説明

ディスク再生装置の動力切換機構

【課題】
切換板上に軸支した切換ギヤを、簡単な構成により、第一又は第二作動ギヤとの噛合する位置に係止する。
【解決手段】
切換板上に切換ギヤを軸支し、切換ギヤの歯末面を第一及び第二作動ギヤの歯末面に同時に当接可能とし、切換ギヤに作用する第一又は第二作動ギヤからの反力により切換板を移動させて回転伝達経路を切換えるものとし、切換板に設けた当接部を、第二作動ギヤに駆動されるスライド板に設けた被当接部に当接させて、切換ギヤを、第二作動ギヤと噛合する位置に留めるものとする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ピックアップ駆動用双方向モータの駆動力を、ピックアップ側又はクランパ、搬送ローラ等のディスク再生補助手段側に択一的に伝達するディスク再生装置の動力切換機構に関し、特に、モータに駆動される切換ギヤをピックアップ駆動側又は補助手段側に適宜係止する機構に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には次のような動力切換装置が記載されている。
すなわち、回動部材(19)に主動ギヤ(18)と、第一従動ギヤ(20)と、第二従動ギヤ(22)とを軸支し、回動部材(19)の回動により、駆動モータ(15)の駆動力を、主動ギヤ(18)及び第一従動ギヤ(20)を介して、ピックアップ(2)を往復動させる第一機構(3)又は、主動ギヤ18及び第二従動ギヤ(22)を介して、クランパ、搬送ローラ等を作動させる第二機構(9)に択一的に伝達する動力切換装置が示されている。
また、第一従動ギヤ(20)の歯末面を第一機構(3)側の第一ギヤ(8)の歯末面に当接させ、同時に、第二従動ギヤ(22)の歯末面を第二機構(9)側のギヤ13の歯末面に当接させる機構も示されており(図4)、この機構により、第一機構(3)と第二機構(9)との間の駆動力伝達経路の切換えがスムーズにできる。
【特許文献1】特開2005−69450号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
特許文献1に開示された動力切換装置では、スライド板に連動板(24)を連結し、この連動板(24)に連結板(23)を係合させ、この連結板(23)にアーム(25)を係合させることによって、回動板(19)をスライド板(10)側に係止して、主動ギヤ(18)をピックアップ駆動側又はクランパ、搬送ローラ等のディスク再生補助手段を駆動する側に係止するようにしているため、係止するための構成が複雑となる問題があった。
【0004】
本発明は、この問題に鑑みてなされたもので、多くの部品を付加することなく、ピックアップ駆動用のモータの駆動力を、ピックアップ駆動側又はディスク再生補助手段側に択一的に係止することができ、構成簡単、かつ安価なディスク再生装置の動力切換機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
切換ギヤを第一作動ギヤに噛合させる位置に切換板を係止し、ピックアップがディスク再生時の動作範囲を超えて移動したときその係止を解除して、切換ギヤに作用する前記第一作動ギヤからの反力による前記切換板の移動を許容して、前記切換ギヤの第二作動ギヤへの噛合を可能にする係止手段と、前記切換板に設けられた当接部と、スライド板に設けられ、該スライド板が作動位置にあるとき前記当接部を当接させて、前記切換ギヤを前記第二作動ギヤに噛合させる位置に前記切換板を留め、モータの反転により前記スライド板が初期位置へ復帰するに伴い前記当接部から外れ、前記切換ギヤに作用する前記第二作動ギヤからの反力による前記切換板の移動を許容して、前記切換ギヤの前記第一作動ギヤへの噛合を可能にする被当接部とで構成される。
【0006】
前記係止手段は、前記切換板に設けられた被係合部と、係合部を有し、該係合部を前記被係合部に係合して、前記切換ギヤを前記第一作動ギヤに噛合させる位置に、前記切換板を係止するロック部材と、前記係合部を前記被係合部に係合させる方向へ前記ロック部材を付勢するばね部材と、前記ピックアップに設けられ、該ピックアップがディスク再生時の動作範囲を超えて移動したとき前記ロック部材を押圧して前記係合部の前記被係合部に対する係合を解除する押圧部とを具備した構成にすると良い。
【0007】
