に延在されており、その後端に後側下水平部58b(59b)の先端が連続されている。従って、前側上水平部58a(59a)と後側下水平部58b(59b)は、第1の方向Xに対して平行となっている。
【0033】
更に、第1スライダ6の前カム溝58の前側上部には、第1ホルダロック16を揺動可能に保持するためのストッパ収納部65が設けられている。ストッパ収納部65には、第1ホルダロック16を回動自在に保持する軸受部66と、捩りバネを支持するためのバネ支持凸部67が設けられている。
【0034】
第2スライダ7は、図10に示すような構成を有している。第2スライダ7は、第1カム部57を取り除いた後の第1スライダ6と略同様の形状及び大きさを有しており、その前部は、後方を幅広としたくさび形状に形成されている。そして、第2スライダ7の後端の上部には連結片68が設けられている。連結片68にはX字リンク5の可動ピン79が摺動可能に係合される長穴69が設けられている。この第2スライダ7の長手方向の前方に第2カム部の前カム溝58が設けられ、後方に第2カム部の後カム溝59が設けられている。前カム溝58と後カム溝59は、第1スライダ6の前カム溝58及び後カム溝59と同様のものであり、同一の間隔をもって、同一の高さ位置に設定されている。
【0035】
この第2スライダ7の前カム溝58の前側上部には、第2ホルダロック17を揺動可能に保持するためのストッパ収納部71が設けられている。ストッパ収納部71には、ストッパ収納部65と同様に、第2ホルダロック17を回動自在に保持するための軸受部72と、捩りバネを支持するための図示しないバネ支持凸部が設けられている。
【0036】
X字リンク5は、図8に示すような構成を有している。X字リンク5は、第1リンク片74と第2リンク片75との2つのリンク片を有しており、互いの中間部を交差させ、その交差部を枢軸76で回動自在に連結することによって一体に形成されている。第1リンク片74の長手方向の一側には回動ピン77が固定されており、この回動ピン77がフレーム部材4のピン受け穴34に回動自在に嵌合されている。第1リンク片74の長手方向の他側には第1摺動ピン78が固定されており、この第1摺動ピン78が第2スライダ7の長穴69に摺動可能に係合されている。また、第2リンク片75の長手方向の一側には可動ピン79が固定されており、この可動ピン79がフレーム部材4の長穴33に摺動可能に係合されている。第2リンク片75の長手方向の他側には第2摺動ピン80が固定されており、この第2摺動ピン80が第1スライダ6の軸受穴56に回動自在に嵌合されている。
【0037】
スライダフレーム14は、図14に示すような構成を有している。スライダフレーム14は、フレーム部材4の左側面部4bに設けた切欠き部35の開口側を閉じるように左側面部4bにネジ止めされて用いられている。スライダフレーム14は、切欠き部35の開口側を閉じるように配置される横長のガイド面部14aと、このガイド面部14aの両側に連続された前固定部14b及び後固定部14cとを有している。このスライダフレーム14は、左側面部4bの切欠き部35の前側に前固定部14bを対向させると共に、切欠き部35の後側に後固定部14cを対向させて固定されている。そして、ガイド面部14aの前側に第1スライダ6の第1カム部57の下半分が対向されている。
【0038】
スライダフレーム14のガイド面部14aにより、第1カム部57の下半分の撓み変形を防止し又は抑制している。また、スライダフレーム14の前固定部14b及び後固定部14cの上部は水平面とされており、これらの水平面によって第1スライダ6の下面が摺動可能に支持されている。
【0039】
カムギア15は、図15に示すような構成を有している。カムギア15は、所定の歯数を有するギア本体の一面に円弧カム81を設け、この円弧カム81と反対側の面に第1カムピン51を突出することによって形成されている。カムギア15の中央部には、支持軸が挿通される中央穴15aが設けられている。カムギア15の外周縁のギア部の内側に穴が設けられており、その穴に軸部を圧入することによって、第1カム部57の直線溝61の幅と略等しい直径の頭部を有する第1カムピン51が一体に固定されている。
【0040】
