説明

ディスク装置およびクランプ機構

【課題】ディスク装置内への塵埃の侵入を抑制することができるディスク装置を提供する。
【解決手段】ディスク装置は、ディスク11を保持して回転するターンテーブル57と、このターンテーブル57との間でディスク11を挟持するクランパ60と、クランパ60とターンテーブル57とにより挟持されて回転するディスク11に対し、情報の記録または再生を行う光学ヘッドとを備える。クランパ60は、ディスク11と対向する面と反対側の面において、ディスク11の回転によって発生するディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに対して抵抗となる凸部(突出部)62を有している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ディスクに対して情報の記録または再生を行うディスク装置に関し、特に、ディスクを回転可能に保持するクランプ機構に関する。
【背景技術】
【0002】
ディスク装置では、安定した情報の記録または再生を行うため、ディスク(媒体)の記録面や光ピックアップへの塵埃の付着を防止することが必要である。
【0003】
ここで、近年、ディスクの大容量化に伴い、ディスクのトラックピッチ(隣接する記録トラックの間隔)が狭くなる傾向にある。例えば、CD(Compact Disc)では、トラックピッチが1.6μmであったのに対し、DVD(Digital Versatile Disc)では、トラックピッチが0.74μmまで狭まり、BD(Blu−ray Disc)では、さらに0.32μmまで狭まっている。このようにトラックピッチが狭くなるほど、ディスク装置の再生性能は、塵埃の影響を受けやすくなる。
【0004】
ディスク装置では、ディスクが回転する際に、ディスクの表面近傍に、ディスクの中心から外周に向かう空気の流れが発生する。そのため、ディスク装置の筺体のディスク中心付近に開口部が設けられていると、その開口部からディスク装置内に空気が流入し、空気と共に塵埃が侵入する可能性がある。このようにディスク装置内に塵埃が侵入すると、塵埃がディスクや光ピックアップのレンズに付着し、再生性能を低下させる要因となる。
【0005】
ディスクへの塵埃の付着を防止するため、ターンテーブルの外周にフィンを設け、ディスクの記録面に送風することにより、記録面に付着した塵埃を取り除く技術が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2002−56663号公報(段落0026、図4、図5)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上述した従来のディスク装置では、ディスク装置内への塵埃の侵入を抑制できないため、ディスクの記録面に付着した塵埃を送風により取り除いても、再びディスクの記録面に付着し、または光ピックアップに付着する可能性がある。
【0008】
この発明は、上述のような問題を解決するためになされたものであり、その目的は、ディスク装置内への塵埃の侵入を抑制することができるディスク装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明に係るディスク装置は、ディスクを保持して回転するターンテーブルと、ターンテーブルとの間でディスクを挟持する回転可能なクランパと、クランパとターンテーブルとにより挟持されて回転するディスクに対し、情報の記録または再生を行うヘッドとを備え、クランパは、ディスクと対向する面と反対側の面に、ディスクの回転によって発生するディスクの中心から外周に向かう空気の流れに対して抵抗となる突出部を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
この発明によれば、クランパの突出部により、ディスクの中心から外周に向かう空気の流れに乱れを生じさせることができ、その結果、ディスク装置の開口部からディスク装置内に流入する空気の流量を低減し、これによりディスク装置内への塵埃の侵入を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明の実施の形態1におけるディスク装置を上方から見た斜視図である。
【図2】本発明の実施の形態1におけるディスク装置の記録再生ユニットを上方から見た斜視図である。
【図3】本発明の実施の形態1におけるディスク装置の記録再生ユニットを下方から見た斜視図である。
