ディスク装置用フレキシャ
【課題】軽量でかつ電気的特性に優れたディスク装置用フレキシャを提供する。
【解決手段】フレキシャ40は、ステンレス鋼からなるメタルベース50と、絶縁層52と、銅製の一対の導体55,56とを備えている。メタルベース50の長手方向の一部に、開口70を含む開口領域S1と、開口70を含まない非開口領域S2とが形成されている。一方の導体55は、導体55の長手方向に沿うスリット80と、スリット80の両側に位置する帯状部81,82と、帯状部81,82どうしをつなぐ接続部83とを備えている。他方の導体56は、導体56の長手方向に沿うスリット90と、スリット90の両側に位置する帯状部91,92と、帯状部91,92どうしをつなぐ接続部93とを備えている。これらの導体55,56は、メタルベース50の開口領域S1と非開口領域S2とにわたって配置されている。
【解決手段】フレキシャ40は、ステンレス鋼からなるメタルベース50と、絶縁層52と、銅製の一対の導体55,56とを備えている。メタルベース50の長手方向の一部に、開口70を含む開口領域S1と、開口70を含まない非開口領域S2とが形成されている。一方の導体55は、導体55の長手方向に沿うスリット80と、スリット80の両側に位置する帯状部81,82と、帯状部81,82どうしをつなぐ接続部83とを備えている。他方の導体56は、導体56の長手方向に沿うスリット90と、スリット90の両側に位置する帯状部91,92と、帯状部91,92どうしをつなぐ接続部93とを備えている。これらの導体55,56は、メタルベース50の開口領域S1と非開口領域S2とにわたって配置されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報処理装置のためのディスク装置のサスペンションに使用されるフレキシャに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームに、ディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ロードビーム(load beam)と、ロードビームに重ねて配置されるフレキシャ(flexure)などを有している。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部にスライダを含む磁気ヘッドが取付けられている。磁気ヘッドには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらサスペンションとフレキシャなどによってヘッドジンバルアセンブリが構成されている。
【0004】
前記フレキシャは、要求される仕様に応じて様々な形態のものが実用化されている。その一例として、配線付フレキシャ(flexure with conductors)が知られている。このフレキシャは、薄いステンレス鋼板からなるメタルベースと、このメタルベース上に形成されたポリイミド等の電気絶縁材料からなる絶縁層と、この絶縁層上に形成された銅からなる複数対の導体などを含んでいる。これら導体の一端は磁気ヘッドに設けられた素子(例えばMR素子)に電気的に接続されている。導体の他端は、アンプ等の電気回路に電気的に接続されている。これらの導体はサスペンションの配線部を構成している。アンプの消費電力を小さくするには、導体のインピーダンスを小さくする必要がある。また単位時間当たりに伝送する信号量を多くするには、高周波帯域化が望まれている。
【0005】
例えば特許文献1に開示されているフレキシャでは、メタルベースに複数の開口部が導体に沿って所定間隔で形成されている。これら開口部により、配線部の渦電流損を小さくすることができるため、高周波数帯域での減衰が小さくなる。特許文献2に開示されているサスペンションでは、ロードビームに複数の開口部が導体に沿って所定間隔で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−282624号公報
【特許文献2】米国特許第6714385明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスク装置の小形化や高記録密度化に伴い、サスペンションがさらに小形化される傾向がある。フレキシャの配線部の低インピーダンス化を図るには、導体の幅が大きいほどよい。このためサスペンションが小形になるほど、サスペンション質量に対して配線部の質量が占める割合が大きくなり、サスペンションの動的特性が配線部によって影響を受けやすくなる。このため配線部を軽量化することが望まれている。
【0008】
しかし導体の幅を小さくするとインピーダンスが増加し、消費電力が増加する原因となる。また導体の幅を単に小さくすると、配線部の形態によっては高周波数帯域での減衰が大きくなってデータの高速伝送に適さなくなることがある。例えば特許文献1に開示されているように配線部のメタルベースに開口部を形成したとしても、導体が従来と同じであれば配線部の軽量化率が小さい。特許文献2のようにロードビームに開口部を設けても、フレキシャの配線部を軽くすることはできない。
【0009】
従ってこの発明は、軽量でかつ電気的特性の優れたディスク装置用フレキシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ディスク装置用サスペンションのロードビームに固定されかつ磁気ヘッドを設けるためのジンバル部を有するフレキシャであって、導電材料からなる板状のメタルベースと、電気絶縁性の材料からなり前記メタルベース上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に前記メタルベースの長手方向に沿って配置されかつ前記磁気ヘッドに電気的に接続される一対の導体とを含んでいる。また前記メタルベースの長手方向の一部に、開口を有する開口領域と、開口を有しない非開口領域とが形成されている。また、前記一対の導体の少なくとも一方は、該導体の長手方向に延びるスリットと、該スリットの両側で該スリットに沿って延びる帯状部と、帯状部どうしを電気的につなぐ接続部とを有している。そして前記スリットを有する前記導体が前記メタルベースの前記開口領域と前記非開口領域とにわたって配置されている。前記スリットと接続部は、それぞれ前記導体の長手方向に所定間隔で複数形成されている。前記帯状部は、前記導体の長手方向に連続している。
【0011】
前記スリットが前記導体の幅方向に複数形成されていてもよいし、前記スリットが前記導体の長手方向に複数形成されていてもよい。また前記一対の導体のそれぞれに、前記スリットと、前記帯状部と、前記接続部とが形成されていてもよい。また前記スリットの内側に、前記メタルベースと前記ロードームとを互いに固定するための溶接部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配線部を備えたフレキシャの電気的特性(例えば周波数帯域)を悪化させることなくフレキシャを軽量化することができる。このためサスペンション質量に対してフレキシャの配線部が占める質量の割合を小さくすることができ、フレキシャの配線部がサスペンションの動的特性に及ぼす影響を少なくすることができる。例えば、サスペンションの軽量化によってシーク特性などの動的特性が向上するとともに、サスペンションの耐衝撃特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】サスペンションを備えたディスク装置の一例を示す斜視図。
【図2】図1に示されたディスク装置の一部の断面図。
【図3】本発明の1つの実施形態に係るフレキシャを有するディスク装置用サスペンションの平面図。
【図4】図3に示されたサスペンションのフレキシャの第1の部分の横断面図。
【図5】図4に示された第1の部分の斜視図。
【図6】図3に示されたフレキシャの第2の部分の横断面図。