前記切換板は回動自在とし、その回動支点と前記切換ギヤの軸心とを結ぶ線を挟んで、前記第一作動ギヤ側の端部に前記被係合部、前記第二作動ギヤ側の端部に前記当接部を有するものとすると良い。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、既存のピックアップ、切換板、スライド板等の一部を利用し、ロック部材とばね部材を付加するだけで切換ギヤをピックアップ駆動側又はディスク再生補助手段側に択一的に係止することができ、簡単かつ安価な構成となる。
【0009】
また、切換板に被係合部を設け、この被係合部とピックアップとの間にロック部材を配置し、該ロック部材をばね部材で一方向に付勢して係止手段を構成すると、ロック部材とばね部材を付加するだけで切換ギヤをピックアップ駆動側に係止することができ、一層構成が簡単となる。
【0010】
さらに、切換板を回動自在とし、その回動支点と前記切換ギヤの軸心とを結ぶ線を挟んで、第一作動ギヤ側の端部に被係合部、第二作動ギヤ側の端部に当接部を有するものとすると、切換板は、切換ギヤを第一作動ギヤに噛合させる方向へ回動するとき被係合部をロック部材との係合位置に移動させてピックアップ駆動側に係止され、切換ギヤを第二作動ギヤに噛合させる方向へ回動するとき当接部をスライド板との係合位置に移動させてディスク再生補助手段駆動側に係止される構成にすることができ、設計し易い構成となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を参照して説明する。
図1は車載用のディスク再生装置の機構部1の外観を示す斜視図である。機構部1の正面には、ディスクDを挿出するディスク挿入口2が設けられている。矢印Aはディスク挿入方向を示し、その逆方向はディスク排出方向となる。そして、これらディスク挿入方向とディスク排出方向とを合わせて、ディスク挿出方向とする。
【0012】
図2は、機構部1を上ユニット3と下ユニット4とに分けて示し、さらに下ユニット4をピックアップユニット5、クランプ機構6及びその他に分けて示す分解斜視図である。
図3は前記上ユニット3を示す平面図であり、図4は前記下ユニット4からピックアップユニット5とクランプ機構6とを除いた部位を示す平面図である。また、図5はピックアップユニット5を示す平面図である。
【0013】
前記上ユニット3は、図2及び図3に示すように、上フレーム7及びディスク検知機構8で構成されている。前記下ユニット4は、図2、図4及び図5に示すように、下フレーム10と、この下フレーム10に取り付けられる3個の緩衝部材よりなるダンパ11と、搬送ローラ機構12と、ターンテーブル13やピックアップ14を含むピックアップユニット5と、クランプ機構6等で構成されている。前記上フレーム7と下フレーム10とで固定シャーシ15すなわち、ディスク再生装置のフレームを構成する。
【0014】
図2及び図3の如く、金属板からなる前記上フレーム7は、ほぼ四角形をなす天板18の四辺より下方に折曲形成された側板を有し、その左右側板19,20のディスク挿出方向における前部及び後部にそれぞれ重ね合せ部21,22を設けている。
【0015】
また図2及び図4の如く、金属板からなる前記下フレーム10は、ほぼ四角形をなす底板23の四辺より上方に立上るフレーム側板を有し、その左右のフレーム側板24,25のディスク挿出方向における前部及び後部に、それぞれ重ね合せ部26,27を設けている。そして、上フレーム7と下フレーム10との合体は、互いの対応する重ね合せ部同志を重ね合わせ、それぞれの後部重ね合わせ部22,27をねじ28(図2において右方のみ記載)にて固定する(図1参照)ことにより行なっている。
【0016】
図2及び図3の如く、前記天板18には、ほぼ中央に開口部29を設け、この開口部29の左右位置には一対の延出片30を下方へ延出させている。そして、前記天板18の前半部(図3における下半部)には、上面側から下方に向けて押出し加工した左右方向に長い凹みを形成してその部位を装着部31としている。さらに、天板18と装着部31との間の段差部32には、適宜切欠部33を設けている。また、装着部31中央部には、下方へ膨出するガイド部34を形成している。
【0017】
前記ディスク検知機構8は、左右一対の水平回動自在なディスク検知部材35,36と、両検出部材35,36間に掛渡されたコイルばね37(図3に仮想線で示す)と、右方のディスク検知部材36より更に右方に装着された回動自在な係止レバー38と、図示しないスイッチとで構成され、これらの構成部品は、装着部31の上面に取付けられている。
【0018】
