説明

ディスク再生装置のスピンドルモータ回転制御装置

【課題】 簡単な構成でエラーレートを減少可能とする。
【解決手段】 CD1から光ピックアップ3、RFアンプ4、2値化回路6により再生した2値化RF信号からデータクロック再生用PLL回路7により再生クロックを再生し、フレームシンク検出回路9によりフレームシンクを再生し、フレームシンク周波数制御用PLL回路10の位相比較回路10aにより再生フレームシンクと所定周波数の基準信号を位相・周波数比較し、LPF10bにより低域成分を抽出し、スピンドルサーボの周波数制御信号とする。データクロック再生用PLL回路7のLPF7cの出力には再生クロックのジッタ成分が含まれているので、スピンドルサーボの位相制御信号とする。周波数制御信号と位相制御信号を回転制御信号作成回路11で加算し、位相補償後、スピンドルモータ2のドライバ回路12へ回転制御信号として出力する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はディスク再生装置のスピンドルモータ回転制御装置に係り、とくに再生クロックと再生同期信号に基づき一定速回転制御を行うディスク再生装置のスピンドルモータ回転制御装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク再生装置ではディスクを所定速度で回転するためスピンドルモータ回転制御装置が設けられている。例えば特許文献1では、図3に示す如く、CD再生中の微調スピンドルサーボ時は、CD20にレーザビームを照射する光ピックアップ21の検出信号に基づきRF作成回路22がRF信号を作成し、位相比較回路23、LPF24、電圧制御発振器(VCO)25がループ接続されたPLL回路26によりデータ読み取り回路27で用いる再生クロックを抽出する。再生クロックを分周回路28で1/nの周波数に分周後、第1エラー信号生成回路29で再生クロックの1/n分周信号と周波数がf1 =4.3218/n(MHz)の第1基準クロックS1と比較して位相エラー信号PEと速度エラー信号VE1を得、イコライザ回路30でこれらのエラー信号を加算し、位相補償後、モータドライバ回路31に入力してスピンドルモータ32を駆動する。サーチ中の粗調スピンドルサーボ時は、RF信号からフレーム同期抜き取り回路33で再生フレーム同期信号を抽出し、第2エラー信号生成回路34で再生フレーム同期信号と周波数がf2 =7.35(kHz)の第2基準クロックS2と比較して速度エラー信号VE2を生成し、イコライザ回路30で位相補償後、モータドライバ回路31に入力してスピンドルモータ32を駆動する。
【0003】
ところで、上記した従来技術では微調サーボと粗調サーボのために第1、第2エラー信号生成回路が必要であり、回路部品点数が多くなる欠点があった。
また、CD20の回転速度のジッタや光ピックアップ21からCD20の信号面に照射されるレーザビームの収差の大小などに起因して再生クロックのエッジにはジッタ成分が生じるが、このジッタ成分に対して微調サーボが正確に応答できず、再生クロックを用いて再生した記録データのエラーレートが増大する欠点があった。具体的には、n=4として再生クロックが図4(a)の如くなり、エッジa1、a5、a9ではジッタ成分が零であるが、エッジa2、a3、a4で+のジッタ成分が生じ、エッジa6、a7、a8で−のジッタ成分が生じたとき(このときのLPF24の出力は図4(b)のVcの波形)、+のジッタ成分が生じている期間Aではスピンドルモータの回転速度を落とす必要があり、−のジッタ成分が生じている期間Bではスピンドルモータの回転速度を早める必要がある。けれども、再生クロックの分周がエッジa1、a5、a9で実行されると、分周後の分周信号は図4(c)の如くなり、このとき、例えば基準クロックS1(図4(d))と位相比較した位相エラー信号PEは図4(e)の如くなって再生クロックに存在していたジッタ成分が反映されず、期間A、Bともスピンドルモータの回転は変化しない。このため、再生クロックのジッタ成分がそのまま残ってしまう。
【0004】
【特許文献1】特開平10−330021号公報の図5