第1ホルダロック16は、図16に示すような構成を有している。第1ホルダロック16は、横長の棒状片として形成されており、その棒状片の長手方向の一側に回動軸部16aが設けられ、長手方向の他側にロック爪82が設けられている。ロック爪82は、棒状片の幅方向の一側に半円形の凹部を開口するように鉤状に形成されている。第1ホルダロック16のロック爪82の開口側と反対側には、捩りバネ83(図21を参照)の一方の弾性片を受け止めるバネ受部84が設けられている。また、回動軸部16aには、第1ホルダロック16の上方への回動を制限する上部ストッパ85aが設けられている。そして、棒状片の回動軸部16aの近傍には、第1ホルダロック16の下方への回動を制限する下部ストッパ85bが設けられている。
【0041】
第2ホルダロック17は、図17に示すような構成を有している。第2ホルダロック17は、第1ホルダロック16と左右対称をなすように形成されており、横長の棒状片の長手方向の一側に回動軸部17aが設けられ、長手方向の他側にロック爪82が設けられている。更に、棒状片のロック爪82の開口側と反対側にバネ受部84が設けられ、回動軸部17aに上部ストッパ85aが設けられ、回動軸部17aの近傍に下部ストッパ85bが設けられている。
【0042】
捩りバネ83は、複数回巻回された巻回部と、その巻回部の両端から突出された2つの弾性片を有している。この捩りバネ83は、第1スライダ6のストッパ収納部65及び第2スライダ7のストッパ収納部71にそれぞれ収納され、各ストッパ収納部65,71において、バネ支持凸部67に巻回部が装着されている。この捩りバネ83の一方の弾性片が各ストッパ収納部65,71の壁面に当接され、他方の弾性片が各ホルダロック16,17のバネ受部84にそれぞれ当接されている。これにより、各ホルダロック16,17は、捩りバネ83のバネ力により、図21において反時計方向に付勢され、その反時計方向への回動が2つのストッパ85a,85bによって制限されている。
【0043】
図3及び図21等に示すように、カムギア15は、ギアブラケット8に回転自在に支持されている。図11に示すように、ギアブラケット8は横長の板状部材からなり、このギアブラケット8に固定された第1支持軸87aにカムギア15が回転自在に取り付けられている。カムギア15は、5枚の中間ギア88,89,90,91,92を介して、電動モータ93の回転軸に取り付けられた出力ギア94に動力伝達可能に連結されている。これら中間ギア88〜92のうち、第1〜第4の中間ギア88〜91を支持するために、ギアブラケット8の所定位置に第2〜第5支持軸87b〜87eが固定されている。
【0044】
5枚の中間ギア88〜92は、それぞれ大径ギア部と小径ギア部を有しており、カムギア15のギア部には第1中間ギア88の小径ギア部が噛合され、その大径ギア部は第2中間ギア89の小径ギア部に噛合されている。第2中間ギア89の大径ギア部には第3中間ギア90の小径ギア部が噛合され、その大径ギア部は第4中間ギア91の小径ギア部に噛合されている。第4中間ギア89の大径ギア部には第5中間ギア92の小径ギア部が噛合され、その大径ギア部が出力ギア93に噛合されている。なお、第5中間ギア92は、電動モータ93が固定されたモータブラケット95に立設された支持軸に回転自在に支持されている。
【0045】
図11に示すように、ギアブラケット8の第1支持軸87a側の端部には、扉開閉アーム9が上下方向へ揺動可能に取り付けられている。扉開閉アーム9は、への字形に形成された細長い板状の部材からなり、その折曲部において枢軸97でギアブラケット8に揺動可能に支持されている。扉開閉アーム9の一方の片である後側片9bの先端には、カムギア15の円弧カム81に摺動接触するカム接触部98が設けられており、そのカム接触部98は円弧カム81のカム面に常時摺動接触されている。扉開閉アーム9のカム接触部98を円弧カム81に臨ませるために、ギアブラケット8には開口部8aが設けられている。更に、ギアブラケット8には、ベース部材2にネジ止めするための固定部8bが設けられている。
【0046】
また、扉開閉アーム9の他方の片である前側片9aの先端には、開閉扉20を開閉操作するための扉開閉ピン99が設けられている。扉開閉アーム9の前側片9aは、カートリッジホルダ3やフレーム部材4等の側面に沿うように前方に延在されており、その先端部に設けた扉開閉ピン99は、カートリッジホルダ3の前端縁よりも前に突出されている。この扉開閉ピン99が移動する範囲内に、開閉扉20を閉動作させるプロテクタレバー19が配置され、そのプロテクタレバー19がプロテクタベース18によって回動可能に支持されている。