前記ディスク検知部材35,36は、ディスクが挿入されたことを検知するもので、装着部31の上面に突設された一対の支軸39にそれぞれ回動自在に装着され、前記ディスク挿入口2の近傍まで延長された各延長端には下方に延びた検知部40,41(図2参照)を有している。
【0019】
左方のディスク検知部材35には、図中右方へ延出した連結片42が形成されており、その先端には連結ピン43が上方へ向けて形成されている。また右方のディスク検知部材36には、図中左方へ延出した連結片44が形成されており、その先端付近には連結溝45が形成されている。そして、前記連結ピン43をこの連結溝45に係合させて、両ディスク検知部材35,36が左右対称に同期回動するようにしている。
【0020】
両ディスク検知部材35,36は、一部を前記切欠部33に挿入させており、前記コイルばね37の付勢力により装着部31の上面に形成された一対のストッパ部46のそれぞれに一部を当接させて、互いの検知部40,41を再接近させた初期位置を維持している。また、各検知部40,41の近傍には弾性片47,48が設けられ、これらの弾性片47,48を装着部31の上面に弾性的に常時圧接させて、検知部材35,36の振動によるラットルノイズの発生を防止するようにしている。
【0021】
前記係止レバー38は装着部31の上面に突設された支軸49に回動自在に装着され、ディスクが再生位置に挿入されたとき左右のディスク検知部材35,36を回動位置に係止する。この係止レバー38には、一端に右方のディスク検知部材36に嵌合するピン50、他端にディスク搬送経路内に位置して搬送途中のディスクの外周に摺接する図示しない摺接ピンが、それぞれ形成されている。係止レバー38は、時計方向に極めて弱いばねで回動付勢されている。
【0022】
図2及び図4の如く、前記下フレーム10の底板23には、大きく開口した大開口部52を設け、その大開口部52周辺の底板23上面3箇所には、前記ダンパ11を固着する固定部53を設けている。また、左側板24後部付近において、底板23を上方へ向けて押出し加工にて山形形状とした押出し部54を設け、その前方位置に、左側板24の一部を装置内側へ向けて切曲げした切曲げ部55を設けている。この切曲げ部55には、被係合部である孔56が設けられている(図2参照)。さらに、図中右方には、前記孔56より手前側及び奥側位置に、右側板25より内側に向けて折曲形成された前方及び後方被係合部である一対の折曲部57,57が設けられている。
【0023】
前記3箇所の固定部53には、それぞれ前記ダンパ11の台座58を固着し、各ダンパ11の有底筒部59を前記ピックアップユニット5の一部に取付けて、ピックアップユニット5がこれらのダンパ11を介して、下フレーム10に対してフローティング状態に支持されるようにしている。また、下フレーム10の左右側板24,25のディスク挿入口2近傍には、前記搬送ローラ機構12が配置されている。
【0024】
前記ピックアップユニット5は、図2及び図5に示すように、フローティングシャーシ60と、このフローティングシャーシ60に取付けられたピックアップ駆動機構61、ローディング機構62、ディスク回転機構63及び後述する第一モータ(ピックアップ駆動用双方向モータ)74とで構成されている。なお、ローディング機構62と第一モータ74とで、本発明の動作切換機構を構成する。
【0025】
フローティングシャーシ60は金属板製で、ほぼ四角形をなす平板部65と、上方へ折り曲げた左右側板66,67と、下方へ折り曲げた前板68と、上方へ折り曲げた後板69とを有している。前記平板部65には、図5中ほぼ中央から左上方に向けて長い矩形孔70を有し、この矩形孔70の内側にピックアップ14が矩形孔70の長手方向に移動自在に配置されている。
【0026】
また、該矩形孔70の長手方向と平行にレール部71が設けられ、前記ピックアップ14の一部で、このレール部71を挟む構成となっている。この平板部65において、前記右側板67の近傍には溝72(仮想線で示す)が設けられている。さらに、この平面部65には、ディスクの挿入を規制する左右一対のストッパ片73を設けている。そして、前記矩形孔70の図中右方には前記第一モータ74が配置されている。
【0027】