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上記した従来技術の問題に鑑み、構成が簡単でエラーレートを減少できるディスク再生装置のスピンドル回転制御装置を提供することを、その目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1の発明は、ディスクを回転させるスピンドルモータと、ディスクから同期信号を含む記録信号を読み取る信号読み取り手段と、信号読み取り手段で読み取られた記録信号と電圧制御発振器の出力を位相比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差信号の低域成分を抽出し、電圧制御発振器に制御電圧として印加するLPFを含むクロック再生用PLL手段と、信号読み取り手段で読み取られた記録信号中の同期信号を検出し、再生同期信号を出力する同期検出手段と、再生同期信号を所定周波数の基準信号と位相比較または位相・周波数比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差または位相・周波数誤差の低域成分を抽出するLPFとを含む再生同期信号周波数制御用PLL手段と、クロック再生用PLL手段のLPF出力と再生同期信号周波数制御用PLL手段のLPF出力を入力して回転制御信号を作成する回転制御手段と、回転制御手段の回転制御信号に基づきスピンドルモータの回転駆動を行う駆動手段と、を備えたことを特徴としている。
請求項2の発明は、ディスクから同期信号を含む記録信号を読み取る信号読み取り手段と、信号読み取り手段で読み取られた記録信号と電圧制御発振器の出力を位相比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差信号の低域成分を抽出し、電圧制御発振器に制御電圧として印加するLPFを含むクロック再生用PLL手段と、信号読み取り手段で読み取られた記録信号中の同期信号を検出し、再生同期信号を出力する同期検出手段と、再生同期信号を所定周波数の基準信号と位相比較または位相・周波数比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差または位相・周波数誤差の低域成分を抽出するLPFとを含む再生同期信号周波数制御用PLL手段と、クロック再生用PLL手段のLPF入力と再生同期信号周波数制御用PLL手段のLPF出力を入力して回転制御信号を作成する回転制御手段と、回転制御手段の回転制御信号に基づきスピンドルモータの回転駆動を行う駆動手段と、を備えたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、スピンドルサーボ回路の位相制御ループに再生クロックと基準信号との位相比較を行う位相比較回路を設けなくて済み、回路構成が簡単化する。また、再生クロックのエッジにジッタが生じたとき、確実にジッタ分を打ち消すスピンドルサーボが掛かるので、再生クロックを用いたデータ読み取りエラーレートを小さくできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
データクロック再生用PLL回路のLPF出力または入力には再生クロックのジッタ成分が含まれている。よって、データクロック再生用PLL回路のLPF出力または入力をスピンドルモータの位相制御信号としてスピンドルモータに対する回転制御信号作成回路に入力することで、簡単な構成により再生クロックに生じるジッタを抑圧でき、データ読み取りのエラーレートが減少する。
【実施例1】
【0009】
図1は本発明の一実施例に係るCDプレーヤのスピンドルサーボ回路のブロック図である。
