説明

ディスク装置

【課題】 モータの動力の伝達経路を切換える切換え部材が、動力伝達経路を設定した状態で動くことなく安定できる「ディスク装置」を提供する。
【解決手段】 切換え部材68が一方へ回動しているときに、モータの動力がヘッド送り機構を構成するラック部材36に伝達されて、ラック部材36とともに光ヘッドが移動させられる。このとき、規制突起75によって切換え部材68が不用意に回動しないように規制される。またラック部材36が内周方向Siへ移動すると、伝達凸部36cによって切換え部材68が回動させられ、モータの動力が搬送手段に伝達される。このときは、規制突起75が、切換え部材68の伝達凹部68a内に入り込み、切換え部材68の回動が規制される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共通のモータによって、ヘッド送り機構と、ヘッド送り機構以外の例えばディスク搬送手段とが駆動されるディスク装置に係り、特にモータの動力伝達経路が切換えられたときに、その切換え状態を確実に保持できるディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
車載用などのディスク装置では、コンパクト・ディスク(CD)やディジタル・バーサタイル・ディスク(DVD)などのディスクを挿入する挿入口が設けられたいわゆるスロットイン方式が採用されている。このディスク装置では、挿入口からディスクが挿入されると、挿入口の内側に設けられた搬送手段によってディスクが装置内に搬送され、ディスクの中心穴が回転駆動部にクランプされる。回転駆動手段によってディスクが回転駆動されると、光ヘッドがディスクの記録面に沿って移動し、ディスクに記録された信号の読み取りやディスクへの信号の記録が行われる。
【0003】
従来の前記ディスク装置では、装置内に、前記回転駆動部の動力となるスピンドルモータと、光ヘッドをディスクに沿って移動させるスレットモータと、さらに前記搬送手段を動作させる搬送モータ、およびディスクを回転駆動部にクランプするクランプ機構を動作させるためのモード切換えモータなど、多くのモータが搭載されている。しかし、それぞれの機構毎に別々のモータを用いたものでは、装置内のモータ数が多くなって、装置のコストが高くなり、また重量も大きくなる問題がある。
【0004】
そこで、以下の特許文献1などでは、光ヘッドが移動する必要のないディスク搬入時や搬出時などに、前記スレットモータの動力を搬送手段に伝達して、前記スレットモータの動力を利用してディスクの搬入や搬出を行うものが考えられている。
【特許文献1】特開2002−140849号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記スレットモータの動力を使用して搬送手段を動作させる構造では、搬送手段を動作させているときに、前記スレットモータの動力が光ヘッドの移動力として作用しないようにその動力伝達経路を確実に切換えることが必要である。すなわち、スレットモータで搬送手段を動作させているときに、前記スレットモータの動力が光ヘッドの移動力として作用してしまうと、ディスクを回転駆動部に向けて搬送している途中で、光ヘッドがその移動行程の終端に移動してもなお光ヘッドに移動力が与えられ続けて、ヘッド送り機構を破損するなどの問題が生じる。
【0006】
前記特許文献1などに記載のディスク装置には、スレットモータからの動力伝達経路を切換える切換え機構が設けられており、この切換え機構では、主にばねの力を利用して、切換え機構がいずれかの動力伝達経路を設定した状態で維持できるようにしている。
【0007】
しかし、前記切換え機構において動力伝達経路をばねの力で安定させる構造であると、繰り返し動作が継続する際に、ばねが疲労して弾性力が低下し、または埃や汚れにより機構の動作負荷が増大して、ばねの力のみで機構を安定させることができないおそれがある。また、切換え機構内にばねを設けると、機構部品が密集し部品どうしが干渉して誤動作を生じる確率が高くなり、さらには部品数の増加によりコストが高くなる。
