説明

ディスクブレーキ用摩擦材組立体

【課題】部品点数の削減及び組立工程数の低減を実現できるディスクブレーキ用摩擦材組立体を得る。
【解決手段】ガイドプレート12のガイド孔11に嵌合させるトルク伝達リング7をライニング組立体5の裏板4に一体形成すると共に、前記ガイド孔11に嵌合させた前記トルク伝達リング7を前記裏板4との間に挟んで前記ガイドプレート12に保持させる板ばね15は、前記トルク伝達リング7の裏面に一体形成された連結軸部27に嵌合させた後に該連結軸部27と相対回転させることで、前記連結軸部27から抜け止めされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄道車両用のディスクブレーキ装置に使用されるディスクブレーキ用摩擦材組立体に関し、特に、構成部品の削減や組付け性の向上により、コストの低減及び生産性の向上を実現するための改良に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスクブレーキ装置は、車軸に固定されるディスクロータと、このディスクロータに対峙して配置されるトルク受けプレートと、このトルク受けプレートをディスクロータに向かって進退駆動するアクチュエータを内蔵して車体フレームに固定されるブレーキキャリパと、トルク受けプレートのディスクロータ側の面に組み付けられるライニング部材等から構成されていて、トルク受けプレートをディスクロータ側に進出させてライニング部材をディスクロータに押圧させた時の摺動摩擦により、制動トルクを発生する。
【0003】
鉄道車両用のディスクブレーキ装置では、ディスクロータやブレーキライニングが大型であるため、ディスクロータに押圧させるライニング部材を一体部品で形成すると、摩擦熱等でディスクロータに発生するうねり等のために非接触の領域が多くなり、安定した摩擦面積を維持できず、安定した制動特性が得られない。
【0004】
そこで、このような問題を解決するために、本願出願人は、既に、鉄道車両用のディスクブレーキ装置に好適な摩擦材組立体として、次の構成のものを提案した。
【0005】
このディスクブレーキ用摩擦材組立体は、ディスクロータへ押圧される摩擦材に裏板が固着された複数個のライニング組立体と、裏板よりも小さな外形の略円板状に形成されて裏板に連結されるトルク伝達リングと、トルク伝達リングが旋回可能に嵌合する複数個のガイド孔を有してライニング組立体に作用する制動トルクをトルク伝達リングを介して受けるガイドプレートと、ガイド孔よりも大きな外形を有してライニング組立体とは逆側からガイド孔の上に被せられてライニング組立体に連結されることにより、ライニング組立体及びトルク伝達リングを旋回自在にガイドプレートに保持させる板ばねと、ガイドプレートを支持してガイドプレートに作用する制動トルクを受けるトルク受けプレートと、複数個のライニング組立体の裏面に当接する複数個の裏面当接部とトルク受けプレートに当接するプレート当接部とを具備してライニング組立体とトルク受けプレートとの間で押圧力の伝達を行うリンクプレートと、を備えた構成である(例えば、特許文献1参照)。
【0006】
このような構成のディスクブレーキ用摩擦材組立体では、制動時にディスクロータに押圧される各ライニング組立体はそれぞれ個別の旋回動作でディスクロータ表面のうねりに追従して、ディスクロータ表面に接触するため、安定した摩擦面積を維持して、安定した制動特性を維持することができる。
【0007】
また、ライニング組立体から制動トルクを受ける部材と押圧力を受ける部材とが別個に設定されていて、大きい負荷となる制動トルクは、押圧力を伝達する部材相互の小さな接触部(例えばリンクプレートとライニング組立体との間の曲面接触部など)には作用しない。従って、押圧力を伝達する各接触部は制動トルクを受け止める玉継手等の堅牢な係合にする必要がなく、加工精度の緩和によるコスト節減、生産性の向上を実現することもできる。
【0008】
【特許文献1】特開2006−307895号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、前述した従来のディスクブレーキ用摩擦材組立体では、ライニング組立体は、それぞれ別体のトルク伝達リングや板ばねと、これらの各部材を貫通するリベット等を使ってガイドプレートに締結するもので、構成部品が多く、また、組立工程数も多くなるため、製造コストの低減が難しいという問題が生じた。
また、ガイドプレートへのライニング組立体の組み付けには、専用の加工装置を使うリベットの加締め工程などが含まれるため、組立工程が煩雑化し、生産性を向上させることが難しいという問題もあった。
【0010】
本発明の目的は上記課題を解消することに係り、ライニング組立体を少ない部品構成でガイドプレートに組み付けることができ、また、ライニング組立体のガイドプレートへの組み付けも容易にでき、部品点数の削減及び組立工程数の低減により、製造コストの低減と生産性の向上を図ることのできるディスクブレーキ用摩擦材組立体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記目的は下記構成により達成される。