図1において、1はCD(コンパクトディスク)、2はCDを一定の線速度で回転させるスピンドルモータ、3はCDの記録信号を読み取る光ピックアップ、4は光ピックアップ出力からRF信号を作成するRFアンプ、5はRF信号に対し波形整形を行うイコライザ回路、6はRF信号の2値化を行う2値化回路、7は2値化RF信号からデータクロックを再生するデータクロック再生用PLL回路であり、この内、7aは2値化RF信号のクロック成分に追従した周波数及び位相で発振し、再生クロックを出力する電圧制御発振器、7bは2値化RF信号と再生クロックとを位相比較し、位相誤差信号(位相誤差に比例してパルス幅がPWM状に変化する信号)を出力する位相比較回路、7cは位相誤差信号の低域成分を抽出し、電圧制御発振器7aへ制御電圧Vcとして出力するLPFである。制御電圧VcはFS(フルスケール;ここでは0〜+Eとする)の範囲で可変し、2値化RF信号と再生クロックの位相が一致しているとき、制御電圧VcはFS/2となり電圧制御発振器7aは一定の発振周波数となる。2値化RF信号に対し再生クロックの位相が進んで位相誤差が+に大きくなると、制御電圧Vcは大きくなり、電圧制御発振器7aの発振周波数が下がって2値化RF信号と再生クロックの位相誤差が小さくなる。反対に、2値化RF信号に対し再生クロックの位相が遅れて位相誤差が−に大きくなると、制御電圧Vcが小さくなり、電圧制御発振器7aの発振周波数が上昇して2値化RF信号と再生クロックの位相誤差が小さくなる。この結果、データクロック再生用PLL回路7により2値化RF信号に含まれるクロック成分に周波数と位相の同期した再生クロックが得られ、データ読み取り回路8へ出力される。データ読み取り回路8は2値化RF信号を再生クロックのタイミングでデータラッチしてEFMデータの読み取りを行って出力する。
【0010】
9は2値化RF信号からフレームシンクを検出し、再生フレームシンク信号を出力するフレームシンク検出回路、10はフレームシンク検出回路で検出された再生フレームシンク信号が所定の一定周波数f0 (CDの場合、f0 =7.35kHz。このときの2値化RF信号のクロック成分の周波数は4.3218MHzである)となるようにするためのフレームシンク周波数制御用PLL回路であり、この内、10aは再生フレームシンク信号と周波数f0 の基準クロックS0とを位相・周波数比較し、位相・周波数誤差信号を出力する位相比較回路(2π以上の位相差も検出可能な位相・周波数比較型)、10bは位相・周波数誤差信号の低域成分を抽出するLPFである。LPF10bの出力電圧VfはFS(フルスケール;ここでは0〜+Eとする)の範囲で可変し、基準クロックS0と再生フレームシンク信号の位相・周波数が一致しているとき、出力電圧VfはFS/2となる。基準クロックS0に対し再生フレームシンク信号の位相・周波数が進んで位相・周波数誤差が+に大きくなると、出力電圧Vfは小さくなる。反対に、基準クロックS0に対し再生フレームシンク信号の位相・周波数が遅れて位相・周波数誤差が−に大きくなると、出力電圧Vfが大きくなる。
【0011】
11は回転制御信号作成回路であり、データクロック再生用PLL回路7のLPF7cの出力電圧Vcをスピンドルモータ2の位相制御信号として入力し、フレームシンク周波数制御用PLL回路10のLPF10bの出力電圧Vfをスピンドルモータ2の速度制御信号として入力し、これら2つの信号を合成し、スピンドルモータ2を所定の一定線速度(約1.2m/s)で回転させるための回転制御信号を作成する。回転制御信号作成回路11の内、11aは位相制御信号のゲインを調節する可変ボリューム、11bは速度制御信号のゲインを調節する可変ボリューム、11c、11dはバッファアンプ、11eは位相制御信号と速度制御信号を加算する加算アンプ、11fは加算アンプ出力の位相補償を行う位相補償回路であり、この位相補償回路11fの出力が回転制御信号としてドライバ回路12に出力される。ドライバ回路12は回転制御信号に基づきスピンドルモータ2の回転駆動を行う。
【0012】
上記の如く構成されたスピンドルサーボ回路において、CD1、光ピックアップ3、RFアンプ4、イコライザ回路5、2値化回路6、データクロック再生用PLL回路7、可変ボリューム11a、バッファアンプ11c、加算アンプ11e、位相補償回路11f、ドライバ回路12、スピンドルモータ2が位相制御ループを成す。また、CD1、光ピックアップ3、RF生成回路4、イコライザ回路5、2値化回路6、フレームシンク検出回路9、フレームシンク周波数制御用PLL回路10、可変ボリューム11b、バッファアンプ11d、加算アンプ11e、位相補償回路11f、ドライバ回路12、スピンドルモータ2が速度制御ループを成す。