前記ピックアップ駆動機構61は、前記ピックアップ14に挿通し前記レール部71と平行に配置される金属製の主ガイドレール75、一端に小ギヤ76を設けた合成樹脂製の送りねじ77、前記主ガイドレール75及び送りねじ77の両端をそれぞれ支持する第一支持部材78,第二支持部材79、一端をピックアップ14に固定し他端を前記送りねじ77に当接させる薄板製のピックアップ送り板80で構成されている。前記主ガイドレール75、小ギヤ76、送りねじ77、第一、第二支持部材78,79は、前記フローティングシャーシ60の平板部65の下面側に配置される。
【0028】
前記ローディング機構62は、ピックアップ14をロックするロック部材82と、前記第一モータ74の駆動力を伝達する駆動力伝達手段83と、第一モータ74の駆動力を受け、図中前後に移動するスライド板84と、前記スライド板84に取付けた反転ばね(図示せず)と、ディスクを前記ターンテーブル13にチャッキングする直前を検知するトリガ部材85と、前記ロック部材82を時計方向に付勢するばね部材Sと、で構成されている。
前記ロック部材82、駆動力伝達手段83、トリガ部材85は、平板部65の下面側に配置され、前記スライド板84は、右側板67に配置される。
【0029】
前記ロック部材82は、略中央に回動支点86を設け、一端に係合部としての摺接ピン87、他端にロック部88を設けている。
【0030】
図6はスライド板84とその周辺部品との関係を示す側面図であり、スライド板84の図中中央上部にはカム溝89を設けている。このカム溝89の下方には、前方及び後方被係合部である、上下方向の幅が狭いスリット部90,91と、上下方向幅広の逃げ部92,93とからなる一対の貫通孔94,95を設けている。また、スライド板84の図6における左端には、ローラ位置切換部であるカム面96を設けている。さらに、図5に示す如く、スライド板84の左側面には、図中左方に突出した被当接部97が設けられている。
【0031】
前記トリガ部材85は、一端側に上方へ延出する被当接部98、他端側にラック99、中間部に回動軸100を、それぞれ設けている。さらに、他端部には上方に突出するボス101も設けている。このボス101は、前記フローティングシャーシ60の溝72に挿通させている。
【0032】
前記ディスク回転機構63は、前記矩形孔70の図中最前部に取付けられた第二モータ102と、この第二モータ102に直結された前記ターンテーブル13とで構成されている。
【0033】
前記駆動力伝達手段83は、図5及び図7の如く、ギヤ群を主体とするものである。この伝達手段83は、前記第一モータ74の駆動力を、搬送ローラ機構12、クランプ機構6等のディスク再生補助手段又はピックアップ駆動機構61に適宜伝達する切換手段103と、第三支持部材104と、第四支持部材105とを有している。
【0034】
前記ギヤ群は、前記第一モータ74のシャフトに装着されたウォームギヤ106と、二段ギヤよりなる第一ギヤ107、切換ギヤとしての第二ギヤ108及び第一作動ギヤとしての第三ギヤ109と、三段ギヤよりなる第二作動ギヤとしての第四ギヤ110と、ディスク挿出方向に長く両端部に第一ウォーム111,第二ウォーム112を一体形成した第五ギヤ113と、前記第四支持部材105に取付けられる、二段ギヤよりなる第六ギヤ114と、連結ギヤである第七ギヤ115とで構成されている。この第七ギヤ115は、前記スライド板84のカム面96に近い位置に配置されている。なお、第三ギヤ109と第四ギヤ110との軸間距離は、図8に示すように、第三ギヤ109の小ギヤと第二ギヤ108の大ギヤとが歯末面同志を当接させるとき、同時に第四ギヤ110の大ギヤと第二ギヤ108の小ギヤとが歯末面同志を当接させるように設定されている。
【0035】
前記切換手段103は、仮想線で示す金属板製の切換板116と、この切換板116に取付けた前記第二ギヤ108とで構成される。前記切換板116は、図中下端部が右方に曲がった形状をなし、その先端を当接部117とし、図中上端に円弧部118と傾斜部119とからなるカム部120を有し、中間部を前記第一ギヤ107と共通の軸121に回動自在に軸支されている。前記第二ギヤ108は前記カム部120と軸121とのほぼ中間位置に回転自在に軸支されている。そして、切換板116の回動により第二ギヤ108を、第三ギヤ109又は第四ギヤ110に適宜噛合させて、前記第一モータ74の駆動力をピックアップ駆動機構61又は搬送ローラ機構12、クランプ機構6等のディスク再生補助手段に伝達するようにしている。
【0036】