【図4】本発明の実施の形態1におけるディスク装置の記録再生ユニットを、クランプ板を取り除いて示す斜視図である。
【図5】本発明の実施の形態1におけるクランパを示す斜視図である。
【図6】本発明の実施の形態1におけるディスク装置のクランプ機構を示す断面図である。
【図7】ディスク回転時の空気の流れを示す図である。
【図8】本発明の実施の形態1のクランパの凸部の他の構成例を示す図である。
【図9】本発明の実施の形態1のクランパの他の構成例を示す斜視図である。
【図10】本発明の実施の形態2におけるクランパを含むクランプ機構を示す断面図である。
【図11】本発明の実施の形態2におけるクランパの曲面を説明するための断面図である。
【図12】本発明の実施の形態2におけるクランパの他の構成例を示す断面図である。
【図13】本発明の実施の形態3におけるクランパを示す斜視図である。
【図14】本発明の実施の形態3におけるクランパを示す平面図である。
【図15】本発明の実施の形態3におけるクランパの他の構成例を示す平面図である。
【図16】本発明の各実施の形態の変形例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるディスク装置10を上方から見た斜視図である。図2は、ディスク装置10の記録再生ユニット20を上方から見た斜視図である。図3は、記録再生ユニット20を下方から見た斜視図である。図4は、クランプ機構を取り除いた記録再生ユニット20を示す斜視図である。
【0013】
図1に示すディスク装置10は、筺体12と、筺体12の内部に収容された記録再生ユニット20(図2)とを有している。記録再生ユニット20は、光学ヘッド53(図3)を有し、ディスク11に対して情報の記録または再生(またはその両方)を行うものである。ここでは、ディスク11に記録された情報を再生する場合について説明する。ディスク11は、CD,DVDまたはBDであるが、他の種類のディスクであってもよい。
【0014】
図1において、ディスク11の回転軸の方向を、Z方向とする。Z方向に直交する面(XY面)において、後述するクランプ板58の回動軸の方向を、X方向とする。これらX方向およびZ方向の両方に直交する方向を、Y方向とする。また、Z方向に沿って、光学ヘッド53からディスク11に向かう方向を、+Z方向(上方)とし、その反対方向を−Z方向(下方)とする。また、ディスク11の+Z方向の面(上面)はレーベル面であり、−Z方向の面(下面)は記録面である。
【0015】
記録再生ユニット20は、図3に示すように、支持ベース54を有している。支持ベース54は、XY面に平行な略板状の部材である。支持ベース54には、その下側から複数(例えば3個)のダンパピン31(図4)が圧入されている。ダンパピン31は、筐体12の底板に取り付けられた複数(例えば3個)のオイル封入ダンパ32に保持されており、これにより、支持ベース54が筺体12内で保持されている。
【0016】
図4に示すように、支持ベース54のY方向の一端部の近傍には、ディスク11を中心で保持し、Z方向の回転軸を中心として回転するターンテーブル57が配設されている。ターンテーブル57は、回路基板52上に設けられた円盤型モータ52aの回転軸上に設けられており、円盤型モータ52aと同位相で回転する。支持ベース54には、また、ディスク11の記録面(−Z側の面)に沿って移動してディスク11の情報を読み出す、光ピックアップ53aを搭載した光学ヘッド53が設けられている。
【0017】
図3に示すように、光学ヘッド53を移動させるため、支持ベース54には、ターンテーブル57の近傍から支持ベース54の基端部(ターンテーブル57が設けられた端部と反対側の端部)にかけて延在する送りねじ41が配設され、この送りねじ41と平行にガイド軸42が並設されている。光学ヘッド53は、送りねじ41に螺合するナット部53bと、ガイド軸42に係合する被案内部53cとを有している。送りねじ41がモータ44(後述)により回転すると、送りねじ41とナット部53bとの螺合により、光学ヘッド53がガイド軸42に沿って(すなわちディスク11の記録面に沿って)移動する。
【0018】
支持ベース54には、ターンテーブル57に隣接して、モータ支持部材43が取り付けられている。モータ支持部材43には、上記の送りねじ41を回転させるためのモータ44と、モータ44の駆動力を送りねじ41に伝達するギア列45が設けられている。また、ギア列45の抜け止めとして、カバー46が支持部材43に嵌合している。
【0019】