【0013】
図2は再生クロックのジッタの変化とLPF7cの出力変化の関係を示す線図であり、以下、この図を参照して、上記した実施例の動作について説明する。
なお、位相制御信号と速度制御信号に対するゲインは可変ボリューム11aと11bの調整により、良好な制御応答性及び制御安定性が得られるように調整済みとする。
起動直後(速度制御ループによる速度制御)
起動時、CD1の回転速度が零から立ち上がる際、線速度がデータクロック再生用PLL回路7の引き込み開始条件(たとえば、1.2m/sの80%)に達するまではデータクロック再生用PLL回路7はアンロック状態にある。
起動時、最初はフレームシンク検出回路9で検出される再生フレームシンク信号の周波数fが0≦f<<f0 であり、CD1の回転速度が零または零近くのときフレームシンク周波数制御用PLL回路10の位相比較回路10aは遅れの位相・周波数誤差を示す位相・周波数誤差信号を出力し、LPF10bからほぼ+Eの速度制御信号が出力される。この速度制御信号は可変ボリューム11bでゲイン調整後、バッファアンプ11d、加算アンプ11e、位相補償回路11fを経てドライバ回路12に回転制御信号として入力される。ドライバ回路12からは大きな駆動電圧が出力され、スピンドルモータ2によりCD1の回転が開始される。
【0014】
CD1の回転が始まると、記録信号が光ピックアップ3により読み取られ、RFアンプ4によりRF信号が作成され、イコライザ回路5で波形整形後、2値化回路6により2値化RF信号が作成され、データクロック再生用PLL回路7とフレームシンク検出回路9に入力される。フレームシンク検出回路9は2値化RF信号中のフレームシンクを検出し、再生フレームシンク信号を出力する。但し、CD1の回転速度が規定線速度に達するまでは、再生フレームシンク信号の周波数はf0 より小さく、フレームシンク周波数制御用PLL回路10の位相比較回路10aは遅れを示す位相・周波数誤差信号を出力するので、LPF10bからはFS/2より大きい出力Vfが継続し、CD1の回転速度が上昇していく。
【0015】
データクロック再生(速度制御+位相制御)
起動後、CD1の線速度が目標値の80%を越えると、位相制御ループのデータクロック再生用PLL回路7が引き込み動作を開始する。即ち、位相比較回路7bにより、それまでフリーラン周波数で発振中の電圧制御発振器7aから出力された再生クロックと2値化RF信号のクロック成分との位相比較がされ、位相誤差信号が出力される。位相誤差信号はLPF7cにより低域成分が抽出され、制御電圧Vcとして電圧制御発振器7aに入力される。再生クロックの方が2値化RF信号より周波数が高く進みの位相誤差の場合、LPF7cの出力がFS/2より大きくなって再生クロックの周波数が下がる。再生クロックの方が2値化RF信号より周波数が低く遅れの位相誤差の場合、LPF7cの出力がFS/2より小さくなって再生クロックの周波数が上がり、再生クロックと2値化RF信号の周波数差が小さくなっていき、ロックレンジ内に入るとロックし、最終的に再生クロックの周波数が2値化RF信号のクロック成分の周波数と一致し、かつ、再生クロックの位相が2値化RF信号のクロック成分の位相と同期する。再生クロックはデータ読み取り回路8に出力されて、2値化RF信号からEFMデータの読み取りが開始される。
【0016】
但し、データクロック再生用PLL回路7が引き込み動作開始後もCD1の回転速度は前述した速度制御ループにより、再生フレームシンク周波数の目標値を7.35kHzとした速度制御が継続している。速度制御により、CD1の回転速度が上がり過ぎ再生フレームシンク周波数が目標値を越えてf0 より大きくなると、位相比較回路10aは進みを示す位相・周波数誤差信号を出力してLPF10bの出力電圧Vfが小さくなり、ドライバ回路12の駆動電圧が下がってCD1の回転速度が減速する。減速で再生フレームシンク信号の周波数がf0 より下がると、位相比較回路10aは遅れを示す位相・周波数誤差信号を出力し、LPF10bの出力電圧Vfは大きくなってドライバ回路12の駆動電圧が上がりCD1の回転速度が上がる。以上の動作を繰り返しながら再生フレームシンク周波数が7.35kHzとなる線速度(約1.2m/s)にCD1の回転速度が収束する。
