説明

ディスク再生装置

【課題】操作入力に基づいて所望の時刻が指定されたとき、その時刻に対応するフレームが存在するセクターのアドレスを正確に求めることができるディスク再生装置を提供する。
【解決手段】バッファメモリ16に記憶された各曲の開始アドレスおよび開始タイムコードをCPU20に取り込み、指定された曲の圧縮データを復号したときの1フレームを構成するために必要なセクター数を演算し、演算されたセクター数に基づいて指定された時刻のフレームが存在するセクターのアドレスを求める。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスク媒体に記録されたデータを読み出して再生するディスク再生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、再生専用の音楽CDであるCDDA(Compact Disc Digital Audio)(例えば特許文献1参照)よりも高帯域な音声データが記録されたSuperAudioCDが注目されている。SuperAudioCDには、例えば、2チャンネルの音声データとともに、マルチチャンネルの音声データが記録されている。2チャンネルの音声データは、圧縮されない場合があるが、マルチチャンネルの音声データは、そのデータ量が大きいため、圧縮され記録されている。2チャンネルおよびマルチチャンネルの音声データの先頭には、それぞれのヘッダー情報であるTOC(Table of Contents)情報が記録されている。TOC情報は、各曲(トラック)の開始アドレス、開始タイムコード等から構成されている。
【特許文献1】特公平6−82512号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、SuperAudioCDを再生する従来のディスク再生装置では、ある曲(トラック)を再生する場合には、TOC情報からその曲の開始アドレスを検出し、その曲の頭出しを行なうが、ある曲の途中から再生する場合には、その正確な時刻(フレーム)のアドレスを検出するのが難しいといった問題があった。CDDAの場合には、13.3msec相当の1フレームの音声データがセクター単位に記録され、各フレームには、それぞれタイムコードが付加されているため、タイムコードを検出することにより任意の時刻(フレーム)の音声データを再生することができる(例えば特許文献1参照)。これに対し、SuperAudioCDに記録された音声データは、圧縮されているため、そのタイムコードを検出することができない。ある曲の途中の時刻が操作入力された場合には、その時刻に対し十分な余裕をもった先頭側の音声データから再生するようにしていたため、不必要な前の音声が出力されたり、応答時間がかかるといった問題があった。
【0004】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであり、その目的は、操作入力に基づいて所望の時刻が指定されたとき、その時刻に対応するフレームが存在するセクターのアドレスを正確に求めることができるディスク再生装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明のディスク再生装置は、フレーム単位で構成されたプレーンデータを複数のトラック毎に異なる圧縮率で圧縮した圧縮データと、各トラックの開始アドレスおよび開始タイムコードを含むヘッダー情報とが記録されたディスクから前記ヘッダー情報および前記圧縮データをセクター単位に読み出す読出手段と、前記読出手段により読み出されたヘッダー情報および圧縮データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたヘッダー情報に基づいて前記記憶手段に記憶された圧縮データを読み出し、読み出された圧縮データを復号して再生するとともに、前記読出手段の動作を制御するシステム制御手段とを備えたディスク再生装置であって、前記システム制御手段は、プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報が入力されたとき、前記記憶手段に記憶された各トラックの開始アドレスおよび開始タイムコードに基づいて、それぞれのトラックの圧縮データを復号したときの1フレームを構成するために必要なセクター数を演算するセクター数演算手段と、前記セクター数演算手段により演算されたセクター数に基づいて、前記プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報に対応するフレームを含む圧縮データのアドレスを演算するアドレス演算手段とを有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0006】