(1) 摩擦材の裏面に裏板が固着されたライニング組立体と、略円板状に形成されて前記裏板に連結されるトルク伝達リングと、前記トルク伝達リングが旋回可能に嵌合するガイド孔を有したガイドプレートと、前記ガイドプレートを支持して該ガイドプレートに作用する制動トルクを受けるトルク受けプレートと、前記ライニング組立体に当接する裏面当接部と前記トルク受けプレートに当接するプレート当接部とを具備して前記ライニング組立体と前記トルク受けプレートとの間で押圧力を伝達するリンクプレートと、を備えたディスクブレーキ用摩擦材組立体であって、
前記トルク伝達リングが前記裏板に一体形成されると共に、前記トルク伝達リングには、前記リンクプレートとの対向面に回転規制用凹みが凹設され、
前記リンクプレートは、前記ライニング組立体の裏面に当接した際、前記トルク伝達リングの回転規制用凹みに嵌合して該トルク伝達リングの回転を規制する回転規制用突起が突設されていることを特徴とする。
(2) (1)に記載のディスクブレーキ用摩擦材組立体であって、前記回転規制用突起は一対であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
上記に記載のディスクブレーキ用摩擦材組立体では、ライニング組立体のガイドプレートへの組付けが、ライニング組立体の裏面に一体形成されたトルク伝達リングをガイドプレートのガイド孔に嵌合させた後、ガイドプレートの裏面側に突出している連結軸部に板ばねを連結すれば良く、ライニング組立体を少ない部品構成でガイドプレートに組み付けることができる。
また、連結軸部への板ばねの連結は、板ばねの嵌合孔の周縁部に形成された切り欠きの位置を、連結軸部の先端側に延設された押え片の位置に合わせて、嵌合孔に連結軸部を挿通させた後、連結軸部と板ばねとを相対回転させて、押え片の位置を切り欠きの位置からずらすだけで良く、加締め用の加工装置を使わずに作業ができるため、ライニング組立体のガイドプレートへの組み付けも容易になる。
従って、部品点数の削減、及び組立工程数の低減により、製造コストの低減と生産性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係るディスクブレーキ用摩擦材組立体の一実施の形態の正面側から見た斜視図である。
【図2】図1に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体の正面図である。
【図3】図1に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体をその裏面側から見た斜視図である。
【図4】図3に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体の裏面図である。
【図5】図2のA矢視図である。
【図6】図3に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体の分解斜視図である。
【図7】図6に示したライニング組立体に板ばねを連結する工程の説明図である。
【図8】図4に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体からトルク受けプレート及びアンカプレートを取り外して、各ライニング組立体から押圧力を受けるリンクプレートを露出させた裏面図である。
【図9】図8のB−B断面図である。
【図10】図8のC−C断面図である。
【図11】図8のD−D断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係るディスクブレーキ用摩擦材組立体の好適な実施の形態について、図面を参照して詳細に説明する。
図1は本発明に係るディスクブレーキ用摩擦材組立体の一実施の形態の正面側から見た斜視図、図2は図1に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体の正面図、図3は図1に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体をその裏面側から見た斜視図、図4は図3に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体の裏面図、図5は図2のA矢視図、図6は図3に示したディスクブレーキ用摩擦材組立体の分解斜視図、図7はライニング組立体に板ばねを連結する工程の説明図、図8は各ライニング組立体から押圧力を受けるリンクプレートを露出させた裏面図、図9は図8のB−B断面図、図10は図8のC−C断面図、図11は図8のD−D断面図である。
【0015】