従って、位相制御ループは最終的に、速度制御ループにより達成される再生フレームシンク周波数f0 での2値化RF信号のクロック成分に同期した再生クロックを生成することになる。
【0017】
同期中に、何らかの原因でCD1の線速度が少し上がり(下がり)、2値化RF信号のクロック成分の位相が再生クロックより進んだ(遅れた)とき、位相比較回路7bから遅れ(進み)を示す位相誤差信号が出力され、LPF7cの出力する制御電圧Vcが少し小さく(大きく)なり、再生クロックの位相が進んで(遅れて)2値化RF信号のクロック成分との位相誤差が小さくなる。このとき、制御電圧Vcが位相制御信号として、可変ボリューム11a、バッファアンプ11cを介して加算アンプ11eにより速度制御ループ側の速度制御信号に加算されているため、スピンドルモータ2の回転速度が少し減少し(上昇し)、2値化RF信号のクロック成分の位相が遅れて(進んで)再生クロックの位相誤差が速やかに小さくなる。
【0018】
また、同期中に何らかの原因でCD1の線速度が上がり(下がり)、2値化RF信号のクロック成分の周波数がf0 より上がった(下がった)とき、位相比較回路10aから進み(遅れ)を示す位相・周波数誤差信号が出力されてLPF10bの出力する速度制御信号が小さく(大きく)なるとともに、位相比較回路7bから遅れ(進み)を示す位相誤差信号が出力されてLPF7cの出力する位相制御信号が小さく(大きく)なり、ドライバ回路12の駆動電圧が下がって(上がって)CD1の回転速度が減速(加速)し、2値化RF信号の周波数が下がり(上がり)、2値化RF信号の周波数が速やかにf0 に戻る。また、データクロック再生用PLL回路7の働きにより、再生クロックの位相が2値化RF信号のクロック成分に同期する。
【0019】
このように、CD1の線速度が変動して2値化RF信号と再生クロックの位相誤差が大きくなったり、再生フレームシンク周波数がf0 からずれても、位相制御ループと速度制御ループの働きにより、速やかに2値化RF信号と再生クロックの位相誤差が小さくなり、また再生フレームシンク周波数がf0 に戻る。そして位相制御ループの出力する位相制御信号はLPF7cの出力としたので、2値化RF信号のクロック成分と再生クロックの間の位相差にジッタが生じた場合でも、位相制御信号にジッタ分が反映されるため、CD1の回転速度が当該ジッタ分を打ち消すようにスピンドルサーボが掛かることになり、2値化RF信号に対する再生クロックの同期状態が良好に維持され、データ読み取り回路8での読み取りエラーレートが小さくなる。
【0020】
再生クロックのジッタの抑圧
CD1の回転速度のジッタなどに起因して再生クロックのエッジには例えば図2(a)に示す如くジッタ成分が生じるが(図2(a)では、エッジb1、b5、b9ではジッタ成分が零であるが、エッジb2、b3、b4で+のジッタ成分が生じ、エッジb6、b7、b8で−のジッタ成分が生じている)、このジッタ成分に対して位相制御ループが応答する。再生クロックのジッタ成分はLPF7cから出力される制御電圧Vcの変化分に含まれており(図2(b)参照)、位相制御ループにより、再生クロックに+(−)のジッタが生じるときは制御電圧Vcが大きく(小さく)なるので、CD1の回転速度が上がり(下がり)、2値化RF信号のクロック成分の位相が進み(遅れ)、再生クロックと2値化RF信号のクロック成分との位相差が小さくなる。この結果、再生クロックのジッタが抑圧され、データ読み取り時のエラーレートが小さくなる。
【0021】
この実施例によれば、スピンドルサーボ回路の位相制御ループに再生クロックと基準クロックとの位相比較を行う位相比較回路を設けなくて済み、回路構成が簡単化する。また、再生クロックにジッタが生じたとき、ジッタ分を打ち消すスピンドルサーボが掛かるので、再生クロックを用いたデータ読み取り時のエラーレートを小さくできる。
【0022】