第一ギヤ107は、前記フローティングシャーシ60の裏面側に軸支され、一段目の大ギヤをヘリカルギヤとして、このヘリカルギヤをウォームギヤ106に噛合させている。第一ギヤ107の二段目の小ギヤは第二ギヤ108の大ギヤに常時噛合させている。第四ギヤ110は、前記フローティングシャーシ60の裏面側に軸支され、中ギヤを第五ギヤ113の第一ウォーム111に、小ギヤをスライド板84のラック(図示せず)に、それぞれ噛合させている。
【0037】
第五ギヤ113は、第一ウォーム111側を前記第三支持部材104に支持され、第二ウォーム112側を第四支持部材105に回転自在に支持されている。この第三支持部材104及び第四支持部材105は前記フローティングシャーシ60の裏面側に取付けられている。第五ギヤ113の第二ウォーム112は第四支持部材105に回転自在に取付けられた第六ギヤ114の小ギヤと噛合している。この小ギヤはヘリカルギヤである。第六ギヤ114の大ギヤは同じく第四支持部材105に回転自在に取付けられた第七ギヤ115に噛合させている。また、第三ギヤ109の大ギヤはピックアップ駆動機構61の一部である前記小ギヤ76に常時噛合させている。
【0038】
図7に示すように、第二ギヤ108の小ギヤが第四ギヤ110の大ギヤに噛合していると、第一モータ74の駆動力が前記搬送ローラ機構12に伝達される。この状態から切換板116が軸121を中心に反時計方向に回動して、第二ギヤ108の大ギヤが第三ギヤ109の小ギヤと噛合すると、第一モータ74の駆動力がピックアップ駆動機構61に伝達される。
【0039】
前記クランプ機構6は、図9及び図10に示すように、クランパ122と、このクランパ122を回転支持する薄板製の支持板123と、この支持板123を取着し、上下方向に回動して(回動中心線を一点鎖線で示す)前記クランパ122を前記ターンテーブル13に対して離接させるクランパ支持体124とで構成される。
【0040】
図10の如く、クランパ122は、図中上方に軸部125と、図中下方にディスクの中心孔に嵌合する略円錐台形突部126とを有し、この略円錐台形突部126の外周にディスクの心出し用テーパ127を有している。
【0041】
クランパ122は、前記軸部125を前記支持板123の一端側にて回転自在に支持され、支持板123は、他端側をクランパ支持体124に固着され、ターンテーブル13とクランパ122とでディスクを挟持するときは、支持板123の一部でクランパ122の軸端を弾性的に押圧してターンテーブル13とクランパ122との間にディスク挟持圧を付与するようにしている。
【0042】
クランパ支持体124は、図9に示すように、左右方向に細長い板金製で、平板128の左右端に下方へ折り曲げられた側板129,130を有している。そして平板128には、略菱形状の第一及び第二上方係合部である一対の菱孔131,132を設け、各菱孔131,132には、図中左右角部にそれぞれストレート溝133,134を形成している。クランパ支持体124の図中奥側縁部135は、中央から左方及び右方にかけて僅かに奥側へ傾斜するように形成されている。また、右側板130の図中前端部には係合ピン136が取着されており、この係合ピン136は、前記スライド板84のカム溝89(図6参照)に嵌合する。
【0043】
前記左側板129は、図10に示すように一部を下方へ延長し、該延長部の下端部が二股形状に形成されており、図中右側を係合部である第一片137、左側を第二片138としている。また、左右側板129,130(図9には左側板129のみ示す)には、それぞれ軸孔139が設けられており、各軸孔139は前記フローティングシャーシ60の左右側板66,67(図5参照)にそれぞれ設けられた突部(図示せず)に係合し、クランパ支持体124は、それらの突部を中心に回動自在となっている。
【0044】
また、前記クランパ支持体124の前記フローティングシャーシ60に対する回動中心軸(両軸孔139の中心間を結ぶ線)は、前記ターンテーブル13の中心軸線より距離Kだけ奥側にあり、距離KはディスクDの中心孔径(15mm)より大きく、かつ、その2倍(30mm)以内、例えば25mm程度に設定される。さらに、前記クランパ支持体124の奥側縁部135は、中央から左方及び右方にかけて奥側へ僅かに傾斜させている。
【0045】
搬送ローラ機構12は、図4及び図11の如く、搬送ローラ141と、ローラブラケット142とで構成されている。
【0046】
搬送ローラ141は、外方端から内方端にかけて漸次小径となる一対の合成ゴム製テーパ筒体143に金属製の軸144を挿通させて構成されている。軸144の両端はテーパ筒体143の外方端から突出し、その突出する軸144の一端側には前記駆動力伝達手段83(図5参照)の一部であるローラギヤ145を、また他端側にはカラー146を、それぞれを取付けている。