【0047】
開閉扉20は、図20に示すような構成を有している。開閉扉20は、カートリッジ出入口206の長さ及び幅と同程度の長さ及び幅を有する長尺状の板材からなり、その長手方向両側であって幅方向の一側に、それぞれ外側に突出する軸部20a,20aが設けられている。この開閉扉20は、図示しないが、外装ケース201の前面パネル204に、カートリッジ出入口206を開閉可能な状態で取り付けられている。この開閉扉20は、常時は、図示しない捩りバネのバネ力によってカートリッジ出入口206を開放する方向に付勢されている。
【0048】
プロテクタベース18は、図18に示すような構成を有している。プロテクタベース18は、細長い棒状の部材からなり、長手方向の両端部に、長手方向外側にそれぞれ突出する軸部18a,18aが設けられている。このプロテクタベース18は、ベース部材2の一方の短辺側枠片である前枠片2bの上面に配置され、図示しない固定ネジでネジ止めされて固定されている。
【0049】
また、プロテクタレバー19は、図19に示すような構成を有している。プロテクタレバー19は、プロテクタベース18の上方に対向される正面部19aと、この正面部19aの両側方に連続する側面部19b,19bとを有し、両側面部19b,19b間にプロテクタベース18が介在されている。各側面部19bには軸受穴101が設けられており、これらの軸受穴101にプロテクタベース18の軸部18aがそれぞれ回動自在に嵌合されている。このとき、正面部19aは開閉扉20の内側に配置され、この正面部19aにより押圧されて開閉扉20が閉じ方向に回動される。このプロテクタレバー19は、図示しない捩りバネのバネ力によって開閉扉20でカートリッジ出入口206を閉鎖する方向に常時付勢されている。
【0050】
プロテクタレバー19の各側面部19bには、操作片102とロック片103がそれぞれ設けられている。操作片102は、捩りバネのバネ力に抗してプロテクタレバー19を回動させるためのもので、扉開閉アーム9の扉開閉ピン99によって押圧操作される。また、ロック片103は、第1揺動レバー11及び第2揺動レバー12を所定の姿勢でロックするためのものである。
【0051】
このプロテクタレバー19は、ディスクドライブ装置1の初期状態では図21に示すように、操作片102が扉開閉ピン99に当接され、開閉扉20が閉じられた状態となっている。このとき、プロテクタレバー19の正面部19aは開閉扉20の内側に対向され、更にその後方にロック片103が臨まれる。これに対して、図23に示すように、操作片102に扉開閉ピン99が押圧され、プロテクタレバー19が所定角度回動すると、ロック片103が第1揺動レバー11及び第2揺動レバー12に当接し、これらの動きを規制する。このとき、捩りバネのバネ力によって開閉扉20が後方に回動し、カートリッジ出入口206が開放される。
【0052】
フレーム部材4の左側面部4bに取り付けられる第1揺動レバー11は、図12に示すような構成を有している。第1揺動レバー11は、薄い板状の部材からなり、一側に設けた回動片11aに回動穴105を形成している。第1揺動レバー11は、回動片11aと反対側に突出するアーム片11bを有しており、アーム片11bの先端部は、適当な大きさの曲率半径を有する湾曲部として形成されている。第1揺動レバー11の回動片11aとアーム片11bの間には、第2カムピン52が摺動可能に係合される係合溝106が設けられている。また、第1揺動レバー11の回動片11aの下側にはバネ受片11cが設けられている。
【0053】
この第1揺動レバー11は、回動片11aの回動穴105に、フレーム部材4の左側面部4bに設けた膨出片36の枢軸37を嵌合することによって左側面部4bの前部に揺動可能に取り付けられている。第1揺動レバー11のバネ受片11cには、図示しない引っ張りコイルバネの一端が連結されており、その引っ張りコイルバネの他端はフレーム部材4に支持されている。この引っ張りコイルバネのバネ力により、第1揺動レバー11は、図21において、時計方向に付勢されている。この取付状態において、第1揺動レバー11の係合溝106に、前側第2カムピン52が摺動可能に係合されている。