ディスクブレーキ用摩擦材組立体1は、不図示のディスクロータへ押圧される摩擦材3の裏面に裏板4が固着された複数個のライニング組立体5と、裏板4よりも小さな外形の略円板状に形成されて裏板4の中心に連結されるトルク伝達リング7と、トルク伝達リング7の外周面7aが旋回可能に嵌合する5個のガイド孔11を有してライニング組立体5に作用する制動トルクをトルク伝達リング7を介して受けるガイドプレート12と、ガイド孔11よりも大きな外形を有してライニング組立体5とは逆側からガイド孔11の上に被せられてライニング組立体5に連結されることによりライニング組立体5及びトルク伝達リング7を旋回自在にガイドプレート12に保持させる板ばね15と、ガイドプレート12を支持してガイドプレート12に作用する制動トルクを受けるトルク受けプレート17と、複数個のライニング組立体5の裏面に当接する複数個の裏面当接部(裏面当接曲面部)21とトルク受けプレート17に当接する単一のプレート当接部22とを具備してライニング組立体5とトルク受けプレート17との間で押圧力の伝達を行う2種のリンクプレート24,25と、を備えている。
【0016】
摩擦材3は円板形であり、この摩擦材3の裏面に固着された裏板4も、摩擦材3と同径の円板形である。
【0017】
本実施の形態の場合、トルク伝達リング7は、裏板4よりも小径の円板状で、図6及び図9に示すように、裏板4に一体形成されている。
トルク伝達リング7の外周面7aは、図9に示すように、ガイド孔11の内周面に点接触する凸の湾曲面に形成されている。この湾曲面でガイド孔11に嵌合することで、図中の矢印Xで示す方向に旋回(揺動)可能に支持される。この旋回挙動は、摩擦材3がディスクロータに発生するうねり等に追従して接触面積を維持するために必要となる。
【0018】
そして、トルク伝達リング7の裏面(ライニング組立体5とは逆側の面)には、図6及び図7に示すようにトルク伝達リング7よりも小径の角棒状に突出形成された連結軸部27と、該連結軸部27の先端側(トルク伝達リング7とは反対側)の一部から径方向に延出する押え片28とが一体形成されている。
押え片28を設けたことによって、押え片28と対向するトルク伝達リング7との間が、後述する板ばね15の嵌合孔31の周縁部を割り込ませることが可能な溝状になっている。
【0019】
トルク伝達リング7には、図7(a)に示すように、連結軸部27の周囲の空きスペースに、回転規制用凹み32が形成されている。
本実施の形態の場合、回転規制用凹み32は、円形の嵌合孔である。
【0020】
連結軸部27は、図7及び図10に示すように、板ばね15に形成された円形の嵌合孔31に回転自在に嵌合する。
板ばね15は、図7(a)に示すように、嵌合孔31の周縁部の一部に押え片28を挿通させる切り欠き33が連設されている。
【0021】
この切り欠き33を装備したことによって、図7(a)に示すように、切り欠き33の位置を押え片28の位置(向き)に整合させて連結軸部27及び押え片28を嵌合孔31に挿通させて図7(b)の状態にした後、図7(c)に示すように、矢印Y方向に板ばね15を回転させてライニング組立体5と板ばね15とに相対回転を生じさせると、嵌合孔31の周縁部が押え片28と対向するトルク伝達リング7との間の溝状の部分に割り込んで、板ばね15が連結軸部27から抜け止めされた状態になる
【0022】
板ばね15には、図7(c)に示すように、板ばね15と連結軸部27とを約90°相対回転させて、板ばね15が連結軸部27から抜け止めされた状態になったときに、トルク伝達リング7に形成された回転規制用凹み32に重なる局部的開口部(内径部凹部)35が形成されている。
【0023】
板ばね15は、図8及び図9に示すように外周部15aがガイドプレート12に接触して、外周部と内周部との間の撓み(弾性)変形によってばね性を発揮するが、図7(a)に示すように、外周部の4箇所に切り込み37が設けられて、当該外周部のガイドプレート12への接地部が複数に分断されている。
板ばね15を、図7(b)に示した状態から図7(c)に示す状態にする場合には、図7(b)に示したように連結軸部27に嵌合させた板ばね15の中心部付近をガイドプレート12側に押圧して、板ばね15を弾性変形させた状態にして、その状態で板ばね15を連結軸部27に対して90°回転させることで図7(c)に示した状態にする。
【0024】
本実施の形態のガイドプレート12は、5個のガイド孔11を有しており、それぞれのガイド孔11に、ライニング組立体5のトルク伝達リング7を嵌合させた後、各ライニング組立体5のトルク伝達リング7から突出している連結軸部27に嵌合させた板ばね15を図7(c)に示したように抜け止め状態にすると、5個のライニング組立体5がガイドプレート12に一体化された部分組立体41(図8において、リンクプレート24,25を取り除いた状態)に仕上げられる。
【0025】
本実施の形態のディスクブレーキ用摩擦材組立体1の組立方法としては、このようにガイドプレート12の全てのガイド孔11にライニング組立体5を組み付けて、予め5個のライニング組立体5がガイドプレート12に一体化された部分組立体41とした後、組立ラインに導入して、以後、図8に示すように、ガイドプレート12の裏面側から、各リンクプレート24,25を組み付け、その後、ガイドプレート12にトルク受けプレート17を締結することにより完成させる組立方法が採用される。