支持ベース54において、光学ヘッド53の移動範囲に対応する部分には、開口部である情報読み取り窓54dが形成されている。また、支持ベース54のX方向両側には、+Z方向(上方)に折り曲げられた折り曲げ片54cが形成されている。各折り曲げ片54cのY方向端部(ターンテーブル57側と反対側の端部)には、次に説明するクランプ板58を回動可能に支持するための支持孔54eが形成されている。
【0020】
図2に示すように、支持ベース54の上方(+Z方向)には、クランプ板58(クランパアームとも称する)が設けられている。クランプ板58のX方向両側には、−Z方向(下方)に折り曲げられた折り曲げ片58bが形成されており、各折り曲げ片58bには、支持ベース54の上記支持孔54eに係合する軸部58aが形成されている。これにより、クランプ板58は、支持ベース54により、X方向の回動軸を中心として回動可能に支持される。
【0021】
次に、記録再生ユニット20において、ディスク11を回転可能に保持するクランプ機構について説明する。図2に示すように、クランプ板58は、そのY方向一端に回動軸(軸部58a)を有すると共に、Y方向他端に、ディスク11をターンテーブル57に押圧して保持するクランパ60を保持している。クランパ60は、クランプ板58に回転可能に取り付けられており、ターンテーブル57にディスク11を押圧した状態で、これらと共に回転する。
【0022】
また、クランプ板58は、支持ベース54の端部に設けられた引張コイルバネ59(図3)により、クランパ60をターンテーブル57に対して押圧する方向(図1に矢印Bで示す方向)に付勢されている。
【0023】
ディスク11のクランプを解除するときには、クランプ板58は、図示しない駆動機構により、上述した軸部58aを中心として矢印Bと反対の方向に回動し、クランパ60をターンテーブル57から上方に(+Z方向)に離間させる。このとき、クランプ板58が筐体12と干渉しないように、筐体12の天板には、クランプ板58が干渉しない形状の開口部12aが形成されている。
【0024】
本明細書では、クランパ60とターンテーブル57とを有し、ディスク11を挟持して回転可能に保持する機構を、クランプ機構と称する。
【0025】
図5は、実施の形態1におけるクランパ60の形状を示す斜視図である。図6は、実施の形態1におけるクランパ60を含むクランプ機構を示す断面図である。図6に示すように、クランパ60の−Z側の面(ディスク11に対向する面)の外周近傍には、ディスク11のクランプ領域11aに当接する環状の当接部61を備えている。
【0026】
ディスク11のクランプ領域11aは、ディスク11の記録領域よりも内周側に設けられた領域であり、例えば、CDの場合には直径26mm〜33mm、DVDの場合には直径22mm〜33mm、BDの場合には直径23.5mm〜32.5mmの領域である。クランパ60の当接部61とターンテーブル57は、ディスク11のクランプ領域11aを上下に挟み込んで保持する。
【0027】
図5に示すように、クランパ60の+Z側の面(ディスク11と対向する面と反対側の面)の中心部には、上述したクランプ板58に回転可能に保持される回転支持部63が設けられている。
【0028】
さらに、クランパ60の+Z側の面の外周近傍には、円柱形状の凸部62(突出部)が形成されている。より具体的には、複数(ここでは8個)の円柱形状の凸部62が、クランパ60の回転軸Aを中心とする円周に沿って(すなわち回転円周方向に)等間隔に配置されている。凸部62は、ディスク11の回転時に、クランプ板58と干渉しない高さに形成されている。
【0029】
ここでは、凸部62の外径は、例えば3mmであり、高さは、例えば1.5mmである。また、クランパ60の天面(凸部62を除く)とクランプ板58の底面との間には、3.5mm程度の空隙が形成される。
【0030】
ディスク再生時には、図6に示すように、クランパ60とターンテーブル57とがディスク11のクランプ領域11aを挟持し、この状態で円盤型モータ52a(図4)が回転する。ターンテーブル57は、円盤型モータ52aと同位相で回転し、ディスク11はクランパ60と共に、円盤型モータ52aと同位相で回転する。円盤型モータ52aは、ディスク11のトラックピッチに応じた回転数で回転し、ディスク11の記録面と対向する光学ヘッド53(図4)により、ディスク11の記録情報が読み出される。
【0031】
図7は、ディスク11の回転に伴って、ディスク11の表面近傍に発生する空気の流れの一例を示す模式図である。ディスク11がZ方向の回転軸Aを中心に回転すると、図7に示すように、ディスク11の表面近傍には、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れが発生する。