【図7】図3に示されたフレキシャの第3の部分の横断面図。
【図8】実施例1の導体サンプルの平面図。
【図9】実施例2の導体サンプルの平面図。
【図10】実施例3の導体サンプルの平面図。
【図11】実施例4の導体サンプルの平面図。
【図12】実施例5の導体サンプルの平面図。
【図13】実施例6の導体サンプルの平面図。
【図14】実施例7の導体サンプルの平面図。
【図15】実施例8の導体サンプルの平面図。
【図16】実施例9の導体サンプルの平面図。
【図17】実施例10の導体サンプルの平面図。
【図18】実施例11の導体サンプルの平面図。
【図19】比較例1の導体サンプルの平面図。
【図20】比較例2の導体サンプルの平面図。
【図21】比較例3の導体サンプルの平面図。
【図22】比較例4の導体サンプルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の1つの実施形態に係るディスク装置用フレキシャについて、図1から図7を参照して説明する。
図1に示すハードディスク装置(HDD)10は、ケース11と、スピンドル12を中心に回転するディスク13と、ピボット軸14を中心に旋回可能なキャリッジ15と、キャリッジ15を駆動するためのポジショニング用モータ16などを有している。ケース11は、図示しない蓋によって密閉される。
【0015】
図2はディスク装置10の一部を模式的に示す断面図である。図2に示されるように、キャリッジ15にアーム17が設けられている。アーム17の先端部にサスペンション20が取付けられている。サスペンション20の先端に、磁気ヘッド21を構成するスライダが設けられている。ディスク13が高速で回転すると、ディスク13と磁気ヘッド21(スライダ)との間にエアベアリングが形成される。
【0016】
ポジショニング用モータ16によってキャリッジ15を旋回させると、サスペンション20がディスク13の径方向に移動することにより、磁気ヘッド21がディスク13の所望トラックまで移動する。磁気ヘッド21には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子が設けられている。この素子によって、ディスク13に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。
【0017】
図3にサスペンション20の一例が示されている。このサスペンション20は、ベースプレート30と、ロードビーム31と、薄いばね板からなるヒンジ部材32と、配線付フレキシャ(flexure with conductors)40などを備えている。これ以降、配線付フレキシャ40を単にフレキシャと称する。ベースプレート30のボス部30aは、キャリッジ15のアーム17(図1と図2に示す)に固定される。
【0018】
図3に示されるようにフレキシャ40はロードビーム31に沿って配置されている。フレキシャ40のロードビーム31と重なる部分40aがレーザ溶接等の固定手段によってロードビーム31に固定されている。フレキシャ40の先端部付近に、ジンバル部として機能するタング41が形成されている。タング41に前記磁気ヘッド21が取付けられている。フレキシャ40の後部(テール部)40bはベースプレート30の後方に延びている。フレキシャ40の端子部40cはディスク装置10のためのアンプ(図示せず)に接続される。
【0019】
図4は、フレキシャ40の長手方向の一部(第1の部分)の横断面を示している。図5は、この第1の部分をメタルベース50の厚さ方向の一方側から見た斜視図である。フレキシャ40は、導電材料からなる板状のメタルベース50と、メタルベース50に沿って形成された配線部51とを含んでいる。メタルベース50を構成する導電材料の一例は、ばね性を有する薄いステンレス鋼板である。
【0020】
配線部51は、メタルベース50上に形成された絶縁層52と、絶縁層52上に形成された一対の導体55,56(第1および第2の導体55,56)と、これら導体55,56を覆うカバー57(図4に2点鎖線で示す)を含んでいる。絶縁層52とカバー57とは、ポリイミド等の電気絶縁性の材料からなる。図5ではカバー57が省略されて描かれている。
【0021】
導体55,56の一端は、磁気ヘッド21の書込み用素子(図示せず)に接続されている。導体55,56の他端は、前記端子部40cを介して前記アンプに接続されている。これら導体55,56によって、データ書込み用の回路部材60が構成されている。この回路部材60はメタルベース50の一方の側縁50aに沿って配置されている、前記アンプから供給されるデータ書込み用の信号は、信号線として機能する一対の導体55,56を介して、磁気ヘッド21に供給される。メタルベース50の他方の側縁50bに沿って、データ読取用の一対の導体からなる回路部材61(図3に一部を示す)が配置されている。
【0022】
第1および第2の導体55,56は、互いにほぼ平行に配置されている。導体55,56の一例は、めっき銅からなり、絶縁層52に沿って所定のパターンとなるようにエッチングによって形成されている。メタルベース50の厚さはロードビーム31の厚さよりも小さい。メタルベース50の厚さは、例えば15〜20μmである。ロードビーム31の厚さは、例えば30〜62μmである。導体55,56の厚さの一例は15μm、カバー57は5μmである。絶縁層52の厚さ一例は10μmである。
【0023】
図4において、矢印Aがメタルベース50と導体55,56の厚さ方向である。図5中の矢印Bがメタルベース50と導体55,56の長手方向を示し、矢印Cがメタルベース50と導体55,56の幅方向を示している。図3から図5に示すように、メタルベース50の長手方向の一部(フレキシャ40の第1の部分)には、メタルベース50の一方の側縁50aに沿って、複数の開口70が所定間隔で形成されている。これらの開口70は、書込用の回路部材60に沿って形成されている。この明細書では、メタルベース50の全長のうち、開口70を含む領域を開口領域S1と称し、開口70を含まない領域を非開口領域S2と称している。
【0024】
メタルベース50の他の部分には、メタルベース50の他方の側縁50bに沿って、複数の開口71が形成されている。これらの開口71は、読取用の回路部材61に沿って形成されている。開口70,71は、メタルベース50の材料であるSUS304等のステンレス鋼板をエッチングすることによって形成されている。
【0025】
図6に示すようにメタルベース50の長手方向の他の部分(フレキシャ40の第2の部分)に、開口を有しない非開口領域S2が形成されている。図7はフレキシャの40の第3の部分を示している。この第3の部分には、メタルベース50とロードビーム31とを互いに固定するための溶接部W1が設けられている。溶接部W1は、後述するスリット90の内側に、例えばレーザスポット溶接によって形成されている。スリット90の内側に溶接部W1を配置することにより、スリット90を溶接部W1のためのスペースとして利用できるため、フレキシャ40のデザイン上の自由度が大きくなる。
【0026】
第1の導体55は、導体55の長手方向に形成されたスリット80と、スリット80の両側に位置する帯状部81,82と、帯状部81,82どうしを電気的につなぐ接続部83とを有している。帯状部81,82は、スリット80に沿って、導体55の長手方向に延びている。接続部83は、導体55の幅方向に延びている。帯状部81,82どうしが接続部83によって互いに電気的に導通している。スリット80と接続部83とは、それぞれ導体55の長手方向の複数箇所に形成され、ラダーの形態をなしている。帯状部81,82は、導体55の全長にわたって連続している。
【0027】