【0008】
本発明は前記従来の課題を解決するものであり、モータの動力伝達経路の切換えを常に安定して行うことができ、ばねの疲労による動作不良などが発生しにくいディスク装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、ディスクを保持して回転させる回転駆動部と、前記ディスクに対する信号の再生と記録の少なくとも一方を行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの内周方向と外周方向とへ移動させるヘッド送り機構が設けられたディスク装置において、
モータの動力をヘッド送り機構に伝達する第1の動力伝達経路と、前記モータの動力をヘッド送り機構以外の機構動作部に伝達する第2の動力伝達経路と、第1の位置へ移動したときに前記モータの動力伝達経路を前記第1の動力伝達経路に設定し且つ第2の位置へ移動したときに前記モータの動力伝達経路を前記第2の動力伝達経路に設定する切換え部材と、ヘッドと共に移動してヘッドが内周側または外周側へ至ったときに前記切換え部材を第1の位置から第2の位置へ移動させる伝達部とが設けられており、
装置内には、前記切換え部材が第2の位置へ移動したときに、この切換え部材と係合して切換え部材の前記第1の位置への戻り動作を規制する規制部が設けられていることを特徴とするものである。
【0010】
前記ディスク装置では、切換え部材が第2の位置へ移動したときに、規制部との機械的な係合によって切換え部材の切換え状態を維持できるため、モータの動力がヘッド送り機構以外の機構動作部に伝達されているときに、モータの動力がヘッド送り機構に伝達されるのを確実に防止できる。
【0011】
さらに本発明は、前記切換え部材が前記第1の位置へ移動したときに、前記規制部と前記切換え部材とが係合して、前記切換え部材の第2の位置への移動が規制されるものである。
【0012】
前記のように、切換え部材の第2の位置への移動が規制されていると、モータの動力がヘッド送り機構へ常に安定して供給されるようになる。
【0013】
例えば、本発明は、前記切換え部材には、前記伝達部がヘッドと共に移動したときにこの伝達部と嵌合する伝達凹部が形成されており、切換え部材が第2の位置へ移動したときに前記規制部が前記伝達凹部と係合するものである。さらには、前記切換え部材が第1の位置へ移動したときに、前記規制部が切換え部材の側部に対向して前記切換え部材の第2の位置への移動が規制されるものである。
【0014】
上記手段では、切換え部材にヘッドと共に移動する伝達部と係合する伝達凹部が設けられて、この伝達凹部を利用して切換え部材を第2の位置に安定させているため、切換え部材に規制のための凹部や凸部を別個に設ける必要がなくなり、切換え部材の形状を小さくでき、機構全体を小型化できるようになる。
【0015】
また、本発明は、前記ヘッド送り機構には、ヘッドと共に移動するラックと、このラックに移動力を与えるピニオン歯車とが設けられ、前記伝達部は前記ラックに設けられており、前記切換え部材が第2の位置に移動したときに、前記伝達部が前記切換え部材に保持されて、ラックが前記ピニオン歯車から外れる位置へ移動させられるものである。
【0016】
上記構成では、切換え部材が規制部によって第2の位置に安定させられているときに、この切換え部材の動作によってラックがピニオンから離されるため、他の機構動作部を駆動しているときに、モータの動力がヘッドの移動力として伝達されるのを確実に防止できる。
【0017】
例えば、本発明は、前記第2の動力伝達経路によって駆動される前記機構動作部は、ディスクを前記回転駆動部に向けて搬送する搬送手段である。
【0018】