【0047】
ローラブラケット142は金属板よりなるもので、図11に示す如く左右に長い連結板147の左右端に、上方へ向けて折曲形成された左右ブラケット側板148を有し、これらの左右側板148を連結板147より奥側へ延出させている。左右側板148は、各内面側の略中間部に絞り加工による凸状筒部149,149をそれぞれ有し、各凸状筒部149,149を下フレーム10(図2参照)の左右側板24,25に形成された溝150(一方のみ仮想線で示す)に嵌合させ、凸状筒部149,149を支点として、上下回動自在に装着される。また、前記フレーム側板148の延出部間では、搬送ローラ141の軸144の両端を回転自在に支持している。
【0048】
前記連結板147の後縁は裏面側に向けて折曲された山折縁部151となっている。この山折縁部151は、平面図上ではほぼ左右対称となるV形凹状となっているが、その傾斜角度は、ローラの軸心線に対して約1°程度の僅かなものである。また、連結板147の前縁には上方に向けて屈曲した左右一対の屈曲部152,152が設けられている。これらの屈曲部152,152は、搬送ローラ141が下方位置にあるとき、すなわち、ディスクが再生位置に挿入されているときは上方位置にあってディスク挿入口2(図1参照)を塞いで、ディスクの二重挿入を防止する。前記ローラブラケット142の右側板148の最奥部には、外方へ向けて略直角に曲げられた折曲片153が設けられている。なお、ローラブラケット142は図示しないばねにより、搬送ローラ141を上昇させる方向に常時付勢されている。
【0049】
また、図12に示す如く、前記フレーム10の底板23の一部に一対の誘導部158,158を設け、スライド板84がディスク排出方向へ移動した際に、スライド板84が両誘導部158,158間に挟まれるようにしている。
【0050】
以上の如く構成されたディスク再生装置において、ディスクを挿入し再生するまでの動作を説明する。
ディスクDを挿入する前には、スライド板84は図7における下方、すなわち、作動位置に位置している。このとき、切換板116は時計方向に回動した位置にあり、第二ギヤ108の小ギヤは第四ギヤ110の大ギヤに噛合している。前記切換板116の当接部117は、スライド板84の被当接部97に当接した状態となっている。この状態において、ディスク挿入口2からディスクDを図3に示すディスク検知部材35,36の検知部40,41間に挿入する。そして、ディスクDをその外周面で検知部40,41間を押し広げながら挿入すると、ディスク検知部材35,36が回動する。すると、図示しないスイッチがオンされて、ディスクDが挿入されたことを検知して第一モータ74(図7参照)が起動する。
【0051】
すると、第一モータ74の駆動力は、第二ギヤ108から第四ギヤ110を介して、スライド板84に伝達される。このとき、第二ギヤ108は時計方向に回転しており、この回転の反力によって切換板116は反時計方向に回動しようとしている。しかし、切換板116の当接部117は図中上下方向に移動可能なスライド板84に対して、その被当接部97に図中左方より右方へ向けて当接しているため、切換板116は、第二ギヤ108を第四ギヤ110に噛合させる図7の位置に留められている。
【0052】
スライド板84が図7における上方、すなわち、初期位置へ向けて、前記反転ばねを反転動作させる位置まで移動した後、当接部117がスライド板84の被当接部97から外れ、切換板116は反時計方向への回動が許容される。そして切換板116は、第二ギヤ108に作用する第四ギヤ110からの反力を受けて反時計方向へ回動するが、第三ギヤ109と第四ギヤ110との軸間距離は、図8に示すように、第三ギヤ109の小ギヤと第二ギヤ108の大ギヤとが歯末面同志を当接させるとき、同時に第四ギヤ110の大ギヤと第二ギヤ108の小ギヤとが歯末面同志を当接させるように設定されているため、第二ギヤ108は第四ギヤ110からの反力を受けている間に、その歯末面を第三ギヤ109の歯末面に当接させるようになり、第四ギヤ110との噛合状態から第三ギヤ109との噛合状態に、スムーズに移行することができる。
【0053】