第2の導体56は、導体56の長手方向に形成されたスリット90と、スリット90の両側に位置する帯状部91,92と、帯状部91,92どうしを電気的につなぐ接続部93とを有している。帯状部91,92は、スリット90に沿って、導体56の長手方向に延びている。接続部93は、導体56の幅方向に延びている。帯状部91,92どうしが接続部93によって互いに電気的に導通している。スリット90と接続部93とは、それぞれ導体56の長手方向の複数箇所に形成され、ラダーの形態をなしている。帯状部91,92は、導体56の全長にわたって連続している。これら導体55,56は、メタルベース50の前記開口領域S1と非開口領域S2とにわたって配置されている。
【0028】
図8から図18は、それぞれ、以下に説明する実施例1から実施例11の導体サンプルを示している。図19から図22は、それぞれ、比較例1から比較例4の導体サンプルを示している。各導体サンプルの寸法は、いずれも長さが1000μm、幅が200μmで共通である。図8から図22は第1の導体55のみを示しているが、第2の導体56も同様に構成されている。
【0029】
図8は、第1の実施形態に基く導体サンプル(実施例1)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に2つ、導体55の長手方向に2つ形成されている。スリット長さLは480μm、スリット幅Wが20μm、開口率(軽量化率)19.2%である。この導体サンプル(図8)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.20GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.10GHzであった。
【0030】
図9は、第2の実施形態の導体サンプル(実施例2)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成されている。スリット長さLは960μm、スリット幅Wが20μm、開口率(軽量化率)9.6%である。この導体サンプル(図9)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは58Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.15GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.10GHzであった。
【0031】
図10は、第3の実施形態の導体サンプル(実施例3)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成されている。スリット長さLは960μm、スリット幅Wが100μm、開口率(軽量化率)48.0%である。この導体サンプル(図10)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは61Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.95GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは27Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.35GHzであった。
【0032】
図11は、第4の実施形態の導体サンプル(実施例4)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成されている。スリット長さLは960μm、スリット幅Wが160μm、開口率(軽量化率)76.8%である。この導体サンプル(図11)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは68Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.00GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは40Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.85GHzであった。
【0033】
図12は、第5の実施形態の導体サンプル(実施例5)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に2つ形成されている。スリット長さは960μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)19.2%である。この導体サンプル(図12)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.05GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.10GHzであった。
【0034】
図13は、第6の実施形態の導体サンプル(実施例6)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に4つ形成されている。スリット長さは960μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)38.4%である。この導体サンプル(図13)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.75GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.15GHzであった。
【0035】
図14は、第7の実施形態の導体サンプル(実施例7)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に1つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは480μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)9.6%である。この導体サンプル(図14)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.25GHzであった。
【0036】
図15は、第8の実施形態の導体サンプル(実施例8)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に1つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは230μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)9.2%である。この導体サンプル(図15)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは58Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.10GHzであった。
【0037】
図16は、第9の実施形態の導体サンプル(実施例9)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に2つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは230μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)18.4%である。この導体サンプル(図16)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.15GHzであった。
【0038】