あるいは、前記機構動作部は、ディスクを回転駆動部にクランプするクランプ機構や、筐体内でダンパーなどで弾性支持されている回転駆動部を、ディスクの搬入や搬出時に動かないようにロックするロック機構などであってもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明では、モータの動力がヘッド送り機構以外の機構動作部に伝達されているときに、切換え部材と規制部との機械的な係合によって前記動力伝達状態が維持される。そのため、モータで搬送手段などの他の機構動作部を動作させているときに、モータの動力がヘッド送り機構に伝達されるのを確実に防止できる。さらに、モータの動力がヘッド送り機構に伝達された状態で、その切換え状態を安定させることも可能である。また、切換え部材と規制部とを機械的に係合させているため、長期間使用しても、動作不良等が生じにくい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
図1は、本発明の実施の形態のディスク装置の主要部を示すものであり、駆動ベースの斜視図である。図2と図3は、図1に示した前記駆動ベースを左右に反転させて下面側から示した動作別の底面図、図4は第1の切換え部材と規制突起およびラックに設けられた伝達凸部との関係を示す部分拡大斜視図、図5(A)(B)は、図4をV矢視方向から見た動作別の側面図、図6は動力伝達の切換え状態を示す部分拡大図である。
【0021】
この実施の形態のディスク装置1は車載用であり、光記録方式のDVDやCDなどのディスクに対する信号の記録や信号の再生を行うものである。図1に示すように、駆動ベース11のx方向の左右両側部には支持ピン4,4が設けられており、前記支持ピン4,4がディスク装置1の筐体内に設けられた図示しないコイルバネやエアー式又はオイル式のダンパー部材などによって弾性的に浮上させられた状態で支持されることにより、車両走行時の際に発生する振動を吸収できるようになっている。
【0022】
図2に示すように、前記駆動ベース11の下面には、その動力を、光ヘッド31を移動させるスレッド動力伝達経路(第1の動力伝達経路)へ伝達するとともに、搬送ローラ28への動力伝達経路(第2の動力伝達経路)ヘ伝達するモータMが設けられている。
【0023】
以下に説明する図2、図3および図6には各種歯車が図示されているが、各種歯車のうち、噛み合いについての説明が必要なものは歯の形状の詳細を図示し、特に説明を要しない歯車はピッチ円のみを描いてその詳細な構造の図示を省略している。
【0024】
図1に示すように、駆動ベース11には窓11bが開口している。駆動ベース11の下面には光ヘッド31が設けられ、この光ヘッド31に設けられた対物レンズ31aが、前記窓11bから駆動ベース11の上面に向けて露出している。また光ヘッド31の内部には、前記対物レンズ31aにレーザー光を与える発光素子、およびディスクDからの反射戻り光を受光する受光素子、およびその他の光学素子が内蔵されている。
【0025】
図2に示すように、前記駆動ベース11の下面には、x方向とy方向の双方に傾斜して延びる、ガイド軸32とガイド部33とが互いに平行に配置されている。前記光ヘッド31の一方の側部には、軸受部34aと34bが移動方向に間隔を開けて形成されており、前記軸受部34aと34bがガイド軸32に摺動自在に外挿されている。光ヘッド31の他方の側部にはU字形状の摺動溝を有する摺動部35が形成されており、前記摺動溝が前記ガイド部33を挟むようにして摺動自在に嵌合している。よって、光ヘッド31は、前記ガイド軸32とガイド部33に案内されて、ディスクDの内周方向(Si方向)と外周方向(So方向)に向けて移動可能とされている。すなわち、前記ガイド軸32とガイド部33とは、光ヘッド31を内周方向Siおよび外周方向Soに案内する案内手段として機能している。
【0026】
前記光ヘッド31にはラック部材36が一緒に移動できるように設けられている。ラック部材36は、その長手方向の所定の範囲にラック歯37が形成されている。ラック部材36には、光ヘッド31の移動方向に間隔を開けて軸受部36a,36bが形成されている。一方の軸受部36aは、前記光ヘッド31の軸受部34aと軸受部34bとの間に位置して前記ガイド軸32に摺動自在に外挿されている。他方の軸受部36bは、光ヘッド31の前記軸受部34bよりも内周側(i側)に離れた位置において、前記ガイド軸32に摺動自在に外挿されている。
