説明

ディスクモータ及び電動作業機

【課題】回転子の厚みを抑制しつつ回転子のコイル基板の温度上昇を抑制したディスクモータ及びディスクモータを備える電動作業機を提供する。
【解決手段】ディスクモータの回転子は、コイルパターンが印刷された複数のコイル基板が積層されて構成される。このコイル基板のうち、比較的放熱効率の良い積層方向の両端のコイル基板40Aa,40Afについてはコイルが電気的に直列に接続されるように、比較的放熱効率の悪い積層方向の内側のコイル基板40Ab〜40Aeについては少なくとも一部が電気的に並列に接続されるように構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のコイル基板が積層された回転子を備えるディスクモータ及びディスクモータを備える電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のディスクモータとして、コイルパターンが印刷された略円板状のコイル基板が複数積層された回転子と、回転子の回転面に垂直に磁束を発生させる磁石と、回転子に電流を供給する摺動子と、を備えたものがある(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に開示されたディスクモータでは、回転子に印刷されたコイルパターンのうち、回転子の回転軸と垂直となるコイル片の部分を、幅を広くすると共に中心にスリットを入れて2つに分岐させることにより、コイル片における渦電流損を押さえつつコイル片の電気抵抗を低くしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−99429号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
こうしたディスクモータでは、ディスクモータの駆動に伴ってコイル基板が発熱し、コイル基板の温度が高くなると、銅損が大きくなってディスクモータの出力が小さくなってしまう。コイル基板の温度上昇を抑制するために、コイル基板を2倍の枚数積層させると共に2枚ずつのコイル基板におけるコイル片を電気的に並列に接続させて、1枚のコイル基板あたりで発熱される熱量を低下させることも考えられるが、回転子の厚みが大きくなってディスクモータが大型化してしまうと共に回転子を通過する磁束経路が長くなるため強力な磁石が必要となってしまう。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、回転子の厚みを抑制しつつ回転子のコイル基板の温度上昇を抑制したディスクモータ及びディスクモータを備えた電動作業機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の第1の観点に係るディスクモータは、
コイルが形成されたコイル基板を複数積層して構成された回転子を備えるディスクモータであって、
前記回転子は、
積層方向の両端側に配置され、所定電圧が印加されたときに1枚の前記コイル基板あたり且つ単位時間あたり第1の熱量を発生する第1のコイル基板部と、
積層方向の内側に配置され、前記所定電圧が印加されたときに1枚の前記コイル基板あたり且つ単位時間あたり前記第1の熱量に比して小さい第2の熱量を発生する第2のコイル基板部と、
を備えることを特徴とする。
【0007】
また、前記第2のコイル基板部では、複数の前記コイル基板の少なくとも一部が電気的に並列に接続され、
前記第1のコイル基板部では、複数の前記コイル基板が前記第2のコイル基板部のコイル基板に電気的に直列に接続されてもよい。
【0008】
さらに、前記第1のコイル基板部におけるコイル基板と前記第2のコイル基板部におけるコイル基板とは、同一の部材であってもよい。
【0009】
あるいは、前記第2のコイル基板部における各々のコイル基板に形成されたコイルは、前記第1のコイル基板部における各々のコイル基板に形成されたコイルに比して、電気抵抗が小さく形成されていてもよい。
【0010】
加えて、前記複数のコイル基板に電力を供給する電力供給部と、
前記複数のコイル基板に対して前記積層方向に磁束を発生させる磁束発生部と、
を備えてもよい。
【0011】
また、本発明の第2の観点に係るディスクモータは、
コイルが形成されたコイル基板を複数積層して構成された回転子を備えるディスクモータであって、
前記回転子は、