図17は、第10の実施形態の導体サンプル(実施例10)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に4つ、導体55の長手方向に2つ形成されている。スリット長さは480μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)38.4%である。この導体サンプル(図17)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.85GHzであった。
【0039】
図18は、第11の実施形態の導体サンプル(実施例11)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に4つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは230μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)36.8%である。この導体サンプル(図18)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.90GHzであった。
【0040】
図19は、比較例1の導体サンプルを示している。この導体サンプルにはスリットが形成されていないため、導体の開口率(軽量化率)はゼロであり軽量化には寄与しない。比較例1の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.25GHzであった。比較例1の導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは19Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.00GHzであった。
【0041】
図20は、比較例2の導体サンプルを示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成され、しかもスリット80の両端が開放されている。この比較例2は、実施例1〜11の接続部83に相当する部分を有していない。比較例2のスリット長さは1000μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)10.0%である。比較例2の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)7.75GHzであった。
【0042】
図21は、比較例3の導体サンプルを示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に2つ形成され、しかも各スリット80の両端がそれぞれ開放されている。この比較例3も、実施例1〜11の接続部83に相当する部分を有していない。比較例3のスリット長さは1000μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)20.0%である。比較例3の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)7.25GHzであった。
【0043】
図22は比較例4の導体サンプルを示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に4つ形成され、しかも各スリット80の両端がそれぞれ開放されている。この比較例4も、実施例1〜11の接続部83に相当する部分を有していない。比較例4のスリット長さは1000μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)40.0%である。比較例4の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ωである。周波数帯域(減衰−3dB)は測定できなかった。
【0044】
下記の表1は、前記実施例1〜11と比較例1〜4の各導体サンプルを、それぞれメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスと周波数帯域(減衰−3dB)とを示している。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されるように、実施例1〜11の導体サンプルは、スリット無しの導体(比較例1)と比較して9%以上の軽量化が可能であり、しかもインピーダンスが比較例1と同等でかつ周波数帯域が8.0GHzG以上となっている。このような実施例1〜11は、軽量化と電気的特性(高周波数帯域)を両立できている。
【0047】
比較例1の開口率はゼロであるため軽量化には寄与しない。比較例2〜4は10%以上の軽量化が可能であるが、スリット80の両端が開放されている形状ゆえに、導体の端に生じる反射によって周波数帯域が狭くなり、周波数帯域が8.0GHzG未満に下がっている。周波数帯域を広く(高く)するためには、実施例1〜11のようなスリット80を有する導体55,56において、スリット80の少なくとも両端に接続部83,93を設けるとよい。
【0048】
下記の表2は、前記実施例1〜6と比較例1の各導体サンプルを、それぞれ、メタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスと周波数帯域(減衰−3dB)を表にしたものである。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示されるように、導体をメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合には、導体をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合(表1)と比較してインピーダンスを小さくすることができる。しかもスリット80の開口率が大きくなるほど、周波数帯域を広くすることができる。これらの性質を利用して、本発明に基く導体をメタルベース50の開口領域S1と非開口領域S2とにわたって配置することにより、フレキシャ配線部のインピーダンスや周波数特性を、アンプや磁気ヘッドにマッチングさせることが可能である。
【0051】
なお本発明を実施するに当たり、サスペンションの形態をはじめとして、メタルベースに形成される開口や、導体に形成されるスリット、帯状部、接続部の形状などの発明の構成要素を種々に変形して実施できることは言うまでもない。また、フレキシャの配線部に要求される電気的特性によっては、回路部材を構成する一対の導体のうちの一方に、前記スリットと帯状部および接続部が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…ディスク装置
20…サスペンション
31…ロードビーム
40…フレキシャ
50…メタルベース
55,56…導体
70,71…開口
S1…開口領域
S2…非開口領域
80…スリット
81,82…帯状部
83…接続部
90…スリット
91,92…帯状部
93…接続部
【技術分野】
【0001】
この発明は、情報処理装置のためのディスク装置のサスペンションに使用されるフレキシャに関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピュータ等の情報処理装置に、ハードディスク装置(HDD)が使用されている。ハードディスク装置は、スピンドルを中心に回転する磁気ディスクと、ピボット軸を中心に旋回するキャリッジなどを含んでいる。キャリッジのアームに、ディスク装置用サスペンションが設けられている。
【0003】
ディスク装置用サスペンションは、ロードビーム(load beam)と、ロードビームに重ねて配置されるフレキシャ(flexure)などを有している。フレキシャの先端付近に形成されたジンバル部にスライダを含む磁気ヘッドが取付けられている。磁気ヘッドには、データの読取りあるいは書込み等のアクセスを行なうための素子(トランスジューサ)が設けられている。これらサスペンションとフレキシャなどによってヘッドジンバルアセンブリが構成されている。