【0032】
ディスク装置10の筐体12の天板には開口部12a(図1)が形成されているため、図7のようなディスク11の中心から外周に向かう空気の流れが発生すると、ディスク11の中心付近において空気が開口部12aから筐体12に流れ込み、これに伴って塵埃が筺体12内に侵入する可能性がある。
【0033】
そこで、本実施の形態では、クランパ60の上面(ディスク11と対向する面と反対側の面)に円柱形状の凸部62を設けている。クランパ60が回転すると、クランパ60に形成された円柱形状の凸部62も回転するため、当該凸部62が、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れ(図7)に対して抵抗となり、当該空気の流れに乱れを生じさせる。これにより、開口部12aから筐体12の内部に流入する空気の流量を低減し、塵埃の筺体12内への侵入を抑制することができる。
【0034】
また、クランパ60の外周側ほど周速度が速いため、凸部62をクランパ60の外周近傍に形成することにより、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに乱れを生じさせる効果が大きくなる。そのため、開口12aから筺体12内に流入する空気の流量を低減する効果が大きくなり、従って筐体12内への塵埃の侵入を抑制する効果が大きくなる。
【0035】
また、複数(ここでは8個)の凸部62を、クランパ60の回転円周方向に等間隔に配置しているため、クランパ60のバランスを良好に保つことができ、これにより、ディスク11を回転させる円盤型モータ52aの負荷の増大を抑制することができる。
【0036】
また、凸部62が、側面(外周面)にエッジを有さない円柱形状であるため、空気がエッジを通過することによる騒音の発生を抑制することができる。
【0037】
さらに、クランパ60に凸部62を設けるだけで、クランプ機構に他の構成要素を追加する必要がないため、ディスク装置10内部への塵埃の侵入を抑制する作用効果を、簡単な構成で実現することができる。
【0038】
以上説明したように、この実施の形態1によれば、クランパ60のディスク11と対向する面と反対側の面に、ディスク11の回転によって発生する空気の流れに対して抵抗となる凸部62を設けることにより、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに乱れを生じさせ、穴部12aから筐体12の内部に流入する空気の流量を低減することができる。そのため、筺体12の内部への塵埃の侵入を抑制することができる。
【0039】
なお、ここでは、クランパ60が円柱形状の凸部62を有する場合について説明したが、他の形状も可能である。但し、四角柱のように側面にエッジを有する形状の場合には、上記のとおり空気がエッジを通過することによる騒音が発生するため、側面(外周面)が曲面であることが好ましい。
【0040】
また、図8(A)に示すように、凸部62の側面(外周面)62aと上面62bとの境界部分に曲面(R)を形成してもよく、また、図8(B)に示すように、凸部62の上面62bを半球等の曲面状に形成してもよい。このように、凸部62を、エッジを有さない形状とすることにより、騒音をさらに抑制することができる。
【0041】
また、図9(A)に示すように、凸部62が、+Z方向に外径が小さくなるように、外周面62aにテーパ(傾斜)を有していてもよい。このようなテーパを設けることにより、+Z方向に向かう空気の流れが増加するため、開口12aから筺体12内に流入する空気の流量を低減する効果が大きくなり、従って筐体12内への塵埃の侵入を抑制する効果が大きくなる。
【0042】
また、ここでは、8個の円柱形状の凸部62を等間隔に配置することとしたが、8個に限定されるものではない。但し、開口12aから筺体12内に流入する空気の流量を十分に低減するためには、3個以上の凸部62を等間隔に配置することが好ましい。
【0043】
また、クランパ60の凸部62は、クランパ60の外周近傍に形成することが好ましいが、これに限定されるものではない。また、例えば、図9(B)に示すように、クランパ60の外周近傍の凸部62よりも内側に、クランパ60の回転軸Aを中心とする円周上に等間隔に3個以上の凸部を追加すれば、筺体12の内部に流入する空気の流量を低減させる効果がさらに大きくなる。
【0044】
実施の形態2.