積層方向の両端側に配置され、所定電圧が印加されたときに前記コイルに第1の電流が流れる第1のコイル基板部と、
積層方向の内側に配置され、前記所定電圧が印加されたときに前記コイルに前記第1の電流に比して小さい第2の電流が流れる第2のコイル基板部と、
を備えることを特徴とする。
【0012】
また、本発明の第3の観点に係る電動作業機は、
本発明の第1の観点または第2の観点に係るディスクモータを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、回転子の厚みを抑制しつつ回転子のコイル基板の温度上昇を抑制したディスクモータ及びディスクモータを備える電動作業機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の一実施形態としての電動作業機の外観の一例を示す外観斜視図である。
【図2】本発明のディスクモータの一例を示す構成概要図である。
【図3】ディスクモータの出力軸および回転子の一例を示す構成概要図である。
【図4】コイル基板の一方の面の一例を示す説明図である。
【図5】コイル基板の他方の面の一例を示す説明図である。
【図6】コイル基板に印刷された2つのコイルのうち一方を示す説明図である。
【図7】コイル基板の電気的な接続の一例を示す回路図である。
【図8】変形例のコイル基板の一方の面の一例を示す説明図である。
【図9】変形例のコイル基板の他方の面の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係る電動作業機を図面を参照して説明する。
【0016】
図1は、本発明の実施形態に係る電動作業機10の外観の一例を示す外観図である。電動作業機10は、実施形態では刈刃16を回転させることにより刈払作業を行うことができる電動刈払機として構成され、図示するように、主棹部11と、電力を供給する電力源15と、作業具(刈刃16)を駆動する駆動部20と、を備える。
【0017】
主棹部11は、駆動部20と電力源15とを連結する操作棹12と、操作棹12に取付けられたハンドル13と、作業時に操作者側に異物が飛散するのを抑制する飛散防護カバー14と、を備える。操作棹12は、例えばアルミニウム合金や強化プラスチックなど、軽量で丈夫な素材によって中空の棒状に形成され、駆動部20と電力源15とを電気的に接続する電源線(図示せず)が挿通されている。操作棹12の真ん中よりやや後方にはハンドル13が取付けられられている。ハンドル13は、ハンドル13に対して回動可能にトリガーレバー13aが設けられ、トリガレバー13aが操作者によって操作されることで、電力源15から駆動部20に電力が供給され、電動作業機20が起動される。なお、実施形態では、図示するように、ハンドル13は、操作棹12から軸対象に円弧状に延出するU字状としたが、D字状やT字状のものとするなど如何なる形状としてもよい。
【0018】
電力源15は、主棹部11に後端に取付けられ、駆動部20に電力を供給する。電力源15は、電源ケーシングの後端に電池15aが取付けられて構成される。ここで、電池15aは、二次電池や燃料電池など如何なるものとしてもく、図示しない電源コードを介して充電可能なものとしたり、電源ケーシングから取り外して交換したり外部の充電装置で充電可能なものとしてもよい。
【0019】
図2に、駆動部20の構成の一例を示す。駆動部20は、操作棹12の前端に取付けられたモータケーシング21と、電力源15からの電力を受けて動力を出力するディスクモータ24と、を備え、ディスクモータ24の出力軸25に刈刃16(図2では省略)が取付けられる。モータケーシング21は、操作棹12と内部が連通するよう操作棹12の前端に取付けられ、ディスクモータ24を内部に収容する。
【0020】
ディスクモータ24は、電力を受けて出力軸25に動力を出力する整流子モータとして構成され、出力軸25と、この出力軸25と一体に回転する回転子30と、モータケーシング21に固定された固定子26および摺動子28と、を備える。
【0021】