本発明のディスク再生装置によれば、プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報が入力されたとき、前記記憶手段に記憶された各トラックの開始アドレスおよび開始タイムコードに基づいて、それぞれのトラックの圧縮データを復号したときの1フレームを構成するために必要なセクター数がセクター数演算手段により演算され、この演算されたセクター数に基づいて、前記操作情報に対応するフレームを含む圧縮データのアドレスがアドレス演算手段により演算される。したがって、操作入力に基づいて所望の時刻が指定されたとき、その時刻に対応するフレームが存在するセクターのアドレスを正確に求めることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上記目的を達成するため、ディスクに記録されたヘッダー情報に含まれる各曲(トラック)の開始アドレスおよび開始タイムコードに基づいて、それぞれのトラックの圧縮データを復号したときの1フレームを構成するために必要なセクター数を演算し、この必要なセクター数に基づいて任意の時刻のフレームが存在するセクターのアドレスを求めるように本発明のディスク再生装置を構成する。
【実施例1】
【0008】
図1は、実施例1のディスク再生装置の概略構成を示す図である。
図1に示すように、実施例1のディスク再生装置は、SuperAudioCD10を再生するプレーヤである。SuperAudioCD10には、例えば、音楽を構成する音声データが曲(トラック)毎に分割されて記録されている。各曲はそれぞれ異なる圧縮率でにより圧縮されている。音楽を構成する音声データの先頭には、ヘッダー情報であるTOC(Table of Contents)情報が記録されている。TOC情報は、各曲の先頭のアドレスや、各曲のタイムコード等により構成されている。ヘッダー情報および各曲の音声データは、SuperAudioCDのセクター単位に記録されている。圧縮前の音声データ(プレーンデータ)は、13.3msec(1/75sec)のフレーム単位に構成されている。圧縮率が最大のときには、1セクターに7フレームが記録され、圧縮率が最小のときには、16セクターに1フレームが記録される。
【0009】
図1に示すように、ディスク再生装置は、ピックアップ11、RFアンプ12、サーボコントーラ13、ECC(Error Correction Code)14、メモリコントローラ15、バッファメモリ16、DSD(Digital Stream Digital)17、DAC(Digital Analog Converter)18、操作表示部19およびCPU20を備える。
【0010】
ピックアップ11は、SuperAudioCD10に記録された音声信号をセクター単位で読み出す。RFアンプ12は、ピックアップ11により読み出された音声信号を増幅する。サーボコントローラ13は、SuperAudioCD10を回転駆動するとともに、ピックアップ11のトラッキングを駆動する。ECC14は、RFアンプ12により増幅された音声信号をデジタルの音声データに変換するとともに、音声データに誤り訂正を行なう。メモリコントローラ15は、ECC14から出力された音声データをバッファメモリ16に一時的に記憶する。
バッファメモリ16は、例えば、DRAMからなる。DSD17は、バッファメモリ16に記憶された圧縮された音声データを復号する。DAC(Digital Analog Converter)18は、DSD17により復号された音声データをアナログの音声信号に変換し、音声を出力する。操作表示部19は、再生、停止、早送り等の操作情報を入力するとともに、曲や時刻等の状態情報を表示する。CPU20は、RFアンプ12、サーボコントーラ13、ECC14、メモリコントローラ15、DSD17および操作表示部19と相互に接続され、装置全体を制御する。
【0011】
SuperAudioCD10の再生時には、SuperAudioCD10に記録された音声信号がピックアップ11により読み出され、RFアンプ12により増幅され、ECC14により音声データに変換され、バッファメモリ16に一旦記憶された後、DSD17により復号され、DAC18により音声信号に変換されて出力される。SuperAudioCD10のTOC情報および各曲の音声データは、ともにバッファメモリ16に記憶される。まず、TOC情報がバッファメモリ16に記憶される。次に、TOC情報に含まれる必要な情報がCPU20に取り込まれる。次に、各曲の音声データがバッファメモリ16に記憶される。そして、各曲の音声データがバッファメモリ16から読み出される。SuperAudioCD10およびバッファメモリ16のアクセスは、SuperAudioCD10のセクター単位で行なわれる。
【0012】
指定された曲から再生する動作を説明する。
操作表示部19によりある曲(トラック)が指定されると、まず、SuperAudioCD10に記録されたTOC情報がピックアップ11により読み出され、バッファメモリ16に記憶され、CPU20により、バッファメモリ16に記憶されたTOC情報に含まれる、指定された曲の開始アドレスが取得される。そして、CPU20により、各部が制御され、SuperAudioCD10の指定された曲の頭出しが行なわれ、再生が開始される。
【0013】
指定された曲の途中から再生する動作を図2および図3を用いて説明する。