図10は、実施の形態2におけるディスク装置のクランパ70を含むクランプ機構を示す断面図である。実施の形態1と同様の構成要素には、同一の符号を付す。
【0045】
図10に示すように、この実施の形態2におけるクランパ70の+Z側の面(ディスク11と対向する面と反対側の面)は、クランプ板58に支持される回転支持部73を除き、凹状の曲面72を構成している。この曲面72は、クランパ70の回転軸Aを中心とした回転対称な曲面である。
【0046】
図11は、クランパ70の曲面72の形状を説明するための図である。曲面72は、クランパ70の+Z側で、且つクランパ70の回転軸A上に位置する任意の点Pを中心とした球面である。ここでは、球の半径は、例えば120mmである。他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0047】
ディスク再生時には、図10に示すように、クランパ70とターンテーブル57とがディスク11のクランプ領域11aを挟持し、この状態で円盤型モータ52a(図4)が回転する。ターンテーブル57は、円盤型モータ52aと同位相で回転し、ディスク11はクランパ70と共に、円盤型モータ52aと同位相で回転する。円盤型モータ52aは、ディスク11のトラックピッチに応じた回転数で回転し、ディスク11の記録面と対向する光学ヘッド53(図4)により、ディスク11の記録情報が読み出される。
【0048】
ディスク11が回転すると、実施の形態1で説明したようにディスク11の中心から外周に向かう空気の流れが形成されようとするが、クランパ70が凹状の曲面72を有しており、外周側ほど高さ(+Z方向の突出量)が高くなるため、+Z方向に向かう空気の流れを生じさせることができる。その結果、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに乱れを生じさせ、穴部12aから筐体12の内部に流入する空気の流量を低減することができる。
【0049】
以上説明したように、この実施の形態2によれば、クランパ70のディスク11と対向する面と反対側の面に凹状の曲面72を設けることにより、ディスク11の回転によって発生する空気の流れに乱れを生じさせることができ、穴部12aから筐体12の内部に流入する空気の流量を低減することができる。その結果、筺体12の内部への塵埃の侵入を抑制することができる。
【0050】
特に、曲面72が、クランパ70の+Z側でクランパ70の回転軸上に位置する任意の点Pを中心とした球面であるため、加工が容易であり、また、不連続な部分がないため騒音の発生を抑制することができる。
【0051】
図12は、実施の形態2のクランパ70の別の構成例を示す断面図である。図12に示す構成例では、曲面72は、Z軸上に短軸を有し、Z軸に直交する方向に長軸を有する楕円形を、Z軸を中心として回転させた回転体面の下側(−Z側)半分で構成されている。曲面72がこのような形状を有することにより、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに乱れを生じさせることができ、筺体12の開口部12aから流入する空気の流量を低減することができる。加えて、図10および図11に示した球面形状に比べて、クランパ70の慣性モーメントを小さくすることができるため、円盤型モータ52aの負荷を低減することができる。
【0052】
なお、クランパ70の曲面72は、上述した球面形状(図10,図11)または楕円形を回転させた形状(図12)に限らず、他の凹状の曲面、例えば円錐面であってもよい。但し、上述した球面形状等(図10〜図12)は、外周側ほど角度(勾配)が急になるため、+Z方向に向かう空気の流れを生じさせる効果が大きい点で有利である。
【0053】
実施の形態3.
図13および図14は、実施の形態3におけるディスク装置のクランパの構成を示す斜視図および平面図である。実施の形態1または2で説明した構成要素と同一の構成要素には、同一の符号を付す。
【0054】
図13に示すように、実施の形態3におけるクランパ80は、+Z側の面(ディスク11と対向する面と反対側の面)に、複数のリブ82(突出部)を有している。ここでは、8個のリブ82が、クランパ80の回転円周方向に等間隔で配置されている。各リブ82は、クランパ80の回転円周方向に対して交差するように(より好ましくは、略放射状に)延在している。より具体的には、リブ82は、クランパ80の外周近傍から内周に向けて所定の長さに延在し、内周側と外周側にそれぞれ端面82a,82bを有している。また、リブ82は、ディスク11の回転時にクランプ板58と干渉しない高さに形成されている。
【0055】
図14の平面図に示すように、クランパ80の回転方向(R方向)におけるリブ82の前面82dは、クランパ80の外周に近づくほど、クランパ80の回転方向(R方向)に先行するように形成されている。言い換えると、リブ82の前面82dに沿って線分Tを規定し、この線分Tの延長線がクランパ80の外周と交差する点をSとし、この点Sでのクランパ80の外周の接線をQとすると、線分Tと接線Qとのなす角度Dが鈍角(>90°)となるように、リブ82が形成されている。
【0056】
図13において、リブ82の長さLは、例えば7mmであり、幅Wは、例えば1.5mmであり、高さHは、例えば1mmである。なお、リブ82のディスク11の回転方向の前面82dのエッジに曲面を形成することが好ましく、クランパ80の回転時の騒音を低減することができる。