【0054】
フレーム部材4の右側面部4cに取り付けられる第2揺動レバー12は、図13に示すような構成を有している。第2揺動レバー12は、第1揺動レバー11と左右対称をなすように形成されており、薄い板状の部材の一側に回動穴107を有する回動片12aを設け、他側にアーム片12bを設けている。更に、第2揺動レバー12の回動片12aとアーム片12bの間には、第2カムピン52が摺動可能に係合される係合溝108が設けられている。そして、第2揺動レバー12の回動片12aの下側にはバネ受片12cが設けられている。
【0055】
この第2揺動レバー12は、第1揺動レバー11と同様にして取り付けられており、回動片12aの回動穴107に、フレーム部材4の右側面部4cに設けた膨出片36の枢軸37を嵌合することによって右側面部4cの前部に揺動可能に取り付けられている。第2揺動レバー12のバネ受片12cには、図示しない引っ張りコイルバネの一端が連結されており、その引っ張りコイルバネの他端はフレーム部材4に支持されている。この引っ張りコイルバネのバネ力により、第2揺動レバー12は、第1揺動レバー11と対称をなすように付勢されている。この取付状態において、第2揺動レバー12の係合溝108に、前側第2カムピン52が摺動可能に係合されている。
【0056】
ベース部材2の材質としては、例えば、アルミニウム合金が好適であるが、マグネシウム合金その他の金属を用いることができる。カートリッジホルダ3と、フレーム部材4と、X字リンク5と、ギアブラケット8と、扉開閉アーム9と、スライダフレーム14と、プロテクタレバー19の材質としては、例えば、スチール鋼やステンレス鋼等の金属が好適である。しかしながら、ABS(アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン樹脂)等のエンジニアリングプラスチックを用いることもできる。また、第1スライダ6と、第2スライダ7と、第1揺動レバー11と、第2揺動レバー12と、カムギア15と、第1ホルダロック16と、第2ホルダロック17の材質としては、例えば、POM(ポリアセタール)が好適である。しかしながら、ABS等のエンジニアリングプラスチックを用いることもできる。
【0057】
このような構成を有するディスクドライブ装置1の動作は、例えば、次のようにして行われる。図21〜図28は、ディスクドライブ装置1の動作を説明するもので、図21〜図25は、ディスクカートリッジ300をカートリッジホルダ3に挿入し、所定のディスク装着部までディスクカートリッジ300を搬送する装着動作を示している。また、図26〜図28は、ディスク装着部に装着されているディスクカートリッジ300を、その装着を解除してカートリッジ出入口206に搬送するまでの排出動作を示している。
【0058】
即ち、図21は、ディスクカートリッジ300を装着する前(或いは排出した後)の待機状態を示し、図22は、ディスクカートリッジ300をカートリッジホルダ3に装着した状態を示している。図23は、ディスクカートリッジ300の装着されたカートリッジホルダ3が水平方向に所定位置まで移動した状態(水平動作完了)を示し、図24は、カートリッジホルダ3が垂直方向に移動を開始した状態を示している。図25は、カートリッジホルダ3が垂直方向に所定距離を移動してチャッキングが完了した状態を示し、図26は、チャッキングを解除してカートリッジホルダ3が垂直方向に所定位置まで戻った状態(垂直動作完了)を示している。また、図27は、カートリッジホルダ3が排出側への水平移動を開始した状態を示し、図28は、排出側への水平移動が完了してディスクカートリッジ300をディスク取出部に排出した状態を示している。
【0059】
図21に示す待機状態では、フレーム部材4に保持されているカートリッジホルダ3は、ベース部材2の前側に位置しており、開閉扉20はカートリッジ出入口206を閉じている。このとき、カムギア15の第1カムピン51は、第1カム部57の上側直線溝61aと円弧状凹面62とが連続する部分に位置している。また、扉開閉アーム9のカム接触部98は、円弧カム81の低位置に接触している。また、カートリッジホルダ3に設けた前後2つの第2カムピン52,52は、第1スライダ6及び第2スライダ7に設けた前カム溝58及び後カム溝59の各前側上水平部58a,59aに位置しており、カートリッジホルダ3は最も高い位置に保持されている。