出力軸25は、軸受22,23によってモータケーシング21に回転可能に軸支され、その一端が、モータケーシング21から突出し、刈刃16が取付けられる。固定子26は、図2に示すように、一対の上ヨーク26aおよび下ヨーク26bと、永久磁石であるマグネット26cと、から構成される。上ヨーク26aおよび下ヨーク26bは、鉄等の磁性体によって円環板状に形成されており、モータケーシング21にそれぞれ固定されている。上ヨーク26aは、回転子30の上面と対向するように配置され、下ヨーク26bは、回転子30の下面と対向するように配置されている。マグネット26cは、周方向に配列された複数の磁極を有して円環状に形成されており、下ヨーク26bの上面に固着されている。こうした構成により、固定子26は、マグネット26cが発生する磁束が回転子30を出力軸25の軸方向に通過するように、磁束を形成する。摺動子28は、回転子30の上面に摺接するように、(詳しくは、後述するコミュテータディスク36に摺接するように)モータケーシング21に固定されている。摺動子28は、モータケーシング21に設けられたブラシホルダ28b内にブラシ28aが配置され、バネ28cによってブラシ28aが回転子30の上面に付勢されるように構成されている。摺動子28には、操作棹12の内部に挿通された電源線(図示せず)を介して電力源15からの電力が供給される。
【0022】
図3に、ディスクモータ24の出力軸25と回転子30を拡大した様子の一例を示す。なお、図3では、右半分に出力軸25及び回転子30の外観を示し、左半分に出力軸25及び回転子30の断面を示している。出力軸25は、図示するように、回転子30を支持可能なフランジ部25aを有し、フランジ部25aの一端側に回転子30が取り付けられて出力軸25と回転子30とが一体に回転するように形成されている。
【0023】
回転子30は、出力軸25と嵌合するフランジ32と、整流子であるコミュテータディスク36と、6枚のコイル基板40A(40Aa〜40Af)が積層されて形成されたコイルディスク40と、複数の絶縁板34と、から構成されている。フランジ32は、例えばアルミニウム合金などにより形成され、中空円筒状の軸部32aと、軸部32aから延出する円板状のフランジ部32bと、を有する。フランジ32は、軸部32aの内周面が出力軸25の外周面と嵌合して互いに回り止め固定され、軸部32aの外周面には、フランジ部32bの一端側に絶縁板34を介してコミュテータディスク36が取り付けられ、フランジ部32bの他端側に絶縁板34を介してコイルディスク40が取り付けられている。
【0024】
コミュテータディスク36と6枚のコイル基板40A(40Aa〜40Af)とは、絶縁体基板と導体パターンとから構成されたプリント配線板により形成される。コミュテータディスク36は、コミュテータ(整流子)の導体パターンが放射状に形成され、コイル基板40Aa〜40Afの上面及び下面には、コイルの導体パターンがそれぞれ放射状に形成されている。なお、実施形態では、6枚のコイル基板Aa〜Afのうち、積層方向の両端のコイル基板Aa,Afが「第1のコイル基板部」に相当し、内側のコイル基板Ab〜Aeが「第2のコイル基板部」に相当する。
【0025】
6枚のコイル基板40A(40Aa〜40Af)は、実施形態では、全て同一(単一)の構成のコイル基板40Aを用いている。図4に、コイル基板40Aを図2及び図3中上から見た様子の一例を示し、図5に、コイル基板40Aを図2及び図3中下から見た様子の一例を示す。なお、図4及び図5には、固定子26のマグネット26cの位置を2点鎖線で示している(符号は示さず)。コイル基板40Aには、内周側にコイル基板40Aを軸方向に貫通するスルーホール41が設けられ、このスルーホール41には銅メッキが施されており、ピン(図示せず)を挿入し半田を付けすることにより他のコイル基板40Aやコミュテータディスク36に形成された導体パターンと電気的に接続される。また、コイル基板40Aに印刷された導体パターンの内周側と外周側との端部に当たる位置には、スルーホール42,43が設けられ、このスルーホール42,43には銅メッキが施されておりコイル基板40Aの上面に形成された導体パターンと下面に形成された導体パターンとが電気的に接続される。
【0026】