【0027】
光ヘッド31の前記軸受部34bと、ラック部材36の軸受部36aとの間には、付勢部材である圧縮スプリング38が設けられ、この圧縮スプリング38は、ガイド軸32に外挿されている。前記圧縮スプリング38は、光ヘッド31の移動方向(So−Si方向)である長手方向に圧縮された状態で、軸受部36aと軸受部34bとの間に介装されており、その反発力によって、軸受部36aおよびラック部材36全体が外周方向Soへ付勢されている。その結果、図2に示すように、前記圧縮スプリング38の弾性力により軸受部36aが軸受部34aに密着させられた状態で、光ヘッド31とラック部材36とが一体となってディスクの径方向(So−Si)へ移動できるようになっている。
【0028】
ラック部材36の側方では、駆動ベース11の下面に軸43が固定されており、この軸43に、ピニオン歯車41と伝達歯車42とが一体となって回転するように支持されている。ピニオン歯車41と伝達歯車42は、合成樹脂などで一体形成されたもの、または別体に形成された後に接着などの手段で互いに固着されたものである。
【0029】
図2および図3に示すように、前記伝達歯車42の側方では、駆動ベース11の下面に軸44が固定されており、この軸44に、駆動歯車45と太陽歯車46とが一体となって回転できるように支持されている。前記太陽歯車46は前記伝達歯車42と噛み合っており、駆動ベース11に固定されたモータMの出力軸に設けられたウォーム歯車47は、前記駆動歯車45と噛み合っている。また、前記太陽歯車46には遊星歯車63が噛み合っている。
【0030】
この実施の形態では、前記ラック部材36によってヘッド送り機構30が構成されている。そして、図2の状態では、ラック部材のラック歯37がピニオン歯車41に噛み合っており、モータMの動力は、ウォーム歯車47から、駆動歯車45、太陽歯車46、伝達歯車42を経てピニオン歯車41に伝達され、このピニオン歯車41からラック部材36のラック歯37に動力が伝達されて、ラック部材36と共に光ヘッド31がSo−Si方向へ駆動できるようになっている。すなわち、図2では、モータMの動力をヘッド送り機構30であるラック部材36に伝達可能なスレッド動力伝達経路(第1の動力伝達経路)が設定されている。
【0031】
前記駆動ベース11には軸59が固定されており、この軸59に、中間歯車61と中間歯車62が一体となって回転できるように支持されている。図2では、遊星歯車63が中間歯車61から離れているために、前記モータMの動力は、前記ピニオン歯車41にのみ伝達されるようになっている。一方、図3に示すように、前記遊星歯車63が中間歯車61に噛み合うと、モータMの動力は、前記ピニオン歯車41のみならず、中間歯車61にも伝達されるようになる。中間歯車61に動力が伝達されると、中間歯車61の回転力は、さらに、ローラ歯車28cに伝達され、ディスクDを搬送する搬送手段である搬送ローラ28が回転駆動されるようになる。
【0032】
すなわち、図3では、モータMの動力を搬送ローラ28に伝達可能な第2の動力伝達経路が設定されている。
【0033】
前記軸44には、扇形状の第2の切換え部材65が回動自在に支持されており、この第2の切換え部材65に軸64が固定され、この軸64に前記遊星歯車63が回転自在に支持されている。
【0034】
図2、図3および図6に示すように、ラック部材36の移動経路と前記第2の切換え部材65との間には軸67が固定されており、この軸67に第1の切換え部材68が回動自在に支持されている。この第1の切換え部材68の一端には伝達凹部68aが形成されている。前記ラック部材36には伝達凸部36cが一体に形成されており、ラック部材36が内周方向Siへ移動する過程で、前記伝達凸部36cが前記伝達凹部68aに嵌合できるようになっている。
【0035】