【0004】
前記フレキシャは、要求される仕様に応じて様々な形態のものが実用化されている。その一例として、配線付フレキシャ(flexure with conductors)が知られている。このフレキシャは、薄いステンレス鋼板からなるメタルベースと、このメタルベース上に形成されたポリイミド等の電気絶縁材料からなる絶縁層と、この絶縁層上に形成された銅からなる複数対の導体などを含んでいる。これら導体の一端は磁気ヘッドに設けられた素子(例えばMR素子)に電気的に接続されている。導体の他端は、アンプ等の電気回路に電気的に接続されている。これらの導体はサスペンションの配線部を構成している。アンプの消費電力を小さくするには、導体のインピーダンスを小さくする必要がある。また単位時間当たりに伝送する信号量を多くするには、高周波帯域化が望まれている。
【0005】
例えば特許文献1に開示されているフレキシャでは、メタルベースに複数の開口部が導体に沿って所定間隔で形成されている。これら開口部により、配線部の渦電流損を小さくすることができるため、高周波数帯域での減衰が小さくなる。特許文献2に開示されているサスペンションでは、ロードビームに複数の開口部が導体に沿って所定間隔で形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平9−282624号公報
【特許文献2】米国特許第6714385明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ディスク装置の小形化や高記録密度化に伴い、サスペンションがさらに小形化される傾向がある。フレキシャの配線部の低インピーダンス化を図るには、導体の幅が大きいほどよい。このためサスペンションが小形になるほど、サスペンション質量に対して配線部の質量が占める割合が大きくなり、サスペンションの動的特性が配線部によって影響を受けやすくなる。このため配線部を軽量化することが望まれている。
【0008】
しかし導体の幅を小さくするとインピーダンスが増加し、消費電力が増加する原因となる。また導体の幅を単に小さくすると、配線部の形態によっては高周波数帯域での減衰が大きくなってデータの高速伝送に適さなくなることがある。例えば特許文献1に開示されているように配線部のメタルベースに開口部を形成したとしても、導体が従来と同じであれば配線部の軽量化率が小さい。特許文献2のようにロードビームに開口部を設けても、フレキシャの配線部を軽くすることはできない。
【0009】
従ってこの発明は、軽量でかつ電気的特性の優れたディスク装置用フレキシャを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、ディスク装置用サスペンションのロードビームに固定されかつ磁気ヘッドを設けるためのジンバル部を有するフレキシャであって、導電材料からなる板状のメタルベースと、電気絶縁性の材料からなり前記メタルベース上に形成された絶縁層と、前記絶縁層上に前記メタルベースの長手方向に沿って配置されかつ前記磁気ヘッドに電気的に接続される一対の導体とを含んでいる。また前記メタルベースの長手方向の一部に、開口を有する開口領域と、開口を有しない非開口領域とが形成されている。また、前記一対の導体の少なくとも一方は、該導体の長手方向に延びるスリットと、該スリットの両側で該スリットに沿って延びる帯状部と、帯状部どうしを電気的につなぐ接続部とを有している。そして前記スリットを有する前記導体が前記メタルベースの前記開口領域と前記非開口領域とにわたって配置されている。前記スリットと接続部は、それぞれ前記導体の長手方向に所定間隔で複数形成されている。前記帯状部は、前記導体の長手方向に連続している。
【0011】
前記スリットが前記導体の幅方向に複数形成されていてもよいし、前記スリットが前記導体の長手方向に複数形成されていてもよい。また前記一対の導体のそれぞれに、前記スリットと、前記帯状部と、前記接続部とが形成されていてもよい。また前記スリットの内側に、前記メタルベースと前記ロードームとを互いに固定するための溶接部が設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、配線部を備えたフレキシャの電気的特性(例えば周波数帯域)を悪化させることなくフレキシャを軽量化することができる。このためサスペンション質量に対してフレキシャの配線部が占める質量の割合を小さくすることができ、フレキシャの配線部がサスペンションの動的特性に及ぼす影響を少なくすることができる。例えば、サスペンションの軽量化によってシーク特性などの動的特性が向上するとともに、サスペンションの耐衝撃特性が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】サスペンションを備えたディスク装置の一例を示す斜視図。
【図2】図1に示されたディスク装置の一部の断面図。
【図3】本発明の1つの実施形態に係るフレキシャを有するディスク装置用サスペンションの平面図。
【図4】図3に示されたサスペンションのフレキシャの第1の部分の横断面図。
【図5】図4に示された第1の部分の斜視図。
【図6】図3に示されたフレキシャの第2の部分の横断面図。
【図7】図3に示されたフレキシャの第3の部分の横断面図。
【図8】実施例1の導体サンプルの平面図。
【図9】実施例2の導体サンプルの平面図。
【図10】実施例3の導体サンプルの平面図。
【図11】実施例4の導体サンプルの平面図。
【図12】実施例5の導体サンプルの平面図。
【図13】実施例6の導体サンプルの平面図。
【図14】実施例7の導体サンプルの平面図。
【図15】実施例8の導体サンプルの平面図。
【図16】実施例9の導体サンプルの平面図。
【図17】実施例10の導体サンプルの平面図。
【図18】実施例11の導体サンプルの平面図。
【図19】比較例1の導体サンプルの平面図。
【図20】比較例2の導体サンプルの平面図。
【図21】比較例3の導体サンプルの平面図。
【図22】比較例4の導体サンプルの平面図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に本発明の1つの実施形態に係るディスク装置用フレキシャについて、図1から図7を参照して説明する。
図1に示すハードディスク装置(HDD)10は、ケース11と、スピンドル12を中心に回転するディスク13と、ピボット軸14を中心に旋回可能なキャリッジ15と、キャリッジ15を駆動するためのポジショニング用モータ16などを有している。ケース11は、図示しない蓋によって密閉される。
【0015】
図2はディスク装置10の一部を模式的に示す断面図である。図2に示されるように、キャリッジ15にアーム17が設けられている。アーム17の先端部にサスペンション20が取付けられている。サスペンション20の先端に、磁気ヘッド21を構成するスライダが設けられている。ディスク13が高速で回転すると、ディスク13と磁気ヘッド21(スライダ)との間にエアベアリングが形成される。
【0016】
ポジショニング用モータ16によってキャリッジ15を旋回させると、サスペンション20がディスク13の径方向に移動することにより、磁気ヘッド21がディスク13の所望トラックまで移動する。磁気ヘッド21には、例えばMR素子のように磁気信号と電気信号とを変換可能な素子が設けられている。この素子によって、ディスク13に対するデータの書込みあるいは読取り等のアクセスが行なわれる。
【0017】
図3にサスペンション20の一例が示されている。このサスペンション20は、ベースプレート30と、ロードビーム31と、薄いばね板からなるヒンジ部材32と、配線付フレキシャ(flexure with conductors)40などを備えている。これ以降、配線付フレキシャ40を単にフレキシャと称する。ベースプレート30のボス部30aは、キャリッジ15のアーム17(図1と図2に示す)に固定される。