コイル基板40Aに印刷された放射状のコイルパターンのうちの1つを部分コイル44と定義する(例えば、図4及び図5中一転鎖線で囲んだ箇所)。実施形態では、図4及び図5に示すように、コイル基板40Aには、それぞれ20個の部分コイル44が設けられている。部分コイル44は、固定子26が位置する位置に、出力軸25(軸中心)に対して略垂直な直線部を有し、直線部から内周側と外周側とで折れ曲がって全体的にはクランク状に形成されている。コイル基板40Aの上面に印刷された部分コイル44のうち2つ(図4中、部分コイル44a)は、内周側で接続されており、また、コイル基板40Aの下面に印刷された部分コイル44のうち4つ(図5中、部分コイル44b)は、内周側でスルーホール41に接続されて、他のコイル基板40Aやコミュテータディスク36に電気的に接続される。こうした部分コイル44が、コイル基板40Aの内周側端および外周側端でスルーホール42,43によって上面と下面とで電気的に接続され、コイル基板40Aに2本のコイルが形成される。図6に、コイル基板40Aに形成される2本のコイルのうちの一方のみを示す。図6では、1本のコイルのうち、上面に印刷されたコイルパターンについては実線で示し、下面に印刷されたコイルパターンについては破線で示している。図示するように、上面に印刷されたコイルパターンと下面に印刷されたコイルパターンとは、スルーホール42,43の位置で重なり、この地点で電気的に接続される。コイル基板40Aに形成されたコイルは、コミュテータディスクとの接続点であるスルーホール41を両端として、上面と下面とを交互に行き来し、上面の部分コイル44a同士の接続点で折り返して、コイル基板40Aを円周方向に2周するように、形成されている。このように構成されるコイル基板40Aが軸方向(積層方向)に6枚積層されてコイルディスク40が構成されている。
【0027】
図7に、6枚のコイル基板40A(40Aa〜40Af)に形成されたコイルの電気的な接続の一例を示す。6枚のコイル基板40Aa〜40Afのうち、積層方向の内側のコイル基板40Ab〜40Aeに形成されたコイルは、2枚のコイル基板40A毎にコイルが電気的に並列となるように接続され(図7では、40Abと40Ac、40Adと40Aeが並列)、この並列に接続されたコイルと、積層方向の外側(両端)のコイル基板40Aa,40Afに形成されたコイルとが、電気的に直列に接続されている。つまり、積層方向の両端のコイル基板40Aa,40Afに形成されたコイルは、他のコイル基板40Aに形成されたコイルと電気的に並列に接続されることなく直列に接続されている。そして、コイル基板40Aa,40Afに形成されたコイルの一端がコミュテータディスク32に接続され(図示せず)、電力源15からコイル基板40Aa〜40Afに電力が供給される。ここで、2枚のコイル基板40Aに形成されたコイルを並列に接続するには、
例えば、2枚のコイル基板40Aが同位相、つまり、スルーホール41の位置が同一となるように、2枚のコイル基板40Aを積層すればよい。また、2枚のコイル基板40Aに形成されたコイルを直列に接続するには、例えば、一方のコイル基板40Aのスルーホール41の一方が、他方のコイル基板40Aのスルーホール41の他方に位置するように、位相をズラして積層すればよい。このように6枚のコイル基板40Aa〜40Afを積層することにより、コイルに電力が供給されたときには、積層方向の両端のコイル基板40Aa,40Afに流れる電流に比して、内側のコイル基板40Ab〜40Aeに流れる電流は小さくなる。したがって、内側のコイル基板40Ab〜40Aeでは、両端のコイル基板Aa,Afに比して1枚あたり且つ単位時間あたり発熱する熱量は小さくなる。内側のコイル基板40Ab〜40Aeは、両端のコイル基板40Aa,40Afに比して、外気に接する面積が小さいため放熱効率が悪いが、このように内側のコイル基板40Ab〜40Aeの発熱量を低減することにより、コイルディスク40の温度上昇を抑制することができる。また、外側のコイル基板40Aa,40Afについては、電気的に直列に接続するものとしたから、ディスクモータ24の出力を確保できると共にコイルディスク40(回転子30)の厚みを抑制することができ、固定子26による磁束経路を短くすることができると共にディスクモータ24全体の小型化を図ることができる。さらに、同一のコイル基板40Aを複数積層してコイルディスク40を構成しているから、複数のコイルパターンが印刷されたコイル基板を積層するものに比して簡易に製造することができる。
【0028】
こうして構成された実施形態の電動作業機10では、操作者がハンドル13を持ってトリガーレバー13aを操作することで、電力源15からディスクモータ24の摺動子28に所定の電圧が印加され、この所定の電圧が、コミュテータディスク36を介して回転子30のコイルディスク40に印加される。回転子30には、固定子26が発生する磁束が軸方向に通過しており、コイルディスク40に流れる電流は、この磁束と垂直方向かつ出力軸25の中心軸と直交するように流れるため、出力軸25を中心とする回転力が発生し、回転子30や出力軸25,出力軸25に取付けられた刈刃16が一体に回転する。こうして刈刃16が回転することで、操作者は刈払作業を行うことができる。