図6に示すように、前記第2の切換え部材65には、カム部71が形成されている。このカム部71はカム溝またはカム穴であり、前記第1の切換え部材68の他端に固定されている伝達軸69が、前記カム部71に摺動自在に挿入されている。
【0036】
前記第2の切換え部材65の外側には、駆動ベース11に固定された中継部材72が設けられている。この中継部材72には、遊星歯車63の歯と噛み合う歯が、遊星歯車63の移動経路に沿って2個形成されている。
【0037】
図4および図5(A)(B)は、前記第1の切換え部材60とラック部材36および伝達凸部36cとの関係を拡大して示している。
【0038】
前記第1の切換え部材68は合成樹脂材料で形成されている。図5(A)(B)に示すように、第1の切換え部材68の伝達凹部68aの右外側に位置する外側面68bの下部縁部(駆動ベース11に向く縁部)には、外側摺動面68cが形成されている。この外側摺動面68cは駆動ベース11に向かうにしたがって前記伝達凹部68aに徐々に近づく曲面または傾斜面である。また、伝達凹部68aの前記外側面68bに対向する内壁面68dの下部縁部には、内側摺動面68eが形成されている。この内側摺動面68eは、駆動ベース11に向かうにしたがって前記外側面68bに徐々に近づく曲面または傾斜面である。
【0039】
駆動ベース11の下面(図4と図5では上に向く面)には、規制突起75が固定されている。この規制突起75は金属ピンあるいは駆動ベース11から折り曲げ形成された突起などである。この実施の形態の規制突起75は金属ピンであり、その上面75aは球面形状、あるいは上面75aの外周面はテーパー面である。
【0040】
図5(A)に示すように、駆動ベース11からの規制突起75の高さ寸法H1は、駆動ベース11から第1の切換え部材68の下面までの高さ寸法H2よりも大きい。前記外側摺動面68c、内側摺動面68eの曲面または傾斜面の高さ寸法、および規制突起75の上面75aの球面あるいはテーパー面の高さ寸法は、前記高さ寸法の差(H1−H2)よりも大きいことが好ましい。また、駆動ベース11から伝達凸部36cの下面までの高さ寸法H3は規制突起75の高さ寸法H1よりもわずかに大きい。
【0041】
前記駆動ベース11には、軸73が固定されており、この軸73に拘束部材74が回動自在に支持されている。拘束部材74の左端には、フック74aが一体に形成されている。図3に示すように、第2の切換え部材65が反時計方向へ回動しているときに、このフック74aは前記第2の切換え部材65に係止できるようになっている。前記拘束部材74は図示しない制御機構によって回動させられる。
【0042】
また、このディスク装置1には回転駆動部を構成するターンテーブル26およびこのターンテーブル26を回転させるスピンドルモータが設けられている。
【0043】
次に、前記ディスク装置1の切換え動作について説明する。
図2は、ディスクDへの情報の記録または再生を行っているディスク駆動モードを示している。このモードでは、ラック部材36とピニオン歯車41とが噛み合って、スレッド動力伝達経路(第1の動力伝達経路)が設定されており、モータMの動力がヘッド送り機構30を構成するラック部材36のラック歯37に伝達可能となっている。
【0044】
図2では、第1の切換え部材68が時計方向へ回動して第1の位置に設定されている。そして、ラック部材36に設けられた伝達凸部36cが、前記第1の切換え部材68の伝達凹部68aから離れている。第1の切換え部材68が時計方向へ回動して第1の位置に設定されていると、この第1の切換え部材68の伝達軸69によって、第2の切換え部材65が反時計方向へ回動させられており、この第2の切換え部材65に設けられた遊星歯車63が中間歯車61から離れている。よって、モータMの動力が搬送ローラ28に伝達されず、第2の動力伝達経路が遮断されている。
【0045】
また、図2では、図示しない制御機構によって拘束部材74が時計方向へ回動させられており、フック74aが第2の切換え部材65の動作を妨げないようになっている。
【0046】