図2に示されるように、操作表示部19によりある曲の時刻(例えば、1曲目の00分10秒)が指定されると、CPU20により、バッファメモリ16に記憶されたTOC情報に含まれる、指定された曲の開始アドレスおよび開始タイムコード、次の曲の開始アドレスおよび開始タイムコードが取得される。そして、CPU20により、指定された時刻のフレームが含まれるセクターのアドレスが演算される。
【0014】
まず、2曲目の開始アドレス(40000)から1曲目の開始アドレス(30000)が減算され、1曲目のセクター数(10000)が演算される。次に、2曲目の開始タイムコード(00分20秒00フレーム)から1曲目の開始タイムコード(00分00秒00フレーム)が減算され、1曲目の再生時間(20×75フレーム=1500フレーム)が演算される。
【0015】
次に、1曲目のセクター数(10000)が1曲目の再生時間(1500)により除算され、1フレームを構成するために必要なセクター数(6.6…)が演算される。次に、指定時刻(1曲目の00分10秒=750フレーム)にセクター数(6.6.…)が乗算され、1曲目の開始時刻から指定時刻までのセクター数(750×6.6…=5000セクター)が演算される。次に、このセクター数(5000セクター)に1曲目の開始アドレス(30000)が加算され、指定時刻(1曲目の00分10秒)に対応するフレームが含まれるセクターのアドレス(35000)が演算される。
【0016】
1フレームを構成するために必要なセクター数は、整数値とは限らないので、図3に示されるように、指定曲の相対アドレス(セクター数)を横軸に、相対時間(フレーム数)を縦軸にとり、傾きが圧縮率を意味する直線グラフを生成し、指定曲の開始時刻から指定時刻までのセクター数を直線補間するように演算するとよい。
【0017】
このように、本ディスク再生装置によれば、操作表示部19により指定された時刻のフレームが存在するセクターのアドレスをCPU20の演算により正確に求めることができる。
【0018】
なお、ここでは、操作表示部19により曲の途中から再生を開始する例を示したが、操作命令はこれに限るものではない。例えば、ある区間の開始時刻および終了時刻を指定して繰り返し再生するとき、入力された開始時刻および終了時刻のそれぞれのフレームが含まれるセクターを求める場合にも有効である。
【0019】
次に、早送りまたは早戻しの高速再生の動作を図4に示す。
操作表示部19の図示しない早送りボタンが押下されると、まず、CPU20によりバッファメモリ16に記憶された各曲の開始アドレスおよび開始タイムコードが読み出され(ステップS1)、各曲の1フレームを構成するために必要なセクター数が演算され(ステップS2)。そして、CPU20により、各曲のそれぞれに間引くセクター数が演算される。1フレームを構成するために必要なセクター数が多い場合には、圧縮率が低いので、間引くセクター数は多い。1フレームを構成するために必要なセクター数が少ない場合には、圧縮率が高いので、間引くセクター数は少ない(ステップS3)。次に、CPU20により、バッファメモリ16の早送りのための先頭セクターのアドレスが演算され(ステップS4)、CPU20により、バッファメモリ16の後続するセクターに対し、各曲の間引くセクター数に従って有効または無効が設定される(ステップS5)。次に、CPU20により、バッファメモリ16の前記先頭セクターから、無効に設定されたセクターが飛ばされ、有効なセクターのみが順次に読み出され、高速再生が行なわれる(ステップS6)。
【0020】
前述のように、1フレームを構成するために必要なセクター数は、整数値とは限らないので、図3に示されるように、曲の相対アドレス(セクター数)を横軸に、相対時間(フレーム数)を縦軸にとり、傾きが圧縮率を意味する直線グラフを生成し、有効または無効にするセクターのアドレスを直線補間により演算するとよい。
【0021】
図5は、ディスク装置の高速再生動作の一例を示す図である。図6は、従来のディスク装置の高速再生動作の一例を示す図である。
図6に示されるように、従来のディスク再生装置では、一定のセクター毎に間引きされて復号されると、アドレスが連続するフレーム数が変動し、ある曲では、間延びした音声が再生され、他の曲では小刻みな音声が再生され、使用者に違和感を与えてしまう。
【0022】
図5に示されるように、実施例1のディスク再生装置では、高速再生時には、例えば、1曲目は2セクター毎、2曲目は3セクター毎に、3曲目は5セクター毎に有効および無効が設定され、バッファメモリ16から有効セクターが間引かれて読み出される。DSD17により復号されると、アドレスが連続する有効セクター全体から、いずれも5フレームの音声データが復号され、DAC18により一定の音声が出力される。
【0023】
このように、ディスク再生装置によれば、高速再生時には、各曲の圧縮データを復号したときの1フレームを構成するために必要なセクター数を演算する。必要なセクター数が多い場合には、間引くセクター数を多くし、必要なセクター数が少ない場合には、間引くセクター数を少なくし、バッファメモリ16から間引いて読み出される1つまたはアドレスが連続する複数の有効セクターのそれぞれに含まれるフレーム数を一定に制御する。したがって、その音声出力を一定にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】実施例1の光ディスクの記録面を示す図である。