【0026】
リンクプレート24は、図8に示すように、ガイドプレート12に保持されている2つのライニング組立体5を、押圧力が伝達可能に押えるもので、両端に各ライニング組立体5の裏面に当接する裏面当接部21が設けられ、また、これらの2つの裏面当接部21の中間に位置するように、トルク受けプレート17に当接する単一のプレート当接部22が設けられている。
【0027】
裏面当接部21は、図10に示すように、ライニング組立体5側に突出した曲面部21aを連結軸部27の頂部の中心に当接することによって、図9に矢印Xで示したライニング組立体5の旋回性を損なうことなく、ライニング組立体5との間での押圧力の伝達を可能にする。
【0028】
プレート当接部22は、図11に示すように、トルク受けプレート17側に突出した曲面部22aをトルク受けプレート17に当させることによって、リンクプレート自体が旋回自在にトルク受けプレート17に当接して、トルク受けプレート17との間での押圧力の伝達を可能にする。
【0029】
リンクプレート25は、図8に示すように、ガイドプレート12に保持されている3つのライニング組立体5を、押圧力が伝達可能に押えるもので、中心から3方に延出したアーム形状の先端側に各ライニング組立体5の裏面に当接する裏面当接部21が設けられ、また、中心に位置するように、トルク受けプレート17に当接する単一のプレート当接部22が設けられている。
裏面当接部21及びプレート当接部22の構造は、前述のリンクプレート24における裏面当接部21及びプレート当接部22と同一である。
【0030】
これらのリンクプレート24,25には、適宜、重量を軽減するための軽め穴23が貫通形成されている。
【0031】
各リンクプレート24,25の裏面当接部21には、図6及び図8に示すように、ガイドプレート12に保持されたライニング組立体5の裏面に当接した際に、積層状態にある板ばね15とトルク伝達リング7との回転を規制する一対の回転規制用突起(回転規制用の折曲げ爪)43が設けられている。
【0032】
各リンクプレート24,25に装備された回転規制用突起43は、裏面当接部21の両側に延出形成された突片をライニング組立体5側に折り曲げた係止爪であり、図7(c)に示すように互いに重なった局部的開口部35及び回転規制用凹み32に嵌合して、ライニング組立体5及び板ばね15の回転を規制する。
【0033】
図8に示すように、ガイドプレート12に保持されている各ライニング組立体5の上にリンクプレート24,25をセットした状態で、ガイドプレート12の裏面にトルク受けプレート17を連結する。
ガイドプレート12及びトルク受けプレート17の外周部には、図6に示すようにリベット止め用の貫通穴46が適宜間隔で形成されており、外周部同士を重ね合わせたガイドプレート12とトルク受けプレート17は、図1及び図11に示すように、貫通穴46に挿通させたリベット47により強固に連結・固定される。
【0034】
なお、本実施の形態の場合、図6に示すように、トルク受けプレート17は、予めアンカプレート48がリベット49により固定されて、トルク受けプレート17とアンカプレート48とが一体化したアンカプレート組立体50の形態で取り扱われる。
アンカプレート48は、車両側のディスクブレーキ装置において、アクチュエータによりディスクロータに向かって進退駆動される摩擦材取付け手段に固定される。
【0035】
図11に示すようにガイドプレート12にトルク受けプレート17を固定した組立完了状態では、各リンクプレート24,25のプレート当接部22は、トルク受けプレート17の内面に旋回自在に当接して、不図示のディスクブレーキ装置のアクチュエータを介してトルク受けプレート17に伝達される押圧力が、プレート当接部22、裏面当接部21を経て各ライニング組立体5に伝達され、また、摩擦材3がディスクロータに押圧された時の押圧力の反力は、ライニング組立体5から、裏面当接部21、プレート当接部22を経て伝達されてトルク受けプレート17で受け止められる。
【0036】
一方、制動時に、ディスクロータからライニング組立体5に作用する制動トルクは、ライニング組立体5と一体のトルク伝達リング7の外周面7aから、該トルク伝達リング7が嵌合しているガイドプレート12に伝達され、ガイドプレート12に固定されているトルク受けプレート17を介してアンカプレート48に伝達される。
【0037】
以上に説明した本発明の一実施の形態のディスクブレーキ用摩擦材組立体1では、ライニング組立体5のガイドプレート12への組付けは、ライニング組立体5の裏面に一体形成されたトルク伝達リング7をガイドプレート12のガイド孔11に嵌合させた後、図7に示したように、ガイドプレート12の裏面側に突出している連結軸部27に板ばね15を連結して行われる。従って、ライニング組立体5は少ない部品構成でガイドプレート12に組み付けられる。