【0018】
図3に示されるようにフレキシャ40はロードビーム31に沿って配置されている。フレキシャ40のロードビーム31と重なる部分40aがレーザ溶接等の固定手段によってロードビーム31に固定されている。フレキシャ40の先端部付近に、ジンバル部として機能するタング41が形成されている。タング41に前記磁気ヘッド21が取付けられている。フレキシャ40の後部(テール部)40bはベースプレート30の後方に延びている。フレキシャ40の端子部40cはディスク装置10のためのアンプ(図示せず)に接続される。
【0019】
図4は、フレキシャ40の長手方向の一部(第1の部分)の横断面を示している。図5は、この第1の部分をメタルベース50の厚さ方向の一方側から見た斜視図である。フレキシャ40は、導電材料からなる板状のメタルベース50と、メタルベース50に沿って形成された配線部51とを含んでいる。メタルベース50を構成する導電材料の一例は、ばね性を有する薄いステンレス鋼板である。
【0020】
配線部51は、メタルベース50上に形成された絶縁層52と、絶縁層52上に形成された一対の導体55,56(第1および第2の導体55,56)と、これら導体55,56を覆うカバー57(図4に2点鎖線で示す)を含んでいる。絶縁層52とカバー57とは、ポリイミド等の電気絶縁性の材料からなる。図5ではカバー57が省略されて描かれている。
【0021】
導体55,56の一端は、磁気ヘッド21の書込み用素子(図示せず)に接続されている。導体55,56の他端は、前記端子部40cを介して前記アンプに接続されている。これら導体55,56によって、データ書込み用の回路部材60が構成されている。この回路部材60はメタルベース50の一方の側縁50aに沿って配置されている、前記アンプから供給されるデータ書込み用の信号は、信号線として機能する一対の導体55,56を介して、磁気ヘッド21に供給される。メタルベース50の他方の側縁50bに沿って、データ読取用の一対の導体からなる回路部材61(図3に一部を示す)が配置されている。
【0022】
第1および第2の導体55,56は、互いにほぼ平行に配置されている。導体55,56の一例は、めっき銅からなり、絶縁層52に沿って所定のパターンとなるようにエッチングによって形成されている。メタルベース50の厚さはロードビーム31の厚さよりも小さい。メタルベース50の厚さは、例えば15〜20μmである。ロードビーム31の厚さは、例えば30〜62μmである。導体55,56の厚さの一例は15μm、カバー57は5μmである。絶縁層52の厚さ一例は10μmである。
【0023】
図4において、矢印Aがメタルベース50と導体55,56の厚さ方向である。図5中の矢印Bがメタルベース50と導体55,56の長手方向を示し、矢印Cがメタルベース50と導体55,56の幅方向を示している。図3から図5に示すように、メタルベース50の長手方向の一部(フレキシャ40の第1の部分)には、メタルベース50の一方の側縁50aに沿って、複数の開口70が所定間隔で形成されている。これらの開口70は、書込用の回路部材60に沿って形成されている。この明細書では、メタルベース50の全長のうち、開口70を含む領域を開口領域S1と称し、開口70を含まない領域を非開口領域S2と称している。
【0024】
メタルベース50の他の部分には、メタルベース50の他方の側縁50bに沿って、複数の開口71が形成されている。これらの開口71は、読取用の回路部材61に沿って形成されている。開口70,71は、メタルベース50の材料であるSUS304等のステンレス鋼板をエッチングすることによって形成されている。
【0025】
図6に示すようにメタルベース50の長手方向の他の部分(フレキシャ40の第2の部分)に、開口を有しない非開口領域S2が形成されている。図7はフレキシャの40の第3の部分を示している。この第3の部分には、メタルベース50とロードビーム31とを互いに固定するための溶接部W1が設けられている。溶接部W1は、後述するスリット90の内側に、例えばレーザスポット溶接によって形成されている。スリット90の内側に溶接部W1を配置することにより、スリット90を溶接部W1のためのスペースとして利用できるため、フレキシャ40のデザイン上の自由度が大きくなる。
【0026】
第1の導体55は、導体55の長手方向に形成されたスリット80と、スリット80の両側に位置する帯状部81,82と、帯状部81,82どうしを電気的につなぐ接続部83とを有している。帯状部81,82は、スリット80に沿って、導体55の長手方向に延びている。接続部83は、導体55の幅方向に延びている。帯状部81,82どうしが接続部83によって互いに電気的に導通している。スリット80と接続部83とは、それぞれ導体55の長手方向の複数箇所に形成され、ラダーの形態をなしている。帯状部81,82は、導体55の全長にわたって連続している。
【0027】
第2の導体56は、導体56の長手方向に形成されたスリット90と、スリット90の両側に位置する帯状部91,92と、帯状部91,92どうしを電気的につなぐ接続部93とを有している。帯状部91,92は、スリット90に沿って、導体56の長手方向に延びている。接続部93は、導体56の幅方向に延びている。帯状部91,92どうしが接続部93によって互いに電気的に導通している。スリット90と接続部93とは、それぞれ導体56の長手方向の複数箇所に形成され、ラダーの形態をなしている。帯状部91,92は、導体56の全長にわたって連続している。これら導体55,56は、メタルベース50の前記開口領域S1と非開口領域S2とにわたって配置されている。
【0028】
図8から図18は、それぞれ、以下に説明する実施例1から実施例11の導体サンプルを示している。図19から図22は、それぞれ、比較例1から比較例4の導体サンプルを示している。各導体サンプルの寸法は、いずれも長さが1000μm、幅が200μmで共通である。図8から図22は第1の導体55のみを示しているが、第2の導体56も同様に構成されている。
【0029】
図8は、第1の実施形態に基く導体サンプル(実施例1)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に2つ、導体55の長手方向に2つ形成されている。スリット長さLは480μm、スリット幅Wが20μm、開口率(軽量化率)19.2%である。この導体サンプル(図8)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.20GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.10GHzであった。
【0030】
図9は、第2の実施形態の導体サンプル(実施例2)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成されている。スリット長さLは960μm、スリット幅Wが20μm、開口率(軽量化率)9.6%である。この導体サンプル(図9)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは58Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.15GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.10GHzであった。
【0031】