【0057】
ディスク再生時には、クランパ80とターンテーブル57とがディスク11のクランプ領域11aを挟持し、この状態で円盤型モータ52a(図4)が回転する。ターンテーブル57は、円盤型モータ52aと同位相で回転し、ディスク11はクランパ80と共に、円盤型モータ52aと同位相で回転する。円盤型モータ52aは、ディスク11のトラックピッチに応じた回転数で回転し、ディスク11の記録面と対向する光学ヘッド53(図4)により、ディスク11の記録情報が読み出される。
【0058】
ディスク11が回転すると、実施の形態1で説明したようにディスク11の中心から外周に向かう空気の流れが形成されようとするが(図7参照)、クランパ80のリブ82も同時に回転するため、このリブ82がディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに対して抵抗となり、当該空気の流れに乱れを生じさせる。その結果、穴部12aから筐体12の内部に流入する空気の流量を低減し、筺体12内への空気の流入に伴う塵埃の侵入を抑制することができる。
【0059】
また、クランパ80の回転方向(R方向)におけるリブ82の前面82dが、クランパ80の外周に近づくほどクランパ80の回転方向(R方向)に先行するように形成されている(すなわち、上述した線分Tと接線Qとのなす角度Dが鈍角である)ため、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに対する抵抗が大きく、従って空気の流れに乱れを生じさせる効果が大きい。その結果、筺体12の開口部12aから筐体12内に流入する空気の流量をさらに低減し、より効果的に塵埃の侵入を抑制することができる。
【0060】
また、実施の形態1でも説明したように、クランパ80の外周側ほど周速度が速いため、リブ82をクランパ80の外周近傍に形成することにより、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに乱れを生じさせる効果が大きくなる。
【0061】
また、複数(ここでは8個)のリブ82を、クランパ80の回転円周方向に等間隔に配置しているため、クランパ80のバランスを良好に保つことができる。そのため、ディスク11を回転させる円盤型モータ52aの負荷の増大を抑制することができる。なお、ここでは8個のリブ82を設けているが、8個に限定されるものではない。但し、開口12aから筺体12内に流入する空気の流量を十分に低減するためには、3個以上のリブ82を等間隔に配置することが好ましい。
【0062】
以上説明したように、この実施の形態3によれば、クランパ80のディスク11と対向する面と反対側の面に、ディスク11の回転によって発生する空気の流れに対して抵抗となるリブ82を設けることにより、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに乱れを生じさせ、穴部12aから筐体12の内部に流入する空気の流量を低減することができる。その結果、筺体12の内部への塵埃の侵入を抑制することができる。
【0063】
図15は、実施の形態3におけるリブ82の他の構成例を示す斜視図である。図15に示す変形例では、クランパ80の回転方向(R方向)におけるリブ82の前面82dは、クランパ80から遠ざかるにつれて(すなわち+Z方向に進むにつれて)リブ82の幅Wが狭くなるようなテーパ85(傾斜)を有している。このようなテーパ85を設けることにより、ディスク11の中心から外周に向かう空気の流れに対する抵抗を大きくすることに加えて、テーパ85に沿って+Z方向の空気の流れを発生させることができる。その結果、筺体12の開口部12aから筐体12内に流入する空気の流量をより効果的に低減し、塵埃の侵入を抑制することができる。
【0064】
本発明は、上述した実施の形態1〜3に限定されるものではなく、適宜、変形が可能である。
例えば、上述した実施の形態1〜3では、クランパ60,70,80は、それぞれターンテーブル57との間で、ディスク11の内周側のクランプ領域11aを挟持している。しかしながら、クランパ60,70,80は、ディスク11の記録面(下面)と反対側のレーベル面に当接するため、クランパ60,70,80がクランプ領域11aよりも外周側に当接しても、情報の読み取りに影響はない。
【0065】
そこで、クランパ60,70,80が、ディスク11のクランプ領域11aよりも外周側の領域にも当接するよう、クランパ60,70,80の直径を拡大してもよい。図16には、一例として、実施の形態1におけるクランパ60の直径を拡大した変形例を示す。このように直径を拡大したクランパ60の外周近傍に凸部62を設ければ、開口部12aから筐体12内に流入する空気の流量をより効果的に低減し、塵埃の侵入をより効果的に抑制することができる。実施の形態2,3のクランパ70,80についても同様である。
【0066】
本発明は、例えば、ディスクに対して情報の記録、再生またはその両方を行うディスク装置(例えば、車載用のディスク装置)に適用することができる。
【符号の説明】
【0067】