図4および図5(A)に示すように、第1の切換え部材68が第1の位置にあるとき、第1の切換え部材68の外側面68bの外側に前記規制突起75の上端部分が対向している。したがって、第1の切換え部材68は、図2の状態から反時計方向へ回動することがなく、第1の切換え部材68は第1の位置に確実に保持される。第1の切換え部材68が第1の位置に保持されていると、第2の切換え部材65も反時計方向へ回動した状態に保持されることになり、遊星歯車63が中間歯車61に噛み合うことがない。
【0047】
図2に示す状態で、モータMを正逆駆動すると、その動力が、ウォーム歯車47から、駆動歯車45、太陽歯車46、伝達歯車42を経てピニオン歯車41に伝達され、このピニオン歯車41からラック部材36のラック歯37に動力が伝達されて、光ヘッド31がディスクDの情報記録面に沿って内周方向と外周方向とへ移動する。そして、ディスクDがターンテーブル26に設置されて、ディスクDが回転駆動され、光ヘッド31によってディスクDへの情報の記録または再生が行われる。
【0048】
次に、ユーザによってディスクDを装置外へ排出する操作が行われると、ターンテーブル26の回転が停止する。また、モータMの動力によりピニオン歯車41が反時計方向へ回動させられ、光ヘッド31が内周方向(i方向)へ移動させられる。このとき、光ヘッド31は、記録または再生を行うときの光ヘッド31の移動範囲を越えて、さらに内周方向へ向けて移動させられる。
【0049】
光ヘッド31が記録または再生動作時の移動範囲を越えてさらに内周側へ移動すると、図6に示すように、ラック部材36に設けられた伝達凸部36cが、第1の切換え部材68の伝達凹部68aに入り込み、ラック部材36のSi方向への移動力により第1の切換え部材68が反時計方向へ回動させられる。そして、第1の切換え部材68の伝達軸69により、第2の切換え部材65が時計方向へ回動させられる。このとき、前記ピニオン歯車41が反時計方向へ回転していると共に、遊星歯車63も反時計方向へ回転している。そのため、第2の切換え部材65が少しだけ時計方向へ回動させられると、反時計方向へ回転している遊星歯車63が中継部材72に噛み合い、遊星歯車63の回転力によって、この遊星歯車63が中継部材72を乗り越え、さらに第2の切換え部材65が時計方向へ回動させられて、図3に示すように遊星歯車63が中間歯車61に噛み合う状態に至る。
【0050】
このように、遊星歯車63が中継部材72を乗り越えて第2の切換え部材65が時計方向へ回動するときに、その回動力がカム部71を経て第1の切換え部材68に伝達され、図3に示すように、第1の切換え部材68がさらに反時計方向へ回動させられて第2の位置に設定される。このとき、第1の切換え部材68は遊星歯車63の回転力により強制的に反時計方向へ回動力させられるため、第1の切換え部材68の伝達凹部68aに保持された伝達凸部36cが内周方向(Si方向)へ引かれ、圧縮スプリング38が収縮してラック部材36が強制的に内周方向へ移動させられて、ラック歯37がピニオン歯車41の歯から離される。
【0051】
また、前記拘束部材74が反時計方向へ回動させられ、フック74aが第2の切換え部材65に掛止されて、第2の切換え部材65が反時計方向へ回動しないように拘束される。
【0052】
その結果、図3に示すように、モータMの動力が、ウォーム歯車47、駆動歯車45、太陽歯車46、遊星歯車63を経て中間歯車61から中間歯車62に伝達され、さらにローラ歯車28cに伝達可能となり、第2の動力伝達経路が形成される。一方、前記のようにラック歯37がピニオン歯車42から離れているため、スレッド動力伝達経路(第1の動力伝達経路)が遮断される。
【0053】
前記のように、遊星歯車63の反時計方向への回転力によって、第2の切換え部材65が時計方向へ回動し、これに伴って第1の切換え部材68が反時計方向へ回動するときに、図5(A)に示す第1の切換え部材68の外側摺動面68cが規制突起75の上面75aの球面またはテーパー面に当たり、さらに第1の切換え部材68の下面が規制突起75の上面75aを乗り越えて、図5(B)に示すように、第1の切換え部材68の伝達凹部68a内に規制突起75が入り込む。