【0029】
以上説明した本実施形態の電動作業機10では、ディスクモータ24の回転子30を構成するコイルディスク40を、積層方向内側のコイル基板40Ab〜40Aeは2枚毎に電気的に並列に接続すると共に積層方向両端のコイル基板40Aa,40Afは電気的に直列に接続し、内側のコイル基板40Ab〜40Aeで1枚あたり且つ単位時間あたり発熱する熱量が、積層方向の両端のコイル基板40Aa,40Afで1枚あたり且つ単位時間あたり発熱する熱量に比して小さくなるように形成しているから、比較的放熱効率の悪い内側のコイル基板の温度が高くなってしまうのを抑制することができ、ディスクモータ24の定格出力を確保しつつコイルディスク40の温度上昇に伴うディスクモータ24の出力の低下を抑制することができる。また、比較的放熱効率の良い積層方向の両端のコイル基板40Aa,40Afについては、電気的に直列に接続することにより、ディスクモータ24の定格出力を確保しつつコイルディスク40の厚みが大きくなるのを抑制して、固定子26の磁束経路を短くすることができると共にディスクモータ24全体の小型化を図ることができる。
【0030】
上述したコイルディスク40では、6枚のコイル基板が積層されるものしたが、3枚〜5枚のコイル基板が積層されたり、7枚以上のコイル基板が積層されてもよい。
【0031】
上述したコイルディスク40では、内側のコイル基板40Ab〜40Aeは、2枚毎に電気的に並列に接続されて直列に接続されるものとしたが、内側のコイル基板40Ab〜40Aeに流れる電流が、両端のコイル基板40Aa,40Afに流れる電流に比して小さくなればよく、直列に接続されてから並列に接続されてもよい。また、3枚以上のコイル基板40Aが電気的に並列に接続されてもよい。さらに、例えば、7枚のコイル基板40Aa〜40Agを積層させて、積層方向外側のコイル基板40Aa,40Ab,40Af,40Agについては2枚毎に電気的に並列に接続し、内側のコイル基板40Ac〜40Aeについては3枚電気的に並列に接続するなどしてもよい。この場合、コイル基板40Aa,40Ab,40Af,40Agが「第1のコイル基板部」に相当し、コイル基板40Ac〜40Aeが「第2のコイル基板部」に相当する。
【0032】
上述したコイルディスク40では、同一のコイルパターンのコイル基板40Aが複数積層されるものとしたが、コイルディスク40のコイルパターンは、整流子モータを構成することができれば任意に変更可能であり、異なるコイルパターンのコイル基板が積層されてもよい。この場合、積層方向の両端側のコイル基板と内側のコイル基板とで、コイルパターンを分けて、内側のコイル基板で1枚あたり且つ単位時間あたり発熱される熱量が、両端側のコイル基板で1枚あたり且つ単位時間あたり発熱される熱量に比して、小さくなるようにしてもよい。図8に変形例のコイル基板40Bの上面の一例を示し、図9に変形例のコイル基板40Bの下面の一例を示す。変形例のコイル基板40Bでは、実施形態のコイル基板40Aに比して部分コイル44の幅を狭くしてその数を倍にしてある。この変形例のコイル基板40Bでは、実施形態のコイル基板40Aと同様に、上面と下面との部分コイル44がスルーホール42,43で接続されて、2つのコイルが構成される。変形例のコイル基板40Bのコイルは、それぞれコイル基板40Bの上面と下面とを移動して円周方向に2周し、上面において部分コイル44が接続された部分で折り返し、合計円周方向に4周する。変形例のコイル基板40Bは、実施形態のコイル基板40Aに比してコイル経路が長く、且つ、コイル幅が小さいから、電気抵抗が大きくなる。この変形例のコイル基板40Bを積層方向の両端に配置すると共に実施形態のコイル基板40Aを内側に配置して積層し、全てのコイル基板40A,40Bを電気的に直列に接続してコイルディスク40を構成しても、内側のコイル基板40A1枚あたり且つ単位時間あたり発熱される熱量を、両端側のコイル基板40B1枚あたり且つ単位時間あたり発熱される熱量に比して小さくすることができ、コイルディスクの厚みが大きくなるのを抑制しつつコイル基板の温度上昇を抑制することができる。
【0033】