10 ディスク装置、 11 ディスク、 11a クランプ領域、 12 筐体、 12a 穴、 20 記録再生ユニット、 31 ダンパピン、 32 ダンパ、 53 光学ヘッド(ヘッド)、 54 支持ベース、 54d 読み取り窓、 54e 孔、 57 ターンテーブル、 58 クランプ板、 58a 軸部、 58d 折り曲げ片、 59 引張コイルバネ、 52 回路基板、 52a 円盤型モータ、 53 読取手段、 41 送りねじ軸、 42 ガイド軸、 43 支持部材、 44 モータ、 45 ギア列、 46 カバー、 60 クランパ、 62 凸部(突出部)、 63 回転支持部、 70 クランパ、 72 曲面、 73 回転支持部、 80 クランパ、 82 リブ(突出部)、 82d 前面、 83 回転支持部、 85 テーパ。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを保持して回転するターンテーブルと、
前記ターンテーブルとの間で前記ディスクを挟持する回転可能なクランパと、
前記クランパと前記ターンテーブルとにより挟持されて回転する前記ディスクに対し、情報の記録または再生を行うヘッドと
を備え、
前記クランパは、前記ディスクと対向する面と反対側の面に、前記ディスクの回転によって発生する前記ディスクの中心から外周に向かう空気の流れに対して抵抗となる突出部を有することを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
前記突出部は、前記クランパの外周近傍に配置されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項3】
複数の前記突出部が、前記クランパの回転円周方向に等間隔に配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載のディスク装置。
【請求項4】
前記突出部は、略円柱形状を有することを特徴とする請求項1から3までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項5】
前記突出部の突出方向の先端に、曲面を有することを特徴とする請求項4に記載のディスク装置。
【請求項6】
前記突出部は、その突出方向に進むにつれて外径が小さくなる形状を有していることを特徴とする請求項1から5までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項7】
前記クランパの前記ディスクと対向する面と反対側の面に、凹状の曲面が形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項8】
前記クランパの前記凹状の曲面は、前記クランパの回転軸を中心とする回転体面であることを特徴とする請求項7に記載のディスク装置。
【請求項9】
前記クランパの前記凹状の曲面は、前記クランパの回転軸上に中心を有する球面であることを特徴とする請求項8に記載のディスク装置。
【請求項10】
前記クランパの前記凹状の曲面は、前記クランパの回転軸上に短軸を有し、当該回転軸に直交する方向に長軸を有する楕円を、前記クランパの回転軸を中心として回転させた回転体面であることを特徴とする請求項8に記載のディスク装置。
【請求項11】
前記突出部は、前記クランパの回転円周方向と交差するように延在するリブであることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置。
【請求項12】
前記リブは、前記クランパの外周近傍から内周側に所定の長さで延在することを特徴とする請求項11に記載のディスク装置。
【請求項13】
複数の前記リブが、前記クランパの回転円周方向に等間隔に配置されていることを特徴とする請求項11または12に記載のディスク装置。
【請求項14】
前記リブの前記クランパの回転方向の前面は、前記クランパの外周に近づくほど、前記クランパの回転方向に先行するように形成されていることを特徴とする請求項11から13までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項15】
前記リブの前記クランパの回転方向の前面は、前記リブの突出方向に進むにつれて前記リブの幅が減少するような傾斜を有することを特徴とする請求項11から14までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項16】
前記クランパが、前記ディスクのクランプ領域よりも外周側の領域にも当接するよう構成されていることを特徴とする請求項1から15までのいずれか1項に記載のディスク装置。
【請求項17】
ディスクを保持して回転するターンテーブルと、
前記ターンテーブルとの間で前記ディスクを挟持する回転可能なクランパと
を備えたクランプ機構であって、
前記クランパは、前記ディスクと対向する面と反対側の面に、前記ディスクの回転によって発生する前記ディスクの中心から外周に向かう空気の流れに対して抵抗となる突出部を有することを特徴とするディスク装置。



【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公開番号】特開2013−4119(P2013−4119A)
【公開日】平成25年1月7日(2013.1.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−131159(P2011−131159)
【出願日】平成23年6月13日(2011.6.13)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】