図10は、第3の実施形態の導体サンプル(実施例3)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成されている。スリット長さLは960μm、スリット幅Wが100μm、開口率(軽量化率)48.0%である。この導体サンプル(図10)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは61Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.95GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは27Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.35GHzであった。
【0032】
図11は、第4の実施形態の導体サンプル(実施例4)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成されている。スリット長さLは960μm、スリット幅Wが160μm、開口率(軽量化率)76.8%である。この導体サンプル(図11)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは68Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.00GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは40Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.85GHzであった。
【0033】
図12は、第5の実施形態の導体サンプル(実施例5)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に2つ形成されている。スリット長さは960μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)19.2%である。この導体サンプル(図12)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.05GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.10GHzであった。
【0034】
図13は、第6の実施形態の導体サンプル(実施例6)を示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に4つ形成されている。スリット長さは960μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)38.4%である。この導体サンプル(図13)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.75GHzであった。この導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは21Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.15GHzであった。
【0035】
図14は、第7の実施形態の導体サンプル(実施例7)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に1つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは480μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)9.6%である。この導体サンプル(図14)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.25GHzであった。
【0036】
図15は、第8の実施形態の導体サンプル(実施例8)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に1つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは230μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)9.2%である。この導体サンプル(図15)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは58Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.10GHzであった。
【0037】
図16は、第9の実施形態の導体サンプル(実施例9)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に2つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは230μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)18.4%である。この導体サンプル(図16)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.15GHzであった。
【0038】
図17は、第10の実施形態の導体サンプル(実施例10)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に4つ、導体55の長手方向に2つ形成されている。スリット長さは480μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)38.4%である。この導体サンプル(図17)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.85GHzであった。
【0039】
図18は、第11の実施形態の導体サンプル(実施例11)を示している。この導体サンプルのスリット80は、導体55の幅方向に4つ、導体55の長手方向に4つ形成されている。スリット長さは230μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)36.8%である。この導体サンプル(図18)をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)8.90GHzであった。
【0040】
図19は、比較例1の導体サンプルを示している。この導体サンプルにはスリットが形成されていないため、導体の開口率(軽量化率)はゼロであり軽量化には寄与しない。比較例1の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)9.25GHzであった。比較例1の導体サンプルをメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスは19Ω、周波数帯域(減衰−3dB)1.00GHzであった。
【0041】
図20は、比較例2の導体サンプルを示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に1つ形成され、しかもスリット80の両端が開放されている。この比較例2は、実施例1〜11の接続部83に相当する部分を有していない。比較例2のスリット長さは1000μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)10.0%である。比較例2の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)7.75GHzであった。
【0042】
図21は、比較例3の導体サンプルを示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に2つ形成され、しかも各スリット80の両端がそれぞれ開放されている。この比較例3も、実施例1〜11の接続部83に相当する部分を有していない。比較例3のスリット長さは1000μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)20.0%である。比較例3の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ω、周波数帯域(減衰−3dB)7.25GHzであった。