そして、図12の如く、第二ギヤ108と第三ギヤ109が、互いのピッチ円同志がほぼ接する適正な噛合状態になると、前記ロック部材82は、ばね部材Sに付勢されて、ピックアップ14の一部との係合を解除して、ピックアップ14の、ディスク再生時における動作範囲への復帰を許容すると同時に、摺接ピン87を切換板116の傾斜部119に係合させ、第二ギヤ108を第三ギヤ109に噛合させる位置に切換板116を係止する。これによって、第一モータ74の駆動力は第二ギヤ108、第三ギヤ109を介してピックアップ14に伝達され、ピックアップ14はディスク再生時における動作範囲で往復移動可能となる。
【0054】
一方、スライド板84が初期位置まで移動すると、搬送ローラ141は図13の如く、軸149を中心に、ディスク搬送位置から非搬送位置へ下降する。また、クランパ支持体124に支持されたクランパ122は図10の如く、仮想線で示す位置から実線で示す位置まで下降する。そして、クランパ122と前記ターンテーブル13とでディスクDを挟持し、ディスクDはディスク再生位置に位置決めされて、ディスクの再生が行なわれる。
【0055】
次にディスク再生を終了してディスクを排出する動作を説明する。
図示しないディスクイジェクトボタンを押すと、図12の如くなり、第二ギヤ108は第一モータ74の駆動力を受けて反時計方向に回転し、ピックアップ14をディスク再生時の動作範囲を超えてディスク記録面の内周方向へ移動させる。すると、ピックアップ14の一部でロック部材82の一部を押圧し、ロック部材82はばね部材Sの付勢力に抗して反時計方向に回動する。
【0056】
このロック部材82の反時計方向への回動により、前記摺接ピン87が切換板116の傾斜部119から外れて切換板116の時計方向への回動を許容すると共に、ロック部88をピックアップ14に係合させて、ピックアップ14のディスク再生時における動作範囲への復帰を禁止する。よって、切換板116は、第二ギヤ108に作用する第三ギヤ109からの反力により時計方向へ回動する。切換板116の時計方向への回動により、第二ギヤ108は第三ギヤ109から離れようとするが図8に示すように、第二ギヤ108が第三ギヤ109からの反力を受けている間に、第二ギヤ108と第四ギヤ110の歯末面同志が当接するため、第二ギヤ108は第三ギヤ109との噛合状態から、図7に示す第四ギヤ110との噛合状態へスムーズに移行することができる。
【0057】
そして、図7の如く、第二ギヤ108と第四ギヤ110が噛合すると、第四ギヤ110の回転によりスライド板84が初期位置から作動位置へ移動する。この状態では、スライド板84の被当接部97が切換板116の当接部117を当接させる位置にあるので切換板116の反時計方向への回動は当接部117によって禁止される。
【0058】
また、スライド板84が作動位置まで移動することにより、クランパ支持体124に支持されたクランパ122は図10の実線位置から仮想線位置まで移動してターンテーブル13上のディスクDを開放し、搬送ローラ141は図13の非搬送位置から仮想線で示すディスク搬送位置へ上昇して、ディスクDをディスク挿入口2から排出する。
【0059】
以上の構成によれば、ピックアップ14、切換板116、スライド板84等の一部を利用し、ロック部材82とばね部材Sを付加するだけで第二ギヤ108をピックアップ駆動側又はディスク再生補助手段側に択一的に係止することができ、簡単かつ安価な構成となる。
【0060】
また、切換板116に傾斜部119を設け、この傾斜部119にとピックアップ14との間にロック部材82を配置し、該ロック部材82をばね部材Sで一方向に付勢して、係止手段を構成すると、ロック部材82とばね部材Sを付加するだけで第二ギヤ108をピックアップ駆動側に係止することができ、一層構成が簡単となる。
【0061】
さらに、切換板116を回動自在とし、その回動支点と前記第二ギヤ108の軸心とを結ぶ線Yを挟んで、第三ギヤ109側の端部に傾斜部119、第四ギヤ110側の端部に当接部117を有するものとすると、切換板116は、第二ギヤ108を第三ギヤ109に噛合させる方向へ回動するとき傾斜部119をロック部材82との係合位置に移動させてピックアップ駆動側に係止され、第二ギヤ108を第四ギヤ110に噛合させる方向へ回動するとき当接部117をスライド板84との係合位置に移動させてディスク再生補助手段駆動側に係止される構成にすることができ、設計し易い構成となる。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】ディスク再生装置を示す斜視図。