なお、上記した実施例では、データクロック再生用PLL回路のLPF出力をスピンドルサーボの位相制御信号としたが、位相誤差に応じてPWM状に変化するLPF入力をスピンドルサーボの位相制御信号とすることもできる。また、データクロック再生用PLL回路の位相比較回路を位相・周波数比較型としても良く、フレームシンク周波数制御用PLL回路の位相比較回路を、通常の位相比較型としても良い。
【産業上の利用可能性】
【0023】
本発明は、CDプレーヤ、ミニディスクシステム、DVDプレーヤ、DVDレコーダ等の種々のディスク再生装置に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明に係るCDプレーヤのスピンドルサーボ回路のブロック図である(実施例1)。
【図2】データクロック再生用PLL回路での再生クロックのジッタの変化とLPFの出力変化の関係を示す線図である。
【図3】従来のCDプレーヤのスピンドルサーボ回路を示すブロック図である。
【図4】従来の問題点の説明図である。
【符号の説明】
【0025】
1 CD
2 スピンドルモータ
3 光ピックアップ
4 RFアンプ
7 データクロック再生用PLL回路
9 フレームシンク検出回路
10 フレームシンク周波数制御用PLL回路
11 回転制御信号作成回路
12 ドライバ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを回転させるスピンドルモータと、
ディスクから同期信号を含む記録信号を読み取る信号読み取り手段と、
信号読み取り手段で読み取られた記録信号と電圧制御発振器の出力を位相比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差信号の低域成分を抽出し、電圧制御発振器に制御電圧として印加するLPFを含むクロック再生用PLL手段と、
信号読み取り手段で読み取られた記録信号中の同期信号を検出し、再生同期信号を出力する同期検出手段と、
再生同期信号を所定周波数の基準信号と位相比較または位相・周波数比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差または位相・周波数誤差の低域成分を抽出するLPFとを含む再生同期信号周波数制御用PLL手段と、
クロック再生用PLL手段のLPF出力と再生同期信号周波数制御用PLL手段のLPF出力を入力して回転制御信号を作成する回転制御手段と、
回転制御手段の回転制御信号に基づきスピンドルモータの回転駆動を行う駆動手段と、
を備えたことを特徴とするディスク再生装置のスピンドルモータ回転制御装置。
【請求項2】
ディスクを回転させるスピンドルモータと、
ディスクから同期信号を含む記録信号を読み取る信号読み取り手段と、
信号読み取り手段で読み取られた記録信号と電圧制御発振器の出力を位相比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差信号の低域成分を抽出し、電圧制御発振器に制御電圧として印加するLPFを含むクロック再生用PLL手段と、
信号読み取り手段で読み取られた記録信号中の同期信号を検出し、再生同期信号を出力する同期検出手段と、
再生同期信号を所定周波数の基準信号と位相比較または位相・周波数比較する位相比較手段、位相比較手段の出力する位相誤差または位相・周波数誤差の低域成分を抽出するLPFとを含む再生同期信号周波数制御用PLL手段と、
クロック再生用PLL手段のLPF入力と再生同期信号周波数制御用PLL手段のLPF出力を入力して回転制御信号を作成する回転制御手段と、
回転制御手段の回転制御信号に基づきスピンドルモータの回転駆動を行う駆動手段と、
を備えたことを特徴とするディスク再生装置のスピンドルモータ回転制御装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−35172(P2007−35172A)
【公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−218040(P2005−218040)
【出願日】平成17年7月27日(2005.7.27)
【出願人】(000003595)株式会社ケンウッド (1,981)
【Fターム(参考)】