【0038】
また、本実施の形態のディスクブレーキ用摩擦材組立体1では、連結軸部27への板ばね15の連結は、板ばね15の嵌合孔31の周縁部に形成された切り欠き33の位置を、連結軸部27の先端側に延設された押え片28の位置に合わせて、嵌合孔31に連結軸部27を挿通させた後、連結軸部27と板ばね15とを相対回転させて、押え片28の位置を切り欠き33の位置からずらすだけで良く、加締め用の加工装置を使わずに作業ができるため、ライニング組立体5のガイドプレート12への組み付けも容易になる。
従って、部品点数の削減、及び組立工程数の低減により、製造コストの低減と生産性の向上を図ることができる。
【0039】
また、本実施の形態のディスクブレーキ用摩擦材組立体1では、ガイドプレート12に組み付けられたライニング組立体5や板ばね15は、板ばね15を連結軸部27から抜け止めした状態で、ライニング組立体5と一体のトルク伝達リング7に形成された回転規制用凹み32と板ばね15に形成された局部的開口部35とが重なり、これらの互いに重なった回転規制用凹み32及び局部的開口部35に、リンクプレート24,25に一体形成された回転規制用突起43が嵌合して、これらのライニング組立体5や板ばね15の回転を規制する。
従って、リンクプレート24,25を組み付けた後は、板ばね15が連結軸部27に対して相対回転して脱落することを防止でき、また、制動動作時にライニング組立体5が回転することを規制して安定した制動性能を維持することができる。
【0040】
更に、本実施の形態のディスクブレーキ用摩擦材組立体1では、板ばね15は、図7(a)に示したように外周部15aの切り込み37によってガイドプレート12への接地部が複数に分断されているため、ばねとしての弾性変形が容易になり、切り込み37の大きさや形状等を工夫することにより、ばねとしての弾性特性の調整が容易にできる。
【0041】
また、前述したように、本実施の形態のディスクブレーキ用摩擦材組立体1の組立方法では、複数個のライニング組立体5は予めガイドプレート12に組み付けて一体化した部分組立体41として組立ラインに導入することにより、組立工程を単純化して生産性を提供することができる。
【0042】
なお、本発明に係るディスクブレーキ用摩擦材組立体において、一つのガイドプレートに装備するライニング組立体の数量は、上記実施の形態に限定するものでは無い。要求される制動性能に応じて、ガイドプレートの大きさや、該ガイドプレートへのライニング組立体の装備数を適宜に設計変更することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 ディスクブレーキ用摩擦材組立体
3 摩擦材
4 裏板
5 ライニング組立体
7 トルク伝達リング
11 ガイド孔
12 ガイドプレート
15 板ばね
17 トルク受けプレート
21 裏面当接部
22 プレート当接部
24,25 リンクプレート
27 連結軸部
28 押え片
31 嵌合孔
32 回転規制用凹み
33 切り欠き
35 局部的開口部
37 切り込み
43 回転規制用突起


【特許請求の範囲】
【請求項1】
摩擦材の裏面に裏板が固着されたライニング組立体と、略円板状に形成されて前記裏板に連結されるトルク伝達リングと、前記トルク伝達リングが旋回可能に嵌合するガイド孔を有したガイドプレートと、前記ガイドプレートを支持して該ガイドプレートに作用する制動トルクを受けるトルク受けプレートと、前記ライニング組立体に当接する裏面当接部と前記トルク受けプレートに当接するプレート当接部とを具備して前記ライニング組立体と前記トルク受けプレートとの間で押圧力を伝達するリンクプレートと、を備えたディスクブレーキ用摩擦材組立体であって、
前記トルク伝達リングが前記裏板に一体形成されると共に、前記トルク伝達リングには、前記リンクプレートとの対向面に回転規制用凹みが凹設され、
前記リンクプレートは、前記ライニング組立体の裏面に当接した際、前記トルク伝達リングの回転規制用凹みに嵌合して該トルク伝達リングの回転を規制する回転規制用突起が突設されていることを特徴とするディスクブレーキ用摩擦材組立体。
【請求項2】
前記回転規制用突起は一対であることを特徴とする請求項1に記載のディスクブレーキ用摩擦材組立体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−47520(P2011−47520A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−272526(P2010−272526)
【出願日】平成22年12月7日(2010.12.7)
【分割の表示】特願2007−61740(P2007−61740)の分割
【原出願日】平成19年3月12日(2007.3.12)
【出願人】(000000516)曙ブレーキ工業株式会社 (621)
【Fターム(参考)】