【図2】指定された曲の圧縮データの例を示す図である。
【図3】指定された曲の相対アドレスおよび再生時間の関係を示す図である。
【図4】ディスク再生装置の高速再生の動作を示すフローチャートである。
【図5】ディスク装置の高速再生動作の一例を示す図である。
【図6】従来のディスク装置の高速再生動作の一例を示す図である。
【符号の説明】
【0025】
10……SuperAudioCD、11……ピックアップ、12……RFアンプ、13……サーボコントーラ、14……ECC(Error Correction Code)、15……メモリコントローラ、16……バッファメモリ、17……DSD(Digital Stream Digital)、18……DAC(Digital Analog Converter)、19……操作表示部、20……CPU。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
フレーム単位で構成されたプレーンデータを複数のトラック毎に異なる圧縮率で圧縮した圧縮データと、各トラックの開始アドレスおよび開始タイムコードを含むヘッダー情報とが記録されたディスクから前記ヘッダー情報および前記圧縮データをセクター単位に読み出す読出手段と、前記読出手段により読み出されたヘッダー情報および圧縮データを記憶する記憶手段と、前記記憶手段に記憶されたヘッダー情報に基づいて前記記憶手段に記憶された圧縮データを読み出し、読み出された圧縮データを復号して再生するとともに、前記読出手段の動作を制御するシステム制御手段とを備えたディスク再生装置であって、
前記システム制御手段は、
プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報が入力されたとき、前記記憶手段に記憶された各トラックの開始アドレスおよび開始タイムコードに基づいて、それぞれのトラックの圧縮データを復号したときの1フレームを構成するために必要なセクター数を演算するセクター数演算手段と、
前記セクター数演算手段により演算されたセクター数に基づいて、前記プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報に対応するフレームを含む圧縮データのアドレスを演算するアドレス演算手段とを有する、
ことを特徴とするディスク再生装置。
【請求項2】
前記プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報は、再生すべきプレーンデータの再生開始時刻であり、前記システム制御手段は、前記アドレス演算手段により演算されたアドレスの圧縮データを前記読出手段により前記ディスクから読み出し、再生を開始することを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項3】
前記プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報は、繰り返し再生すべきプレーンデータの再生開始時刻および再生終了時刻であり、前記システム制御手段は、前記アドレス演算手段により演算された再生開始時刻および再生終了時刻のアドレス間の圧縮データを前記読出手段により前記ディスクから読み出し、繰り返し再生することを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項4】
前記プレーンデータの所望のフレームを指定する操作情報は、早送りまたは早戻しの高速再生情報であり、前記システム制御手段は、前記記憶手段に記憶された圧縮データの再生中に前記早送りまたは早戻しの高速再生が入力されたとき、前記記憶手段から間欠的に読み出される1つまたはアドレスが連続する複数のセクターのそれぞれに含まれるフレーム数が一定になるように、前記セクター数演算手段により演算されたセクター数に基づいて、前記記憶手段に記憶された圧縮データを間引いて間欠的に読み出すことを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。
【請求項5】
前記ディスクは、SuperAudioCD(Super Audio Compact Disc)であり、前記ヘッダー情報は、TOC(Table of Contents)情報であることを特徴とする請求項1記載のディスク再生装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−4518(P2006−4518A)
【公開日】平成18年1月5日(2006.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−179554(P2004−179554)
【出願日】平成16年6月17日(2004.6.17)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】