【図2】ディスク再生装置の分解斜視図。
【図3】上ユニットを示す平面図。
【図4】下ユニットからピックアップユニットとクランプ機構とを除いた状態を示す平面図。
【図5】ピックアップユニットを示す平面図。
【図6】スライド板と周辺部品との関係を示す側面図。
【図7】駆動力伝達手段を示す平面図。
【図8】第一、第二作動ギヤと切換ギヤとの関係を示す平面図。
【図9】クランプ機構を示す平面図。
【図10】クランプ動作を示す左側面図。
【図11】搬送ローラ機構を示す斜視図。
【図12】駆動力伝達手段を示す平面図。
【図13】スライド板と周辺部品との関係を示す側面図。
【符号の説明】
【0063】
14 ピックアップ
74 第一モータ
82 ロック部材
84 スライド板
87 摺接ピン(係合部)
97 被当接部
108 第二ギヤ(切換ギヤ)
109 第三ギヤ(第一作動ギヤ)
110 第四ギヤ(第二作動ギヤ)
116 切換板
117 当接部
119 傾斜部(被係合部)
121 軸(回動支点)
D ディスク
S ばね部材
Y 線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ピックアップ駆動用の双方向モータ(74)と、
このモータに適宜駆動されてピックアップ(14)を往復動させる第一作動ギヤ(109)と、
初期位置と作動位置との間を移動して、ディスク(D)の装填及び取出しに関与するディスク再生補助手段を作動させるスライド板(84)と、
このスライド板を移動させる第二作動ギヤ(110)と、
往復動自在な切換板(116)と、
この切換板上に軸支され、かつ前記双方向モータに回転駆動され、該切換板の位置に応じて前記第一又は第二作動ギヤに噛合し、また、その歯末面を前記第一及び第二作動ギヤの歯末面に同時に当接可能とする切換ギヤ(108)と
を備えたディスク再生装置の動作切換機構において、
前記切換ギヤを前記第一作動ギヤに噛合させる位置に前記切換板を係止し、前記ピックアップがディスク再生時の動作範囲を超えて移動したときその係止を解除して、前記切換ギヤに作用する前記第一作動ギヤからの反力による前記切換板の移動を許容して、前記切換ギヤの前記第二作動ギヤへの噛合を可能にする係止手段(119,87,82、S)と、
前記切換板に設けられた当接部(117)と、
前記スライド板に設けられ、該スライド板が作動位置にあるとき前記当接部を当接させて、前記切換ギヤを前記第二作動ギヤに噛合させる位置に前記切換板を留め、モータの反転により前記スライド板が初期位置へ復帰するに伴い前記当接部から外れ、前記切換ギヤに作用する前記第二作動ギヤからの反力による前記切換板の移動を許容して、前記切換ギヤの前記第一作動ギヤへの噛合を可能にする被当接部(97)と
を具備したことを特徴とするディスク再生装置の動作切換機構。
【請求項2】
前記係止手段は、
前記切換板に設けられた被係合部(119)と、
係合部(87)を有し、該係合部を前記被係合部に係合させて、前記切換ギヤを前記第一作動ギヤに噛合させる位置に、前記切換板を係止し、前記ピックアップがディスク再生時の動作範囲を超えて移動したとき該ピックアップに押されて前記係合部の前記被係合部に対する係合を解除するロック部材(82)と、
前記係合部を前記被係合部に係合させる方向へ前記ロック部材を付勢するばね部材(S)と、
で構成されることを特徴とする請求項1に記載のディスク再生装置の動作切換機構。
【請求項3】
前記切換板は回動自在で、その回動支点(121)と前記切換ギヤの軸心とを結ぶ線(Y)を挟んで、前記第一作動ギヤ側の端部に前記被係合部、前記第二作動ギヤ側の端部に前記当接部を有することを特徴とする請求項2に記載のディスク再生装置の動作切換機構。

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図12】
image rotate

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2009−158049(P2009−158049A)
【公開日】平成21年7月16日(2009.7.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−337824(P2007−337824)
【出願日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【出願人】(000108786)タナシン電機株式会社 (33)
【Fターム(参考)】