【0060】
この状態から、図22に示すように、ディスクカートリッジ300で開閉扉20を押圧してカートリッジ出入口206にディスクカートリッジ300を差し込む。この際、ディスクカートリッジ300で開閉扉20を後方へ押し倒すと、開閉扉20によってプロテクタレバー19が後方へ押圧され、プロテクタレバー19が同じく時計方向に回動される。その結果、プロテクタレバー19のロック片103が扉開閉アーム9の扉開閉ピン99に当接し、その扉開閉ピン99を押し下げる。これにより、扉開閉アーム9が枢軸97を回動中心として、同図において反時計方向に回動することにより、カム接触部98が円弧カム81から離れる。
【0061】
そして、図23に示すように、ディスクカートリッジ300を所定位置まで差し込むと、図示しないロック手段によってディスクカートリッジ300がカートリッジホルダ3に保持される。これと共に、図示しない位置検出器が、ディスクカートリッジ300が差し込まれた状態を検出し、その検出信号を制御装置に出力する。これにより、電動モータ93が回転駆動され、その回転力が出力ギア94から5枚の中間ギアを介してカムギア15に伝達され、カムギア15が、図23において時計方向に回動される。このとき、カムギア15と一体に設けた第1カムピン51が、上側直線溝61a内に入り込み、その上側直線溝61aを上方へ移動しつつ、第1スライダ6を、第1の方向である水平方向の後方に移動させる。この第1スライダ6の動きは、X字リンク5の作動を介して第2スライダ7に伝達されるため、第2スライダ7も同様に後方へ平行移動される。
【0062】
これら第1スライダ6及び第2スライダ7の移動は、第1カムピン51が上側直線溝61aを上端まで移動し、更に反転して降下し、上側直線溝61aの入口に達するまで連続される。そして、第1カムピン51が上側直線溝61aの入口に到達すると、第1スライダ6及び第2スライダ7の水平方向(第1の方向X)への後退動作が終了する。この状態が、図23に示す水平移動完了状態である。この後もカムギア15は回転を続けるが、第1カムピン51は円弧状凹面62に沿って回転するため、カムギア15の回転力が第1スライダ6に伝達されることはなく、第1スライダ6及び第2スライダ7は共に終端位置に維持される。そのため、カートリッジホルダ3も両スライダ6,7と同様に、終端位置に保持される。
【0063】
その後、図24に示すように、第1カムピン51が円弧状凹面を移動して下側直線溝61bに到達すると、カートリッジホルダ3の、第2の方向Yである垂直方向への下降動作が開始される。即ち、第1カムピン51が下側直線溝61b内に入り込むと、第1カムピン51は、下側直線溝61bを下方へ移動しつつ、第1スライダ6を、第1の方向である水平方向の前方に移動させる。この第1スライダ6の動きは、X字リンク5の作動を介して第2スライダ7に伝達されるため、第2スライダ7も同様に前方へ平行移動される。この状態が、図24に示す垂直移動開始状態である。
【0064】
このように第1スライダ6と第2スライダ7が前方に移動すると、第2カム部52の前カム溝58及び後カム溝59の各前側上水平部58a,59aにこれまで位置していた第2カムピン52,52が、斜面部58c、59cにガイドされて下方に移動する。これにより、第2カムピン52,52が固定されているカートリッジホルダ3が平行状態を維持して下降するため、同時にディスクカートリッジ300も下降される。そして、第2カムピン52,52が後側下水平部58b、59bに到達すると、第1スライダ6及び第2スライダ7の水平方向(第1の方向X)への前進動作が終了する。この状態が、図25に示すカートリッジホルダダウン状態である。このカートリッジホルダダウン状態では、図示しない位置検出器がこのダウン状態を検出し、その検出信号を制御装置に出力する。これにより、電動モータ93の駆動が停止され、カムギア15が、図25に示す状態に維持される。
【0065】
このとき、カートリッジホルダ3に保持されているディスクカートリッジ300内に収納されている光ディスクが、ベース部材2に取り付けられているターンテーブル23に装着される。これと同時に又は前後して、光ディスクの情報記録面に光ピックアップの対物レンズが対向され、情報記録面に対する情報信号の書き込み又は読み出しが可能となり、記録や再生動作が可能となる。この記録・再生の後、図示しないイジェクトスイッチ等の操作によって、ディスクカートリッジ300の排出動作が開始される。