【0054】
その結果、第1の切換え部材68が図3に示す第2の位置にあるとき、第1の切換え部材68が規制突起75で規制される。よって、第1の切換え部材68に設けられた伝達軸69が、第2の切換え部材65に設けられたカム部71内で動くことがあっても、第1の切換え部材68が第2の位置から不用意に時計方向へ回動するのが規制される。
【0055】
図3の状態では、圧縮スプリング38の弾性力で、ラック部材36に外周方向(So方向)への弾性力が作用し、この弾性力によって、第1の切換え部材65に時計方向への付勢力が作用している。しかし、第1の切換え部材68が規制突起75で規制されているため、前記付勢力によってカム部71内で伝達軸69が動き、ラック部材36に設けられた伝達凸部36cが、第1の切換え部材65の伝達凹部68aから抜け出て、ラック歯37とピニオン歯車42が噛み合ってしまう不具合の発生を防止できる。
【0056】
図3の状態で、モータMを正方向または逆方向へ駆動すると、その動力は前記第2の動力伝達経路を経てローラ歯車28cに伝達され、搬送ローラ28が駆動される。搬送ローラ28の一方向への回転力によりディスクDを排出でき、またその後の他方向への回転力によって、ディスクDを搬入することができる。
【0057】
次に、再び、図2に示すディスク駆動モードに移行するには、図3の状態において拘束部材74を時計方向へ回動させて第2の切換え部材65の拘束を解除し、モータMにより太陽歯車46を反時計方向へ回動させる。これにより遊星歯車63が時計方向へ回動し、遊星歯車63が中間歯車61から離れ中継部材72に噛み合った後に図2に示す位置へ移動する。
【0058】
このとき、遊星歯車63は中継部材72を乗り越える力によって、第2の切換え部材65が反時計方向へ回動し、これに伴って第1の切換え部材68が時計方向へ回動させられる。ラック部材36は圧縮スプリング38の弾性力によりSo方向へ付勢されているため、伝達凸部36cが伝達凹部68aから抜け出て、ラック歯37がピニオン歯車41と噛み合う。
【0059】
第1の切換え部材68は強制的に時計方向へ回動させられるため、図5(B)に示す状態から、第1の切換え部材68の内側摺動面68eが規制突起75の上面75aに当たり、さらに第1の切換え部材68の下面が規制突起75を乗り越えて、図4および図5(A)の状態に復帰する。
【0060】
なお、前記実施の形態では、第1の切換え部材68が、図2に示す第1の位置と図3に示す第2の位置とで安定できるように、規制突起75と機械的に係合されるが、第1の切換え部材68の代わりに第2の切換え部材65が、図2に示す第1の位置と図3に示す第2の位置で、規制突起75で規制されるものであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0061】
【図1】本発明の実施の形態のディスク装置の駆動ベースを示す斜視図、
【図2】ディスク駆動ベースの底面図であり、第1の動力伝達経路が設定されている状態を示す、
【図3】ディスク駆動ベースの底面図であり、第2の動力伝達経路が設定されている状態を示す、
【図4】第1の切換え部材と規制突起および伝達凸部との位置関係を示す拡大斜視図、
【図5】(A)(B)は、図4のV矢視の動作別側面図、
【図6】動力切換え部を示す拡大図、
【符号の説明】
【0062】
1 ディスク装置
11 駆動ベース
28 搬送ローラ
30 ヘッド送り機構
31 光ヘッド
32 ガイド軸
33 ガイド部
34a,34b 軸受部
36 ラック部材
36a,36b 軸受部
36c 伝達凸部
37 ラック歯
38 圧縮スプリング(付勢部材)
41 ピニオン歯車
46 太陽歯車
63 遊星歯車
65 第2の切換え部材
68 第1の切換え部材
68a 伝達凹部
69 伝達軸
71 カム部
72 中継部材
74 拘束部材
74a フック
75 規制突起
M モータ
Si 内周方向