【0043】
図22は比較例4の導体サンプルを示している。この導体サンプルのスリット80は導体55の幅方向に4つ形成され、しかも各スリット80の両端がそれぞれ開放されている。この比較例4も、実施例1〜11の接続部83に相当する部分を有していない。比較例4のスリット長さは1000μm、スリット幅が20μm、開口率(軽量化率)40.0%である。比較例4の導体サンプルをメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスは59Ωである。周波数帯域(減衰−3dB)は測定できなかった。
【0044】
下記の表1は、前記実施例1〜11と比較例1〜4の各導体サンプルを、それぞれメタルベース50の開口領域S1に設けた場合のインピーダンスと周波数帯域(減衰−3dB)とを示している。
【0045】
【表1】
【0046】
表1に示されるように、実施例1〜11の導体サンプルは、スリット無しの導体(比較例1)と比較して9%以上の軽量化が可能であり、しかもインピーダンスが比較例1と同等でかつ周波数帯域が8.0GHzG以上となっている。このような実施例1〜11は、軽量化と電気的特性(高周波数帯域)を両立できている。
【0047】
比較例1の開口率はゼロであるため軽量化には寄与しない。比較例2〜4は10%以上の軽量化が可能であるが、スリット80の両端が開放されている形状ゆえに、導体の端に生じる反射によって周波数帯域が狭くなり、周波数帯域が8.0GHzG未満に下がっている。周波数帯域を広く(高く)するためには、実施例1〜11のようなスリット80を有する導体55,56において、スリット80の少なくとも両端に接続部83,93を設けるとよい。
【0048】
下記の表2は、前記実施例1〜6と比較例1の各導体サンプルを、それぞれ、メタルベース50の非開口領域S2に設けた場合のインピーダンスと周波数帯域(減衰−3dB)を表にしたものである。
【0049】
【表2】
【0050】
表2に示されるように、導体をメタルベース50の非開口領域S2に設けた場合には、導体をメタルベース50の開口領域S1に設けた場合(表1)と比較してインピーダンスを小さくすることができる。しかもスリット80の開口率が大きくなるほど、周波数帯域を広くすることができる。これらの性質を利用して、本発明に基く導体をメタルベース50の開口領域S1と非開口領域S2とにわたって配置することにより、フレキシャ配線部のインピーダンスや周波数特性を、アンプや磁気ヘッドにマッチングさせることが可能である。
【0051】
なお本発明を実施するに当たり、サスペンションの形態をはじめとして、メタルベースに形成される開口や、導体に形成されるスリット、帯状部、接続部の形状などの発明の構成要素を種々に変形して実施できることは言うまでもない。また、フレキシャの配線部に要求される電気的特性によっては、回路部材を構成する一対の導体のうちの一方に、前記スリットと帯状部および接続部が形成されてもよい。
【符号の説明】
【0052】
10…ディスク装置
20…サスペンション
31…ロードビーム
40…フレキシャ
50…メタルベース
55,56…導体
70,71…開口
S1…開口領域
S2…非開口領域
80…スリット
81,82…帯状部
83…接続部
90…スリット
91,92…帯状部
93…接続部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスク装置用サスペンションのロードビームに固定されかつ磁気ヘッドを設けるためのジンバル部を有するディスク装置用フレキシャであって、
導電材料からなる板状のメタルベースと、
電気絶縁性の材料からなり前記メタルベース上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に前記メタルベースの長手方向に沿って配置されかつ前記磁気ヘッドに電気的に接続される一対の導体とを含み、
前記メタルベースの長手方向の一部に、開口を有する開口領域と、開口を有しない非開口領域とが形成され、
前記一対の導体の少なくとも一方は、該導体の長手方向に延びるスリットと、該スリットの両側で該スリットに沿って延びる帯状部と、これら帯状部どうしを電気的につなぐ接続部とを有し、
前記スリットを有する前記導体が前記メタルベースの前記開口領域と前記非開口領域とにわたって配置されていることを特徴とするディスク装置用フレキシャ。
【請求項2】
前記スリットが前記導体の幅方向に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用フレキシャ。
【請求項3】
前記スリットが前記導体の長手方向に複数形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のディスク装置用フレキシャ。
【請求項4】
前記一対の導体のそれぞれに、前記スリットと、前記帯状部と、前記接続部とが形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載のディスク装置用フレキシャ。
【請求項5】
前記スリットの内側に、前記メタルベースと前記ロードームとを互いに固定するための溶接部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用フレキシャ。
【請求項1】
ディスク装置用サスペンションのロードビームに固定されかつ磁気ヘッドを設けるためのジンバル部を有するディスク装置用フレキシャであって、
導電材料からなる板状のメタルベースと、
電気絶縁性の材料からなり前記メタルベース上に形成された絶縁層と、
前記絶縁層上に前記メタルベースの長手方向に沿って配置されかつ前記磁気ヘッドに電気的に接続される一対の導体とを含み、
前記メタルベースの長手方向の一部に、開口を有する開口領域と、開口を有しない非開口領域とが形成され、
前記一対の導体の少なくとも一方は、該導体の長手方向に延びるスリットと、該スリットの両側で該スリットに沿って延びる帯状部と、これら帯状部どうしを電気的につなぐ接続部とを有し、
前記スリットを有する前記導体が前記メタルベースの前記開口領域と前記非開口領域とにわたって配置されていることを特徴とするディスク装置用フレキシャ。
【請求項2】
前記スリットが前記導体の幅方向に複数形成されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用フレキシャ。
【請求項3】
前記スリットが前記導体の長手方向に複数形成されていることを特徴とする請求項1または2に記載のディスク装置用フレキシャ。
【請求項4】
前記一対の導体のそれぞれに、前記スリットと、前記帯状部と、前記接続部とが形成されていることを特徴とする請求項1から3のうちいずれか1項に記載のディスク装置用フレキシャ。
【請求項5】
前記スリットの内側に、前記メタルベースと前記ロードームとを互いに固定するための溶接部が設けられていることを特徴とする請求項1に記載のディスク装置用フレキシャ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【公開番号】特開2011−216161(P2011−216161A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83946(P2010−83946)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(000004640)日本発條株式会社 (1,048)
【Fターム(参考)】
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