【0066】
この排出動作が選択されると、電動モータ93が逆転方向に回転駆動され、その回転力が出力ギア94から5枚の中間ギアを介してカムギア15に伝達され、カムギア15が、図25において反時計方向に回動される。このとき、カムギア15に設けた第1カムピン51が、下側直線溝61bを上方へ移動しつつ、第1スライダ6を、第1の方向である水平方向の後方に移動させる。この第1スライダ6の動きは、X字リンク5の作動を介して第2スライダ7に伝達されるため、第2スライダ7も同様に後方へ平行移動される。
【0067】
このとき、前カム溝58及び後カム溝59の各後側下水平部58b、59bに位置している第2カムピン52,52が、斜面部58c、59cにガイドされて上方に移動する。これにより、第2カムピン52,52が固定されているカートリッジホルダ3が平行状態を維持して上昇するため、同時にディスクカートリッジ300も上昇される。そして、第2カムピン52,52が前側上水平部58a,59aに到達すると、第1スライダ6及び第2スライダ7の水平方向(第1の方向X)への後退動作が終了する。この状態が、図26に示すカートリッジホルダアップ状態である。この後もカムギア15は回転を続けるが、第1カムピン51は円弧状凹面62に沿って回転するため、カムギア15の回転力が第1スライダ6に伝達されることはなく、第1スライダ6及び第2スライダ7は共に終端位置に維持される。そのため、カートリッジホルダ3も両スライダ6,7と同様に、終端位置に保持される。
【0068】
その後、図27に示すように、第1カムピン51が円弧状凹面62を移動して上側直線溝61aに到達すると、カートリッジホルダ3の、第1の方向Xである水平方向への移動動作が開始される。即ち、第1カムピン51が上側直線溝61a内に入り込むと、第1カムピン51は、上側直線溝61aを上方へ移動しつつ、第1スライダ6を、第1の方向である水平方向の前方に移動させる。この第1スライダ6の動きは、X字リンク5の作動を介して第2スライダ7に伝達されるため、第2スライダ7も同様に前方へ平行移動される。この状態が、図27に示す水平移動開始状態である。
【0069】
このとき、カムギア15の回転に伴う円弧カム81の回転により、円弧カム81の高位置が扉開閉アーム9のカム接触部98に当接し、枢軸97を回転中心として、図27において、扉開閉アーム9を反時計方向に回動させる。これにより、扉開閉ピン99がプロテクタレバー19の操作片102に当接し、これを押圧して、プロテクタレバー19を、同図において時計方向に回動させる。その結果、図示しない捩りバネの付勢力に抗して、開閉扉20が、同図において時計方向に回動され、これにより、カートリッジ出入口206が開放される。
【0070】
その後、図28に示すように、第1スライダ6と第2スライダ7が前方に移動すると、ディスクカートリッジ300を保持するカートリッジホルダ3の保持力が解除されると共に、ディスクカートリッジ300の先端がカートリッジ出入口206から突出される。これにより、ディスク取出部においてディスクカートリッジ300を掴むことが可能となり、ディスクカートリッジ300を引き抜いて取り出すことができる。このディスクカートリッジ300を引き抜いた状態が、図28に示す状態である。これにより、ディスクカートリッジ300の装着動作及び排出動作が完了する。
【0071】
本発明によれば、カム駆動機構に水平・垂直の搬送方向を切り換える機構を組み合わせ、カムの往復で水平・垂直運動ができるように構成した。そのため、水平方向に往復運動が可能なカートリッジホルダのピンが嵌り、移動可能な溝を持つカムが、カートリッジを引き込む方向に水平移動することにより、ピンが引き込まれてカートリッジ及びホルダを引き込む。そして、水平方向の引き込み運動の終わり地点に到達すると、ピンの水平移動を規制し縦方向に移動可能とするガイドがピンに嵌まり、その後、カムが戻り方向に水平移動することにより、カムの持つ斜めの溝に沿ってピンが下方向に移動する。これにより、カートリッジ及びホルダを所定の位置にセットすることができる。また、カートリッジの排出時には、挿入時とは逆の動作で、上方向に移動させた後、ガイドが外れて水平に戻り、カートリッジを排出することができる。