So 外周方向

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディスクを保持して回転させる回転駆動部と、前記ディスクに対する信号の再生と記録の少なくとも一方を行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの内周方向と外周方向とへ移動させるヘッド送り機構が設けられたディスク装置において、
モータの動力をヘッド送り機構に伝達する第1の動力伝達経路と、前記モータの動力をヘッド送り機構以外の機構動作部に伝達する第2の動力伝達経路と、第1の位置へ移動したときに前記モータの動力伝達経路を前記第1の動力伝達経路に設定し且つ第2の位置へ移動したときに前記モータの動力伝達経路を前記第2の動力伝達経路に設定する切換え部材と、ヘッドと共に移動してヘッドが内周側または外周側へ至ったときに前記切換え部材を第1の位置から第2の位置へ移動させる伝達部とが設けられており、
装置内には、前記切換え部材が第2の位置へ移動したときに、この切換え部材と係合して切換え部材の前記第1の位置への戻り動作を規制する規制部が設けられていることを特徴とするディスク装置。
【請求項2】
ディスクを保持して回転させる回転駆動部と、前記ディスクに対する信号の再生と記録の少なくとも一方を行うヘッドと、前記ヘッドを前記ディスクの内周方向と外周方向とへ移動させるヘッド送り機構が設けられたディスク装置において、
モータの動力をヘッド送り機構に伝達する第1の動力伝達経路と、前記モータの動力をヘッド送り機構以外の機構動作部に伝達する第2の動力伝達経路と、第1の位置へ移動したときに前記モータの動力伝達経路を前記第1の動力伝達経路に設定し且つ第2の位置へ移動したときに前記モータの動力伝達経路を前記第2の動力伝達経路に設定する切換え部材と、ヘッドと共に移動してヘッドが内周側または外周側へ至ったときに前記切換え部材を第1の位置から第2の位置へ移動させる伝達部とが設けられており、
装置内には、前記切換え部材が第1の位置へ移動したときに、この切換え部材と係合して切換え部材の前記第2の位置への戻り動作を規制する規制部が設けられていることを特徴とするディスク装置。
【請求項3】
前記切換え部材には、前記伝達部がヘッドと共に移動したときにこの伝達部と嵌合する伝達凹部が形成されており、切換え部材が第2の位置へ移動したときに前記規制部が前記伝達凹部と係合する請求項1または2記載のディスク装置。
【請求項4】
前記切換え部材には、前記伝達部がヘッドと共に移動したときにこの伝達部と嵌合する伝達凹部が形成されており、切換え部材が第2の位置へ移動したときに前記規制部が前記伝達凹部と係合するとともに、前記切換え部材が第1の位置へ移動したときに、前記規制部が切換え部材の側部に対向して前記切換え部材の第2の位置への移動が規制される請求項2記載のディスク装置。
【請求項5】
前記ヘッド送り機構には、ヘッドと共に移動するラックと、このラックに移動力を与えるピニオン歯車とが設けられ、前記伝達部は前記ラックに設けられており、前記切換え部材が第2の位置に移動したときに、前記伝達部が前記切換え部材に保持されて、ラックが前記ピニオン歯車から外れる位置へ移動させられる請求項1ないし4のいずれかに記載のディスク装置。
【請求項6】
前記第2の動力伝達経路によって駆動される前記機構動作部は、ディスクを前記回転駆動部に向けて搬送する搬送手段である請求項1ないし5のいずれかに記載のディスク装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2006−127615(P2006−127615A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312996(P2004−312996)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000101732)アルパイン株式会社 (2,424)
【Fターム(参考)】