上述した実施形態の固定子16は、上ヨーク26aと下ヨーク26bとマグネット26cとを備えるものとしたが、コイルディスクをモータの出力軸の軸線方向に通過する磁束を発生することができるものであればよく、例えば、コイルを備えるものであっても良い。また、磁極の配置は、整流子モータを構成することができるならば、任意に変更可能である。
【0034】
上述した実施形態では、ディスクモータ24に刈刃16が取付けられた電動刈払機に適用して本発明を説明したが、如何なる電動作業機に適用しても構わない。
【0035】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に何ら限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において、様々な変更をなし得ることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0036】
10 電動作業機
11 主棹部
12 操作棹
13 ハンドル
13a トリガレバー
14 飛散防護カバー
15 電力源
15a 電池
16 刈刃
20 駆動部
21 モータケーシング
22,23 軸受
24 ディスクモータ
25 出力軸
26 固定子
26a 上ヨーク
26b 下ヨーク
26c マグネット
28 摺動子
28a ブラシ
28b ブラシホルダ
28c バネ
30 回転子
32 フランジ
34 絶縁板
36 コミュテータディスク
40 コイルディスク
40A,40Aa〜40Af,40B コイル基板
41〜43 スルーホール
44 部分コイル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
コイルが形成されたコイル基板を複数積層して構成された回転子を備えるディスクモータであって、
前記回転子は、
積層方向の両端側に配置され、所定電圧が印加されたときに1枚の前記コイル基板あたり且つ単位時間あたり第1の熱量を発生する第1のコイル基板部と、
積層方向の内側に配置され、前記所定電圧が印加されたときに1枚の前記コイル基板あたり且つ単位時間あたり前記第1の熱量に比して小さい第2の熱量を発生する第2のコイル基板部と、
を備えることを特徴とするディスクモータ。
【請求項2】
前記第2のコイル基板部では、複数の前記コイル基板の少なくとも一部が電気的に並列に接続され、
前記第1のコイル基板部では、複数の前記コイル基板が前記第2のコイル基板部のコイル基板に電気的に直列に接続される、
ことを特徴とする請求項1に記載のディスクモータ。
【請求項3】
前記第1のコイル基板部におけるコイル基板と前記第2のコイル基板部におけるコイル基板とは、同一の部材である、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のディスクモータ。
【請求項4】
前記第2のコイル基板部における各々のコイル基板に形成されたコイルは、前記第1のコイル基板部における各々のコイル基板に形成されたコイルに比して、電気抵抗が小さく形成されている、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のディスクモータ。
【請求項5】
前記複数のコイル基板に電力を供給する電力供給部と、
前記複数のコイル基板に対して前記積層方向に磁束を発生させる磁束発生部と、
を備えることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のディスクモータ。
【請求項6】
コイルが形成されたコイル基板を複数積層して構成された回転子を備えるディスクモータであって、
前記回転子は、
積層方向の両端側に配置され、所定電圧が印加されたときに前記コイルに第1の電流が流れる第1のコイル基板部と、
積層方向の内側に配置され、前記所定電圧が印加されたときに前記コイルに前記第1の電流に比して小さい第2の電流が流れる第2のコイル基板部と、
を備えることを特徴とするディスクモータ。
【請求項7】
請求項1乃至6の何れか1項に記載のディスクモータを備えることを特徴とする電動作業機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−161135(P2012−161135A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−17958(P2011−17958)
【出願日】平成23年1月31日(2011.1.31)
【出願人】(000005094)日立工機株式会社 (1,861)
【Fターム(参考)】