【0072】
このように、カートリッジの水平移動・垂直移動を切り替えて動作させることができるため、水平・上下運動をするための駆動部の動作ストロークを小さくすることができ、装置全体の小型化を図ることができる。また、上記動作は、1個の電動モータで行うことができるため、従来必要とされていた2個の電動モータを1個にして制御を簡単なものとすることができると共に、部品点数の削減をも図ることが可能となった。更に、カートリッジの搬送が水平・垂直それぞれに行われ、移動の軌跡は直角(連続する曲線状の変化領域を持たない。)を描くものであるため、装置のカートリッジが搬送される方向の長さを短くすることができる。
【0073】
以上説明したが、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内で各種の変形実施が可能である。前述の実施例では、光ディスクに対する情報の記録再生を行う記録再生装置に適用した例について説明したが、例えば、再生のみを行うディスク再生装置、記録のみを行うディスク記録装置に適用できることは勿論である。
【符号の説明】
【0074】
1…ディスクドライブ装置、 2…ベース部材、 3…カートリッジホルダ、 4…フレーム部材、 5…X字リンク、 6…第1スライダ、 7…第2スライダ、 8…ギアブラケット(支持部材)、 9…扉開閉アーム、 11…第1揺動レバー、 12…第2揺動レバー、 15…カムギア、 16…第1ホルダロック、 17…第2ホルダロック、 18…プロテクタベース、 19…プロテクタレバー、 20…開閉扉、 21…スピンドルモータ、 23…ターンテーブル、 28…光ピックアップ、 50…カートリッジ収納部、 51…第1カムピン、 52…第2カムピン、 57…第1カム部、 58…前カム溝(第2カム部)、 59…後カム溝(第2カム部)、 61…直線溝、 61a…上側直線溝、 61b…下側直線溝、 62…円弧状凹部、 81…円弧カム、 82…ロック爪、 93…電動モータ、 94…出力ギア、 98…カム接触部、 99…扉開閉ピン、 102…操作片、 103…ロック片、 200…ディスク記録再生装置(電子機器)、 201…外装ケース、 204…前面パネル、 206…カートリッジ出入口、 X…第1の方向、 Y…第2の方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク状記録媒体が回転自在に収納されたディスクカートリッジが着脱可能に装着されるカートリッジホルダと、
前記カートリッジホルダを移動可能に保持するフレーム部材と、
前記フレーム部材に摺動可能に支持されたスライダと、
前記スライダの動作を介して前記カートリッジホルダを前記ディスクカートリッジが出し入れされる第1の方向及び当該第1の方向と交差する第2の方向に移動させるホルダ移動部と、を設け、
前記ホルダ移動部は、
前記スライダに設けた第1カム部と、
前記スライダに設けた第2カム部と、
前記フレーム部材が支持される支持部材に回転自在に支持されたカムギアと、
前記カムギアに設けられ且つ前記第1カム部に摺動可能に係合される第1カムピンと、
前記カートリッジホルダに設けられ且つ前記第2カム部に摺動可能に係合される第2カムピンと、を有する
ディスクドライブ装置。
【請求項2】
前記第1カム部は、前記第2の方向に延在され且つ前記第1カムピンが摺動可能に係合される直線溝と、前記直線溝の中間部に設けられ且つ前記カムギアの回転中心を曲率半径の中心として前記第1カムピンが回転するときの当該第1カムピンの外縁が描く円弧状凹面と、からなり、
前記第2カム部は、前記第2の方向に対して傾斜させて設けた傾斜溝からなる
請求項1記載のディスクドライブ装置。
【請求項3】
前記ホルダ移動部は、前記カムギアを回転駆動する電動モータを有し、
前記電動モータの駆動により前記カムギアを回転させ、前記第1カムピンの回転により前記スライダを移動させて前記カートリッジホルダを前記第1の方向及び前記第2の方向に移動させるようにした
請求項1記載のディスクドライブ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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